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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H02H
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H02H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02H
管理番号 1194248
審判番号 不服2007-8959  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-29 
確定日 2009-03-12 
事件の表示 特願2006-252514「負荷回路保護装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月21日出願公開、特開2006-345699〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年6月30日に出願した特願平7-166266号の一部を平成18年9月19日に新たな特許出願としたものであって、平成19年2月21日付けで拒絶査定がなされ、同年3月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に、同年4月27日に手続補正がなされたものである。

2.平成19年4月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「母線に接続された電力線と、
前記電力線を介して給電される負荷と、
前記電力線に挿入されたコンタクタと、
前記電力線から電流情報を検出する電流検出手段と、
前記電流情報の異常検出時に前記コンタクタをトリップする負荷回路保護手段と、
前記電力線に挿入されて前記負荷回路保護手段に電源を供給するとともに、前記コンタクタの開閉状態を提示するための電源トランスと、
前記電流情報の異常検出時に前記コンタクタをトリップする負荷回路開閉器と
を備え、
前記負荷回路保護手段は、
前記電流情報を含む制御情報の記憶および制御を行う演算記憶手段と、
前記コンタクタの開閉状態を入力情報とする入力手段と、
前記電流情報に対応した第1の電圧信号を発生する電圧発生要素と、
前記演算記憶手段の指示に基づき前記電流情報に対応した第2の電圧信号を発生する電圧発生手段と、
前記第1の電圧信号および前記第2の電圧信号を増幅する増幅手段と、
前記第2の電圧信号を前記増幅手段に入力するためのスイッチ手段と、
前記コンタクタを開閉制御するための出力手段と
を有し、
前記演算記憶手段は、
前記電流情報と前記入力情報と前記増幅手段を介した前記第1の電圧信号とに基づいて前記電圧発生手段および前記出力手段を制御するとともに、
前記コンタクタの開放時に、前記スイッチ手段をONさせることにより、前記第2の電圧信号を前記増幅手段に入力して前記第2の電圧信号を取り込み、前記コンタクタをトリップするまでの時間に基づいて保護機能を診断することを特徴とする負荷回路保護装置。」
とする補正を含むものである。

(2)補正の内容
上記本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「負荷回路開閉器」について、「電源トランスよりも母線側に位置するように電力線に挿入された」負荷回路開閉器と限定されていたものを、「電流情報の異常検出時に前記コンタクタをトリップする」負荷回路開閉器とする補正(以下、「補正事項」という。)を含むものである。

(3)補正の目的についての検討
上記補正事項により、「負荷回路開閉器」が備えていた「電源トランスよりも母線側に位置するように電力線に挿入された」との構成は、削除されたものと認められる。
なお、「電源トランスよりも母線側に位置するように電力線に挿入された」との構成は、原審における平成18年11月17日付けの拒絶理由に対する平成19年1月22日付けの手続補正書で追加されたものであり、同日付けの意見書の「(3)」において本願発明と引用文献に記載のものとの対比に関し以下の主張を行っている。
「すなわち、請求項1、4、9、14では、たとえば図1に示すように、配線用遮断器(負荷回路開閉器2)の「負荷側」に操作用変圧器(電源トランス7)が配置された状態で点検可能に構成されていますが、引用文献1(図1)では、配線用遮断器24の「電源側」に操作用変圧器28が配置されています。したがって、本願発明と引用文献1とでは、基本構成が異なります。なお、一般に、監視センターでは、配線用遮断器の負荷側にすべての配線を設けることによって、負荷の保護を行うようになっており、引用文献1のように電源側に設けることはありません。」
してみると、上記補正事項は、引用文献に記載されたものとは基本構成が異なり、かつ、本願発明の特徴であるとされていた負荷回路開閉器の限定構成を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも、誤記の訂正を目的とするものとも、また明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められない。

