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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C12N
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C12N
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する C12N
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する C12N
管理番号 1197404
審判番号 訂正2009-390030  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2009-03-05 
確定日 2009-04-20 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4150050号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4150050号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨

本件審判の請求の要旨は、特許第4150050号発明(平成4年8月14日特願平5-503961号を分割して特願2006-242106号として特許出願、平成20年7月4日設定登録)の明細書及び図面を審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び明細書のとおり、すなわち、下記(1)のとおり訂正することを求めるものである。

(1)特許請求の範囲の請求項1を、下記のとおり訂正する。
「【請求項1】
以下に示しているアミノ酸配列を有するほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(19R)をコードする核酸配列を含んで成る単離核酸であって、当該コードされたタンパク質アレルゲンがLol p Ib.2タンパク質アレルゲンに特異的なT細胞を刺激することができることを特徴とする核酸。
【化1】
GAATTCCCCA ACGCAAGAGC AGCA ATG GCG GTG CAG AAG CAC ACG GTG GCG 51
・・・(途中省略)・・・
【化2】
・・・(途中省略)・・・
ACGCTACTCG ACTAATTAAT GAACCGTTTT CACCTTTAAA AAAAAAAGGA ATIC 1295」を

「【請求項1】
以下に示しているアミノ酸配列を有するほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(19R)をコードする核酸配列を含んで成る単離核酸であって、当該コードされたタンパク質アレルゲンがLol p Ib.2タンパク質アレルゲンに特異的なT細胞を刺激することができることを特徴とする核酸。
【化1】
Met Ala Val Gln Lys His Thr Val Ala
・・・(途中省略)・・・
【化2】
・・・(途中省略)・・・
Thr Pro Ala Ala Ala Gly Gly Tyr Lys Val
305 310」と訂正する。



2.当審の判断
(1)訂正の目的の適否について
願書に添付した明細書(以下「特許明細書」といい、特許公報の該当頁で示す。)中には、本件発明のほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(19R)が有するアミノ酸配列及びそれをコードする核酸配列に関して、下記(ア)?(ウ)のように記載されている。

(ア)「Lol p Ib 科構成員をコードする好ましい核酸配列には、図3b及び3cに示す Lol p Ib.1のアミノ酸-25?276 をコードする核酸配列、並びに図10a及び10bに示す Lol p Ib.2 のアミノ酸-25?314 をコードする核酸配列が含まれる。これらの配列は25個のアミノ酸のシグナル配列を含む Lol p Ib.1 タンパク質及び Lol p Ib.2 タンパク質全体をコードする。その他の好ましい核酸配列には、図3b及び3cに示す Lol p Ib.1 のアミノ酸1?276 をコードする核酸配列、並びに図10a及び10bに示す Lol p Ib.2 のアミノ酸1?314 をコードする核酸配列が含まれる。」(公報第7頁【0018】欄)

(イ)「クローン19RのcDNA配列を図10a及び10bに示し、そして1295ヌクレオチドを含んでいた。ヌクレオチド位置25-27でのATG 開始コドンで始まり、そしてヌクレオチド位置1041で始まるTGA 停止コドンで終結する1017bpのオープン解読枠がある。」(公報第34頁【0134】欄)

(ウ)「【図10a】図10a及び10bは Lol p Ib.2(クローン19R)のcDNA配列及び推定アミノ酸配列を示す。」(公報第44頁【図面の簡単な説明】)

当該(ア)?(ウ)の記載によれば、特許明細書図10a及び10bは ほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(クローン19R)のcDNA配列及び推定アミノ酸配列の双方を含み、ほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(クローン19R)の核酸配列が1295塩基からなるものであり、ヌクレオチド位置25-27でのATG 開始コドンで始まり、そしてヌクレオチド位置1041で始まるTGA 停止コドンで終結する1017bpのオープン解読枠のアミノ酸位置-25?314に対応するものが、ほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(クローン19R)のアミノ酸配列であるといえる。
ところで、請求項1に【化1】及び【化2】として示された「GAATTCCCCA ACGCAAGAGC AGCA ATG GCG GTG CAG AAG CAC ACG GTG GCG」から始まる1295文字からなる配列については、翻訳開始コドン「ATG」のまとまりから3文字毎に1文字分の空白が置かれる核酸配列独特の表記方法に従っており、それが終止コドン「TGA」の直前まで続いていること、また、当該配列と同一の配列が、特許明細書図10a及び10bにおいては ほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(クローン19R)の1295塩基からなるcDNA配列であると説明されていることと矛盾することから、アミノ酸配列を1文字により表記したものであると解するには無理があり、特許請求の範囲の請求項1の文頭に置かれた「以下に示」されているのは核酸配列であり、アミノ酸配列ではない。
そうすると、特許請求の範囲の請求項1の文頭に置かれた「以下に示している」との語句が「アミノ酸配列」に係ると解釈すると、「以下に示」されているのはアミノ酸配列ではないことから明らかに矛盾が生じる。
また、「以下に示している」との語句が「ほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(19R)をコードする」に続く「核酸配列」に係るとすると、当該「以下に示している」「核酸配列」は、「アミノ酸配列を有するほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(19R)をコードする」ものとなるが、「アミノ酸配列を有するほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(19R)」の意味が不明となるから、これもまた明らかに誤りである。
そして、その他の解釈について検討しても、特許請求の範囲の請求項1に記載された文意が明瞭となりうるものは存在せず、「以下に示しているアミノ酸配列」という記載と、「以下に示」されているのはアミノ酸配列ではないことから生じる矛盾を含む特許請求の範囲の請求項1の記載は明らかに誤記である。

そこで、この誤りの本来の意味が、本件訂正に係る1.(1)に記載されたとおりのものであるか否か検討する。
上述のとおり、「以下に示しているアミノ酸配列」という記載と、「以下に示」されているのはアミノ酸配列ではない矛盾が誤記に基づくものであるとすると、その誤りは、
(エ)「以下に示している」との語句が次の語句に係るとした上で、【化1】及び【化2】として示された配列が核酸配列としてそのままで正しいことを前提として、「以下に示している核酸配列」とすべきであったところ、「以下に示しているアミノ酸配列」とした誤りであるか、
(オ)「以下に示しているアミノ酸配列」の語句が正しいことを前提として、【化1】及び【化2】として記載された核酸配列に対応するアミノ酸配列を記載すべきであったところ、【化1】及び【化2】として核酸配列を記載した誤りであるか、
の(エ)又は(オ)のいずれかであることは明らかである。

そこで、まず、(エ)について、「以下に示しているアミノ酸配列」が、【化1】及び【化2】として示された「GAATTCCCCA ACGCAAGAGC AGCA ATG GCG GTG CAG AAG CAC ACG GTG GCG」から始まる1295文字からなる配列が核酸配列であることから、「以下に示している核酸配列」の誤りであると仮定すると、請求項1の本文前半は「以下に示している核酸配列を有するほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(19R)をコードする核酸配列を含んで成る単離核酸であって」となり、それ自体の文意については一応矛盾はなくなる。
しかしながら、特許請求の範囲の請求項7の記載は、
「【請求項7】請求項1に示しているアミノ酸配列から成る請求項6に記載のほそ麦タンパク質アレルゲン(Lol p Ib.2)。」
であって、請求項1にはアミノ酸配列が示されていることが前提となっているところ、核酸配列しか示されていないことになるのであるから、これら請求項7の記載との関係が整合せず、特許請求の範囲の記載が明確なものとならない。また、この点は請求項2の記載との関係においても同様である。
したがって、他の請求項の記載と矛盾を生じさせるため、請求項1に記載された、「以下に示しているアミノ酸配列」が、本来「以下に示している核酸配列」の意味であったということはできない。

そうすると、これら請求項2及び7の記載との関係を整合させるためには、(オ)のとおり、【化1】及び【化2】として示されるものはアミノ酸配列でなければならない。
そして、【化1】及び【化2】として示された核酸配列から導き出される唯一のアミノ酸配列は、当該核酸配列が翻訳開始コドン「ATG」のまとまりから3文字毎に1文字分の空白が置かれる核酸配列独特の表記方法に従っており、それが終止コドン「TGA」の直前まで続いていることを踏まえて当該コドンをアミノ酸に翻訳した、
「Met Ala Val Gln Lys His Thr Val Ala
・・・(途中省略)・・・
Thr Pro Ala Ala Ala Gly Gly Tyr Lys Val」なるアミノ酸配列のみである。
したがって、当該誤りの本来の意味は、上記訂正事項(1)に記載されたとおりのものであるといえる。

なお、平成19年5月28日付け手続補正書により、「以下に示しているアミノ酸配列」という記載と、「以下に示」されているのはアミノ酸配列ではなく、核酸配列となる矛盾を含むように請求項1が補正されたが、当該補正前の特許請求の範囲請求項1の記載は、平成18年10月6日付け手続補正書に記載されたとおり、
「【請求項1】
図10a及び10bに示しているアミノ酸配列を有するほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(19R)、またはその抗原性部分をコードする核酸配列を含んで成る単離核酸であって、当該コードされたタンパク質アレルゲンまたはそれらの部分がLol p Ib.2タンパク質アレルゲンに特異的なT細胞を刺激することができることを特徴とする核酸。」
であった。
したがって、「図10a及び10bに示しているアミノ酸配列」と記載されていたところ、平成19年2月23日付け拒絶理由通知書により、請求項1-3,8について、「上記請求項は明細書中の図を引用しており、上記請求項には、特許を受けようとする発明の構成が不明確である。」との拒絶理由の通知を受けて、核酸配列及びそれに対応するアミノ酸配列が共に記載された「図10a及び10b」から「アミノ酸配列」を特許請求の範囲に具体的に転記して当該拒絶理由を解消しようとしたところ、誤って、「核酸配列」を転記したものであることは、審査経緯からも明らかであり、そのことは、上記、「当該誤りの本来の意味は、上記訂正事項(1)に記載されたとおりのものである」との認定とも齟齬しない。
このように特許明細書及び図面の記載全体を参酌すれば、特許明細書中の特許請求の範囲の請求項1に【化1】及び【化2】として示されたアミノ酸配列についての記載には明白な誤記があり、上記訂正事項(1)はこれら明白な誤記を、その本来の意味である【化1】及び【化2】として示された核酸配列から導き出される正しいアミノ酸配列に訂正するものであると認められるから、特許法第126条第1項ただし書第2号にいう「誤記の訂正」を目的とするものであるといえる。


(2)特許法第126条第3項ないし第5項の規定について
上記訂正事項(1)に係る、【化1】及び【化2】として記載された核酸配列に対応するアミノ酸配列は、特許明細書中の図10a及び10bに記載されたアミノ酸配列と同一となるが、いずれの図も本件の願書に添付した明細書又は図面中に記載されていたものであることからみて、明細書に記載された事項の範囲を逸脱するものではないと認められ、特許法第126条第3項の規定に適合するものである。

また、【化1】及び【化2】に記載された配列はアミノ酸配列ではないことは明白であって、これを核酸配列として解釈した場合に、ヌクレオチド位置25-27でのATG 開始コドンで始まり、そしてヌクレオチド位置1041で始まるTGA 停止コドンで終結する1017bpの解読枠に対応するアミノ酸配列は、訂正事項(1)に係るアミノ酸配列と同一なのであるから、上記訂正によって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないと認められ、特許法第126条第4項の規定に適合するものである。

また、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明については、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるとはいえず、特許法第126条5項の規定に適合するものである。



