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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1194237 |
審判番号 | 不服2007-1347 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-01-15 |
確定日 | 2009-03-12 |
事件の表示 | 特願2001-207049「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月14日出願公開、特開2003- 10505〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯等 本願は、平成13年6月28日に特許出願した特願2001-196833号の一部を平成13年7月6日に新たな特許出願としたものであって、平成18年6月26日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成18年8月31日付けで手続補正がされ、平成18年11月24日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成19年1月15日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年2月14日付けで手続補正がされたものである。 第2.平成19年2月14日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年2月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「複数の図柄が変動表示される図柄表示部と、所定の条件により当たり判定を行う当たり判定手段とを備え、当該当たり判定手段により当たりと判定されたときに、前記図柄表示部に所定図柄を表示して遊技者に有利な遊技状態を生ずる遊技機において、 遊技球1個当たりの貸出レートを選択する貸出レート選択手段と、 当該貸出レート選択手段により選択された貸出レートに応じて、遊技状態を制御する遊技状態制御手段とを備え、 前記遊技状態制御手段は、前記貸出レート選択手段により選択された遊技球1個当たりの貸出レートに応じて、同じ乱数テーブルを使用して、当たりとなる値の個数を異ならせて当たりの確率を変化させることを特徴とする遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。 上記補正は、補正前の「遊技媒体」を「遊技球」と限定し、補正前の「当たりの確率を変化させる」に「同じ乱数テーブルを使用して、当たりとなる値の個数を異ならせて」との限定を付加するものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用文献について 原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-218019号公報(公開日:平成12年8月8日)(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 ・記載事項1 「このパチンコ機2は、遊技盤面に設けられた遊技域4の中央上部に、様々な画像を表示する液晶表示装置6を備えており、その下方には遊技球を受け入れ易い状態に変化可能な、変動入賞装置8を備えている。始動入賞口10a?10cへ発射玉が入る(入賞する)と、液晶表示装置6に3桁の図柄が夫々表示される。これらの図柄は各桁0?9の数字、およびA、Bの計12種類からなり、全部で12×12×12=1728通りの表示態様がある。」(段落【0064】) ・記載事項2 「液晶表示装置6の下部には、図柄の変動表示中に、更に始動入賞口10a?10cへ発射玉が入賞すると、その入賞回数に応じた数(最大4個)だけ点灯する4個のLEDからなる始動記憶表示器12が設けられており、液晶表示装置6の変更表示制御が一旦終了したときに(表示する図柄の変化が停止したときに)、始動記憶表示器12を形成するLEDが点灯していれば、その点灯が1つ消されて、液晶表示装置6での図柄の変更表示が再度なされるようになっている。」(段落【0065】 ・記載事項3 「変動入賞装置8には、前面の中央上部に、ソレノイド(図示せず)によって開閉される開閉板28が設けられている。そして、液晶表示装置6に停止して表示された3桁の図柄が、すべて同じ(例えば「111」)になった時に、開閉板28が前方に開かれることにより、大入賞口30が形成される(いわゆる大当たり)。」(段落【0067】) ・記載事項4 「図4に戻る。貸玉単価は貸玉単価設定ボタン88により設定する。通常状態において貸玉単価は4円とされており、減少ボタン88aを押すことによりこれを0.5円ずつ下げ、最小2円まで下げることができる。増加ボタン88cを押すと、0.5円ずつ上げ、最大4円まで上げることができる。標準ボタン88bを押すと、貸玉単価が4円になる。」(段落【0080】) ・記載事項5 「図5に、制御装置74のブロック図を示す。制御装置74は、一般入賞口スイッチ58、大入賞口スイッチ60、貸玉単価設定ボタン88、玉貸ボタン90、預玉引出ボタン94、コンバートボタン96、及び精算ボタン98からの各検出信号を入力する入力回路102と、入力回路102を介して取得した各検出信号に基づいて各種プログラムを実行するCPU104と、CPU104により実行されるプログラムが格納されたROM106と、CPU104が処理するデータを一時記憶するRAM108と、第1表示部84、第2表示部86、景品カード記録部110、発射経路ソレノイド68等へ、夫々駆動信号を出力する出力回路112と、プリペイドカードから残金情報を読み取ったり書きこんだりするプリペイドカードリーダライタ114に対し制御信号やデータのやり取りをするプリペイドカードリーダライタコントローラ116と、会員カードから預玉数の読み取り・書き込み等を行なう会員カードリーダライタ118に対し制御信号やデータのやり取りをする会員カードリーダライタコントローラ120と、これら各部を接続するバス76とを備えている。」