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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61L
管理番号 1195088
審判番号 不服2006-12364  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-15 
確定日 2009-04-07 
事件の表示 特願2005-237040号「空気清浄装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 9日出願公開、特開2006- 34986号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月8日に出願した特願2000-30900号(以下、「原出願」という。)の一部を平成17年8月18日に新たな特許出願としたものであって、平成18年5月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年7月14日付けで手続補正がなされ、その後、同年12月25日付けで、「本件審判の請求は成り立たない。」とする審決がされたところ、知的財産高等裁判所において、審決取消の判決(平成19年(行ケ)第10074号、平成20年3月26日判決言渡)がなされ、同判決は確定した。
なお、原出願は特許法第41条に基づく優先権主張を伴う出願であるが、優先権主張の基礎となる特願平11-190817号には、照明灯を有する空気清浄装置について記載されていないので、本願の請求項1?6に係る発明については、優先権主張は認められない。また、本願については、平成18年4月10日付けで手続補正がされたが、これは同年5月9日付けの補正の却下の決定により却下された。

2.平成18年7月14日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年7月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成18年7月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「給電部に装着される被給電部を一端に有し、他端に吹き出し口が設けられ、中心軸線を有する電球型のケースと、
このケース内に収納され、前記被給電部からの交流を直流に変換する交流直流変換器と、
前記ケース内に収納され、前記交流直流変換器からの電圧を昇圧する昇圧トランスと、
前記ケース内に収納され、前記昇圧トランスに接続されたマイナスイオン発生器と、
前記ケース内に収納され、前記被給電部からの電力によって点灯する照明灯とからなり、
前記マイナスイオン発生器は、前記中心軸線と平行で、前記吹き出し口へ向かって延びる1つの電極のみを備え、この1つの電極に高電圧が印加されることにより、放電が起こってマイナスイオンを前記吹き出し口から放出する、
ことを特徴とする空気清浄装置。」と補正された。(下線部は補正箇所を示す。)

本件補正は請求項1に係る発明において、発明を特定するために必要な事項である「電極」について、「吹き出し口へ向かって延びる電極」を「吹き出し口へ向かって延びる1つの電極のみ」と補正すると共に「この電極に高電圧が印加される」を「この1つの電極に高電圧が印加される」と補正し、電極の個数を一つに限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特表平9-508065号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「技術分野
本発明は空気浄化装置に関するもので、更に具体的には放電ランプのような従来の照明装置と共に一つのユニットに統合されて室内空気を浄化するために簡便に使用することができる空気浄化装置に関するものである。
背景技術
一般的に、家庭や事務室の室内空気を浄化させるに使用される空気浄化装置は、不快な臭いを生じる各種のビールス、バクテリア、煙草の煙等を除去させることによって、快適な室内環境を提供するものとして知られている。このような空気浄化装置を使用すれば、室内環境が快適になり、人体に適したものとなる。空気浄化は、浄化装置内に装着されたイオン発生機により発生された陰イオンの作用によりなされる。しかし、このような空気浄化装置は、室内空気を対流させるために別途の送風装置を使用しているため、モータ等のような関連駆動部品を装置内に収容しなければならないという問題点がある。更に、空気浄化装置が大きくなるため、設置空間を大きく占めるという問題点がある。
近年においては、空気浄化装置を小型化するために、前述の送風装置は使用されなくなっている。その結果として、室内空気の対流が制限的されて浄化能力が劣ることとなり、これにより使用面積も縮小されるという問題点がもたらされる。」(5頁3?20行)