3.むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ほそ麦花粉アレルゲン
【技術分野】
【0001】
本発明はほそ麦(ryegrass)〔ロリウム ペレンネ(Lolium perenneL.)〕の花粉に由来するアレルギー性タンパク質、並びにそのフラグメント、誘導体及び同族体、更にはそれに免疫学的に関連しているアレルギー性タンパク質に関する。より詳しくは、本発明はほそ麦の花粉に由来する主要アレルギー性タンパク質科Lol p Ib及びこのLol p Ibタンパク質科の近縁タンパク質に関連する。
関連出願との関連性
本出願は1991年8月16日提出の米国出願第746,702号の一部係属出願であり、換言すれば1990年3月24日提出の米国出願第585,086の一部係属出願であり、その両者の開示内容は本明細書に組込まれる。
【背景技術】
【0002】
人口の約10%を構成する遺伝的に罹患し易い個体は、彼らが暴露される様々な環境的起源に由来する抗原に対して過剰感作(アレルギー)となる。即時型及び/又は遅延型の過敏症を誘発せしめうるこのような抗原はアレルゲンとして知られている(King,T.P.,Adv.Immunol.23 77-105(1976))。枯草熱、ぜん息及びじんま疹の症状を含むアナフィラキシー又はアトピーは即時型アレルギーの一形態である。これは様々なアトピー性アレルゲン、例えば草、木、雑草、動物鱗屑、昆虫、食物、薬剤及び化学品の産物により生じうる。
【0003】
アトピー性アレルギーに関与する抗体はイムノグロブリンのIgEクラスに主に属する。IgEはマスト細胞及び好塩基性細胞に結合する。特定のアレルゲンと、マスト細胞又は好塩基性細胞に結合したIgEとの組合せにより、IgEはその細胞表層上に架橋して、IgE-抗原相互作用の生理学的作用をもたらしてしまう。これらの生理学的作用にはいろいろな物質の中でとりわけヒスタミン、セロトニン、ヘパリン、好酸性白血球及び/又はリューコトリエンにとっての化学走性因子、C4、D4並びにE4の放出を含み、これらは気管支性平滑筋細胞の長期にわたる収縮を引き起こす(Hood,L.E.ら、Immu-nology,第2版、The Benjamin/Cumming Publishing Co.,Inc.,(1984))。このように放出された物質は仲介剤であり、これらはIgEと特定のアレルゲンとの組合せにより引き起こされるアレルギー症状をもたらしてしまう。これらを通じてアレルゲンの作用は表われる。かかる作用は身体に侵入する抗原のルート及びマスト細胞又は好塩基性細胞上のIgEの付着パターに依存してその性質が全身性又は局所性でありうる。局所的な発現は一般にアレルゲンの身体に侵入した箇所での上皮細胞表層で生ずる。全身性作用にはアナフィラキシー(アナフィラキシーショック)が含まれることがあり、これは循環している(脈管内)抗原に対するIgE-好塩基性細胞応答の結果である。
【0004】
アレルゲンは草の花粉の最も豊富なタンパク質を構成し、これは温暖地域におけるアレルギー性疾患の主要原子である(Marsh(1975)Allergens and the genetics of allergy:M.Sela(編)The Antigens,第3巻、頁271-359、Academic Press Inc.,London,New York;Hillら(1979)Medical Journal of Australia 1,426-429)。ほそ麦におけるアレルギータンパク質の最初の解説は、それらが免疫化学的に異なるものであることを示しており、そしてグループI,II,III及びIVとして知られている(Johnson and March(1965)、Noture,206,95-;及びJohnson and Marsh(1966)Immunochemistry 3,91-100)。免疫学協会の国際統合(International Union of Immuno-logical Societies’(IUIS)命名法を利用して、これらのアレルゲンはLol p Ib,Lol p II,Lol p III及びLol p IVと呼ばれている。しかしながら、ほそ麦花粉のアレルギー性スペクトルはもっと複雑であることが知られている。ほそ麦に関する国際対照標本(interna-tional reference preparation)は12?89kDの分子量に範囲する17種のアレルゲンを含んでいる(Stewartら(1989)、Int.Arch.AllergyAppl.Immunol.86:9-18)。花粉中のこれらのアレルギー性タンパク質はそれらのIgEに対する結合能力、即ちアレルギー性個体に存在しているイムノグロブリン特異性により検定される。
【0005】
これらのアレルゲンのうちで、Lol p I,II,III及びIVがかなり研究されている。Lol p II及びIIIの全アミノ酸配列が報告されている。このことは、花粉中のアレルギー性タンパク質の量の多さ及びそのタンパク質の比較的小さい分子量に基づいて、標準の生化学的技術を利用して可能となった。Lol p I及びIVのタンパク質は花粉の中で豊富にあるにもかかわらず、同じ技術を利用して一部のアミノ酸配列しか報告されていない。それはこれらのタンパク質の比較的大きい分子量に原因する。更に、アレルゲンを夾雑なしで精製することは難しく、そして労力がかかる。一次配列がないこと及び十分な量における高純化アレルゲンがないことは、I型アレルギーの処置及び診断にとっての治療的及び診断的製品の両者の開発における律速要因である。
【0006】
Lol p Iはアレルゲンと定義されており、その理由はほそ麦感受性患者の血清中の特定のIgEに対する結合能力、IgG応答において抗原として作用する能力及びT細胞応答を誘発する能力にある。アレルギー的な性質はほそ麦花粉-感受性患者の直接的な皮膚検査により評価されている。結果が示すには、84%がLol pIに対する皮膚感作を有し(Freidhoffら(1986)J.Allergy Clin.Immunol.78:1190-1201)、主要アレルゲンとしてのこのタンパク質の主たる重要性が示唆されている。更に、ほそ麦花粉-感受性であると示された患者の95%がイムノグロッティングにより実証される通りLol p Iに結合する特定のIgE抗体を保有していた(Ford and Boldo(1986)International Archives of Allergy and Applied Immunology81:193-203)。
【0007】
ほそ麦花粉類間の実質的なアレルギー交差反応がIgE-結合アッセイ、即ち、例えばMarshら(1970)J.Allergy,46,107-121及びLowenstein(1978)Prog.Allergy,25,1-62(Karger,Basel)に記載されているようなラジオアレルゴ-収着試験(RAST)を利用して実証されている。
【0008】
Lol p Iとその他の草花粉との免疫化学的関係はポリクローナル及びモノクローナル抗体の両者を利用して実証されている(例えばSmartとKnox(1979)International Archives of Allergy and AppliedImmunology 62:173-187;Singh and Knox(1985)InternationalArchives of Allergy and Applied Immunology 78:300-304)。抗体が精製タンパク質及びIgE-結合性成分の両者に対して作られている。これらのデーターは、近縁の草類の花粉間に存在している主要アレルゲンがLol p Iに免疫化学的に類似することを示している(Singh and Knox、前掲)。
【発明の開示】
【0009】
本発明に従い、ほそ麦花粉アレルゲンLol p Iが、本明細書でLol p Ia及びLol p Ibと呼んでいる2種類のタンパク質を含んで成ることを発見した。このLol p Ibほそ麦花粉アレルゲンはL.ペレンネの中にタンパク質の科として存在している。Lol p Ib.1及びLol p Ib.2と呼んでいるLol p Ibの2種類の科構成員(fam-ily member)をコードする遺伝子がこの度同定された。科構成員Lol p Ib.1は従来がLol p Ibと呼ばれているものであり、そしてこの度Lol p Ib.1と呼ぶようになった。従って、本明細書で用いているLol p Ibは、実際には類似の構造及び機能を有すが、しかし別々の遺伝子によりコードされる近縁のタンパク質の科である主要ほそ麦花粉タンパク質アレルゲンを意味する。従って、Lol p Ib及びLol p Ib科構成員なる語は同義語として用いている。
【0010】
本発明は少なくとも1種のLol p Ibほそ麦花粉アレルゲン、あるいはその少なくとも1種の抗原性フラグメント、又は誘導体もしくは同族体をコードする精製核酸配列、又は前記核酸配列の機能的同等物を提供する。本発明はまた少なくとも1種のLol p Ibほそ麦花粉アレルゲン、あるいはその少なくとも1種の抗原性フラグメント、又は誘発体もしくは同族体をコードする精製核酸配列、又は前記核酸配列の機能的同等物を含んで成る発現ベクターを提供する。本発明は更に、本発明の核酸配列によりコードされるタンパク質又はペプチドを発現するように形質転換された宿主細胞を提供する。
【0011】
本発明の別の観点は、少なくとも1種の精製されたLol p Ibほそ麦花粉アレルゲン、あるいはその少なくとも1種の抗原性フラグメント、又は誘導性もしくは同族体を提供する。本発明の更なる観点は、ほそ麦花粉に由来するアレルゲン、好ましくはLol p Ibほそ麦花粉アレルゲンの単離された抗原性フラグメントを提供する。より好ましくは、このほそ麦花粉アレルゲンはLol p Ib.1又はLol p Ib.2である。
【0012】
本発明の更なる別の観点は、改良ほそ麦花粉タンパク質アレルゲンであって、ほそ麦花粉-感受性個体に投与したときに、ほそ麦花粉に対する個体のアレルギー性応答を低下させるものを提供する。好ましくは、このほそ麦花粉アレルゲンは改良Lol p Ibタンパク質又はその誘導体もしくは同族体である。より好ましくは、このほそ麦花粉アレルゲンは改良Lol p Ib.1又はLol p Ib.2タンパク質、又はそれらの誘導体もしくは同族体である。本発明はまた、ほそ麦花粉-感受性個体に投与したときにほそ麦花粉に対する個体のアレルギー性応答を低下させるほそ麦花粉タンパク質の少なくとも1種の改良フラグメントを提供する。このほそ麦花粉アレルゲンは好ましくはLol p Ibほそ麦花粉アレルゲン、より好ましくはLol p Ib.1又はLol p Ib.2である。Lol p Ib.1又はLol p Ib.2、あるいはLol p Ib.1又はLol p Ib.2のフラグメントもしくは誘導体もしくは同族体に免疫学的に関連している単離されたタンパク質アレルゲン又は抗原性フラグメントも本発明により提供される。
【0013】
本発明の更に別の観点において、非天然(即ち組換え又は化学合成された)Lol p Ib科構成員又はそれらの誘導体もしくは同族体あるいは、1又は複数種のLol p Ib科構成員又はその誘導体もしくは同族体に対する抗体に免疫学的に交差反応性な非天然アレルギー性タンパク質が提供される。本発明はまた、精製天然Lol p Ibタンパク質、又は少なくとも一種のそのフラグメントもしくは誘導体もしくは同族体を提供する。
【0014】
非天然Lol p Ibタンパク質、及びそれに由来するフラグメント又は領域(ペプチド)はほそ麦花粉に対するアレルギー反応を診断、処置及び予防する方法に利用できる。精製天然Lol p Ibタンパク質、そのフラグメント、及びその同族体又は誘導体もほそ麦花粉に対するアレルギー反応を診断、処置及び予防する方法に利用できる。
【0015】
本発明の更なる別の観点は、非天然Lol p Ib又はその誘導体もしくは同族体に対する抗体、並びに精製天然Lol p Ib又はその誘導体もしくは同族体に対して発生させた抗体に関する。
【0016】
本発明の更なる特徴は添付した図面に関連する本発明の好適な態様の下記の詳細な説明によってより良く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書のデーターは、ほそ麦花粉の主要アレルゲンがなにであるかというと、事実上少なくとも2種類の異なるアレルギー性タンパク質、即ちLol p Ia(これは35kDの範囲における、約5.5?7.0に範囲するpIを有する4種類のアイソフオームを含んで成る)及びLol p Ib(これは31/33kDタンパク質であり、そして6.0?10.6に範囲するpIの少なくとも5種類のアイソフオームを含んで成る)を含んで成るLol p Iであると考えられることを示している。Lol pIbはLol p Iaとは異なる一次構造及び組成を有しており、これはNH_(2)-末端アミノ酸配列より、及びアレルギー性交差反応のなさより推定される。Lol p Ib.1をコードするcDNA(クローン12R)及びLol p Ib.2をコードするcDNA(クローン19R)が単離され、そして特性化された。クローン12R及び19RによりコードされるLol p Ibタンパク質はLol p Iaとは異なる一次構造及び組成を有しており、これはcDNAクローニングにより及びアレルギー性交差反応のなさにより推定された。組換Lol p Ib.1のNH_(2)末端配列は精製天然Lol p Ibに関して決定されたそれと同一である。しかしながら、Lol p Ib.1及びLol p Ib.2は見かけ上酸性タンパク質であり、それぞれ5.16及び5.9の推定pIを有する。精製天然Lol p Ib、Lol p Ib.1及びLol p Ib.2は類似の分子量(31/33kD)及び類似のNH_(2)-末端配列を有する非グリコシル化タンパク質である。これらの類似性は天然Lol p Ib及び組換Lol p Ibタンパク質をコードする遺伝子が同一の遺伝子科のうちの異なる構成員であろうことを示唆する。Lol p Ib科構成員は、アレルゲンがプラスチッドを標的とするようにする25個のアミノ酸のシグナルペプチドを有するプレアレルゲンとして花粉の中で合成される。これに続いてペプチドの分解が起き、そして成熟花粉の中でアレルゲンはデンプン顆粒の中で主として認められる。
【0018】
従って、本発明の一観点は少なくとも1種のLol p Ibほそ麦花粉アレルゲン、又は少なくとも19種のその抗原性フラグメント、又はその誘導体もしくは同族体をコードする精製核酸配列、又はかかる核酸配列の機能的同等物を提供する。Lol p Ib科構成員をコードする好ましい核酸配列には、図3b及び3cに示すLol p Ib.1のアミノ酸-25?276をコードする核酸配列、並びに図10a及び10bに示すLol p Ib.2のアミノ酸-25?314をコードする核酸配列が含まれる。これらの配列は25個のアミノ酸のシグナル配列を含むLol p Ib.1タンパク質及びLol p Ib.2タンパク質全体をコードする。その他の好ましい核酸配列には、図3b及び3cに示すLol p Ib.1のアミノ酸1?276をコードする核酸配列、並びに図10a及び10bに示すLol p Ib.2のアミノ酸1?314をコードする核酸配列が含まれる。これらの核酸配列は成熟Lol p Ib.1及びLol p Ib.2タンパク質をコードする。本発明の更に別の核酸配列には、図3b?3cに示すLol p Ib.1の核酸配列のコード領域のうちの少なくとも1フラグメント、もしくは図10a及び10bに示すLol p Ib.2の核酸配列のコード領域の少なくとも1フラグメントをコードする核酸配列、又はかかる核酸配列の機能的同等物が含まれる。
【0019】
遺伝子材料の起源は、オーストラリア国メルボルン市の近くの野外起源から集めたロリウム ペレンネンL.由来の新鮮なほそ麦花粉、並びに供給者(Greer Laboratories,Lenoir,NC)及び頭状花由来のバルク回収花粉である。これらの花粉の起源は本発明の範囲を限定することは意図しておらず、なぜならこれらは花粉の通常の起源の一例にすぎないからである。本発明はあらゆる場所由来の花粉を利用して実施できる。
【0020】
本発明に関連して「遺伝子」はその最も広い意味で利用しており、そしてヌクレオチドの任意の連続配列を意味しており、その転写はmRNA分子をもたらし、このmRNA分子はタンパク質へと翻訳されることが可能である。Lol p Ib科構成員をコードする遺伝子とはタンパク質、又は単一のもしくは複数のアミノ酸置換、欠損又は付加を含みうるこのタンパク質の誘導体もしくは同族体をコードするヌクレオチド配列を意味する。Lol p Ib遺伝子はLol p Ibタンパク質の全長又は部分的な長さに相当するmRNAに相補性のcDNAも意味する。
【0021】
各Lol p Ib科構成員をコードする核酸配列において配列多型性があることが予測され、そしてLol p Ib科構成員をコードする核酸配列中の1又は複数のヌクレオチドが天然対立遺伝子バリエーションに基づいて個々のL.ペレンネ植物にわたって変わりうることが当業者に明らかであろう。かかるヌクレオチドバリエーションの全て及びその結果としてのアミノ酸多型性は本発明の範囲に属する。Lol p Ibは非常に近縁な遺伝子の科であり、そのタンパク質はL.ペレンネ花粉の中に存在していることが当業者に明らかでありうる(例えばRofnerら(1991)J.Biol,Chem 266:1229-1236;Silv-anovichら(1991)J.Biol.Chem.266:1204-1210)、Lol p Ib.1及びLol p Ib.2を含むかかる近縁の科構成員の全てのヌクレオチド配列及び対応の推定アミノ酸配列は本発明の範囲に属する。
【0022】
従って、Lol p Ib科に属する全てのタンパク質、Lol p Ibタンパク質科構成員の少なくとも1フラグメント(ペプチド)及びそのアミノ酸誘導体、並びにLol p Ib科構成員又はそのフラグメント、又はその誘導体をコードする、DNA,cDNA及びmRNAを含むヌクレオチド配列及びその同族体又は縮重形態は本発明の範囲の中に包括される。また、精製天然Lol p Ib、少なくとも1種のそのフラグメント(ペプチド)及びその誘導体又は同族体も本発明の範囲に包括される。更に、Lol p Ibタンパク質又は少なくともその1フラグメントもしくはその誘導体に、あるいはかかるフラグメント及び/又は誘導体をコードするヌクレオチド配列に近接しているヌクレオチド配列に融合しているポリペプチドのような分子を含むことが本発明にかかわる。例えば、本発明のいくつかの観点に関して、Lol p Ib科構成員又は少なくともその1フラグメントもしくはその誘導体と、別のペプチド又はタンパク質に由来するアミノ酸配列(その後者の例は例えばベーターガラクトシダーゼ、ホスファターゼ、ウレアーゼ等である)とを含んで成る融合タンパク質を生成することが所望される。ほとんどの融合タンパク質は組換遺伝子の発現により生成され、これにおいては2本のコード配列はその解読枠が相となって互いに連結し合っている。Lol p Ibタンパク質のかかる融合タンパク質又はハイブリド遺伝子誘導体、又はそのコードヌクレオチド配列の全てが本発明に包括される。更に、Lol p Ibタンパク質の同族体及び誘導体とは、その合成誘導体を含むことを意味する。ここで明らかにされるヌクレオチド配列は、よく知られた方法(例えば固相合成)による化学合成によって、全タンパク質を化学合成する、又は任意の数のフラグメント(ペプチド)を作るために利用できる。このようにて化学的に合成したペプチドの全てが本発明に包括される。従って、本発明は組換手段又は化学合成によって作られた単離Lol p Ibタンパク質科構成員、そのフラグメント、並びにその誘導体、同族体及び免疫学的関連物に及ぶ。
【0023】
「単離」及び「精製」なる語は本明細書で同義語として利用されており、そして組換DNA技術によって生成されたときに細胞性物質もしくは培養培地を実質に含まない、又は化学的に合成されたときに化学前駆体もしくはその他の化学品を実質的に含まないペプチド、タンパク質、タンパク質フラグメント及び核酸配列に関連する。本明細書で用いている「天然精製」なる語は、L.ペレンネ花粉又はその他の植物部分から精製したタンパク質又はフラグメントに関連する。更に、本発明は図3b及び3c、並びに図10a及び10bに示すヌクレオチドコード配列全体又はその一部に対応するタンパク質又はそのフラグメント(ペプチド)、又はその縮重もしくは同族体に及ぶ。
【0024】
本発明の範囲に属する核酸のフラグメントには、哺乳動物、好ましくはヒトにおける免疫応答;例えば最少のIgEの刺激;IgEの結合;IgG及びIgM抗体の生産の誘発;又はT細胞応答の誘発、例えば増殖及び/もしくはリンホカイン分泌及び/もしくはT細胞アネルギーの誘発;を引き出すLol p Ibの部分をコードするものが含まれる。Lol p Ibの上記のフラグメントは本明細書では抗原性フラグメントと呼んでいる。本発明の範囲に属するフラグメントには、Lol p Ibタンパク質と交差反応性であるアレルゲンを検出するためのスクリーニングプロトコールにおいて利用するためのその他の植物種に由来する核酸とハイブリダイズできるものも含まれる。本明細書で利用しているLol p Ibをコードする核酸配列のフラグメントは、Lol p Ib及び/又は成熟Lol p Ib科構成員の全アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列より少ない塩基数を有するヌクレオチド配列を意味している。一般に、Lol p Ib科構成員のフラグメントをコードする核酸配列は成熟Lol p Ibタンパク質科構成員をコードする塩基から選ばれるであろうが、しかしながら一定の状況において、本発明の核酸配列のリーダー配列部分に由来するフラグメントの全て又は一部を選別することが所望されることがある。本発明の核酸配列はリンカー配列、制限エンドヌクレアーゼ部位及びLol p Ibタンパク質又はそのフラグメントのクローニング、発現する精製にとって有用なその他の配列も含んでよい。
【0025】
ほそ麦花粉に由来するアレルゲン、好ましくはLol p Ib.1,Lol p Ib.2又は精製天然Lol p Ibの抗原性フラグメントは例えば、かかるペプチドをコードする本発明の核酸整列の対応のフラグメントから組換法により生成したペプチドをスクリーニングすることにより、当業者に知られる技術を利用して化学合成することにより、又は精製アレルゲンを分解することにより獲得できうる。タンパク質アレルゲンのペプチドフラグメントは当業界に公知の任意の方法、例えばアレルゲンの化学切断、アレルゲンをペプチドを重複のない所望の長さのフラグメントへと任意に分割すること、又は好適にはアレルゲンの所望の長さの重複フラグメントへの分割により獲得できうる。これらのフラグメントはその抗原性及びアレルギー性を決定するために試験される。組換又は合成的に生成されたLol p Ibのフラグメント又は精製天然Lol p Ibのフラグメントであって、T細胞応答、例えば刺激(即ち、増殖又はリンホカイン分泌)を誘発することが可能な、及び/又はT細胞アネルギーを誘発することが可能なフラグメントが特に所望される。組換又は合成的に生成されたLol p Ib又は精製天然Lol p IbのフラグメントであってイムノグロブリンE(IgE)に結合しない及び/又は最少のIgE刺激活性を有するフラグメントも所望される。組換又は合成的に生成されたLol p Ibタンパク質科構成員又は精製天然Lol p IbのフラグメントがIgEと結合するなら、その結合はヒスタミン放出をもたらさないこと、例えばかかる結合がマスト細胞又は塩基性細胞上でのIgEの架橋を引き起こさないことが好ましい。最少IgE刺激活性とは、全体が組換又は合成的に生成されたLol p Ibタンパク質又は全体が天然であるLol p Ibタンパク質により刺激されるIgE生産量より低いIgE刺激活性を意味する。好ましいフラグメントには、抗原性フラグメントであって、ほそ麦花粉感受性個体又はほそ麦花粉アレルゲンと交差反応性のアレルゲンに対してアレルギーを有する個体に投与したときに、その個体のほそ麦花粉アレルゲンに対するアレルギー性応答を改善せしめることの可能なフラグメント、及び抗原性フラグメントであって、ほそ麦花粉感受性個体に投与したときに、ほそ麦花粉アレルゲンに対するその個体のB細胞応答、T細胞応答又はB細胞とT細胞応答の両者を改善せしめることの可能なフラグメントも含まれる。本明細書で用いているほそ麦花粉アレルゲンに対して感受性な個体のアレルギー応答の改善とは、アレルゲンに対する反応性をなくす又は草花粉誘発性ぜん息症状の軽減(Suphiogluら(1992)Lancet 339:569-572)を含む症状の軽減と定義され、これは標準の臨床順によって決定される(例えばVarneyら、British Medical Journal(1990)302:265-269を参照のこと)。
【0026】
T細胞刺激活性を有し、それ故少なくとも1つのT細胞エピトープを含んで成るような本発明の抗原性フラグメントが特に所望される。T細胞エピトープは、アレルギーの臨床的症状の原因であるタンパク質アレルゲンに対する免疫応答の開始及び不朽化に関与するものと信じられている。これらのT細胞エピトープは、抗原表示細胞の表層上の適切なHLA分子への結合及び関連のT細胞サブ集団の刺激により、Tヘルパー細胞のレベルでの初期現象の引金となっていると考えられる。これらの現象はT細胞増殖、リンホカイン分泌、局所的な炎症反応、付加免疫細胞のその部位への補給、及びB細胞カスケードの活性化をもたらし、抗体の生産に導く。これらの抗体の1アイソタイプIgEはアレルギー症状の発症に基本的に重要であり、そしてその生産は分泌されたリンホカインの種類により、Tヘルパー細胞のレベルで、現象のカスケードにおいて初期に生ずる。T細胞エピトープはT細胞レセプターにより認識される基本要素又は最小単位であり、このエピトープはレセプター認識にとって必須なアミノ酸を含んで成る。T細胞エピトープを擬態し、且つタンパク質アレルゲンに対するアレルギー性応答を改善せしめるアミノ酸配列は本発明の範囲に属する。
【0027】
本発明の精製タンパク質アレルゲン、又は少なくとも1T細胞エピトープを含んで成り、且つタンパク質アレルゲンに由来する抗原性フラグメントに対する患者の暴露は、適当なT細胞サブ集団がタンパク質アレルゲンに対して無反応性となり、従ってかかる暴露による免疫応答の刺激に関与しないように寛容化又はアネルギー化せしめる。更に、本発明のタンパク質アレルゲン、又は少なくとも1T細胞エピトープを含んで成る本発明の抗原性フラグメントの投与はリンホカイン分泌プロフィールを、天然のタンパク質アレルゲン又はその領域に対する暴露に比して改善せしめうる(例えばIL-4の低下及び/又はIL-2の上昇がもたらされる)。更に、かかる抗原性フラグメント又はタンパク質アレルゲンに対する暴露は、アレルゲンに対する応答に通常関与するT細胞サブ集団に影響を及ぼし、これらのT細胞がアレルゲンに対して通常暴露される箇所(例えば鼻腔粘膜、皮膚及び肺)からフラグメント又はタンパク質アレルゲンの治療投与箇所に向って引き離されるようにすることができる。T細胞サブ集団のこのような移動はアレルゲンに対して通常暴露される箇所での通常の免疫応答を刺激する個体の免疫系能力を緩和又は低下することができ、アレルギー症状の軽減がもたらされる。
【0028】
タンパク質又はそのフラグメントに対するIgE結合性のスクリーニングは実験動物もしくはヒトホランティアに基づくスクラッチ検査もしくは皮内検査、又はインビトロ系、例えばRAST(ラジオアレルゴ収着試験)、RAST阻害、ELISAアッセイもしくはラジオイムノアッセイ(RIA)により実施されうる。
【0029】
本発明は本発明の核酸配列を発現するための発現ベクター及び形質転換宿主細胞を提供する。本発明の発現ベクターは少なくとも1種のLol p Ibほそ麦花粉アレルゲン、又は少なくとも1種のその抗原性フラグメント、又はその誘導体もしくは同族体をコードする核酸配列、又はかかる核酸配列の機能的同等物を含んで成る。Lolp Ib.1又はLol p Ib.2を含むLol p Ib科構成員又はその少なくとも1種のフラグメントをコードする核酸配列は原核又は真核宿主細胞の中に発現されうる。適切な宿主細胞には細菌細胞、例えばE.コリ(E.coli)、昆虫細胞、酵母、哺乳動物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)が含まれる。適切な発現ベクター、プロモーター、エンハンサー、及びその他の発現コントロール要素はSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York、1989に見い出すことができる。酵母における発現にとって適切なベクターにはYepSec 1(Baldariら(1987)Embo J.6:229-234);pMF (Kurjan and Herskowitz(1982)Cell30:933-943);及びJRY88(Schultsら(1987)Gene 54:113-123)が含まれる。E.コリにおける発現に関して、適当な発現ベクターにはPTRC(Amannら(1988)Gene 69:301-315);pET-11d(Novagen,Madi-son,WI);pGEX(Amrad Corp.,Melbourne,Auslralia);pMAL(N.E.Biolabs,Beverly,MA);pRIT5(Pharmacia,Piscataway,NY);及びpSEM(Knappら(1990)BioTechniques 8:280-281)が含まれる。pTRC及びpET-11dの利用は未融合タンパク質の発現をもたらすであろう。pGEX,pMAL,pRIT5及びpSEMの利用は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(pGEX)、マルトースE結合タンパク質(pMAL)、プロテインA(pRIT5)又は省略型β-ガラクトシダーゼ(PSEM)に融合したアレルゲンの発現をもたらすであろう。
Lol p Ibタンパク質科構成員、又はそのフラグメントが融合タンパク質として発現されるとき、担体タンパク質とLol p Ibタンパク質科構成員又はそのフラグメントとの間の融合連結部に酵素的切断部位を導入することが極めて好都合である。Lol p Ib科構成員又はそのフラグメントはこれにより、酵素的部位での酵素的切断並びにタンパク質及びペプチドの精製にとっての常用の技術を利用する生化学的精製を通じて回収されうる。適切な酵素的切断部位には、凝血因子Xa又はトロンビンにとってのそれらであり、これらにとっての適当な酵素及び切断のためのプロトコールは例えばSigma Chemical Company,St.Louis,MO及びN.E.Biolabs,Beverly,MAより商業的に入手できる。
【0030】
宿主細胞は常用の技術、例えばリン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈殿、DEAE-デキストラン-仲介型トランスフェクション、又はエレクトロポレーションを利用して本発明の核酸配列を発現させるために形質転換されうる。宿主細胞を形質転換させるための適切な方法はSambrookら、前掲、及びその他の研究室のテキストブックにおいて見い出すことができる。本発明の核酸配列は標準的な技術によっても合成されうる。
【0031】
従って、本発明の別の観点は組換Lol p Ib.1又はLol p Ib.2、又は少なくとも1種のそのフラグメント、又はそれらの誘導体もしくは同族体、又はそれらの免疫学的関連物(前記に定義した通り)を製造する方法を提供し、この方法は複製可能な組換DNA分子を含む生物を(ここでこの分子は前記生物の中で発現可能なプロモーター;このプロモーターの下流に位置し、そしてそれより転写されるLol p Ib科構成員、少なくとも1種のそのフラグメント、又はその同族体もしくは誘導体、又はその免疫学的関連物をコードする遺伝子;選択マーカー及び原核又は真核系複製起点を含むDNA媒体;を含んで成る)、前記組換DNA分子が安定維持され、且つLol p Ibタンパク質、少なくとも1種のそのフラグメント又はその誘導体、同族体もしくは免疫学的関連物の合成がもたらされるのに十分なる条件及び時間のもとで培養し、次いでそれらを任意的に単離することを含んで成る。
【0032】
Lol p Ib.1タンパク質、Lol p Ib.2タンパク質及びそのフラグメント(ペプチド)は、ペプチド及びタンパク質を精製する当業界に公知である、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、及びLol p Ib.1,Lol p Ib.2又はLol p Ib.1もしくはLol p Ib.2のフラグメントに特異的な抗体による免疫精製を含む技術により、細胞培養培地、宿主細胞、又はその両者から精製できる。単離及び精製なる語は本明細書では同義語として用いられ、そして組換DNA技術により生成されたときは細胞性質物もしくは培養培地を、又は化学合成されたときは化学前駆体もしくはその他の化学品を実質的含まないペプチド、タンパク質、タンパク質フラグメント及び核酸配列を意味する。
【0033】
本発明の別の観点は、Lol p Ib,Lol p Ib.1,Lol p Ib.2又はLol p Ib,Lol p Ib.1もしくはLol p Ib.2の少なくとも1フラグメントを含んで成るタンパク質調製物を提供する。本発明のこの観点の好ましい態様において、Lol p Ib.1もしくはLol p Ib.2タンパク質、又はLol p Ib.1もしくはLol p Ib.2の少なくとも1フラグメントはこのタンパク質又はフラグメントをコードする核酸配列で形質転換された宿主細胞の中で生成される。
【0034】
現状有用な構造情報を利用して、ほそ麦花粉感受性個体に十分な量で投与でしたときにほそ麦花粉に対するその個体のアレルギー応答を改善せしめるであろうLol p Ib由来のペプチドをデザインすることが可能である。これは例えばLol p Ibの構造を調べ、ほそ麦花粉感受性個体におけるB細胞及び/又はT-細胞応答に影響を及ぼす能力について調べるべきペプチドを作り(発現系、合成又は他の手段を介して)、次いでこれらの細胞により認識される適当なエピトープを選別することにより成し遂げられうる。エピトープに関して、このエピトープはレセプター、特にイムノグロブリン、組織適合性抗原及びT細胞により認識の基礎要素又は最小単位であることができ、ここでレセプター認識にとって必須のアミノ酸はそのアミノ酸配列において連続でも非連続的でもよい。これらのエピトープを擬態し、且つほそ麦花粉アレルゲンに対するアレルギー応答を下降調節可能なアミノ酸配列も利用できうる。
【0035】
ほそ麦花粉感受性個体におけるアレルギー反応を誘発せしめるほそ麦花粉アレルゲンの能力をブロック又は阻害することの可能な因子又は薬剤をデザインすることも現状可能となった。かかる因子は例えばそれらが対応の抗-Lol p Ib-IgEに結合し、それ故IgE-アレルゲン結合及びそれに続くマスト細胞又は好塩基性細胞の脱顆粒を阻止するようにデザインすることができる。他方、かかる因子は免疫系の細胞性成分に結合して、L.ペレンネ花粉アレルゲンに対するアレルギー応答の抑制又は脱感作をもたらすことができる。その限定でない例は、ほそ麦花粉に対するアレルギー応答を抑制せしめる本発明のcDNA/タンパク質構造に基づく、適当なB-及びT-細胞エピトープペプチド又はその改質体の利用にある。これはほそ麦花粉感受性個体由来の血液成分を有するインビトロ研究において、B-及びT-細胞機能に影響を及ぼすB-及びT-細胞エピトープペプチドの構造を定義付けることによって実施できる。
【0036】
本発明のタンパク質、ペプチド又は抗体はほそ麦花粉症を検査及び診断するためにも用いることができる。例えば、これはほそ麦花粉に対する感受性について評価すべき個体から獲得した血液又は血液産物を、単離せしめた組換もしくは合成的に生成したLol p Ib又は天然精製Lol p Ibタンパク質の抗原性ペプチド、あるいは単離せしめたLol p Ibタンパク質又は単離せしめた天然精製Lol p Ibタンパク質と、血液における成分(例えば抗体、T細胞、B細胞)がこれらのペプチド又はタンパク質と結合するのに適切な条件のもとで組合わせ、次いでかかる結合の生じた度合いを決定することにより行うことができる。結合の生じた度合いは例えばT細胞機能、T細胞増殖、B細胞機能、又は血液中に存在している抗体に対するタンパク質又はそのフラグメント、あるいはその誘導体もしくは同族体の結合性あるいはそれらの組合を評価することによって決定できる。
【0037】
更に、ほそ麦花粉に対する哺乳動物の感受性は、哺乳動物におけるアレルギー応答を刺激するようにLol p Ib科に属する少なくとも1種のほそ麦花粉アレルゲンを十分な量で哺乳動物に投与し、次いでほそ麦花粉アレルゲンに対するこの哺乳動物におけるアレルギー応答の発生を決定することによって決定できうる。本発明のこの観点において用いられるほそ麦花粉アレルゲン、そのフラグメント又は誘導体もしくは同族体は組換又は合成的に生成できうる。精製天然Lol p Ibタンパク質又はそのフラグメントが組換又は合成的に生成されたLol p Ibもしくはそのフラグメントに代わってほそ麦に対する哺乳動物の感受性を決定する上記の方法に用いられることができる。
【0038】
本発明の任意の態様において用いられるDNAは本明細書に記載の通りに獲得され、又はそうでなければ本明細書に示している配列全体又は一部を有する任意のオリゴデオキシヌクレオチド配列又はその機能的同等物であってよい。かかるオリゴデオキシヌクレオチド配列は公知の技術を利用して化学的又は機械的に生成されうる。オリゴヌクレオチド配列の機能的同等物は1)図3b及び3c(Lol pIb.1)の配列(又は対応の配列領域)もしくはそのフラグメントがハイブリダイズする又は図10a及び10b(Lol p Ib.2)の配列(又は対応の配列領域)もしくはそのフラグメントがハイブリダイズする相補性オリゴヌクレオチドにハイブリダイズ可能な配列、あるいは2)図3b及び3c又は図10a及び10bの核酸配列に相補性を配列(又は対応の配列領域)、並びに/あるいは図3b及び3c又は図10a及び10bの核酸配列の配列(又は対応の配列領域)によりコードされる生成物と同一の機能特性を有する生成物(例えばポリペプチド又はペプチド)をコードする配列、であるものである。機能的同等物が1又は複数の基準に合うものでなくてはならないかどうかは、その利用に依存するであろう(例えば、もしそれがオリゴプローブとしてのみ利用されるなら、それは第1又は第2基準に合うだけでよく、そしてもしそれがLol p Ibを生成するために利用されるなら、それは第3基準に合うだけでよい)。
【0039】
Lol p Ib.1又はLol p Ib.2を含むLol p Ib cDNA(又はそれが転写されるmRNA)又はその領域を、任意の種類又はタイプの植物における類似の配列を同定するために、それ故、Lol p Ib cDNA又はmRNA又はその領域、例えばイネ科(Poaceae)の植物のアレルゲンに由来するDNAに低緊縮条件のもとでハイブリダイズするほど十分な相同性を有する配列を同定又は「鈎り出す」のに利用できる。十分なる相同性(一般に40%以上)を有する配列は本明細書に記載の方法を利用して更なる評価のために選択できうる。他方、高緊縮条件を利用することができる。この状況においては、本発明のDNAはその他のタイプの植物、好ましくは近縁の科、属する種における、Lol p Ibのアミノ酸配列と類似のそれを有するポリペプチドをコードする配列を同定するために、それ故その他の種におけるアレルゲンを同定するのに利用できうる。従って、本発明のLol p Ibだけでなく、本発明のDNAにハイブリダイズするDNAによりコードされるその他のアレルゲンも含む。
【0040】
本発明は更に、Lol p Ib.1又はLol p Ib.2又はフラグメント、又はその誘導体もしくは同族体を含むLol p Ibに免疫学的に関連する単離せしめたアレルゲン性タンパク質又はそのフラグメントを含み、それらの単離は例えば抗体交差反応性(ここで単離されたアレルゲン性タンパク質又はそのフラグメントは本発明のタンパク質及びペプチドに対して特異的な抗体に結合可能である)又はT細胞交差反応性(ここで単離されたアレルゲン性タンパク質又はそのフラグメントは本発明のタンパク質及びペプチドに対して特異的なT細胞を刺激可能である)による。
【0041】
他の者による研究は、高投与量のアレルゲンが一般に良好な結果(即ち、最良の症状軽減)をもたらすことを示している。しかしながら、多くの人は大量のアレルゲン投与に耐えることができず、その理由はアレルゲンに対するアレルギー反応にある。天然アレルゲンの改良は、対応の天然アレルゲンと同一又はそれより高い治療的性質を有するがしかし低い副作用(特にアナフィラキン-反応)を有する改良ペプチドは改良アレルゲンが生成されうるようにデザインされうる。これらは例えば、本発明のタンパク質もしくはペプチド(例えば、Lol p Ib.1又はLol p Ib.2又は精製天然Lol p Ibを含むLol p Ibのアミノ酸配列全体又はその一部を有するもの)、又は改良タンパク質もしくはペプチド、又はタンパク質もしくはペプチド類似体でありうる。本発明のタンパク質又はペプチドの構造は、例えば可溶性の上昇、治療的もしくは予防的効果の上昇、又は安定性(例えば生体外での棚寿命及びインビボでのタンパク質分解)の目的のために改良されうる。改良タンパク質又はペプチドは、免疫原性を改質するために、及び/又はアレルゲン性を下げるために例えばアミノ酸の置換、欠失又は付加によりアミノ酸が変更されて、又は同一の目的のために成分が加えられて生成されていてよい。
【0042】
従って、本発明は、ほそ麦花粉感受性個体に投与したときにほそ麦花粉に対する個体のアレルギー応答を引き下げる、改良ほそ麦花粉タンパク質アレルゲンを提供する。好ましい改良ほそ麦花粉タンパク質アレルゲンには、改良Lol p Ib.1タンパク質又はその誘導体もしくは同族体、及び改良Lol p Ib.2タンパク質又はその誘導体もしくは同族体が含まれる。本発明はまたほそ麦花粉感受性個体に投与したときに、ほそ麦花粉に対する個体のアレルギー応答を引き下げるほそ麦花粉タンパク質アレルゲンの少なくとも1改良フラグメントを提供する。好ましくは、かかる改良フラグメントはLolp Ib.1タンパク質又はその誘導体もしくは同族体の又はLol p Ib.2タンパク質又はその誘導体もしくは同族体の少なくとも1改質フラグメントである。
【0043】
Lol p Ib.1もしくはLol p Ib.2又は精製天然Lol p Ibのタンパク質又はペプチドは、例えばA.Sehonとその共同研究者のポリエチレングリコール法を利用して改良できうる。Wieら、(1981)Int.Arch.Allergy Appl.Immunology,64:84-99。Lol p Ib.1もしくはLol p Ib.2又は精製天然Lol p Ibのタンパク質又はペプチドの改良には、還元/アルキル化(Tarr〔1986〕:Methods ofProtein Microcharaterization,J.E.Silver編、Humana Press,Clifton,NJ.頁155-194);アシル化(Tarr、前掲);エステル化(Tarr、前掲);適当な担体への化学カップリング(Mishell andShiigi編、Selected Methods in celluar Immunology,WH Freeman,San Francisco,CA;米国特許第4,939,239号);又は温和ホルマリン処理(Marsh(1971)Int.Arch.Allergy Appl.Immunol.41:199-215)も含まれうる。
【0044】
タンパク質又はペプチドの改良のその他の例はジスルフィド結合を介する脱鉱化を最少限とするため好ましくはアラニン、セリン、スレオニン、ロイシン又はグルタミン酸によるシステイン残基の置換である。本発明のペプチドの改良の他の例はアミノ酸側鎖の化学的改良又はペプチドの環化による。
【0045】
安定性及び/又は反応性を高めるために、本発明のタンパク質又はペプチドは天然対立形質バリエーションに由来して、タンパク質アレルゲンのアミノ酸配列の中に1又は複数の多型性を含ませるように改質されることもできうる。更に、本発明の範囲に属する改良タンパク質又はペプチドを生成するためにD-アミノ酸、非天然アミノ酸又は非アミノ酸類似体を置換又は付加してよい。
【0046】
天然Lol p Ibは当業界に公知の貫用の方法、例えばScopes,R.K.(1987)Protein Purification,Principles and Practice、第2版、Springer-Verlag,New York,New Yorkにおける方法を利用して精製できる。適切な方法にはイオン交換クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー、電気泳動、限外濾過、等電点電気泳動及び天然Lol p Ibに特異的な抗体を利用する免疫収着クロマトグラフィーが含まれる。等電点電気泳動及びSDS-PAGEによる天然Lol p Ibの精製が実施例2の中に記載してある。
【0047】
Lol p Ib.1及びLol p Ib.2をコードするcDNAのクローニングは、ほそ麦花粉感受性患者に由来する特異的なモノクローナル抗体及び特異的な血清IgEの両方を利用する、ラムダ-gtllファージで形質転換せしめたエッシェリヒア コリ(Escherichia coli)により発現されたタンパク質の認識を基礎とする。かかる2種類のクローンを12R及び19Rと命名した。また、利用したモノクローナル抗体はMAbs3.2、FMC A7(12.3)、21.3及びFMC A1(40.1)とした(Kahn& Marsh(1986)Molec.Immunol.23:1281-1288;Singh & Knox(1985)International Archives of Allergy and Applied Immunology 78,300-304;Smartら(1983)International Archives of Allergyand Applied Immunology72 243-248)。Lol p Ib.1及びLol p Ib.2のクローニングの詳細を実施例の中に示す。
【0048】
課題のタンパク質のアレルゲン性質は、アレルギー患者の血清の中で高レベルで存在しているレアギン性IgE抗体へのその結合性によってある程度特性化してある。アレルギータンパク質上のエピトープへのIgE結合は色素形成アッセイにおいて試験でき、それにおいて固相支持体上に固定化されたアレルゲンは(1)アレルギー患者血清;(2)酵素ラベル化抗-IgE抗体の中での順々のインキュベーションによって識別化されうる。
【0049】
本発明の別の観点は草の種の花粉に由来するアレルギー活性を示すタンパク質をコードするDNA配列を含んで成る組換ベクターに関する。より詳しくは、この草の種はイネ科(グラミネア〔Gramineae〕)に属し、そしてもっと詳しくは、ドクムギ(Lolium)属に属する。更により詳しくは、このアレルゲン性タンパク質はホソムギ花粉のLol p Ibタンパク質に対する抗体と免疫交差反応性であるとに特徴付けられている。
【0050】
ウシノケグサ(Pooid;festucoid)草類、グループ1。コムギ属:スズメノチヤヒキ(Bromus inermis,smooth broom);ジバムギ(Agrop-yron repens,English couch);カモジグザ(A.cristatum);ライムギ(Secale cereale,rye);パンコムギ(Triticum aestivm)麦。グループ2:イチゴシナギ属:オーチャードグラス(Dactylis glomerata,orchard grass of cocksfoot);ヒロハノウシノケグサ(Festuca cla-tior,meadow fesuce);ホソムギ(Lolium perenne,perennial ryegra-ss);ネズミムギ(L.multiflorum,Italian ryegrass);ナガハグサ(Poapratensis,Kentucky bluegrass);イチゴツナギ(P.compressa,flattened meadow grass);エンバク(Avena sativa,oat);シラゲガヤ(Holcus lanatus,velvet grass又はYorkshire fog);ハルガヤ(Anthoxanthum odoratum,sweet vernal grass);オオカニツリ(Arr-henatherum elatius,oat grass);コヌカグサ(Agrostis alba,redtop);オオアワガエリ(Phleum pratense,timothy);クサヨシ(Phala-ris arundinacea,reed canary grass)。キビ属草類(Panicoidgrass);バヒアグラス(Paspalum notatum,Bahia grass);メリケンカルカヤ属草類(Andropoqonoid grasses):セイバンモロコシ(Sorghum halepensis,Johnson grass)。
【0051】
Lol p Ib、その少なくとも1フラグメント又はその誘導体の製造のために様々な発現ベクターを構築することができる。従って、本発明の更なる観点はほそ麦(Lolium pernne,L.)の花粉のアレルギー性タンパク質Lol p Ib、又はその誘導体もしくは同族体をコードするDNA配列を含んで成る組換ベクターを提供する。より詳しくは、本発明は真核又は原核系の複製起点、検出マーカー、Lol p Ib科構成員又はその誘導体もしくは同族体、あるいはLol p Ib科構成員又はその誘導体もしくは同族体に対する抗体と交差反応性のアレルギー性タンパク質をコードするDNA配列、及び任意的にLol p Ib科構成員の転写を誘発させることの可能なプロモーター配列を含んで成る組換DNA分子に関する。
【0052】
本発明はまたほそ麦花粉タンパク質のプロモーター、特にLol p Ib遺伝子、例えばLol p Ib.1及びLol p Ib.2をコードする遺伝子のプロモーターにまで及ぶ。このプロモーターはLol p Ib遺伝子発現を発展的に調節し、そしてこれは器官、即ち、花粉特異性である。本明細書で使用している発展的調節とは、特定の形質、この場合においては植物のライフサイクル中の一定の段階中での花粉におけるアレルゲン性タンパク質の発現及び他の段階中での非発現を意味する。従って、Lol p Ibプロモーターは、Lol p Ib又は任意のその他の遺伝子又はそれに関連するヌクレオチド配列の発現を、花粉の発育中のみに可能とするのに極めて有用である。当業者は花粉形成中の特定の形質の選択的な発現におけるかかるプロモーターの重要性を直ちに認識するであろう。
【0053】
従って、本発明は花粉の発育又は機能を阻害し、それ故イネ科の植物、そして特にホソムギにおいて核雄不稔性(nuclear male ster-ility)を誘発せしめる方法を提供し、この方法は下記の段階:
a)組換DNA分子であってその上に載っているほそ麦プロモーター配列又はその同族体もしくは縮重体及びイネ科に由来する細胞の中で有害な機能を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んで成る分子を保有する植物を発育させ(前記ヌクレオチド配列は前記プロモーターより転写可能であり、そして前記組換DNA分子は花粉生産細胞の中に安定的に含まれている)、次いで
b)前記植物を、前記プロモーターから前記ヌクレオチド配列の発現を引き起こさせるよう、その発育段階にとって十分な条件及び時間にわたって成長させ、これにより花粉形成が阻害されるか又は前記花粉が不活性されるように前記花粉生産細胞の中で有害な機能を有するポリペプチドを生産させること;
を含んで成る。
【0054】
組換DNA分子を植物細胞の中に導入するためよく樹立された方法が存在し、例えばアグロバクテリア(Agrobacterium)プラスミド及びエレクトロポレーションがとりわけ利用される。ポリペプチドに関する「有害な機能」とは、細胞増殖を阻害する、細胞の溶解を引き起こす、又は細胞における様々な機能を阻害して、細胞の正常な機能を阻止するであろう前記ポリペプチドの特徴を意味する。この場合、有害な機能を有する致死的遺伝子構築体が考慮され、これは花粉形成を阻害又は阻止し、それ故雄不稔性植物をもたらす。かかる「致死的遺伝子」はいろいろな分子のなかでとりわけ酵素、酵素インヒビター及び/又は毒性ポリペプチドをコードしうる。他方、この致死遺伝子はmRNAの特定の種であってその翻訳生成物が花粉の発育にとって不可決であるものの翻訳を阻害することの可能なアンチセンスRNAをコードしうる。
【0055】
雄不稔性植物はハイブリド穀類変種を開発するうえで特に有用である。
【0056】
Lol p Ibプロモーターはプロモータープローブベクター、「染色体歩行」及びS1ヌクレアーゼ地図化、並びに転写開始部位の上流のDNAのシーケンシングの利用を含む任意の数の手順によってほそ麦ゲノムDNAから単離可能である。
【0057】
従って、本発明は組換DNA分子であって、この分子の上に載っているほそ麦花粉プロモーター配列、そして特にLol p Ib科構成員、又はその同族体もしくは縮重体をコードする遺伝子にとってのプロモーターを含んで成り、そして前記プロモーターの下流に1又は複数の制限エンドヌクレアーゼを有しており、これにより1又は複数のこれらの部位の中に挿入されたヌクレオチド配列が正しい解読枠において転写可能であり、それ故発育的に調節された花粉特異性発現ベクターである組換DNA分子を提供する。本明細書で使用する「正しい解読枠」とは「相中(in phase)」と同じ意味を有する。上述のDNA分子がその上に選別マーカー、例えば抗生物質又はその他の薬剤耐性遺伝子、例えばアンピシリン、カーベニシリン、テトラサイクリン、ストレプトマイシンに対する耐性をコードする遺伝子を含むことも好ましい。この組換分子は更に原核及び/又は真核細胞における安定な遺伝のための手段を更に含んで成るであろう。これは発現ベクターについて以降で説明するように前記組換分子が真核及び/又は原核系複製起点を保有することによって達成されうる。
【0058】
他方、この組換分子は宿主細胞ゲノムへの組込みのための手段を保有することがあり、これにより前記組換分子の複製が前記宿主細胞ゲノムの複製と同時進行することが可能となる。好ましい原核宿主の例にはE.コリ、バチルス(Bacillus)及びシュードモナス(Pseud-omonas)がとりわけ含まれる。好ましい原核宿主には酵母及び菌類、昆虫、哺乳動物及び植物に由来する細胞が含まれる。更により好ましい宿主細胞はイネ科の植物、そして特にドクムギ属の植物、例えばホソムギの植物である。好ましい態様に従い、Lol p Ib遺伝子プロモーターとそれに対応して位置する有害な機能をコードする遺伝子は、イネ科又はホソムギに由来の植物の細胞のゲノムの中に組込まれることの可能な組換DNA分子により保有されるであろう。かかる組換DNA分子は前述の細胞に例えばエレクトロポレーションによって移入される。実際には、前記細胞はカルス由来細胞である。前記組換DNA分子で形質転換された前記カルス由来細胞はこれにより完全植物の中へと再生されることが可能となる。全体植物のライフサイクルの花粉発育段階に入ったそれは、Lol p Ib遺伝子プロモーターの機能化、それ故有害機能をコードする遺伝子の発現を可能とする。従って、花粉発育は阻害又は阻止され、そしてそれより核雄不稔性植物が得られる。
【0059】
他方、Lol p Ibプロモーターは好都合な機能、例えばサイトカイニンを有する遺伝子の発現をもたらすであろう。かかる組換DNA分子の全てが本発明に包括される。
【0060】
本発明は、国際特許出願PCT/AU89/00123号に記載の方法に従って生成された、Lol p Ib又は組換もしくは合成的に生成されたLol p Ibもしくは精製天然Lol p Ibの少なくとも1フラグメントに対するモノクローナル及びポリクローナル抗体、並びにその中に説明してあるイムノアッセイ及びテストキットにおけるそれらの利用に及ぶ。
【0061】
Lol p Ibクローンに関するcDNAライブラリーをスクリーンする本研究において利用したモノクローナル抗体は様々な近縁草種の花粉由来のアレルゲン性タンパク質と交差反応性を示した。このことは、これらの花粉により生成されたアレルゲン性タンパク質と、Lol p Ibタンパク質アレルゲンとの間での相同性を示唆し、全ての近縁草類への本発明の応用性を裏付けている。本発明はまた、組換Lol p Ibタンパク質アレルゲン、並びにその化学合成誘導体を含むその誘導体、同族体及び免疫学的関連物に関する。下記の説明において、Lol p Ibタンパク質アレルゲンについての言及はその誘導体、同族体及び免疫学的関連物、並びにそれらの化学合成誘導体を含んでいる。下記の説明は精製Lol p Ib並びにそのフラグメント、誘導体及び同族体に対して特異的な抗体も含む。かかる抗体は特に治療的又は診断的手法のモニターの際の、及び組換又は合成的に生成したLol p Ib科構成員又は天然Lol p Ibの精製におけるLol p Ibタンパク質アレルゲンについての検出アッセイ(イムノアッセイ)の開発において有用であると考えられる。これらの抗体はモノクローナル又はポリクローナルであってよい。更に、本発明の範囲において上述の第1の抗体に対する任意の第2抗体(モノクローナル又はポリクローナル)が含まれる。本発明は更に、検出アッセイにおける、及び例えば診断用の又は投与した薬品製剤の効果をモニターするうえでのこれらの第1又は第2抗体の使用を更に考慮している。更に、Lol p Ibタンパク質アレルゲンに複合した任意の分子に対する抗体が本発明の範囲に含まれる。従って、Lol p Ibタンパク質アレルゲンに対する抗体は、かかるLol p Ibタンパク質アレルゲン、又はそのアレルゲン部分、並びに任意の会合分子(例えば脂質領域、キャリヤー分子、融合タンパク質等)に対する抗体を包括する。
【0062】
本明細書で考慮しているLol p Ib科構成員又はそのフラグメントは精製して抗体製造において利用される。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の両者は組換、合成又は天然Lol p Ibタンパク質科構成員による免疫によって獲得でき、そしていづれのタイプもイムノアッセイに有用である。両タイプの血清を獲得する方法は当業界に公知である。ポリクローナル血清はあまり好ましくないが、適当な実験動物に有効量の精製Lol p Ib科構成員又はその抗原性部分を注射し、この動物から血清を集め、次いで任意の公知の免疫収着技術によって特異的な血清を単離することにより比較的簡単に調製できる。この方法により生成した抗体は事実上あらゆるタイプのイムノアッセイに有用であるが、それらは生成物の潜在的な不均質性のため一般にあまり好ましくない。
【0063】
イムノアッセイにおけるモノクローナル抗体の利用はそれらを大量に、且つ均質な生成物で製造できる能力のために極めて好ましい。不死細胞系と免疫原調製品に対して感作せしめたリンパ球との融合に由来するモノクローナル抗体の生産のためのハイブリドーマ細胞系の製造は当業者に公知の技術によって成し遂げられうる(例えばKohler and Milstein(1975)Nature 256:495-499及びKohlerand Milstein(1986)Eur.J.Immunol.6:511-519を参照のこと)。
【0064】
ポリクローナル血清の調製とは異なり、動物の選択はリンパ球と融合できる適切な不死細胞系の入手性に依存する。マウス及びラットがハイブリドーマ技術における選り抜きの動物であり、そして好適に利用されている。ヒトも、適当な不死化ヒト(又は非ヒト)細胞系が入手できるなら感作リンパ球にとっての起源として利用できる。本発明の目的のため、選ばれた動物に約0.1mg?約20mgの精製組換又は天然Lol p Ib又はその一部分を注射することができる。通常、注射物質はフロインドの完全アジュバントの中に乳化させておく。ブースティング注射も必要でありうる。抗体生産の検定は適当なラベル化抗体による抗血液の検査によって実施されうる。リンパ球は感作動物の脾臓又はリンパ腺を無菌状態で取出すことにより獲得でき、次いで融合を実施する。他方、リンパ球は例えばReading(1982)J.Immunol.Methods53:261-291に記載の通りインビトロで刺激又は免疫することができる。
【0065】
融合に適切な数多くの細胞系が開発されており、そしてハイブリダイゼーションプロトコールにとっての任意の特定の細胞系の選択は数多くの基準、例えば増殖特性の速さ、均質性、増殖培地の成分のためのその代謝欠陥、及び良好な融合頻度についての能力により誘導される。
【0066】
種内ハイブリド、特に類似の株間でのハイブリドは種間融合より優れている。いくつかの細胞系が有用であり、それにはミエローマイムノグロブリンを分泌する能力の損失について選ばれた突然変異体が含まれる。
【0067】
細胞融合はウイルス、例えばエプステイン-バーもしくはセンダイウイルス、又はポリエチレングリコールのいづれかにより誘発されうる。ポリエチレングリコール(PEG)は哺乳類体細胞の融合にとって最も効果的な試薬である。PEG自体は細胞にとって毒性であり、従って融合を試み前にその生存性に及ぼす影響について様々な濃度で検査すべきである。PEGの分子量域は1,000?6,000に変動しうる。それは食塩水又は無血清培地の中に約20%?約70%(w/w)に希釈したときに最良の結果を供する。37℃で約30秒間PEGに暴露することが、ネズミ細胞を利用する本ケースにおいて好ましい。極端な温度(即ち、約45℃)は回避し、そして融合系の各成分を融合前に37℃でプレインキュベーションに付すことが有用でありうる。リンパ球、対、悪性細胞の比は脾臓細胞間の細胞融合を回避するように最適化し、そして約1:1?約1:10が通常利用される。
【0068】
有効に融合した細胞は当業界に公知の方法によってミエローマ細胞系から分離できる。最も一般的、且つ好ましい方法は、ピポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)欠陥であり、ハイブリドの増殖のみを可能とするのに用いられるアミノプテリン-含有培地(これは1×10^(-4)Mのヒポキサンチン、1×10^(-5)Mのアミノプテリン及び3×10^(-5)Mのチミジンより一般的に成り、そしてHAT培地として一般に知られている)の中で増殖しない悪性細胞系を選択することである。融合混合物は融合の直径又は24時間経てHAT含有培養培地の中で増殖させてよい。供給スケジュールは通常HAT培地の中で2週間維持し、次いでレギュラー培養培地又はヒポキサンチン、チミジン含有培地を供給することを包括する。
【0069】
増殖するコロニーを次に抗原調製品を認識する抗体の存在について検査する。ハイブリドーマ抗体の検定は、抗原を固相支持体に結合させ、次いで推定抗体を含むハイブリドーマ上清液と反応させるアッセイを利用して実施できる。抗体の存在は様々なインジケーターを利用する「サンドイッチ」技術により検出されうる。ほとんどの一般的な方法がハイブリド増殖中に分泌される抗体の濃度の範囲において、使用するのに十分に高感度である。
【0070】
ハイブリドのクローニングは選択培地の中での増殖の21?23日目以降に実施できる。クローニングは液相中での細胞限界希釈により、又は半固形アガロースの中で増殖する単一細胞を直接選別することにより実施できる。限界希釈に関して、細胞懸濁物を1ウェル当り1個のみの細胞を統計学的確率で有するように系列的に希釈する。アガロース技術に関して、ハイブリドを供給細胞を含む下層の上の半固形上層の中に植え込む。この上層からコロニーを拾い、そして事実上ウェルにまで移動させる。
【0071】
抗体分泌性ハイブリドは様々な組織培養フラスコの中で増殖でき、様々な抗体濃度を有する上清液をもたらす。より高めの濃度を得るために、ハイブリドを動物の中に移入して炎症腹水を獲得することができる。抗体含有腹水は腹膜腔内注射の8?12日後に回収できる。この腹水は高めの濃度の抗体を含むが、しかし炎症腹水に由来するモノクローナル及びイムノグロブリンの両方を含む。従って抗体精製を例えばアフィニティークロマトグラフィーにより実施してよい。
【0072】
患者血清、植物又は哺乳類組織もしくは組織抽出物中の本明細書で考慮しているLol p Ibタンパク質又はそれに特異的な抗体の存在は上記の通りに調製したモノクローナル又はポリクローナルのいづれかの抗体を利用して、事実上あらゆるタイプのイムノアッセイにおいて検定できる。広範囲にわたるイムノアッセイ技術が有用であり、これは米国特許第4,015,043号、第4,424,279号及び第4,018,653号を参照することで理解できる。むろんこれは一部位及び二部位又は「サンドイッチ」、非競合型のアッセイ、並びに伝統的な競合結合アッセイを含む。サンドイッチアッセイはとりわけ最も有用であり、且つ一般的に利用されているアッセイであり、そして本発明における利用に好適である。数多くのバリエーションのサンドイッチアッセイ技術が存在し、そして本発明に包括されることを意図している。簡潔すると典型的な前進アッセイにおいて、未ラベルの抗体を固相支持体に固定化し、次いで試験すべきサンプルをこの結合分子と接触させる。抗体-抗原二次複合体の形成を可能とする十分なる時間にわたる適当なインキュベーション時間の後、検出可能なシグナルを供することの可能なリポーター分子でラベル化された二次抗体を次に加えて、そして抗体-抗原-ラベル化抗体(例えば抗体-Lol p Ibタンパク質-抗体)の三次複合体の形成にとって十分な時間インキュベートする。任意の未反応物質は洗い出し、そして抗原の存在をこのリポーター分子により生ずるシグナルの観察により決定する。この結果は識別可能なシグナルの簡単な観察により定性的とするか、又は既知量のハプテンを含むコントロールサンプルとの比較により定量とするかのいづれでよい。前進アッセイにおけるバリエーションには、サンプルとラベル化抗体を同時に結合抗体に加える同時アッセイ、又はラベル化抗体と試験すべきサンプルをまず組合せ、インキュベートし、次いで結合抗体に同時に加える逆(reverse)アッセイが含まれる。これらの技術は当業者に公知であり、あらゆるわずかなバリエーションは容易に理解されるであろう。
【0073】
下記の説明はLol p Ibを検出することを考慮しているが、これはLol p Ibに対する抗体を検出するのにも同様に利用でき、従ってその十分なる説明であることを意図している。典型的な前進サンドイッチアッセイにおいて、本発明で考慮しているLol p Ib又はその抗原性部分に対する特異性を有する第一抗体を固相表層に共有的に又は不動的(passively)のいづれかで結合させる。この固相表層は典型的にはガラス又はポリマーであり、最も一般的に利用されているポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルクロリド又はポリプロピレンである。この固相支持体はチューブ、ビーズ、マイクロプレートのディスクの形状、又はイムノアッセイを実施するのに適切なその他の表層の形状であってよい。その結合工程は当業界に公知であり、そして一般には架橋性共有結合又は物理的吸着より成り、ポリマー-抗体複合体は試験サンプルのための調製品の中で洗われる。次に試験すべきサンプルのアリコートを固相複合体に加え、そして抗体の中に存在している任意のサブユニットの結合を可能とする十分な時間にわたって25℃でインキュベートする。このインキュベーション時間は一般に約2?40分の範囲において変えられるであろう。このインキュベーション時間の後、抗体サブユニット固相を洗い、乾かし、そしてハプテンの部分に特異的な第二抗体とインキュベートする。この第二抗体は、ハプテンへの第二抗体の結合を指標するのに用いるリポーター分子に結合されている。
【0074】
本明細書に使用している「リポーター分子」とは、分子であってその化学的性質により、抗原-結合抗体の検出を可能とする分析的に同定可能なシグナルを提供する。検出は定性的又は定量的であってよい。このタイプのアッセイにおける最も一般的に利用されているリポーター分子は酵素、蛍光団又は放射性核種含有分子(即ちラジオアイソトープ)である。酵素イムノアッセイの場合、酵素を第二抗体に、一般にはグルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸を介してコンジュゲートさせる。しかしながら、既に周知の通り、当業者に既に有用である広範囲にわたる様々なコンジュゲーション技術が存在している。一般的に使用されている酵素にはとりわけ西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベーターガラクトシダーゼ及びアルカリ性ホスファターゼが含まれる。特定の酵素と一緒に利用すべき基質は対応の酵素による加水分解による検出可能な色調変化の発生に関して一般的に選ばれる。例えば、p-ニトロフェニルホスフェートはアルカリ性ホスファターゼコンジュゲートと一緒に利用するのに適する;ペルオキシダーゼコンジュゲートに関しては、1,2-フェニレンジアミン、5-アミノサルチル酸又はトルイジンが一般に利用されている。上述の発色性基質ではなく、蛍光生成物をもたらす蛍光性基質を利用することも可能である。全てのケースにおいて、酵素ラベル化抗体を第一抗体ハプテン複合体に加え、結合させ、次いで過剰の試薬を洗い出す。次に適当な基質を含む溶液を抗体-抗原-抗体の三次複合体に加える。この基質は第二抗体に結合している酵素と反応し、定性的に識別できるシグナルを供し、これは通常光学的に更に定量することができ、サンプル中に存在しているハプテンの量の表示を供する。「リポーター分子」は例えば赤血球細胞又はラテックスビーズ等の細胞凝集又は凝集阻害の利用にも及ぶ。
【0075】
他方、蛍光化合物、例えばフルオロセイン及びローダミンを、その結合能力を変えることなく抗体に化学結合させることができる。特定の波長の光によるイルミネーションによって活性化させたとき、蛍光団-ラベル化抗体は光エネルギーを吸収し、分子における励起状態を誘発し、光学顕微鏡で目視検可能な特徴的な色調での光の放射が続く。EIAの場合、蛍光ラベル化抗体を第一抗体-ハプテン複合体に結合させる。未結合の試薬を洗い出した後、残っている三次複合体を適当な波長の光に暴露させ、観察されるフルオロセインは課題のハプテンの存在を示唆する。イムノフルオロセンス及びEIA技術は共に当業界において非常によく樹立されており、そして本方法にとって特に好ましい。しかしながら、その他のリポーター分子、例えばラジオアイソトープ、ケミルミネッセト又はバイオルミネッセント分子も利用できうる。熟練技術者にとって、その手順が必要な目的に合うのにどのようにすればよいかは容易に明らかとなるであろう。以上は本発明のLol p Ibタンパク質を直接的又は間接的(即ち、抗体を介して)に検出するのに利用できることも明らかであろう。
【0076】
従って、本発明の一観点は、血清、組織抽出物、植物抽出物又はその他の生物流体の中に存在しているLol p Ib又はその誘導体もしくは同族体、又は前記Lol p Ibと免疫学的に反応性なアレルゲンタンパク質又はその誘導体もしくは同族体を検出する方法を提供し、この方法は試験すべき前記血清、抽出物又は流体を、前記Lol p Ibタンパク質と、アレルゲン性タンパク質-抗体複合体が形成されるのに十分なる時間及び条件のもとで接触させ、次いで前記複合体を検出手段に付する段階を含んで成る。本発明はまた、血清又はその他の生物流体中の、イネ科(Gramineae)の花粉に由来するアレルゲン性タンパク質に対する抗体を検出する方法を提供し、この方法は前記血清又は流体をLol p Ibタンパク質又はその誘導体もしくは同族体、又はその抗原性誘導体と、抗体-Lol p Ib複合体が形成されるのに十分なる時間及び条件のもとで接触させ、次いで前記複合体を検出手段に付することを含んで成る。この後者の複合体はリポーター分子の付加されているLol p Ibタンパク質により、又はリポーター分子でラベル化された第二抗体の添加により検出されうる。
【0077】
従って、本発明は哺乳動物体液(例えば血清、組織抽出物、組織流体)、インビトロ細胞培養上清液及び細胞リゼート中の、Lol p Ib又はその誘導体、同族体もしくは免疫学関連物に対する抗体についての迅速、且つ簡単なアッセイのためのキットにも向けられる。このキットは抗原性成分に適合する第1容器、及びLol p Ibに対する抗体を含むように適合された第2容器を受容するように区画化されており、前記抗体は上述した検出可能シグナルを供することの可能なリポーター分子でラベル化されている。もしこのリポーター分子が酵素なら、前記酵素にとっての基質を含むように適用された第3容器が施されている。課題のキットの典型的な用途において、試験すべきサンプルを第1容器の内容物と、サンプルの中に存在しているならば抗体が前記第1容器の中のLol p Ibタンパク質に結合する時間及び条件のもとで接触させる。もし第1容器のLol p Ibタンパク質が試験流体中の抗体と結合したら、第2容器の抗体は第二次複合体に結合して三次複合体を形成し、そしてこれらの抗体はリポーター分子でラベル化されているため、検出手段に付されたとき、この三次複合体は検出される。従って、本発明の一観点はアレルゲン性質を有するタンパク質に対する抗体の検出のためのキットであり、前記タンパク質はイネ科(Gramineae)の花粉に由来しており、このキットは組換Lol p Ibタンパク質又はその抗原性誘導体もしくは同族体又は精製天然Lol p Ibタンパク質又はその抗原性誘導体もしくは同族体を含むように適合された第1容器、及びLol p Ib又はその誘導体もしくは同族体に対する抗体を含むように適合された第2容器を受容するように区画化されており、前記抗体は検出可能シグナルを供することの可能なリポーター分子でラベル化されている。「リポーター分子」はラテックスビーズ上での赤血球細胞(RBC)の凝集を包括する。このキットにおいて、リポーター分子はラジオアイソトープ、酵素、蛍光分子、ケミルミネッセント分子、バイオルミネッセント分子又はRBCである。他方、このキットは検出可能なシグナルを供することの可能なリポーター分子でラベルされた組換Lol p Ib又はその抗原性誘導体もしくは同族体を含むように適合された容器を含んで成る。
【0078】
環境の中でのアレルゲンの存在のため、枯草熱及び季節性ぜん息は、薬理学及び免疫学における進歩にもかかわらず、西洋諸国に顕著な罹病率及び社会経済の影響を及ぼし続けている。抗ヒスタミン及びステロイドを含む有効な薬剤スペクトルがアレルギー疾患の処置における向上をもたらしているが、それらは長期使用にかかわる望ましくない副作用を有する。これらの問題のため、アレルギー疾患の免疫療法において新たな課題が示されている。免疫療法はアレルギー反応に対する患者の脱感作のための花粉アレルゲン抽出物の注射を包括する(Bousquet,& Michel(1989)Allergy Clin.Immunol.News1:7?10)。残念ながら、アレルゲンとして利用される花粉調製品は多価であり、そして品質が良くない。従って、IgG応答を誘発させるための使用濃度はしばしば高いが、しかしアナルフィラキシーを含む全身系反応の誘発を通じて致死的となりうる。アレルゲンの配列に基づくクローン遺伝子生成物又は合成ペプチドは治療にとってのより安全な媒体を供し、なぜならこれは品質管理でき、特性化されており、そして標準化されているからである。
【0079】
症状の軽減に関する正確なメカニズムは仮説のままであり続けている。しかしながら、本発明の組換、合成又は精製天然Lol p Ib、又はその少なくとも1フラグメントを含んで成る調製品の、ほそ麦感受性個体への投与は、例えばLol p Ibに対するB細胞応答、Lol p Ibに対するT細胞応答、又はLol p Ibに対するB細胞及びT細胞の両者の応答を改善せしめることにより、ほそ麦花粉アレルゲンに対するほそ麦花粉感受性個体のアレルギー応答を改善せしめるであろう。
【0080】
現状、免疫療法はアレルギー学における最も頻繁に利用される処置の一つであり、そして米国において、それは第1選択と考えられている。花粉鼻炎に対するこの処置の利点はその処置が3年かかることであり、一方薬理療法は患者の一生にわたって実施されねばならない。免疫療法のために花粉抽出物の付与された患者は処置の終了後4年間続く臨床的恩恵を受けた(Grammerら(1984)J.AllergyClin.Immunol.73:484-489)。
【0081】
ヒトの集団におけるほそ麦花粉アレルゲンLol p II及びLol p IIIに対する免疫応答性は、組織適合性白血球抗原HLA-DR3と顕著にかかわっている(Friedhoffら(1988)Tissue Antigens 31:211-219;Ansariら(1989)Human Immunol.25:59-71;Ansariら(1989)Int.Arch.Allergy Appl.Immunol.88:164-189)。このことは、抗原表示細胞のHLA-DR3コード化クラスII Ia分子が他のアレルゲン上に存在している類似のイムノドミナントT細胞/Ia認識部位を認識しうることを意味している。Lol p IaはLol p II及びLolp IIIの両者と、イムノドミナントT細胞/Ia認識部位(YTTEGGTKSEVEDV IP)を共有することで知られている(Friedhoffら、前掲)。Lol p II及びIIIに応答するほとんどのアレルギー個体がLol p Iaにも応答するが、その逆はない。従って、Lol p IaはLol p II又はIIIに存在しない固有のT細胞/Ia認識部位を有することが明らかである。更に、Lol p Ia,II及びIIIで共有されている共通のT細胞/Ia認識部位はLol p Ib.1又はLol p Ib.2の推定配列の中には示されていない。
【0082】
従って、本発明は草類花粉に基づくアレルギーに対してヒトを脱感作せしめるためのワクチンを開発するうえで有用な、Lol p Ib科のタンパク質アレルゲン、Lol p IaとLol p Ib.1との間での共通の抗原性エピトープを含む誘導体を含むその誘導体、その同族体又は免疫学的関連物に向けられている。
【0083】
従って、本発明は草類花粉に対するヒトのアレルギーを脱感作させるための方法を提供し、この方法は脱感作有効量のLol p Ib又は少なくとも1フラグメント、又はその誘導体、同族体もしくは免疫学的関連物を前記ヒトに、草類花粉に対するこのヒトの脱感作を及ぼすのに十分な時間及び条件のもとで投与することを含んで成る。
【0084】
本発明は更に、ほそ麦花粉に感受性な哺乳動物中のかかる花粉に対する感受性を処置する方法を提供し、この方法はこの哺乳動物に治療的に有効な量の本発明の治療組成物を投与することを含んで成る。本発明は更にほそ麦花粉アレルゲン又はほそ麦花粉アレルゲンと免疫学的に交差反応性なアレルゲンに対する感受性を処置する方法を提供し、この方法は哺乳動物に治療的に有効な量の本発明の前記タンパク質調製品を投与することを含んで成る。
【0085】
本発明のペプチド及びタンパク質の利用を通じて、両立された、よく規定された組成及び生物活性の調製品を作ることができ、そして治療目的のために投与されうる(例えば、ほそ麦植物の花粉に対するほそ麦感受性個体のアレルギー応答を改善せしめる)。かかるペプチド又はタンパク質の投与は、例えばLol p Ibアレルゲンに対するB細胞応答、Lol p Ibに対するT細胞応答、又はその両者の改善せしめうる。精製ペプチドは、ほそ麦アレルギーの免疫療法のメカニズムを研究するため、及び免疫療法において有用な改良誘導体又は類似体をデザインするためにも利用されうる。
【0086】
従って、本発明は、治療的に有効な量のLol p Ib又はその誘導体、同族体もしくは免疫学的関連物、並びに1又は数種の薬理学的に許容されている担体及び/又は希釈剤を含んで成る薬理学組成物を提供する。Lol p Ibを含んで成る薬理学組成物の活性成分は例えば特定ケースに依存する量で投与したときのほそ麦花粉に対するヒトアレルギーの脱感作において、優れた治療活性を示すと考えられる。例えば、日当り、体重キログラム当り約0.5μg?約20mgを投与することができる。投与量は最適な治療応答が供されるように調節されうる。例えば、毎日数回に分けて投与してよく、又はその投与は治療事状により比率的減じられうる。該活性化合物は常用の方法、例えば経口、静脈内(この場合水溶性)、筋肉内、皮下、鼻口内、皮内もしくは坐剤ルート又は移植(例えば遅延放出性分子を利用して)により投与されうる。投与のルートに依存して、本発明の薬理学組成物を構成する活性成分はこの成分を酵素、酸及びこの成分を不活性化せしめうるその他の自然の条件の作用から守るための材料の中でコートされている必要がありうる。例えば、Lol p Ibは酵素インヒビターと一緒に投与されるアジュバントにおいて、又はリポソームにおいて投与されうる。アジュバントは広域な意味において使用され、そして任意の免疫刺激性化合物、例えばインターフェロンが含まれる。本明細書で考慮しているアジュバントにはレソルシノール、非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル及びn-ヘキサデシルポリエチレンエーテルが含まれる。酵素インヒビターには膵臓トリプシンが含まれる。リポソームには水中油中水CGFエマルション及び常用のリポソームが含まれる。T細胞アネルギーを誘発せしめる目的のため、該薬理学組成物は非免疫原状態(例えばアジュバントを含まない状態)で投与されるのが好ましい。
【0087】
該活性化合物は腸管外的又は非腸管外的に投与もされうる。分散体はグリセロール、液状ポリエチレングリコール及びその混合物、及び油中の中で調製もされうる。保管及び使用の通常の条件のもとで、これらの調製品は微生物の増殖を防ぐために防腐剤を含む。
【0088】
注射使用に適切な薬理形態には無菌水性溶液(この場合水溶性)又は分散体、及び即度分散体の無菌粉末が含まれる。全てのケースにおいて、この形態は無菌でなくてはならず、そして容易な注入性があるほどに流動性でなくてはならない。それは製造及び保管の条件のもとで安定でなくてはならず、そして微生物、例えば細菌及び菌類の汚染作用に対して保護されていなくてはならない。その担体は溶媒であるか、又は分散媒体であって例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、ポリプロピレングリコール及び液状ポリエチレングリコール等)、適当なそれらの混合物及び植物油を含むものであってよい。適度な流動性は例えばレシチンのようなコーティングの利用により、分散体の場合は所望の粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により維持できうる。微生物の作用の保護は様々な抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロザール(thimerosal)等によってもたらされうる。数多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含ませることが好ましいであろう。注射用組成物の長期吸収は吸収を遅らせる試薬の組成物、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物の利用によりもたらされうる。
【0089】
滅菌注射用溶液は必要量の活性化合物を、適当な溶媒の中に、上記した必要な様々なその他の成分と一緒に含ませ、次いで滅菌濾過することによって調製される。一般に、分散体は様々な滅菌活性成分を、塩基性分散媒質及びその他の必要な上記の成分を含む滅菌媒体の中に含ませることによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好適な調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これは予め滅菌濾過した溶液に由来する活性成分と任意の追加の所望成分の粉末をもたらす。
【0090】
少なくとも1種のLol p Ib科構成員又はその少なくとも1フラグメントが上記の通りに適当に保護されているとき、この活性成分は例えば不活性希釈剤と一緒に、もしくは同化性食用担体と一緒に経口投与されるか、又はそれはハードもしくはソフトシェルゼラチンカプセルの中に密閉されているか、又はそれは錠剤へと圧搾されているか、又は栄養食品に直接一体化されて投与されうる。経口治療投与に関して、この活性化合物には賦形剤が一体化されてよく、そして消化性錠剤、糖衣錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁物、シロップ、ウェーハー等の形態で使用されうる。かかる組成物及び調製品は少なくとも1重量%の活性化合物を含むべきである。この組成物及び調製品のパーセンテーゼはむろん約5?80重量%単位を含んでよく、そしてそれは好都合でありうる。かかる治療的に有効な組成物中の活性化合物の量は適切な投与量が獲得されるであろう量である。本発明にかかわる好ましい組成物又は調製品は経口投与単位形態が約10μg?2000mgの活性成分を含むように調製される。
【0091】
錠剤、トローチ、ピル、カプセル等は下記のものも含みうる:バインダー、例えばガムトラガカンス、アカシア、コーンスターチ又はゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸等;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味料、例えばスクロース、ラクトースもしくはサッカリンを加えてよく、又は風味料、例えばペパーミント、ウインターグリーン油又はチェリー風味料を加えてよい。その投与単位形態がカプセルのとき、それは上記のタイプの材料の他に、液状担体を含んでよい。様々なその他の材料がコーティングとして、又はそうでなければこの投与単位の物理形態を変えるように存在していてよい。例えば、錠剤、ピル又はカプセルにシェラック、糖又はその両者をコートしてよい。シロップ又はエリキシルは該活性化合物、甘味料としてのスクロース、防腐剤としてのメチル及びプロピルパラベン、着色料及び風味料、例えばチェリー又はオレンジフレーバーを含んでよい。むろん、任意の投与単位形態を調製するうえで使用される任意の材料は薬理学的に純粋であり、且つ使用量において実質的に無毒であるべきである。更に、該活性化合物は持続放出型調製品及び製剤の中に含ませてよい。
【0092】
本明細書で用いる「薬理学的に許容されている担体及び/又は希釈剤」には、あらゆる溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等が含まれる。薬理活性物質のためのかかる媒質及び試薬の利用は当業界に公知である。任意の常用の媒質又は試薬が該活性成分と非適合性でない限り、治療的組成物におけるその利用は考慮される。補助活性成分も本組成物の中に含ませてよい。
【0093】
投与し易い及び均一な投与量のための投与単位形態において非経口組成物を配合することが特に好都合である。本明細書で用いている投与単位形態とは処置すべき哺乳動物対象体にとっての単位的な投与に適合した物理的に独立した単位を意味する。各単位は、必要とされる薬理担体と一緒に所望の治療効果を供するように計算された予め決定された量の活性物質を含む。本発明の新規な投与単位形態についての仕様は、(1)活性物質の固有の特徴及び達成すべき特定の治療効果、並びに(b)身体の健康が本明細に詳しく開示されている通りに損われている疾患症状を有する生体対象体における疾患の処置のためにかかる活性物質を配合する当業界における固有の拘束により指定され、且つ直接依存する。
【0094】
該主要活性成分は前記に開示した投与単位形態において適当な薬理学的に許容されている担体と共に有効な量で好適、且つ有効な投与のために配合される。投与単位形態は例えば、約10μg?約2,000mgの範囲する量の主要活性化合物を含みうる。比率で表わすと、この活性化合物は約10μg?約2,000mg/担体mlで一般に存在している。補助活性成分を含む組成物の場合、その投与量は前記成分の投与の用量及び方法を参考にして決定される。
【0095】
本発明を下記の限定でない図面及び実施例により更に説明する。
【実施例】
【0096】
実施例1-cDNAクローンの単離
ベクターラムダ-gt11中のcDNA発現ライブラリーを、成熟ほそ麦花粉のポリアデニル化mRNAより調製した(Beall & Mitchell(1986)J.Immunol.Methods 86:217-223)。このライブラリーをまずモノクローナル抗体(MAb)FMC-A1(40.1)でスクリーンした(図1a)。
【0097】
フェノール法(Herrin and Michaels(1984)Plant Mol.Biol.Rep.,2:24-28)によって成熟ほそ麦花粉から単離したポリ(A^(+))mRNAをベクターラムダ-gt11中のcDNAライブラリーを構築するために用いた。次にこのライブラリーを抗体プローブでスクリーンし、グループIタンパク質を発現する配列を検定した。3×10^(4)の組換ファージのトランスフェクトされたE.コリY1090をプレートし、そして42℃で3hインキュベートした。このプレートに10mmのIPTGに予め浸しておいたドライ132mmニトロセルロース(NC)をかぶせ、そして37℃に移した。3hのインキュベーション後、これらのフィルターを慎重に剥し、そしてフィルター当り20mlのMTBS(10%w/vの脱脂粉乳、50mmのトリス-HCl、pH7.6、150mMのNaCl)中で室温で30minインキュベートした。第2セットのNCフィルターをファージプレートの上に置き、そして3hのインキュベーションの後、上記の通りに処理した。両セットのNCフィルターを、プラークに対するMAbの結合性について、Huynhら(1985)DNA Cloning,a practicalapproach,Glover,D.M.(編)第1巻、頁49?78、IRl Press,Oxford,Englandに記載の方法によって試験した。抗体陽性プラークを拾い、精製し、次いで再プレートに付し、そしてプローブに対する結合性について試験した。陽性クローンをプラーク精製し、そしてほそ麦花粉アレルギー対象体に由来する血清を用いてIgE結合性について試験した。18クローンが、Lol p I特異的Mab及びIgE抗体により認識されるタンパク質をコードするものとして選ばれた(表1)。最大のcDNAクローンであってサイズが1.2kbであり、ほそ麦アレルゲンタンパク質を発現するものを、更なる特性化及びシーケンシングのためにまず選び、そしてクローンラムダ-12Rと命名した(図1a)。
【0098】
【表1】

