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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1196880
審判番号 不服2007-5873  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-26 
確定日 2009-05-07 
事件の表示 特願2001-374716「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月17日出願公開、特開2003-169894〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成13年12月 7日 本件出願
平成18年 7月 4日 拒絶理由通知
平成18年 9月 8日 手続補正書、意見書の提出
平成18年 9月29日 拒絶理由通知(最後)
平成18年11月30日 意見書の提出
平成19年 1月23日 拒絶査定
平成19年 2月26日 本件審判請求
平成20年12月17日 拒絶理由通知(最後)
平成21年 2月16日 手続補正書、意見書の提出

第2.平成21年2月16日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年2月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数の遊技図柄を変動させてから停止させることで1回のゲームを行うスロットマシンであって、複数ゲームに亙って遊技者に有利となる大当り態様や小当り態様を含む利益状態を発生させる利益状態発生手段と、この利益状態を発生させるか否か抽選する抽選手段とを備えたスロットマシンにおいて、
前記大当り態様や小当り態様の利益状態とは異なる第1,第2利益状態であって、第1利益状態と、この第1利益状態よりも有利な第2利益状態とを発生させる追加的利益状態発生手段と、
前記第1,第2利益状態は同種の利益状態であり、前記第1利益状態で継続可能な第1最大ゲーム数よりも、前記第2利益状態で継続可能な第2最大ゲーム数が大きく設定され、
前記第1利益状態を発生させるか否か抽選すると共に、その第1利益状態の継続中に行う各ゲーム毎に第2利益状態を発生させるか否か抽選する利益状態抽選手段と、
前記利益状態抽選手段が第2利益状態を発生させると抽選した場合に、継続中の第1利益状態を終了して第2利益状態に変更する利益状態変更手段と、
前記利益状態変更手段が第1利益状態から第2利益状態に変更した場合、変更後の第2利益状態の継続中に第1利益状態を終了して第2利益状態に変更された旨を報知する報知手段とを備えた、
ことを特徴とするスロットマシン。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1を引用する補正前の請求項5において、補正前の「第1利益状態を終了して第2利益状態に変更された旨を報知する報知手段」に「前記利益状態変更手段が第1利益状態から第2利益状態に変更した場合、変更後の第2利益状態の継続中に」との限定を付加したものに相当し、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献
(1)引用文献1
当審の拒絶の理由に引用された特開2001-334019号公報(平成13年12月4日公開。以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1-1
「複数種類の特定小役を含む複数の役がそれぞれ所定の当選確率を有するように定められたものであって、第1確率テーブルと、再遊技の権利を遊技者に与える再遊技役の当選確率が、いずれの役にも当選しない確率以上の値を有し、かつ、傾斜値が前記第1確率テーブルより高く設定された第2確率テーブルとを有する確率テーブルと、
役の抽選を行う役抽選手段と、
前記第1確率テーブルを使用して前記役抽選手段による役の抽選を行うとともに、前記役抽選手段で特定小役が当選したときであっても特定小役の当選を遊技者に報知しないで遊技を行う通常遊技態様と、
特定条件が満たされないことを条件に少なくとも複数回の遊技で継続して前記第2確率テーブルを使用して前記役抽選手段による役の抽選を行うとともに、前記役抽選手段の抽選結果に基づいて特定小役の当選を遊技者に報知して遊技を行う特定遊技態様と、
遊技態様を、前記通常遊技態様又は前記特定遊技態様に決定する遊技態様決定手段とを備えることを特徴とするスロットマシン。」(【特許請求の波範囲】【請求項1】)
・記載事項1-2
