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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1194852
審判番号 不服2006-24916  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-02 
確定日 2009-03-26 
事件の表示 特願2006- 36416「ディスク状記録媒体、データ生成方法および装置、並びに再生方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月25日出願公開、特開2006-134575〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判の請求に係る特許出願(以下「本願」という。)は、平成7年6月2日に出願した特願平7-136329号の一部を新たな特許出願とした特願2003-312127号の一部を平成18年2月14日にさらに新たな特許出願としたものであって、平成18年7月19日付け拒絶理由通知に対して、平成18年9月19日付けで手続補正がなされたが、平成18年9月29日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、平成18年11月2日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年12月4日付けで手続補正がなされた。
そして、当審において、平成20年9月24日付けで前置報告書の内容を利用した審尋がなされ、平成20年11月25日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成18年12月4日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年12月4日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
1.手続補正の内容
平成18年12月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び明細書についてするもので、特許請求の範囲については、本件補正前に
「 【請求項1】
アドレス情報を示す予め物理的に形成されているアドレスエリアと、データが配置されるデータエリアとからなるセクタを単位として記録されるディスク状記録媒体であって、
記録データと、その記録データを記録する前記セクタの前記アドレスエリアで示される前記アドレス情報とを含んでいる第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロックに含まれる一部、かつ、前記第2のデータブロックを記録方向および記録方向と垂直の方向に分割した複数の前記ブロックの各々に対して、同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが前記セクタ単位で前記データエリアに記録されるとともに、
ゾーンCAV方式またはCLV方式である前記データの記録方式に応じて、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式で前記データが記録されていることを示す識別コードが記録され、
前記第2のデータブロックの単位は、前記セクタ単位よりも大きなデータの単位である
ディスク状記録媒体。
【請求項2】
前記識別コードは、トラックの最内周または最外周に設けられたコントロールトラックに記録される
請求項1のディスク状記録媒体。
【請求項3】
前記誤り訂正符号は、少なくとも第1の符号と第2の符号とを含み、
前記第1の符号は、前記第2のデータブロックにおける1つのセクタ内で完結するように付加されている
請求項1のディスク状記録媒体。
【請求項4】
ディスク状記録媒体に記録するデータを生成するデータ生成方法において、
記録データと、その記録データを記録するセクタのアドレス情報を含んでいる第1のデータブロックを形成し、
前記第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロックを形成し、
前記第2のデータブロックを記録方向および記録方向と垂直の方向に分割して複数のブロックを形成し、
前記第2のデータブロックに含まれる一部、かつ、複数の前記ブロックの各々に対して、同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが、前記セクタ単位になるように前記データを生成するとともに、
ゾーンCAV方式またはCLV方式である、生成した前記データの前記ディスク状記録媒体への記録方式に応じて、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式で前記データが記録されていることを示す識別コードを生成し、
前記第2のデータブロックの単位は、前記セクタ単位よりも大きなデータの単位である
データ生成方法。
【請求項5】
