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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1195203
審判番号 不服2006-1066  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-16 
確定日 2009-04-15 
事件の表示 平成 8年特許願第127583号「アクティブマトリックス液晶ディスプレイデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月13日出願公開、特開平 8-328040〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年5月23日(パリ条約に基づく優先権主張、平成7年5月31日、米国)の出願であって、平成17年10月13日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに平成18年2月10日に手続補正がなされたものである。

2.平成18年2月10日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年2月10日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の記載を以下のように補正しようとするものである。
「【請求項1】
基板を覆って形成された複数のゲートラインと、
前記基板を覆って形成された複数のデータラインと、
前記基板を覆って形成された複数の画素電極と、
を備え、前記画素電極の各々の周縁部は、少なくとも前記ゲートラインの一部及び前記データラインの一部にオーバーラップしており、
さらに、前記ゲートラインを覆って形成された複数のトランジスタを備え、前記ゲートラインの各々が複数のセグメントを有し、各ゲートラインの前記複数のセグメントの各々が前記複数のトランジスタのうちの1つのトランジスタのゲート電極であり、
前記画素電極は前記ゲートラインよりも第1の距離だけ上層にありかつ前記データラインよりも第2の距離だけ上層にあり、前記画素電極の各々の周縁部は、少なくとも、前記第1の距離の少なくとも2倍だけ前記ゲートラインの前記一部にオーバーラップした第1の部分と、前記第2の距離の少なくとも2倍だけ前記データラインの前記一部にオーバーラップした第2の部分を有していることを特徴とするアクテイブマトリックス液晶デイスプレイデバイス。
【請求項2】
基板を覆って形成された複数のゲートラインと、
前記基板を覆って形成された複数のデータラインと、
前記基板を覆って形成された複数の画素電極と、
を備え、前記画素電極の各々の周縁部は、少なくとも前記ゲートラインの一部及び前記データラインの一部にオーバーラップしており、
さらに、前記ゲートラインを覆って形成された複数のトランジスタを備え、前記ゲートラインの各々が複数のセグメントを有し、各ゲートラインの前記複数のセグメントの各々が前記複数のトランジスタのうちの1つのトランジスタのゲート電極であり、
前記画素電極は前記ゲートラインよりも第1の距離だけ上層にあり、前記画素電極の各々の周縁部は、少なくとも、前記第1の距離の少なくとも2倍だけ前記ゲートラインの前記一部にオーバーラップした第1の部分を有していることを特徴とするアクテイブマトリックス液晶デイスプレイデバイス。
【請求項3】
基板を覆って形成された複数のゲートラインと、
前記基板を覆って形成された複数のデータラインと、
前記基板を覆って形成された複数の画素電極と、
を備え、前記画素電極の各々の周縁部は、少なくとも前記ゲートラインの一部及び前記データラインの一部にオーバーラップしており、
さらに、前記ゲートラインを覆って形成された複数のトランジスタを備え、前記ゲートラインの各々が複数のセグメントを有し、各ゲートラインの前記複数のセグメントの各々が前記複数のトランジスタのうちの1つのトランジスタのゲート電極であり、
前記画素電極は前記データラインよりも第1の距離だけ上層にあり、前記画素電極の各々の周縁部は、少なくとも、前記第1の距離の少なくとも2倍だけ前記データラインの前記一部にオーバーラップした第1の部分を有していることを特徴とするアクテイブマトリックス液晶デイスプレイデバイス。
【請求項4】
各々のデータラインが金属層とアモルファス層を含むこと特徴とする、請求項1、2または3に記載のアクテイブマトリックス液晶デイスプレイデバイス。
【請求項5】
前記オーバーラップした第1および第2の部分が少なくとも60°の可視角度を与えることを特徴とする、請求項1に記載のアクテイブマトリックス液晶デイスプレイデバイス。
【請求項6】
前記第1および第2のオーバーラップ部分のうちの一方が少なくとも60°の可視角度を与えることを特徴とする、請求項1に記載のアクテイブマトリックス液晶デイスプレイデバイス。
【請求項7】
前記第1のオーバーラップ部分が少なくとも60°の可視角度を与えることを特徴とする、請求項1に記載のアクテイブマトリックス液晶デイスプレイデバイス。」

