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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部無効 特29条の2  H01L
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部無効 2項進歩性  H01L
管理番号 1197410
審判番号 無効2007-800089  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-04-27 
確定日 2009-04-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3736249号「半導体装置の製造に用いる化学機械研磨用水系分散体」の特許無効審判事件についてされた平成20年 6月27日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成20年行ケ第10301号平成20年10月20日決定言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3736249号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

平成12年 1月12日 本件出願
平成17年11月 4日 設定登録(特許第3736249号)
平成19年 4月27日 請求人齋藤智成無効審判請求
平成19年 7月23日 被請求人JSR株式会社訂正請求書(本件訂正請求書による訂正を、以下、「第1訂正」という。)、答弁書提出
平成19年 9月10日 参加人日立化成工業株式会社参加申請、実験成績証明書等提出書提出
平成19年 9月10日 請求人齋藤智成弁駁書提出
平成20年 2月14日 請求人齋藤智成口頭審理陳述要領書提出
平成20年 2月14日 被請求人JSR株式会社口頭審理陳述要領書提出
平成20年 2月14日 口頭審理
平成20年 3月31日 被請求人JSR株式会社上申書提出
平成20年 3月31日 参加人日立化成工業株式会社上申書提出
平成20年 6月27日 審決(以下、当該審決を「一次審決」という。)
平成20年 8月 7日 出訴(平成20年行ケ第10301号)
平成20年 9月30日 被請求人JSR株式会社訂正審判請求(審判2008-390106号)
平成20年10月20日 審決取消決定(平成20年行ケ第10301号の決定)
平成20年11月 6日 被請求人JSR株式会社訂正請求書(本件訂正請求書による訂正を、以下、「本件訂正」という。)、上申書提出
平成20年12月15日 請求人齋藤智成弁駁書提出
平成20年12月15日 参加人日立化成工業株式会社弁駁書提出
平成21年 1月30日 被請求人JSR株式会社答弁書提出


第2 訂正請求について

1 訂正請求の内容
本件無効審判で被請求人JSR株式会社が求めた本件訂正の内容は、平成20年11月6日付けの訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)によると、つぎのとおりのものである。(なお、下線は、訂正箇所を明らかにするために、当審において付したものである。)

ア <訂正事項a>
特許第3736249号(以下「本件特許」という。)における特許請求の範囲を、訂正前の
「【請求項1】 研磨剤、水、及び研磨速度調整成分を含有する化学機械研磨用水系分散体であって、
前記研磨剤が、シリカ、及び無機有機複合粒子のうち少なくとも1種であり、
かつ、前記研磨速度調整成分がマレイン酸イオンであり、該マレイン酸イオンの濃度が0.005?1モル/リットルであることを特徴とする半導体装置の製造に用いる化学機械研磨用水系分散体。
【請求項2】 pHが8?11である請求項1に記載の化学機械研磨用水系分散体。
【請求項3】 前記マレイン酸イオンの対の陽イオンは、カリウムイオンであり、前記研磨速度調整成分はマレイン酸カリウム由来であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化学機械研磨用水系分散体。
【請求項4】 前記無機有機複合粒子がポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の化学機械研磨用水系分散体。
【請求項5】 銅膜、バリアメタル膜、並びに絶縁膜を同1条件により研磨した場合に、上記銅膜の研磨速度(R_(Cu))と上記バリアメタル膜の研磨速度(R_(BM))との比(R_(Cu)/R_(BM))が0.5?2であり、上記銅膜の研磨速度(R_(Cu))と上記絶縁膜の研磨速度(R_(In))との比(R_(Cu)/R_(In))が0.5?2であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の化学機械研磨用水系分散体。」
から、
「【請求項1】
研磨剤、水、研磨速度調整成分、及び酸化剤を含有する化学機械研磨用水系分散体であって、
前記研磨剤が、シリカ、及び無機有機複合粒子のうち少なくとも1種であり、
前記酸化剤が過酸化水素であり、
かつ、前記研磨速度調整成分がマレイン酸イオンであり、該マレイン酸イオンの濃度が0.005?1モル/リットルであり、
配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いることを特徴とする化学機械研磨用水系分散体。
【請求項2】
pHが8?11である請求項1に記載の化学機械研磨用水系分散体。
【請求項3】
前記マレイン酸イオンの対の陽イオンは、カリウムイオンであり、前記研磨速度調整成分はマレイン酸カリウム由来であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化学機械研磨用水系分散体。
【請求項4】
前記無機有機複合粒子がポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の化学機械研磨用水系分散体。」
に訂正する。

なお、平成19年7月23日付けの訂正請求による第1訂正は、登録時の請求項5の削除を伴うものであるところ、平成20年6月27日付けの一次審決中、請求項5の削除に係る訂正を認めた部分については、請求人、及び参加人は出訴していないことから出訴期間を徒過したことにより、また、被請求人は請求項5の削除に係る訂正を認めた部分についての取消訴訟を提起する原告適格を有しないというべきであるから、同審決の送達により、第1訂正のうち、登録時の請求項5を削除した部分は、形式的に確定している。

イ <訂正事項b>
本件特許の明細書(以下「本件特許明細書」という。)の段落【0006】を訂正前の、
「請求項1の発明は、研磨剤、水、及び研磨速度調整成分を含有する化学機械研磨用水系分散体であって、前記研磨剤が、シリカ、及び無機有機複合粒子のうち少なくとも1種であり、かつ、前記研磨速度調整成分がマレイン酸イオンであり、該マレイン酸イオンの濃度が0.005?1モル/リットルであることを特徴とする半導体装置の製造に用いる化学機械研磨用水系分散体である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、pHが8?11であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記マレイン酸イオンの対の陽イオンは、カリウムイオンであり、前記研磨速度調整成分はマレイン酸カリウム由来であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のものにおいて、前記無機有機複合粒子がポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のものにおいて、銅膜、バリアメタル層、及び絶縁膜を同1条件により研磨した場合に、上記銅膜の研磨速度(R_(Cu))と上記バリアメタル層の研磨速度(R_(BM))との比(R_(Cu)/R_(BM))が0.5?2であり、上記銅膜の研磨速度(R_(Cu))と上記絶縁膜の研磨速度(R_(In))との比(R_(Cu)/R_(In))が0.5?2であることを特徴とする。
本発明の化学機械研磨用水系分散体は、ダマシン配線形成工程における、特に二段階目の研磨に用いる水系分散体として有用である。
上記『銅膜』を形成する銅は、純銅ばかりでなく、銅-シリコン、銅-アルミニウム等、95重量%以上の銅を含有する合金をも含むものとする。また、上記『バリアメタル層』を形成する金属は、タンタル、チタン等があり、またそれらの窒化物、酸化物であってもよい。例えば、窒化物として窒化タンタル、窒化チタンがある。また、上記『タンタル、チタン等』は純タンタル、純チタンに限られず、例えばタンタル-ニオブ等のタンタル、チタン等を含有する合金をも含むものとする。更に、上記『窒化タンタル、窒化チタン』も純品に限定はされない。
上記バリアメタル層は、好ましくは、タンタル及び/又は窒化タンタルである。」
から、
「請求項1の発明は、研磨剤、水、研磨速度調整成分、及び酸化剤を含有する化学機械研磨用水系分散体であって、
前記研磨剤が、シリカ、及び無機有機複合粒子のうち少なくとも1種であり、
前記酸化剤が過酸化水素であり、
かつ、前記研磨速度調整成分がマレイン酸イオンであり、該マレイン酸イオンの濃度が0.005?1モル/リットルであり、
配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いることを特徴とする化学機械研磨用水系分散体である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、pHが8?11であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記マレイン酸イオンの対の陽イオンは、カリウムイオンであり、前記研磨速度調整成分はマレイン酸カリウム由来であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のものにおいて、前記無機有機複合粒子がポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなることを特徴とする。
請求項1乃至4のいずれかに記載のものにおいて、銅膜、バリアメタル層、及び絶縁膜を同1条件により研磨した場合に、上記銅膜の研磨速度(R_(Cu))と上記バリアメタル層の研磨速度(R_(BM))との比(R_(Cu)/R_(BM))が0.5?2であり、上記銅膜の研磨速度(R_(Cu))と上記絶縁膜の研磨速度(R_(In))との比(R_(Cu)/R_(In))が0.5?2であることを特徴としてもよい。
本発明の化学機械研磨用水系分散体は、ダマシン配線形成工程における、特に二段階目の研磨に用いる水系分散体として有用である。
上記『銅膜』を形成する銅は、純銅ばかりでなく、銅-シリコン、銅-アルミニウム等、95重量%以上の銅を含有する合金をも含むものとする。また、上記『バリアメタル層』を形成する金属は、タンタル、チタン等があり、またそれらの窒化物、酸化物であってもよい。例えば、窒化物として窒化タンタル、窒化チタンがある。また、上記『タンタル、チタン等』は純タンタル、純チタンに限られず、例えばタンタル-ニオブ等のタンタル、チタン等を含有する合金をも含むものとする。更に、上記『窒化タンタル、窒化チタン』も純品に限定はされない。
上記バリアメタル層は、好ましくは、タンタル及び/又は窒化タンタルである。」
に訂正する。

ウ <訂正事項c>
本件特許明細書の段落【0009】を訂正前の、
「請求項5における銅膜の研磨速度(R_(Cu))とバリアメタル層の研磨速度(R_(BM))との比(R_(Cu)/R_(BM))は、0.5?2であるが、好ましくは0.7?1.5であり、とくに0.8?1.2更には0.9?1.1が好ましい。この比(R_(Cu)/R_(BM))が0.5未満の場合は、銅膜が充分な速度で研磨されず、二段階研磨法における一段階目の研磨において、絶縁膜上の溝又は孔部以外の銅膜の除去が不完全であった場合、二段階目の研磨において不要部の銅膜の除去に長時間を要する。一方、比(R_(Cu)/R_(BM))が2を越える場合、銅膜が過度に研磨され、ディッシング発生の原因となり、良好なダマシン配線の形成ができないと言う問題が生ずる。」
から、
「上記の銅膜の研磨速度(R_(Cu))とバリアメタル層の研磨速度(R_(BM))との比(R_(Cu)/R_(BM))は、0.5?2であるが、好ましくは0.7?1.5であり、とくに0.8?1.2更には0.9?1.1が好ましい。この比(R_(Cu)/R_(BM))が0.5未満の場合は、銅膜が充分な速度で研磨されず、二段階研磨法における一段階目の研磨において、絶縁膜上の溝又は孔部以外の銅膜の除去が不完全であった場合、二段階目の研磨において不要部の銅膜の除去に長時間を要する。一方、比(R_(Cu)/R_(BM))が2を越える場合、銅膜が過度に研磨され、ディッシング発生の原因となり、良好なダマシン配線の形成ができないと言う問題が生ずる。」
に訂正する。

