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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1193184
審判番号 不服2007-23790  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-30 
確定日 2009-02-19 
事件の表示 特願2003- 42258「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 9日出願公開、特開2004-252134〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯及び本願発明の認定
本願は平成15年2月20日の出願であって、平成19年5月10日付けで拒絶理由が通知され、同年7月13日付けで意見書が提出されたが、同年7月27日付けで拒絶査定がされたため、これを不服として同年8月30日付けで本件審判請求がされたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「像担持体と、中間転写体と、前記像担持体上のトナー像を前記中間転写体の転写面に転写する一次転写手段と、前記トナー像を前記中間転写体から転写材に転写する二次転写手段とを備え、前記一次転写手段が、前記転写面に対する裏面にバイアスを印加する一次転写バイアス印加手段を有する、間接転写方式の画像形成装置において、前記中間転写体として、該中間転写体の表面抵抗率を、電圧印加と接地除電を1000回繰り返す抵抗測定方法によって所定の条件1で測定したとき、1回目と1000回目の測定値の対数の差の絶対値が、0.5[log(Ω/□)]以下であるものを用いることを特徴とする画像形成装置。
所定の条件1:
印加電圧v1は200V、
印加時間t1は60秒、
除電時間t2は10秒、
繰り返し回数N1は1000回」


第2 当審の判断
1 引用刊行物の記載事項及び引用刊行物に記載された発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-221862号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の(ア)ないし(オ)の記載が図示とともにある。

(ア)「【請求項1】 トナー像が形成される像担持体と、前記像担持体上のトナー像が転写される中間転写体と、前記中間転写体上のトナー像が記録材に転写された後の前記中間転写体を静電的にクリーニングする、電圧が印加されるクリーニング手段とを備えた画像形成装置において、
前記クリーニング手段を2またはそれ以上の複数有し、少なくともその1つのクリーニング手段に印加する電圧を正極性、他の1つのクリーニング手段に印加する電圧を負極性とすることを特徴とする画像形成装置。」

(イ)「【請求項7】 前記中間転写体がベルト状に形成されたことを特徴とする請求項1?6のいずれかの項に記載の画像形成装置。」

(ウ)「【0016】実施例1
図1は、本発明の画像形成装置の一実施例を示す概略図である。本画像形成装置は、中間転写ベルト5に沿って複数の画像形成ユニットM、C、Y、Kを有し、各画像形成ユニットM、C、Y、Kには、それぞれ像担持体として感光ドラム(ドラム状電子写真感光体)1m、1c、1y、1kが矢印方向に回転自在に設置されている。
【0017】この感光ドラム1m、1c、1y、1kにはこれと所定の間隔を開けて、それぞれドラム帯電器2m、2c、2y、2kが配置され、帯電器2m、2c、2y、2kよりも感光ドラム回転方向下流側の上方には露光装置3m、3c、3y、3kが配置され、さらに下流にはそれぞれマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの現像剤を収容した現像器4m、4c、4y、4kが配置される。」

(エ)「【0020】中間転写ベルト5としては、厚さ0.3?2mm、体積抵抗率10^(6)?10^(12)Ωcm程度に抵抗調整されたアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴムベルト、またはPVdF、PET、ポリカーボネート、ポリエチレン、シリコーン等の樹脂ベルトが好ましい。本実施例では、ヒドリンゴムにカーボンを分散して体積抵抗率を10^(7)Ωcmに調整した厚さ0.5mmの基層表面に、10^(13)Ωcmの抵抗を有するフッ素樹脂で厚さ20μmの表層を設けて、中間転写ベルト5とした。
【0021】中間転写ベルト5の内側には、感光ドラム1m、1c、1y、1kと対向するところに転写ローラ6m、6c、6y、6kが配置され、感光ドラム1m、1c、1y、1kと中間転写ベルト5との間にそれぞれ一次転写部が構成されている。また中間転写ベルト5の外側には、支持ローラ5bに対向したところに転写ローラ7が配置され、転写ローラ7と中間転写ベルト5との間に二次転写部が構成されている。」