(4)新規事項か否かについての検討
上記補正事項について、その補正事項が、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものか否か、検討する。
当初明細書等には負荷回路開閉器について、以下の記載がある。
・「 【0005】
負荷回路開閉器2は、入力端が母線1の各相に接続され、負荷回路10に対する電力供給を開閉する。コンタクタ3は、入力端が負荷回路開閉器2の出力端(負荷)側に接続され、負荷回路10を開閉制御する。電動機等の負荷4は、コンタクタ3の出力端に接続されて三相電力が供給される。
【0006】
変流器5は、負荷回路開閉器2とコンタクタ3との間に設けられ、負荷4に向けて負荷回路10内に流れる電流を検出して三相全波電圧に変換する。零相変流器6は、変流器5とコンタクタ3との間に設けられ、負荷回路10の零相電流(三相電流が平衡しているときには零となる)を検出する。
【0007】
電源トランス7は、負荷回路開閉器2の出力端のR相およびS相間に一次巻線が接続されている。外部情報入力用のスイッチ8は、電源トランス7の二次巻線に関連して設けられており、外部トランス7の二次側を制御電源としてデジタル信号を出力する。外部トランス7の二次側から提供される制御電源は、負荷回路保護手段11に対する各種の外部電源として用いられる。
スイッチ8は、たとえば、コンタクタ3と連動してコンタクタ3の開閉状態を示すデジタル信号を出力する。」
・「【0010】
次に、図12に示した従来の負荷回路保護装置の機能診断動作について説明する。
たとえば、負荷回路10に組み込まれた負荷回路保護手段9の動作特性を診断する場合、まず、負荷回路開閉器2を開路して負荷回路10を停止させる。
続いて、負荷回路保護手段9に接続されたライン、すなわち、変流器5との接続線、零相変流器6との接続線、電源トランス7との接続線、および、入出力線等の全てのラインを外し、負荷回路保護手段9を単品の状態にする。」
・「【0014】
従来の負荷回路保護装置は以上のように、負荷回路保護手段9の動作特性を診断する場合に、負荷回路開閉器2を開路して負荷回路10を停止させた後、負荷回路保護手段9の接続線を全て外し、負荷回路保護手段9を単品状態として、保護要素に応じた信号入力からの動作時間を測定する必要があるため、保守作業員による多大な労力を必要とするという課題があった。」
・「【0055】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1では、負荷回路開閉器2およびコンタクタ3を介して、母線1からの三相交流電力を負荷4に直接供給するように構成した非インバータ系を例にとって説明したが、負荷回路開閉器2の後段に可変周波数のインバータ(図示せず)を挿入したインバータ系の負荷回路10に対しても適用することができる。」
一方、負荷回路開閉器に関し、図1には負荷回路開閉器を母線とコンタクタの間に変流器及び電源トランスと共に配線されていることが示されているが、負荷回路開閉器がトリップする機能を持っていることは何ら示されていない。
そうすると、当初明細書等には、「負荷回路開閉器2は、入力端が母線1の各相に接続され、負荷回路10に対する電力供給を開閉する。」ものであることが【0005】に記載されており、従来の負荷回路保護装置の機能診断動作では、「負荷回路10に組み込まれた負荷回路保護手段9の動作特性を診断する場合、まず、負荷回路開閉器2を開路して負荷回路10を停止させる。」ことが【0010】に記載されているが、「電流情報の異常検出時に前記コンタクタをトリップする」負荷回路開閉器については、何ら記載されておらず、示唆もされていないといえる。また、図1の回路構成では、コンタクタと接続されるのは負荷回路保護手段であり、【0018】にも電流情報の異常時にコンタクタをトリップするのは負荷回路保護手段であることが明記されており、負荷回路開閉器が電流情報の異常検出時にコンタクタをトリップすると解することは困難である。