【0099】
Mab 12.3はクローン12RによりコードされるLol p Ib.1に対して高い親和力を示した。
【0100】
IgE及びMAbの特異性をほそ麦花粉タンパク質抽出物のイムノブロット分析により試験した(図1b)。
【0101】
可溶性タンパク質を氷上のPBS(10mMのリン酸ナトリウム中150mMのNaCl、pH7.2)の中で3h強く撹拌することによりほそ麦花粉から抽出した。花粉を溶液から遠心分離し、そして抽出タンパク質をバイオラッドアッセイを利用して標準化せしめた。レーン当り120μgのタンパク質を、10?15%w/vのSDS-ポリアクリルアミドゲルの上で還元条件のもとで電気泳動させた。タンパク質をNCフィルターにエレクトロブロットし、そしてそのブロットを10%w/vの脱脂粉乳を含むTBS(10mMのトリス、150mMのNaCl、pH7.9)でブロックした。そのブロットをストリップに切り、そしてそれぞれを様々なプローブで処理した:MAbは1%のBSAを含むTBSの中で1:1000に希釈しておいた。ほそ麦花粉に対して高いRAST評点を有する少なくとも4人の患者から集めた血清をプールし、そしてIgE結合のためにTBS/1%w/v BSAの中で1:5に希釈して用いた。西洋のワサビペルオキシダーゼコンジュゲート化第二抗体を利用し(Dakopatts,Glostrup,Demark)、そして洗浄後、結合を4-クロロ-1-ナフトール(Biorad,Richmond,CA)及びH_(2)O_(2)で識別化させた。
【0102】
イムノブロットをほそ麦花粉アレルギー個体由来のプール血清の中でインキュベーションすると、28?35kDの領域にわたって強いIgE結合が観察された。この研究において用いたMAb,3.2,12.3,21.3及び40.1は既に部分的に特性化されている(Kahn and Marsh(1986)Molec.Immunol.23:1281-288;Singh and Knox(1985)Intl.Arch.Allergy and Applied.Immunol.78:300-304;Smartら(1983)Intl.Arch.Allergy and Applied Immunology.72:243-248)。MAb 3.2、21.3及び40.1は28?35kD領域におけるタンパク質と強い反応を示した。Mab 12.3は35kDバンドとは結合性を示さなかったが、それより低めのバンドと強く結合した。これらの相互作用はIgE及びMAbの両者が変性アレルゲンを認識することができることを示唆し、このことはそれらがE.コリの中で発現された組換タンパク質の検出にとってのプローブに適切であるものとする。MAb FMC-A1はLol p Iaに対して優先的に強いことが考えられていたが、それはLol p Ibとも弱い度合いで結合した。新しいデーターは、オリジナルのFMC-A1調製品がモノクローナルではなくポリクローナルでありうることを示唆した。FMC-A1調製品中の一抗体はLol p Iaに特異的であり、一方、あるものはLol p Ibに特異的であることが認められた。従って、FMC-A1により規定されるLol p IaとLol p Ibとの見かけ上の交差反応はこの抗体調製品におけるポリクローナル性を反映しうる。
【0103】
12Rインサートを含むラムダクローンの溶原培養物の誘発により生成されたアレルゲン-ベクターガラクトシダーゼ融合タンパク質をMAb 40.1を用いるイムノブロット分析により特性化した。約146kDのこの融合タンパク質は、116kDのベーターガラクトシダーゼ及び30kDのアレルゲン-コード化配列を含んで成ると考えられる。この融合タンパク質は低収量で生成された。従って、更なる分析のためにクローン化アレルゲンの収量を高めるため、我々は別の発現系を利用した。1.2kbのインサートをpGEX1-3シリーズのプラスミド発現ベクターの中にサブクローンした。これらのプラスミドはシストソマ ジャポニカム(Schistosoma japonicum)グルタチオンS-トランスフェラーゼタンパク質(Smith and Johnson、(1988)Gene,67:31-40)のカルボキシル末端を有する融合ポリペプチドを供した。強力なIgE結合はpGEX-12Rにより形質転換された細菌においてのみ検出され、そして親pGEXプラスミドを有するものにおいては検出されなかった(データーは示していないが、図4において類似の結合性を示している)。ほそ麦花粉に対する陰性ラジオアレルゴ収着(RAST)評点を有するコントロール血清によるウェスタンブロットのプロービングはIgE結合を示さなかった。
実施例2-クローン化アレルゲン12Rの同定
この研究において用いた4種のMAbは全てクローン化アレルゲン12Rを認識した(図1a)。
【0104】
MAbは全て天然Lol p Iタンパク質と同一の特異性を示さなかった(図16)。特に、MAb 12.3は35kDバンドを認識しなかった。クローン化アレルゲンは全てのMAbと結合するため、及びMAb 12.3に対する高い度合いで結合するため、クローン化アレルゲン低Mrのタンパク質に対応し、35kDタンパク質には対応しないものと予測される。この同定を確認するため、パラ部位(parasite)抗原に関して開発された免疫手法(例えばBeall & Mitchell(1986)J:Immunol.Methods 86:217-223)を利用した。この方法において、クローン化アレルゲン12Rをニトロセルロース膜上に固定化し、そして血清由来の特異的なIgE抗体を結合せしめるために用いた。結合抗体を溶離させ、そしてほそ麦花粉タンパク質のウェスタンブロットをプローブするために用いた。特異性及び再現性の高い結合パターンが分子量31及び33kDの2種のタンパク質成分について複数の実験で常に獲得された。35kDのバンドはLol p Iaと命名し、そして31及び33kDのバンドはLol p Ibと命名した。これらの実験は、クローン12Rに結合するIgE抗体が若干異なる分子量、31及び33kDの2つの成分を認識することを示した。非特異的結合は、非ほそ麦花粉アレルギー個体に由来するIgE抗体を用いたときも、又IgE抗体を選別するために非組換pGEXプラスミドで形質転換されたE.コリの抽出物を用いたときも観察されなかった。
【0105】
Lol p Ibタンパク質を、一次方向において調製品を等電点電気泳動させ、続いて集めた個々の画分をSDS-PAGEに付することを包括する二次元分析により精製した。この手順はN-末端配列を決定するのに十分な量でLol p Ibを分離させた(表2)。
【0106】
【表2】