(オ)「【0027】このようにして感光ドラム1m上に形成されたイエロートナー像は、図示しない一次転写電源から一次転写ローラ6mに印加したトナーと逆極性の正極性の一次転写バイアスにより、中間転写ベルト5の表面に一次転写される。他方、一次転写後の感光ドラム1m上に残留した転写残りトナーは、特開平9-96997に示す方法に従い、磁気ブラシ帯電器であるドラム帯電器2mにより電荷を付与して再帯電し、現像器4mに感光ドラム1との現像部で回収して再利用する。
【0028】上記と同様な画像形成プロセスを2色目、3色目、4色目のシアン、イエロー、ブラックの画像形成ユニットC、Y、Kで繰り返して、中間転写ベルト5上にマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像を重ねて転写する。この中間転写ベルト5上の4色のトナー像は、図示しない二次転写電源から二次転写ローラ7に印加したトナーと逆極性の正極性の二次転写バイアスにより、二次転写部に送られた図示しない記録材上に一括して二次転写され、ついで記録材を定着装置9に送って、そこで加熱および加圧することにより4色のトナー像を溶融固着して、記録材に4色フルカラーの定着画像が得られる。」

上記記載事項(ア)ないし(オ)から、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。

「トナー像が形成される像担持体としての感光体ドラム1m?1kと、前記像担持体としての感光体ドラム1m?1k上のトナー像が一次転写される体積抵抗率10^(6)?10^(12)Ωcm程度に抵抗調整された中間転写ベルト5と、前記中間転写ベルト5の内側であって、前記像担持体としての感光体ドラム1m?1kに対向するところに配置された一次転写ローラ6m?6kと、前記中間転写ベルト5の外側であって、支持ローラ5bに対向したところに配置された二次転写ローラ7とを備えた、中間転写ベルトを用いた電子写真方式の画像形成装置において、
前記像担持体としての感光体ドラム1m?1k上に形成されたトナー像は、一次転写電源から前記一次転写ローラ6m?6kに印加した一次転写バイアスにより、前記中間転写ベルト5の表面に一次転写され、
前記中間転写ベルト5の表面に一次転写されたトナー像は、二次転写電源から前記二次転写ローラ7に印加した二次転写バイアスにより、前記記録材上に二次転写される、中間転写ベルトを用いた電子写真方式の画像形成装置。」(以下、「引用発明1」という。)

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-3067号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の(カ)ないし(ソ)の記載が図示とともにある。

(カ)「【請求項1】 カーボンブラックをポリイミド樹脂中に均一に分散させたポリイミド樹脂組成物において、表面抵抗率の常用対数値は8?13(logΩ/□)であり、電子スピン共鳴法で得られるスペクトルの一次微分吸収曲線におけるピーク半値幅は1.0mT以下であることを特徴とするポリイミド樹脂組成物。
【請求項2】 揮発分が3%以上、かつ、pH値が5以下のカーボンブラックを少なくとも1種類含有する請求項1に記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項3】 請求項1又は2に記載のポリイミド樹脂組成物からなる半導電層を、少なくともその外表面に有する高制電性シームレスベルト。
【請求項4】 放電劣化試験前と放電劣化試験後の表面抵抗率の差が、常用対数値で2.0(logΩ/□)以下である請求項3に記載の高制電性シームレスベルト。」

(キ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導電性部材として好適に用いられるポリイミド樹脂組成物及び高制電性シームレスベルトに関する。かかる組成物及びベルトは、電気・電子分野、事務機器等の各種工業部品に使用される。」

