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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1196029
審判番号 不服2007-1987  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-18 
確定日 2009-04-09 
事件の表示 特願2002-146073「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月25日出願公開、特開2003-334302〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯等
本願は、平成14年5月21日の出願であって、平成18年8月22日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年10月25日付けで手続補正がされ、同年12月13日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成19年1月18日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年2月13日付けで手続補正がされたものである。

第2.平成19年2月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年2月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「表示状態が変化可能な複数の変動表示領域を有する変動表示装置と、
前記複数の変動表示領域の各々で複数の識別情報を変動表示させることで変動表示ゲームを前記変動表示装置に表示させる表示制御手段と、を備え、
前記変動表示ゲームの結果が特別表示結果となった場合に、遊技状態を遊技者にとって有利な特別遊技状態にするようにした遊技機において、
前記表示制御手段は、前記変動表示ゲームの実行時間内に結果が導出されるとともに該変動表示ゲームの結果と同等な結果を導出し、該変動表示ゲームとは表示態様の異なる補助ゲームを前記変動表示装置に表示させる補助ゲーム制御手段を備え、
遊技者の操作に基づき前記補助ゲームに介入するための操作手段を備え、
前記補助ゲーム制御手段は、前記変動表示ゲームにおいてリーチ状態が発生した場合に識別情報を縮小表示して前記補助ゲームを表示するものとし、該補助ゲームが表示された場合でも、前記操作手段による補助ゲームへの介入が行われなかった場合には、補助ゲームの表示を中止する補助ゲーム中止手段を備え、
前記補助ゲーム中止手段により補助ゲームの表示が中止された場合には、前記縮小表示された識別情報を拡大して該識別情報の変動表示により行われるリーチ状態の表示に戻すようにしたことを特徴とする遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。