イ.「ピン状の放電極(58)は、陰イオンを放出するためのアノードとして機能する。放電極(58)は、金、銅、黄銅、アルミニウム、タングステン、ステンレススチル及びそれと類似のもので構成されるグループから選ばれた物資で作ることができる。回路(21)の基準電圧が放電極(58)に印加される。放電極(58)の下部は遮蔽部(59)に取り囲まれているが、この遮蔽部(59)はハウジングの上部(10a′)の内部に延長され、絶縁体からなる支持部材(53)を放電極(58)に印加される高電圧から保護する。支持部材(53)の端部はネジ線即ちネジ溝(threads)を有している第1環状リング(55)と組立てられ、この第1環状リング(55)は、ネジ線を有している第2環状リング(56)と組み立てられる。第2環状リング(56)はその上部の表面に複数の孔(60)が定義されたハウジングの上部(10a′)に固く固定される。複数の孔(60)はランプ(12)の下部が十分に嵌め込まれるほどの適当な直径を有しなければならない。
塵や粗雑な空気粉塵を漉すための塵フィルタ(54)は空気が通過できるようにする引込口である複数の貫通孔(53′)を有している支持部材(53)の下部外周面に嵌め合わせられる。イオン集塵パネル(52)は支持部材(53)の上部外周面に嵌め合わせられる。イオン集塵パネル(52)は、銅、黄銅、アルミニウム、タングステン、炭素及びそれと類似する物資のグループから選ばれた物資で作ることができ、放電極(58)から放出された陰イオンを集塵するためのカソードの役割を行う。回路(21)からの高増幅電圧はイオン集塵パネル(52)に印加される。」(11頁20行?12頁13行)
ウ.「以下、本発明による空気浄化装置(5)の作用を第3図の印刷回路基板(20)上に装着された回路素子を含む回路のブロック図が示された第9図を参照して説明する。電極(11)が従来の電源ソケットに組み立てられた状態でハウジング(10)にある電源スイッチ(図示せず)を点灯すれば、電極(11)を介して装置に給電が行われる。例えば、117/220Vの電源電圧はヒューズ(22)を介して整流のために整流器(23)へ供給される。整流された電圧はインバータ増幅器(24,25)により使用され、適切に増幅された正弦波信号を発生させる。
例えば、インバータ増幅器(24)からの41KHZの正弦波信号は、ランプ(12)のコイルを駆動してその中で放電を起こす。一方、インバータ増幅器(25)から発生された正弦波信号は、正弦波信号の電圧レベルを調節するフライバックトランスフォーマ(fly-backtransformer)のようなトランスフォーマ(26)へ供給される。
尚、印刷回路基板(20)に装着された部品の数を減少させるために、2つのインバータ増幅器(24,25)の代わりに一つのインバータ増幅器を使用することもできる。
調節された電圧はおおよそ7,000?10,000VのDC電圧が発生される高電圧整流器(27)に供給される。回路(21)の接地電位のような基準電圧はアノード、即ち、電子銃(34)の端部(36b)、又は放電極(58)に印加され、発生されたDC電圧はカソード、即ちイオン集塵パネル(31)の延長片(33)又はイオン集塵パネル(52)に印加されてアノードから発生された陰イオンを集塵できるようにする。」(12頁17行?13頁10行)
エ.「ランプ(12)が点灯される時、ランプ(12)から放出された熱の作用により陰イオン発生機(30,30′)の周りに空気対流が自然に起こる。従って、空気が貫通孔(32)と第1絶縁部材(37a)の貫通孔(38)で構成された引込口へ入り込まれるようになる。引込口へ入ってくる空気は陰イオン発生機(30,30′)内で浄化されるが、イオン集塵パネル(31)では放電極(35)から発生された多い陰イオンが集塵される。放電極(35)から放出された陰イオンは青い色調を有しているため、貫通孔(32)や貫通孔(38)を介して外部からみることができる。従って、使用者は陰イオン発生機(30)の動作状態を容易に確認することができる。浄化された空気は引込口としても作用する出口を通して出ることになる。」(13頁11?20行)
オ.「本発明の新規な概念を容易に応用し、小さく簡単な空気浄化装置を製造し得るように考案することができる。以下、本発明による空気浄化装置(73)を図10乃至図12を参照して説明する。図10は空気浄化装置(73)を部分的に切り取って示した斜視図である。空気浄化装置(73)は、一般的に電極(11″)、ハウジング(61,61′)、第1グリール(63)及び第2グリール(70)を含む。図12に示した通り、第1グリール(63)はグリール支持部材(62′)に複数の環状リング(62)を固定させることによって形成される。