エ <訂正事項d>
本件特許明細書の段落【0010】を訂正前の、
「また、請求項5における銅膜の研磨速度(R_(Cu))と絶縁膜の研磨速度(R_(In))との比(R_(Cu)/R_(In))は、0.5?2であるが、好ましくは0.7?1.5、特に0.8?1.2、更には0.9?1.1であることが好ましい。このR_(Cu)/R_(In)が2を越える場合は、銅膜の研磨が過度となり、この水系分散体を半導体基板上に設けられる被加工膜の研磨に用いた場合に、配線部分においてディッシングを生じ、十分に平坦化された精度の高い仕上げ面とすることができない。一方、R_(Cu)/R_(In)が0.5未満であると、絶縁膜が過度に研磨され、良好なダマシン配線を形成することができない。」
から、
「また、上記の銅膜の研磨速度(R_(Cu))と絶縁膜の研磨速度(R_(In))との比(R_(Cu)/R_(In))は、0.5?2であるが、好ましくは0.7?1.5、特に0.8?1.2、更には0.9?1.1であることが好ましい。このR_(Cu)/R_(In)が2を越える場合は、銅膜の研磨が過度となり、この水系分散体を半導体基板上に設けられる被加工膜の研磨に用いた場合に、配線部分においてディッシングを生じ、十分に平坦化された精度の高い仕上げ面とすることができない。一方、R_(Cu)/R_(In)が0.5未満であると、絶縁膜が過度に研磨され、良好なダマシン配線を形成することができない。」
に訂正する。


2 訂正の可否に対する判断
ア <訂正事項a>について
ア-1 新規事項の有無についての検討
訂正事項aにおいて、請求項1の訂正は、訂正前の請求項1に係る発明特定事項に、「酸化剤」としての「過酸化水素」を追加するとともに、「配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む」という限定を付加するものであるが、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0022】には、「本発明の水系分散体は、酸化剤を含有することが好ましい。酸化剤を含有することで、研磨速度が向上する。」と記載され、段落【0023】には、「前記『酸化剤』として、とくに過酸化水素が好ましい。過酸化水素は、その少なくとも一部が解離し、過酸化水素イオンが生成する。」と記載されていることから、水系分散体に酸化剤としての過酸化水素を加えることは、当初明細書に記載されたものである。
また、当初明細書の段落【0004】には、「充分に平坦化された精度の高い仕上げ面が得られ、良好なダマシン配線を形成することができる、半導体装置の製造において有用な化学機械研磨用水系分散体、及びそれを用いた化学機械研磨方法を提供することを目的とする。」と記載され、段落【0005】には、「半導体基板上に設けられる被加工膜の研磨において、仕上げ面を十分に平坦化することができる化学機械研磨用水系分散体を得ることを目的として検討した結果、銅膜、バリアメタル層、及び絶縁膜を同1条件により研磨した場合に、それらの研磨速度の比が特定の値を取る水系分散体を使用した場合に十分に平坦化された精度の高い仕上げ面が得られることを見出し、本発明に到達した」と記載されていることから、「配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む」と限定することは、当初明細書に記載されたものである。
したがって、上記訂正事項aは、特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定を満たす。
ア-2 訂正の目的、及び実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否についての検討
上記訂正事項aは、水系分散体に「酸化剤」としての「過酸化水素」を追加し、また、「配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む」という限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正事項aは、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し、同条第5項において準用する同法第126条第4項の規定を満たす。

イ <訂正事項b>、<訂正事項c>、<訂正事項d>について
訂正事項b、c、及びdの訂正は、特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】、【0009】、及び【0010】における訂正前の記載を、訂正された特許請求の範囲に整合させるための訂正である。そして、アで言及したとおり、特許請求の範囲の訂正が当初明細書に記載されたものであることから、訂正事項b、c、及びdも同様に当初明細書に記載されたものであって、かつ、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
したがって、上記訂正事項b、c、及びdは、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定を満たす。

ウ 以上のとおり、前記訂正事項a乃至dは、いずれも、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し、同条第5項において準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定を満たすため、当該訂正を認める。


第3 本件特許の請求項1乃至4に係る発明
本件特許の請求項1乃至4に係る発明(以下「本件特許発明1」乃至「本件特許発明4」という。)は、訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
研磨剤、水、研磨速度調整成分、及び酸化剤を含有する化学機械研磨用水系分散体であって、
前記研磨剤が、シリカ、及び無機有機複合粒子のうち少なくとも1種であり、
前記酸化剤が過酸化水素であり、
かつ、前記研磨速度調整成分がマレイン酸イオンであり、該マレイン酸イオンの濃度が0.005?1モル/リットルであり、
配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いることを特徴とする化学機械研磨用水系分散体。
【請求項2】
pHが8?11である請求項1記載の化学機械研磨用水系分散体。
【請求項3】
前記マレイン酸イオンの対の陽イオンは、カリウムイオンであり、前記研磨速度調整成分はマレイン酸カリウム由来であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化学機械研磨用水系分散体。
【請求項4】
前記無機有機複合粒子がポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の化学機械研磨用水系分散体。」


第4 当事者の主張

1 請求人齋藤智成の主張
請求人齋藤智成は、審判請求書において、本件特許の請求項1乃至5に係る発明についての特許を無効とする、との審決を求め、その無効理由として、特許法第29条第1項第3号に係る無効理由1、特許法第29条第2項に係る無効理由2、特許法第29条の2に係る無効理由3、特許法第36条第6項第2号に係る無効理由4、特許法第36条第6項第1号、同第4項に係る無効理由5を主張した。
その後、請求人齋藤智成は、平成20年2月14日付け口頭審理陳述要領書において、無効審判請求時に主張していた理由のうち特許法第29条第1項第3号に係る無効理由1は、平成19年7月23日付けの訂正請求による第1訂正が認められる場合には撤回するとしていたが、当該第1訂正は本件訂正により取り下げられることとなった。
また、特許法第36条第6項第2号に係る無効理由4は、登録時の請求項5に関する研磨速度比に対するものであったが、研磨速度比に関する登録時の請求項5は、削除されており、他の請求項1ないし4には、研磨速度比に関する限定はなされていない。
したがって、特許法第36条第6項第2号に係る無効理由4は、存在しないこととなった。
以上のとおり、請求人齋藤智成の主張する無効理由は、審判請求書、平成19年9月10日付けの弁駁書、平成20年12月15日付け弁駁書の記載を総合すると、概略以下の無効理由1乃至3、及び5のとおりである。

(1)無効理由1
審判請求書において、請求人齋藤智成は、請求項1ないし3に係る発明は、本件出願時に頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反し、その特許は無効とされるべきものであると主張していたが、平成20年12月15日付け弁駁書において、訂正発明1は、甲第5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反し、その特許は無効とされるべきものであるとの主張を追加した。なお、甲第5号証は、後記するように、平成19年9月10日付けの弁駁書において追加されたものである。
(2)無効理由2
本件特許発明1?4は、本件出願前に頒布された甲第1号証、甲第2号証および甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、その特許は無効とされるべきである。
(3)無効理由3
本件特許発明1ないし3は、甲第3号証に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許発明1ないし3の発明者が上記甲第3号証に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本件出願時に、その出願人が上記甲第3号証の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定に該当し、その特許は無効とされるべきである。
(4)無効理由5
本件特許発明1?4は、研磨対象及びpHの範囲が特定されていないから、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではなく、発明の詳細な説明には本件特許発明1?4を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第6項第1号、および同第4項の規定に違反し、その特許は無効とされるべきである。

また、証拠方法として以下の甲第1号証乃至甲第5号証が提出されている。
なお、甲第5号証は、平成19年9月10日付けの弁駁書において追加されたものであるが、特許の訂正が請求されたことに起因して必要となったものである。

甲第1号証 特開平11-80708号公報
甲第2号証 特開平11-114808号公報
甲第3号証 特願平11-374487号(特開2001-189296号公報)
甲第4号証 深水克郎編、「Cu配線技術の最新の展開」、株式会社リアライズ社、平成10年5月30日発行、p.117?119
甲第5号証 特開平10-67986号公報


2 参加人日立化成工業株式会社の主張
参加人日立化成工業株式会社は、参加申請書とともに実験成績証明書等提出書を提出し、銅、バリアメタル膜および絶縁膜のそれぞれの研磨速度比に、化学機械研磨用水系分散体のpHの範囲が大きな影響を与える旨主張していた。
その後、平成20年12月15日付け弁駁書において、請求人齋藤智成の主張する無効理由3、無効理由5についての主張を行った。


3 被請求人JSR株式会社の主張
被請求人JSR株式会社は、本件特許発明1?4は、甲第1号証、または甲第5号証に記載された発明ではなく、甲第1号証、甲第2号証、および甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲第3号証に記載された発明と同一ではなく、本件特許の特許請求の範囲の記載は、発明の詳細な説明に記載したものであり、本件特許の発明の詳細な説明には本件特許発明1?4を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている旨主張している。
また、証拠方法として以下の乙第1号証乃至乙第3号証を提出している。

乙第1号証 精密工学会「プラナリゼーション加工/CMP応用技術専門委員会」編、「CMP用語辞典」、初版、グローバルネット株式会社、平成12年5月29日、p.97、p.136
乙第2号証 平成20年1月24日作成 実験成績証明書
乙第3号証 平成20年3月17日作成 実験成績証明書


第5 無効理由についての検討

1 無効理由1、及び無効理由2について
(1)甲第1号証(特開平11-80708号公報)の記載事項
甲第1号証には、次の事項が記載されている。
ア 請求項1
「(1)水、(2)研磨材、(3)硝酸、亜硝酸、塩酸、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、ホウ酸、過ホウ酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ケイ酸、有機酸、およびそれらの水素酸のイオン、またはそれらの混合物、からなる群から選ばれる、少なくとも1種類の陰イオン、(4)アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、およびアルカリ土類金属イオンからなる群から選ばれる、少なくとも1種類の陽イオン。を含んでなる研磨用組成物であって、(4)の陽イオンの総量が0.001?0.15モル/リットルであることを特徴とする研磨用組成物。」
イ 請求項3
「研磨材が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、窒化ケイ素、酸化ジルコニウム、および二酸化マンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種類の研磨材である、請求項1または2のいずれかに記載の研磨用組成物。」
ウ 段落【0002】
「さらに詳しくは、本発明は、従来よりCMP技術(詳細後記)が適用されている、層間絶縁膜および素子分離のための絶縁膜である二酸化ケイ素膜の研磨において、大きな研磨速度が得られると同時に、ウェーハ内の均一性が優れた研磨表面を形成させることができ、高度なデバイス形成技術に適用可能な研磨用組成物に関するものである。」
エ 段落【0025】
「<陰イオン>本発明の研磨用組成物は、硝酸、・・・、有機酸、およびそれらの水素酸のイオン、またはそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種類の陰イオンを含んでなる。これらの陰イオンは、水に溶解して前記の特定の陰イオンを放出する酸化合物、すなわち、酸、またはその塩、を溶解することにより研磨用組成物中に生成させるのが普通である。・・・」
オ 段落【0026】
「用いる酸化合物は、本発明の効果を損なわないものであれば任意のものを用いることができる。具体的には、(1)硝酸、・・・、または有機酸、例えばカルボン酸(例えば、ギ酸、・・・、マレイン酸、・・・、または吉草酸)、(2)(1)の酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、またはカルシウム塩(3)(1)の酸の内、塩基度が2以上の酸の水素塩、が挙げられる。これらの中で、硝酸、・・・、マレイン酸、・・・、プロピオン酸、およびこれらの酸のアンモニウム塩ならびにカリウム塩、あるいはホウ酸、・・・、マレイン酸、・・・、またはコハク酸と、アンモニウムイオンまたはカリウムイオンとからなる水素酸塩、が特に好ましい。これらの酸化合物は任意の割合で併用することもできる。」
カ 段落【0041】?【0042】
「【発明の実施の形態】
<研磨用組成物の内容および調製>まず、研磨材としてフュームドシリカ(一次粒子径50nm、二次粒子径200nm)を撹拌機を用いて水に分散させて、研磨材濃度15重量%のスラリーを調製した。次いでこのスラリーに表1に記載した濃度または含有量となるように酸化合物およびアンモニア(塩基性化合物)を添加して実施例1?8および比較例1?2の試料を調製した。
ここで、酸濃度とは、研磨用組成物中に溶存している酸化合物の濃度をモル濃度で表したものであり、アンモニア含有量とは研磨用組成物中に溶存しているアンモニアの総量をモル濃度で表したものである。」
キ 表1には、実施例7として、マレイン酸を0.0086モル/リットル含有するものが記載されている。

