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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61N
管理番号 1196129
審判番号 不服2008-13950  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-04 
確定日 2009-04-08 
事件の表示 特願2005-209368号「携帯用除細動器試験方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年11月17日出願公開、特開2005-319322号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1994年5月18日(パリ条約による優先権主張1993年5月18日、米国)を国際出願日とする出願の一部を平成11年6月23日に新たな出願とし、さらにこの出願の一部を平成17年7月20日に新たな出願としたものであって、平成20年3月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年6月4日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年7月4日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年7月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年7月4日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(2-1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を
「携帯用外部除細動器の動作状態を自動的に判断及び指示する方法であって、
複数の異なる周期で該携帯用外部除細動器の各構成要素又は機能性の異なる自己試験を自動的に行うため該携帯用外部除細動器に記憶されているスケジュールを提供する工程と、前記スケジュールに従って自動的且つ周期的に試験信号を発生する工程と、該試験信号に応答して前記いくつかの自己試験のうち少なくとも一つの予定された自己試験を実行する工程と、該自己試験の結果に応答して該携帯用外部除細動器の状態を指示する工程とを含むことを特徴とする方法。」(下線は補正箇所)とすることを含むものである。

上記請求項1の記載での補正事項は、
(イ)補正前の「携帯用除細動器」を、補正後の「携帯用外部除細動器」にし、
(ロ)補正前の「自己試験を行う」を、補正後の「自己試験を自動的に行う」にし、
(ハ)補正前の「スケジュール」を、補正後の「該携帯用外部除細動器に記憶されているスケジュール」にするものである。
ここで、
・補正事項(イ)は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「携帯用除細動器」について、これが「外部」にあるという限定事項を付加し、
・補正事項(ロ)は、同「自己試験」について、これが「自動的に」行われるという限定事項を付加し、
・補正事項(ハ)は、同「スケジュール」について、これが「該携帯用外部除細動器に記憶されている」という限定事項を付加するものであり、
かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-2)引用例の記載事項
原査定の拒絶理由で引用した、本願優先日前頒布された特開平1-320069号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載がある。
(a)特許請求の範囲の請求項22
「(22)治療可能な心臓の不整脈を検出しそれに応じて電気的療法を施す患者着用式の装置であって、該装置は継続的に心拍数を監視する皮膚接触式の監視手段と、電気的エネルギー源と、皮膚接触式の電極手段と監視手段からの信号を受けてメモリ内の情報と比較し、治療可能な不整脈の存在を判別する判別手段と、判別手段により駆動され治療可能な不整脈の検出に応答して電気的エネルギー源を電極手段に接続し、心臓に対して適当な電気的整調を成すスイッチング手段と、前記判別に応答して前記判別手段により駆動され患者の皮膚と電極手段との境界に於ける電流の流れに対する抵抗を減少させるインピーダンス低減手段とを含む胴体ハーネスまたは胴衣の形式であることを特徴とする装置。」

(b)特許請求の範囲の請求項24
「(24)前記判別手段は心拍数が予め決められた値以上であることを検出する手段を含み前記電気的エネルギー源は細動除去を行う為に電極手段に細動除去用パルスを印加するように成されていることを特徴とする請求項22に記載の装置。」

(c)公報第7頁右上欄第9から17行
「概略的に述べれば、図面に示された発明の好ましい態様においては、第4図の全体図に示された装置10或は第7及び8図の全体図に示された装置200の如き患者が着用可能な自動電気的心臓治療装置及び患者に使用されないときに治療装置10又は200がその上に置かれて、装置の手入れ、プログラム、充電のために使用される第6図の全体図に示されたメインテナンス用サブシステム又はモジュール12とが設けられている。」

(d)公報第9頁右下欄第16行から同第10頁左上欄第8行
「装置に含まれるその他の機能としては送/受信機140、アンテナ142及びメインテナンス用システムの充電用ボート148に差し込んで充電可能なバッテリーパック146を含む電源144を用いたメインテナンス用システムとの無線周波通信リンクが可能である。「患者着用」センサ(スイッチ122)を設け装置が患者に正しく着用されていることをマイクロプロセッサに知らせるようにしても良い。また自己試験機能を含めることも可能である。こうして、「ライブマン」スイッチの一つを押すことにより、患者はスピーカ132により装置の状態及び/又は障害状態を報知するテストプログラムを開始することができる。」

(e)公報第10頁右上欄第19行から同左下欄第12行
「メインテナンス用システムはまたベルトの為の試験装置として動作させることもできる。この目的のために、試験電極出力端166(第6図)がセンサ168によって判断される如くベルトがメインテナンス用システム上にあるときにECG試験電極がベルトピックアップ電極の近傍に位置するように配置されると良い。同様に呼吸変換器170及びマイクロフォン試験変換器154を対応するセンサの近傍に配置するようにすると良い。これによって回路162(第1図)を用いてベルト及び検出機構の全ての機能的試験を行うことが可能になる。この試験は自動的に成されるようにしてもよく、また患者がテストボタン174を用いることによって開始されるようにしても良い。」