(ク)「【0004】一方、ポリアミド酸、導電性物質としてのカーボンブラック及び溶媒並びに小径のボールをタンク中に投入し、強制的に撹拌・混合させ、ボール同士の衝突のエネルギーを利用して、ポリイミド樹脂中にカーボンブラックを分散させたシームレスベルトが特開平5-77552号広報に開示されている。しかしながら、この組成物も分散性が充分とは言えず、ポリイミド樹脂組成物が低粘度であるため、カーボンブラックの二次凝集が発生しやすく、これにより組成物内で導電経路が形成されやすい。このため、前記組成物を利用したフィルム等の部材として用いる場合に、部材面内の抵抗ばらつきが発生する。この組成物を用いたシームレスベルトを、例えば電子写真方式の転写搬送部材、中間転写部材等に用いた場合、被転写体の保持や紙分離性及び転写効率に問題があり、近年の複写機やプリンタの高速化や高画質化への要求に応えることができない。また、これらの部材は、繰返しの電圧印加等により、カーボンブラック自体の酸化劣化やポリイミド樹脂材料の劣化等に起因すると思われる抵抗低下が発生していた。このような抵抗低下は、電子写真方式の画像形成装置における半導電性ベルトの寿命の短命化につながり、ベルトの交換等のメンテナンスの手間とランニングコストを押し上げる要因となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような問題点を解決し、以下の目的を達成することを目的とする。すなわち、本発明の目的は、ポリイミド樹脂組成物の高い機械的強度を活かしつつ、幅広い抵抗領域に対応でき、かつ電気抵抗値のバラツキが小さく、環境の変化や電気的負荷による経時での抵抗の変動幅が小さいポリイミド樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、電子写真方式の転写搬送部材や中間転写部材として使用した場合、ポリイミド樹脂の機械的強度や寸法安定性を活かしつつ、長期間良好な紙分離性及び高い転写効率を有する高制電性シームレスベルトを提供することにある。」

(ケ)「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討したところ、導電性物質としてのカーボンブラックの分散状態を定量かつ容易に測定できる手段並びにカーボンブラックを良好に分散させる条件を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】すなわち、本発明のポリイミド樹脂組成物は、カーボンブラックをポリイミド樹脂中に均一に分散させたポリイミド樹脂組成物において、表面抵抗率の常用対数値は8?13(logΩ/□)であり、電子スピン共鳴法で得られるスペクトルの一次微分吸収曲線におけるピーク半値幅は1.0mT以下であることを特徴とする。
【0008】前記ポリイミド樹脂組成物は、安定した半導電性を保持する機能が必要な用途に適用させるため、表面抵抗率の常用対数値は8?13(logΩ/□)であり、好ましくは9?13(logΩ/□)であり、より好ましくは10?13(logΩ/□)である。
【0009】前記表面抵抗率は、実施例に示す方法で測定した値である。
【0010】本発明のポリイミド樹脂組成物は、導電性物質としてカーボンブラックを含有するポリイミド樹脂を主成分としており、電子スピン共鳴法(ESR)で得られるスペクトルの一次微分吸収曲線におけるピーク半値幅は、1.0mT以下、好ましくは0.9mT以下、より好ましくは0.8mT以下である。
【0011】ここで、ピーク半値幅とは以下の様にして求めた値である。すなわち、実施例に示す装置及び条件下にESRによりスペクトルの一次微分吸収曲線を求める。次に、図2に示すように、一次微分吸収曲線の左端と右端を結んだ直線をベースラインとして最大ピーク高さと最小ピーク高さの信号強度を+1/-1と正規化し、最大ピークの共鳴中心(信号強度+1)からベースラインまでの高さの半分の位置で水平方向に引いた直線と交わる2ヶ所の一次微分吸収曲線の間の全幅を「ピーク半値幅」とする。
【0012】ESRは、測定試料の持つラジカルの種類と濃度、結合状態の違いを観測する測定方法であり、前記ポリイミド樹脂組成物においては一次微分吸収曲線のピーク位置(g値)とパターンから、このピークはカーボンブラックのラジカルに由来すると推察される。前記ピーク半値幅が1.0mTより大きいと、当該ポリイミド樹脂組成物を電子写真画像形成装置における機能性ベルトとして用いたとき、転写電圧等の電気的負荷や環境影響等による抵抗の変動幅が顕著となる。
【0013】ピーク半値幅を前記範囲内に調整する方法としては、分散時の各条件、例えば、分散方法、分散時間などにより調整することができる。
【0014】ESRで得られるラジカルのピーク半値幅が狭いポリイミド樹脂組成物ほど抵抗の変動幅が小さい理由は明らかではないが、半値幅が広いラジカル種と狭いラジカル種が存在し、半値幅が広いラジカル種が電気的な放電作用によりポリマーのラジカル分解等が進み、導電化が進み 表面抵抗が低下、変動するものと考えられる。
【0015】前記ポリイミド樹脂組成物は、揮発分が3%以上、かつ、pH値が5以下のカーボンブラックを少なくとも1種類含有することが好ましい。
【0016】本発明における揮発分(V)は、JIS K 6221に準じ、加熱前のカーボンブラックの重量(W_(D) )と、950℃で7分間加熱した後のカーボンブラックの重量(W_(R) )を測定し、次式より算出したものである。
【0017】V=(W_(D) -W_(R) )/W_(D) ×100
揮発分の成分はカーボンブラック粒子の表面に存在するカルボキシル基、キノン基、フェノール基、ラクトン基、キノイドカルボニル基、ピロール基等の酸素含有基を含む化合物であることが知られており、本発明においては、好ましくは揮発分が3%以上でpH値が5以下、より好ましくは揮発分が4%?25%でpH値が4.5以下のカーボンブラックを少なくとも1種類含有すると、ポリイミド樹脂中での分散性が向上し、抵抗バラツキが小さくなる。
【0018】また、本発明は、前記ポリイミド樹脂組成物からなる半導電層を、少なくともその外表面に有する高制電性シームレスベルトに関する。
【0019】前記高制電性シームレスベルトは、使用時の抵抗低下の発生を抑制するためには、放電劣化試験前と放電劣化試験後の表面抵抗率の差が常用対数値で2.0(logΩ/□)以下であることが好ましく、より好ましくは1.5(logΩ/□)以下であり、さらに好ましくは1.0(logΩ/□)以下である。
【0020】ここで、放電劣化試験とは、実施例に示す装置、条件下に放電処理することによりシームレスベルトの表面抵抗率を低下させる試験をいう。放電劣化試験前と放電劣化試験後にシームレスベルトの表面抵抗率をそれぞれ測定し、得られた値の差が表面抵抗率の低下量(Δρs)であり、その常用対数値を求める。
【0021】[作用効果]本発明のポリイミド樹脂組成物によると、ESRにより求めたピーク半値幅が所定の範囲にあり、均一で安定した電気抵抗の部材として有用である。また、本発明の高制電性シームレスベルトによると、前記ポリイミド樹脂組成物から成形されることにより、電子写真方式の中間転写ベルト、転写搬送ベルト、転写定着ベルト等の画像形成装置用ベルトとして用いたときに、長期に渡り表面抵抗率等の初期の特性を保持することができ、当該画像形成装置は、高品質な画像を長期に渡り維持することができる。」

