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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C01B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C01B
管理番号 1196770
審判番号 不服2005-21830  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-11 
確定日 2009-05-07 
事件の表示 特願2003-408748「フラーレン重合体及びフラーレン重合体膜」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月 8日出願公開,特開2004-189595〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は,平成6年8月19日に出願した特願平6-218141号(以下,「原出願」という。)の一部を,平成15年12月8日に新たな特許出願としたものであって,平成17年3月24日付けで拒絶理由が通知され(発送日は平成17年3月28日),平成17年5月16日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成17年10月7日付けで拒絶査定がなされ(発送日は平成17年10月13日),平成17年11月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,その後,当審において,平成20年12月5日付けで拒絶理由が通知され(発送日は平成20年12月11日),これに対して平成21年2月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。
本件出願の請求項1乃至2に係る発明は,平成21年2月3日付け手続補正書によって補正された明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項に特定されるとおりであるものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「C_(n)(但し,nは幾何学的に球状化合物を形成し得る60である。)で表されるフラーレンの複数分子を重合させることによって得られ,下記構造d,e又はfからなるフラーレン重合体。



2.引用例
当審の拒絶理由に引用された本件出願の原出願の出願日前に頒布された刊行物である,「Noboru Takahashi et al.,Plasma-polymerized C_(60)/C_(70) mixture films :Electric conductivity and structure,J.Appl.Phys.,1993年11月1日,Vol.74,No.9,p.5790-5798」(以下,「引用例」という)には,次の事項が記載されている。
(a)「we report for the first time on the synthesis of polyfullerene in plasma,・・・・.」(第5790頁左欄第10-第12行)
(b)「The plasma reactor used to polymerize C_(60) is shown in Fig.1 and consists of SAMCO BP-10 capacitance -coupled outer ring electrodes operating at 13.56 MHz and allowing the use of powers up to 150W. ・・・・.
The sample films were deposited by subliming C_(60) powder under an argon plasma at a pressure of 1.3 Pa (0.01 Torr) from a molybdenum boat. ・・・・.Samples were synthesized at different powers between 25 and 100 W.」(第5790頁右欄第9行?第19行)
(c)「In order to estimate the degree of polymerization in the C_(60) samples, we tried to measure the molecular weight using a time-of-flight mass monitor(TOFMAS).・・・・. As sequence bands following the C_(60) monomer band, bands corresponding to (C_(60))_(2),(C_(60))_(3),…were observed in the spectrum.」(第5793頁左欄第13行?第21行)
(d)「the spin concentration ・・・of these plasma-polymerized samples shows that the polymerization of C_(60) at 25W introduces more radical sites in the film than at 100W.We can deduce that when the film is synthesized at higher plasma power, the film could be chemically more stable.」(第5795頁左欄第18行?第23行)
(e)「The UV-visible spectrum of polymerized film [Fig.10(a)] shows a clear diminution in the absorption compared to that of sublimed ones[Fig.10(b)],especially in the visible region.」(第5795頁右欄第27行?第30行)

3.対比・判断
3-1 引用例の記載事項について検討する。
(あ)上記(a)には,「プラズマ中のポリフラーレンの合成について報告する」ことが記載されているといえる。
(い)上記(b)には,「C_(60)を重合することに使用されるプラズマ反応器は,13.56MHzで作動する容量結合型のリング状外部電極を備えていること」,「サンプル・フィルムは,1.3Paの圧力のアルゴンプラズマの下で,モリブデン・ボートからC_(60)粉末を昇華することによって堆積されること」,「サンプルは25?100Wの間の異なるプラズマ出力で合成されたこと」が記載されているといえる。
(う)上記(c)には,「C_(60)のサンプルの重合度を見積もるために’time-of-flight mass monitor(TOFMAS)’によって分子量を測定することを試みたこと」,「スペクトルには,C_(60)のモノマーのシーケンスバンドに続いて,(C_(60))_(2),(C_(60))_(3),…に対応するバンドが観察されたこと」が記載されているといえる。
(え)上記(d)には,「プラズマ重合されたサンプルのスピン濃度をみると,25WでC_(60)を重合したものが,100Wで重合したものよりも,フィルムに多くのラジカルサイトを導入することが示されていること」,「フィルムがより高いプラズマ出力で合成されると,フィルムは化学的により安定になることが推定できること」が記載されているといえる。
(お)上記(e)には,「重合フィルムのUV-可視スペクトル[Fig10(a)]は,昇華することによって堆積されるフィルム[Fig.10(b)]と比較して,特に可視領域で,明らかな吸収の減少を示す」ことが記載されているといえる。
(か)上記(あ)でいう「ポリフラーレン」は,上記(い)で「C_(60)を重合」して得られるものに他ならず,上記(う)の’time-of-flight mass monitor(TOFMAS)’で測定した(C_(60))_(2)に対応するバンドが観察されるものといえる。