【0107】
個々のタンパク質成分をロトフォー(Rotofor)(Biorad,Richmond,CA)上での調製等電点電気泳動を利用して単離させた。これらのタンパク質をSDS-PAGE上で分け、そしてPVDF膜(Millipore,Bedford,MA)に移した。N-末端シーケンシングをMatsudaira(1987)J.Biol.Chem.262:10035-10038及びSimpsonら(1989)J.Chromatogar,476:345-361に従って実施した。
【0108】
31/33kDタンパク質のLol p IbはLol p Iaとしても本明細書で記述のLol p Iとは異なるN-末端アミノ酸配列を有していた(Cottamら(1986)Biochem J.234:305-310;表2)。クローン12Rによりコードされるアレルゲンは主要の新たに同定されたアレルゲンLol p Ib.1を示すことが考えられた。クローン12Rのヌクレオチド配列を図3b及び3cに示す。
実施例3-アレルゲンの花粉特異性発現
ポリA^(+) RNAを種々の植物組織、即ち、種子、葉、根及び花粉から単離した。これらの種々の組織に由来する20μgの全RNAをホルムアミド及びホルムアルデヒドの存在下において1.2%w/wのアガロースゲル上で電気泳動させ(Sambrookら、前掲)、ハイボンド-Cエキスラ(Amersham,Arlington Heights,1L)に移し、そして80℃で2hフィルターベークに付した。その1.2kbの12R cDNAを^(32)Pでラジオラベルし、そして50%v/vのホルムアルデヒドの存在下で65℃でNCフィルターとインキュベートした。この膜を0.1%w/vのSDSを含む2XのSSC(0.3MのNaCl、0.3Mのクエン酸ナトリウム、pH7.0)で65℃で洗った。タンパク質は種々の組織(花、葉、根及び花粉)を1mMのPMSFを含む10mMのPBSの中で粉砕し、次いで標識抗体でイムノブロット(レーン当り10μgのタンパク質)に付することにより単離した。結合性はMAbに対する^(125)I-ヤギ抗マウスIgG(Amersham,Arlington Heights,1L)及びポリクローナル^(125)I-ヤギ抗-ヒトIgE(Kallestad,Chaska,MN.)を用い、次いでオートラジオグラフィーを行うことにより識別化させた。
【0109】
花粉から調製したRNAのノーザンブロット分析は花粉におけるクローン化アレルゲン遺伝子の高レベルの発現を示したが、生長組織においてはいづれも示されなかった。花粉RNAの中で観察される長さ約1.3kbの主要バンドは生長組織由来のRNAにおいては検出できなかった(図2a)。花粉-特異的RNA発現は、MAb 40.1、12.3及びIgE抗体により認識される抗原の花粉-特異性発現に対応する(図2b)。特異的な結合は花粉及び花びら組織(花粉を含む)をタンパク質起源として用いたときにのみ認められた。
実施例4-一次構造分析
cDNAクローン12Rを単離し、そしてpGEM-3zベクター(Promega,Madison,Wl)の中にサブクローンし、次に制限地図化に付した。様々なサイズの制限フラグメントをpGEMベクターの中にサブクローンした。
【0110】
単離したcDNAクローン12RをpブルースクリプトIIベクター(Stratagene,la Jolla,CA)の中にもサブクローンし、そしてXL1-ブルー細胞(Stratagene,la Jolla,CA)を形質転換させるために用いた。DNA配列はT7 DNAポリメラーゼ(Pharmacia,Piscataway,NY)を用いるジデオキシ連鎖停止法(Sangerら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463-5468)により実施される二本鎖シーケンシングによって決定した。入れ子(nested)欠損をExo III及びS1ヌクレアーゼを用いてT7及びT3末端の両方から作り上げた。プラスミドDNAを改良アルカリ分解手順を利用して調製した。欠損クローンをアガロースゲル上での電気泳動により、DNAシーケンシングのためにサイズ選別した。DNAシーケンシングはT7 DNAポリメラーゼ又はジデオキシヌクレオチド停止反応を利用して実施した。〔^(35)S〕dATPをラベルとして用いた。シーケンシング反応は8Mのウレアを含む6%のポリアクリルアミドウェッジゲル上で分析した。必要に応じて内部シーケンシングプライマーを合成した。解読枠はpGEMベクター中の2つの発現サブクローンを図4に詳細する通りにシーケンシングすることにより確認した。DNA配列データーをPC GENEシステム(Intelligenetics,Moutain View,CA)を用いて分析した。
【0111】
cDNAクローン12Rのヌクレオチド配列はGCに富んでいた(61%のGC、図3b及び3c)、図3b及び3cに示す通り、ヌクレオチド40でのATG開始コドンで出発し、そしてヌクレオチド943で始まるTGAコドンで終止する903bpのオープン解読枠がある。提唱の翻訳開始部位及びそのフランキング配列は共通配列AACAA TGGC(ヌクレオチド36-44)と89%の相同性を共有し、そしてメチオニンコドンから位置-3(ヌクレオチド37)においてプリンの存在があることが最適な状況と考えられる。(Cavener and Ray(1991)、NucleicAcid Res.,19:3185-3192)。このオープン解読枠は推定Mr 29.8kDのタンパク質をコードする。
【0112】
アラニンに富むこの推定タンパク質配列は25アミノ酸の推定シグナル又はターゲットペプチド配列を有する(図3bにおけるアミノ酸-25?-1)。これは推定Mr 27.3kDの切断タンパク質を示唆する。Lol p IbのN-末端タンパク質配列は、シグナルペプチドの推定切断部位の直後のクローン12Rの推定アミノ酸配列と同じである。このことは、cDNA-12RがLol p Ibアレルゲン性タンパク質をコードし、そしてこのタンパク質が切断に付されたシグナルペプチド配列を有していることを裏付けする。12Rクローンによりコードされるタンパク質をLol p Ib.1と命名した。Lol p Ib.1の推定アミノ酸配列も図3b及び3cに示している。
【0113】
このシグナル配列はその他の真核系配列に典型的な特徴を有する:C末端での5アミノ酸の比較的親水性な配列、N末端にてより親水性となっていくシグナル配列のほぼ全体にわたる比較的疎水性な配列(図3d)。C末端のアミノ酸は切断部位にアラニン、-2において芳香族残基チロシン、及び-6においてヘリックスブレーカープロリンを有し、その全てはシグナル配列のC-末端領域の一般的な特徴である。
【0114】
推定アミノ酸配列における共通グリコシル化配列(Asn-X -Ser/Thr)についての探索はかかる配列を検出せしめなかった。アレルゲン上のN-結合型炭水化物鎖の無さは、酵素N-グリカナーゼ及びエンド-Fグリコシダーゼでの処理による脱グリコシル化のなさによって確認された。化学脱グリコシル化、それに続くSDS-PAGEはタンパク質の分子量の低下を示さなかった。31/33kD成分は二重であり続け、分子量における相違はグリコシル化によるものでないことが示唆された。脱グリコシル化処理は31/33kD成分へのIgEの結合性に影響を及ぼさなかった。5%の炭水化物を有するLol p Iaに比べ Lol p Ibには炭水化物はなかった。
【0115】
Lol p Ibに関するアミノ酸配列及びLol p Ib.1の推定アミノ酸配列は、直接タンパク質シーケンシングに由来するPh1 p V(Matt-hiesen and Lowenstein(1991)Clin.Exp.Immunol.21:297-307)及びDac g V(Walshら(1989)Int.Arch.Allergy Appl.Immunol.91:419-425)に関して決定された、並びにPoa p IX cDNAクローンより推定された(Silvanovichら(1991)J.Biol.Chem.266:1204-1210)公開アミノ酸配列とタンパク質配列相同性を示した。これらの配列相同性を表2に示す。
実施例5-IgE-及びMab-反応性エピトープの描写
MAb及びIgE決定基の位置決めをするため、E.コリ組換発現系を利用した(Smith and Johnson(1988)Gene 67:31-40)。この系を利用し、いくつかの制限フラグメントを発現プラスミドpGEX1-3の中にサブクローンした。pGEXの中への全長cDNAの「フレーム内」サブクローニングは、IgE並びにMAb 40.1及び12.3の両者により認識される61kDの融合タンパク質を発現せしめた。
【0116】
全長cDNA 12R又は2本の制限フラグメント1H及び2P(図4に示す)をプラスミド発現ベクターpGEXの中にサブクローンした。融合タンパク質を誘発及び細菌リゼートの調製のための手順は既に述べられている(Smith and Johnson,前掲)。獲得したリゼートを還元SDS-PAGEに付し、続いてNC膜に移した。これらのブロットを図1bに関して説明した通りにIgE抗体、並びにMAb 40.1及び12.3でプローブし、ただしIgE結合を検出するために^(125)I-抗-ヒトIgE(Kallestad,Chaska,MN.)を用いた。
【0117】
イムノブロット分析は、生成されたほとんどの融合タンパク質が細菌プロテアーゼにより、グルタチオン-Sトランスフェラーゼとの融合部位付近で切断され、IgE抗体により認識される切断生成物をもたらすことが示された(図4)。フラグメント2Pにより発現される組換融合タンパク質(GST-2P)は両MAbと強く反応したが、プールしたアレルギー血清中のIgE抗体により認識されなかった。しかしながら、フラグメント1Hにより生成されたN末端の削除されたタンパク質(GST-1H)はどのMAbによっても認識されなかったが、IgE抗体とは反応性が高かった。
【0118】
これにより、アレルゲン分子の2つの異なるドメインが描写された:MAb 12.3及び40.1に対する認識部位を有するフラグメント2Pを有するN-末端;並びに強いIgE結合性を示し、それ故アレルギー決定基を有するフラグメント1Hを含むC末端。2種のMAbは異なる結合特異性を有するため(図1b)、この2種のMAbについての認識部位は異なるようであり、しかしながら同一のフラグメントの中にある。小さなフラグメントによる良好な地図化が12.3及び40.1の結合部位の描写にとって必要であるが、これらの結果がIgE決定基が異なることを示すのに十分である。
実施例6-ほそ麦花粉中のLol p Ibの細胞内標的化
ほそ麦の成熟花粉を樹立された方法(Staffら(1990)HistochemJ.22:276-290)に従って走査電子顕微鏡のために調製した。免疫細胞化学のため、成熟葯を無水条件のもとで2,2-ジメトキシプロパン中の0.1%のグルタルアルデヒド、1%のパラホルムアルデヒドの中で4℃で2h固定し、次いで透過型電子顕微鏡のために処理した(Staffら、前掲)。この方法は水性媒質の中でのアレルゲンのその細胞部位からの拡散を抑えるために開発されている。ブロックを1%のベンジルを有するLP金樹脂の中で、-25℃でUVイルミネーションのもとで重合し、そして80nmの薄切片を金グリット上で拾い上げた。イムノラベリングはまず第一抗体MAb 12.3(Lol p Ibに特異的)、次いで金-ヤギ-抗-マウスIgGプローブ(15nmの粒径)による。このラベルを40nmの粒径にまで銀増強させた(Danscher &Norgaard(1983)J.Histochem.Cytochem.31:1394-1398の改良法)。第2ラベリングは同じ切片上で、3種のMAb、3.2、21.3及び40.1の混合物、それに続く15nmの粒径の金-ヤギ-抗マウスIgGプローブにより行った。前述した通りに実施した抗体特異性及び方法のコントロール(Staffら、前掲)はこれらの部位での全粒子を示さなかった。
【0119】
Lol p Iaは細胞質の中に存在し、そして細胞小器官の中には存在していない。この発見はイムノ-金プローブをLol p Iaに特異的なMAbと一緒に用いることで獲得された。ここで示す通り、Lolp Ibに特異的なMAb 12.3はデンプン顆粒に優先的に結合する(図5a,b)。ほそ麦花粉は1×2.5μmのサイズのデンプン顆粒で消されており、そしてアミノプラストの内腔に由来する。
【0120】
図5bに示す通り、デンプン顆粒にわたって優先的に位置する大きな金粒子(大きな電子-光空間)は、Lol p IbへのMAb 12.3の結合を示し、一方、細胞質にわたる小さい粒子はLol p Iaへの結合の典型である。スケールバーは1μmである。図5cは水に30s暴露した後の新鮮な生育花粉の出現を示す(ダークフィールドイルミネーション)。ほとんどの花粉粒が破裂し、デンプン顆粒(白色粒)を含むその細胞質内容物が胚胞孔を通じて漏出していた。スケールバー30μm。
【0121】
プラスチドにおけるLol p Ibの存在は、このタンパク質が細胞質ゾルからプラスチドの内腔へと発育中に輸送されるであろうことを意味している。クロロプラストへの輸送のため、細胞質ゾルの中で合成されるこのタンパク質は細胞小器官へと輸送された後に切断される標的ペプチドを含む大きな前駆体として合成される。これらの細胞内プロセス工程、細胞質ゾルの中での第1のプレーアレルゲンとしてのLol p Ibの合成、及び後翻訳修飾のためのプラスチドへの輸送がイムノブロッティングにより見い出せる二重31/33kDの出現を説明しうる。プロセスされていないプレーアレルゲンは33kDであり、そしてプラスチドの中でのプロセスを経た成熟タンパク質が31kDである。これらの形態は成熟花粉の中で共存している。他方、この二重体はLol p Ibの別のイソフォーム又は科構成員にも存在しうる。
実施例7-免疫系に対するLol p Ibの提供
ほそ麦花が開花するとき、その葯は広がり、そしてこの花粉は各葯の基底において開いている孔を通じて大気中に放出される。ほそ麦はあらゆる草類のうちで最大の花粉生産を示し、ヘクタール当り約960kgの抗原を刈り入れ又は放牧されていない牧草地における大気中へと放出させる。この花粉の99%がその起源の1km内に蓄積(及び再蓄積)する。草類の花粉は寿命が短いが、しかしそれは大気中で数日間残っていることがある、花粉は放出後数時間しか生存していないことが実験で示されている。
【0122】
生存しているとき、この穀粒は柱頭の上で又は高レベルの浸透圧を有する人工培地の中で発芽できる。生存活性ほそ麦穀粒は水に暴露されたとき、単胚胞開口部で破裂し、細胞質内容物を放出する(図5c)。放出含有物のうちで顕著なのはデンプン顆粒である。高浸透圧を有する培地、例えば30%w/vのスクロースが穀粒の等張性を維持するのに必要である。他方、浸透性バリヤーを有さない死滅した花粉穀粒のスポンジのようにふるまうことがよく知られている。アレルゲンを含む細胞性タンパク質は湿潤によって放出される。
【0123】
草類花粉が口内及び目の粘膜に接触した後にどのようにして枯草熱を誘引するかはアレルゲンの直接的な放出によって簡単に調べられる。花粉穀粒自体は粘膜の上に居続けるが、しかし放出アレルゲン性タンパク質は粘膜及び上皮下層を通過し、そこでそれらは好塩基性細胞及びマスト細胞と相互作用する。直径30?50μmぐらいの大きさの花粉穀粒が、肺の気道におけるアレルゲンの存在により誘引される疾患、アレルギー性ぜん息をどのようにて誘発せしめるかを調べることはあまり簡単ではない。
【0124】
最近の証拠は、草類花粉アレルギーが大気中に見い出されている小さなミクロン粒に会合していることが示唆されている。かかる粒子の起源は不明である。アレルゲンの位置に基づく本結果が水の中での花粉の挙動の観察より、草類花粉がどのようにて感受性なヒトの肺においてアレルギー性ぜん息を誘発せしめるかを説明する新たな仮説が提唱される。生存花粉穀粒が水蒸気又は葉もしくはその他の基体の表層上の水と遭遇するとき、大気中にデンプン顆粒がミクロン粒子として放出される。アレルゲンで覆われ、且つ充填されているこれらの粒子は上部及び下部呼吸管へのアレルゲンの提供のための媒体として働く。ミクロン粒子はむろん草類花粉由来のアレルゲンの到達及び大気のその他の成分の蓄積にも由来しうる。
実施例8-Lol p Ib.1に対するモノクローナル抗体
実施例5由来の融合タンパク質GST-1Hに対するモノクローナル抗体(MAb)を、当業者に公知の技術(例えばKohler and Milstein、前掲及びKohler and Milstein、前掲を参照のこと)を利用して調製した。フラグメント1H(図4)によりコードされ、IgE結合性ドメインに相当する融合タンパク質は抗原性である。
【0125】
4匹の雌BALB/cマウスに、0.1mlのPBS及び0.1mlのRIBIアジュバント(Immunochem,Res.,Hamilton,MT)中の100mgのFPLC精製GST-1H融合タンパク質を腹腔膜内用(i.p.)注射した。14日間、同じ物質のブースターi.pを付与した。10日後、そのマウスを血抜きした。その血清を全ほそ麦花粉タンパク質のウェスタンブロットに対する結合性についてスクリーンし、そしてブロットへのこの血清の結合性に基づいてマウスを選択した。14日後、融合体に関して選択したマウスに100mgの融合タンパク質のみを含む0.2mlのi.pブースターを付与した。4日後、このマウスを殺し、そしてミエローマ細胞(Veterinary Research Institure,Parkville,Victoria、Australiaから贈呈)との融合のための脾臓を取り出した。融合及び培養に用いる方法は、Harlow and lane(1990)Amibodies,A LaboratoryManual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring HarborNY)のものを基礎とし、RRM1及びハイブリド血清(CommonwealthSerum Laboratories,Melbourne,Victoria,Australia)を用いる。アミノプテリン選別を利用した(50X HAT及びHT溶液、Flow Labor-atories,Scotland,U.K.)。クローニングは限界希釈による。
【0126】
モノクローナル細胞系をマウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Amersham International,U.K.)を利用してアイソタイプに付した。草類花粉季節中に季節性枯草熱の典型的な症状を示し、且つ皮膚移植検査で陽性の応答を示した患者から、同意を得た後にヒトアレルギー血清を採取した。その血清をウェスタンブロットでほそ麦花粉の全タンパク質とのIgE反応性についてアッセイした。花粉サンプルはGreer Laboratories(Lenoir,NC)より購入した。可溶性タンパク質を、1mMのフェニル-メチルスルホニルフルオリドを含むPBSの中で氷上で3時間強く撹拌することにより草類花粉から抽出した。各サンプルについてのタンパク質濃度はBio-Rad(Richmond,CA)タンパク質アッセイを用いて決定した。
【0127】
各草類の抗体結合性はスロットイムノブロッティングによりまず検定した。2mgの全タンパク質花粉を含む100μlのサンプルをマニホールドIIスロットブロッティング装置(Schleicher and Schuell,Dassel,Germany)を用いてニトロセルロース膜に適用した。これをPBSで洗い、そして10%の粉乳を含む同じバッファーの中でブロックした。
【0128】
SDS-PAGEをBio-Rad(Richmond,CA)プロテインIIスラブゲル装置及びラエムリ(Laemmli)バッファー系(Laemmli,U.K.(1970)Nature227:680)を利用して、10?15%のアクリルアミド勾配ゲルで実施した。これらのタンパク質をクマジーブルーR250(Sigma ChemicalCo.,St.Louis,MO)染色によって識別化させた。勾配SDS-PAGEにより分けたタンパク質をTowbinら(1970)Proc.Natl.Acad.Sci.USA76:4350-4354の手順に従って、Bio-Rad(Richmond,CA)トランスブロットセルの中のニトロセルロース膜上へとこのゲルから電気泳動的に移した。このニトロセルロース上のタンパク質を、スロットブロットに関して記載した通りに、粉乳中でこの膜をインキュベートすることによって非特異的部位をブロッキングすることにより検出した。次にこの膜をPBSの中で洗い、そして0.5%のBSA及び0.1%のアジ化ナトリウムを含むPBSの中で1:5に希釈しておいたMAb溶液の中に2時間又はヒト血清(10人の草類アレルギー患者より獲得したプール血清)の中に一夜浸した。MAb溶液の中でインキュベートした膜をPBSで洗い、次いでPBS-BSAに1:500で希釈したヒツジ抗マウスIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(Silenus,Australia)とインキュベートした。洗浄後、この血清ブロットをまずPBS-BSAの中で1:200に希釈したウサギ抗-ヒトIgE(Dakop-atts,Glostrup,Denmark)の溶液の中で2時間インキュベートし、次いでPBS-BSAで1:2500に希釈したヤギ抗-ウサギIgG-西洋ワサビペルオキシダーゼ(Promegal,Madison,W1)の溶液の中で1時間インキュベートした。洗浄後、ブロットに結合している抗体を、4-クロロ-1-ナフトール及び過酸化水素を含むペルオキシダーゼ基質の中でインキュベートすることにより識別化させた。
【0129】
FPLCカラムより溶離させたGST-1H融合タンパク質を含む画分は画分9及び10であった。これらの画分は、SDS-PAGEにより分析したとき、26kDのGST及びフラグメント1Hによりコードされる15kDのタンパク質に対応する41kD(GST-1H)の一本のバンドを示した。
【0130】
MAb製造の際、一融合体は75の細胞コロニー含有ウェルをもたらし、そのうちの7つが天然Lol p Ib花粉タンパク質に対して陽性であった。3つの強く増殖するコロニーをMAb細胞系を生成するためにクローンした。アイソタイプしたとき、LpIX-3A及びLpIX-4Aと命名した2細胞系がIgGカッパー抗体を生成し、そして1つがIgMカッパー抗体を生成した。同じ方法で、MAb LpI-7E(7E)を抗原として可溶性花粉抽出物を用いて作った。MAb LpI-7EはLol p Iaに特異的である。
【0131】
これらのMAbはオーチャードグラス、ヒロハノウシノチグサ、ほそ麦、ネズミムギ及びナガハグサの花粉中の非変性抗原に結合した(図6)。SDS-PAGEで分けた可溶性花粉タンパク質のウェスタンブロット上で、MAb LpIX-3A及びLpIX-4Aはヒロハノウシノチグサ、ほそ麦、ネズミムギ及びナガハグサ中の抗原と結合した(図7)。これらの草類は全て分類学上近縁している。これらはポエア(Poeae)族、ポアダ(Poadae)超族、プーイデア(Pooideae)亜科の構成員である。
実施例9-Lol p Ib.2をコードするcDNAクローン19Rの単離免疫学スクリーニング
実施例1におけるcDNA発現ライブラリーのデュープリケートフィルターをプールしたヒトアレルギー血清由来の特異的IgEでスクリーンした。結合IgEは^(125)I-ラベル化抗-ヒトIgE(Kallestad Laboratories,Chaska,MN)を用いて検定した。両デュプリケートフィルター上の抗体陽性プラークを拾い、精製し、次いで再プレートに付し、そしてMAbへの結合性について試験した。
【0132】
プラーク精製クローンは非アレルギー血清で試験したときは陽性でなかった(図8)。このことは、クローン19Rが、ほそ麦感受性患者の血清中の特異的なIgEへの結合能力によりアレルゲンであることを示している。
【0133】
クローン19RをEcoR Iで消化し、そしてpGEMプラスミド(Promega,Madison,W1)にリゲートした。図9はLol p Ib.1及びLol p Iaコード遺伝子の制限地図と比較した、クローン19Rに由来するサブクローンEcoR Iインサートの部分制限地図である。図9で示す通り、このインサートはLol p Ia及びLol p Ib.1をコードするものとは異なる。EcoR Iインサートのサイズは約1295bpである。
DNAのサブクローニング及びシーケンシング
Messe,E.ら(1990)Nucleic Acids Res.,第18巻:1923に記載の液体リゼート法を利用してDNAをプラーク精製相から調製した。EcoR I消化より回収したインサートをpGEM 4-Z(Promega,Madison,W1)へとリゲートし、そしてpGEMベクター(pGEM4-Z)の中に様々なサイズの制限フラグメントとしてサブクローンした。全てのシーケンシングは二本鎖プラスミド鋳型を用いて行った。これらの鋳型はQuiagen,Inc.,Chatsworth,CA,USAに記載の通りに調製した。ジデオキシシーケンシング(Sangerら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.74:5460-5463)を実施例4に記載の通りに実施した。クーデアザdITPを強いGCバンド圧縮を解くために用いた。シーケンシングはExo III及びS1ヌクレアーゼによってインサートの両端から入れ子欠損を作り上げることにより助長した。必要に応じて内部シーケンシングプライマーを合成した。
配列分析
配列分析はメルボルンデーターベースシステム(MELBDBSYS)、即ち、オーストラリア、メルボルン大学のWalterとEliza Hall,LuduigとHoward Florey Institutes及びPC Gene Clnttelligenetics,Mount-ain View,CA)で開発された分析プログラムコレクションを用いて実施した。このシステムは下記の起源由来のデーターベースを含んでいる:GenBank,EMBL、及びBPRF核酸ライブラリー;NBRF PRIタンパク質、PSD-キョート(オオイ)、GBトランス、スイスプロット及びDoolittleタンパク質ライブラリー。探索中、EMBL及びGenBankデーターベースはそれぞれ28.0及び68.0リリースした。
【0134】
クローン19RのcDNA配列を図10a及び10bに示し、そして1295ヌクレオチドを含んでいた。ヌクレオチド位置25-27でのATG開始コドンで始まり、そしてヌクレオチド位置1041で始まるTGA停止コドンで終結する1017bpのオープン解読枠がある。クローン19RのcDNAは以下の特徴を有し、それが全長コード領域を含むことが示唆された:
i)提唱の翻訳開始部位とそのフランキング配列(ヌクレオチド21-29)とが単子葉植物の共通配列と89%の相同性を共有した。最も重要なヌクレオチド、即ちATG出発コドン(図10aにおけるヌクレオチド21)に対して-3の位置のプリンが保存されていた(Cavener,D.R.,and Ray,S.C.(1991)Nucleic Acids Research,19:3185-3192);
ii)cDNAは完全な3′-未翻訳領域である標準AATTAAポリアデニル化シグナル(Birnsteilら(1985)Cell,41:349-359)、それに続くポリ(A)テールを有する;及び
iii)3′未翻訳領域はmRNA安定性にかかわるATTTAも含む。
【0135】
クローン19RcDNAのヌクレオチド配列はG+Cに富んでいる(63-1)。そのオープン解読枠は推定Mr 35.3kDを有する314個のアミノ酸のLol p Ib.2と命名したタンパク質をコードする。この推定タンパク質は図11に示すN-末端配列の水性プロフィールに基づいて25個のアミノ酸のリーダーペプチドを有することが認められた。この図はKyte and Doolittle(1982)J.Mol.Biol.,157:105-132の方法に基づく推定アミノ酸配列の疎水性プロフィールを示し、9個のアミノ酸の枠がある。このことは、成熟プロセスタンパク質の分子量が32.8kDであることを示唆する。N-グリコシル化に必要なAsn-X-Ser/Thr配列はなく、そして成熟タンパク質の推定pI値は5.9であった。
【0136】
現存のデーターベースのヌクレオチド及びアミノ酸配列探索は、クローン19RがLol p Ib.1及びPoa p IXアレルゲンとだけ類似性を有することを示した。図12a及び12bに示す通り、クローン19Rとクローン12Rのヌクレオチドコード領域間に72.3%の相同性があった。アミノ酸対比は、図13に示す通りクローン19Rの推定アミノ酸配列とLol p Ib.1との間での66.8%の同一性を示した。両アレルゲンとも非常に類似した25個のアミノ酸のリーダーペプチドを有していた。クローン19Rのアミノ酸配列とPoa p IX(Silanovichら(1991)J.Biol.Chem.,266:1204-1210)の3つのイソアレルゲンとの間で64?69%の同一性があった。
花粉タンパク質の単離及びイムノブロッティング
可溶性タンパク質をほそ麦花粉から、PBS及び1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリドの中で氷上で3時間強く撹拌することにより抽出した。SDS-PAGEのための条件は本質的にOngら(1990)Int.Arch.Allergy Appl.lmmunol.,93:338-343に記載の通りである。電気泳動の直後、分離させたタンパク質を銀染色するか(Angorge,W.(1982)「Electrophoresis’82:Advanced Methods,Bioc-hemical and Clinical Applications,Proceedings of the Interna-tional Conference on Electrophoresis,Athens,Greece,1982年4月21-24日、編集者:D.Stathakos,Walter de Gruyeer,BerlinとNewYork,1983年、頁235-242)、又はニトロセルロースに4℃で移した(Towbinら(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:4350-4354)。
【0137】
IgE抗体結合のため、ブロットを0.5%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBS中のプールアレルギー血清又はアフィニティー精製IgE中でインキュベートした。結合IgEをOng E.ら(1990)Int.Arch.Allergy Appl,Immunol.,93:338-343の方法に従って、^(125)I-ラベル化抗ヒトIgE(Kallestad lad,Chaska,MN)を用いて検出した。MAb結合に関して、結合IgGを西洋ワサビペルオキシダーゼラベル化ヒツジ抗-マウスIg(Silenus,Hawthorn,Victoria,Australia)を用いて検出した。ブロットは増強ケミルミネッセンス系(Amersham Int.,U.K.)を用いて現像した。
IgE抗体のアフィニティー精製
アレルゲンをコードするラムダgt11ファージ中のcDNAクローンをエッシェリヒアコリの中で融合タンパク質として発現させた。組換融合タンパク質(rfp)を含むプラークリフトを次にプール血清の中でインキュベートした。結合IgE抗体を0.2MのグリシンHCl,pH2.6/0.5%のBSA/0.1%のアジ化ナトリウムで溶離させ、そしてウェスタンブロットをプローブするために用いた。IgE結合は^(125)I-ラベル化抗-ヒトIgE(Kallestad,Chaska,MN)、次いでオートラジオグラフィーを用いて識別させた(Ongら、Int.Arch.Allergy Appl.Immunol.,93:338-343)。
RNAブロットハイブリダイゼーション
RNAゲルブロット分析のため、全RNAを20mMの3-(N-モルホリノ)-プロパンスルホン酸、50%の脱イオンホルムアミド及び2.2Mのホルムアミドの中で65℃で5分間変性させ、2.2Mのホルムアルデヒドを含む1.2%のアガロースゲルで電気泳動させ、そしてニトロセルロースにエレクトロブロットさせた。RNAスロットブロット分析は、全RNAを20mMの3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸、5mMの酢酸ナトリウム及び1mMのEDTAの中で65℃で10分間変性させ、そのサンプルを20XのSSC(SSC-3Mの塩化ナトリウム、1.0Mのクエン酸ナトリウムで飽和せしめたミニホールド11濾過用マニホールド(Schleicher & Schuell,Dassel,Germany)の中に納めたニトロセルロース上に適用することで実施した。両フィルターは50%の脱イオン化ホルムアミド、2XのSSPE(SSPE-3Mの塩化ナトリウム、0.2Mのリン酸ナトリウム、0.02MのEDTA)、1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、0.5%のBlotto(リン酸バッファー食塩水中の10%の脱脂乳)、10%の硫酸デキストラン、及びオリゴラベリングキット(Bresatec,Adelaide,Australia)を用いてランダムオリゴヌクレオチドプライミングにより調製した。^(32)P-ラベル化cDNAプローブを含む溶液の中で42℃で2?6時間にわたり予備ハイブリダイズさせておいた。これらのフィルターを2XのSSC、0.1%のSDSで42℃で2時間で4回洗い、次いでX線フイルムに暴露させた。
【0138】
クローン19R遺伝子発現の組織特異性を決定するため、様々なほそ麦組織から調製したRNAのノーザンブロット分析を調べた。ノーザンブロットをクローン19R由来の84bpのSsp I/EcoR I制限フラグメントでプローブした。クローン19に結合するがクローン12Rには結合しないクローン19Rのヌクレオチド1207?1291(図10b)に対応するこのcDNAプローブは花粉中の1780塩基の単独転写物にハイブリダイズした。ほそ麦の種子、根及び葉におけるどの転写物ともハイブリダイゼーションは認められなかった。プローブとしてエンドウ由来の完全ルボソームDNAを用いる陽性コントロールハイブリダイゼーションは、利用したRNAの量が全てのサンプルにおける検出のために十分であることを示した。これは図14a及び14bに示している。
実施例10?Lol p Iアレルゲンの特性化
材料及び方法
花粉をGreer Laboratories,Lenoir,NCより入手した。可溶液タンパク質をGriffithら(1991)FEBS Letters,279:210-215に記載の通りに抽出した。粗花粉抽出物を獲得し、そしてそのタンパク質濃度をOngら(1990)Int.Arch.Allergy Appl.Immunol.,93:338-343に記載の通りに決定した。MAb LpIX3A及びLpIX4Aを実施例8に記載の通りに、クローン12RのIgE結合部分によりコードされる組換タンパク質に対して発生せしめた。MAb 7Eは実施例8に記載の通りLol p Ia及び実施例1に記載の通りFMC-A1に特異的であった。
【0139】
Lol p Ia及びLol p Ibのアレルゲン領域を同定する実験で用いた血清はDr.R.Rhomeleyにより、Epworth病院(Richmond,Australia)で、ほそ麦花粉に対するアレルギーの履歴を有し、且つほそ麦花粉抽出物に対する皮膚検査で陽性な患者から集めた。IgEは既に述べられた通りに(Singhら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 21:309;Exam-ple 2)組換アレルゲンからアフィニティー精製したが、ただし組換タンパク質はpGEX培養由来ではなく、ラムダ-gt11培養物に由来した。
【0140】
IgE結合性ポリペプチドをコードするクローン12R及びクローン19Rのフラグメントを同定する実験で用いた血清は、春の枯草熱症状の事前の臨床記録及びほそ麦花粉に対するRAST(Rhadezymc RAST,Rharmacia LKB Sweden)を基礎として選んだ50人の対象者から獲得した。全ての血清に関するRASF評点は4であった。RASTによりアトピーでないと示された2人の対象者からも血清を獲得し,そして陰性コントロールとして用いた。血清は小アリコートで-40℃で保存した。
二次元ゲル電気泳動及びイムノブロット分析
2次元(2D)-PAGEをミニ-プロテアンII2-Dセル(Biorad,Richmond,CA)において、その製造者の仕様書に従って実施した。タンパク質を9%のCHAPSの中で1:1に希釈した。ゲル当り13mgのタンパク質のアリコートを適用し、そしてサンプルの上に一次方向サンプルオーバーレイバッファーを載せた。一次元ゲルを3.5時間泳動させた。二次元ゲルは45分泳動させた。2D-PAGEゲル上のタンパク質を銀染色してタンパク質プロフィールを表示させた。
【0141】
電気泳動及びウェスタンブロット並びにMAb及びIgEによるウェスタンブロットの処理のための条件はSinghら(1985)Int.Arch.All-ergy Appl.Immun.,78:300に記載の通りとした。
花粉抽出物中のアレルギーアイソフォームの同定
アレルギー個体の血清による、SDS-PAGEにより分けた花粉タンパク質のウェスタンブロットのプロービングはIgEに結合する28?35kDのMW範囲にある4種の分子量でのタンパク質バンドを示した。2D-ゲルのウェスタンブロットの類似の処理はこれら4本のバンドを、図15に示す通り12のアレルゲンスポットへと分解した。多数のMAb及びIgE調製品を利用することにより、これらのアレルゲン間の抗原性の関係を研究した。
【0142】
二次元ウェスタン分析を図16及び表3に示す。ブロットはLol pIb.1,Lol p Ib.2,rfp Lol p Ia、全プール血清及びMAb FMC A7由来のアフィニティー精製IgE抗体でプローブした。全プール血清は、32kD成分の2つの酸性アイソフォーム(No.1,2)、30kD成分の5つのアイソフォームであって5-11の範囲におけるpI値を有するもの(バンド3-7)、及び28kD分子の塩基性バンド(No.8)を認識する抗体を有していた(図16、パネルb)。Lol p Ib.1及びLol p Ib.2に由来するアフィニティー精製IgE抗体はアイソフォームNo.5を除く28/30/32kD分子のアイソフォーム全てに結合した(図16、パネルd及びe)。他方、MAb FMC-A7は32kDのアイソフォーム(バンド1及び2)、2つの酸性アイソフォーム(バンド3,4)及び塩基性バンドNo.7の30kD成分を認識した(図16、パネルc)。
【0143】
Lol p Ia,Lol p Ib.1及びLol p Ib.2の相対アレルゲン性を30人の個体のアレルギー血清を用いて試験した。図17は27人の患者(90%)がLol p Iaに反応性のIgE抗体を有し、そしてそのうちの6人(20%)(図17)はLol p Iaに特異的なIgE抗体を有していることを示した(どのLol p Ibアイソフォームにも結合しなかった)。24人の患者(80%)がLol p Ib.1及びLol p Ib.2組換アイソフォームの両方を認識するIgE抗体を有していた。Lol p Ibアイソフォームのみを認識する(Lol p Iaには結合しない)IgE抗体を有する患者が3人いた。
【0144】
【表3】