(コ)「【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0023】本発明のポリイミド樹脂組成物は,導電性物質としてカーボンブラックを含有する。
【0024】本発明に用いるカーボンブラックとしては、例えばファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック等が挙げられ、単独又は複数種類のカーボンブラックを併用してもよい。本発明においては、揮発分が3%以上でpH値が5以下のカーボンブラックを少なくとも1種類含有することが好ましい。このようなカーボンブラックとしては、デグサ・ヒュルス社製のカラーブラックFW200、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW1、カラーブラックFW18、スペシャルブラック6、カラーブラックS170、カラーブラックS160、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4、スペシャルブラック4A、プリンテックス150T、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、三菱化学社製の#2650、#2400、#2350、#2200、#1000、#970、MA7、MA77、MA8、キャボット社製のMONARCH1300、MONARCH1000、MOGUL-L等が挙げられる。
【0025】本発明のポリイミド樹脂組成物は、抵抗のばらつきが生じない範囲で電気的負荷による抵抗低下を改善するため、カーボンブラックの含有量はなるべく少ない方が好ましい。しかし、実用に供されるためには、カーボンブラックの含有量は、最終的に得られるポリイミド樹脂組成物に要求される抵抗値に依るが、半導電性を得るためにはポリイミド樹脂組成物中のポリイミド樹脂に対して10?50重量%程度が好ましく、より好ましくは12?30重量%となるように設定する。10重量%未満であると電気抵抗の均一性が低下する傾向があり、一方、50重量%を超えると所望の抵抗値が得られ難く、また、ポリイミド樹脂組成物に由来する高い機械的強度が低下したり、表面性が悪化する傾向がある。
【0026】本発明のポリイミド樹脂組成物は、前記カーボンブラックを含有するポリアミド酸溶液を加熱して、溶媒の除去及びイミド転化反応を行うことにより得ることができる。本発明に用いるポリイミド樹脂は、公知のものを使用することができ、酸二無水物とジアミンを溶媒中で重合反応させて得られる。なかでも、芳香族ポリイミド樹脂は、得られるベルトの機械的強度や耐熱性、寸法安定性が良好であり好ましい。」