以上(あ)?(う),(か)の検討を踏まえて,引用例の(a)?(c)の記載事項を,本願発明の記載ぶりに則して表現すると,引用例には,
「C_(60)を重合して得られるポリフラーレンであって,’time-of-flight mass monitor(TOFMAS)’で測定した(C_(60))_(2)に対応するバンドが観察されるポリフラーレン」
の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3-2 本願発明と引用発明とを対比する。
(き)引用発明の「C_(60)」が,本願発明の「C_(n)(但し,nは幾何学的に球状化合物を形成し得る60である。)で表されるフラーレン」に相当することは明らかである。
(く)引用発明の「ポリフラーレン」は,上記「C_(60)」を「重合」し,’time-of-flight mass monitor(TOFMAS)’で測定した「(C_(60))_(2),」,即ち,「C_(60)」が「2分子」重合したものに対応するバンドが観察されるから,「C_(60)」の「複数分子」を重合させた「フラーレン重合体」であるといえる。

上記(き)?(く)の検討から,本願発明と引用発明とは,
「C_(n)(但し,nは幾何学的に球状化合物を形成し得る60である。)で表されるフラーレンの複数分子を重合させることによって得られるフラーレン重合体」である点で一致し,以下の点で一応相違する。

(相違点)フラーレン重合体の構造につき,本願発明は「構造d,e又はfからなる」のに対して,引用発明は「’time-of-flight mass monitor(TOFMAS)’で測定した(C_(60))_(2)に対応するバンドが観察される」ものであるが,「構造d,e又はfからなる」ことについての記載がない点。

上記相違点について検討する。
まず,本願明細書において,フラーレン重合体の実施例の記載を検討する。
(さ)本願明細書の段落【0021】?段落【0023】には,実施例として,「図23は,本実施例で用いる外部電極式容量結合型のプラズマ重合装置を示すものである。・・・・プラズマ電源6の出力は,交流13.56MHzのラジオ波で・・・・ここでは,25W,50W,100Wで13.5パスカルに設定したアルゴンガスの一定流量系にてアルゴンプラズマを発生させ,このプラズマ中に,モリブデンボート8に入れたフラーレンを数100℃で昇華させてプラズマ重合を行い,基板9上にフラーレンプラズマ重合体を堆積させる。」と記載されている。
そうすると,本願発明の「構造d,e又はfからなるフラーレン重合体」は,外部電極式容量結合型のプラズマ重合装置において,交流13.56MHzで25,50,又は100Wの出力とし,13.5パスカルの圧力で発生させたアルゴンプラズマ中に,フラーレンを昇華させてプラズマ重合を行い,基板上にフラーレンプラズマ重合体を堆積させる方法により得られるといえる。
(し)本願明細書の段落【0031】には,上記(さ)に示した「外部電極式容量結合型のプラズマ重合装置」を用いて「C_(60)プラズマ重合体」を合成したことが記載されているといえる。また,段落【0031】?段落【0033】,段落【0038】の記載と【図面の簡単な説明】の【図1】及び【図6】の説明をみると,上記「C_(60)プラズマ重合体」の質量分布を,TOFMAS(Time-of-flight mass spectroscopy)と称されるレーザデソープションイオン化によるTime-of-Flight法により測定すると,「C_(60)2量体」の生成が見て取れること,そして,前記質量分布において,「C_(60)2量体及びその近傍領域」でのスペクトルを拡大したデータをみると,ピーク強度が最も大きいのは,C_(60)から炭素原子が2個欠落したC_(58)の2量体に相当する「C_(116)」であることが示されている。
(す)上記(し)の「C_(60)2量体」について,本願明細書の段落【0033】?段落【0050】には,「C_(60)2量体」の実際の主要な構造は「C_(116)」等であること,また,反応の初期過程で優位に生じた2量体である「C_(120)」の4員環(シクロブタン環)構造は構造歪が大きく,この化合物の励起状態からこの部分の炭素の脱離が起き,再結合により本願発明のd?fの安定な構造の「C_(116)」が生じることが記載されているといえる。

