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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B67B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B67B
管理番号 1195003
審判番号 不服2007-16830  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-15 
確定日 2009-03-23 
事件の表示 特願2002-261676「検体容器の開封カッター及び開封装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 2日出願公開、特開2004- 99081〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年9月6日の出願であって、平成19年5月15日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成19年6月15日に拒絶査定不服審判がされるとともに、同年7月11日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年7月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年7月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、補正前の請求項1
「【請求項1】検体容器の栓部分を打ち抜いて開封する合成樹脂製のカッター部を有すると共に、1回検体容器を開封する毎に開封カッターを使い捨てして新しい開封カッターに交換するようにしたことを特徴とする検体容器の開封カッター。」
を、
「【請求項1】検体容器の栓部分を打ち抜いて開封する合成樹脂製のカッター部を有し、カッター部の外側に外筒部が配されると共に、1回検体容器を開封する毎に開封カッターを使い捨てして新しい開封カッターに交換するようにしたことを特徴とする検体容器の開封カッター。」
とする補正を含むものである(下線部は補正箇所を示す)。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「カッター部」について「外側に外筒部が配される」との限定を付加するものであるから、補正前の請求項1に記載されていた発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、当初明細書に記載されており、新規事項ではない。また、この補正により、産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでもないから、この補正は、平成18年法律第55号改正付則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるか)について以下に検討する。

2.本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認める。

3.引用発明
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-198360号公報(以下、「引用例1」という)には、以下の記載がある。
(a)「一端が開口しているとともに他端が閉塞している有底管1と、該有底管1の開口部を封止するフィルム状栓部材2とを備えてなる採血管P…のフィルム状栓部材の開封装置Kであり、
前記フィルム状栓部材2のフィルム2aの外周部をカットするリング形突切り刃を有するカッター3と、…とを備えてなることを特徴とするものである。」(第2頁右上欄第7行から左下欄第1行)
(b)「カッター3を引続き押込み移動すると、カッター3がフィルム状栓部材2のフィルムフィルム2aの外周部をリング形に突切りカットすることになり有底管1の開口部内に位置することになる。このとき、リング形に打抜かれたフィルム状栓部材2は、…内部に落ることがない。」(第3頁左下欄第4?11行)
(c)「この実施例の採血管のフィルム状栓部材の開封装置Kは、上記第一実施例のものに、さらにキャップ状ガイド5を備えたものである。該キャップ状ガイド5はリング形突切り刃3aを取巻くように栓部材保持用針体4よりも先に伸びた筒状部5aを有するキャップ状に形成されている。該筒状部5aは、内径が前記有底管1の開口部に外嵌させ得る大きさである。従って、つまみ9を把持し押し込みストッパー7をキャップナット10に当接するようにしてから、筒状部5aを有底管1の開口部に外嵌させると、カッター3を有底管1の開口部に同心的に対向させることができる。」(第3頁右下欄第6?18行)
以上の記載及び第2図(a)?(c)によれば,引用例1には,次の発明(以下「引用例1発明」という)が開示されていると認めることができる。

「採血管Pのフィルム状栓部材2を打ち抜いて開封する、リング形突切り刃を有するカッター3を有し、カッター3の外側に、内径が採血管Pの開口部に外嵌させ得る大きさの筒状部5aを有するキャップ状ガイド5備えた採血管Pのフィルム状栓部材2の開封装置K。」

(2)引用例2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭49-135059号(実開昭51-62954号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という)には,以下の記載がある。
(a)「1は下側に沿って弧状に彎曲せる摺動溝2を設け…た摘み部であって、その内壁3には段部4を形成して内側3’を外側3”より稍短くし、且つ段部に沿って三角形状の刃板5を突出させた。該刃板はその一側全部に刃6を形成したが、他側にはその上部のみに刃6’を形成して、両側で密封板を切除できると同時に刃先部6”を補強した。又外壁7下端には外向きに傾斜した案内面8を形成し且つ案内面下端に沿って一段と長い裾縁9を延設してなる缶切爪である。而して上記缶切刃はジュラコンの如き硬質合成樹脂で全体を成形するものである。」(明細書第2頁第9?末行)
(b)「而して、全体を硬質合成樹脂で簡単に成形できるので、金属板をU状に折曲してその一側に刃を形成する従来品に比べて、製作が極めて容易であって大量生産に適し頗る安価に提供できる。」(明細書第4頁第2?5行)
以上の記載及び第1?5図によれば,引用例2には,次の発明(以下「引用発明2」という)が開示されていると認めることができる。

「全体を硬質合成樹脂で成型した缶切爪」

4.対比
そこで、本願補正発明と引用発明1とを比較すると、引用発明1の「採血管P」は、本願補正発明の「検体容器」に相当し、以下同様に、「フィルム状栓部材2」は「栓部分」に、「カッター3」は「カッター部」に、「キャップ状ガイド5」は「外筒部」に、「開封装置K」は「開封カッター」にそれぞれ相当する。
そこで、本願補正発明と引用発明1を対比すると、両者は、
「検体容器の栓部分を打ち抜いて開封するカッター部を有し、カッター部の外側に外筒部が配された、検体容器の開封カッター。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明は、カッター部が合成樹脂であるのに対し、引用発明1ではカッター部の材料の限定をしていない点。

[相違点2]
本願補正発明は、1回検体容器を開封する毎に開封カッターを使い捨てして新しい開封カッターに交換するようにしたのに対して、引用発明1ではこのような限定のない点。