(サ)「【0038】さらに、前記ポリイミド樹脂組成物を成形することにより、本発明の高制電性シームレスベルトが得られる。シームレスベルトを得るには、ポリアミド酸溶液の段階で公知の成形法を用いることが成形の容易さの点から好ましい。例えば、円筒状金型内面にポリアミド酸溶液を流延又は塗布後、金型を回転させる方法や弾丸状走行体を自重若しくは気体圧により走行させる方法、又は円柱状金型をポリアミド酸溶液に浸漬した後、引き上げて環状金型等により成形する方法等により皮膜を形成した後、加熱による溶媒除去、イミド転化反応、閉環水除去を行うことができる。
【0039】本発明の高制電性シームレスベルトは、積層することにより多層化することも可能であるが、少なくとも最外表面は、前記ポリイミド樹脂組成物からなる。」

(シ)「【0040】以上のようにして得られるポリイミド樹脂組成物及び高制電性シームレスベルトを、実施例に示す装置及び条件下で、ESRによる一次微分吸収曲線を求め、次いでピーク半値幅を求める。
【0041】このようにして得られる本発明のポリイミド樹脂組成物は、高い機械的強度を保ちつつ、抵抗値のバラツキが小さく、経時的な抵抗低下が発生しにくい。本発明のポリイミド樹脂組成物は、含有するカーボンブラックの分散性が優れていることから、導電性や帯電防止機能に対応した低抵抗領域から電荷保持等の機能を有する高抵抗領域まで、抵抗値のバラツキを少なく制御することができる。特に高抵抗領域においては、放電等により発生する抵抗の低下が起こりにくく、本発明のポリイミド樹脂組成物を用いた高制電性シームレスベルトは、長期間使用しても初期と同じ機能を発現し続ける。
【0042】このようなポリイミド樹脂組成物及び高制電性シームレスベルトの用途は、帯電防止や導電性といった機能を有する部材に対しては言うに及ばず、これまで制御が難しかった安定した半導電性を保持する機能が必要である用途、例えば事務機器における中間転写体や搬送転写体、転写定着体等に好適に用いることができる。」