次に,引用例の記載を検討する。
(せ)上記(い)で「プラズマ反応器」は,「容量結合型のリング状外部電極」を備え,C_(60)を「重合」するものであるから,「外部電極式容量結合型のプラズマ重合装置」といえる。そうすると,引用発明の「ポリフラーレン」は,外部電極式容量結合型のプラズマ重合装置において,13.56MHzで25?100Wの出力とし,圧力1.3Paでアルゴンプラズマ中に,C_(60)粉末を昇華して,プラズマ重合を行い,プラズマ重合体を堆積して得られるものとみることができる。
(そ)引用発明における「’time-of-flight mass monitor(TOFMAS)’」は,上記(し)で検討した本願明細書で用いた測定装置と同一のものであるから,引用発明において「(C_(60))_(2)に対応するバンドが観察される」ことは,上記(し)で「Time-of-Flight法により測定すると,C_(60)2量体の生成が見て取れること」に対応するといえる。

以上の検討をまとめると,引用発明のポリフラーレンは,本願発明の実施例の13.5Paよりも低い1.3Paという圧力条件ではあるものの,「外部電極式容量結合型のプラズマ重合装置において,交流13.56MHzで25,50,又は100Wの出力とし,アルゴンプラズマ中に,フラーレンを昇華させてプラズマ重合を行い,プラズマ重合体を堆積させる」点で,本願発明の実施例である「C_(60)プラズマ重合体」の製造方法と共通する製造方法により得られるものであって,その’time-of-flight mass monitor(TOFMAS)’を用いた測定結果は,本願発明と同じくC_(60)の2量体の生成を示すものといえる。
そして,引用例には,上記d?fの構造は明示されていないが,引用発明は,上記のように本願発明と同じく(C_(60))_(2)の2量体が生成したものであって,また,上記(す)で検討したように,初期過程で生じるC_(60)の2量体C_(120)は構造歪みが大きく,炭素の脱離,再結合によりd?fの安定な構造のC_(116)が生じることからみると,引用発明の圧力条件であっても,C_(116)を形成する重合反応を妨げる事情は認められないから,引用発明では,C_(60)の2量体として,構造歪みの大きいC_(120)からd?fの安定な構造のC_(116)が生じると推認される。よって,本願発明と引用発明のフラーレン重合体の構造に差異はない。
したがって,上記相違点は実質的なものとはいえず,本願発明は,引用発明と同一であるといわざるを得ない。
仮に,引用発明の構造が,上記d?fの構造と相違するとしても,引用例には,上記3-1(え)で検討したように,プラズマ出力を高めると安定な構造のものが得られることが示されているから,引用発明のポリフラーレンを製造する際に,ガス圧を高くする等の一般的な手法によりプラズマの作用を高めてプラズマ重合を行い,安定な構造のd?fの構造のものを得ることは,当業者が容易になし得ることである。
以上のとおりであるから,本願発明は,引用例に記載された発明であるか,仮にそうでないにしても引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお,請求人は,平成21年2月3日付け意見書において,
「本願発明による上記d?fの構造からなるフラーレン重合体は,・・・・大気中における導電率が10^(-6)S/cm以上であり(実際には・・・・大気中では4.3×10^(-6)S/cm・・・・),また波長450nmの可視光の透過率が1000Å当たり52%以上であって,大気中での導電率や可視光の透過率が著しく高くなります。・・・・・・。
本願発明による安定構造のフラーレン重合体は,分子間の結合に直接関与するCの結合手が3本であるために必ずπ結合が形成され,σとπの共役結合が形成され,これが本来フラーレン分子の有するπ共役系と結合するので,2量体の固有ベクトル空間が2つの分子の上にまたがり,導電性が生じることがはじめて確認できたものです。こうした分子間の結合構造は,引用例には開示されていませんし,想定もされておらず,引用例には,単に[2+2]Cycloadditionによるそれぞれ4本のσ結合をなすCの結合手しか示されていません。・・・・引用例の記載内容の程度では,引用発明において,ガス圧を高めてプラズマ重合を行ったとしても,安定な構造のd?fの構造のものが得られることは,当業者をしても容易に想到できるとは考えられません。
以上のことから,本願発明は,引用例に記載された発明とは同一ではなく,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもありません。」
と主張する。(第5頁第13行?第6頁第31行)