【0145】
実施例11-ほそ麦頭状花からのRNAの抽並びにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるLol p Ib.1及びLol p Ib.2をコードする遺伝子の多型性分析
新鮮な頭状花をオーストラリアのほそ麦草から集め、凍結し、そして米国に輸送した。500mgの頭状花をドライアイス上の乳鉢及び乳棒によりつぶし、そして0.1%のDEPCでFrankis and Mascarhenas(1980)Ann.45:595-599に記載の通りに一夜処理した0.2MのNaCl、1mMのEDTA、0.1%のSDSを有する50mMのトリスpH9.0 5mlの中に懸濁した。フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1で混合)で1回の抽出の後、この材料をフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール中で60秒間音波処理し、そして再抽出した。音波処理を3回目の抽出において30秒間繰り返した。最後の2回の抽出は音波処理抜きで行った。RNAが0.1容量の2Mの酢酸ナトリウム及び2容量のエタノールを有する水性相から沈殿した。そのペレットを遠心により回収し、dH_(2)Oの中に再懸濁し、そして65℃で5分間熱した。2mlの4Mの塩化リチウムをRNA調製品に加え、そして0℃で一夜沈殿させた。このRNAペレットを遠心により回収し、1mlのdH_(2)Oの中に再懸濁し、そして再び3Mの酢酸及びエタノールにより氷上で3時間かけて沈殿させた。最終ペレットを70%のエタノールで洗い、風乾し、そして100μlのDEPC処理H_(2)Oの中に再懸濁し、次いで-80℃で保存した。
【0146】
一本鎖cDNA及び二本鎖cDNAをそれぞれ市販のキット(cDNA合成システムとキット、BRL,Gathersburg,MD)を用いて7.5μgの頭状花RNAにより合成した。第2鎖cDNA反応混合物をフェノール抽出し、エタノール抽出し、次いでT4 DNAポリメラーゼ(Promega,Madison,W1)でブラント化せしめた。この二本鎖cDNAをエタノール沈殿させた、自てアニールに付したオリゴヌクレオチドAT及びALにリゲートさせ、Rafnerら(1990)J.Biol.Chem.266:1229-1236;Frohmanら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:8998-9002;及びRouxら(1990)BioTech 8:48-57の方法に従う改良アンカーPCR反応において利用した。オリゴヌクレオチドATは配列5′-GGGTCTAGAGGTACCGTCCGATCGATCATT-3 ′(Rafnerら、前掲)を有す。オリゴヌクレオチドALは配列5′-AATGATCGATGCT-3′(Rafnerら、前掲)を有す。
【0147】
クローン12R及びクローン19Rのアミノ末端をリーカー化cDNAから増幅された(2μl反応)。PCRを市販のキット(GeneAmp DNAAmplification Kit,Perkin Elmer Cetus,Norwalk CT)を用いて実施し、ここでは、dNTPを含む10μlの10Xのバッファーを100pmolの各オリゴヌクレオチドAP-2及びLP5-8プライマー(ED:EDTは3:1Mの比)、cDNA(2μlのリンカー化cDNA反応混合物)、0.5μlのAmplitaq DNAポリメラーゼ及び100μlにする蒸留水と混合した。このサンプルをプログラムされたサーマルコントローラー(MJ Research,Cambridge,MA)で増幅させた。温度サイクルプログラムは下記を利用した:鋳型の変性DNA、94℃、1分;オリゴヌクレオチドのアニール、65℃、1分30秒;伸長、72℃、2分;24サイクル反復;4℃に保持。
【0148】
LP5-8は配列5′-GCCTTGAAGCC(A/G)GCGTTGA-3 ′を有し、ここで位置12はA又はGのいづれかである。LP5-8はLol p Ib.1のヌクレオチド227?244(図3b及び3c)及びLol p Ib.2のヌクレオチド248?265(図10a及び10b)に相補性の非コード鎖配列に相当する。AP-2は配列5′-GGGTCTAGAGGTACCGTCC-3′を有する。一次反応は本明細書に記載の通りに実施した。この初期増幅物の2%(2μl)を次に100pmolの各AP-2及びLP5-9、即ち内部入れ子型Lol p Ib.1/Ib.2オリゴヌクレオチドプライマーによる二次増幅において用いた。LP5-9は配列5′-TTGGATCCTCGGTCGTCGCCTTCCCT-3 ′を有し、ここでヌクレオチド5′-TTGGATCC-3 ′(LP5-9の塩基1?8)はBamHI制限部位を作り上げるために付加され、そしてヌクレオチド9?26はLol p Ib.1のヌクレオチド186?203(図3b及び3c)並びにLol p Ib.2のヌクレオチド207?224(図10a及び10b)に相補性の非コード鎖配列に相当する。主要増幅生成物は臭化エチジウム(EtBr)染色した3%のGTGアガロースゲル上の約100?250塩基対に由来するDNAスミア(塗抹)であった。
【0149】
増幅DNAを順にクロロホルム、次いでクロロホルム抽出、続いて氷上での0.5容量の7.5Mの酢酸アンモニウム及び1.5容量のイソプロパノールによる沈殿によって回収した。沈殿及び70%のエタノールによる洗浄後、DNAを50μlの反応においてXba I及びBam HIで同時消化し、容量を20μlに減らすように沈殿させ、次いで調製2% GTG NuSeive ローメルトゲル(FMC,Rockport,ME)に電気泳動させた。適当なサイズのDNAがEtBr染色により識別化され、切り出し、そして適当に消化したpUC19へとリゲートし、市販のシーケンシングキット(Sequenaseキット、Taquenceキット、両者ともU.S.Biochemicals,Cleveland,OH由来)を用いてSangerら(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA74:5463-5476)のジデオキシ連鎖停止法によりシーケンシングした。
【0150】
全てのクローンは単一PCR反応に由来し、そしてアミノ酸の相違は潜在的な多型性のみを示した。このようなアミノ酸相違はTaqポリメラーゼ(Saikiら(1988)Science 239:487-491)における固有のエラー率に基づき、独立のPCRにおいて確認する必要がある。
【0151】
11クローンがクローン12Rに相同性な配列を含むことが見い出された。2クローンはクローン19Rと相同性であることが見い出された。Lol p Ib.1におけるアミノ酸相違をもたらすクローン12Rにおける潜在的なヌクレオチド多型性を表6に示している。
【0152】
【表4】