「1つのリール31には、21個の図柄が等間隔で配列され、各リール31ごとに異なった図柄配列がなされている。そして、表示窓21内から、リール31の図柄配列の一部が見えるようになっている。」(段落【0025】)
・記載事項1-3
「図3は、本実施形態における役と、その役に対応するリール31の図柄の組合せとを示す図である。役は、特別役であるBB(ビックボーナス)及びRB(レギュラーボーナス)、3種類の特定小役A、B及びC、一般の小役1及び2、並びに再遊技役(リプレイ)とから構成されている。BBとは、通常の遊技から、特別遊技の1つであるBBゲーム(遊技者によって有利となる遊技)に移行させるための役である。BBゲームに移行すると、先ず、第1遊技に移行する。この第1遊技では、小役(特定小役及び一般の小役の双方を含む)及び第2遊技に移行するための移行役の抽選が行われる。そして、第1遊技中に移行役が入賞したときは、特別遊技の第1遊技から第2遊技(ボーナスゲーム)に移行する。」(段落【0032】)
・記載事項1-4
「小役(特定小役及び一般の小役)とは、図3で示した予め定めた枚数のメダルが払い出される役である。」(段落【0035】)
・記載事項1-5
「(遊技制御手段)遊技制御手段60は、スロットマシン10の遊技の進行制御等、スロットマシン10全体の制御を司る部分であり、例えばCPU、ROM及びRAM等を有する制御基板等から構成されたものである。この遊技制御手段60の入力側には、上述のスタートスイッチ41やストップスイッチ42等が電気的に接続されており、その出力側には、各リール31に連結されたモータ32、上述の文字情報表示部24や当選報知表示部25等が電気的に接続されている。」(段落【0038】)
・記載事項1-6
「遊技者によりスタートスイッチ41がオンされると、遊技制御手段60は、スタートスイッチ41のオンの信号を検知するので、モータ32を駆動して各リール31を始動させるとともに、役の抽選等を行う。」(段落【0039】)
・記載事項1-7
「次に、遊技者によりストップスイッチ42がオンされると、遊技制御手段60は、ストップスイッチ42のオンの信号を検知するので、その信号と役の抽選結果等とに基づいて有効ライン22上に停止させるべきリール31の図柄を決定し、有効ライン22上にそれぞれ所定のリール図柄が停止するように、モータ32を停止制御する。そして、遊技制御手段60は、有効ライン22上に停止したリール31の図柄の組合せが予め定められた何らかの役の図柄の組合せと一致するか否かを判別し、一致するとき(入賞時)は、成立役に応じてメダルの払出し等の処理を行う。」(段落【0040】)
・記載事項1-8
「(役抽選手段)役抽選手段61は、役(特別役(BB及びRB)、特定小役、一般の小役又は再遊技役)の抽選を行うものである。役抽選手段61は、例えば、役抽選用の乱数発生手段(ハード乱数等)と、この乱数発生手段が発生する乱数を抽出する乱数抽出手段と、乱数抽出手段が抽出した乱数値に基づいて、役の当選の有無及び当選役を判定する判定手段とを備えている。」(段落【0041】)
・記載事項1-9
「さらに、通常遊技態様では、第2に、役抽選手段61で特定小役が当選したときであっても特定小役の当選を遊技者に報知しないで遊技を行う非報知遊技態様を含むものである。この遊技態様では、遊技者は、特定小役の当選を知り得ないので、当選した特定小役が入賞するとは限らない。これに対し、特定遊技態様では、第2に、役抽選手段61の抽選結果に基づいて特定小役の当選を遊技者に報知して遊技を行う報知遊技態様を含むものである。すなわち、報知遊技態様では、特定小役が当選したときは、その旨が報知されるので、遊技者は、当選した特定小役が入賞するようにストップスイッチ42を操作することができる。」(段落【0053】)
・記載事項1-10
「本実施形態では、遊技態様決定手段64は、特別遊技の1つであるBBゲームの終了後の遊技態様を、通常遊技態様又は特定遊技態様に決定する。また、遊技態様決定手段64は、役抽選手段61で説明したものと同様の乱数発生手段等を用いる。そして、BBの当選時に、遊技態様決定手段64の乱数発生手段で発生した乱数を抽出し、その乱数値に基づいて、通常遊技態様又は特定遊技態様のいずれかに決定する。本実施形態では、それぞれ1/2の確率で、通常遊技態様又は特定遊技態様に決定される。」(段落【0057】)
・記載事項1-11
「(特定遊技態様中遊技回数カウント手段)特定遊技態様中遊技回数カウント手段66は、BBゲームの終了後に特定遊技態様の遊技に移行したときに、その特定遊技態様での遊技回数をカウントするものであり、カウンター等が使用される。このように、特定遊技態様の遊技での遊技回数をカウントするのは、特定遊技態様の遊技回数に上限を設けているためである。本実施形態では、特定遊技態様の遊技回数が100回に到達したときは、特定遊技態様での遊技を終了し、通常遊技態様の遊技に戻るようにしている。」(段落【0061】)