そこで,この主張について以下に検討する。
(な)まず,導電率についてみると,導電率は温度に依存する(例えば,引用例のFig.5(a),5(b)参照)のに対し,本願明細書には導電率の測定温度の記載がなく,測定温度が自明であるともいえないから,本願明細書に記載される導電率を引用例に記載される導電率と直接比較することはできない。また,本願明細書の段落【0065】?【0071】の記載をみると,請求人が「導電率が10^(-6)S/cm以上であり(実際には・・・・大気中では4.3×10^(-6)S/cm・・・・)」と主張する導電率は,フラーレン重合体の「膜」について測定されたものであり,この「膜」は,段落【0032】及び図1に記載されるように,「C_(60)の2量体?14量体」を含み,また,この2量体としても,図6に示されるように,C_(118),C_(120)等の種々のものを含むものであるから,d?fの構造以外のフラーレン重合体を含むものといえる。そうすると,仮に,本願明細書で測定されたフラーレン重合体膜の導電率が,引用例で測定されたフラーレン重合体膜の導電率よりも高く,本願発明のd,e又はfの構造が「分子間の結合に直接関与するCの結合手が3本であるために必ずπ結合が形成され,σとπの共役結合が形成され,これが本来フラーレン分子の有するπ共役系と結合フラーレン分子の有するπ共役系と結合」することにより高い導電率に寄与するとしても,フラーレン重合体膜の導電率はd?f以外のフラーレン重合体の導電率や膜中のd?fの構造のものの含有量に依存するから,本願明細書で測定された導電率と引用例で測定された導電率の値の違いが,直ちに引用例に記載されたフラーレン重合体の膜中にd?fの構造のフラーレン重合体が無いことを示すものとはいえない。
(に)次に,可視光の透過率についてみると,引用例の上記(e)には,上記(お)で検討したとおり,フラーレン重合体について「重合フィルムのUV-可視スペクトル[Fig10(a)]は,昇華することによって堆積されるフィルム[Fig.10(b)]と比較して,特に可視領域で,明らかな吸収の減少を示す」ことが記載されているといえる。ここで,可視領域で,吸収が減少することは,可視光の透過率が向上することに他ならない。そして,可視光の透過率について,本願明細書には,段落【0072】に,「C_(60)プラズマ重合体膜のUV?可視吸収スペクトルと,蒸着膜のUV?可視吸収スペクトルとを図27にそれぞれ示す。このスペクトルデータから換算すると,C_(60)プラズマ重合体膜では,450nmにおいて1000Å当たり蒸着膜より吸収が27%減少しており,光透過率が20%から52%に増加している。」と記載されているから,UV-可視スペクトルについて,本願の図27と,引用例の[Fig10(a)]とを比較すると,可視光の透過率に格別の差異は見いだせない。
(ぬ)さらに,本願発明の「分子間の結合構造は,引用例には開示されていませんし,想定もされておらず,引用例には,単に[2+2]Cycloadditionによるそれぞれ4本のσ結合をなすCの結合手しか示されていません。・・・・引用例の記載内容の程度では,引用発明において・・・・安定な構造のd?fの構造のものが得られることは,当業者をしても容易に想到できるとは考えられません」との主張について,相違点の検討の項で検討したとおり,引用例にその構造が明示されていなくても,本願明細書及び引用例の記載を検討すると,引用例においてもd?fの構造が生じると推認される。仮に,両者の構造に差異があるとしても,d?fの構造のものは引用例から容易に想到し得るものといわざるをえない。
(ね)なお,上記(ぬ)で検討した主張と関連する主張として,請求人は,平成17年12月6日付けで補正した審判請求書において,「平成17年2月10日 東京地裁 平成15(ワ)19324 特許権民事訴訟事件」の判決を引用し,「この判決文の一部には,被告製剤が市販されていたことをもって,特許法第29条1項2号公然実施に該当する事由となるかどうかについて検討されており,・・・・当該発明の実施品が当該発明に係る物と同一物である(換言しますと,その実施品によって当該発明に新規性がない)とするには,当業者が利用可能な分析技術によって当該発明の実施品を分析して,同一物であるとの特定が可能であることが必要となります。このことを本願発明によるフラーレン重合体について検討しますと,・・・・本発明者が論文として発表した引用例・・の発表当時は,フラーレン重合体の結合状態として[2+2]Cycloadditionなどが考えられていましたが,これでは,クロスリンクがσ結合(4つのCがそれぞれ4本の手で結合)であり,本願発明によるフラーレン重合体が高い導電性を示すことが説明できない状況でありました。・・・・・・・。
