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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1192697
審判番号 不服2006-17565  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-10 
確定日 2009-02-12 
事件の表示 特願2001-314541「情報処理装置及び方法、並びに情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月25日出願公開、特開2003-123086〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成13年10月11日に出願されたものであって、平成18年7月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成18年8月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同年9月11日に手続補正がなされたものである。

第2 平成18年9月11日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年9月11日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 表示手段に表示されている処理対象画像情報に対して画像処理を施す情報処理装置において、
上記処理対象画像情報を縮小処理した縮小画像情報に、複数の異なるカテゴリに分類される複数種類の画像処理をそれぞれ施して、複数の縮小画像情報を生成する画像生成手段と、
上記画像生成手段によって各カテゴリに分類される複数種類の画像処理がそれぞれ施された複数の縮小画像情報を上記表示手段に表示させる表示制御手段と、
上記表示手段に表示されている各カテゴリに分類される複数種類の画像処理がそれぞれ施された複数の縮小画像情報に基づいてユーザから入力される選択操作に応じて前記処理対象画像に適用する画像処理を決定する画像処理決定手段とを備え、
上記表示制御手段は、上記画像生成手段によって各カテゴリに分類される複数種類の画像処理がそれぞれ施された複数の縮小画像情報を上記カテゴリ毎に分類して空間的に同一面上に表示する
ことを特徴とする情報処理装置。」
と補正された。

2.補正の適否について
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するかどうかについて以下に検討する。

3.引用刊行物
原審が拒絶の理由に引用した特開平11-136528号公報(以下、「引用例」という)には、図面とともに次の各記載がある。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のパラメータにより画像処理を行いうる情報処理装置において、複数のパラメータに対応する複数のサンプルを表示画面上に表示する表示制御手段と、前記表示画面上の複数のサンプルから1つのサンプルを指定する指定手段と、前記指定手段で指定されたサンプルに対応する前記複数のパラメータに基づいて画像データに対して画像処理を施す処理手段と、を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】 前記処理手段により画像処理が施された画像データを出力データとして出力する出力手段を更に有することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】 1ページに複数の画像データを出力するモードを選択する選択手段を更に有し、前記出力手段は、前記選択手段により該モードが選択された場合に、前記処理手段により画像処理が施された画像データを変倍し、複数の画像データから構成される1ページ分の出力データを出力することを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】 複数のパラメータにより画像処理を行いうる情報処理装置において、複数種類の画像処理のパラメータを指定させる指定手段と、前記指定手段により指定された複数種類のパラメータに基づいて、画像データに画像処理を施す処理手段と、前記処理手段により画像処理を施された画像データを変倍する変倍手段と、前記変倍手段により変倍された複数の画像データから構成される1ページ分の出力データを外部装置に出力する出力手段と、を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】 前記出力手段は、画像処理で使用したパラメータを出力データと共に出力することを特徴とする請求項2、4記載の情報処理装置。
【請求項6】 前記指定手段は、データの種類毎に変換パラメータを個別に指定することが可能であり、前記処理手段は、データ種別によってパラメータを切り換えながら画像処理を行うことを特徴とする請求項1、4記載の情報処理装置。
【請求項7】 前記出力手段は、複数の画像データをパラメータの大きさに順じて1つの出力データとして並べて生成し、外部装置に出力することを特徴とする請求項3乃至4記載の情報処理装置。