ディスク状記録媒体に記録するデータを生成するデータ生成装置において、
記録データと、その記録データを記録するセクタのアドレス情報を含んでいる第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロックに含まれる一部、かつ、前記第2のデータブロックを記録方向および記録方向と垂直の方向に分割した複数のブロックの各々に対して、同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが、前記セクタ単位になるように前記データを生成する第1の生成手段と、
ゾーンCAV方式またはCLV方式である、生成した前記データの前記ディスク状記録媒体への記録方式に応じて、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式で前記データが記録されていることを示す識別コードを生成する第2の生成手段と
を備え、
前記第2のデータブロックの単位は、前記セクタ単位よりも大きなデータの単位である
データ生成装置。
【請求項6】
記録データと、その記録データを記録するセクタのアドレス情報を含んでいる第1のデータブロックを形成し、前記第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロックを形成し、前記第2のデータブロックを記録方向および記録方向と垂直の方向に分割して複数のブロックを形成し、前記第2のデータブロックに含まれる一部、かつ、複数の前記ブロックの各々に対して、同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが前記セクタ単位で記録されるとともに、ゾーンCAV方式またはCLV方式である前記データの記録方式に応じて、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式で前記データが記録されていることを示す識別コードが記録され、前記第2のデータブロックの単位が前記セクタ単位よりも大きなデータの単位となるディスク状記録媒体から前記識別コードを読み取り、
読み取った前記識別コードに応じた前記記録方式に基づいて、前記データの再生モードを、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式に切り替え、
切り替えた前記再生モードに基づいて、スピンドルサーボを切り替えることにより、複数の前記セクタを読み出し、
読み出した複数の前記セクタのそれぞれに含まれている複数の前記フレームを、前記フレームに付加されている前記同期信号に基づいて読み出し、
読み出した複数の前記フレームから前記第2のデータブロックを生成し、
生成した前記第2のデータブロックに対して、前記誤り訂正符号を用いた誤り訂正処理を行って、前記第1のデータブロックを取得し、
取得した前記第1のデータブロックに対して、誤り検出処理を行うとともに、前記第1のデータブロックから、少なくとも前記記録データと前記アドレス情報を読み出す
再生方法。
【請求項7】
記録データと、その記録データを記録するセクタのアドレス情報を含んでいる第1のデータブロックを形成し、前記第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロックを形成し、前記第2のデータブロックを記録方向および記録方向と垂直の方向に分割して複数のブロックを形成し、前記第2のデータブロックに含まれる一部、かつ、複数の前記ブロックの各々に対して、同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが前記セクタ単位で記録されるとともに、ゾーンCAV方式またはCLV方式である前記データの記録方式に応じて、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式で前記データが記録されていることを示す識別コードが記録され、前記第2のデータブロックの単位が前記セクタ単位よりも大きなデータの単位となるディスク状記録媒体から前記識別コードを読み取る読み取り手段と、
読み取った前記識別コードに応じた前記記録方式に基づいて、前記データの再生モードを、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式に切り替える切り替え手段と、
切り替えた前記再生モードに基づいて、スピンドルサーボを切り替えることにより、複数の前記セクタを読み出し、読み出した複数の前記セクタのそれぞれに含まれている複数の前記フレームを、前記フレームに付加されている前記同期信号に基づいて読み出し、読み出した複数の前記フレームから前記第2のデータブロックを生成する生成手段と、
生成した前記第2のデータブロックに対して、前記誤り訂正符号を用いた誤り訂正処理を行って、前記第1のデータブロックを取得する取得手段と、
取得した前記第1のデータブロックに対して、誤り検出処理を行うとともに、前記第1のデータブロックから、少なくとも前記記録データと前記アドレス情報を読み出す読み出し手段と
を備える再生装置。」