(5)むすび
以上のとおり、上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも、誤記の訂正を目的とするものとも、また明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められないから平成6年法律第116号改正付則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反する。さらに、上記補正事項は、当初明細書等に記載されておらず、また、当初明細書等に記載された事項から自明のものでもないから、当該補正事項を含む本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではないので、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第2項において準用する同法17条第2項の規定に違反する。
したがって、上記補正事項は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年1月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「母線に接続された電力線と、
前記電力線を介して給電される負荷と、
前記電力線に挿入されたコンタクタと、
前記電力線から電流情報を検出する電流検出手段と、
前記電流情報の異常検出時に前記コンタクタをトリップする負荷回路保護手段と、
前記電力線に挿入されて前記負荷回路保護手段に電源を供給するとともに、前記コンタクタの開閉状態を提示するための電源トランスと、
電源トランスよりも前記母線側に位置するように前記電力線に挿入された負荷回路開閉器と
を備え、
前記負荷回路保護手段は、
前記コンタクタの開閉状態を入力情報とする入力手段と、
前記電流情報の異常値に対応した電圧信号を発生する電圧発生手段と、
前記電圧信号を増幅する増幅手段と、
前記電圧信号を前記増幅手段に入力するためのスイッチ手段と、
前記コンタクタを開閉制御するための出力手段と、
前記電流情報と前記入力情報と前記増幅手段を介した電圧信号とに基づいて前記電圧発生手段および前記出力手段を制御する演算記憶手段と
を有し、
前記演算記憶手段は、前記コンタクタの開放時に、前記スイッチ手段をONさせることにより、前記電圧信号を前記増幅手段に入力して前記電圧信号を取り込み、前記コンタクタをトリップするまでの時間に基づいて保護機能を診断することを特徴とする負荷回路保護装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-94050号公報(以下、「引用例1」という。)、同じく引用された特開平6-333487号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ図面と共に以下の事項が記載されている。

(1-1)引用例1
・「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、負荷の開閉などを行うための主回路器具の他に、負荷の操作のための操作装置を備えた負荷制御装置に関する。」

・「【0018】【実施例】以下、本発明をコントロールセンタに適用した一実施例について図1ないし図3を参照しながら説明する。まず、第1実施例について図1及び図2を参照しながら説明する。
【0019】即ち、図1には、コントロールセンタの1ユニット分の回路構成が示されている。この図1において、三相の電源母線21と負荷である電動機22との間には、主回路23が形成されており、この主回路23には、夫々主回路器具である配線用遮断器24、電磁接触器25、主回路電流に応じた電圧信号を発生する検出用の電流変換器26及び地絡電流検出用の零相変流器27が設けられている。また、主回路23における配線用遮断器24の電源母線21側には、操作用変圧器28の一次側が接続されており、この変圧器28の二次側には制御母線29a,29bが接続されている。
【0020】上記制御母線29a,29bから直流電源回路29を介して給電される制御部30は、マイクロコンピュータから成る論理演算回路31を中心に構成されている。この論理演算回路31は、夫々操作装置である始動用操作スイッチ32、停止用操作スイッチ33からの各オン信号、並びに電磁接触器25が有する常開形補助接点25aからのオン信号及びオフ信号を入力回路34を介して受け、且つ電流変換器26及び零相変流器27からの各信号をA-D変換回路35を介して受けて、出力回路36を介して電磁接触器25の動作用コイル25bを通断電制御するようになっている。またこの論理演算回路31は、表示部39による後述のような表示内容の制御も行うようになっている。
【0021】記憶回路37には、過負荷、欠相、不足電流、地絡などの保護動作並びに瞬時停電再始動、限時再始動などの制御動作を実行するための制御プログラム及び機能データが記憶されており、論理制御回路31は、上記制御プログラム、機能データ及び前記入力信号に基づいた保護動作並びに制御動作を実行する。設定回路38は、記憶回路37に記憶する上記機能データをコントロールセンタの設置現場において所望に設定、選択できるように図示しない多数の選択スイッチなどにより構成されている。
【0022】検出回路40は、始動用操作スイッチ32,停止用操作スイッチ33からのオン信号及びオフ信号を入力回路34を介して取り込むようになっており、それらの信号に基づいて、図2に示すような状態信号Scを出力する。即ち、この状態信号Scは、ハイレベルの状態が電磁接触器25の通電指令を示し、ローレベルの状態が電磁接触器25の断電指令を示す信号となっている。
【0023】判定回路41は、上記状態信号Scの立ち上がり及び立ち下がりに同期した信号を発生するものであり、この同期信号を負荷の運転・停止の判定結果を示す信号として直流電源回路29に与える。直流電源回路29は、判定回路41からの立ち下がり同期信号に基づいて制御部30内の判定手段としての入力回路34、検出回路40及び判定回路41を除き、少なくとも表示部39への制御電源を通電及び断電するようになっている。
【0024】従って負荷22が停止指令で停止となったときは、直流電源回路29から表示部39への制御電源が断電されるので、制御部30の電力消費を抑えることができ、しかも使用している電子部品の発熱が抑制されて電子部品の経年劣化を抑えることができる。
【0025】この場合、制御部30の電力消費の抑制のみならず、制御部30の各部との導通を確認することもできる。即ち、検出回路40から電磁接触器25の断電指令を示すローレベルの信号が出ている間、判定回路41が状態信号Scの立ち上がり同期信号を定期的に直流電源回路29に与えると共に論理演算回路31にも与えるようにする。論理演算回路31は一方で入力回路34を介して信号を取り込んでおり、この信号が電磁接触器25の通電指令を示していない場合には、判定回路41からの定期的な信号に基づき論理演算回路31は制御部30の各部との導通を確認し、異常が有れば表示部39に信号を送り警報表示を行なう。異常が無ければ判定回路41に信号を送る。判定回路41は、この異常無しの信号に基づき立ち下がり同期信号を直流電源回路29に与え、直流電源回路29は少なくとも表示部39への制御電源を断電する。」