【請求項8】 前記出力手段は、現在選択されているパラメータに対応して画像処理を施された画像データを他パラメータで画像処理された複数の画像データと識別して、1つの出力すべき出力データの中に挿入して生成し、外部装置に該出力データを出力することを特徴とする請求項3乃至4記載の情報処理装置。
【請求項9】 前記出力手段は、出力先の外部装置を識別する情報を出力データと一緒に出力することを特徴とする請求項2乃至4記載の情報処理装置。
【請求項10】 前記パラメータは、色調・彩度であることを特徴とする請求項1、4記載の情報処理装置。
【請求項11】 前記パラメータは、明度・コントラストであることを特徴とする請求項1、4記載の情報処理装置。
【請求項12】 着目すべき対象を指定する着目対象指定手段を更に有し、前記表示制御手段は、前記着目対象指定手段により指定された着目すべき対象に最適なサンプルを複数種類のサンプルから選択して表示させることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項13】 前記出力手段は、選択されているパラメータの画像データに対して前記表示制御手段により表示されているサンプルと同様の配置で他のパラメータの画像データを配置した出力データとして出力することを特徴とする請求項3乃至4記載の情報処理装置。
【請求項14】 各々の画像データ間のパラメータの差である調整値を指定する調整手段を更に有し、前記複数の画像データを1つの出力データとして出力する場合は、前記調整手段により指定された調整値に基づいて画像データを画像処理して出力データを生成することを特徴とする請求項3乃至4記載の情報処理装置。
【請求項15】 前記表示制御手段は、前記指定手段により選択されたサンプルを指定位置に徐々に移動して表示するよう制御することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項16】 前記表示制御手段は、複数のサンプルが表示されている表示画面上に、カレントのサンプルからのパラメータ変化方向を識別するマークを表示することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項17】 前記マークは調整パラメータの種類を表していることを特徴とする請求項16記載の情報処理装置。
【請求項18】 前記表示制御手段は、パラメータの種類により複数のサンプルを表示させるマップを切り替えることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項19】 前記マップは、色みの調整を行うためのマップと、明度の調整を行うマップとを含むことを特徴とする請求項18記載の情報処理装置。
【請求項20】 前記表示制御手段は、デフォルトのパラメータに対応するサンプルと、前記指定手段により指定されたサンプルとを同時に表示することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。」
なお、下線は審決に於いて附された。以下同様。

(イ)「【0071】(第4実施例)また、第4実施例において、ユーザが色相・彩度のパラメータを指定し(もちろん、他の変換パラメータも合わせて指定してもよい)、そのパターンを組み合わせ、9パターンの変換データとして使用し、さらに、印刷データの種類(テキスト、図形、イメージ等)によっては色相・彩度の変換を行う・行わない場合の指定について説明する。さらに、その出力結果を1枚の用紙上に、色みである色相パラメータに基づき、9つの画像の出力位置とそれぞれのパラメータとを関連付けてレイアウトして印刷することも可能であり、前述の実施例の装置に基づいて、このような処理の説明を図7に示す。
【0072】カタログプリントは、前述したように図9のプリンタドライバの画面でユーザがカタログプリントを選択した場合に行われる。カタログプリントとは、複数のパラメータにより印刷結果がどのように変化するかを視覚的に理解する場合に適している。
【0073】図10で示すように、色み、色調、彩度、明度、コントラストなどのパラメータにより、画面上にデフォルトのサンプル画像を中心に9個の表示サンプルが表示されている。中心は、現在選択されているパラメータで印刷を行う場合のサンプルである。サンプル画像の設定用のマップは大きく2つに分けており、この2つのマップで色調整値を決定する。1つは色調整モードが色みの場合であり、もう1つは色調整モードが明度/コントラストである。この色調整モードは図10に示す9つのサンプルの上に位置するダイアログボックスを押すことによりユーザが決定し、それに対応して画像サンプルが表示されている2次元マップが切り替わる。
【0074】色調整モードが色みに設定されている場合は、画像サンプル(表示サンプル)は、色み調整時の2次元マップに切り替えられる。ここでマップ上には、左上が緑、上が黄緑、右上が黄、左が水色、右が赤(朱)、左下が青、下が紫、右下がピンクとしてそれぞれ該当する色が強くなるように色調整が行われた画像サンプルが表示されている。