・記載事項1-12
「例えば、BBゲームの第1遊技の遊技回数の上限値を30回とする。」(段落【0079】)

以上の各記載事項を含む全記載及び図示によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「遊技者によりスタートスイッチ41がオンされると21個の図柄が等間隔で配列された各リール31を始動させ、次に、遊技者によりストップスイッチ42がオンされると有効ライン22上にそれぞれ所定のリール図柄が停止するようにモータ32を停止制御するスロットマシンであって、
遊技回数の上限値を30回としたBBゲーム(遊技者にとって有利となる遊技)に移行させる役であるBBや予め定めた枚数のメダルが払い出される役である一般の小役の抽選を行う役抽選手段を備えたスロットマシンにおいて、
BBゲームの終了後の遊技態様を、通常遊技態様又は特定小役の当選を遊技者に報知して遊技を行う報知遊技態様を含む特定遊技態様のいずれかに抽出した乱数値に基づいて決定する遊技態様決定手段を備え、特定遊技態様の遊技回数に100回の上限を設けた、スロットマシン。」(以下、「引用発明1」という。)
なお、上記記載事項1-3において「(遊技者によって有利となる遊技)」と記載されているが、これは明らかな誤記であって正しくは「(遊技者にとって有利となる遊技)」と認められるので、上記のように認定した。

(2)引用文献2
当審の拒絶の理由に引用された特開2001-293170号公報(平成13年10月23日公開。以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
・記載事項2-1
「可変表示装置としての7セグメントLED35a,35bは、大当り遊技状態後の後述する開閉サイクル時に入賞玉が特定入賞領域39を通過したときに変動表示し、停止時の表示結果が予め定めた表示結果(例えば、同一数字のゾロ目)であるときには、許容継続回数を変更するための条件が成立したものと判定される。つまり、7セグメントLED35a,35bは、大当り遊技状態時において、特定入賞領域39への入賞玉の入賞により許容継続回数を増加させるか否かの条件を成立させるために使用されるものである。」(段落【0013】)
・記載事項2-2
「前記始動入賞装置5に打玉が入賞して始動入賞玉検出器19をONさせると、開閉ソレノイド43a,43bは、相対的に短い時間間隔で2回ONする。このため玉受部材42a,42bが2回開閉動作する。そして、玉受部材42a,42bの開閉動作中に受け入れられた入賞玉が特定入賞領域39に入賞して特定入賞玉検出器16をONさせると、大当り遊技状態となり、開閉ソレノイド43a,43bは、やはり短い時間間隔でON・OFF状態を繰り返す。このため玉受部材42a,42bも連続的に開閉動作を繰り返すようになっている。しかして、そのような繰り返し回数は、最高18回に設定され、また18回の動作中に入賞玉が10個発生した場合には、その時点で開閉ソレノイド43a,43bのON・OFF動作も終了するようになっている(以下、このような開閉動作を開閉サイクルという)。更に、開閉サイクルの途中に、再度特定入賞領域39に入賞玉が入賞した場合には、継続権が成立すると共に直ちに開閉サイクルを中断し、所定時間のインターバル時間の経過後、次回の開閉サイクルに移行する。そして、開閉サイクルの許容継続回数は、後に詳述するように、8回又は15回のいずれかが許容されるようになっている。」(段落【0016】)
・記載事項2-3
「入賞空間44の中央には、貯留部材46が配置され、開閉サイクル中に前記上下区画板45の後端から落下する入賞玉の一部を貯留し、その後開閉サイクルの後半において開放するようになっている。この貯留部材46の駆動は、図示しない駆動モータ47(図8のブロック図に表示)によって駆動され、その貯留状態と開放状態とを検知するために駆動モータ47には、停止位置検出器48が付設されている。なお、貯留部材46に貯留された入賞玉が開放されたときには、次に説明する拡大片50がソレノイド51によって前方に向かって突出されるため、特定入賞領域39に入賞し易くなっている。」(段落【0019】)
・記載事項2-4
「下部玉転動板49の下方から前記特定入賞領域39の上端部に出没するように構成される拡大片50は、その上面が内側に向かって傾斜するようにテーパ状に形成されているため、ソレノイド51が駆動されたときには、下部玉転動板49を転動する入賞玉が特定入賞領域39から外れて転動していても特定入賞領域39に誘導される可能性が高くなる。つまり、特定入賞領域39の大きさが拡大されたことになる。」(段落【0020】)