とあったものを、

「 【請求項1】
アドレス情報を示す予め物理的に形成されているアドレスエリアと、データが配置されるデータエリアとからなるセクタを単位として記録されるディスク状記録媒体であって、 記録データと、その記録データを記録する前記セクタの前記アドレスエリアで示される前記アドレス情報とを含んでいる第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロックに含まれる一部、かつ、前記第2のデータブロックを記録方向および記録方向と垂直の方向に分割した複数の前記ブロックの各々に対して、同じビット数の同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが前記セクタ単位で前記データエリアに記録されるとともに、
ゾーンCAV方式またはCLV方式である前記データの記録方式に応じて、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式で前記データが記録されていることを示す識別コードが記録され、
前記第2のデータブロックの単位は、前記セクタ単位よりも大きなデータの単位である
ディスク状記録媒体。
【請求項2】
前記識別コードは、トラックの最内周または最外周に設けられたコントロールトラックに記録される
請求項1のディスク状記録媒体。
【請求項3】
前記誤り訂正符号は、少なくとも第1の符号と第2の符号とを含み、
前記第1の符号は、前記第2のデータブロックにおける1つのセクタ内で完結するように付加されている
請求項1のディスク状記録媒体。
【請求項4】
ディスク状記録媒体に記録するデータを生成するデータ生成方法において、
記録データと、その記録データを記録するセクタのアドレス情報を含んでいる第1のデータブロックを形成し、
前記第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロックを形成し、
前記第2のデータブロックを記録方向および記録方向と垂直の方向に分割して複数のブロックを形成し、
前記第2のデータブロックに含まれる一部、かつ、複数の前記ブロックの各々に対して、同じビット数の同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが、前記セクタ単位になるように前記データを生成するとともに、
ゾーンCAV方式またはCLV方式である、生成した前記データの前記ディスク状記録媒体への記録方式に応じて、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式で前記データが記録されていることを示す識別コードを生成し、
前記第2のデータブロックの単位は、前記セクタ単位よりも大きなデータの単位である
データ生成方法。
【請求項5】
ディスク状記録媒体に記録するデータを生成するデータ生成装置において、
記録データと、その記録データを記録するセクタのアドレス情報を含んでいる第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロックに含まれる一部、かつ、前記第2のデータブロックを記録方向および記録方向と垂直の方向に分割した複数のブロックの各々に対して、同じビット数の同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが、前記セクタ単位になるように前記データを生成する第1の生成手段と、
ゾーンCAV方式またはCLV方式である、生成した前記データの前記ディスク状記録媒体への記録方式に応じて、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式で前記データが記録されていることを示す識別コードを生成する第2の生成手段と
を備え、
前記第2のデータブロックの単位は、前記セクタ単位よりも大きなデータの単位である
データ生成装置。
【請求項6】
記録データと、その記録データを記録するセクタのアドレス情報を含んでいる第1のデータブロックを形成し、前記第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロックを形成し、前記第2のデータブロックを記録方向および記録方向と垂直の方向に分割して複数のブロックを形成し、前記第2のデータブロックに含まれる一部、かつ、複数の前記ブロックの各々に対して、同じビット数の同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが前記セクタ単位で記録されるとともに、ゾーンCAV方式またはCLV方式である前記データの記録方式に応じて、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式で前記データが記録されていることを示す識別コードが記録され、前記第2のデータブロックの単位が前記セクタ単位よりも大きなデータの単位となるディスク状記録媒体から前記識別コードを読み取り、
読み取った前記識別コードに応じた前記記録方式に基づいて、前記データの再生モードを、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式に切り替え、
切り替えた前記再生モードに基づいて、スピンドルサーボを切り替えることにより、複数の前記セクタを読み出し、
読み出した複数の前記セクタのそれぞれに含まれている複数の前記フレームを、前記フレームに付加されている前記同期信号に基づいて読み出し、
読み出した複数の前記フレームから前記第2のデータブロックを生成し、
生成した前記第2のデータブロックに対して、前記誤り訂正符号を用いた誤り訂正処理を行って、前記第1のデータブロックを取得し、
取得した前記第1のデータブロックに対して、誤り検出処理を行うとともに、前記第1のデータブロックから、少なくとも前記記録データと前記アドレス情報を読み出す
再生方法。
【請求項7】
記録データと、その記録データを記録するセクタのアドレス情報を含んでいる第1のデータブロックを形成し、前記第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロックを形成し、前記第2のデータブロックを記録方向および記録方向と垂直の方向に分割して複数のブロックを形成し、前記第2のデータブロックに含まれる一部、かつ、複数の前記ブロックの各々に対して、同じビット数の同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが前記セクタ単位で記録されるとともに、ゾーンCAV方式またはCLV方式である前記データの記録方式に応じて、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式で前記データが記録されていることを示す識別コードが記録され、前記第2のデータブロックの単位が前記セクタ単位よりも大きなデータの単位となるディスク状記録媒体から前記識別コードを読み取る読み取り手段と、
読み取った前記識別コードに応じた前記記録方式に基づいて、前記データの再生モードを、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式に切り替える切り替え手段と、
切り替えた前記再生モードに基づいて、スピンドルサーボを切り替えることにより、複数の前記セクタを読み出し、読み出した複数の前記セクタのそれぞれに含まれている複数の前記フレームを、前記フレームに付加されている前記同期信号に基づいて読み出し、読み出した複数の前記フレームから前記第2のデータブロックを生成する生成手段と、
生成した前記第2のデータブロックに対して、前記誤り訂正符号を用いた誤り訂正処理を行って、前記第1のデータブロックを取得する取得手段と、
取得した前記第1のデータブロックに対して、誤り検出処理を行うとともに、前記第1のデータブロックから、少なくとも前記記録データと前記アドレス情報を読み出す読み出し手段と
を備える再生装置。」

と補正をしようとするものである。

すると、本件補正後の請求項1についてみれば、本件補正前の請求項1を補正して「複数の前記ブロックの各々に対して」付加される「同期信号」が「同じビット数」であると限定するものとなるから、平成6年法律第116号改正附則第6条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126第5項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。