上記摘記事項ア?カ、および認定事項キから、甲第1号証には、
「研磨剤、水、マレイン酸イオンを含有する研磨用組成物であって、
前記研磨剤が、シリカであり、
かつ、マレイン酸の濃度が0.0086モル/リットルであり、
デバイス形成技術に適用可能なCMP研磨用組成物。」の発明(以下「甲第1号証に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。


(2)甲第5号証(特開平10-67986号公報)の記載事項
甲第5号証には、次の事項が記載されている。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】 (a) 酸化剤、(b) 研磨剤、及び(c) フッ化物含有添加剤を含んでなることを特徴とする水系の化学的・機械的研磨用スラリー。
・・・
【請求項14】 研磨材が金属酸化物である請求項1に記載の化学的・機械的研磨用スラリー。
【請求項15】 金属酸化物研磨材が、アルミナ、セリア、ゲルマニア、シリカ、チタニア、ジルコニア、及びそれらの混合物からなる群より選択された請求項14に記載の化学的・機械的研磨用スラリー。
・・・
【請求項22】 有機系酸、有機系酸の塩、及びそれらの混合物から選択された配合物をさらに含んでなる請求項1に記載の化学的・機械的研磨用スラリー。
・・・」
イ 段落【0003】?【0004】
「・・・。金属バイアスと接触は、一般に、タングステンを充填され、一般に、タングステン金属層のような金属層をSiO_(2)に接着するため、窒化チタン(TiN)及び/又はチタンのような接着層を使用する。接触レベルにおいて、接着層は、タングステンとSiO_(2)が反応するのを防ぐ拡散バリアとして作用する。
・・・典型的なプロセスにおいて、バイアスホールは、中間レベル誘電体(ILD)を介して相互接続ライン又は半導体基板までエッチングされる。次いで窒化チタン又はチタンのような薄い接着層が中間レベル誘電体を覆って形成され、エッチングされたバイアスホールの中に導かれる。次いでタングステン膜が、接着層とバイアスの中にブランケット堆積される。堆積は、バイアスホールがタングステンで満たされるまで継続される。最後に余剰の金属が化学的・機械的研磨(CMP)によって除去され、金属バイアスを形成する。・・・」
ウ 段落【0011】
「本発明のもう1つの課題は、チタン接着層に関係するバイアス(vias)を露出されるため、中間層誘電体の上に化学的・機械的研磨用スラリーを用いる方法である。・・・」
エ 段落【0014】?【0015】
「本発明の化学的・機械的研磨用スラリーは、高いチタン(Ti)研磨速度を有すると同時に、高いタングステン(W)と窒化チタン(TiN)の研磨速度を有することが見出されている。さらに、この化学的・機械的研磨用スラリーは、誘電体絶縁層については望ましい低い研磨速度を呈する。・・・
本化学的・機械的研磨用スラリーに有用な酸化剤は、金属層をその酸化物又はイオンに酸化させることを助長するために、化学的・機械的研磨用スラリーに混和される。例えば、本発明において、酸化剤は金属層をその酸化物に酸化する、即ち、例えばチタンを酸化チタンに、タングステンを酸化タングステンに、銅を酸化銅に酸化させるために使用される。本発明の酸化剤は、研磨用スラリーに混和されたときに有用であり、チタン、窒化チタン、タンタル、銅、タングステン、及びそれらの種々の混合物や組み合わせなどの金属や金属ベースの成分を研磨するために、機械的に個々の酸化層を除去して研磨するのに有用である。」
オ 段落【0016】
「本発明の化学的・機械的研磨用スラリーの中に広範囲な酸化剤が使用されることができる。適切な酸化剤は、フッ化物含有添加剤と適合性のあるものであり、酸化性金属塩、酸化性金属錯体、非金属系酸の例えば過酢酸、過ヨウ素酸、鉄塩の例えば硝酸塩、硫酸塩、EDTA、シトレート、フェリシアン化カリウム、過酸化水素、重クロム酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、臭素酸カリウム、三酸化バナジウムなど、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第四アンモニウム塩、ホスホニウム塩、又はその他の過酸化物、塩素酸塩、過塩素酸塩、硝酸塩、過マンガン酸塩、過硫酸塩のカチオン塩、及びそれらの混合物が挙げられる。」
カ 段落【0018】
「本発明の化学的・機械的研磨用スラリーは、有効量のフッ化物含有添加剤を含む。フッ化物含有添加剤は、研磨用スラリーに混和された場合、従来技術の化学的・機械的研磨用スラリーに比較して、チタンが研磨される速度を改良する。フッ化物含有添加剤のフッ化物成分は、フッ化物が存在せずに生成した酸化物層よりも容易に研磨される水和酸化層をチタンに生成させると考えられる。」
キ 段落【0024】
「化学的・機械的研磨用スラリーに使用されるフッ化物含有添加剤の量と種類は、場合により、選択される酸化剤と、研磨される金属の組み合わせによって決まることがある。化学的・機械的研磨用スラリーのpHは約1.0?5.0に維持することが望ましく、これはタングステン腐食の問題が約5.0より高いスラリーpHで生じ得るからである。使用される酸化剤が硝酸第二鉄の場合、化学的・機械的研磨用スラリーのpHを約1.5?約3.0の範囲に維持することが好ましい。選択される酸化剤にかかわらず、タングステンの腐食と浸蝕を防ぐためには、研磨用スラリーのpHを約5.0未満に維持することが好ましい。ここで、タングステン以外の金属の例えば銅を研磨するために化学的・機械的研磨用スラリーが使用される場合は、化学的・機械的研磨用スラリーのpHが5.0より高いことが望ましいことがある。」
ク 段落【0033】?【0034】
「本発明の化学的・機械的研磨用スラリーの中に、酸化物の研磨速度の選択性を高めるために、広範囲な通常の有機系酸、無機系酸の塩、及びそれらの混合物が含められることができ、例えば、一官能価酸、二官能価酸、ヒドロキシル/カルボキシレート酸、キレート化剤の酸、非キレート化剤の酸、及びそれらの塩が挙げられる。好ましくは、有機系酸は、酢酸、アジピン酸、酪酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、クエン酸、グルタル酸、グリコール酸、ギ酸、乳酸、ラウリン酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、ミリスチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、フタル酸、プロピオン酸、ピルビン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、バレアリン酸、及びそれらの塩を含む誘導体の群より選択される。
使用する場合、有機系酸又は塩は、最終的な化学的・機械的研磨用スラリー中に、化学的・機械的研磨用スラリーの安定性に悪影響を及ぼすことなく酸化物選択性を高めるのに十分な量で、単独で又は別な有機系酸又は塩と組み合わせて存在すべきである。そのようなものとして、有機系酸は、一般に約0.05?15重量%、好ましくは0.5?5.0重量%の範囲でスラリー中に存在する。有機系酸とその塩を含む化学的・機械的研磨用スラリーの例は、米国特許出願第08/644509号に開示されており、この記載事項は本願でも参考にして取り入れられている。」
ケ 段落【0041】
「・・・また、本研磨用スラリーは、チタンや窒化チタンなどの現状の集積回路技術で下地層やバリヤ膜として使用されるその他の薄膜材料に対して制御された研磨選択性を提供するために、効果的に使用されることができる。・・・」
コ ここで、上記摘記事項キから、タングステンの代わりに銅を用いることができることが理解できる。

上記摘記事項ア?ケ、及び認定事項コから、甲第5号証には、
「研磨剤、水、マレイン酸、酸化剤、及びフッ化物含有添加剤を含有する化学的・機械的研磨用スラリーであって、
前記研磨剤が、シリカであり、
前記酸化剤が過酸化水素であり、
かつ、マレイン酸の濃度が約0.05?15重量%であり、
バイアスホールが、中間レベル誘電体(ILD)を介して相互接続ライン又は半導体基板までエッチングされ、次いで窒化チタン又はチタンのような薄い接着層が中間レベル誘電体を覆って形成され、エッチングされたバイアスホールの中に導かれ、次いでタングステン膜が、接着層とバイアスの中にブランケット堆積され、堆積は、バイアスホールがタングステンで満たされるまで継続され、最後に余剰の金属が化学的・機械的研磨(CMP)によって除去され、金属バイアスを形成する工程を含む半導体の製造に用いる化学的・機械的研磨用スラリー。」の発明(以下「甲第5号証に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。


(3)本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明との対比
本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件特許発明1は、化学機械研磨用水系分散体が酸化剤としての過酸化水素を含んでいるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、酸化剤の含有について不明な点、及び、本件特許発明1は、配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いる化学機械研磨用水系分散体であるのに対し、甲第1号証に記載された発明は、半導体装置の製造に用いるものであるものの、ダマシン配線形成工程を含む半導体装置の製造に用いるものではない点、で相違している。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできず、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものとはいえない。


(4)本件特許発明2、3と甲第1号証に記載された発明との対比
本件特許発明2ないし3は請求項1を引用したものである。
したがって、甲第1号証に記載された発明であるとすることができない本件特許発明1を引用する本件特許発明2ないし3についても同様の理由により、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものとはいえない。


(5)本件特許発明1と甲第5号証に記載された発明との対比
本件特許発明1と甲第5号証に記載された発明とを対比すると、バイアスホールが配線の一種であることは明らかであるから、甲第5号証に記載された発明の「バイアスホールがタングステンで満たされるまで継続され、・・・金属バイアスを形成する工程」は、「配線材が金属であるダマシン配線の形成工程」という限りで、本件特許発明1の「配線材が銅であるダマシン配線の形成工程」と共通する。
甲第5号証に記載された発明の「スラリー」は、本件特許発明1の「水系分散体」に相当する。
甲第5号証に記載された発明の「窒化チタン又はチタンのような薄い接着層」は、本件特許発明1の「バリアメタル」に、甲第5号証に記載された発明の「中間レベル誘電体」は、本件特許発明1の「絶縁膜」に、それぞれ相当し、
甲第5号証に記載された発明のマレイン酸の濃度「約0.05?15重量%」は、「0.005?1モル/リットル」と重なる部分があることは明らかであるから、両者は、
「研磨剤、水、研磨速度調整成分、及び酸化剤を含有する化学機械研磨用水系分散体であって、
前記研磨剤が、シリカであり、
前記酸化剤が過酸化水素であり、
かつ、前記研磨速度調整成分がマレイン酸イオンであり、該マレイン酸イオンの濃度が0.005?1モル/リットルであり、
配線材が金属であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いる化学機械研磨用水系分散体。」で一致しているものの、以下の点で相違している。
<相違点1>
本件特許発明1では、化学機械研磨用水系分散体に、フッ化物含有添加剤を含んでいないのに対して、甲第5号証に記載された発明では、さらに「フッ化物含有添加剤」を含んでいる点。
<相違点2>
ダマシン配線の配線材としての金属について、本件特許発明1では、「銅」としているのに対して、甲第5号証に記載された発明では、タングステンとしている点。
上記相違点について検討すると、甲第5号証に記載された発明が、フッ化物含有添加剤を含むことを要件としているところ、本件特許明細書には、フッ化物含有添加剤に関する記載が一切存在しないことから、本件特許発明1は、フッ化物含有添加剤を必要としないものであることは明らかである。
したがって、本件特許発明1を甲第5号証に記載された発明であるとすることはできない。
よって、本件特許発明1は甲第5号証に記載された発明であるとすることはできず、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものとはいえない。