・記載事項2-5
「飾りLED54は、許容継続回数が増加したときに、開成回数表示LEDの機能を兼用するようになっている。この場合、許容回数が増加したときにすべての飾りLED54を点灯又は点滅してその旨を報知し、その後、実行継続回数を表示するために一旦消灯してから、開閉サイクルの実行に伴って1個づつ点灯するようにすれば良い。あるいは、点灯した状態を維持し、実行している開閉サイクルに対応する飾りLED54を点滅したり、あるいは許容継続回数と実行継続回数を色を変えて表示する等して、その旨を報知するようにしても良い。」(段落【0021】)
・記載事項2-6
「ステップ40で実行継続回数カウンタC1の値が1か否か、即ち、大当りとなるためのV入賞であるか否かが判別され、そうであればステップ50で許容継続回数カウンタC2の値に8を設定してサブルーチンを終了する。このように、大当りとなれば、自動的に8回の開閉サイクルを実行することが可能となる。」(段落【0027】)
・記載事項2-7
「ランダムAは、図3に示すように、0?99の100通りの数が刻々と変化しており、入賞玉が特定入賞領域39に入賞した時点で1つの値が抽出され、その抽出された値が同一数字のゾロ目であるときに当りと判別され、それ以外の数字のときに外れと判別される。したがって、本実施形態における当りとなる確率は、1/10である。」(段落【0028】)
・記載事項2-8
「一方、ステップ80で当りと判別されたときには、ステップ100で7セグメントLED35a,35bの可変表示動作が制御されて抽出された値に対応する当り数値が表示された後、ステップ110で許容継続回数カウンタC2の値を15にしてサブルーチンを終了する。」(段落【0029】)
・記載事項2-9
「上記したように、第1実施形態においては、1回目?7回目の開閉サイクルにおいて、特定入賞領域39へ入賞する毎に7セグメントLED35a,35bが可変表示され、その表示結果が予め定められた値となったときに許容継続回数が増加変更されるので、大当り遊技状態毎に玉受部材42a,42bが開閉する開閉サイクルの許容回数が異なり、このため、遊技が単調とならず、遊技の興趣を高めることができる。ただし、本実施形態においては、1回目?7回目の開閉サイクルのいずれかで当りが出たときには、以後の開閉サイクルにおいて7セグメントLED35a,35bの可変表示は行われない。」(段落【0030】)
以上の各記載事項を含む全記載及び図示によれば、引用文献2には次の発明が記載されていると認められる。
「大当り遊技状態となると許容継続回数カウンタC2の値に8を設定して8回の開閉サイクルを実行することを可能とし、当りが出る前の1回目?7回目の開閉サイクルにおいて、特定入賞領域39へ入賞する毎にランダムAから抽出された値が同一数字のゾロ目であるときに当りと判別され、当りとなった場合には許容継続回数カウンタC2の値を15にして15回の開閉サイクルを実行することを可能とするとともに、LED54により許容継続回数と実行継続回数を色を変えて表示する遊技機」(以下、「引用発明2」という。)

3.対比
本願補正発明と引用発明1を対比する。
引用発明1の「21個の図柄」は本願補正発明の「複数の遊技図柄」に相当する。
そして、引用発明1について、以下のことがいえる。
(1)「遊技者によりスタートスイッチ41がオンされると21個の図柄が等間隔で配列された各リール31を始動させ、次に、遊技者によりストップスイッチ42がオンされると有効ライン22上にそれぞれ所定のリール図柄が停止するようにモータ32を停止制御するスロットマシン」について
各リール31を始動させると各リール31が回転して各リール31に配列された図柄が変動することは、自明である。また、リール31を始動させてから停止させることで1回のゲームが行われるということも自明である。
そうすると、引用発明1は、本願補正発明の「複数の遊技図柄を変動させてから停止させることで1回のゲームを行うスロットマシン」に相当する構成を実質的に具備するものである。
(2)「遊技回数の上限値を30回としたBBゲーム(遊技者にとって有利となる遊技)に移行させる役であるBBや予め定めた枚数のメダルが払い出される役である一般の小役の抽選を行う役抽選手段を備えたスロットマシン」について