・図1には、変圧器より負荷側に位置するように主回路に配線用遮断器を設ける点が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「電源母線に接続された主回路と、
前記主回路を介して給電される負荷と、
前記主回路に設けられた電磁接触器と、
前記主回路の主回路電流を検出する電流変換器と、
前記主回路電流が過負荷であれば前記電磁接触器を断電指令する制御部と、
前記主回路に設けられて前記制御部に給電するとともに、前記電磁接触器が有する接点からのオン信号及びオフ信号を制御部が受けるための変圧器と、
変圧器よりも前記負荷側に位置するように前記主回路に設けられた配線用遮断器と、
を備え、
前記制御部は、
前記電磁接触器の通電及び断電の状態をオン信号及びオフ信号として入力する入力回路と、
前記電磁接触器を通断電制御するための出力回路と、
前記主回路電流と前記オン信号及びオフ信号とに基づいて前記出力回路を制御する論理演算回路とを有し、
前記論理演算回路は、前記電磁接触器が断電の場合に、制御部の各部との導通を確認する、負荷制御装置。」

(1-2)引用例2
・「【0018】次に、本発明の動作を図1を参照して説明する。通常運転時において、電流切換スイッチ16は、電流入力端子3側に切り換えられており、補助変流器11には保護電路1からの検出電流が供給され、これにより制御回路14は保護電路1の過電流を監視することになる。
【0019】一方、特性試験を実施する場合、まず、試験装置40の試験電流出力端子41およびタイマストップ端子42を、過電流保護継電器10の試験電流入力端子5および動作出力端子4にそれぞれ接続しておき、信号入力切換スイッチ16を試験電流入力端子5側に切り換える。これにより、保護電路1側が切り離されるとともに、試験電流入力端子5側、すなわち試験装置出力が補助変流器11に接続される。なお、この場合、変流器2に接続されている電流入力端子3は、信号入力切換スイッチ16により短絡される。
【0020】次に、前述と同様に、試験装置40において所定の試験電流を設定し、試験を開始する。ここで、補助変流器11において、試験電流入力端子5側の巻線数は、保護電路1側巻線のn倍としているため、補助変流器11では通常の保護電路1からの検出電流の1/nの試験電流で同等の出力が得られる。従って、試験装置40に設定される試験電流値は、通常動作時の1/nの電流値でよい。
【0021】試験開始に応じて、試験装置40から試験電流が供給され、これが補助変流器11で検出され、増幅回路12およびA/D変換回路13を介して制御回路14に入力される。この入力信号に応じた演算処理結果に基づき、制御回路14は動作接点15を動作させ、これにより試験装置40の内部タイマがストップして、過電流保護継電器10の動作時間が測定され、異常の有無が判断される。」