(2)補正に対する当審の判断
本件補正は、特許法第17条の2第1項第4号の規定に基づく補正であって、請求項の数を補正前の1から7に増加しようとするものであるところ、このような請求項を増加する補正を例外的に認める事例(「n項引用形式請求項をn-1以下の請求項に変更」することは、特許請求の範囲の減縮に相当するとして許容される(特許庁編「特許・実用新案審査基準」第III部第III節4.3.1(2)参照)。)に該当しないものである。
したがって、本件補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年2月10日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成17年9月21日の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「基板を覆って形成された複数のゲートラインと、
前記基板を覆って形成された複数のデータラインと、
前記基板を覆って形成された複数の画素電極と、
を備え、前記複数の画素電極の各々の周縁部は、少なくとも前記ゲートラインの一部及び前記データラインの一部にオーバーラップしており、
さらに、前記ゲートラインを覆って形成された複数のトランジスタを備え、前記ゲートラインの各々が複数のセグメントを有し、各ゲートラインの前記複数のセグメントの各々が前記複数のトランジスタのうちの1つのトランジスタのゲート電極であることを特徴とするアクティブマトリックス液晶ディスプレイデバイス。」(以下、「本願発明」という。)

(2)刊行物記載の事項
(2-1) 原査定の拒絶の理由に引用した、この出願の優先日前に頒布された刊行物1:特開昭62-223727号公報には、以下の事項が記載されている。
「絶縁基板上にSi薄膜1を所定の形状にした後、ゲート絶縁膜、ゲート電極配線を行う。ゲート電極をマスクとしてイオン注入によりソース・ドレイン形成を行った後、層間絶縁膜形成し所定の位置に開口部を形成し、さらにソース線3を形成する。ゲート電極配線2及びソース線3はそれぞれタイミング線2、データ線3であり、タイミング線2及びデータ線3が格子状に形成され、その交点にトランジスタを形成したいわゆるアクティブマトリクス基板となる。なおソース線及びゲート電極配線は遮光性を有する導電性物質・・・にすればさらに効果がある。このアクティブマトリクス基板上に層間絶縁膜を形成し所定の位置に開口を形成し、ITO・・・等の透明導電膜により画素電極4を形成する。このとき各画素電極間の絶縁のためのスペースSはゲート電極配線(タイミング線2)及びソース線(データ線3)上に形成する。・・・以上の基板を液晶パネルのパネル組立てで行われる通常の工程に従って、・・・液晶を封入して液晶パネルとなす。」(2頁右上欄17行?同右下欄3行)、

「以上述べたように本発明によれば、液晶パネルの性能を大巾に向上できる。第1図及び第2図を比較して見れば、従来の構造では第2図のように画素電極の隙間16から光がもれるためコントラストは大巾に低下する。・・・一方本発明の構造によれば第1図の例の場合61.7%の透過率を有ししかもアクティブマトリクス基板のデータ線及びゲート線を遮光膜として利用していることから、合せずれもなくもれ光はない。」(2頁右下欄5行?3頁左上欄2行)。

また、第1図から、「複数の画素電極間の絶縁のためのスペースSがゲート電極配線2及びソース線3上に形成された結果、前記複数の画素電極4の各々の周縁部は、ゲート電極配線2の一部及びソース線3の一部にオーバーラップしていること」が見てとれる。

上記によれば、刊行物1には、
「絶縁基板上にゲート電極配線2を行った後、その上に層間絶縁膜、さらにソース線3を形成し、前記ゲート電極配線2及び前記ソース線3が格子状に形成され、その交点にトランジスタを形成したアクティブマトリクス基板の上に複数の画素電極4を形成し、前記複数の画素電極4の各々の周縁部は、前記ゲート電極配線2の一部及び前記ソース線3の一部にオーバーラップしてなる液晶パネル。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(2-2)原査定において周知例として引用した刊行物2:特開平7-66419号公報には、アクティブマトリックス方式の液晶表示装置に関して、以下の事項が記載されている。
「【0009】
開口率を上げるために、図6に示すように、薄膜トランジスタ16を走査信号配線上に形成することが考えられる。薄膜トランジスタ16を走査信号配線13上に形成した場合の薄膜トランジスタ16周辺部の拡大図を図7に、また図7のA-A’断面図を図8に示す。さらに、他の例を図9に、また図9のA-A’断面図を図10に示す。図7ないし図10において、17、24は走査信号配線兼薄膜トランジスタのゲート電極、18、25は画像信号配線兼薄膜トランジスタのソース電極、19、26は画素電極兼薄膜トランジスタのドレイン電極、20、27は薄膜トランジスタの半導体層、21、28は絶縁層、22、29はガラス基板、23、30は薄膜トランジスタのチャネル部である。」