BBによって移行することとなるBBゲームは、「複数ゲームに亙って遊技者にとって有利となる大当り態様」ということができ、また、一般の小役は抽選の結果当選し入賞すると「小当り態様」ということができ、メダルの払い出しが行われるものである。そして、両者は遊技者に利益を与える状態すなわち利益状態であって、引用発明1はその利益状態を発生させる手段を当然有するものである。また、引用発明1の「役抽選手段」は、上記のような利益状態を発生させるBBや一般小役の抽選を行うものであるから、本願補正発明の「この利益状態を発生させるか否か抽選する抽選手段」に相当する。
そうすると、引用発明1は、本願補正発明の「複数ゲームに亙って遊技者に有利となる大当り態様や小当り態様を含む利益状態を発生させる利益状態発生手段と、この利益状態を発生させるか否か抽選する抽選手段とを備えたスロットマシン」に相当する構成を実質的に具備するものである。
(3)「BBゲームの終了後の遊技態様を、通常遊技態様又は特定小役の当選を遊技者に報知して遊技を行う報知遊技態様を含む特定遊技態様のいずれかに抽出した乱数値に基づいて決定する遊技態様決定手段を備え、特定遊技態様の遊技回数に100回の上限を設けた」について
ア)「特定遊技態様」は、「特定小役の当選を遊技者に報知して遊技を行う報知遊技態様を含む」ものであって、遊技者にとって有利な状態であるから「利益状態」ということができるが、BBゲームや一般小役の入賞とは異なる利益状態であって、しかもBBゲーム終了後に移行し得る追加的利益状態であることは明白である。また、この「利益状態」を発生させる手段を引用発明1は当然具備するものである。
また、引用発明1の「利益状態」は、「第2利益状態を発生させるか否か抽選する」か否かは別として、「大当り態様や小当り態様の利益状態とは異なる」点において共通しているから、本願補正発明の「第1利益状態」に相当するものとすることができる。
そうすると、引用発明1と本願補正発明は「大当り態様や小当り態様の利益状態とは異なる第1利益状態であって、第1利益状態を発生させる追加的利益状態発生手段」を具備する点で共通している。
イ)「特定遊技態様」は「100回の上限を設け」行われるものであり、これは最大ゲーム数が設定されているということができるから、引用発明1の「特定遊技態様」と本願補正発明の「第1利益状態」は、第1利益状態で継続可能な第1最大ゲーム数が設定されている点で共通している。
ウ)「乱数値に基づいて決定する」が「抽選する」を意味していることは明らかであって、引用発明1の「遊技態様決定手段」は本願補正発明の「利益状態抽選手段」に相当するから、引用発明1と本願補正発明は「第1利益状態を発生させるか否か抽選する利益状態抽選手段」という点で共通している。

そうすると、両者は、
「複数の遊技図柄を変動させてから停止させることで1回のゲームを行うスロットマシンであって、複数ゲームに亙って遊技者に有利となる大当り態様や小当り態様を含む利益状態を発生させる利益状態発生手段と、この利益状態を発生させるか否か抽選する抽選手段とを備えたスロットマシンにおいて、
大当り態様や小当り態様の利益状態とは異なる第1利益状態であって、第1利益状態を発生させる追加的利益状態発生手段と、
第1利益状態で継続可能な第1最大ゲーム数が設定され、
第1利益状態を発生させるか否か抽選する利益状態抽選手段とを備えた、
スロットマシン」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
第1利益状態を発生させる追加的利益状態発生手段が、本願補正発明では大当り態様や小当り態様の利益状態とは異なる第2利益状態であって、第1利益状態よりも有利な第2利益状態を発生させるのに対し、引用発明1はそのような構成を有していない点。
<相違点2>
本願補正発明では、第1,第2利益状態は同種の利益状態であり、第1利益状態で継続可能な第1最大ゲーム数よりも、第2利益状態で継続可能な第2最大ゲーム数が大きく設定されているのに対し、引用発明1はそのような構成を有していない点。
<相違点3>
第1利益状態を発生させるか否か抽選する利益状態抽選手段が、本願補正発明では第1利益状態の継続中に行う各ゲーム毎に第2利益状態を発生させるか否か抽選するのに対し、引用発明1はそのような構成を有していない点。
<相違点4>
本願補正発明は、利益状態抽選手段が第2利益状態を発生させると抽選した場合に、継続中の第1利益状態を終了して第2利益状態に変更する利益状態変更手段を備えているのに対し、引用発明1はそのような構成を有していない点。
<相違点5>
本願補正発明は、利益状態変更手段が第1利益状態から第2利益状態に変更した場合、変更後の第2利益状態の継続中に第1利益状態を終了して第2利益状態に変更された旨を報知する報知手段とを備えているのに対し、引用発明1はそのような構成を有していない点。

4.判断
<相違点1、2>について
相違点1、2は、まとめて検討する。