(f)上記(d)、(e)の記載事項より、メインテナンス用システムが、患者着用式の細動除去を行う装置のベルト及び検出機構の全ての機能的試験を行なっており、これからして、該装置の自己試験機能についても、機能性の異なる自己試験を行っていると見るのが妥当であるので、引用例には、「患者着用式の細動除去を行う装置が機能性の異なる自己試験を行なう」ことが記載されているに等しい。

(g)上記(d)、(e)の記載事項より、患者着用式の細動除去を行う装置のスイッチを押すことによりテストプログラムが開始しており、これからして、テストプログラム自体、該装置に記憶されているといえるので、引用例には、「患者着用式の細動除去を行う装置に記憶されているテストプログラム」が記載されているに等しい。

(h)上記(d)、(e)の記載事項より、テストプログラムに従って自己試験が行なわれており、ここで、テストプログラムに従って行われる試験において、テストプログラムに従って試験信号を発生すると共に、試験信号に応答して試験を実行すること自体、常套手段であるので、引用例には、「テストプログラムに従って試験信号を発生する」こと、および「試験信号に応答して自己試験を実行する」ことが記載されているに等しい。

(i)上記(d)の記載事項より、患者着用式の細動除去を行う装置を患者が使用しており、ここで、該装置を使用すること自体、該装置の機能を発現させて使用することであって、機能を発現させる方法を包含しており、さらに、当然、幾つかの工程を経ることで機能が発現しているといえるので、引用例には、「機能を発現させる方法」および「幾つかの工程を経ることで発現される機能(幾つかの工程を含む機能)」が記載されているに等しい。

(a)ないし(i)の記載事項より、引用例には、
「患者がスイッチを押すことで『患者着用式の細動除去を行う装置』の状態の自己試験及び報知を発現させる方法であって、
『患者着用式の細動除去を行う装置』の機能性の異なる自己試験を行うため『患者着用式の細動除去を行う装置』に記憶されているテストプログラムに従って試験信号を発生し、試験信号に応答して自己試験を実行する工程と、『患者着用式の細動除去を行う装置』の状態及び/又は障害状態を報知する工程とを含む方法。」の発明が開示されている。

(2-3)対比・判断
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比する。
○引用例記載の発明の「『患者着用式の細動除去を行う装置』」、「自己試験」、「報知」は、
本願補正発明の「携帯用外部除細動器」、「判断」および「自己試験」、「指示」のそれぞれに相当する。

○引用例記載の発明の「機能性の異なる自己試験」は、本願補正発明の「各構成要素又は機能性の異なる自己試験」に相当する。

○引用例記載の発明の「状態を自己試験(判断)及び報知(指示)」することは、装置が正常に動作するか否か(動作状態)を判断及び指示することであるので、本願補正発明の「動作状態を判断及び指示」することに相当する。

○引用例記載の発明の「自己試験(判断)及び報知(指示)を発現させる方法」は、本願補正発明の「判断及び指示する方法」に相当する。

○引用例記載の発明の「『患者着用式の細動除去を行う装置』(携帯用外部除細動器)の機能性の異なる自己試験を行うため『患者着用式の細動除去を行う装置』(携帯用外部除細動器)に記憶されているテストプログラムに従って試験信号を発生し、試験信号に応答して自己試験を実行する工程」と、
本願補正発明の「複数の異なる周期で携帯用外部除細動器の各構成要素又は機能性の異なる自己試験を自動的に行うため携帯用外部除細動器に記憶されているスケジュールを提供する工程と、スケジュールに従って自動的且つ周期的に試験信号を発生する工程と、試験信号に応答していくつかの自己試験のうち少なくとも一つの予定された自己試験を実行する工程」とは、
「携帯用外部除細動器の各構成要素又は機能性の異なる自己試験を行うため携帯用外部除細動器に記憶されているテストプログラムを提供し、テストプログラムに従って試験信号を発生し、試験信号に応答して自己試験を実行する工程」という点で共通する。

してみると、引用例記載の発明は、
「携帯用外部除細動器の動作状態を判断及び指示する方法であって、
該携帯用外部除細動器の各構成要素又は機能性の異なる自己試験を行うため該携帯用外部除細動器に記憶されているテストプログラムを提供し、前記テストプログラムに従って試験信号を発生し、該試験信号に応答して自己試験を実行する工程と、該自己試験の結果に応答して該携帯用外部除細動器の状態を指示する工程とを含む方法。」に相当するものであって、この点において両者は一致し、以下の点で相違している。