図12にて第1グリール(63)は3つのグリール支持部材(62′)を有しているものと示されているが、複数の環状リング(62)を固く支持するために必要な個数ほどの支持部材(62′)を有することができる。複数の環状リング(62)の間にある第1グリール(63)の引込口(64)は空気がハウジング(61,61′)の内部に入ってその中で浄化されるようにする。浄化された空気は第2グリール(70)の出口(74)を通して出ることになる。
この空気浄化装置の断面を示した図11を参照して装置(73)をより詳細に説明する。引込口空気フィルタ(65)、4つの放電極(66,66′)(2つの電極は図示せず)、連結棒(67)、イオン集塵パネル(68)、出口空気フィルタ(69,69′)及び印刷回路基板(72)がハウジング(61,61′)内に含まれている。円筒状の引込口空気フィルタ(65)は、第1グリール(63)の内部に同心円の形態に配置されるが、フィルタ(65)とグリール(63)との間の間隔が一定に配置されている。下部(62-1)に5つのステップ状(stepped)孔(2つは図示せず)を有しているコップ状の支持部(62″)は、その円筒状の側壁(62-2)で印刷回路基板(72)を支持する。
イオン集塵パネル(68:図示せず)を駆動するための高いDC電圧を発生させるための関連の電気部品は印刷回路基板(72)上に装着される。支持部(62″)は、第1グリール(63)と一体型に作ることもできる。アノードで作用する4つの放電極(66,66′)は、下部(62-1)の中央に該当することを除外した4つのステップ状の孔に挿入される。下部(62-1)の中央の位置した残りの一つのステップ状の孔は下部(62-1)からイオン集塵パネル(68)まで下側に延長されるボス(67′)を有している。連結棒(67)は、印刷回路基板(72)から発生された高電圧がイオン集塵パネル(68)に印加され得るようにする。
カソードとして作用するイオン集塵パネル(68)は4つのステップ状孔に垂直方向に対応される位置に4つの孔(71:2つは図示せず)を有している。4つの放電極(66,66′)は、イオン集塵パネル(68)を向かって整列されているため、コロナ放電によるエネルギーは浄化された空気が4つの孔(71)に入り込んで出口空気フィルタ(69,69′)と第2グリール(70)の出口(74)を通して外部へ出るようにする。ハウジング(61′)の円筒状の側壁(61″)により支持される出口空気フィルタ(69,69′)に化学的汚染物資を吸収するようにするために炭素で作ることができる。
本明細書に示された空気浄化装置(73)は、電源電極(11″)を従来の電源ソケットに差し込むことによって、便利に設けることができ、その構造は放電ランプの大きさほどの小さな大きさで製造でき、単純に作ることができる。更に、この装置(73)は容易に3つの部分、即ち、ハウジング(61)、ハウジング(61′)及び第1グリール(63)に分けることができ、出口空気フィルタ(69,69′)又は印刷回路基板(72)の電気部品を便利に掃除又は取替えることができる。
これまで、本発明は特定応用と関連して特定実施例を参照して記述された。当業者として本発明の内容が理解できる者ならば、本発明をその範囲で付加的に変更し、応用し得るものである。例えば、本発明は単に例示の目的で示された陰イオン発生機の特定構造に限るものではない。尚、関連の技術分野で通常の知識を有する者ならば、本発明にて示された陰イオン発生機にやや変更を加えさえすれば本発明のランプとして白熱灯を使用することができるというのが分かる。
従って、添付された特許請求の範囲は、本発明の範囲内における全ての応用、変更及び実施例を含むものであると解釈されるべきである。」(14頁20行?16頁末行)
カ.図10、図11には、空気浄化装置(73)は電極(11″)を一端に有し、他端に出口(74)が設けられており、ハウジング(61,61′)、第1グリール(63)及び第2グリール(70)からなる部分は中心軸線を有する電球型のケースを構成しており、電球型のケース内には、印刷回路基板(72)や、中心軸線と平行で出口(74)へ向かって延びる4つの放電極(66,66′)、イオン集塵パネル(68)を備える陰イオン発生機が収納されていることが図示されている。
キ.上記記載事項ウ、オから、図10、図11に図示されている印刷回路基板(72)には、電極(11″)からの電源電圧を整流する整流器(23)と、整流器(23)からの電圧を高いDC電圧にするインバータ増幅器(25)、トランスフォーマ(26)及び高電圧整流器(27)が装着され、さらに、高電圧整流器(27)に陰イオン発生機が接続されることは明らかである。
ク.上記記載事項イ、オから、4つの放電極(66,66′)に基準電圧が、イオン集塵パネル(68)に高いDC電圧が印加されることにより放電が起こって陰イオンを発生することは明らかである。

