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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1194864
審判番号 不服2007-7161  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-08 
確定日 2009-03-26 
事件の表示 特願2002-143433「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月28日出願公開、特開2003-338245〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一 手続の経緯
本願は、平成14年5月17日の出願であって、明細書又は図面について平成18年8月9日付けで補正がなされ(以下、「補正1」という。)、平成19年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成19年3月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年4月2日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第二 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、補正前の
「内部に蛍光体層が配置されるとともに放電ガスが封入され、長手方向に複数の発光点を有する細管からなる複数の発光管と、それら複数の発光管を表示面側と背面側から挟持する一対の支持体とを備え、
一対の支持体の表示面側に位置する支持体自身が、表示装置の表示品位を向上させるフィルター機能を有し、
表示面側に位置する支持体の発光管対向面に、発光管の長手方向に交差する方向に配置された複数の電極対が設けられ、さらに表示面側に位置する支持体の外面に、それらの電極対と電極対との間の非放電領域を遮光する遮光膜が設けられてなる表示装置。」
から、補正後の
「内部に蛍光体層が配置されるとともに放電ガスが封入され、長手方向に複数の発光点を有する細管からなる複数の発光管と、それら複数の発光管を表示面側と背面側から挟持する一対の支持体とを備え、
一対の支持体の表示面側に位置する支持体自身が、表示装置の表示品位を向上させるフィルター機能を有し、
表示面側に位置する支持体の発光管対向面に、発光管の長手方向に交差する方向に配置された複数の電極対が設けられ、さらに表示面側に位置する支持体の外面に、それらの電極対と電極対との間の非放電領域を遮光する遮光膜と、表示面側の支持体を介して発光管を目視する場合の防眩機能を有するフィルター手段とが設けられてなる表示装置。」に補正する補正事項を含むものである。
この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「表示面側に位置する支持体」について、その外面に「表示面側の支持体を介して発光管を目視する場合の防眩機能を有するフィルター手段」を設ける限定をするものであって、特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2.引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭53-63972号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項(a)乃至(c)が図面とともに記載されている。
(a)「本発明はプラズマデイスプレイ等の放電型表示装置に用いるプラズマ放電表示用管体に関するものである。
先に製造容易にして大型画面のものが容易に得られ、且つカラー化も可能にしたプラズマデイスプレイが提案された。これは第1図の原理図に示すように、透明の誘電体例えばガラスの中空管状体(直径100μから1mm)(1)内にネオンNe、アンゴンAr、キセノンXe、クロムCr、窒素N、水銀Hg等の放電発光に適する放電ガス(2)を封入して成る微細な放電管体(3)を形成し、この微細な放電管体(3)を相対向する電極(4)及び(5)間に配して成るものである。」(公報第1頁左下欄第12行?右下欄第4行)
(b)「第2図はこれをXYマトリツクスのデイスプレイに適用した例を示すもので、内面に夫々所定間隔を置いて一方向に延びる多数の透明帯状電極(7)及び(8)を被着してなる少なくとも一方が透明である2枚の絶縁基板(9)及び(10)を設け、この基板(9)及び(10)を互の電極(7)及び(8)が直交する如く対向配置し、之等基板(9)及び(10)間に接着剤(誘電体物質)(11)を介して、上記多数の放電管体(3)を配列し、両電極(7)及び(8)間に対して選択的に交番電圧(例えば10kHz以上で100?300V)を印加することにより、その選択を電極(7)及び(8)の交点の放電管体(3)が放電発光して所望表示が行われるように構成した場合である。」(公報第1頁右下欄第16行?第2頁左上欄第8行)
(c)「しかし従来のプラズマデイスプレイ等における放電管体は形状が小さく微細であるため、その内壁に金属酸化物被膜を附着形成することは極めて困難であった。」(公報第2頁左上欄第20行?右上欄第3行)