(段落【0084】) ・記載事項6 「貯玉という概念を仮想的に破棄し、景品玉または預玉にて景品を得ると解釈すれば、貸玉単価を変えることは、実質的に換金率を変えていると見なすこともできる。例えば、貸玉単価4円の遊技球38は、2.5円/個で換金され、貸玉単価2円の遊技球38は、1.25円/個と解釈できる。従って、資金が多く掛かってもよいから換金率の高い遊技をしたいと考える遊技者は、貸玉単価を4円にすればよい。」(段落【0105】) ・記載事項7 「前述のように貸玉単価を設定するのを止め、換金率を調整可能に構成してもよい(本発明の換金率設定手段を設けることに相当する)。・・・なお、換金率を設定可能な態様では、換金率に連動して貸玉単価が変動されるようにしてもよい。例えば、換金率として2.5円/個を選んだ遊技者は、貸玉単価は4円、換金率を3円/個とした遊技者は、貸玉単価は5円などとするとよい。また、貸玉単価を連動させるのではなく、パチンコ機の当たり確率が連動するようにしてもよい。例えば、換金率を2.5円/個にした場合は当たり確率は1/200、換金率を4円/個にした場合は当たり確率は1/320のように、換金率を上げるほど当たり確率が下がるようにするとよい。」(段落【0120】) 以上の記載事項1?7を含む全記載及び図示によれば、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。 「計12種類からなる図柄が変動表示される液晶表示装置6と、液晶表示装置6に停止して表示された3桁の図柄がすべて同じになった時に、開閉板28が前方に開かれることにより、大入賞口30が形成される(いわゆる大当たり)パチンコ機2において、 換金率を設定可能な態様で、換金率を上げるほどパチンコ機の当たり確率が下がるようにし、 入力回路102を介して取得した各検出信号に基づいて各種プログラムを実行するCPU104を含む制御装置74とを備えたパチンコ機2。」(以下、「引用発明」という。) 3.対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「計12種類からなる図柄」は本願補正発明の「複数の図柄」に相当し、以下同様に、「液晶表示装置6」は「図柄表示部」に、それぞれ相当する。また、引用発明の「パチンコ機2」は「遊技機」の1種類である。 そして、引用発明について、以下のことがいえる。 (1)「液晶表示装置6に停止して表示された3桁の図柄が、すべて同じになった時に、開閉板28が前方に開かれることにより、大入賞口30が形成される(いわゆる大当たり)パチンコ機2において」について パチンコ機において、所定の条件により当たり判定を行い、当たりと判定されたときに図柄表示部に所定図柄を表示することは、従来常套手法である。そして、引用発明においては「液晶表示装置6に停止して表示された3桁の図柄が、すべて同じになった時に」との記載に止まっているが、すべて同じ図柄を表示する前提として、上記常套手法が行われており、そのための手段があることは明らかであって、引用発明が「所定の条件により当たり判定を行う当たり判定手段を備え、当該当たり判定手段により当たりと判定されたときに、図柄表示部に所定図柄を表示」するとの構成を実質的に具備することは明らかである。 また、「開閉板28が前方に開かれることにより、大入賞口30が形成される(いわゆる大当たり)」が「遊技者に有利な遊技状況を生ずる」ことを意味していることは明らかである。 (2)「換金率を設定可能な態様で、換金率を上げるほどパチンコ機の当たり確率が下がるようにし、」について 「換金率を設定可能な態様」においては、「前述のように貸玉単価を設定するのを止め、換金率を調整可能に構成してもよい」(記載事項7)との記載からみて、貸玉単価を設定する際に「貸玉単価」が0.5円ずつ上下する(記載事項6)のと同じく、換金率を選択する構成をとるものと認められる。また、換金率は遊技球の単価すなわち1個当たりのレートである。 そうすると、貸出か換金かは別にして、遊技球の単価すなわち1個当たりのレートを選択している点およびそのための手段を有する点で、引用発明は本願補正発明と一致している。 (3)「入力回路102を介して取得した各検出信号に基づいて各種プログラムを実行するCPU104を含む制御装置74」について 「各種プログラムを実行するCPU104」との記載からみて、CPU104が「遊技状態を制御する遊技状態制御手段」に相当し、「遊技状態の制御」には「大当たりとするか否かの制御」が含まれることは明らかである。そうすると、引用発明は上記(2)のように換金率に応じてパチンコ機の当たり確率が変化するものであるから、その「遊技状態の制御」は「レートに応じて」されるものということができる。そうすると、貸出か換金かは別にして、「レート選択手段により選択された遊技球1個当たりのレートに応じて当たりの確率を変化させる」点で、引用発明は本願補正発明と一致している。 以上より、本願補正発明と引用発明は、 「複数の図柄が変動表示される図柄表示部と、所定の条件により当たり判定を行う当たり判定手段を備え、当該当たり判定手段により当たりと判定されたときに、図柄表示部に所定図柄を表示して遊技者に有利な遊技状況を生ずる遊技機において、 遊技球1個当たりのレートを選択するレート選択手段と、 レート選択手段により選択されたレートに応じて、遊技状態を制御する遊技状態制御手段とを備え、 遊技状態制御手段は、レート選択手段により選択された遊技球1個当たりのレートに応じて当たりの確率を変化させる遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 「レート」が、本願補正発明では「貸出レート」であるのに対して、引用発明では「換金率」である点。 <相違点2> 当たりの確率を変化させるのが、本願補正発明では「同じ乱数テーブルを使用して、当たりとなる値の個数を異ならせて」行われるのに対し、引用発明ではそのような構成を有するか不明である点。 4.判断 上記各相違点について検討する。 <相違点1>について 上記引用文献の段落0064?0112に記載されている「実施例」では、貸玉単価を選択的可能としているが、これは実質的に換金率を貸玉単価に連動して変えているとみなすことができる(上記記載事項6を参照)。この場合のパチンコ機の当たり確率については明記はないが、上記記載事項7の「なお、換金率を設定可能な態様では、換金率に連動して貸玉単価が変動されるようにしてもよい。・・・また、貸玉単価を連動させるのではなく、パチンコ機の当たり確率が連動するようにしてもよい。」との記載からみて、上記「実施例」の場合はパチンコ機の当たり確率は一定となっている(いわゆる「確率変動」は除く)ものと認められる。そうすると、上記「実施例」は、当たり確率を一定として、貸玉単価と換金率を連動させるものということができる。 一方、引用発明は、上記記載事項7の「貸玉単価を連動させるのではなく」との記載からみて貸玉単価は一定としており、一定の貸玉単価に対して選択可能な異なる換金率の間でバランスをとるために、当たり確率を換金率と連動させるものということができる。 以上を踏まえ、貸玉単価と換金率のいずれを設定可能とすることも引用文献に示されていることを考慮すると、換金率を一定のものとし、貸玉単価を設定可能として、当たり確率を貸玉単価と連動させることを想到することに当業者であれば何ら困難性はない。なお、この場合の連動は、貸玉単価を低くするほど当たり確率を低下させるものとなることは自明である。 したがって、引用発明において「換金率」に代えて「貸出レート」を採用し、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到したことである。 <相違点2>について 本願の発明の詳細な説明には乱数テーブルに関する説明がないため、本願補正発明における「同じ乱数テーブルを使用して」が意味する技術内容は不明確であるが、本願明細書の段落0035,0055の記載及び技術常識を参酌すると、「同じ乱数テーブルを使用して、当たりとなる値の個数を異ならせて」は「大当たり判定用乱数の取り得る範囲として同じ範囲を使用しつつ、当たりとなる値の個数を異ならせて」を意味していると解釈することが自然である。 一方、所定の数値の範囲をカウントする大当たり判定用カウンタにおける、始動入賞口へ遊技球が入賞したときの数値が当たりとなる値であるか否かによって当たりであるか否かを判定すること、その場合に大当たりカウンタがカウントを行う数値の範囲を変更せずに当たりとなる数値の個数を異ならせて当たり確率を変更することは、パチンコ機において慣用手段(例として、特開平10-118299号公報、特開2000-233052号公報参照)である。そして、このように当たりか否かを判定することを、遊技機においては「乱数抽選」ということが普通である。 そうすると、引用発明において、当たりの確率を変化させる手段として上記慣用手段を採用し、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者にとって容易に想到したことである。 そして、本願補正発明の効果は、引用発明、上記慣用技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、上記慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明の認定 平成19年2月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年8月31日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「複数の図柄が変動表示される図柄表示部と、所定の条件により当たり判定を行う当たり判定手段とを備え、当該当たり判定手段により当たりと判定されたときに、前記図柄表示部に所定図柄を表示して遊技者に有利な遊技状態を生ずる遊技機において、 遊技媒体1個当たりの貸出レートを選択する貸出レート選択手段と、 当該貸出レート選択手段により選択された貸出レートに応じて、遊技状態を制御する遊技状態制御手段とを備え、 前記遊技状態制御手段は、前記貸出レート選択手段により選択された遊技媒体1個当たりの貸出レートに応じて、当たりの確率を変化させることを特徴とする遊技機。」 2.本願発明の進歩性の判断 (1)引用文献 拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から「同じ乱数テーブルを使用して、当たりとなる値の個数を異ならせて」との構成を省き、「遊技媒体」を「遊技球」とした限定を戻したものである。 そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用発明、上記慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-08 |
結審通知日 | 2009-01-13 |
審決日 | 2009-01-26 |
出願番号 | 特願2001-207049(P2001-207049) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 太田 恒明 |
特許庁審判長 |
伊藤 陽 |
特許庁審判官 |
有家 秀郎 川島 陵司 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 山本 尚 |