【0075】同様に色調整モードが明度/コントラストに設定されている場合は、2次元マップが明度/コントラスト調整時のものに切り替えられる。図15に図示されているのが明度/コントラスト調整時の色調整設定画面である。色み調整時と明度/コントラスト調整時の画面とでは、2次元マップの変化方向を表すマークが異なっている。このマップには、右が明度の明るい方であり、左が明度の暗い方である。更に下はコントラストの差が少ない、つまりぼやける方であり、上はコントラストの差が大きい、つまり明度の違いがはっきりでるように調整されるように色調整が行われた画像サンプルが表示されている。
【0076】このように色み調整時と明度/コントラスト調整時とのマップにおける、表示サンプルの位置と強調を表した図が図16である。
【0077】このように本願発明では、2次元マップを2種類用いて、色みと明度/コントラストを視覚的に表現し、ユーザに選択しやすいようになっている。
【0078】また、ユーザは、9つの画像サンプルの周りにあるいずれかのボタンを選択することにより、画像サンプルの表示を替えて色調整をする。例えば、色みの調整時において左の青緑のボタンを図示省略したマウスなどのポインティングデバイスなどでクリックにより選択することにより、左にある画像サンプルが選択位置(中央)に移動し、新しくパラメータが選択される。ここで周りの8つの画像サンプルも同様に1つ左の画像サンプルと替わり、全体として9つの画像サンプルの表示が左に1つづれたようになる。色みだけでなく、明度/コントラストのマップでも同様であり、2つの2次元マップはお互いリンクしているので、色みの調整で選択設定されたパラメータに基づく画像サンプルに対応して明度/コントラストの画像サンプルが9つ表示される。つまり、色みの調整で画像サンプルを青くし、その後明度/コントラストの色調整に移ると、中心の画像サンプルが色みの調整で青くした画像サンプルになり、その画像サンプルに対して明度/コントラストをつけた画像サンプルが計算されて表示されるのである。ボタンの選択により色調整をするのは色みだけでなく、明度/コントラストも同様である。ここでは指定方向を表すマークであるボタンを選択することにより色調整を行ったが、まわりの8つの表示サンプルをクリックすることにより選択してもよい。
【0079】また、この画面(図10)では、調整の対象として「写真を調整」にチェックされており、写真サンプルとして「肌色」が選択されているので、写真サンプルとして肌色を判断するのに最適なサンプルが表示されている。図10の上部に示してあるように、色みを着目したい、つまり変換パラメータを変えて所望の色の色を出してみたい色についてユーザが選択できるようになっている。図10の上部の写真サンプルの部分をクリックすることにより、肌色、風景(青)、風景(赤)、食べ物、ガラス等の複数の着目対象を選択できるようになっている。ユーザが写真サンプルの着目対象を選択すると、選択された着目対象に最適なサンプルが画面に表示される。本実施例では、肌色に関してユーザが着目している例を示しており、肌色を判断するのに最適な表示サンプルを画面に表示しているのである。また、調整の対象として「絵を調整」にチェックされていれば、表示サンプルが図形を含むものになり、「文字を調整」にチェックされていれば、文字を含む表示サンプルが色調整画面に表示されるのである。本カタログ印刷プログラムは、表示サンプルを複数有しており、ユーザの着目対象に合わせて順次表示サンプルを換えるように制御している。
【0080】また、本発明のカタログ印刷方法は、表示画面(図10)にパラメータがデフォルトであるオリジナルのプレビューと、ユーザにより色調整されたパラメータに基づく調整後のプレビューとを縮小画像で表示させている(図10の左上)。ここでいうオリジナルのプレビューは、もちろん写真サンプルのことであり、パラメータがデフォルト値を使用しているという意味である。このようにパラメータ変更前と変更後のプレビューを同時に表示させることにより、ユーザにパラメータの変化による画像処理の違いを視覚的に理解させることが可能となる効果が得られる。
【0081】本実施例のように表示サンプルを表示させずに、実際に印刷するデータの画像を表示させる場合には、一度ビットマップデータとして作成し、それぞれのパラメータを変化させて画像処理を施し、更に縮小し、レイアウトをして表示させる必要があり、実際の処理としては非常に遅くなってしまう。そのため、本願発明では予め表示サンプルを色みなどに合わせて複数種類用意しておき、ユーザの希望に合わせて表示させている。こうすることにより、表示処理が早くなりる効果が得られる。」

(ウ)「【0082】ここで図7の処理を説明する。まず、カタログ印刷プログラムはステップ701において、1ページ分の印刷データを読み込む。ここで読み込む印刷データはオリジナル画像である。
【0083】次にステップ702において、色みと明度/コントラストのパラメータを取得する。これは、図10の右側に示しているように、中心の表示サンプルのパラメータを取得する。
【0084】次にステップ703において、変換を行うデータ種別を表す情報を取得する。前述したように、図10の調整の対象でユーザが選択した画像の情報を取得するのである。