【0153】
Lol p Ib.2におけるアミノ酸変化をもたらすクローン19Rにおける潜在的な多型性が1クローンの中で見い出され、ここで位置30のアミノ酸はT→Sと変っていた。
【0154】
クローン12Rの内部領域をコードするcDNAを上記の温度サイクルプログラムを利用するPCR反応において、オリゴヌクレオチドLP5-5及びLP5-6を用いて一本鎖cDNAからクローンした。LP5-5は配列5′-GGGAATTCACCGACGAGCAGAAGCTG-3 ′を有し、ここでLP5-5の塩基1?8(5′-GGGAATTC-3 ′)はクローニング目的のためのEcoR I制限部位を作り上げるために付加され、そして塩基9?26はクローン12Rのヌクレオチド199?216及びクローン19Rのヌクレオチド220?237に相当する。LP5-6は配列5′-GGGGATCCCTGGGTCATGGCGGTGAT-3 ′を有し、ここで塩基1?7(5′-GGGGATC-3′)(LP5-6の塩基1?7)はクローニング目的のためにBamH I制限部位を作りあげるために付加され、そして塩基8?26はクローン12Rのヌクレオチド808?826に相補性である。主要増幅生成物は約620塩基対のDNAバンドであった。増幅DNA生成物を前記の通りに精製及び沈殿し、続いてEcoR I及びBamH Iで消化し、そして調製2%ローメルトゲルに電気泳動させた。主要DNAバンドを切り出し、そしてシーケンシングのために適当に消化したpUC19にリゲートさせた。クローン12R内部配列を含むいくつかのクローンが獲得された。
【0155】
全てのクローンは単一PCR反応に由来し、そしてアミノ酸の相違は潜在的な多型性のみを示した。このようなアミノ酸相違はTgqポリメラーゼ(Saikiら(1988)Science 239:487-491)において固有のエラー率に基づき、独立のPCRにおいて確認する必要がある。
【0156】
Lol p Ib.1の内部配列の潜在的な多型性を表7に示す。
【0157】
【表5】