上記補正は、補正前の「前記変動表示ゲームに関連した補助ゲーム」を「前記変動表示ゲームの実行時間内に結果が導出されるとともに該変動表示ゲームの結果と同等な結果を導出し、該変動表示ゲームとは表示態様の異なる補助ゲーム」と限定するものであり、補正前の「リーチ状態が発生した場合に前記補助ゲームを表示する」を「リーチ状態が発生した場合に識別情報を縮小表示して前記補助ゲームを表示する」と限定し、補正前の「補助ゲームを中止する補助ゲーム中止手段」を「補助ゲームの表示を中止する補助ゲーム中止手段」と限定し、補正前の「補助ゲームが中止された場合には、当該補助ゲームの表示を、変動表示領域において識別情報の変動表示により行われるリーチ状態の表示に切り換える」を「補助ゲームの表示が中止された場合には、前記縮小表示された識別情報を拡大して該識別情報の変動表示により行われるリーチ状態の表示に戻す」と限定するものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-192501号公報(公開日:平成10年7月28日)(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
・記載事項1
「少なくとも2個以上の設定個数の図柄を可変表示する可変表示装置と、
前記可変表示装置の設定個数の図柄の表示態様が予め定められた特定表示態様になると遊技者に有利な特定遊技を実施する機会を与えるように構成された弾球遊技機において、前記可変表示装置によって表示される前記設定個数の図柄のうち最後に停止表示される図柄の表示態様によっては、前記特定表示態様を構成するリーチ状態となった場合に、前記可変表示装置に標的図柄と、前記標的図柄を攻撃する攻撃手段とを表示し、前記攻撃手段による前記標的図柄への攻撃が成功したときには、前記最後の図柄を前記特定表示態様が構成されるように停止させ、前記標的図柄への攻撃が失敗したときには前記最後の図柄を前記特定表示態様が構成されないように制御する表示制御手段を備えたことを特徴とする弾球遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
・記載事項2
「まず図1に示す弾球遊技機17の制御を司る電子制御装置1の構成について説明する。電子制御装置1は可変表示装置2を備え、これは画像処理装置3と液晶表示画面4とからなるものである。この画像処理装置3は、画像データを格納する画像データROM(図示せず)と、画像データROMから画像データを読みだし、後述のCPU10の指示に基づいて画像演算処理を行い画像データを発生する画像データプロセッサ(図示せず)と、画像データを一時的に格納する画像データRAM(図示せず)とからなるものである。画像処理装置3は、CPU10からの指令があると、必要な画像データを選択し、そのデータ処理を行い、特別図柄表示装置としての液晶表示画面4に可変表示を行うものである。」(段落【0009】)
・記載事項3
「特別図柄表示装置としての液晶表示画面4について詳細に説明する。図2に示す通り、液晶表示画面4は、3桁の特別図柄の変動及び停止を可変表示部5?7に行うとともに(図6(a)参照)、リーチ表示のときにUFO8とレーザービーム発射装置9を表示し、レーザービーム発射装置9からUFO8へレーザービームの発射を行うものである(図6(b)参照)。そして、レーザービーム発射装置9からUFO8へのレーザービーム発射が命中してUFO8が撃破されたときには、特別図柄「777」を縮小表示するとともに撃破されたシーンを表示し(図7参照)、後述の大入賞口36を遊技者に有利な状態に変化させる(特別遊技状態)ように構成されている。即ち、特別図柄は、それぞれ、「0」?「9」,「A」,「B」,「C」からなる13種類の数字から構成される図柄配列からなり、その内の当り図柄は3桁同一値(ゾロ目)となる場合に成立するのであり、それ以外は外れ図柄となる。」(段落【0011】)
・記載事項4
「尚、具体例1の場合、操作手段は設けられていないが、具体例2の場合、発射ハンドル25に操作手段としての攻撃ボタン22が設けられ、この攻撃ボタン22を操作することにより、遊技者がレーザービーム発射装置9の攻撃をすることが可能とされている。」(段落【0018】)
・記載事項5
「【具体例2】次に具体例2は、上述した具体例1とほぼ同様の構成であるが図9に示すように、液晶表示画面64に表示される標的図柄である怪獣58を攻撃手段であるミサイル戦闘機59で攻撃できるとともに、遊技者が操作手段を構成する攻撃ボタン22(図3参照)によってもミサイル戦闘機59から攻撃操作できるようにされている点が異なっている。しかし、標的図柄である怪獣58が撃破されるかどうかは判定確率に基づいて決定されることは同様である。例えば、判定結果が外れの場合に、あたかも遊技者が操作して怪獣58を撃破できなかったように表示させることとする。尚、遊技者が所定の時間内に攻撃ボタン22の操作を終了させなかった場合、判定結果に基づいて遊技機側で操作させてしまうような構成とする。」(段落【0035】)
・記載事項6
「図8において、まずS200でリーチかどうか判断する。つまりリーチ決定乱数が「5」であるかどうか判断し、肯定判断ならS210で怪獣58及びミサイル戦闘機59を表示させる。S230で攻撃ボタン22が押されたかどうか判断され、肯定判断ならS240でそれに対応した画像を読み出し、攻撃ボタン22の操作に対応させるためS30、S40で決定された画像とは異なる攻撃シーンを示す画像パターンを決定する。S230で否定判断ならS250で所定時間経過したかどうか判断する。否定判断ならS230に戻り攻撃ボタン22が押されるまでループ処理を行う。一方、S250で肯定判断ならS240へ移行し、画像パターンには変更を加えない(S240)。そして、S260で当り図柄かどうか判断し、肯定判断ならS270で攻撃成功パターン決定カウンタGのカウント値に対応するミサイル戦闘機59が怪獣58を攻撃するシーンを示す画像を読み出し液晶表示画面54のほとんどの部分に表示するとともにリーチ状態の特別図柄を液晶表示画面54の上部にある小さくされた可変表示部55?57に表示する(図9(a)参照)。そして、例えば、ミサイル戦闘機59が怪獣58を攻撃し怪獣58が退散するシーンを示す画像を表示したら、可変表示部56の図柄を停止表示させ当り表示を確定する(図9(b)参照)。一方、S260で否定判断ならS280で攻撃失敗パターンに対応する画像を液晶表示画面54に表示するとともに、可変表示部55?57に外れ図柄を表示する。なお、S200で否定判断なら、S220では怪獣58及びミサイル戦闘機59の表示は禁止され、液晶表示画面54の大部分に可変表示部55?57が表示され、可変表示部56の図柄を停止させて、外れ表示を確定する。」(段落【0037】)
・記載事項7
「以上説明した具体例2によれば、具体例1と同様に、怪獣58とミサイル戦闘機59はリーチのときだけに表示されることで、攻撃の成否と、リーチ表示とが直結することになる。つまり、リーチ表示の有無で怪獣58とミサイル戦闘機59の表示の有無を明確に区切ることにより、インパクトのあるゲーム性が実現できることになる。その上、操作手段である攻撃ボタン22により、遊技者が主体的に遊技に参加することで、受け身の遊技から脱却でき、趣向性が高まるといった効果がある。」(段落【0038】)