そして、「基板(9)及び(10)を互の電極(7)及び(8)が直交する如く対向配置」されていること、及び「両電極(7)及び(8)間に対して選択的に交番電圧(例えば10kHz以上で100?300V)を印加することにより、その選択を電極(7)及び(8)の交点の放電管体(3)が放電発光して所望表示が行われる」ものであることから、「放電管体」が長手方向の複数の点で放電発光するものであることが明らかである。
また、引用例1が表示装置に関する発明であることから、「2枚の絶縁基板(9)及び(10)」が、それぞれ表示面側と背面側に位置するものであることが明らかである。
さらに、2枚の絶縁基板が「内面に夫々所定間隔を置いて一方向に延びる多数の透明帯状電極(7)及び(8)を被着してなる」ものであること、「絶縁基板(9)及び(10)を互の電極(7)及び(8)が直交する如く対向配置し、之等基板(9)及び(10)間に接着剤(誘電体物質)(11)を介して、上記多数の放電管体(3)を配列」するものであること、及び第2図から、絶縁基板(9)及び(10)が、複数の放電管体を表示面側と背面側から挟持するものであり、表示面側、背面側のいずれかに位置する絶縁基板の内面に、発光管の長手方向に交差する方向に配置された複数の電極が設けられていることが明らかである。

したがって、上記記載事項(a)乃至(c)及び図面に基づけば、引用例1には、
「内部に放電ガスが封入され、長手方向の複数の点で放電発光する小さく微細な形状の複数の放電管体と、それら複数の放電管体を表示面側と背面側から挟持する一対の絶縁基板とを備え、
表示面側、背面側のいずれかに位置する絶縁基板の内面に、発光管の長手方向に交差する方向に配置された複数の電極が設けられてなる放電表示装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-162358号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項(a)乃至(d)が図面とともに記載されている。
(a)「【請求項1】内面に蛍光体層が設けられ放電ガスが封入された中空状の細線管と、基板の表面上に設けられたストライプ状の溝を有し、前記溝の底部に設けられた表示電極(アドレス電極)上に樹脂等の保持部材で前記中空状の細線管が前記溝上に保持され、前記中空状の細線管の表面上に放電電極が設けられたことを特徴とする画像表示装置。」
(b)「【0020】
【発明の実施の形態】(画像表示装置の全体的な構造及び製法)図1は、本実施の形態に係る放電を利用する画像表示装置の概略断面図である。また、図2は、図1の斜視図である。
【0021】図に示すように、本実施の形態に係る画像表示装置は、ストライプ状の溝13およびアドレス電極14が形成されたプラスチックまたはガラスからなる基板11上に、内面に蛍光体層、または、ガラス製で中空状の細線管自体に発光物質が添加されたガラス製の発光管となる中空状の細線管12〔R(赤),G(緑),B(青)の3色が中空状の細線管のガラス内面に塗布されているか、または、ガラス中にR,G,Bの成分が添加されているかいずれか一種〕を樹脂16で固定し、中空状の細線管12の上に電極幅250μmで電極間隔200μmの放電電極(X,Y電極)15を設けた構成になっており、この中空状の細線管内、いわゆる中空パイプ内には、放電ガスが封入されている。」
(c)「【0030】(背面基板の作製)背面基板は、中空状の発光部分を保持もしくは固定する役割、及びアドレス電極と、発光部分を前面基板側に反射する反射層を有する基板である。
【0031】100インチパネル用の樹脂、またはガラス基板上(基板の大きさ230cm×135cm)にプレス成型、フォトポリマー法、または切削加工法等で中空ファイバー状発光部分を保持する溝を作成して背面基板を作成する。」
(d)「【0041】試料No.5は比較例として、従来のプラズマディスプレイパネルの製造方法で100インチのパネルを作成した場合の結果である。なお、ガラス基板は、前面板,背面板ともに、厚さ2.7mmのガラス板(PD-200旭ガラス社商品名)を使用し、ガラスの大きさは230cm×135cmである。」

したがって、上記記載事項(a)?(d)及び図1乃至3に基づけば、引用例2には、複数の細線管を前面基板と背面基板で挟持してなり、複数のアドレス電極と放電電極を、細線管を挟むように配置させた表示装置において、細線管の内面には蛍光体層が配置されるとともに放電ガスが封入されたものであるものが記載されている。