また、図6、図9及び図10の記載から、
「各画素に対応する薄膜トランジスタを走査信号配線と画像信号配線との各交点に備えたアクティブマトリックス方式の液晶表示装置において、前記薄膜トランジスタは、走査信号配線上に形成され、ゲート電極を形成するために走査信号配線から延出する付加的構造を有しないで、走査信号配線の一区分を薄膜トランジスタのゲート電極とし、その上に絶縁層28を介して薄膜トランジスタの半導体層27が形成され、該半導体層27上にソース電極及びドレイン電極がチャネル部30を挟んで接続されていること」が見てとれる。

(3)対比
本願発明と上記引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「絶縁基板」、「ゲート電極配線2」、「ソース線3」及び「液晶パネル」は、それぞれ、本願発明の「基板」、「ゲートライン」、「データライン」及び「アクティブマトリックス液晶ディスプレイデバイス」に相当する。

よって、両者は、
「基板を覆って形成された複数のゲートラインと、
前記基板を覆って形成された複数のデータラインと、
前記基板を覆って形成された複数の画素電極と、
を備え、前記複数の画素電極の各々の周縁部は、少なくとも前記ゲートラインの一部及び前記データラインの一部にオーバーラップしており、
さらに、複数のトランジスタを備えていることを特徴とするアクティブマトリックス液晶ディスプレイデバイス。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願発明は、ゲートラインを覆って形成された複数のトランジスタを備え、前記ゲートラインの各々が複数のセグメントを有し、各ゲートラインの前記複数のセグメントの各々が前記複数のトランジスタのうちの1つのトランジスタのゲート電極であるのに対して、引用発明のトランジスタはこの様な構成を有しない点。

(4)判断
先ず、本願発明の「ゲートラインのセグメント」について検討するに、本願明細書の【0018】には、
「図2は、図1のII-IIラインに沿った画素領域201の断面図であり、画素201に対応するTFT50と、画素301に対応するTFT50を示す。ゲートライン34は、基板52の表面に形成される。基板52およびゲートライン34の上に、ゲート絶縁層56が形成される。ゲート絶縁層56の表面で、ゲートライン34のセグメント上にアモルファスシリコン層58が形成される。ゲートラインのセグメントは、TFT50のゲート電極として作用する。ゲート電極を形成するためにゲートライン34から延出する付加的構造はない。」
と記載されており、他の記載を見ても、「ゲートラインのセグメント」に関する定義はみあたらない。
一方、「セグメント」は、広辞苑第五版(株式会社岩波書店)に「(1)分節。区分。(2)〔化〕鎖状高分子の分子内の運動単位となる一定の長さの部分。」と説明されているから、「ゲートラインのセグメント」は、『ゲートラインの一区分』という程度の意味と解される。
そうしてみると、本願発明における「ゲートラインのセグメント」は、請求項に記載されたとおり、「ゲートラインの前記複数のセグメントの各々が・・・トランジスタのゲート電極」なのであり、『ゲート電極を形成するためにゲートラインから延出する付加的構造を有しないでゲートライン自体を複数のトランジスタのゲート電極として用いるもの』において、『トランジスタのゲート電極として用いられるゲートラインの一区分』を意味するものと解される。

そこで、本願発明の上記相違点について検討する。
上記(2)刊行物記載の事項の(2-2)において摘記した、刊行物2の記載事項からも明らかなように、ゲートラインを覆って形成された複数のトランジスタを備え、ゲート電極を形成するためにゲートラインから延出する付加的構造を有しないでゲートライン自体を複数のトランジスタのゲート電極として用いることは、この種アクティブマトリクス型液晶表示装置において従来周知の技術(上記刊行物2以外に、特開平6-332010号公報及び特開平5-119350号公報をも参照。)である。
しかも、引用発明は上記従来周知の技術と同一の技術分野に属しているから、引用発明の液晶パネルのトランジスタに代えて上記従来周知の薄膜トランジスタの技術を適用することに格別困難性はない。

そして、本願発明によってもたらされる効果は、刊行物1に記載されたもの及び上記従来周知の技術から予測し得る程度のものであり、格別とはいえない。

(5)むすび
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び上記従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-23 
結審通知日 2008-01-29 
審決日 2008-02-12 
出願番号 特願平8-127583
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G02F)
P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 裕之奥田 雄介  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 吉野 公夫
吉田 禎治
発明の名称 アクティブマトリックス液晶ディスプレイデバイス  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  

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