(2)対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)後者の「電源母線」が前者の「母線」に相当し、同様に、
「主回路」が「電力線」に相当する。

(イ)後者の「主回路に設けられた」が前者の「電力線に挿入された」に相当し、同様に、
「電磁接触器」が「コンタクタ」に相当する。

(ウ)後者の「主回路の主回路電流を検出する電流変換器」が前者の「電力線から電流情報を検出する電流検出手段」に相当する。

(エ)後者の「主回路電流が過負荷であれば」が前者の「電流情報の異常検出時」に相当し、以下同様に、
「断電指令する」が「トリップする」に、
「制御部」が「負荷回路保護手段」に、それぞれ相当する。

(オ)後者の「給電」が前者の「電源を供給」に相当し、以下同様に、
「電磁接触器が有する接点からのオン信号及びオフ信号を制御部が受ける」が「コンタクタの開閉状態を提示する」に、
「変圧器」が「電源トランス」に、それぞれ相当する。

(カ)後者の「変圧器よりも負荷側に位置する」と前者の「電源トランスよりも電源側に位置する」とは、「電源トランスよりも所定側に位置する」なる概念で共通し、
後者の「主回路に設けられた配線用遮断器」が前者の「電力線に挿入された負荷回路開閉器」に相当することから、
後者の「変圧器よりも負荷側に位置するように主回路に設けられた配線用遮断器」と
前者の「電源トランスよりも母線側に位置するように電力線に挿入された負荷回路開閉器」とは、
「電源トランスよりも所定側に位置するように電力線に挿入された負荷回路開閉器」なる概念で共通する。

(キ)後者の「電磁接触器の通電及び断電の状態をオン信号及びオフ信号として入力する」が前者の「コンタクタの開閉状態を入力情報とする」に相当し、同様に、
「入力回路」が「入力手段」に相当する。

(ク)後者の「電磁接触器を通断電制御する」が前者の「コンタクタを開閉制御する」に相当し、同様に、
「出力回路」が「出力手段」に、相当することから、
後者の「電磁接触器を通断電制御するための出力回路と」と
前者の「電流情報の異常値に対応した電圧信号を発生する電圧発生手段と、前記電圧信号を増幅する増幅手段と、前記電圧信号を前記増幅手段に入力するためのスイッチ手段と、コンタクタを開閉制御するための出力手段と」とは、
「コンタクタを開閉制御するための出力手段と」なる概念で共通する。

(ケ)後者の「論理演算回路」も演算を行うものであることから前者の「演算記憶手段」とは、「演算手段」なる概念で共通することから、
後者の「主回路電流とオン信号及びオフ信号とに基づいて出力回路を制御する論理演算回路とを有し」と
前者の「電流情報と入力情報と増幅手段を介した電圧信号とに基づいて電圧発生手段および出力手段を制御する演算記憶手段とを有し」とは、
「電流情報と入力情報とに基づいて出力手段を制御する演算手段とを有し」なる概念で共通する。

(コ)後者の「制御部の各部との導通を確認する」と前者の「コンタクタをトリップするまでの時間に基づいて保護機能を診断する」とは、「保護機能を診断する」なる概念で共通し、
後者の「電磁接触器が断電の場合」が前者の「コンタクタの開放時」に相当することから、
後者の「論理演算回路は、電磁接触器が断電の場合に、制御部の各部との導通を確認する」と
前者の「演算記憶手段は、コンタクタの開放時に、スイッチ手段をONさせることにより、電圧信号を増幅手段に入力して前記電圧信号を取り込み、前記コンタクタをトリップするまでの時間に基づいて保護機能を診断する」とは、
「演算手段は、コンタクタの開放時に、保護機能を診断する」なる概念で共通する。