【0158】
当業者は、本明細書記載の発明をここで記述されているもの以外に変更及び改良できることを理解しているであろう。本発明は、本明細書に記載の全ての工程、特徴、組成物及び化合物を個別に集約的に包括し、そして任意の2以上の前記の工程又は特徴の全ての組合せを包括している。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1a】イネ科グループIbアレルゲンに特異的なcDNAクローンの単離を示す。図1aは3種のMAb、FMC A1(40.1)、FMC A7(12.3)、3.2(Kahn & Marsh(1986)Molec.Immunol.23:1281-1288;Singh &Knox(1985)International Archives of Allergy and Applied Immu-nology 78,300-304;Smartら(1983)International Archivesof Allergy and Applied Immunology 72 243-248)及びアレルギー患者血清由来のIgEによる陽性クローン(12R)の認識を示している。
【図1b】イネ科グループIbアレルゲンに特異的なcDNAクローンの単離を示す。図1bはほそ麦花粉に由来のグループI抗体へのMab及びIgEの結合性のイムノブロット分析を示す。レーン1は全タンパク質プロフィール(クマジーブルー染色)を示し;レーン2:MAb 21.3;レーン3:MAb 40.1;レーン4:MAb 3.2;レーン5 12.3-;レーン6:IgE抗体。
【図2】グループIbアレルゲン転写体の組換型及び細胞型特異性発現を示す。図2aはRNAブロットハイブリダイゼーションを示す。ポリ(A)+RNAは種々の植物組織、即ち、種子、葉、根及び花粉から単離した。図2bはグループIb抗原の組織型及び細胞型特異性分布のイムノブロット分析を示す。可溶性タンパク質は種々の植物組織、即ち、花、葉、根及び花粉から抽出し、そしてMAb 40.1(パネル1)、12.3(パネル2)及びIgE抗体(パネル3)を用いてイムノブロットした。
【図3a】Lol p Ib.1と命名したほそ麦花粉クローン12RのcDNA配列、推定アミノ酸配列及び疎水性プロフィールを示す。図3aはラムダー12RcDNAの図式制限地図を示す。ハッチボックスは推定の翻訳オープン解読枠を示す。図3b及び3cは1229ヌクレオチドのEcoR I cDNAインサートラムダー12Rのヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。一文字コードにより示している推定アミノ酸配列をこのDNA配列の下に示し、そしてヌクレオチド40での第1替在クレーム内開始コドンにて始まる。第1未介在オープン解読枠は301個のアミノ酸にわたってつながり(DNA配列の下に番号を付した)、そして星印で示すTGA停止コドンで終っている。推定シグナルペプチドは負の番号で示している。アミノ酸残基1?9、12?17及び19はN-末端シーケンシングにより同定されている。図3dはHopp and Woods(1981)Proc.Natl Acad.Sci.USA78:3824-3828の方法に基づく推定アミノ酸配列の疎水性プロフィールを示し、7個のアミノ酸を枠に入れてある。
【図3b】Lol p Ib.1と命名したほそ麦花粉クローン12RのcDNA配列、推定アミノ酸配列及び疎水性プロフィールを示す。図3aはラムダー12RcDNAの図式制限地図を示す。ハッチボックスは推定の翻訳オープン解読枠を示す。図3b及び3cは1229ヌクレオチドのEcoR I cDNAインサートラムダー12Rのヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。一文字コードにより示している推定アミノ酸配列をこのDNA配列の下に示し、そしてヌクレオチド40での第1替在クレーム内開始コドンにて始まる。第1未介在オープン解読枠は301個のアミノ酸にわたってつながり(DNA配列の下に番号を付した)、そして星印で示すTGA停止コドンで終っている。推定シグナルペプチドは負の番号で示している。アミノ酸残基1?9、12?17及び19はN-末端シーケンシングにより同定されている。図3dはHopp and Woods(1981)Proc.Natl Acad.Sci.USA78:3824-3828の方法に基づく推定アミノ酸配列の疎水性プロフィールを示し、7個のアミノ酸を枠に入れてある。
【図3bI】Lol p Ib.1と命名したほそ麦花粉クローン12RのcDNA配列、推定アミノ酸配列及び疎水性プロフィールを示す。図3aはラムダー12RcDNAの図式制限地図を示す。ハッチボックスは推定の翻訳オープン解読枠を示す。図3b及び3cは1229ヌクレオチドのEcoR I cDNAインサートラムダー12Rのヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。一文字コードにより示している推定アミノ酸配列をこのDNA配列の下に示し、そしてヌクレオチド40での第1替在クレーム内開始コドンにて始まる。第1未介在オープン解読枠は301個のアミノ酸にわたってつながり(DNA配列の下に番号を付した)、そして星印で示すTGA停止コドンで終っている。推定シグナルペプチドは負の番号で示している。アミノ酸残基1?9、12?17及び19はN-末端シーケンシングにより同定されている。図3dはHopp and Woods(1981)Proc.Natl Acad.Sci.USA78:3824-3828の方法に基づく推定アミノ酸配列の疎水性プロフィールを示し、7個のアミノ酸を枠に入れてある。
【図3bII】Lol p Ib.1と命名したほそ麦花粉クローン12RのcDNA配列、推定アミノ酸配列及び疎水性プロフィールを示す。図3aはラムダー12RcDNAの図式制限地図を示す。ハッチボックスは推定の翻訳オープン解読枠を示す。図3b及び3cは1229ヌクレオチドのEcoR I cDNAインサートラムダー12Rのヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。一文字コードにより示している推定アミノ酸配列をこのDNA配列の下に示し、そしてヌクレオチド40での第1替在クレーム内開始コドンにて始まる。第1未介在オープン解読枠は301個のアミノ酸にわたってつながり(DNA配列の下に番号を付した)、そして星印で示すTGA停止コドンで終っている。推定シグナルペプチドは負の番号で示している。アミノ酸残基1?9、12?17及び19はN-末端シーケンシングにより同定されている。図3dはHopp and Woods(1981)Proc.Natl Acad.Sci.USA78:3824-3828の方法に基づく推定アミノ酸配列の疎水性プロフィールを示し、7個のアミノ酸を枠に入れてある。
【図3c】Lol p Ib.1と命名したほそ麦花粉クローン12RのcDNA配列、推定アミノ酸配列及び疎水性プロフィールを示す。図3aはラムダー12RcDNAの図式制限地図を示す。ハッチボックスは推定の翻訳オープン解読枠を示す。図3b及び3cは1229ヌクレオチドのEcoR I cDNAインサートラムダー12Rのヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。一文字コードにより示している推定アミノ酸配列をこのDNA配列の下に示し、そしてヌクレオチド40での第1替在クレーム内開始コドンにて始まる。第1未介在オープン解読枠は301個のアミノ酸にわたってつながり(DNA配列の下に番号を付した)、そして星印で示すTGA停止コドンで終っている。推定シグナルペプチドは負の番号で示している。アミノ酸残基1?9、12?17及び19はN-末端シーケンシングにより同定されている。図3dはHopp and Woods(1981)Proc.Natl Acad.Sci.USA78:3824-3828の方法に基づく推定アミノ酸配列の疎水性プロフィールを示し、7個のアミノ酸を枠に入れてある。
【図3cI】Lol p Ib.1と命名したほそ麦花粉クローン12RのcDNA配列、推定アミノ酸配列及び疎水性プロフィールを示す。図3aはラムダー12RcDNAの図式制限地図を示す。ハッチボックスは推定の翻訳オープン解読枠を示す。図3b及び3cは1229ヌクレオチドのEcoR I cDNAインサートラムダー12Rのヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。一文字コードにより示している推定アミノ酸配列をこのDNA配列の下に示し、そしてヌクレオチド40での第1替在クレーム内開始コドンにて始まる。第1未介在オープン解読枠は301個のアミノ酸にわたってつながり(DNA配列の下に番号を付した)、そして星印で示すTGA停止コドンで終っている。推定シグナルペプチドは負の番号で示している。アミノ酸残基1?9、12?17及び19はN-末端シーケンシングにより同定されている。図3dはHopp and Woods(1981)Proc.Natl Acad.Sci.USA78:3824-3828の方法に基づく推定アミノ酸配列の疎水性プロフィールを示し、7個のアミノ酸を枠に入れてある。
【図3cII】Lol p Ib.1と命名したほそ麦花粉クローン12RのcDNA配列、推定アミノ酸配列及び疎水性プロフィールを示す。図3aはラムダー12RcDNAの図式制限地図を示す。ハッチボックスは推定の翻訳オープン解読枠を示す。図3b及び3cは1229ヌクレオチドのEcoR I cDNAインサートラムダー12Rのヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。一文字コードにより示している推定アミノ酸配列をこのDNA配列の下に示し、そしてヌクレオチド40での第1替在クレーム内開始コドンにて始まる。第1未介在オープン解読枠は301個のアミノ酸にわたってつながり(DNA配列の下に番号を付した)、そして星印で示すTGA停止コドンで終っている。推定シグナルペプチドは負の番号で示している。アミノ酸残基1?9、12?17及び19はN-末端シーケンシングにより同定されている。図3dはHopp and Woods(1981)Proc.Natl Acad.Sci.USA78:3824-3828の方法に基づく推定アミノ酸配列の疎水性プロフィールを示し、7個のアミノ酸を枠に入れてある。
【図3d】Lol p Ib.1と命名したほそ麦花粉クローン12RのcDNA配列、推定アミノ酸配列及び疎水性プロフィールを示す。図3aはラムダー12RcDNAの図式制限地図を示す。ハッチボックスは推定の翻訳オープン解読枠を示す。図3b及び3cは1229ヌクレオチドのEcoR I cDNAインサートラムダー12Rのヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示す。一文字コードにより示している推定アミノ酸配列をこのDNA配列の下に示し、そしてヌクレオチド40での第1替在クレーム内開始コドンにて始まる。第1未介在オープン解読枠は301個のアミノ酸にわたってつながり(DNA配列の下に番号を付した)、そして星印で示すTGA停止コドンで終っている。推定シグナルペプチドは負の番号で示している。アミノ酸残基1?9、12?17及び19はN-末端シーケンシングにより同定されている。図3dはHopp and Woods(1981)Proc.Natl Acad.Sci.USA78:3824-3828の方法に基づく推定アミノ酸配列の疎水性プロフィールを示し、7個のアミノ酸を枠に入れてある。
【図4】Lol p Ib.1(クローン12R)におけるIgE及びMAb反応性エピトープの、イムノブロッティングを利用する描写である;図4a:IgE抗体;図4b、MAb 40.1、そして図4c、MAb 12.3。図4a?cのコントロールは非組換プラスミドで形質転換させた細菌により供されている。
【図5a】特異的MAb及びイムノゴールドプローブを利用するほそ麦の成熟花粉におけるLol p Ia及びLol p Ibの検出を示す。図5aは胚胞孔を示す、走査電子顕微鏡により見た完全花粉粒を示している。
【図5b】特異的MAb及びイムノゴールドプローブを利用するほそ麦の成熟花粉におけるLol p Ia及びLol p Ibの検出を示す。図5bはイムノ-ゴールド局在-二重ラベリングによるLol p Ia及びLol p Ibの細胞部位の検出を示す。
【図5c】特異的MAb及びイムノゴールドプローブを利用するほそ麦の成熟花粉におけるLol p Ia及びLol p Ibの検出を示す。図5cは水に30s暴露した際の新鮮な生育花粉の出現を示す(ダークフィールドイルミネーション)。
【図6】20種の草類由来の非変性花粉タンパク質への抗体結合性を示す。レーンA?Eは記載の草類種における花粉タンパク質に対する様々な抗体の結合性を示す。レーンA)IgE、レーンB)FMC-A1抗体、レーンC)FMC-A7抗体、レーンD)LpIX-3A抗体、及びレーンE)LpIX-3A抗体。
【図7-1】勾配SDS-PAGEにより分け、そしてクマジーブリリアントブルー染色(図7a)により、並びに血清IgE(図7b)、モノクローナル抗体FMC-A1(図7c)、モノクローナル抗体FMC-A7(図7d)、抗体LpIX-3A(図7E)及び抗体LpIX-4A(図7F)の結合性により識別化させた20種の草類の可溶性花粉タンパク質を示す。個々のレーンは図6に示す草類に対応している。
【図7-2】勾配SDS-PAGEにより分け、そしてクマジーブリリアントブルー染色(図7a)により、並びに血清IgE(図7b)、モノクローナル抗体FMC-A1(図7c)、モノクローナル抗体FMC-A7(図7d)、抗体LpIX-3A(図7E)及び抗体LpIX-4A(図7F)の結合性により識別化させた20種の草類の可溶性花粉タンパク質を示す。個々のレーンは図6に示す草類に対応している。
【図7-3】勾配SDS-PAGEにより分け、そしてクマジーブリリアントブルー染色(図7a)により、並びに血清IgE(図7b)、モノクローナル抗体FMC-A1(図7c)、モノクローナル抗体FMC-A7(図7d)、抗体LpIX-3A(図7E)及び抗体LpIX-4A(図7F)の結合性により識別化させた20種の草類の可溶性花粉タンパク質を示す。個々のレーンは図6に示す草類に対応している。
【図8】(a)アレルギー患者及び(b)非アレルギー患者に由来のプール血液を利用した、ベクターラムダgtllにおけるクローン19Rのイムノスクリーニングの写真である。
【図9】Lol p Ib.2(クローン19R)、Lol p Ib.1(クローン12R)及びLol p Iaの部分的制限エンドヌクレアーゼ地図を示す図である。
【図10a】図10a及び10bはLol p Ib.2(クローン19R)のcDNA配列及び推定アミノ酸配列を示す。
【図10aI】図10a及び10bはLol p Ib.2(クローン19R)のcDNA配列及び推定アミノ酸配列を示す。
【図10aII】図10a及び10bはLol p Ib.2(クローン19R)のcDNA配列及び推定アミノ酸配列を示す。
【図10b】図10a及び10bはLol p Ib.2(クローン19R)のcDNA配列及び推定アミノ酸配列を示す。
【図10bI】図10a及び10bはLol p Ib.2(クローン19R)のcDNA配列及び推定アミノ酸配列を示す。
【図10bII】図10a及び10bはLol p Ib.2(クローン19R)のcDNA配列及び推定アミノ酸配列を示す。
【図11】Kyte and Doolittle(1982)J.Md.Biol.,157:105-132の方法に基づく、Lol p Ib.2についての推定アミノ酸配列の疎水性プロフィールのグラフ図であり、9個のアミノ酸の枠がある。
【図12a】図12a及び12bはLol p Ib.2(クローン19R)とLol p Ib.1(クローン12R)とのcDNA配列の比較を示す図である。バーはDNA配列の同一性を示すために用いている。最大類似性を示すために翻訳領域内にギャップを挿入した。クローン19Rの中に挿入したギャップ数は14である。クローン12Rの中に挿入したギャップ数は35である。全体の配列同一性は887塩基であった(72.2%)。
【図12aI】図12a及び12bはLol p Ib.2(クローン19R)とLol p Ib.1(クローン12R)とのcDNA配列の比較を示す図である。バーはDNA配列の同一性を示すために用いている。最大類似性を示すために翻訳領域内にギャップを挿入した。クローン19Rの中に挿入したギャップ数は14である。クローン12Rの中に挿入したギャップ数は35である。全体の配列同一性は887塩基であった(72.2%)。
【図12aII】図12a及び12bはLol p Ib.2(クローン19R)とLol p Ib.1(クローン12R)とのcDNA配列の比較を示す図である。バーはDNA配列の同一性を示すために用いている。最大類似性を示すために翻訳領域内にギャップを挿入した。クローン19Rの中に挿入したギャップ数は14である。クローン12Rの中に挿入したギャップ数は35である。全体の配列同一性は887塩基であった(72.2%)。
【図12b】図12a及び12bはLol p Ib.2(クローン19R)とLol p Ib.1(クローン12R)とのcDNA配列の比較を示す図である。バーはDNA配列の同一性を示すために用いている。最大類似性を示すために翻訳領域内にギャップを挿入した。クローン19Rの中に挿入したギャップ数は14である。クローン12Rの中に挿入したギャップ数は35である。全体の配列同一性は887塩基であった(72.2%)。
【図12bI】図12a及び12bはLol p Ib.2(クローン19R)とLol p Ib.1(クローン12R)とのcDNA配列の比較を示す図である。バーはDNA配列の同一性を示すために用いている。最大類似性を示すために翻訳領域内にギャップを挿入した。クローン19Rの中に挿入したギャップ数は14である。クローン12Rの中に挿入したギャップ数は35である。全体の配列同一性は887塩基であった(72.2%)。
【図12bII】図12a及び12bはLol p Ib.2(クローン19R)とLol p Ib.1(クローン12R)とのcDNA配列の比較を示す図である。バーはDNA配列の同一性を示すために用いている。最大類似性を示すために翻訳領域内にギャップを挿入した。クローン19Rの中に挿入したギャップ数は14である。クローン12Rの中に挿入したギャップ数は35である。全体の配列同一性は887塩基であった(72.2%)。
【図13】Lol p Ib.2(クローン19R)とLol p Ib.1(クローン12R)とのアミノ酸配列を比較した図である。最大類似性を示すために翻訳領域内にギャップを挿入した。アミノ酸配列間の同一性を示すためにバーを用い、そして「s」はアミノ酸配列間の類似性を示す。「類似」であるといわれているアミノ酸はA,SとT;DとE;NとQ;RとK;I,L,MとV;及びF,YとWである。クローン19Rの中に挿入したギャップ数は1である。クローン12Rに挿入したギャップ数は4である。この2配列は201個の同一アミノ酸(66.8%)及び35個の「類似」アミノ酸(12.6%)を含んでいた。
【図14】クローン19Rの組織特異性発現を示す。図14(a)はほそ麦花粉、葉、根及び種子由来のクローン19Rに特異的な82塩基のフラグメントでプローブした全RNAのノーザンブロット分析である。図14(b)はエンドウ(Pisum sativum)由来のリボソームDNAでプローブした、ほそ麦花粉、葉、根及び種子由来の全RNAのノーザンドットブロット分析である。全ての組織に関して、図14(a)及び(b)に20μgの全RNAを添加した。
【図15】二次元ウェスタンブロット分析における、アレルギー個体の血清によりプローブされた花粉タンパク質を示す。グループIaは成分1?4;グループIbは成分5?12;グループIVは成分13?15;グループIIは成分16?17;そしてグループIIIは?である。
【図16】ほそ麦花粉タンパク質の二次元ウェスタンブロット分析を示す。全てのケースにおいて、ほそ麦花粉タンパク質を等電点電気泳動(左から右へ)に付し、次いでSDS-PAGE(上から下へ)に付した。(a)全タンパク質を銀染色した二次元ゲル電気泳動分離。二次元ウェスタンブロットを(b)ほそ麦花粉アレルギー患者のプール血清由来の全IgE抗体、(c)MAb FMC-A7、(d)Lol p Ib.1からアフィニティー精製したIgE抗体、及び(e)Lol p Ib.2からアフィニティー精製したIgE抗体でプローブした。
【図17】E.コリY1090上でのラムダgtll Lol p Ib.1(クローン12R)、Lol p Ia(クローン13R)及びLol p Ib.2(クローン19R)のドットブロットスクリーニングを示す。クローン12R、13R及び19R並びに非組換ラムダgtllの2μlのファージストックを、10mMの1PTGで飽和に付したニトロセルロースフィルターで誘発せしめたE.コリY1090の菌叢の上にスポットした。このタンパク質ブロットを次に30人の草類アレルギー患者由来の個々の血清でプローブした。a=Lol p Ib.1、b=Lol p Ia、c=Lol p Ib.2及びd=非組換ラムダgtll。〔<〕=Lol p Ia及びLol p Ib.1よりLol p Ib.2に対してより高レベルで結合したIgEを有する個体。〔1〕=Lol p Iaに特異的なIgEを有する個体。〔2〕=Lol p Ib.1及びLol p Ib.2に特異的なIgEを有する個体。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に示しているアミノ酸配列を有するほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2(19R)をコードする核酸配列を含んで成る単離核酸であって、当該コードされたタンパク質アレルゲンがLol p Ib.2タンパク質アレルゲンに特異的なT細胞を刺激することができることを特徴とする核酸。
【化1】