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-13318号公報(以下、「引用例3」という。)には、次の事項(a)乃至(c)が記載されている。
(a)「【0002】
【従来の技術】画像表示装置、特に液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の表示装置では、ディスプレイ上に背景が映り込む事でコントラストが低下する問題があり、ディスプレイ上に、表面に微細な凹凸を有する防眩層や、低屈折率層、あるいは屈折率の異なる多層からなる反射防止層を設ける等の対策が行われていた。また透過型LCDでは、バックライトから出た光が表面で反射される事なく偏光板に入射される様、バックライトに面した偏光板の表面に反射防止を行うことが知られていた。さらにPDPでは、放射される有害な電磁波、赤外線をカットするためにディスプレイの前に前面板が設けられているが、PDPからの光が前面板表面で反射される事なく入射する様、前面板のPDPに面した表面に反射防止を行う事が知られていた。。」
(b)「【0005】一方蛍光体の発光を利用する表示装置でカラー表示を行う場合は、赤、青、緑の三原色蛍光体を用いるが、特開平3-231988号、同9-145918号、同9-306366号広報に記載されているように、表示色の色バランスを補正するために、選択吸収フィルターをディスプレイ前面に設置することが行われている。さらにPDPではプラズマにより紫外線をだすために、ネオン、キセノン等の希ガスを用いているが、ネオンから出射される余分な可視光をカットして表示色の色再現性を改良するために、特開平5-205643号広報に記載されているように、選択吸収フィルターが用いられている。このようなフィルターとしては、特開昭58-153904,同61-188501号、特開平10-26704号の各公報に、透明支持体、染料含有層、反射防止層を有する透明プラスチックフィルターが開示されている。特開平9-306366号公報には、反射防止層、染料含有層、紫外線カット層およびEMI層を有するプラズマディスプレイパネル用フィルターが開示されている。しかしながらこれらの選択吸収フィルターあるいは染料含有層はその吸収波長域が広く、不要な可視光だけをカットする事が出来ず、必要な可視光もカットしてしまうため、輝度が低下する、あるいは色調整が出来ない等の問題点があった。また支持体上に設置されたこれらの反射防止層、選択吸収フイルター層が、長時間光、湿度、熱等に晒される事により、支持体から剥がれやすくなり、ひどい場合には剥落したりする事があった。」
(c)「【0008】本発明においてプラズマディスプレイパネル(PDP)とは、ガス、ガラス基板、電極、電極リード材料、厚膜印刷材料、蛍光体により構成される。ガラス基板は、前面ガラス基板と後面ガラス基板の二枚である。二枚のガラス基板には電極と絶縁層を形成する。後面ガラス基板には、さらに蛍光体層を形成する。二枚のガラス基板を組み立てて、その間にガスを封入する。前面板とは該プラズマディスプレイパネルの前面に位置する基板のことである。前面板はプラズマディスプレイパネルを保護するために充分な強度を備えていることが好ましい。前面板はプラズマディスプレイパネルと隙間を置いて使用することもできるし、プラズマディスプレイ本体に直貼りして使用することもできる。本発明におけるプラズマディスプレイ表示装置とは少なくともプラズマディスプレイパネル本体と筐体をふくむ表示装置全体のことである。前面板を有する場合はこれもプラズマディスプレイ表示装置に含まれる。プラズマディスプレイパネル(PDP)は、既に市販されている。プラズマディスプレイパネルについては、特開平5-205643号、同9-306366号の各公報に記載がある。」

したがって、上記記載事項(a)乃至(c)に基づけば、引用例3には、ガス、ガラス基板、電極、電極リード材料、厚膜印刷材料、蛍光体を有するプラズマディスプレイ上に、防眩層や電磁波、赤外線をカットするための前面板、選択吸収フィルターを設けることが記載されている。

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-129142号公報(以下「引用例4」という。)には、次の事項(a)及び(b)が図1及び2とともに記載されている。
(a)「【請求項1】放電空間を挟む基板対における前面側又は背面側の基板の内面上に、表示のライン毎にライン方向に延びる一対の表示電極を有した面放電型プラズマ・ディスプレイ・パネルであって、
前面側の前記基板の内面側又は外面側に、平面視における隣接した前記ラインの間の前記表示電極で挟まれた領域と重なるように、前記ライン方向に延びる帯状のしゃ光膜が配置されてなることを特徴とする面放電型プラズマ・ディスプレイ・パネル。」
(b)「【0041】図2はPDP1の要部の断面図、図3はしゃ光膜45の平面図である。図2のように、PDP1においては、ガラス基板11の内面と直接に接するように、可視光をさえぎる(遮る)しゃ光膜45が逆スリットS2毎に設けられている。各しゃ光膜45は、図3のように、ライン方向に延びる帯状にパターニングされており、隣接したラインLの間の表示電極X,Yで挟まれた領域と重なるように配置されている。これらの互いに離れたしゃ光膜45によって、表示画面の全体ではストライプ状(縞状)のしゃ光パターンが形成され、ラインL間で蛍光体層28が隠れて表示のコントラストが高まる。ストライプパターンによれば、サブピクセル又はピクセルを囲むマトリクスパターンとは違って、ライン方向の位置ずれの心配がないので、PDP1の製造における両ガラス基板11,21の位置合わせが容易になる。」