5.判断
[相違点1]について
容器を開封するカッターを合成樹脂製とすることは引用発明2に示されるように公知であり、引用発明1のカッター部を合成樹脂製とすることができないとする理由も見当たらないから、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]について
本願補正発明は、「検体容器の開封カッター」という物の発明であるところ、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項(以下、「相違点2特定事項」という。)は、「1回検体容器を開封する毎に開封カッターを使い捨てして新しい開封カッターに交換するようにした」という機能的ないしは作用的記載となっている。
補正後の本願請求項1の記載のみでは、相違点2特定事項が、(a)特定の機能ないし作用を実現する構成を包括的ないしは上位概念的に特定するものであるか、(b)別に特定した発明特定事項が果たす機能ないし作用を確認的に記載したものであるか、あるいは(c)願望等の記載であって、物の発明を特定する記載事項としては意味がないものであるか、が明りょうでない。
そこで、明細書、図面、意見書、補正書、審判請求書等、請求人がこれまでに提出した書類を参酌すると、カッターを1度使用するとカッターの刃が損傷してその後は使用不能になるような構成等、開封カッターを使い捨てることを担保するための構成は、明細書又は図面に何も記載されていない。そして、その他の提出書類を参酌しても、相違点2特定事項が、物の発明としての構成を包括的ないしは上位概念的に特定する記載事項であると認めるに足る記載はなく、相違点2特定事項に対して、特定の構成を意味するものとして定義づける記載もない。さらに、技術常識を考慮しても、相違点2特定事項が、物の発明としての構成を包括的ないしは上位概念的に特定する記載事項であるとすることはできない。
同様に、請求人がこれまでに提出した書類を参酌しても、また、技術常識を考慮しても、相違点2特定事項が、本願補正発明の相違点2特定事項以外の発明特定事項によって実現される機能ないし作用を記載したものであるとも認められない。
そうすると、相違点2特定事項は、本願補正発明の使用方法を願望的に記載したものであって、物の発明を特定するための記載事項としては無意味であるといわざるを得ない。したがって、物の発明である本願補正発明と、同様に物の発明である引用発明との対比においては、相違点2は、単なる記載上の相違であって実質的な相違点ではない。
なお、(a)容器を開封するカッターを低廉に量産できる構成のものとし、使い捨てが可能なようにすること自体は周知の事項であること(実願昭59-120572号(実開昭61-35198号)のマイクロフィルムの明細書第3頁18?20行、実公昭47-24288号公報の第1頁右欄第14?17行、実願昭47-57660号(実開昭49-17669号)のマイクロフィルムの明細書第2頁第4?7行参照)、(b)医療等の分野においては、道具の汚染による影響を防ぐために、一度使用したものを廃棄することは一般的に行われる事項であること(特開平1-242967号公報の第1頁右欄第17?19行、実願昭57-23057号(実開昭58-126839号)のマイクロフィルムの明細書第1頁第20行、特表2000-500676号公報の第6頁第6?9行、特開平9-117323号公報の段落【0008】参照)より、開封カッターを、1回検体容器を開封する毎に使い捨てして新しいものに交換するようにすることも当業者が適宜なす程度の事項にすぎない。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
なお、出願人は平成20年8月13日付け審尋に対する平成20年10月16日付け回答書の「4.出願人の意見」(見解1に対する出願人の意見)において、
『すなわち、引用文献1のキャップ状ガイド5は、あくまでも、使用性を向上させる(開封時の位置決めを簡単とする)ものであって、発明特定事項Aのように「外側に外筒部が配される」必要性はありません。
すなわち、引用文献1のキャップ状ガイド5は作用・効果において、本願発明の技術的思想と全く相違するものです。』
と述べているが、前記 3.(1)(c)で摘記したように引用発明1は「該キャップ状ガイド5はリング形突切り刃3aを取り巻くように栓部材保持用針体4よりも先に伸びた筒状部5aを有するキャップ状に形成されている。該筒状部5aは、内径が前記有底管1の開口部に外嵌させ得る大きさである。従って、つまみ9を把持し押し込みストッパー7をキャップナット10に当接するようにしてから、筒状部5aを有底管1の開口に外嵌させると、カッター3を有底管1の開口部に同心的に対向させることができる」という構成を有しているから、前記4.で述べたように、引用発明1のキャップ状ガイドは、本願補正発明の外筒部に相当するものである。そして、外筒部によって容器の開封時に内容物の飛散を防ぐことは周知の技術にすぎないので(実公昭38-9766号公報の第1頁左欄末行?右欄第1行、実願昭53-38829(実開昭54-145557号)のマイクロフィルムの明細書第2頁第18?末行、実公昭38-28291号公報第1頁右欄第11?13行参照)、引用発明1の採血管の開口部に外嵌する外筒部を備えた構成から、「コンタミネーションを抑制」するという効果についても、当業者が容易に想到し得たものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成19年7月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は、平成19年3月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】検体容器の栓部分を打ち抜いて開封する合成樹脂製のカッター部を有すると共に、1回検体容器を開封する毎に開封カッターを使い捨てして新しい開封カッターに交換するようにしたことを特徴とする検体容器の開封カッター。」

第4 引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2」の3.に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2」の2.で検討した本願補正発明から「カッター部」の限定事項である「外側に外筒部が配される」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含みさらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の5.に記載したとおり、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項を検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-23 
結審通知日 2009-01-26 
審決日 2009-02-10 
出願番号 特願2002-261676(P2002-261676)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B67B)
P 1 8・ 121- Z (B67B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 耕作  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 村上 聡
熊倉 強
発明の名称 検体容器の開封カッター及び開封装置  
代理人 辻本 一義  

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