(6)本件特許発明1に対する特許法第29条第2項について
ア 対比
本件特許発明1と甲第5号証に記載された発明とを対比すると、前記(5)に記載されたとおりの一致点を有し、かつ、相違点を有している。
イ 当審の判断
<相違点1>について
甲第5号証に記載された発明において、当該化学的・機械的研磨用スラリーがフッ化物含有添加剤を含んでいるのは、前記(2)のカに摘記したように、チタンが研磨される速度を改良するためである。してみると、バリアメタルとしてチタンを用いない場合には、甲第5号証に記載された発明における化学的・機械的研磨用スラリーにおいて、フッ化物含有添加剤を含めないようにすることは、当業者が容易になし得たものである。
<相違点2>について
前記(2)のキに摘記されたように、甲第5号証に記載された発明では、研磨対象物として、タングステン以外に銅を研磨する場合についても示唆されている。そして、配線材として銅を用いることは例示するまでもなく周知の事項であるから、甲第5号証に記載された発明において、当該化学的・機械的研磨用スラリーを、配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いることは、当業者が容易になし得たものである。
なお、被請求人は、平成20年11月6日付けの上申書において、「本件特許発明1の構成によって、銅膜、バリアメタルおよび絶縁膜である被加工膜を適度な速度で同程度に研磨することができ、スクラッチやディッシングを生じさせることがなく、配線材が銅である良好なダマシン配線の形成ができる等の効果(本件特許明細書の実施例、段落【0047】等)が発揮されることも、甲第5号証に記載された発明からは到底予測できない。」(第8頁下から2行目?第9頁第3行。)と主張している。
しかしながら、本件特許明細書の表1には、バリアメタル膜がTa、TaNの場合の実施例が示されており、また、被請求人JSR株式会社の提出した平成20年3月31日付け上申書に添付された乙第3号証(平成20年3月17日作成の実験成績証明書)の表1には、実験4、5として、バリアメタル膜がTi、TiNの場合の実験結果が記載されている。
ここで、研磨剤及び研磨速度調整成分の条件において上記乙第3号証に示された実験4と共通している、本件特許明細書の表1の実施例1、7、9についてみてみると、酸化剤である過酸化水素の含有量は0.1または3重量部となっており、含有量において実施例7は、実施例1又は9と比較して1桁違う値となっている。
さらに、上記乙第3号証に示された実験4の結果によれば、過酸化水素(酸化剤)の含有量は0.01重量部となっており、上記実施例1、7、9に比べ1桁乃至2桁違う値となっている。
また、上記乙第3号証に記載されている、実験4と実験5、すなわち、バリアメタル膜がTiの場合と、TiNの場合で、水系分散体のpHを前者が9.5、後者が7.5と変更しており、なおかつ、Cu/絶縁膜の研磨速度比は、実験4の0.60と実験5の1.36で2倍近く値が異なっている。
また、参加人日立化成工業株式会社の提出した平成20年3月31日付け上申書に添付された平成20年3月28日報告の実験成績証明書における追試11において、水系分散体のpHが9.5の場合で、Cu/TaNの研磨速度比が0.12、Cu/Tiの研磨速度比が0.72、Cu/TiNの研磨速度比が0.27、追試12において、水系分散体のpHが3.0の場合で、Cu/TaNの研磨速度比が0.49、Cu/Tiの研磨速度比が36.30、Cu/TiNの研磨速度比が4.03と、バリアメタル膜の材質によって研磨速度比が大きく変化している。
さらに、上記実験成績証明書の実験結果から、同じ材質のバリアメタル膜であっても、pHが変われば研磨速度比が大きく変化していることが理解できる。
以上の点から、銅膜、バリアメタルおよび絶縁膜である被加工膜を適度な速度で同程度に研磨するという効果を満たすためには、本件特許発明1において特定されている成分以外に、バリアメタル膜の材質如何によって、化学機械研磨用水系分散体に含まれる酸化剤の濃度や、該水系分散体のpHを調整する必要があることは十分窺える。
一方、参加人日立化成工業株式会社の提出した平成19年9月10日付け実験成績証明書等提出書によれば、研磨装置のテーブル、ヘッドの回転数により、研磨速度比が2倍近く変化することが示され、また、被請求人JSR株式会社の提出した乙第3号証の実験5では、Cu/絶縁膜の研磨速度比1.36が本件特許発明1で特定された範囲の上限値1.5に近い事を参酌すれば、ある特定の組成の化学機械研磨用水系分散体が、研磨条件によって、大きく異なる事が十分窺える。
してみると、本件特許発明1が、研磨対象であるバリアメタル膜の材質如何によって、あるいは、研磨条件によって、銅膜、バリアメタルおよび絶縁膜である被加工膜を適度な速度で同程度に研磨するという効果を満たさないことも十分あり得るものであるから、本件特許発明1によってでは、必ずしも銅膜、バリアメタルおよび絶縁膜である被加工膜を適度な速度で同程度に研磨するという効果を奏するものであるとすることはできない。
したがって、被請求人の上記主張は採用することができない。


(7)本件特許発明2に対する特許法第29条第2項について
ア 対比
本件特許発明2と甲第5号証に記載された発明とを対比すると、両者は、(5)において前記したとおりの一致点、及び相違点を有し、さらに以下の点で相違している。
<相違点3>
本件特許発明2は、化学機械研磨用水系分散体のpHを8?11と特定しているのに対して、甲第5号証に記載された発明では、スラリーのpHについて特定していない点。
イ 当審の判断
<相違点1>、及び<相違点2>について
相違点1、及び相違点2についての当審の判断は、(6)で前記したとおりである。
<相違点3>について
甲第5号証の摘記事項キには、「タングステン以外の金属の例えば銅を研磨するために化学的・機械的研磨用スラリーが使用される場合は、化学的・機械的研磨用スラリーのpHが5.0より高いことが望ましいことがある。」の記載があり、このことからすれば、配線材として銅を用いれば、機械的研磨用スラリーのpHを5より大きくすることが示唆されている。そして、一般に、スラリーのpHをどのくらいに設定するかは、目標とする研磨状態を得るために、適宜変更すべきものであり、また、当該pHを8?11と特定することの臨界的意義も格別見当たらない。
そうすると、甲第5号証に記載された発明において、そのスラリーをpH8?11とすることは、当業者が容易になし得たものであると考えざるを得ない。


(8)本件特許発明3に対する特許法第29条第2項について
ア 対比
本件特許発明3と甲第5号証に記載された発明とを対比すると、両者は、(5)及び(7)において前記したとおりの一致点、及び相違点を有し、さらに以下の相違点を有している。
<相違点4>
本件特許発明3は、マレイン酸イオンの対の陽イオンは、カリウムイオンであり、研磨速度調整成分はマレイン酸カリウム由来であると特定しているのに対して、甲第5号証に記載された発明では、研磨速度調整成分のマレイン酸の対の陽イオンについて、不明な点。
イ 当審の判断
<相違点1>、<相違点2>、及び<相違点3>について
相違点1ないし相違点3についての当審の判断は、(6)及び(7)で前記したとおりである。
<相違点4>について
甲第5号証の摘記事項クには、「本発明の化学的・機械的研磨用スラリーの中に、酸化物の研磨速度の選択性を高めるために、広範囲な通常の有機系酸、無機系酸の塩、及びそれらの混合物が含められることができ、」の記載があることから、マレイン酸を塩の形で用いることが示唆されている。そして、一般に、化学機械研磨用水系分散体に加える塩の元素としてカリウムを用いることは、甲第5号証の段落【0032】に記載されている(段落【0032】には、「有用な無機系塩には、・・・カリウム塩・・・が挙げられる。」の記載がある。)ように周知の事項であることからすれば、甲第5号証に記載された発明において、マレイン酸を塩の形で用い、かつ、その塩の陽イオンをカリウムイオンとすることは、当業者が容易になし得たものである。


(9)本件特許発明4に対する特許法第29条第2項について
ア 対比
本件特許発明4と甲第5号証に記載された発明とを対比すると、両者は、(5)、(7)及び(8)において前記したとおりの一致点、及び相違点を有し、さらに以下の相違点を有している。
<相違点5>
研磨剤に関して、本件特許発明4は、ポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなる無機有機複合粒子としているのに対して、甲第5号証に記載された発明では、単に、シリカである点。
イ 当審の判断
<相違点1>、<相違点2>、<相違点3>、及び<相違点4>について
相違点1ないし相違点4についての当審の判断は、(6)、(7)、及び(8)で前記したとおりである。
<相違点5>について
研磨剤として、ポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなる無機有機複合粒子は、甲第2号証に記載されているように周知の事項であり(特許請求の範囲の請求項1、4、及び5を参照。)、この周知の無機有機複合粒子からなる研磨剤を甲第5号証に記載された発明に適用できないとする阻害要因は特段存在せず、また、上記周知の無機有機複合粒子からなる研磨剤を用いたことによる効果も予想を超える格別のものが存在しないことからすれば、甲第5号証に記載された発明において、研磨剤として、シリカに代えて、ポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなる無機有機複合粒子を用いることは、当業者が容易になし得たものである。


(10)特許法第29条第2項に関するまとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし4は、甲第5号証に記載された発明に、甲第2号証に記載された周知の事項を採用することにより、当業者が容易になし得たものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