2.刊行物及びその記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-20400号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
(1)「【0026】また、本実施例では、表4の表(4) 及び図2に示すように、フレーム構造が前述したCDの記録フォーマットのフレームよりも大きくなる記録フォーマットを例に挙げている。なお、本実施例の記録フォーマットにおいては、図2に示すように、エラー訂正符号の単位として2フレームからなるブロックを用いるようにしている。更に、表5の表(5) には、1セクタ(=26フレーム)の構成を示し、図3には全体フォーマットを示している。」

(2)「【0029】すなわち、上記表4の表(4) 及び図2において、本実施例の記録フォーマットは、最初の2フレーム中に、110チャンネルビットの同期信号と、640チャンネルビットのセクタマーク・セクタアドレスと、2560チャンネルビットのデータと、640チャンネルビットのパリティとが設けられ、更にDCコントロールとして各パターンの間に計120チャンネルビットが用意されている。更に、1セクタ中には、1300チャンネルビットの同期信号と、640チャンネルビットのセクタマーク・セクタアドレスと、40960チャンネルビットのデータと、8320チャンネルビットのパリティと、1560チャンネルビットのDCコントロールが用意されている。なお、このフォーマットでの符号化効率は、77.6%で、冗長度は22.4%となる。」

(3)「【0044】そこで、本実施例では、上述したように、同期信号として上記同期信号Aと同期信号Bの2種類用意し、ECC-パリティから見た1単位(データとセクタマーク16*10バイト+パリティ32バイト)を、2フレーム(1フレームは16*5バイト+16バイト)として扱えるようにしている。すなわち、上記同期信号Aではフレーム同期と共にECC-パリティの同期を取るようにし、上記同期信号Bではフレーム同期のみを取るようにしている。」

(4)「【0067】なお、本実施例の可変長符号は、例えばCDのディスクに、動画像データを記録するフォーマットに使用されるものである。」

(5)図2には、1ブロック・エラー訂正符号単位が、2フレームであり、各フレームの先頭に同じビット数の同期信号が付加されることが記載されている。

(6)図3には、1セクタ(26フレーム)の構成として、同期信号、セクタマーク・セクタアドレス、データ及びECC-パリティの順に格納する領域が存在することが記載されている。
また、同じく図3には、各フレームの先頭に同じビット数の同期信号が付加されることが記載されている。

上記摘示事項を、図面とともに総合整理すると、刊行物1には次の発明が記載されているものと認める。
「1セクタ26フレームで構成され、各セクタには、セクタマーク・セクタアドレスを格納する領域、データ及びECC-パリティを格納する領域が存在するCDであって
エラー訂正符号の単位として2フレームからなるブロックを用い、
セクタの最初の2フレーム中には、セクタマーク・セクタアドレスとデータとが含まれ、
各フレームの先頭に同じビット数の同期信号が付加されている
CD」(以下「刊行物1発明」という。)

また、同じく、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である特開平6-195878号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(7)「【0023】次に、図2に示す本実施例のデータフォーマットにおいて、1ブロックは、6フレームのプリアンブルフレームと、98フレームのデータフレームと、1フレームのポストアンブルフレームとからなっている。
【0024】ここで、上記プリアンブルフレームの1フレームは、記録方向に向かって、34ビットのアンブルフレームシンクAFS,2ビットの“0”,1バイトのフレームアドレス,3バイトのブロックアドレス,2バイトのCRC,21バイトのPLL(フェーズロックループ)引き込み用の0データの(2,7)変調の繰り返しデータRP,22ビットのResync,1バイトのフレームアドレス,3バイトのブロックアドレス,2バイトのCRC,20バイトの上記データRP,22ビットのResync,1バイトのフレームアドレス,3バイトのブロックアドレス,2バイトのCRC,20バイトの上記データRPにより構成されている。なお、このプリアンブルフレームの各フレームアドレスは、時間情報(例えば分,秒,フレーム)の80h?85hまでを示している。
【0025】上記データフレームの1フレームは、同じく記録方向に向かって、34ビットのデータフレームシンク,2ビットのMDステータスフラグ(ただし一部CRCや“0”のデータとなるフレームがある),1バイトのフレームアドレス,26バイトのオーディオ/AUXデータ,22ビットのResync,10バイトのオーディオ/AUXデータ,6バイトのC2パリティ,10バーストのオーディオ/AUXデータ,22ビットのResync,20バイトのオーディオ/AUXデータ,6バイトのC1パリティにより構成されている。なお、このデータフレームの各フレームアドレスは、上記時間情報の00h?61hまでを示している。
【0026】上記ポストアンブルフレームの1フレームは、同じく記録方向に向かって、34ビットのアンブルフレームシンクAFS,2ビットの“0”,1バイトのフレームアドレス,3バイトのブロックアドレス,2バイトのCRC,21バイトの上記PLL引き込み用の0データの(2,7)変調の繰り返しデータRP,22ビットのResync,1バイトのフレームアドレス,3バイトのブロックアドレス,2バイトのCRC,20バイトの上記データRP,22ビットのResync,1バイトのフレームアドレス,3バイトのブロックアドレス,2バイトのCRC,20バイトの上記データRPにより構成されている。なお、このポストアンブルフレームの各フレームアドレスは、上記時間情報の86hを示している。
【0027】更に、データフォーマットにおいて、上記C1は、データフレームでのフレームアドレス,オーディオ/AUXデータ,C2パリティに対してかけており、上記C2Hデータフレームでのオーディオ/AUXデータに対してのみかけるようになされている。」