(サ)後者の「負荷制御装置」が前者の「負荷回路保護装置」に相当する。

したがって、両者は、
「母線に接続された電力線と、
前記電力線を介して給電される負荷と、
前記電力線に挿入されたコンタクタと、
前記電力線から電流情報を検出する電流検出手段と、
前記電流情報の異常検出時に前記コンタクタをトリップする負荷回路保護手段と、
前記電力線に挿入されて前記負荷回路保護手段に電源を供給するとともに、前記コンタクタの開閉状態を提示するための電源トランスと、
電源トランスよりも所定側に位置するように前記電力線に挿入された負荷回路開閉器と、
を備え、
前記負荷回路保護手段は、
前記コンタクタの開閉状態を入力情報とする入力手段と、
前記コンタクタを開閉制御するための出力手段と、
前記電流情報と前記入力情報とに基づいて前記出力手段を制御する演算手段とを有し、
前記演算手段は、前記コンタクタの開放時に、保護機能を診断する、負荷回路保護装置。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
負荷回路開閉器の位置に関し、本願発明では電源トランスよりも「母線」側に位置するのに対し、引用発明では電源トランスよりも「負荷」側に位置するとしている点。

[相違点2]
負荷回路保護手段に関し、本願発明では「電流情報の異常値に対応した電圧信号を発生する電圧発生手段と、前記電圧信号を増幅する増幅手段と、前記電圧信号を前記増幅手段に入力するためのスイッチ手段と」、前記電流情報と入力情報と「前記増幅手段を介した電圧信号」とに基づいて「前記電圧発生手段および」出力手段を制御する演算「記憶」手段とを有し、演算「記憶」手段は、「前記スイッチ手段をONさせることにより、前記電圧信号を前記増幅手段に入力して前記電圧信号を取り込み、コンタクタをトリップするまでの時間に基づいて」保護機能を診断するのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。

(3)判断
[相違点1]について
例えば、特開平5-28338号公報に開示されているように、電源トランス(変圧器)よりも母線側(電源母線)に位置するように電力線(主回路)に挿入された負荷回路開閉器(配線用遮断器)を備えた点は周知慣用技術にすぎない。
そうすると、引用発明に上記周知慣用技術を適用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

[相違点2]について
例えば、引用例2には、電流情報の異常値に対応した信号(試験電流)を発生する発生手段(補助変流器)と、信号を増幅する増幅手段(増幅回路)と、信号を増幅手段に入力するためのスイッチ手段(信号切替スイッチ)と、電流情報と入力情報と増幅手段を介した電圧信号とに基づいて電圧発生手段および出力手段を制御する演算記憶手段とを有し、演算手段は、スイッチ手段をONさせる(信号切替スイッチを試験電流入力端子側に切り換える)ことにより、信号を増幅手段に入力して信号を取り込み、コンタクタをトリップするまでの時間に基づいて保護機能を診断する(過電流保護継電器の動作時間が測定され異常の有無が判断される)点が開示されている。
そして、引用発明及び引用例2に記載の発明は共に過電流からの保護回路において診断を行うためのものであり、過電流からの保護回路においてコンタクタの動作確認を行うことは当然に要求されるべき事項にすぎないことを踏まえれば、引用発明において、上記の引用例2記載の時間に基づいて診断する手段を採用することに格別の技術的困難性は見当たらない。
さらに、一般的な制御回路において信号を電圧で検出・増幅し制御に使用する点、演算装置が記憶手段を備える点は通常採用される程度の任意設計事項にすぎない。
そうすると、引用発明において時間に基づいて診断する手段を採用した場合において、上記任意設計事項を考慮することにより、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明、引用例2に記載の発明、及び、上記周知慣用技術に基いて,当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載の発明、及び、上記周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

(4)むすび
以上のとおりであって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-26 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-29 
出願番号 特願2006-252514(P2006-252514)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H02H)
P 1 8・ 121- Z (H02H)
P 1 8・ 561- Z (H02H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 誠治  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 大河原 裕
米山 毅
発明の名称 負荷回路保護装置  
代理人 大宅 一宏  
代理人 上田 俊一  
代理人 曾我 道治  
代理人 梶並 順  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 古川 秀利  

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