以上の記載事項を含む全記載及び図示によれば、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。

「3桁の特別図柄の変動及び停止を可変表示部5?7に行う液晶表示画面4と、
必要な画像データを選択し、そのデータ処理を行い、特別図柄表示装置としての液晶表示画面4に可変表示を行う画像処理装置3と、を備え、
特別図柄が3桁同一値(ゾロ目)となる場合に大入賞口36を遊技者に有利な状態に変化させる(特別遊技状態)ように構成された弾球遊技機において、
リーチのときに怪獣58とミサイル戦闘機59を液晶表示画面4に表示し、S260で当り図柄かどうか判断し、肯定判断ならミサイル戦闘機59が怪獣58を攻撃し怪獣58が退散するシーンを示す画像を表示したら、可変表示部56の図柄を停止表示させ当り表示を確定する、一方、S260で否定判断ならS280で攻撃失敗パターンに対応する画像を液晶表示画面54に表示するとともに、可変表示部55?57に外れ図柄を表示し、
操作手段を構成する攻撃ボタン22によってミサイル戦闘機59から攻撃操作できるようにされ、
リーチ時には特別図柄を液晶表示画面54の上部にある小さくされた可変表示部55?57に表示して、ミサイル戦闘機59及び怪獣58を液晶表示画面54のほとんどの部分に表示するとともに、遊技者が所定の時間内に攻撃ボタン22の操作を終了させなかった場合、判定結果に基づいて遊技機側で操作させる、弾球遊技機。」(以下、「引用発明」という。)