【0085】次に、カタログ印刷プログラムは、ステップ704で9パターンの変換を管理するためのカウンタをI=1と初期化する。続いてステップ705において、出力用紙を9種類の変換結果を出力できるように9分割する。
【0086】ステップ706では、すべての変換処理が終わったかをカウンタIとNの比較により判定する。ここで、すべてのパターンで変換・出力が済んだと判断された場合は、作成した1ページ分の出力すべき印刷データを出力制御装置であるプリンタ1500に出力し、印刷処理は終了する。ステップ706でカタログ印刷プログラムが変換・出力が済んでいないパターンがあると判断した場合は、ステップ707に処理を進め、次の変換パラメータを変換ルーチンに対して設定する。その後ステップ708?713において、ページ中の各印刷データに対して処理を変換、印刷処理をおこなう。
【0087】ステップ707で変換パラメータの設定は、ステップ703で図10の表示サンプルの中心画像の情報から取得した設定パラメータと図10の右下にある調整幅からまわりの表示サンプルのパラメータを算出することにより求まる。調整幅は、表示サンプル毎のパラメータの差を表している。例えば、本実施例では図10の左下の桝目に示しているように、色みを20段階に分けており、調整幅が5の場合は、中心画像に対しパラメータを20分の5だけ変えたパラメータが隣の表示サンプルのパラメータに対応する。これは、明度/コントラストを表すマップに関しても同様である。調整幅を細かく設定することにより、更に詳細にパラメータを設定できる。
【0088】ステップ707において基本パラメータと調整幅から取得した変換パラメータに基づいて、各々のステップでの印刷データに対する処理についてさらに説明する。
【0089】まず、ステップ709において、印刷データがデータ変換対象であるかを判定する。ステップ709でデータ変換の対象であると判定された場合は、ステップ710に処理を進め、ステップ707で設定したパラメータで変換を行う。ステップ709で、データ変換対象でないと判定されればステップ710の変換処理を行わずに次のステップに進む。
【0090】ステップ711では、印刷データを9分割されたエリアに印刷するために、分割された各エリアに合わせて、データサイズを変更する。ステップ712では、明度・彩度のパラメータの関連付けて、印刷データを決定して印刷する。すべての印刷データに対して上記処理が終了した場合、変換パターンを管理するカウンタをインクリメントし(ステップ714)再びステップ706の判定に戻る。
【0091】このように、第4実施例では、データ種別により色み、明度/コントラスト等のパラメータの変換を行うかどうかの選択をし、パラメータに基づいて変換された複数の印刷データをそのデータ処理の数より少ない用紙上にレイアウト出力することができるので、データ種別によってパラメータを切り換えながらデータ変換処理を行い、複数の印刷結果を比較する際に一貫性がよくなる効果が得られる。
【0092】また、表示用のデータとして印刷データをパラメータに合わせて表示させずに、表示サンプルを別に用意したので表示処理が早くなる効果が得られる。さらに、調整幅を設定できるので、パラメータを数値で設定する必要がなくなり、ユーザはこの調整幅を換えることにより、周りのパラメータを視覚的に複数同時に選択できるという効果が得られる。
【0093】また、表示サンプルを、ユーザが着目している色に対応して複数持たせているので、着目している色に最適な表示サンプルを表示できるので、ユーザは視覚的に理解しやすくなるという効果が得られる。
【0094】また、色みと明度/コントラストのそれぞれの設定をするための2次元マップを2つ持たせているので、ユーザが色調整の設定が容易になるという効果が得られる。
【0095】また、色調整の際にサンプル画像の周りに指定方向を表すマークがその指定方向がどういう意味を表すかを容易に理解できるようにマークの色や形を変えているので、ユーザが視覚的に理解しやすくなった。
【0096】また、指定方向を表すマークを選択することで色調整のパラメータを変更させることができ、それと同様に表示サンプルが変更するのでユーザの使い勝手が向上するという効果が得られる。
【0097】また、現在選択されている色調整のパラメータに基づくプレビューとオリジナルのパラメータでのプレビューが同時に表示されているので、ユーザはパラメータ変更前と後での違いを視覚的に容易に理解できるという効果が得られる。」

そうすると、前掲した(ア)?(ウ)の記載において、
(1)引用例には、表示手段であるCRTディスプレイ10に表示されている処理対象画像データに対して、色相・彩度処理、色み処理、そして明度/コントラスト処理等の画像処理を施す情報処理装置3000が記載されている。
(2)引用例には、処理対象画像データを変倍処理することにより縮小処理した縮小画像情報に複数種類の画像処理をそれぞれ施して、複数の縮小画像情報を生成することが記載されている。
(3)引用例には、複数種類の画像処理がそれぞれ施された複数の縮小画像情報を表示手段であるCRT10に表示させる表示制御手段CRTC6が記載されている。