◇相違点1
本願補正発明では、携帯用外部除細動器による自己試験を「自動的に」行っているのに対して、
引用例記載の発明では、患者がスイッチを押すことで行っている点。

◇相違点2
本願補正発明では、「複数の異なる周期で携帯用外部除細動器の各構成要素又は機能性の異なる自己試験を行うため携帯用外部除細動器に記憶されているスケジュールを提供する工程と、スケジュールに従って周期的に試験信号を発生する工程と、試験信号に応答していくつかの自己試験のうち少なくとも一つの予定された自己試験を実行する工程」であるのに対して、
引用例記載の発明では、「携帯用外部除細動器の各構成要素又は機能性の異なる自己試験を行うため携帯用外部除細動器に記憶されているテストプログラムを提供し、テストプログラムに従って試験信号を発生し、試験信号に応答して自己試験を実行する工程」(以下、「実行する工程」という。)である点。

上記両相違点について検討する。
◆相違点1について
上記2.(2-2)の記載事項(e)で示したように、引用例には、メインテナンス用システムによる自己試験を「自動的に」行うことが記載されているので、
引用例記載の発明において、携帯用外部除細動器による自己試験を、メインテナンス用システムによる自己試験と同様に「自動的に」行うことは、当業者であれば普通に行うことである。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、引用例記載の発明に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

◆相違点2について
一般に、プログラムに従った試験において、「周期的に信号(試験信号)を発生し、信号に応答して試験を実行する」こと自体、本願出願前周知の事項(例えば、特開昭59-218594号公報、特開昭63-233378号公報、特開昭59-155269号公報参照)である。
そうすると、引用例記載の発明の上記「実行する工程」に上記周知の事項を適用することで、「周期的に携帯用外部除細動器の各構成要素又は機能性の異なる自己試験を行うため携帯用外部除細動器に記憶されているテストプログラムを提供し、テストプログラムに従って周期的に試験信号を発生し、試験信号に応答して自己試験を実行する工程」とすることは、当業者であれば普通に行うことである。
この際、各構成要素又は機能性の異なる自己試験の各々の周期が、その重要度等に応じて異なることは当然のことであり、そうである以上、複数の異なる周期で各構成要素又は機能性の異なる自己試験を実行すると共に、ある時点において実行される自己試験(いくつかの自己試験のうち少なくとも一つの自己試験)を何にするかの予定(スケジュール)をテストプログラムの一部として提供することは、当業者であれば適宜決定する設計事項である。
さらに、引用例記載の発明の上記「実行する工程」の「スケジュール(テストプログラムの一部)を提供し、試験信号を発生し、自己試験を実行する工程」を、「スケジュール(テストプログラムの一部)を提供する工程と、試験信号を発生する工程と、自己試験を実行する工程」とすることは、単なる工程分けにすぎない。
したがって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、引用例記載の発明および本願優先日前周知の事項に基いて当業者であれば容易になし得ることである。

また、本願補正発明の作用効果は、引用例記載の発明および本願優先日前周知の事項から当業者であれば十分に予測し得ることである。

よって、本願補正発明は、引用例記載の発明および本願優先日前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-4)むすび
本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成20年7月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年9月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおり特定されるものである。
「携帯用除細動器の動作状態を自動的に判断及び指示する方法であって、
複数の異なる周期で該携帯用除細動器の各構成要素又は機能性の異なる自己試験を行うためのスケジュールを提供する工程と、前記スケジュールに従って自動的且つ周期的に試験信号を発生する工程と、該試験信号に応答して前記いくつかの自己試験のうち少なくとも一つの予定された自己試験を実行する工程と、該自己試験の結果に応答して該携帯用除細動器の状態を指示する工程とを含むことを特徴とする方法。」

(3-1)引用例の記載事項
原査定で引用した引用例および、その記載事項は、上記2.(2-2)に記載したとおりである。

(3-2)対比・判断
上記2.(2-1)で示したように、補正事項(イ)(ロ)(ハ)は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項に限定事項を付加するものであることから、本願発明は、本願補正発明を包含している。
そうすると、本願補正発明が、上記2.(2-3)で示したように、引用例記載の発明および本願優先日前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願補正発明を包含する本願発明も同じく、引用例記載の発明および本願優先日前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明および本願優先日前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-12 
結審通知日 2008-11-14 
審決日 2008-11-26 
出願番号 特願2005-209368(P2005-209368)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61N)
P 1 8・ 575- Z (A61N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大和田 秀明  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 豊永 茂弘
岩田 洋一
発明の名称 携帯用除細動器試験方法  
代理人 笛田 秀仙  
代理人 宮崎 昭彦  
代理人 津軽 進  

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