したがって、上記記載事項(a)及び(b)及び図1及び2に基づけば、引用例4には、放電空間を挟む基板対における前面側又は背面側の基板の内面上に、複数の表示電極対を有したプラズマディスプレイパネルであって、前面側の前記基板の内面側又は外面側に、表示電極対と表示電極対の間の領域と重なるようにその領域を遮光する遮光膜が配置されているものが記載されている。

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における、「放電管体」、「長手方向の複数の点で放電発光する小さく微細な形状の複数の放電管体」は、本願補正発明の、「発光管」、「長手方向に複数の発光点を有する細管からなる複数の発光管」に相当する。
また、引用発明における「絶縁基板」は、放電管体を挟持して支持するものであるから、本願補正発明の「支持体」に相当し、「絶縁基板の内面」は、「支持体の発光管対向面」に相当する。
さらに、引用発明も本願補正発明も、「発光管の長手方向に交差する方向に配置された複数の電極」が設けられる対象が、一対の支持体の一方側である点で共通している。

そうすると、両者は、
(一致点)
「内部に放電ガスが封入され、長手方向に複数の発光点を有する細管からなる複数の発光管と、それら複数の発光管を表示面側と背面側から挟持する一対の支持体とを備え、
一方側の支持体の発光管対向面に、発光管の長手方向に交差する方向に配置された複数の電極が設けられてなる表示装置。」で一致し、以下の4点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明は、発光管の内部に「蛍光体層が配置される」ものであるのに対し、引用発明は、発光間の内部にそのような蛍光体層を有さない点。
(相違点2)
本願補正発明は、「一対の支持体の表示面側に位置する支持体自身が、表示装置の表示品位を向上させるフィルター機能を有」するものであるのに対し、引用発明の支持体はそのような機能を有さない点。
(相違点3)
「発光管の長手方向に交差する方向に配置された複数の電極」が、本願補正発明は「電極対」であるのに対し、引用発明は「電極対」でなく、かつ、本願補正発明は、「表示面側に位置する支持体の外面に、それらの電極対と電極対との間の非放電領域を遮光する遮光膜」が設けられているのに対し、引用発明はそのような遮光膜を有さない点。
(相違点4)
本願補正発明は、「表示面側に位置する支持体の外面に」、「表示面側の支持体を介して発光管を目視する場合の防眩機能を有するフィルター手段」が設けられているのに対し、引用発明はそのようなフィルター手段が設けられていない点。

4.判断
(相違点1について)
引用例2には、複数の細線管を前面基板と背面基板で挟持してなり、複数のアドレス電極と放電電極を、細線管を挟むように配置させた表示装置において、細線管の内面には蛍光体層が配置されるとともに放電ガスが封入されたものが記載されており、引用発明において、発光管の発光手段につき、同じく発光管に相当する細管を用いた引用例2記載のものを適用して蛍光体層を設けることに困難性はない。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例1及び2に基づいて当業者が容易に想到し得る事項である。