これら記載事項、図示内容及び明らかな事項を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「電極(11″)を一端に有し、他端に出口(74)が設けられ、中心軸線を有する電球型のケースと、
このケース内に収納され、前記電極(11″)からの電源電圧を整流する整流器(23)と、
前記ケース内に収納され、前記整流器(23)からの電圧を高いDC電圧にするインバータ増幅器(25)、トランスフォーマ(26)及び高電圧整流器(27)と、
前記ケース内に収納され、高電圧整流器(27)に接続された陰イオン発生機とからなり、
前記陰イオン発生機は、前記中心軸線と平行で、前記出口(74)へ向かって延びる4つの放電極(66,66′)及びイオン集塵パネル(68)を備え、4つの放電極(66,66′)に基準電圧が、イオン集塵パネル(68)に高いDC電圧が印加されることにより放電が起こって陰イオンを発生する空気浄化装置(73)。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者における「電極(11″)」が、その機能・構造からみて前者における「給電部に装着される被給電部」に相当し、以下同様に、「出口(74)」が「吹き出し口」に、「電源電圧を整流する整流器(23)」が「交流を直流に変換する交流直流変換器」に、「高いDC電圧にするインバータ増幅器(25)、トランスフォーマ(26)及び高電圧整流器(27)」が「昇圧する昇圧トランス」に、「陰イオン発生機」が「マイナスイオン発生器」に、「空気浄化装置(73)」が「空気清浄装置」に、それぞれ相当している。
また、後者の「前記中心軸線と平行で、前記出口(74)へ向かって延びる4つの放電極(66,66′)及びイオン集塵パネル(68)を備え、4つの放電極(66,66′)に基準電圧が、イオン集塵パネル(68)に高いDC電圧が印加される」ことと、前者の「前記中心軸線と平行で、前記吹き出し口へ向かって延びる1つの電極のみを備え、この1つの電極に高電圧が印加される」こととは、「前記中心軸線と平行で、前記吹き出し口へ向かって延びる少なくとも1つの電極を備え、電極に高電圧が印加される」という概念で共通している。
また、後者の「放電が起こって陰イオンを発生する」ことと、前者の「放電が起こってマイナスイオンを前記吹き出し口から放出する」こととは、「放電が起こってマイナスイオンを発生する」という概念で共通している。

したがって、両者は、
「給電部に装着される被給電部を一端に有し、他端に吹き出し口が設けられ、中心軸線を有する電球型のケースと、
このケース内に収納され、前記被給電部からの交流を直流に変換する交流直流変換器と、
前記ケース内に収納され、前記交流直流変換器からの電圧を昇圧する昇圧トランスと、
前記ケース内に収納され、前記昇圧トランスに接続されたマイナスイオン発生器とからなり、
前記マイナスイオン発生器は、前記中心軸線と平行で、前記吹き出し口へ向かって延びる少なくとも1つの電極を備え、電極に高電圧が印加されることにより放電が起こってマイナスイオンを発生する空気清浄装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:前者では、ケース内に収納され、被給電部からの電力によって点灯する照明灯を有するのに対して、後者ではそのような照明灯を有しない点。
相違点2:マイナスイオン発生器の電極に関し、前者では、前記中心軸線と平行で、前記吹き出し口へ向かって延びる1つの電極のみを備え、この1つの電極に高電圧が印加されるのに対し、後者では、前記中心軸線と平行で、前記出口へ向かって延びる4つの放電極(66,66′)及びイオン集塵パネル(68)を備え、4つの放電極(66,66′)に基準電圧が、イオン集塵パネル(68)に高いDC電圧が印加される点。
相違点3:発生したマイナスイオンに関し、前者では、吹き出し口から放出するのに対し、後者では、発生した陰イオンが出口74から放出されるか否かが明らかでない点。

(4)相違点の判断
上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討する。