(8)図2には、C1及びC2パリティを含む誤り訂正符号を付加したデータブロックを記録方向に分割し、記録方向に垂直の方向にリシンクにより分割することが記載されている。

3.対比
(a)刊行物1発明の「セクタ」の「セクタマーク・セクタアドレスを格納する領域」は、刊行物1発明が再生専用のディスクである「CD」であることから物理的に形成されていることは明らかであって、本願補正発明の「アドレス情報を示す予め物理的に形成されているアドレスエリア」に相当する。
(b)刊行物1発明の「セクタ」の「データ及びECC-パリティ」を格納する領域は、データが格納されている領域であるから、本願補正発明の「データが配置されるデータエリア」に相当する。
(c)「セクタ」は書き込みの単位を意味する用語であり、「CD」はディスク状の媒体であるから、刊行物1発明の「各セクタには、セクタマーク・セクタアドレスを格納する領域、データ及びECC-パリティを格納する領域が存在するCD」は、本願補正発明の「アドレス情報を示す予め物理的に形成されているアドレスエリアと、データが配置されるデータエリアとからなるセクタを単位として記録されるディスク状記録媒体」に相当する。
(d)刊行物1発明は「セクタの最初の2フレーム中には、セクタマーク・セクタアドレスとデータとが含まれ」るもので「エラー訂正符号の単位」が「2フレーム」であるから、
セクタの最初の2フレームについては、「セクタマーク・セクタアドレスとデータ」とからなる2フレームに対して、エラー訂正符号が付されているものであって、エラー訂正符号が付される前の「セクタマーク・セクタアドレスとデータ」は、本願補正発明の「記録データと、その記録データを記録する前記セクタの前記アドレスエリアで示される前記アドレス情報とを含んでいる第1のデータブロック」に相当し、エラー訂正符号が付された「セクタマーク・セクタアドレス」と「データ」及び「ECC-パリティ」は、本願補正発明の「誤り訂正符号を付加した第2のデータブロック」に相当するものであって、刊行物1発明と本願補正発明とでは「記録データと、その記録データを記録する前記セクタの前記アドレスエリアで示される前記アドレス情報とを含んでいる第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロック」が形成されている点で共通する。
(e)刊行物1発明は「エラー訂正符号の単位」が「2フレーム」であるから、1つのフレームは、エラー訂正が行われたデータ単位を2分割したものであり、また、図2、3を参照すると、各フレームはエラー訂正符号が行われたブロック単位を記録方向に分割している。そして、1セクタは26フレームであり、「各フレームの先頭に同じビット数の同期信号が付加されている」から、刊行物1発明と本願補正発明とは「前記第2のデータブロックを記録方向に分割した複数のブロックの各々に対して、同じビット数の同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが前記セクタ単位で前記データエリアに記録され」ている点で、本願補正発明と共通する。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明との[一致点]及び[相違点]は以下のとおりである。
[一致点]
「アドレス情報を示す予め物理的に形成されているアドレスエリアと、データが配置されるデータエリアとからなるセクタを単位として記録されるディスク状記録媒体であって、
記録データと、その記録データを記録する前記セクタの前記アドレスエリアで示される前記アドレス情報とを含んでいる第1のデータブロックに対して、誤り訂正符号を付加した第2のデータブロック(を形成し)、かつ、前記第2のデータブロックを記録方向に分割した複数の前記ブロックの各々に対して、同じビット数の同期信号を付加することにより形成されるフレームを複数集めてなるデータが前記セクタ単位で前記データエリアに記録される
ディスク状記録媒体。」の点。