(4)引用例には、表示手段であるCRT10の表示画面上の複数のサンプルから1つのサンプルを指定する「指定手段」と、この「指定手段」で指定されたサンプルに対応する複数のパラメータに基づいて画像データに対して「画像処理を施す処理手段」とを有する情報処理装置3000が記載されている(前掲(ア)の請求項1の記載を参照)。
(5)引用例の第10図、15図、16図及びその関連説明には、複数の画像処理が施された複数の縮小画像を分類して、表示することが記載されている。
してみれば、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。
「表示手段CRT10に表示されている処理対象画像データに対して、色み処理や明度/コントラスト処理等の複数の画像処理を施す情報処理装置において、
前記処理対象画像データを変倍することにより縮小処理した縮小画像情報について、複数種類の画像処理、つまり色み処理や明度/コントラスト処理等をそれぞれ施して、複数の縮小画像情報を生成するカタログ印刷プログラムを有する画像を生成する手段と、
前記カタログ印刷プログラムによって、複数種類の画像処理がそれぞれ施された複数の縮小画像情報を前記表示手段CRT10に表示させる表示制御手段CRTC6と、
前記表示手段CRT10に表示されている複数の縮小画像情報は、複数種類の画像処理がそれぞれ施された複数の縮小画像情報であって、ユーザはこれらの縮小画像情報の中から所望の1つをボタンを押すことによりまたはマウスでクリックすることにより選択し、該ユーザの選択操作に応じて前記処理対象画像データに適用する画像処理の種類を決定する画像処理決定手段とを備え、
前記表示制御手段CRTC6は、前記画像を生成する手段によって生成された複数の縮小画像情報を分類し、複数の縮小画像情報を同一画面上に表示する情報処理装置。」

4.対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「情報処理装置」は、表示手段であるCRT10に表示されている処理対象画像データに対して種々の画像処理(色相・彩度処理、色み処理、そして明度/コントラスト処理等)を実行しているから、本願補正発明の「情報処理装置」に相当する。
(2)引用発明の「カタログ印刷プログラム」は、複数種類の画像処理、すなわち色み調整と明度/コントラスト調整とをそれぞれ施して複数の縮小画像情報を生成しているから、本願補正発明の「複数の縮小画像情報を生成する画像生成手段」に相当する構成を備えているといえる。
(3)引用発明の「表示制御手段CRTC6」は、複数の画像処理が施された複数の縮小画像情報を表示手段CRT10に表示させているから、本願補正発明の「表示制御手段」に相当する。
(4)引用発明は、9つの表示サンプルの上に位置するダイアログボックスをユーザが押すことにより2次元マップ、すなわち色みの調整を行う2次元マップと明度/コントラストの調整を行う2次元マップとを切り替えて色調整モードを決定しており、また引用発明は、ユーザが9つの画像サンプルの周りにあるいずれかのボタンを選択することにより画像サンプルの表示を替えて色調整を行っており、また引用発明は、ユーザが表示サンプルをクリックすることにより色調整を行っても良いものであり、更にまた引用発明は、表示手段の表示画面上の複数のサンプルから1つのサンプルを指定する「指定手段」と、この「指定手段」で指定されたサンプルに対応する複数のパラメータに基づいて画像データに対して「画像処理を施す処理手段」とを有している。してみれば、引用発明は、本願補正発明の「ユーザから入力される選択操作に応じて処理対象画像に適用する画像処理を決定する画像処理決定手段」に相当する構成を備えているといえる。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「表示手段に表示されている処理対象画像情報に対して画像処理を施す情報処理装置において、
上記処理対象画像情報を縮小処理した縮小画像情報に、複数種類の画像処理をそれぞれ施して、複数の縮小画像情報を生成する画像生成手段と、
上記画像生成手段によって複数種類の画像処理がそれぞれ施された複数の縮小画像情報を上記表示手段に表示させる表示制御手段と、
上記表示手段に表示されている複数種類の画像処理がそれぞれ施された複数の縮小画像情報に基づいてユーザから入力される選択操作に応じて前記処理対象画像に適用する画像処理を決定する画像処理決定手段とを備え、
上記表示制御手段は、上記画像生成手段によって複数種類の画像処理がそれぞれ施された複数の縮小画像情報を表示する情報処理装置。」である点において一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明では、「複数の異なるカテゴリに分類される」及び「各カテゴリに分類される」複数種類の画像処理をそれぞれ施し、「各カテゴリに」分類して、「空間的に同一面上に表示」するのに対して、引用発明は、色み調整時の9枚の縮小画像情報(2次元マップ)を表示し、明度/コントラスト調整(画像処理)時の9枚の縮小画像情報(2次元マップ)を表示するものであって、複数の異なるカテゴリに分類されるか明らかでなく、空間的に同一画面上に表示するか明らかでない点(本願補正発明における、相違点対応箇所を「」によって示す)。