引用発明2において、開閉サイクルは玉受部材42a,42bの連続的な開閉動作を18回又は10個入賞するまで繰り返すものであって、開閉サイクルの途中に、再度特定入賞領域39に入賞玉が入賞した場合には、継続権が成立すると共に直ちに開閉サイクルを中断し、所定時間のインターバル時間の経過後、次回の開閉サイクルに移行する(上記記載事項2-2参照)。そうすると、一つの開閉サイクルは一つのまとまった遊技単位であるとともに、当該遊技単位の許容遊技回数には上限が設けられているといえる。
また、引用発明2において、上述した開閉サイクルの継続中は「大当り遊技状態」であるから、遊技者にとって有利な状態すなわち「利益状態」ということができる。そして、許容継続回数が8回とされた状態と15回とされた状態は、「同種」であるとともに、許容継続回数が8回とされた状態は「第1利益状態」、許容継続回数が15回とされた状態は「第2利益状態」ということができ、許容継続回数が多い程遊技者に有利であるから、「第1利益状態よりも有利な第2利益状態」ということができる。更に、引用発明2においても「第1利益状態で継続可能な第1最大数よりも、第2利益状態で継続可能な第2最大数が大きく設定されている」ということができる。
ここで、引用発明1では継続上限を設けた遊技単位として、「30回」までの「BBゲーム」と「100回」までの「特定遊技態様」を有するところ、引用発明2の如く継続可能な遊技単位上限を更に伸ばした同種の利益状態を追加することは遊技状態の豊富化という一般的な観点から想到困難性がない事項であるとともに、引用発明2におけるパチンコの大当り状態の豊富化が、スロットマシンである引用発明1においてはBBゲーム自体にしか適用できないという制約があるものではない。
そうであれば、引用発明1における「100回」までの「特定遊技態様」について、引用発明2の如く継続可能な遊技単位の上限数を伸ばした同種の状態を追加することは、当業者であれば想到容易である。その際、同種の状態を発生させる役割を、もともと引用発明1において「特定遊技態様」を発生させる手段に担当させることは設計事項である。
したがって、引用発明1に引用発明2を適用し、相違点1、2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
<相違点3>について
引用発明2において、「ランダムAから抽出された値が同一数字のゾロ目であるときに当りと判別され」が「抽選」を意味することは明らかで、当りが出る前の1回目?7回目の開閉サイクルにおいて「抽選」が行われるから、許容継続回数が8回とされた状態すなわち「第1利益状態」の継続中の遊技単位毎に許容継続回数が15回とされた状態すなわち第2利益状態を発生させるか否か抽選するものである。これを<相違点1>及び<相違点2>で検討した如く、引用発明1における「100回」までの「特定遊技態様」に適用する際、そこにおける遊技単位である各ゲーム毎に、最後のゲームを含めて第2利益状態を発生させるか否か抽選することに技術的困難性はなく、その際に、第2利益状態を発生させるか否か抽選を利益状態抽選手段に行わせることにも技術的困難性はない。
したがって、引用発明1に引用発明2を適用し、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
<相違点4>について
引用発明2は、当りとなった場合すなわち第2利益状態を発生させると抽選した場合に、許容継続回数カウンタC2の値を8から15に変更して15回の開閉サイクルを実行するものであるが、これは継続中の第1利益状態を終了して第2利益状態に変更するものということができる。
そうすると、引用発明1において引用発明2の構成を採用することにより、すなわち引用発明1において、第2利益状態を発生させると抽選した場合に継続中の第1利益状態を終了して第2利益状態に変更することを採用し、そのための手段すなわち利益状態変更手段を備えたものとすることにより、相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
<相違点5>について
引用発明2には、当りとなった場合すなわち第2利益状態を発生させると抽選した場合に、LED54により許容継続回数と実行継続回数を色を変えて表示するものであるが、許容継続回数と実行継続回数を表示するということは変更後の第2利益状態の継続中に第1利益状態を終了して第2利益状態に変更された旨を報知しているものと認められ、当然そのための手段もあると認められる。また、遊技機において状態が変更された場合に変更後にその表示を行うことは、パチンコ機の確変(高確)時等にみられるように、慣用手段に過ぎない。