(ス)「【0043】
【実施例】以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0044】[実施例1]N-メチル-2-ピロリドン1800g中に、カーボンブラック(ポリイミド樹脂固形分に対し23重量%、デグサ・ヒュルス社製スペシャルブラック4を11.5重量%、デグサ・ヒュルス社製スペシャルブラック250を11.5重量%)を添加した後、ボールミルで8時間室温で混合し、カーボンブラック分散液を得た。得られたカーボンブラック分散液に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294gとp-フェニレンジアミン108gを溶解し、窒素雰囲気下において室温で5時間攪拌しながら反応させ、カーボンブラックを分散したポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に塗布し、弾丸状走行体を用いて膜厚を均一にし、300rpmで回転させながら60℃の熱風を金型外面より10分間当てた。次いで、140℃まで徐々に昇温しながら溶媒を除去し、金型内面の塗膜自身が皮膜として支持できるまで乾燥、固化させた。この皮膜を金型内面より離型した後、金属製パイプに差し替え、残存溶媒の除去、閉環水の除去、及びイミド転化反応の完結を行うために200℃から350℃まで5℃/分の昇温温度で昇温加熱した後、室温まで冷却して厚さ75μmのシームレスベルトを得た。
【0045】[実施例2]実施例1において、カーボンブラックをデグサ・ヒュルス社製プリンテックスVとしたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ75μmのシームレスベルトを得た。
【0046】[比較例]カーボンブラックが十分に均一分散するまで時間をかけずに、ボールミルで4時間室温で混合したカーボンブラック分散液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ75μmのシームレスベルトを得た。
【0047】(評価)
-残存ラジカル濃度及び半値幅-
本発明における残存ラジカル濃度及び半値幅は、ESR分析装置(日本電子社製JES-FA200)を用い、温度23?25℃、共鳴周波数9.4?9.5GHz、マイクロ波出力1?2mW、磁場掃引範囲336±10mT、変調磁場周波数100kHz,変調幅0.1mTの条件下にて、マンガンマーカーを内部標準とした。試料のシームレスベルトは、短冊状に細かく切断したものを専用測定セル中に入れて測定を行った。
【0048】ラジカル濃度の定量方法は、Mn2+/MgOを校正用標準基準(Mn2+マーカー)とし、濃度既知のDPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル)のベンゼン溶液を定量用標準試料にして、それぞれの面積比から定量計算を行った。試料重量は約5mgを使用し、ラジカル濃度が高すぎて測定レンジを越える場合には、適時、試料重量を減じて測定した。試料重量を約5mgにて測定した場合のラジカル濃度の検出限界は、1×10^(15)スピン/gであった。
【0049】ラジカルのピーク半値幅の測定方法は図2に示すように、一次微分吸収曲線において共鳴中心から曲線の上半分のピークより求めた。すなわち、一次微分吸収曲線の左端と右端を結んだ直線をベースラインとして最大ピーク高さと最小ピーク高さの信号強度を+1/-1と正規化し、最大ピークの共鳴中心(信号強度+1)からベースラインまでの高さの半分の位置で水平方向に引いた直線と交わる2ヶ所の一次微分吸収曲線の間の全幅を算出した。図3に、実施例1と比較例で得られたシームレスベルトについて測定したESRスペクトルを示す。
【0050】-表面抵抗率-
ハイレスタUP、MCP-HTP16(三菱化学社製、プローブ:UR-100)にて印加電圧500V、10sec.後、測定条件25℃/60%RH環境下で測定を行い、その対数値をとった。
【0051】-放電劣化試験後の表面抵抗率の低下量-
半導電性シームレスベルトにコロナ放電処理を行い放電劣化させることにより、電圧の集中による表面抵抗率の低下と同様の効果が得られる。実施例、比較例で得た各シームレスベルトを図1に示すコロナ放電試験器を用いて、電圧:70V、電流:3A、電極長さ:0.3m、電極-シート間距離3mm、サンプル移動速度:0.45m/min.という条件下でコロナ放電処理を行い、処理前後の表面抵抗率を測定して表面抵抗率の低下量(Δρs)を求めた。
【0052】
【表1】

表1より、実施例1及び2で得られた、ラジカルのピーク半値幅が1.0mT以下のシームレスベルトは、均一で安定した表面抵抗率を有する部材であるばかりでなく、放電劣化試験後も抵抗変動を起こすことなく、初期の抵抗値を安定して保つことができる。一方、比較例で得られたシームレスベルトは、ラジカルのピーク半値幅が1.0mTを越え、表面抵抗率のばらつきが生じ、放電劣化試験後に抵抗変動を起こし、初期の抵抗値を安定して保つことができない。したがって、ESRによるピーク半値幅を定量することにより、カーボンブラックの分散性を簡便に管理することができる。」

上記記載事項(カ)ないし(ス)から、引用例2には、電子写真方式の中間転写ベルトの寿命を長くして高品質な画像を長期に渡り維持するために、ポリイミド樹脂中でのカーボンブラックの分散性を向上させて、電子写真方式の中間転写ベルトに用いる高制電性シームレスベルトの転写電圧等の電気的負荷による経時での表面抵抗率の変動幅を小さくするという発明が記載されていると認めることができる。

2 本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
(1)引用発明1の「像担持体としての感光体ドラム1m?1k」、「中間転写ベルト5」、「中間転写ベルトを用いた電子写真方式の画像形成装置」は、それぞれ、本願発明の「像担持体」、「中間転写体」、「間接転写方式の画像形成装置」に相当する。