(相違点2について)
本願補正発明のものは、支持体自身が、表示品位を向上させるフィルター機能を有するものである。「支持体自身」が「フィルター機能を有する」との技術的事項につき、その技術的意義を理解するため発明の詳細な説明及び図面を参酌すると、図4乃至図6およびそれに対応する発明の詳細な説明には、発明の実施形態として、支持体内に、作り込みにより、表示品位を向上させるフィルター手段を積層した態様で形成したものが記載されているから、「支持体自身が、表示装置の表示品位を向上させるフィルター機能を有」するとの技術的事項は、支持体内に、作り込みにより、表示品位を向上させるフィルター手段を積層した態様で形成した態様を含むものと認めて、以下検討する。
引用例3には、ガス、ガラス基板、電極、電極リード材料、厚膜印刷材料、蛍光体を有するプラズマディスプレイ上に、防眩層や電磁波、赤外線をカットするための前面板、選択吸収フィルターを設けることが記載されている。
ディスプレイ上の例えば選択吸収フィルターは、余分な可視光をカットして表示色の色再現性を改良するという機能上、発光部よりディスプレイ目視者側に設ければいずれの位置であってもその機能を奏するものであることが明らかであり、その位置は当業者の適宜の設計事項である。そして、一対の支持体で発光管を挟持する表示装置である引用発明において、表示品位を向上させるため、引用例3記載のフィルターを適用し、表示面側の支持体に、選択吸収フィルターのような表示品位を向上させる機能を有するフィルターを設けることに困難性はなく、その際にフィルターの位置を支持体内部に積層した態様で形成することも当業者が適宜になし得る事項である。
なお、プラズマディスプレイ等でガラス基板や誘電体層材料自体にフィルター機能を持たせ兼用することで、部材を減らし構造を単純化する技術は周知である(例えば、特開平10-283942号公報、特開平11-16501号公報、特開2001-84911号公報の【0018】、特開昭48-43574号公報等参照)。
したがって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例1及び3に基づいて当業者が容易に想到し得る事項である。

(相違点3について)
引用例4には、放電空間を挟む基板対における前面側又は背面側の基板の内面上に、複数の表示電極対を有したプラズマディスプレイパネルであって、前面側の前記基板の内面側又は外面側に、表示電極対と表示電極対の間の領域と重なるようにその領域を遮光する遮光膜が配置されているものが記載されている。そして、引用発明において、表示品位を向上させるため、引用例4記載の表示電極の形式としての電極対、及び電極対と電極対の間の遮光膜を採用することに、困難性はない。
したがって、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例1及び4に基づいて当業者が容易に想到し得る事項である。

(相違点4について)
引用例3には、ガス、ガラス基板、電極、電極リード材料、厚膜印刷材料、蛍光体を有するプラズマディスプレイ上に、防眩層を設けることが記載されている。
ディスプレイ上の防眩層は、発光部の眩しさを防止するという機能上、発光部よりディスプレイ目視者側に設ければいずれの位置であってもその機能を奏するものであり、その位置は当業者の適宜の設計事項である。そして、一対の支持体で発光管を挟持する表示装置である引用発明において、表示品位を向上させるため、引用例3記載の防眩層を適用し、表示面側の支持体の外面に防眩層を設けることに困難性はない。
したがって、相違点4に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例1及び3に基づいて当業者が容易に想到し得る事項である。

よって、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得る事項である。

したがって、本願補正発明は、引用例1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第三 本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至7に係る発明は、前記補正1によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「内部に蛍光体層が配置されるとともに放電ガスが封入され、長手方向に複数の発光点を有する細管からなる複数の発光管と、それら複数の発光管を表示面側と背面側から挟持する一対の支持体とを備え、
一対の支持体の表示面側に位置する支持体自身が、表示装置の表示品位を向上させるフィルター機能を有し、
表示面側に位置する支持体の発光管対向面に、発光管の長手方向に交差する方向に配置された複数の電極対が設けられ、さらに表示面側に位置する支持体の外面に、それらの電極対と電極対との間の非放電領域を遮光する遮光膜が設けられてなる表示装置。」(以下、「本願発明」という。)

1.引用例記載の事項・発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用発明・事項は、前記第二2.引用例記載の事項・引用発明に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、前記第二1.補正の内容で検討した本願補正発明から、「表示面側に位置する支持体」について、その外面に「表示面側の支持体を介して発光管を目視する場合の防眩機能を有するフィルター手段」を設けるとの発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第二4.判断に記載したとおり引用例1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、前記第二4.判断の相違点4についての検討を除いた同様の理由により、引用例1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-20 
結審通知日 2009-01-27 
審決日 2009-02-12 
出願番号 特願2002-143433(P2002-143433)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01J)
P 1 8・ 575- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 亮  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 下中 義之
南 宏輔
発明の名称 表示装置  
代理人 野河 信太郎  

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