[相違点]
(相違点1)
本願補正発明では「前記セクタ単位で前記データエリアに記録される」のが「第2データブロックに含まれる一部」であるのに対して、刊行物1発明では「第2データブロックに含まれる一部」と特定されていない点。

(相違点2)
本願補正発明の「フレーム」が「前記第2のデータブロックを記録方向および記録方向と垂直の方向に分割した複数の前記ブロックの各々に対して、同じビット数の同期信号を付加することにより形成されるフレーム」であるのに対して、刊行物1発明では「前記第2のデータブロックを」「記録方向と垂直の方向に分割し」て「同じビット数の同期信号を付加する」点について特定されていない点。

(相違点3)
本願補正発明のディスク状記録媒体には「ゾーンCAV方式またはCLV方式である前記データの記録方式に応じて、前記ゾーンCAV方式または前記CLV方式で前記データが記録されていることを示す識別コードが記録され」ているのに対して、刊行物1発明ではその様な特定のなされていない点。

(相違点4)
本願補正発明が「前記第2のデータブロックの単位は、前記セクタ単位よりも大きなデータの単位である」のに対して、刊行物1発明ではその様な特定のなされていない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
(相違点1、4について)
複数セクタのデータを単位としてエラー訂正符号を付加することは周知技術(例えば、特開平5-6625号公報(【0026】?【0034】,図1,2)、特開平5-6630号公報(【0045】)等参照)であって、前記周知技術は、記録媒体に対する誤り訂正の技術である点で刊行物1発明と共通するものである。したがって、刊行物1発明においても、誤り訂正を行う単位を複数セクタ単位として、第2のデータブロックの大きさを前記セクタ単位よりも大きなデータの単位として、第2データブロックに含まれる一部がセクタ単位でデータエリアに記録される構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点2について)
刊行物2には、ディスク状記録媒体において、C1及びC2パリティによる誤り訂正符号を付加したデータブロックを記録方向に分割し、記録方向に垂直の方向にリシンクにより分割して記録することが記載されている。したがって、刊行物1発明においても、誤り訂正を付加したデータブロックを記録方向及び、記録方向に対して垂直方向に分割する構成を採用することは、当業者が容易に想到しうることである。そして、フレームに付加される同期信号のビット数は通常同一ビット数であるから、記録方向に垂直の方向に分割した際に付加するリシンクのビット数を、記録方向に分割した際の同期信号と同じビット数とすることは当業者が適宜なしうる程度のことである。

(相違点3について)
CAV方式、CLV方式等のディスクの記録方式を示す識別信号をディスク上に記録しておくことは周知技術(例えば、特開昭62-82503号公報の第2頁右下欄第11行?19行、特開平1-319377号公報の第5頁左上欄第13行?第19行等参照)であって、CAV方式の改良されたゾーンCAV方式も周知(例えば、特開平7-85642号公報の【0002】、特開平6-314174号公報の【0003】、特開平6-338135号公報の【0013】等参照)にすぎないから、刊行物1発明においても、ゾーンCAV方式、CLV方式等のディスクの記録方式を示す識別コードをディスク上に記録しておくことは当業者が容易に想到しうることである。

そして、上記相違点についての判断を総合しても本願補正発明の奏する効果は、各刊行物から当業者が十分予測可能なもので格別のものではない。

したがって、本願補正発明は、各刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成18年12月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至7に係る発明は、平成18年9月19日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」)は、「第2[理由]1.」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2.刊行物及びその記載
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物及びその記載事項は、前記「第2[理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明の「複数の前記ブロックの各々に対して」付加される「同期信号」が「同じビット数」である点に関する限定を削除したものに相当する。

そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2[理由]4.」に記載したとおり、各刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-27 
結審通知日 2009-01-29 
審決日 2009-02-12 
出願番号 特願2006-36416(P2006-36416)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 哲  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 横尾 俊一
漆原 孝治
発明の名称 ディスク状記録媒体、データ生成方法および装置、並びに再生方法および装置  
代理人 稲本 義雄  

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