2 無効理由3について
(1)甲第3号証(特願平11-374487号(特開2001-189296号公報))の記載事項
甲第3号証には、次の事項が記載されている。
ア 請求項1
「基板上に形成された絶縁膜に凹部を形成する工程と、該絶縁膜上にバリア金属膜を形成する工程と、前記凹部を埋め込むように全面に配線用金属膜を形成する工程と、この基板表面を化学的機械的研磨法により研磨する工程を有する金属配線形成方法において、
前記研磨工程は、配線用金属膜が前記凹部以外の表面上に部分的に残るように研磨する第1の研磨工程と、バリア金属に対する配線用金属の研磨速度比が1以上3以下となる研磨用スラリーを用いて前記凹部以外の絶縁膜表面がほぼ完全に露出するまで研磨する第2の研磨工程を有することを特徴とする金属配線形成方法。」
イ 請求項7
「第2の研磨工程では、シリカ研磨材と下記一般式(2)又は(3)で示されるカルボン酸を含有する研磨用スラリーを用いて研磨を行う請求項1?6のいずれか1項に記載の金属配線形成方法。
・・・」
ウ 請求項19
「前記配線用金属膜が銅又は銅合金膜である請求項1?18のいずれか1項に記載の金属配線形成方法。」
エ 段落【0045】?【0046】
「次に、第1及び第2の研磨方法の第2の研磨工程に好適な研磨用スラリーについて説明する。
本発明の金属配線形成方法において、第2の研磨工程に用いる研磨用スラリーは、第1の研磨方法では研磨速度比(配線用金属/バリア金属)が1以上3以下、第2の研磨方法では1以下に制御できるものを用いる。また、第2の研磨工程に用いる研磨用スラリーは、第1及び第2の研磨方法のいずれにおいても、バリア金属に対する絶縁膜の研磨速度比が0.01以上0.5以下に制御できるものであることが好ましい。」
オ 段落【0048】?【0049】
「このような研磨用スラリーとしては2つのタイプがあり、まず、第1のスラリーについて説明する。
第1のスラリーは、シリカ研磨材と、上記(2)式又は(3)式で示されるカルボン酸(以下『多価カルボン酸』という)と、水を含む。また、バリア金属膜上に形成された配線用金属膜の研磨を促進するためには、酸化剤を含有させることが好ましい。」
カ 段落【0053】
「第1のスラリーに用いられる多価カルボン酸としては、1分子中に2以上のカルボキシル基を有するカルボン酸であり、例えば、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルタル酸、クエン酸、及びマレイン酸、又はこれらの塩、或いはこれらの2種以上からなる混合物を用いることできる。」
キ 段落【0054】
「上記多価カルボン酸の含有量は、タンタル系金属膜の研磨速度向上の点から、スラリー組成物全量に対して0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。研磨用スラリーのチクソトロピック性の発生を抑える点から、1質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましい。」
ク 段落【0078】
「研磨用スラリーのpHは、研磨速度や腐食、スラリー粘度、研磨剤の分散安定性等の点から、pH4以上が好ましく、pH5以上がより好ましく、またpH9以下が好ましく、pH8以下がより好ましい。」
ケ 段落【0080】?【0081】
「研磨用スラリーには、バリア金属膜上に形成される配線用金属膜の研磨を促進するために酸化剤を添加することが好ましい。但し、第2の研磨方法においては、第1の研磨工程で凹部以外のバリア金属膜上の配線用金属膜が完全に除去された場合、第2の研磨工程で用いる研磨用スラリーに酸化剤を含有させなくてもよい。
酸化剤としては、導電性金属膜の種類や研磨精度、研磨能率を考慮して適宜、公知の水溶性の酸化剤から選択して用いることができる。例えば、重金属イオンのコンタミネーションを起こさないものとして、H_(2)O_(2)、Na_(2)O_(2)、Ba_(2)O_(2)、(C_(6)H_(5)C)_(2)O_(2)等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物を挙げることができる。なかでも、金属成分を含有せず、有害な複生成物を発生しない過酸化水素(H_(2)O_(2))が好ましい。・・・」
コ 段落【0107】
「(実施例1?6:第2の研磨方法、アルカノールアミン含有スラリー)表1に示すように、住友化学工業社製θアルミナ(AKP-G008)を5質量%、関東化学社製クエン酸を1.5質量%、関東化学社製H_(2)O_(2)を2.5質量%、関東化学社製トリエタノールアミンを0.01?10質量%含有し、KOHによりpHを5.5に調整した研磨用スラリー(アルカノールアミン含有スラリー)を調製し、・・・」
サ 上記摘記事項コの「KOHによりpHを5.5に調整した研磨用スラリー」という記載から、陽イオンは、カリウムイオンであるものと認められる。

よって、上記摘記事項ア?コ、および認定事項サから、甲第3号証には、
「研磨材、水、マレイン酸、及び酸化剤を含有するpH5?9の化学的機械的研磨法用スラリーであって、
前記研磨材が、シリカであり、
前記酸化剤が過酸化水素であり、
かつ、前記マレイン酸の含有量が0.01?1質量%であり、
基板上に形成された絶縁膜に凹部を形成する工程と、該絶縁膜上にバリア金属膜を形成する工程と、前記凹部を埋め込むように全面に銅からなる配線用金属膜を形成する工程と、この基板表面を化学的機械的研磨法により研磨する工程を有する金属配線形成方法に用いる化学的機械的研磨法用スラリー。」の発明(以下「甲第3号証に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。


(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、後者の「研磨材」、及び「基板上に形成された絶縁膜に凹部を形成する工程と、該絶縁膜上にバリア金属膜を形成する工程と、前記凹部を埋め込むように全面に銅からなる配線用金属膜を形成する工程と、この基板表面を化学的機械的研磨法により研磨する工程を有する金属配線形成方法」は、前者の「研磨剤」、及び「配線材が銅であるダマシン配線の形成工程」に相当し、後者の「化学的機械的研磨法用スラリー」は、前者の「化学機械研磨用水系分散体」に相当する。
また、甲第3号証に記載された発明のマレイン酸を0.01?1質量%含有した化学的機械的研磨法用スラリーにおけるマレイン酸イオン濃度は、マレイン酸の式量が116.1g/モルなので、スラリーの密度を1.03kg/リットル(経験値)とすると、およそ0.000887モル/リットル?0.0887モル/リットルと計算されるから、本件特許発明で特定される範囲である0.005?1モル/リットルに一部含まれるものと認められる。
したがって、本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明とは、
「研磨剤、水、研磨速度調整成分、及び酸化剤を含有する化学機械研磨用水系分散体であって、
前記研磨剤が、シリカであり、
前記酸化剤が過酸化水素であり、
かつ、前記研磨速度調整成分がマレイン酸イオンであり、該マレイン酸イオンの濃度が0.005?1モル/リットルであり、
配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いる化学機械研磨用水系分散体。」である点で一致し、相違する点はない。
なお、被請求人は、平成20年11月6日付けの上申書において、「甲第3号証に記載された第1のスラリーは、シリカ研磨材および多価カルボン酸を含有する研磨用スラリーを用いることによって、従来の研磨用スラリーを用いた場合よりも、バリア金属膜と配線用金属膜との間の研磨速度差を小さくし、こうすることで良好な埋め込み配線(ダマシン配線)を形成する、という技術的思想に基づいているところ、本件特許明細書に示されるように、『シリカ、マレイン酸および水を含むスラリー』を用いて研磨を行うと、マレイン酸を含まないスラリーを用いた場合と比べて、バリア金属膜と配線用金属膜との間の研磨速度差はむしろ大きくなってしまうのだから、甲第3号証において、第1のスラリーのうち、『シリカ研磨材と、マレイン酸と、水とを含有する、配線材が銅であるダマシン配線の形成工程用の研磨用スラリー』は、最高裁判決で言うような具体的・客観的なものとして構成された、完成された発明とは言えない。」(第24頁第6行?第16行。)と主張している。
しかしながら、本件特許発明1が甲第3号証に記載されていることは前記のとおりであることから、特段の発明特定事項を付加することなく、一方を完成された発明であるとし、他方を完成された発明でないとすることは、合理性がないと言わざるを得ない。
したがって、上記被請求人の主張は採用することができない。
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、本件特許発明1の発明者が上記甲第3号証に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本件特許の出願時に、その出願人が上記甲第3号証に記載された出願の出願人と同一であるとも認められないので、本件特許発明1は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。


(3)本件特許発明2について
ア 対比
本件特許発明2は、本件特許発明1の化学機械研磨用水系分散体であって、さらに水系分散体の「pHが8?11である」と特定するものであるが、甲第3号証に記載された発明においても、pHを5?9とするものであるから、pHにおいて重なっている。したがって、本件特許発明2は、甲第3号証に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、本件特許発明2の発明者が上記甲第3号証に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本件特許の出願時に、その出願人が上記甲第3号証に記載された出願の出願人と同一であるとも認められないので、本件特許発明2は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。


(4)本件特許発明3について
ア 対比
本件特許発明3と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、以下の点で一応相違し、その余の点で一致する。

<相違点6> 本件特許発明3は、「マレイン酸イオンの対の陽イオンは、カリウムイオンであり、研磨速度調整成分はマレイン酸カリウム由来である」のに対し、甲第3号証に記載された発明は、陽イオンの種類、研磨速度調整成分の由来について不明な点。

イ 当審の判断
上記<相違点6>について検討する。
甲第3号証には、化学的機械的研磨法用スラリーに含まれる多価カルボン酸として「マレイン酸、又はこれらの塩」(第5の2(1)の摘記事項カ)と記載されているが、カリウム塩と特定されてはいない。
しかしながら、マレイン酸のカリウム塩が周知であること、前記第5の2(1)の認定事項サから、上記スラリーがカリウムイオンを含んでいることを鑑みれば、上記スラリーを調整する際にカリウムを用い、塩をマレイン酸カリウムとして、研磨速度調整成分であるマレイン酸イオンを、マレイン酸カリウム由来と特定することは、具体化手段における微差にすぎない。
そして、当該微差により格別の効果を奏するものでもない。
よって、本件特許発明3は、甲第3号証に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、本件特許発明3の発明者が上記甲第3号証に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本件特許の出願時に、その出願人が上記甲第3号証に記載された出願の出願人と同一であるとも認められないので、本件特許発明3は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。


(5)特許法第29条の2に関するまとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3は、甲第3号証に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、本件特許発明1ないし3の発明者が上記甲第3号証に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本件特許の出願時に、その出願人が上記甲第3号証に記載された出願の出願人と同一であるとも認められないので、本件特許発明1ないし3は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。


3 無効理由5について
無効理由5は、特許法第36条第6項第1号違反と、同第4項違反を主張している。そして、特許法第36条第6項第1号の規定と、第36条第4項の規定とは別の規定であるので、両者を別々に検討する。

(1)特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項第1号は、特許発明が発明の詳細な説明に記載したものであることを要件とするものである。
本件特許発明1ないし4は、第3に記載されたとおりのものである。ここで、特許発明1は、「化学機械研磨用水系分散体」が(1)「シリカ、及び無機有機複合粒子のうち少なくとも1種である研磨剤」、(2)「水」、(3)「濃度が0.005?1モルリットルであるマレイン酸イオンからなる研磨速度調整成分」、(4)「過酸化水素からなる酸化剤」を含み、(5)「配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いる」ことを要件とするものである。
ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、(1)研磨剤としてシリカ及び無機有機複合粒子のうちの少なくとも1種を用いることは、段落【0011】、【0028】?【0032】に記載され、(2)水を含むことは、段落【0028】?【0032】に記載され、(3)研磨速度調整成分として濃度が0.005?1モルリットルであるマレイン酸イオンを用いることは、段落【0018】?【0020】、【0033】に記載され、(4)酸化剤としての過酸化水素を用いることは、段落【0022】?【0023】、【0033】に記載され、(5)配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いることは、段落【0004】、【0009】?【0010】に記載されている。
すなわち、本件特許発明1が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0004】に記載されたとおりの「充分に平坦化された精度の高い仕上げ面が得られ、良好なダマシン配線を形成することができる、半導体装置の製造において有用な化学機械研磨用水系分散体を提供する」という発明の目的を達成するかどうか、あるいは、段落【0047】に記載されたとおりの「被加工膜を適度な速度で同程度に研磨することができ」るという効果を明確に奏するかどうかはともかく、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
なお、参加人日立化成工業株式会社は、平成20年12月15日付け審判事件弁駁書において、「本件の訂正された請求項1に係る発明は、銅膜、バリアメタル膜、ならびに絶縁膜の研磨速度比に関する規定が削除されており、銅膜、バリアメタル膜、ならびに絶縁膜との間の研磨速度の比が問題とはならないとしても、本件の訂正された請求項1に係る化学機械研磨用水系分散体の発明が、銅膜、バリアメタル膜、ならびに絶縁膜である被加工膜を適度な速度で同程度に研磨することにより、スクラッチやディッシングを生じさせることなく、配線材が銅であるダマシン配線の形成を行うことができるというものである以上(審判事件答弁書4頁3?7行、本件明細書段落番号『0047』)、本件発明の目的を達成するためには、単に研磨できるというだけでは足りず、銅膜、バリアメタル膜および絶縁膜に対して、ほぼ同様な研磨速度を有していることが必要であることに変わりはない。」(第10頁下から3行目?第11頁第7行。)と主張している。
しかしながら、本件特許発明1は、第5の1の(6)のイ、<相違点2>について、で言及したように、本件特許発明1によってでは、必ずしも銅膜、バリアメタル膜、及び絶縁膜である被加工膜を適度な速度で同程度に研磨するという効果を奏するものではないことから、本件特許発明1を、銅膜、バリアメタル膜、及び絶縁膜に対して、ほぼ同様な研磨速度を有することが必要であるとすることはできない。
したがって、参加人の上記主張は採用できない。
特許発明2は、特許発明1に加え、(6)化学機械研磨用水系分散体の「pHが8?11」と特定するものであるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、(6)水系分散体のpHを8?11とすることは、段落【0025】、【0033】、【0039】の表1に記載されている。
したがって、本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
特許発明3は、特許発明1又は2に加え、(7)マレイン酸イオンの「対の陽イオンは、カリウムイオンであり、研磨速度調整成分はマレイン酸カリウム由来である」と特定するものであるが、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、(7)マレイン酸イオンの対の陽イオンをカリウムイオンとすることは、段落【0033】、【0039】の表1に記載されている。
したがって、本件特許発明3は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
特許発明4は、特許発明1又は2又は3に加え、(8)無機有機複合粒子が「ポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなる」ものであると特定するものであるが、本件特許明細書において、(8)無機有機複合粒子をポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなるものとすることは、段落【0030】?【0032】、【0039】の表1に記載されている。
したがって、本件特許発明4は、発明の詳細な説明に記載されたものである。