そうすると、上記相違点1?4の検討において記載したように引用発明1に引用発明2を採用する際に、変更後の第2利益状態の継続中に第1利益状態を終了して第2利益状態に変更された旨を報知する手段を備えたものとし、相違点5に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1及び2から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、出願人は平成21年2月16日付け意見書において、「引用例2においては、玉受部材の開閉サイクル中であっても、特定入賞領域に入賞玉が入賞しなければ許容継続回数の抽選は行われないので、本発明の構成(D)に示すような、玉受部材の開閉サイクル毎に許容継続回数の抽選が行われるものではない。」と主張しているので検討する。
引用発明2では、貯留部材46及び拡大片50が設けられており、特定入賞領域に入賞し易くしているものである(上記記載事項2-3、2-4参照)。また、本願出願前に、引用発明2を含む、いわゆるハネモノと呼ばれるパチンコ機においては、特定入賞領域に入賞玉が入賞せず許容継続回数に達しないということが稀である、ということは常識である。例えば、「パチンコ必勝ガイド 1997 1.19-2.2合併号、平成9年2月2日発行、株式会社白夜書房、45頁」には、「実戦データで証明 パンクの心配はまず必要なし」、「玉ちゃんファイトパンク率 パンク0件 大当り件数33件 実戦データ上全て完走」及び「現時点までに集めた実戦データでのパンクの発生件数は-なんとゼロ。可能性がないワケではないが、「そう簡単にはパンクしない機種」であることは確かだ。」と記載されている。
したがって、出願当時の常識を参酌すると、引用発明2の開閉サイクルは実際上は毎回特定入賞領域に入賞玉が入賞することを想定したものであり、<相違点1>及び<相違点2>で検討したとおり引用発明1の「特定遊技態様」に適用すること、またその際に各ゲーム毎に抽選を行わせることに想到困難性があるものではない。それ故、出願人の上記主張は採用することができない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明の認定
平成21年2月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年9月8日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数の遊技図柄を変動させてから停止させることで1回のゲームを行うスロットマシンであって、複数ゲームに亙って遊技者に有利となる大当り態様や小当り態様を含む利益状態を発生させる利益状態発生手段と、この利益状態を発生させるか否か抽選する抽選手段とを備えたスロットマシンにおいて、
前記大当り態様や小当り態様の利益状態とは異なる第1,第2利益状態であって、第1利益状態と、この第1利益状態よりも有利な第2利益状態とを発生させる追加的利益状態発生手段と、
前記第1,第2利益状態は同種の利益状態であり、前記第1利益状態で継続可能な第1最大ゲーム数よりも、前記第2利益状態で継続可能な第2最大ゲーム数が大きく設定され、
前記第1利益状態を発生させるか否か抽選すると共に、その第1利益状態の継続中に行う各ゲーム毎に第2利益状態を発生させるか否か抽選する利益状態抽選手段と、
前記利益状態抽選手段が第2利益状態を発生させると抽選した場合に、継続中の第1利益状態を終了して第2利益状態に変更する利益状態変更手段とを備えた、
ことを特徴とするスロットマシン。」

2.本願発明の進歩性の判断
(1)引用文献
拒絶の理由に引用された引用文献1、2及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「前記利益状態変更手段が第1利益状態から第2利益状態に変更した場合、変更後の第2利益状態の継続中に第1利益状態を終了して第2利益状態に変更された旨を報知する報知手段とを備えた、」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-09 
結審通知日 2009-03-11 
審決日 2009-03-24 
出願番号 特願2001-374716(P2001-374716)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆池谷 香次郎  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 有家 秀郎
川島 陵司
発明の名称 スロットマシン  
代理人 岡村 俊雄  

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