3.対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「可変表示部5?7」は本願補正発明の「複数の変動表示領域」に相当し、以下同様に、「液晶表示画面4」は「変動表示装置」に、「特別図柄」は「識別情報」に、「画像処理装置3」は「表示制御手段」に、「3桁同一値(ゾロ目)となる場合」は「特別表示結果」に、「操作手段を構成する攻撃ボタン22」は「操作手段」に、それぞれ相当する。また、「弾球遊技機」は「遊技機」の一種である。
そして、引用発明について、以下のことがいえる。
(1)「3桁の特別図柄の変動及び停止を可変表示部5?7に行う液晶表示画面4」が本願補正発明の「表示状態が変化可能な複数の変動表示領域を有する変動表示装置」に相当する。
(2)特別図柄が変動を開始し停止するまでの「可変表示」が本願補正発明の「可変表示ゲーム」に相当することは明らかであるから、「必要な画像データを選択し、そのデータ処理を行い、特別図柄表示装置としての液晶表示画面4に可変表示を行う画像処理装置3」は本願補正発明の「前記複数の変動表示領域の各々で複数の識別情報を変動表示させることで変動表示ゲームを前記変動表示装置に表示させる表示制御手段」に相当する。
(3)「特別図柄が3桁同一値(ゾロ目)となる場合に大入賞口36を遊技者に有利な状態に変化させる(特別遊技状態)ように構成された弾球遊技機において、」は本願補正発明の「前記変動表示ゲームの結果が特別表示結果となった場合に、遊技状態を遊技者にとって有利な特別遊技状態にするようにした遊技機において、」に相当する。
(4)リーチとなった場合に、怪獣58とミサイル戦闘機59を液晶表示画面4に画像表示し、当り図柄の場合には怪獣58が退散するシーンを画像表示し、当り図柄でない場合には攻撃失敗パターンに対応する画像表示しているが、このような「画像表示」は可変表示部5?7の「可変表示」とは表示態様が異なることは自明であって、本願補正発明の「補助ゲーム」に相当する。また、当該「画像表示」においては、当り図柄の場合には怪獣58が退散するシーンを表示し、当り図柄でない場合には攻撃失敗パターンに対応する画像を表示するものであるから、当該「画像表示は「可変表示」の結果と同等な結果を導出するものである。更に、「怪獣58が退散するシーンを示す画像を表示したら、可変表示部56の図柄を停止表示させ当り表示を確定する」及び「攻撃失敗パターンに対応する画像を液晶表示画面54に表示するとともに、可変表示部55?57に外れ図柄を表示し」との構成から見て、当該「画像表示」は「可変表示」の実行時間内に結果を導出しているものと認められる。
そうすると、引用発明は、「画像表示」を制御する手段を当然有しているものであり、本願補正発明の構成と同様の「表示制御手段は、変動表示ゲームの実行時間内に結果が導出されるとともに変動表示ゲームの結果と同等な結果を導出し、変動表示ゲームとは表示態様の異なる補助ゲームを変動表示装置に表示させる補助ゲーム制御手段を備え、」なる構成を実質的に具備するものである。
(5)「操作手段を構成する攻撃ボタン22」は、遊技者が操作して液晶表示画面4に表示されているミサイル戦闘機59からの攻撃を操作するものであるから、「操作手段を構成する攻撃ボタン22によってミサイル戦闘機59から攻撃操作できるようにされ、」は本願補正発明の「遊技者の操作に基づき前記補助ゲームに介入するための操作手段を備え、」に相当する。
(6)「リーチ時には特別図柄を液晶表示画面54の上部にある小さくされた可変表示部55?57に表示して、ミサイル戦闘機59及び怪獣58を液晶表示画面54のほとんどの部分に表示する」ことから、引用発明は本願補正発明の構成と同様の「補助ゲーム制御手段は、変動表示ゲームにおいてリーチ状態が発生した場合に識別情報を縮小表示して補助ゲームを表示するもの」なる構成を実質的に具備するものである。
(7)引用発明は、ミサイル戦闘機59及び怪獣58が表示されても遊技者が所定の時間内に攻撃ボタン22の操作を終了させなかった場合すなわち操作手段による補助ゲームへの介入が行われなかった場合に「判定結果に基づいて遊技機側で操作」されるものであるのに対し、本願補正発明は「補助ゲームの表示を中止する」ものであるが、両者は補助ゲームが表示された場合で操作手段による補助ゲームへの介入が行われなかった場合の対処手段を備えているという点では一致している。

以上により、本願補正発明と引用発明は、
「表示状態が変化可能な複数の変動表示領域を有する変動表示装置と、
複数の変動表示領域の各々で複数の識別情報を変動表示させることで変動表示ゲームを変動表示装置に表示させる表示制御手段と、を備え、
変動表示ゲームの結果が特別表示結果となった場合に、遊技状態を遊技者にとって有利な特別遊技状態にするようにした遊技機において、
表示制御手段は、変動表示ゲームの実行時間内に結果が導出されるとともに変動表示ゲームの結果と同等な結果を導出し、変動表示ゲームとは表示態様の異なる補助ゲームを変動表示装置に表示させる補助ゲーム制御手段を備え、
遊技者の操作に基づき補助ゲームに介入するための操作手段を備え、
補助ゲーム制御手段は、変動表示ゲームにおいてリーチ状態が発生した場合に識別情報を縮小表示して補助ゲームを表示ものとし、補助ゲームが表示された場合で操作手段による補助ゲームへの介入が行われなかった場合の対処手段を備えた遊技機」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
操作手段による補助ゲームへの介入が行われなかった場合の対処手段が、本願補正発明では補助ゲームの表示を中止する補助ゲーム中止手段であるのに対し、引用発明では判定結果に基づいて遊技機側で操作する手段である点。
<相違点2>
本願補正発明では、補助ゲーム中止手段により補助ゲームの表示が中止された場合には、縮小表示された識別情報を拡大して該識別情報の変動表示により行われるリーチ状態の表示に戻すようにしたのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点。