(2)特許法第36条第4項について
特許法第36条第4項は、いわゆる実施可能要件である。
前記第5の3(1)に記載したように、本件特許発明1は、配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いる化学機械研磨用水系分散体である。
ここで、本件特許発明1が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0004】に記載されたとおりの「充分に平坦化された精度の高い仕上げ面が得られ、良好なダマシン配線を形成することができる、半導体装置の製造において有用な化学機械研磨用水系分散体を提供する」という発明の目的を達成するかどうか、あるいは、段落【0047】に記載されたとおりの「被加工膜を適度な速度で同程度に研磨することができ」るという効果を奏するかどうかはともかく、本件特許発明1に記載されたとおりの化学機械研磨用水系分散体を得ることは明らかに可能である。
また、本件特許発明2ないし4についても、同様に、本件特許発明2ないし4に記載されたとおりの化学機械研磨用水系分散体を得ることが可能なことも明らかである。
したがって、本件特許明細書は、当業者が、本件特許発明1ないし4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものである。


(3)まとめ
以上のとおりであるから、特許法第36条第6項第1号違反、及び同第4項違反を理由として本件特許を無効とする無効理由5は成り立たない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし4は、甲第5号証に記載された発明、及び甲第2号証に記載された周知の事項から当業者が容易になし得た発明であり、
本件特許発明1ないし3は、甲第3号証に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、本件特許発明1ないし3の発明者が上記甲第3号証に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本件特許の出願時に、その出願人が上記甲第3号証に記載された発明の出願人と同一であるとも認められないので、本件特許発明1ないし3は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置の製造に用いる化学機械研磨用水系分散体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨剤、水、研磨速度調整成分、及び酸化剤を含有する化学機械研磨用水系分散体であって、
前記研磨剤が、シリカ、及び無機有機複合粒子のうち少なくとも1種であり、
前記酸化剤が過酸化水素であり、
かつ、前記研磨速度調整成分がマレイン酸イオンであり、該マレイン酸イオンの濃度が0.005?1モル/リットルであり、
配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いることを特徴とする化学機械研磨用水系分散体。
【請求項2】
pHが8?11である請求項1に記載の化学機械研磨用水系分散体。
【請求項3】
前記マレイン酸イオンの対の陽イオンは、カリウムイオンであり、前記研磨速度調整成分はマレイン酸カリウム由来であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化学機械研磨用水系分散体。
【請求項4】
前記無機有機複合粒子がポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の化学機械研磨用水系分散体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置の製造に用いる化学機械研磨用水系分散体(以下、「化学機械研磨用水系分散体」という。また、「水系分散体」と略記することもある。)に関する。更に詳しくは、本発明は、半導体基板上に設けられる各種の被加工膜の研磨において、それらを効率よく研磨することができ、且つ十分に平坦化された精度の高い仕上げ面を得ることができる化学機械研磨用水系分散体に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の製造における最近の技術として、プロセスウェハ上の絶縁膜に孔若しくは溝などを形成した後、硬質の金属等よりなるバリアメタル層を形成し、次いで、タングステン、アルミニウム、及び銅などの配線材を埋め込んだ後、絶縁膜の表面より上の配線材及びバリアメタル層を化学機械研磨によって除去することによって配線を形成する手法がある。この手法により形成される配線をダマシン配線という。
上記ダマシン配線を形成する際の研磨においては、以下の問題点がある。
銅等の比較的柔らかい配線材は研磨され易く、配線部分の幅が広い場合、配線の中央部が過度に研磨される、いわゆるディッシングを生じ易く、平坦な仕上げ面が得られないことがある。また、スクラッチの発生等により配線の断線が生じる場合もある。
また、誘電率の低い多孔質の絶縁膜等では、研磨に用いる水系分散体のpHが低い場合には充分な研磨速度が得られず、逆にpHが高い場合には過度に研磨されてしまう。また、いずれの場合にも、スクラッチの発生を抑制することは容易ではない。
一方、タンタル等の硬度の高い金属からなるバリアメタル層を効率よく研磨することは容易ではない。
【0003】
通常、ウェハの化学機械研磨では、他段階の研磨工程を要する。もっとも一般的には、一段目で銅などの配線材を主に研磨し、二段階目で主にバリアメタル層を研磨する二段階研磨法が採られている。この二段階研磨について、いくつかの方法が提案されており、それに用いられる多くの水系分散体が提案されている。第一の方法としては、一段目の研磨において銅が完全に除去されるまで研磨した後、二段目研磨でバリアメタル層だけを除去しようとするものがある。この場合、一段目研磨において少なからず発生するディッシングを、主にバリアメタル層を研磨する二段階目の研磨では修正できないという問題があり、良好なダマシン配線を形成することが難しい場合がある。
また、第二の方法として、一段目の研磨において、銅の除去を、配線部にディッシングが発生しない程度に不完全に行い、二段目の研磨において、残存の銅と共にバリアメタル層を除去する方法が提案されている。この方法によると、仕上げ面の平滑性が不十分となる場合や、研磨終了に多大な時間を要し、さらにコスト高になると言った問題が生じる場合があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の問題を解決するものである。すなわち、充分に平坦化された精度の高い仕上げ面が得られ、良好なダマシン配線を形成することができる、半導体装置の製造において有用な化学機械研磨用水系分散体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
半導体基板上に設けられる被加工膜の研磨において、仕上げ面を十分に平坦化することができる化学機械研磨用水系分散体を得ることを目的として検討した。
【0006】
請求項1の発明は、研磨剤、水、研磨速度調整成分、及び酸化剤を含有する化学機械研磨用水系分散体であって、
前記研磨剤が、シリカ、及び無機有機複合粒子のうち少なくとも1種であり、
前記酸化剤が過酸化水素であり、
かつ、前記研磨速度調整成分がマレイン酸イオンであり、該マレイン酸イオンの濃度が0.005?1モル/リットルであり、
配線材が銅であるダマシン配線の形成工程を含む半導体装置の製造に用いることを特徴とする化学機械研磨用水系分散体である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、pHが8?11であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記マレイン酸イオンの対の陽イオンは、カリウムイオンであり、前記研磨速度調整成分はマレイン酸カリウム由来であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のものにおいて、前記無機有機複合粒子がポリメチルメタクリレート系粒子の表面にシリカ粒子が付着してなることを特徴とする。
請求項1乃至4のいずれかに記載のものにおいて、銅膜、バリアメタル層、及び絶縁膜を同一条件により研磨した場合に、上記銅膜の研磨速度(R_(Cu))と上記バリアメタル層の研磨速度(R_(BM))との比(R_(Cu)/R_(BM))が0.5?2であり、上記銅膜の研磨速度(R_(Cu))と上記絶縁膜の研磨速度(R_(In))との比(R_(Cu)/R_(In))が0.5?2であることを特徴としてもよい。
本発明の化学機械研磨用水系分散体は、ダマシン配線形成工程における、特に二段階目の研磨に用いる水系分散体として有用である。
上記「銅膜」を形成する銅は、純銅ばかりでなく、銅-シリコン、銅-アルミニウム等、95重量%以上の銅を含有する合金をも含むものとする。また、上記「バリアメタル層」を形成する金属は、タンタル、チタン等があり、またそれらの窒化物、酸化物であってもよい。例えば、窒化物として窒化タンタル、窒化チタンがある。また、上記「タンタル、チタン等」は純タンタル、純チタンに限られず、例えばタンタル-ニオブ等のタンタル、チタン等を含有する合金をも含むものとする。更に、上記「窒化タンタル、窒化チタン」も純品に限定はされない。
上記バリアメタル層は、好ましくは、タンタル及び/又は窒化タンタルである。
【0007】
上記絶縁膜としては、SiO_(2)膜の他、超LSIの性能向上を目的とした低誘電率の層間絶縁膜をも含むものである。低誘電率化絶縁膜としては、フッ素添加SiO_(2)(誘電率;約3.3?3.5)、ポリイミド系樹脂(誘電率;約2.4?3.6、日立化成工業株式会社製、商品名「PIQ」、Allied Signal社製、商品名「FLARE」等)、ベンゾシクロブテン(誘電率;約2.7、Dow Chemical社製、商品名「BCB」等)、水素含有SOG(誘電率;約2.5?3.5)及び有機SOG(誘電率;約2.9、日立化成工業株式会社製、商品名「HSGR7」等)などからなる層間絶縁膜が挙げられる。
【0008】
上記「同一条件」とは、特定の型式の研磨装置を使用し、その定盤及びヘッドの回転数、研磨圧力、研磨時間、用いる研磨パッドの種類、並びに水系分散体の単位時間当たりの供給量を同一にすることを意味する。
これらの条件は、同一条件で比較する限りにおいて適宜の条件を採用できるが、実際の研磨条件またはそれに近い条件を採用することが望ましい。例えば、定盤回転数としては30?120rpm、好ましくは40?100rpm、ヘッド回転数としては30?120rpm、好ましくは40?100rpm、定盤回転数/ヘッド回転数の比としては0.5?2、好ましくは0.7?1.5、研磨圧力としては100?500g/cm^(2)、好ましくは200?350g/cm^(2)、水系分散体供給速度としては50?300ml/分、好ましくは100?200ml/分の条件を採用することができる。
研磨速度の上記「比」は、銅膜、バリアメタル層、並びに絶縁膜を、上記の同一条件のもとに別個に研磨し、各々の研磨速度の値から算出することができる。この研磨は、銅膜、バリアメタル層、又は絶縁膜を備えるウェハを用いて行うことができる。
【0009】
上記の銅膜の研磨速度(R_(Cu))とバリアメタル層の研磨速度(R_(BM))との比(R_(Cu)/R_(BM))は、0.5?2であるが、好ましくは0.7?1.5であり、とくに0.8?1.2更には0.9?1.1が好ましい。この比(R_(Cu)/R_(BM))が0.5未満の場合は、銅膜が充分な速度で研磨されず、二段階研磨法における一段階目の研磨において、絶縁膜上の溝又は孔部以外の銅膜の除去が不完全であった場合、二段階目の研磨において不要部の銅膜の除去に長時間を要する。一方、比(R_(Cu)/R_(BM))が2を越える場合、銅膜が過度に研磨され、ディッシング発生の原因となり、良好なダマシン配線の形成ができないと言う問題が生ずる。