(2)ア 引用発明1の「前記中間転写ベルト5の内側であって、前記像担持体としての感光体ドラム1m?1kに対向するところに配置された一次転写ローラ6m?6k」に「一次転写バイアス」を「印加」することは、本願発明の「前記転写面に対する裏面にバイアスを印加する」ことに相当する。
したがって、引用発明1の「前記中間転写ベルト5の内側であって、前記像担持体としての感光体ドラム1m?1kに対向するところに配置された一次転写ローラ6m?6k」に「一次転写バイアス」を「印加」する「一次転写電源」は、本願発明の「前記転写面に対する裏面にバイアスを印加する一次転写バイアス印加手段」に相当する。

イ また、引用発明1の「前記中間転写ベルト5の内側であって、前記像担持体としての感光体ドラム1m?1kに対向するところに配置された一次転写ローラ6m?6k」、及び、「前記像担持体としての感光体ドラム1m?1k上に形成されたトナー像」を「前記中間転写ベルト5の表面に一次転写」するために「一次転写ローラ6m?6k」に「一次転写バイアス」を「印加」する「一次転写電源」からなる部分が、本願発明の「像担持体上のトナー像を前記中間転写体の転写面に転写する一次転写手段」に相当する。
さらに、引用発明1の「前記中間転写ベルト5の内側であって、前記像担持体としての感光体ドラム1m?1kに対向するところに配置された一次転写ローラ6m?6k」、及び、「前記像担持体としての感光体ドラム1m?1k上に形成されたトナー像」を「前記中間転写ベルト5の表面に一次転写」するために「一次転写ローラ6m?6k」に「一次転写バイアス」を「印加」する「一次転写電源」からなる部分が、「前記像担持体としての感光体ドラム1m?1k上に形成されたトナー像」を「前記中間転写ベルト5の表面に一次転写」するために「一次転写ローラ6m?6k」に「一次転写バイアス」を「印加」する「一次転写電源」を有することが、本願発明の「前記一次転写手段が、前記転写面に対する裏面にバイアスを印加する一次転写バイアス印加手段を有する」ことに相当する。

(3)引用発明1の「記録材」は、本願発明の「転写材」に相当する。
したがって、引用発明1の「前記中間転写ベルト5の外側であって、支持ローラ5bに対向したところに配置された二次転写ローラ7」、及び、「前記中間転写ベルト5の表面に一次転写されたトナー像」を「前記記録材上に二次転写」するために「二次転写ローラ7」に「二次転写バイアス」を「印加」する「二次転写電源」からなる部分が、本願発明の「前記トナー像を前記中間転写体から転写材に転写する二次転写手段」に相当する。

(4)したがって、本願発明と引用発明1とは、

「像担持体と、中間転写体と、前記像担持体上のトナー像を前記中間転写体の転写面に転写する一次転写手段と、前記トナー像を前記中間転写体から転写材に転写する二次転写手段とを備え、前記一次転写手段が、前記転写面に対する裏面にバイアスを印加する一次転写バイアス印加手段を有する、間接転写方式の画像形成装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点〉
本願発明では、「中間転写体」として、「表面抵抗率を、電圧印加と接地除電を1000回繰り返す抵抗測定方法によって所定の条件1」、すなわち、「印加電圧v1は200V、印加時間t1は60秒、除電時間t2は10秒、繰り返し回数N1は1000回」「で測定したとき、1回目と1000回目の測定値の対数の差の絶対値が、0.5[log(Ω/□)]以下であるものを用いる」のに対し、引用発明1の「中間転写ベルト5」には、体積抵抗率について数値限定はあるものの、表面抵抗率について上記の限定がない点。