5.判断
本願明細書には「カテゴリ」の明確な技術的定義はなされていないから、どの画像処理とどの画像処理とが同じカテゴリに属するのかその判断基準が明確ではない。しかも、本願補正発明の解決しようとする課題は、本願明細書の段落【0005】にその主旨が記載されているように、複数設けられているフィルタに於いて、各フィルタの内容や処理の違いをユーザに正確に認識させることにある。つまり、本願補正発明の要旨の本質は、各フィルタ処理における夫々の相違をユーザに正確に認識させ、ユーザが所望するフィルタを誤りなく的確に選択できるようにする点にあり、かかる本願補正発明の課題の解決手段としてカテゴリが存在するものと解される。
そして、色み処理と明度/コントラスト処理とは互いに独立した画像処理上の概念といえるから、色み処理と明度/コントラスト処理とは異なるカテゴリに分類される画像処理であるといえる。
また、「上記引用文献2の段落〔0073〕-〔0077〕、図10、図15等の記載からも明らかなように、色み調整時の画面と、明度/コントラスト調整時の画面とは、異なる画面に表示されている。これに対して、本願発明は、縮小画像情報はカテゴリ毎に分類して空間的に同一面上に表示する構成であり、複数の異なるカテゴリに分類される複数種類の画像処理がそれぞれ施された場合の効果を、空間的に同一面上で容易に確認することができる。」という審判請求書における請求人の主張からすれば、本願補正発明に於ける「空間的に同一面上に表示する」は、分類されたすべての縮小画像情報を「同一時刻に空間的に同一面上に表示する」ことを意味すると解されるところ、
(i)相異なる複数の方法で処理された複数の画像データをすべて同一画面上に並べて表示し、処理された画像を互いに引き比べて、施された相異なる複数の画像処理の効果の程を確認することは、当該画像処理の技術分野に於いては、当業者が日常的に行っている常套手段であり、且つ周知自明な技術常識である。
(ii)また例えばマイクロソフト社のウインドウズの如きウインドウシステムは、本件出願前既に多数のパソコンユーザの間に広く普及しており、同一時刻に同一画面上に多数のウインドウを表示したり(マルチウインドウ表示機能)、ウインドウをスクロールさせて同一時刻に同一画面上に画像を複数表示することは、当業者の周知技術事項であった。
してみると、引用発明に上記周知技術を適用して本願補正発明の如く、「複数の異なるカテゴリに分類される」及び「各カテゴリに分類される」複数種類の画像処理をそれぞれ施し、「各カテゴリに」分類して、「空間的に同一面上に表示」することは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成18年9月11日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年5月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】 表示手段に表示されている処理対象画像情報に対して画像処理を施す情報処理装置において、
上記処理対象画像情報を縮小処理した縮小画像情報に、複数の異なるカテゴリの複数種類の画像処理をそれぞれ施して、複数の縮小画像情報を生成する画像生成手段と、
上記画像生成手段によって各カテゴリの複数種類の画像処理がそれぞれ施された複数の縮小画像情報を上記表示手段に表示させる表示制御手段と、
上記表示手段に表示されている各カテゴリの複数種類の画像処理がそれぞれ施された複数の縮小画像情報に基づいて、ユーザから入力される選択操作に応じて上記処理対象画像に適用する画像処理を決定する画像処理決定手段と
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 3.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から、限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含む本願補正発明が、前記「第2 4.」、「第2 5.」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-17 
結審通知日 2008-09-24 
審決日 2008-12-22 
出願番号 特願2001-314541(P2001-314541)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
P 1 8・ 575- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村松 貴士  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 板橋 通孝
廣川 浩
発明の名称 情報処理装置及び方法、並びに情報処理プログラム  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 小池 晃  

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