引用例には、上記記載事項アに「本発明は空気浄化装置に関するもので、更に具体的には放電ランプのような従来の照明装置と共に一つのユニットに統合されて室内空気を浄化するために簡便に使用することができる空気浄化装置に関するものである。」と、照明装置(照明灯)と共に使用することができる空気浄化装置(空気清浄装置)に関するものであることが記載されており、さらに、上記記載事項エには「ランプ(12)が点灯される時、ランプ(12)から放出された熱の作用により陰イオン発生機(30,30′)の周りに空気対流が自然に起こる。従って、空気が貫通孔(32)と第1絶縁部材(37a)の貫通孔(38)で構成された引込口へ入り込まれるようになる。」と、ランプ(照明灯)から放出された熱の作用により陰イオン発生機(マイナスイオン発生器)の周りに空気対流が自然に起こることが記載されており、引用例の図1には、ランプ(照明灯)を陰イオン発生機(マイナスイオン発生器)に隣接して設けることが図示されているのであるから、引用発明においても、必要に応じて熱の作用を利用した空気対流が起こるようにランプ(照明灯)を陰イオン発生機(マイナスイオン発生器)に隣接して設けるようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることであり、その際に、引用発明では陰イオン発生機(マイナスイオン発生器)はケース内に収納されているのであるから、ランプ(照明灯)もケース内に収納されるようにするとともに、ランプ(照明灯)を電極(被給電部)からの電力によって点灯するようにすることも当業者であれば適宜なし得る設計的事項にすぎない。したがって、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

次に相違点2について検討する。
マイナスイオン発生器の電極として、1つの電極に高電圧を印加することにより放電が起こってマイナスイオンを発生するものは、特開平11-191478号公報(段落【0002】等参照)、特開平10-261477号公報(段落【0002】?【0004】、図1等参照)にも記載されているように周知技術であり、必要に応じてこれを引用発明の陰イオン発生機(マイナスイオン発生器)に適用して上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

次に相違点3について検討する。
マイナスイオンを発生する空気清浄装置において、マイナスイオンをケースの吹き出し口から放出するようにすることは、特開平10-152307号公報、登録実用新案第3045395号公報にも記載されているように周知技術であり、必要に応じてこれを引用発明の出口(吹き出し口)から陰イオン(マイナスイオン)が放出されるようにすること、すなわち上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明、引用例に記載された事項及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年12月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「給電部に装着される被給電部を一端に有し、他端に吹き出し口が設けられ、中心軸線を有する電球型のケースと、
このケース内に収納され、前記被給電部からの交流を直流に変換する交流直流変換器と、
前記ケース内に収納され、前記交流直流変換器からの電圧を昇圧する昇圧トランスと、
前記ケース内に収納され、前記昇圧トランスに接続されたマイナスイオン発生器と、
前記ケース内に収納され、前記被給電部からの電力によって点灯する照明灯とからなり、
前記マイナスイオン発生器は、前記中心軸線と平行で、前記吹き出し口へ向かって延びる電極を備え、この電極に高電圧が印加されることにより、放電が起こってマイナスイオンを前記吹き出し口から放出する、
ことを特徴とする空気清浄装置。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明の電極の個数が一つであることの限定を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)、(4)」で検討したように、引用発明、引用例に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に引用発明、引用例に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-25 
結審通知日 2008-05-07 
審決日 2008-05-20 
出願番号 特願2005-237040(P2005-237040)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61L)
P 1 8・ 575- Z (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岸 智章  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 川本 真裕
八木 誠
発明の名称 空気清浄装置  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 伸一  

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