3 相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点についての判断
ア(ア)引用発明1の「中間転写ベルト5」と引用例2に記載された発明の「電子写真方式の中間転写ベルトに用いる高制電性シームレスベルト」とは、電子写真方式の中間転写ベルトである点で共通する。また、電子写真方式の中間転写ベルトの分野では、前記中間転写ベルトの寿命を長くして高品質な画像を長期に渡り維持するという課題は、本願出願時において当業者に周知の課題である(一例として、引用例2の上記記載事項(ク)(特に、段落【0004】)及び上記記載事項(ケ)(特に、段落【0021】)を参照。)
したがって、引用発明1の「中間転写ベルト5」として、引用例2に記載された転写電圧等の電気的負荷による経時での表面抵抗率の変動幅を小さな中間転写ベルトを採用することは、当業者にとって容易に想到し得る。
(イ)そして、本願の明細書の段落【0033】ないし【0044】の記載によれば、本願発明の「表面抵抗率を、電圧印加と接地除電を1000回繰り返す抵抗測定方法によって所定の条件1」、すなわち、「印加電圧v1は200V、印加時間t1は60秒、除電時間t2は10秒、繰り返し回数N1は1000回」「で測定したとき、1回目と1000回目の測定値の対数の差の絶対値が、0.5[log(Ω/□)]以下であるもの」という数値限定は、「10万枚目に得られた画像上での転写性ランクを数値評価した結果」に基づいて限定されたものである(特に、本願の明細書の段落【0036】、【0040】を参照。)。また、引用例2の上記記載事項(ケ)の段落【0021】には、「本発明の高制電性シームレスベルトによると、・・・(中略)・・・、電子写真方式の中間転写ベルト、転写搬送ベルト、転写定着ベルト等の画像形成装置用ベルトとして用いたときに、長期に渡り表面抵抗率等の初期の特性を保持することができ、当該画像形成装置は、高品質な画像を長期に渡り維持することができる。」と記載されている。
すると、引用例2に記載された「高品質な画像を長期に渡り維持する」目安として、「10万枚目に得られた画像上での転写性ランクを数値評価した結果」を採用し、それに伴って、引用例2に記載された転写電圧等の電気的負荷による経時での表面抵抗率の変動幅を小さな中間転写ベルトを採用する際、前記表面抵抗率の変動幅の上限を、「表面抵抗率を、電圧印加と接地除電を1000回繰り返す抵抗測定方法によって所定の条件1」、すなわち、「印加電圧v1は200V、印加時間t1は60秒、除電時間t2は10秒、繰り返し回数N1は1000回」「で測定したとき、1回目と1000回目の測定値の対数の差の絶対値が、0.5[log(Ω/□)]と設定することは、当業者が適宜設定し得る設計的事項である。
(ウ)したがって、引用発明1に上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。

イ また、平成19年9月26日付けの手続補正により補正された平成19年8月30日付けの審判請求書の請求の理由において、請求人は、「本願発明は、引用文献2、3では不必要に除外されている、上記のように実際には不具合は生じない中間転写体を使用することができる」と主張していることから、請求人の上記主張は、本願発明の「表面抵抗率を、電圧印加と接地除電を1000回繰り返す抵抗測定方法によって所定の条件1」、すなわち、「印加電圧v1は200V、印加時間t1は60秒、除電時間t2は10秒、繰り返し回数N1は1000回」「で測定したとき、1回目と1000回目の測定値の対数の差の絶対値が、0.5[log(Ω/□)]以下であるもの」に、引用例2に記載された転写電圧等の電気的負荷による経時での表面抵抗率の変動幅を小さな電子写真方式の中間転写部材に用いる高制電性シームレスベルトが含まれることを自ら認めたものである。
そして、上記第2の3(1)ア(ア)で述べたとおり、引用発明1の「中間転写ベルト5」として、引用例2に記載された転写電圧等の電気的負荷による経時での表面抵抗率の変動幅を小さな中間転写ベルトを採用することは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、引用発明1に上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)本願発明の進歩性の判断
以上検討したとおり、引用発明1に上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。
また、本願発明の効果も、引用例1,2に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明は引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1,2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-10 
結審通知日 2008-12-16 
審決日 2009-01-05 
出願番号 特願2003-42258(P2003-42258)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 一  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 山下 喜代治
日夏 貴史
発明の名称 画像形成装置  
代理人 樺山 亨  
代理人 本多 章悟  
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