4.判断
上記相違点1及び2は関連しているので、以下に、あわせて検討する。
操作手段の操作がされればその後実行されるゲームを、遊技者により操作手段が操作されなかった場合に実行しないことは、特開2001-276320号公報(段落0118参照)、特開平10-137405号公報(段落0096及び段落0107参照)、特開2000-325556号公報(段落0057参照)に示されるように、従来周知の技術手段である。
そうすると、上記周知技術を参酌すると、引用発明において、操作手段による補助ゲームへの介入が行われなかった場合に、補助ゲームを遊技機側で操作することに代えて、当該補助ゲームを中止することを採用することに困難性はなく、それに伴い補助ゲーム中止手段を備えるようにすることは当然のことである。
そして、遊技機において、通常状態として識別情報を大きく表示して変動させることは普通のことであって、可変表示時の最初の時、リーチにならない時、リーチになっても信頼度が低い時にはこのような変動表示がよく行われており、常套手段といってもよく、引用文献にも図6(a)として記載されている。また、識別情報が小さく表示されている状態と識別情報が大きく表示されている状態を適宜切り換えることは、特開平9-19550号公報、特開2001-187228号公報に示される従来周知の技術手段である。 そうすると、識別情報を大きく表示して変動させることを表示として採用することは安易かつ容易な選択であるから、引用発明において、補助ゲームを中止した場合に、変動表示装置における表示として、補助ゲームの表示を中止し、識別情報を拡大して該識別情報の変動表示により行われるリーチ状態に戻すことに困難性はない。
したがって、引用発明において、上記周知技術、上記常套手段に基づけば、相違点1及び2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者にとって容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明、上記周知技術、上記常套手段から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、上記周知技術、上記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明の認定
平成19年2月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年10月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「表示状態が変化可能な複数の変動表示領域を有する変動表示装置と、
前記複数の変動表示領域の各々で複数の識別情報を変動表示させることで変動表示ゲームを前記変動表示装置に表示させる表示制御手段と、を備え、
前記変動表示ゲームの結果が特別表示結果となった場合に、遊技状態を遊技者にとって有利な特別遊技状態にするようにした遊技機において、
前記表示制御手段は、前記変動表示ゲームに関連した補助ゲームを前記変動表示装置に表示させる補助ゲーム制御手段を備え、
遊技者の操作に基づき前記補助ゲームに介入するための操作手段を備え、
前記補助ゲーム制御手段は、前記変動表示ゲームにおいてリーチ状態が発生した場合に前記補助ゲームを表示するものとし、該補助ゲームが表示された場合でも、前記操作手段による補助ゲームへの介入が行われなかった場合には、補助ゲームを中止する補助ゲーム中止手段を備え、
前記補助ゲーム中止手段により補助ゲームが中止された場合には、当該補助ゲームの表示を、変動表示領域において識別情報の変動表示により行われるリーチ状態の表示に切り換えるようにしたことを特徴とする遊技機。」

2.本願発明の進歩性の判断
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2の「1.補正後の発明」で記載したように限定した本願補正発明から、当該限定を戻すものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用発明、上記周知技術、上記常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、上記周知技術、上記常套手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、上記周知技術、上記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-04 
結審通知日 2009-02-10 
審決日 2009-02-23 
出願番号 特願2002-146073(P2002-146073)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 康夫  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 池谷 香次郎
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 荒船 博司  

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