【0010】
また、上記の銅膜の研磨速度(R_(Cu))と絶縁膜の研磨速度(R_(In))との比(R_(Cu)/R_(In))は、0.5?2であるが、好ましくは0.7?1.5、特に0.8?1.2、更には0.9?1.1であることが好ましい。このR_(Cu)/R_(In)が2を越える場合は、銅膜の研磨が過度となり、この水系分散体を半導体基板上に設けられる被加工膜の研磨に用いた場合に、配線部分においてディッシングを生じ、十分に平坦化された精度の高い仕上げ面とすることができない。一方、R_(Cu)/R_(In)が0.5未満であると、絶縁膜が過度に研磨され、良好なダマシン配線を形成することができない。
【0011】
本発明は、研磨剤として、シリカ及び無機有機複合粒子のうちの少なくとも1種を使用し得ることを明らかにするものである。
【0013】
無機有機複合粒子は、無機粒子と有機粒子とが、研磨時、容易に分離しない程度に一体に形成されておればよく、その種類、構成等は特に限定されない。
この複合粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の重合体粒子の存在下、アルコキシシラン、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド等を重縮合させ、重合体粒子の少なくとも表面に、ポリシロキサン等が結合されてなるものを使用することができる。なお、生成する重縮合体は、重合体粒子が有する官能基に直接結合されていてもよいし、シランカップリング剤等を介して結合されていてもよい。
また、この重縮合体は必ずしも重合体粒子に化学的に結合される必要はなく、特に、三次元的に成長した重縮合体が、重合体粒子の表面に物理的に保持されている状態であってもよい。また、アルコキシシラン等に代えてシリカ粒子、アルミナ粒子等を用いることもできる。これらはポリシロキサン等と絡み合って保持されていてもよいし、それらが有するヒドロキシル基等の官能基により重合体粒子に化学的に結合されていてもよい。
【0014】
複合粒子としては、符号の異なるゼータ電位を有する無機粒子と有機粒子とを含む水分散体において、これら粒子が静電力により結合されてなるものを使用することもできる。
重合体粒子のゼータ電位は、全pH域、或いは低pH域を除く広範な領域に渡って負であることが多いが、カルボキシル基、スルホン酸基等を有する重合体粒子とすることによって、より確実に負のゼータ電位を有する重合体粒子とすることができる。また、アミノ基等を有する重合体粒子とすることにより、特定のpH域において正のゼータ電位を有する重合体粒子とすることもできる。
一方、無機粒子のゼータ電位はpH依存性が高く、この電位が0となる等電点を有し、その前後でゼータ電位の符号が逆転する。
従って、特定の無機粒子と有機粒子とを組み合わせ、それらのゼータ電位が逆符号となるpH域で混合することによって、静電力により無機粒子と有機粒子とを一体に複合化することができる。また、混合時、ゼータ電位が同符号であっても、その後、pHを変化させ、ゼータ電位を逆符号とすることによって、無機粒子と有機粒子とを一体とすることもできる。
【0015】
更に、この複合粒子としては、このように静電力により一体に複合化された粒子の存在下、前記のようにアルコキシシラン、アルミニウムアルコキシド、チタンアルコキシド等を重縮合させ、この粒子の少なくとも表面に、更にポリシロキサン等が結合されて複合化されてなるものを使用することもできる。
【0016】
砥粒の平均粒子径は0.01?3μmであることが好ましい。この平均粒子径が0.01μm未満では、十分に研磨速度の大きい水系分散体を得ることができないことがある。一方、砥粒の平均粒子径が3μmを越える場合は、砥粒が沈降し、分離してしまって、安定な水系分散体とすることが容易ではない。この平均粒子径は0.05?1.0μm、更には0.1?0.7μmであることがより好ましい。この範囲の平均粒子径を有する砥粒であれば、十分な研磨速度を有し、且つ粒子の沈降、及び分離を生ずることのない、安定なCMP用水系分散体とすることができる。なお、この平均粒子径は、透過型電子顕微鏡によって観察することにより測定することができる。
【0017】
また、砥粒の含有量は、水系分散体を100重量部(以下、「部」と略記する。)とした場合に、0.05?30部とすることができ、好ましくは0.1?20部、特に0.5?10部、更には1?7部とすることが好ましい。砥粒の含有量が0.05部未満では研磨速度が不十分となる。一方、30部を越えて含有させた場合はコスト高になるとともに、水系分散体の安定性が低下するため好ましくない。
これら砥粒として機能するシリカ及び複合粒子の形状は球状であることが好ましい。この球状とは、鋭角部分を有さない略球形のものをも意味し、必ずしも真球に近いものである必要はない。球状の砥粒を用いることにより、十分な速度で研磨することができるとともに、被研磨面におけるスクラッチ等の発生も抑えられる。
【0018】
本発明の水系分散体は、研磨速度調整成分を含有することにより、上記の特定の研磨速度比を達成する。
そのような研磨速度調整成分は、マレイン酸である。
【0019】
なお、上記マレイン酸を水系分散体に添加した場合、解離部が解離していても解離していなくてもよい。また、マレイン酸の解離部は1価であってもそれ以上でもよい。また、解離部の対の陽イオンは、水素イオン、その他任意的に加えられる添加剤由来の陽イオン、例えばアンモニウムイオン、カリウムイオン等、いずれであってもよい。
さらに、上記マレイン酸は、マレイン酸イオン(マレイン酸塩)として添加されたものでも良く、この場合マレイン酸イオンは、解離部は1価であってもそれ以上でもよい。また、解離部の対の陽イオンは、水素イオン、その他任意的に加えられる添加剤由来の陽イオン、例えばアンモニウムイオン、カリウムイオン等、いずれであってもよい。
【0020】
マレイン酸は、水系分散体中で実質的に全量が解離してマレイン酸イオンと対の陽イオンが生成する。ここで対の陽イオンは、水素イオン、その他任意的に加えられる添加剤由来の陽イオン、例えばアンモニウムイオン、カリウムイオン等、いずれであってもよいが、好ましくはカリウムイオンである。
マレイン酸イオンの濃度は、0.005?1モル/リットルであり、とくに0.01?0.5モル/リットルが好ましい。このマレイン酸イオンの濃度範囲を実現するためには、マレイン酸の添加量として、0.06?11.6質量%、とくに0.1?5.8質量%とすればよい。
マレイン酸イオンの濃度が0.005モル/リットル未満であると、とくに銅膜およびバリアメタルの研磨速度が不十分である場合がある。一方、マレイン酸イオンの濃度が1モル/リットルを越える場合は、被研磨面が腐食することがあり、精度の高い良好な仕上げ面が得られない場合がある。なお、このマレイン酸イオンの濃度はイオンクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0021】
対の陽イオン等として生成するカリウムイオンも研磨速度を向上させる作用を有し、より研磨速度の大きい水系分散体とすることができる。カリウムイオンの濃度は、適宜の濃度を採用できるが、好ましくは0.01?2モル/リットル、更に好ましくは0.02?1モル/リットルである。この場合、カリウムイオン濃度が0.01モル/リットル未満だと研磨速度の向上効果が十分に発揮できない場合があり、一方2モル/リットルを越えるとスクラッチが発生しやすくなる場合がある。
上記マレイン酸イオンおよびカリウムイオンを生成させるには、マレイン酸カリウムを用いることがもっとも便利で有効である。カリウムイオンとしては、マレイン酸カリウムから生成するものの他に、水系分散体のpH調整に使用される水酸化カリウム等から生成するもの、その他任意的に加えられる添加剤由来のものが含まれていてもよい。
【0022】
本発明の水系分散体は、酸化剤を含有することが好ましい。酸化剤を含有することで、研磨速度が向上する。
酸化剤としては、広範囲な酸化剤が使用されうるが、適切な酸化剤には、酸化性金属塩、酸化性金属錯体、非金属系酸化剤の例えば過酢酸や過ヨウ素酸、鉄系イオンの例えば二トレート、スルフェート、EDTA、シトレート、フェリシアン化カリウムなど、アルミニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第4アンモニウム塩、ホスホニウム塩、あるいは過酸化物のその他のカチオン塩、塩素酸塩、化塩素酸塩、硝酸塩、化マンガン酸塩、過硫酸塩、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
前記「酸化剤」として、とくに過酸化水素が好ましい。過酸化水素は、その少なくとも一部が解離し、過酸化水素イオンが生成する。なお、「過酸化水素」とは、分子状過酸化水素の他、上記過酸化水素イオンをも含むものを意味する。
上記における過酸化水素の濃度は、0.01?5.0質量%の範囲で任意に設定しうるが、0.05から3.0質量%とすることがさらに好ましく、0.07?1.0質量%とすることが特に好ましい。過酸化水素の濃度が0.01質量%未満であると、十分な速度で研磨することができない場合があり、一方5.0質量%を越えると、被研磨面が腐食する場合がある。
【0024】
本発明の水系分散体には、過酸化水素の酸化剤としての機能を促進する作用を有し、研磨速度をより向上させることができる多価金属イオンを含有させることもできる。
この多価金属イオンとしては、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、錫、アンチモン、タンタル、タングステン、鉛及びセリウム等の金属のイオンが挙げられる。これらは1種のみであってもよいし、2種以上の多価金属イオンが併存していてもよい。
多価金属イオンの含有量は、水系分散体に対して3000ppm以下とすることができ、特に10?2000ppmとすることができる。
この多価金属イオンは、多価金属元素を含む硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の塩或いは錯体を水系媒体に配合して生成させることができ、多価金属元素の酸化物を配合して生成させることもできる。また、水系媒体に配合され、1価の金属イオンが生成する化合物であっても、このイオンが酸化剤により多価金属イオンになるものを使用することもできる。各種の塩及び錯体のうちでは、研磨速度を向上させる作用に特に優れる硝酸鉄が好ましい。
【0025】
本発明の水系分散体のpHは8?11が好ましく、8.5?10.5、特に9?10の範囲に調整することが好ましい。このpHの調整は硝酸、硫酸等の酸、或いは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア等のアルカリによって行うことができる。水系分散体のpHが8未満であると、銅等の被加工膜に対するエッチングの作用が強いため、ディッシング及びエロージョン等が発生しやすくなる場合がある。一方、このpHが11を越えると、絶縁膜が過度に研磨され、良好な配線パターンが得られないとの問題が生じる場合がある。
【0026】
本発明の水系分散体は、2段階研磨における2段目の研磨において有用である。更に一段目の研磨においてR_(Cu)/R_(BM)が20以上、特に40以上、更に50以上の水系分散体を使用した場合の2段目の研磨において特に有用である。
本発明の水系分散体を、一段階研磨法で用いた場合、及び/又は、2段階研磨法の一段目で用いた場合、研磨に時間を要し、又、多量な水系分散体を必要とするため、経済的に不利となる場合がある。
本発明の水系分散体を2段階研磨法の2段目に用いるとき、1段目の研磨に用いる水系分散体のR_(Cu)/R_(BM)が20未満の場合、一段目研磨に多大な時間を要し、又、多量な水系分散体を必要とするため、好ましくない。
【0027】
半導体装置の被加工膜及びバリアメタル層の研磨は市販の化学機械研磨装置(例えば、LGP510、LGP552(以上、ラップマスターSFT株式会社製)、EPO-113、EPO-222(以上、株式会社荏原製作所製)、Mirra(アプライドマテリアルズ社製)、AVANTI-472(アイペック社製)等)を用いて行なうことができる。