【化2】

【請求項2】
前記核酸配列が、
(a)請求項1に示している、ほそ麦アレルゲン(Lol p Ib.2)のアミノ酸-25?314、または
(b)請求項1に示している、ほそ麦アレルゲン(Lol p Ib.2)のアミノ酸1?314、をコードする請求項1に記載の核酸。
【請求項3】
請求項1または2に記載の核酸配列を含んで成る発現ベクター。
【請求項4】
請求項1または2に記載の核酸によりコードされるタンパク質またはペプチドを発現するように形質転換された宿主細胞。
【請求項5】
ほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2に特異的なT細胞を刺激することができる単離ほそ麦タンパク質アレルゲン(Lol p Ib.2)の製造方法であって、請求項4に記載の宿主細胞を適宜培地中で培養し、細胞と、前記ほそ麦タンパク質アレルゲン(Lol p Ib.2)を含む培地との混合物を作り;任意に前記混合物を精製して精製ほそ麦タンパク質アレルゲン(Lol p Ib.2)を製造することを含んで成る方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の核酸によってコードされ、且つほそ麦タンパク質アレルゲンLol p Ib.2に特異的なT細胞を刺激することができる、ほそ麦タンパク質アレルゲン(Lol p Ib.2)。
【請求項7】
請求項1に示しているアミノ酸配列から成る請求項6に記載のほそ麦タンパク質アレルゲン(Lol p Ib.2)。
【請求項8】
化学的に合成される、請求項6または7に記載のアレルゲン。
【請求項9】
天然源から単離される請求項6または7に記載のアレルゲン。
【請求項10】
請求項1または2に記載の核酸で形質転換した宿主細胞中で製造される、請求項6または7に記載のアレルゲン。
【請求項11】
ほそ麦花粉アレルゲンに対する哺乳動物の感受性を検出するためのin vitro方法であって、血液成分とタンパク質アレルゲンとの結合のために適した条件下で、前記哺乳動物から得られた血液サンプルを、請求項6?10のいずれか1項に記載の単離タンパク質アレルゲンと組合せて、そしてかかる結合が生じた度合いを決定し;任意にT細胞機能、T細胞増殖、B細胞機能、血中に存在する抗体に対するタンパク質アレルゲンの結合を評価することにより、結合が生じた度合いを決定すること、を含んで成る方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2009-04-08 
出願番号 特願2006-242106(P2006-242106)
審決分類 P 1 41・ 856- Y (C12N)
P 1 41・ 854- Y (C12N)
P 1 41・ 841- Y (C12N)
P 1 41・ 852- Y (C12N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 新留 豊  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 上條 肇
平田 和男
登録日 2008-07-04 
登録番号 特許第4150050号(P4150050)
発明の名称 ほそ麦花粉アレルゲン  
代理人 青木 篤  
代理人 石田 敬  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 中島 勝  
代理人 古賀 哲次  
代理人 福本 積  
代理人 石田 敬  
代理人 福本 積  
代理人 中島 勝  
代理人 中村 和広  
代理人 中村 和広  
代理人 渡邉 陽一  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  

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