即ち,上記した判決文の内容から判断して,本願発明による構造d?jの安定構造のフラーレン重合体は,本出願時において,当業者が通常に利用可能な分析技術によって特定することは極めて困難か或いは可能な状態ではなかったというべきでありますので,本願発明によるフラーレン重合体は発明として新規性を有しており,引用例・・に記載のフラーレン重合体とは別異のものであることが明らかであります。」(第10頁下から第14行?第11頁第26行)と主張する。
請求人が引用する上記判決は,特許法第29条第1項第2号についてのものであって,本審決における特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項についての判断に直ちに採用すべきものではない。しかし,この主張についても検討すると,同請求書において「1993?1995年頃にかけて,レーザアブレーションによる質量分析装置(TOF-MAS:Time-of-flight mass spectroscopy)が,イオンの電場反射機能を備えたリフレクト型として開発されたため,従来のリニア型に比べて分解能が格段に向上しました。本願明細書の段落番号〔0031〕に記載しましたように,本発明者はこの装置により,・・・・C_(120)ではなくC_(116)が2量体の中で最も大きなピークを示すことを明らかにしました。そして,ラマン分光測定によりその生成物がアモルファス化していないこと,NEXAFS測定により本来のC_(60)の構造がある程度残されていることが明らかになったため,理論計算でモデル化することにより,ついに本願の図10?図12や図19?図22のような安定構造であることが解明されたのです。」(第10頁第3行?同頁第12行)との主張によれば,「レーザアブレーションによる質量分析装置(TOF-MAS:Time-of-flight mass spectroscopy)」として「イオンの電場反射機能を備えたリフレクト型のもの」等の本願発明を得るために用いられた分析装置は,原出願の出願日である平成6年8月19日前に開発され、本件出願の発明者が使用できる状態にあったといえるところ,他の当業者がこれを使用することを妨げる事由は見出せないから,本件出願に使用された分析技術は原出願の出願日前に当業者が通常使用できたものと推認される。そうすると,「構造d?fのフラーレン重合体」について,「本出願時において,当業者が通常に利用可能な分析技術によって特定することは極めて困難か或いは可能な状態ではなかった」とする根拠は見いだせない。
以上のとおりであるから,請求人の上記主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,または,同条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-06 
結審通知日 2009-03-12 
審決日 2009-03-25 
出願番号 特願2003-408748(P2003-408748)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C01B)
P 1 8・ 121- WZ (C01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮澤 尚之  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 安齋 美佐子
松本 貢
発明の名称 フラーレン重合体及びフラーレン重合体膜  
代理人 逢坂 宏  
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