この研磨において、研磨後、被研磨面に残留する研磨剤は除去することが好ましい。この研磨剤の除去は通常の洗浄方法によって行うことができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明する。
[1]砥粒を含む水分散体の調製
(1)無機粒子を含む水分散体の調製
▲1▼ヒュームドシリカ又はヒュームドアルミナを含む水分散体の調製
容量2リットルのポリエチレン製の瓶に、100gのヒュームドシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名「アエロジル#90」)、ヒュームドアルミナ粒子(デグサ社製、商品名「Aluminium Oxide C」)を入れた後、イオン交換水を投入して全量を1000gとした。次いで、超音波分散機により粒子を分散させ、10部のヒュームドシリカ粒子、又はヒュームドアルミナ粒子を含む水分散体を調製した。
【0029】
▲2▼コロイダルシリカを含む水分散体の調製
容量2リットルのフラスコに、25質量%アンモニア水70g、イオン交換水40g、エタノール175g及びテトラエトキシシラン21gを投入し、180rpmで撹拌しながら60℃に昇温し、この温度のまま2時間撹拌を継続した後、冷却し、平均粒径が0.23μmのコロイダルシリカ/アルコール分散体を得た。次いで、エバポレータにより、この分散体に80℃の温度でイオン交換水を添加しながらアルコール分を除去する操作を数回実施し、分散体中のアルコールを除き、固形分濃度が8質量%の水分散体を得た。
【0030】
(2)複合粒子を含む水分散体の調製
▲1▼重合体粒子を含む水分散体
メチルメタクリレート90部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名「NKエステルM-90G」、#400)5部、4-ビニルピリジン5部、アゾ系重合開始剤(和光純薬株式会社製、商品名「V50」)2部、及びイオン交換水400部を、容量2リットルのフラスコに投入し、窒素ガス雰囲気下、攪拌しながら70℃に昇温し、6時間重合させた。これによりアミノ基の陽イオン及びポリエチレングリコール鎖を有する官能基を有し、平均粒子径0.15μmのポリメチルメタクリレート系粒子を含む水分散体を得た。尚、重合収率は95%であった。
【0031】
▲2▼複合粒子を含む水分散体
▲1▼において得られたポリメチルメタクリレート系粒子を10重量%含む水分散体100部を、容量2リットルのフラスコに投入し、メチルトリメトキシシラン1部を添加し、40℃で2時間攪拌した。その後、硝酸によりpHを2に調整して水分散体(a)を得た。また、コロイダルシリカ(日産化学株式会社製、商品名「スノーテックスO」)を10質量%含む水分散体のpHを水酸化カリウムにより8に調整し、水分散体(b)を得た。水分散体(a)に含まれるポリメチルメタクリレート系粒子のゼータ電位は+17mV、水分散体(b)に含まれるシリカ粒子のゼータ電位は-40mVであった。
【0032】
その後、水分散体(a)100部に水分散体(b)50部を2時間かけて徐々に添加、混合し、2時間攪拌して、ポリメチルメタクリレート系粒子にシリカ粒子が付着した予備粒子を含む水分散体を得た。次いで、この水分散体に、ビニルトリエトキシシラン2部を添加し、1時間攪拌した後、テトラエトキシシラン1部を添加し、60℃に昇温し、3時間攪拌を継続した後、冷却することにより、複合粒子を含む水系分散体を得た。この複合粒子の平均粒子径は180nmであり、ポリメチルメタクリレート系粒子の表面の80%にシリカ粒子が付着していた。
【0033】
[2]化学機械研磨用水系分散体の調製
実施例1
[1]、(1)、▲1▼で調製したヒュームドシリカを含む水分散体を、ヒュームドシリカが5部となるように、また、マレイン酸カリウム及び過酸化水素を、それぞれ1質量%、0.1質量%の濃度となるようにイオン交換水に配合し、水酸化カリウムによりpHを9.5に調整してCMP用水系分散体を得た。
【0034】
実施例2?9
砥粒の種類及び混合量、並びにマレイン酸カリウム及び過酸化水素の混合量を表1のようにした他は、実施例1と同様にして特定のpHを有するCMP用水系分散体を得た。
【0035】
比較例1
研磨速度調整成分を添加しなかった他は、実施例1と同様にして特定のpHを有するCMP用水系分散体を得た。
比較例2?6
砥粒、研磨速度調整成分の種類及び混合量、並びに過酸化水素の混合量を表2のように変更した他は、実施例1と同様にして特定のpHを有するCMP用水系分散体を得た。ただし比較例5においては、水酸化カリウムのかわりに硝酸を用いて特定のpHに調整した。
【0036】
以上、実施例1?9及び比較例1?6の化学機械研磨用水系分散体を使用し、8インチ銅膜付きウェーハ、8インチタンタル膜付きウェーハ、8インチ窒化タンタル膜付きウェーハ及び8インチプラズマTEOS膜付きウェーハを研磨した。結果を表1及び表2に示す。
【0037】
研磨装置としてラップマスター社製の型式「LGP-510」を使用し、以下の条件で各ウェーハに設けられた膜を研磨し、下記の式によって研磨速度を算出した。
テーブル回転数;50rpm、ヘッド回転数;50rpm、研磨圧力;300g/cm^(2)、水系分散体供給速度;100ml/分、研磨時間;1分、研磨パッド;ロデール・ニッタ株式会社製、品番IC1000/SUBA400の2層構造
研磨速度(Å/分)=(研磨前の各膜の厚さ-研磨後の各膜の厚さ)/研磨時間
【0038】
尚、各膜の厚さは、抵抗率測定機(NPS社製、型式「Σ-5」)により直流4探針法でシート抵抗を測定し、このシート抵抗値と銅、タンタル、窒化タンタル又はプラズマTEOSの抵抗率から下記の式によって算出した。
各膜の厚さ(Å)=[シート抵抗値(Ω/cm^(2))×銅、タンタル、窒化タンタル又はプラズマTEOSの抵抗率(Ω/cm)]×10^(8)
また、銅膜のスクラッチの評価は、暗室にてスポットライトを照射し、目視にてスクラッチの有無を確認した。
絶縁膜のスクラッチの評価は、微分干渉顕微鏡により写真撮影を行い、100μm×100μmの視野でのスクラッチを数えた。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表1の結果によれば、マレイン酸カリウムが1?3部、過酸化水素が0.1?3部混合された実施例1?9の水系分散体では、銅膜とタンタル膜及び/又は窒化タンタル膜との研磨速度の比(R_(Cu)/R_(BM))、並びに銅膜と絶縁体との研磨速度の比(R_(Cu)/R_(In))は、いずれも0.5?2の範囲内であった。特に研磨剤に複合粒子、又は複合粒子とヒュームドシリカの混合物を用いた実施例4?6は、R_(Cu)/R_(BM)及びR_(Cu)/R_(in)が0.8?1.2の範囲にあり、又銅膜及び絶縁膜のスクラッチが非常に少なく、充分に平坦化された精度の高い仕上げ面が得られうることが示された。
【0042】
一方、表2の結果によれば、比較例1?5では、銅膜とタンタル膜及び/又は窒化タンタル膜との研磨速度の比(R_(Cu)/R_(BM))、並びに銅膜と絶縁体との研磨速度の比(R_(Cu)/R_(In))は、非常に大きいか又は非常に小さい値となり、平坦化が不十分な仕上げ面になることが示された。
また、R_(Cu)/R_(BM)=100の1段目用水系分散体を用いた比較例6では、銅膜の研磨速度R_(Cu)は大きいものの、銅膜とタンタル膜及び/又は窒化タンタル膜との研磨速度の比(R_(Cu)/R_(BM))、並びに銅膜と絶縁体との研磨速度の比(R_(Cu)/R_(In))は小さく、平坦化が不十分な仕上げ面しか得られないことが示された。
【0043】
実施例10
シリコンからなる基板表面に、深さ1μmで5、10、25、50、75、及び100μmの幅を有する溝で形成されたパターンを備える絶縁膜を積層した。次いで、絶縁膜の表面に300ÅのTaN膜を形成し、その後銅をTaN膜で覆われた溝内にスパッタリング及びめっきにより1.3μm堆積し、ウェハーを作製した。
研磨装置としてラップマスターSFT株式会社製の型式「LGP-510」を使用し、上記で作製したウェハーを以下の条件で2段階研磨した。ただし1段階目の研磨においては、水系分散体としてヒュームドシリカ系水系分散体(R_(Cu)/R_(BM)=30)を使用して3分間研磨し、その後2段階目の研磨として、実施例5で使用したものと同様の水系分散体を用いて、残存の銅とTaNが完全に除去されるまで研磨した。
テーブル回転数;50rpm、ヘッド回転数;50rpm、研磨圧力;300g/cm^(2)、水系分散体供給速度;100ml/分、研磨パッド;ロデール・ニッタ株式会社製、品番IC1000/SUBA400の2層構造
研磨終了後、表面粗さ計(KLA-Tencor社製、形式「P-10」)を用いて100μm幅の銅配線におけるディッシングを測定したところ、450Åであった。
【0044】
実施例11
2段階目の研磨用の水系分散体として、実施例6で使用のものと同様の水系分散体を使用した他は、実施例10と同様に2段階研磨し、100μm銅配線におけるディッシングを測定した。
研磨終了後の100μm銅配線におけるディッシングは、470Åであった。
【0045】
比較例7
2段階目の研磨用の水系分散体として、比較例3で使用のものと同様の水系分散体を使用した他は、実施例10と同様に2段階研磨し、100μm銅配線におけるディッシングを測定した。
研磨終了後の100μm銅配線におけるディッシングは、3500Åであった。
【0046】
上記のように、本発明の研磨方法による実施例10及び11では、研磨終了後の100μm銅配線におけるディッシングは500Å未満であり、充分に平坦化された精度の高い仕上げ面が得られた。一方、比較例7では、研磨終了後の100μm銅配線におけるディッシングは3500Åと大きく、平坦化が不十分な仕上げ面しか得られなかった。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、被加工膜を適度な速度で同程度に研磨することができ、スクラッチやディッシングを生ずることのない、半導体装置の製造において有用な化学機械研磨用水系分散体を得ることができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-06-05 
結審通知日 2008-06-10 
審決日 2009-03-17 
出願番号 特願2000-3340(P2000-3340)
審決分類 P 1 113・ 536- ZA (H01L)
P 1 113・ 113- ZA (H01L)
P 1 113・ 121- ZA (H01L)
P 1 113・ 16- ZA (H01L)
P 1 113・ 537- ZA (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 塩澤 正和  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 鈴木 敏史
菅澤 洋二
登録日 2005-11-04 
登録番号 特許第3736249号(P3736249)
発明の名称 半導体装置の製造に用いる化学機械研磨用水系分散体  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 八本 佳子  
代理人 八本 佳子  
代理人 三好 秀和  
代理人 高畑 ちより  
代理人 高畑 ちより  
代理人 原 裕子  
代理人 豊岡 静男  
代理人 渡邊 富美子  
代理人 平栗 宏一  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 牧村 浩次  
代理人 平栗 宏一  
代理人 渕田 滋  
代理人 牧村 浩次  
代理人 渕田 滋  
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