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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 A01G |
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管理番号 | 1197411 |
審判番号 | 無効2008-800102 |
総通号数 | 115 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-07-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2008-06-04 |
確定日 | 2009-04-24 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3795058号発明「植物栽培コンテナ及び植栽設備並びに植栽設備の施工方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 請求項3についての訂正及び段落【0009】についての訂正を認めない。 上記以外の訂正を認める。 特許第3795058号の請求項1?5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件の特許第3795058号に係る出願は、平成11年9月14日に出願された特願平11-260561号の出願の一部を平成16年6月18日に新たな特許出願(特願2004-181504号)(以下、「原出願」という。)として出願し、さらにその一部を平成17年11月14日に新たな特許出願(特願2005-328501号)として出願したものでって、平成18年4月21日にその請求項1?6に係る発明につき特許の設定登録がなされ、その後、本件無効審判が請求され、当審において、以下の手続を経たものである。 平成20年 6月 4日付け 無効審判請求書の提出 平成20年 8月29日付け 答弁書の提出 同日付け 訂正請求書の提出 平成20年10月 9日付け 弁駁書の提出 平成20年11月17日付け 訂正拒絶理由通知書の起案 同日付け 職権審理結果通知書の起案 平成20年12月15日付け 意見書の提出(被請求人より) 同日付け 訂正請求書についての手続補正書の提出 第2.本件訂正請求について 1.平成20年12月15日付け手続補正書による補正の適否 平成20年12月15日付け手続補正書による補正の内容は、次のとおりである。 ・補正1 全文訂正明細書中の『【請求項3】前記複数の側面柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とすることを特徴とする請求項2記載の植物栽培コンテナ。』を、特許請求の範囲の限縮を目的として、削除して補正する。 これに伴い、全文訂正明細書中の【請求項4】の請求項番号を【請求項3】とし、その引用請求項の『請求項1乃至3』を『請求項1乃至2』に補正する。更に、全文訂正明細書中の【請求項5】の請求項番号を【請求項4】とし、その引用請求項の『請求項1乃至3』,『請求項4』を、それぞれ、『請求項1乃至2』,『請求項3』に補正する。 ・補正2 訂正請求書(2頁下から4?2行)の訂正事項3○(○付き数字であることを示す。以下、同様に記載する。)について、「特許第3795058号における特許請求の範囲の請求項3を、『前記複数の側面柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とすることを特徴とする請求項2記載の植物栽培コンテナ。』と訂正する」を、削除して補正する。 これに伴い、訂正請求書中の訂正事項4○?7○の番号を、3○?6○に補正する。更に、訂正請求書中の訂正事項7○(補正後の訂正事項6○)について、「特許公報3頁8?11行の『また、本発明の植物栽培コンテナは、少なくとも・・・・・十字形とする』を削除して訂正する」に補正する。 ・補正3 訂正請求書中の訂正の原因中、「3○訂正事項3○について」の項目を削除する。 (1)上記「補正1」は、全文訂正明細書中の「【請求項3】前記複数の側面柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とすることを特徴とする請求項2記載の植物栽培コンテナ。」を削除すると共に、全文訂正明細書中の【請求項4】,【請求項5】の項番を繰り上げるものであり、実質的に、本件特許の請求項3を削除することを内容としているのに対し、上記「補正2」は、「本件特許の請求項3の内容を変更するという訂正事項を削除する(すなわち、請求項3については、本件特許公報に記載のままとする)」ことを内容としており、上記「補正1」「補正2」の内容は矛盾したものとなっているが、平成20年12月15日付け手続補正書及びその添付書類全体からみて、平成20年12月15日付け手続補正書による補正は、本件特許の請求項3(本件特許公報記載の請求項3)を削除することを趣旨としているものと認められる。 ところで、請求項を削除することは一つの訂正事項であるので、請求項を削除する補正は別個の訂正事項を追加する変更となり、訂正請求書の要旨を変更するものである((参考)審判便覧54.10 9.(4)(a)なお書き)。そうすると、平成20年12月15日付け手続補正書による補正は、平成20年8月29日付け訂正請求書において、訂正事項3○に代えて、「請求項3を削除する」という別個の訂正事項を追加するものに相当し、平成20年8月29日付け訂正請求書の要旨を変更するものである。 なお、被請求人は、平成20年12月15日付け手続補正書において、「6.補正の内容 (1)全文訂正明細書中の『【請求項3】・・・・・』を特許請求の範囲の限縮を目的として、削除して補正する。」と記載しているが、「特許請求の範囲の減縮」であることは訂正の目的要件の一つであり、訂正請求の補正が適法であるか否かは、「訂正請求書の要旨を変更するか否か」により判断されるものであり(特許法第131条の2第1項)、平成20年12月15日付け手続補正書による補正は、上記のとおり、訂正請求書の要旨を変更するものといわざるをえないものである。 (2)また、上記「補正1」の後段,「補正2」の後段、及び、「補正3」の内容は、上記(1)で検討した「請求項3を削除する」という補正に伴う補正事項であるから、同様に訂正請求書の要旨を変更するものである。 (3)よって、平成20年12月15日付け手続補正書による補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであり、特許法第131条の2第1項の規定に適合しないから、認めることができない。 2.平成20年8月29日付け訂正請求書による訂正の適否 平成20年12月15日付け手続補正書による補正は、上記「1.平成20年12月15日付け手続補正書による補正の適否」に示したとおり認められないから、平成20年8月29日付け訂正請求書による訂正は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正事項は次のとおりである。なお、訂正事項e,fについては、訂正請求書に明記されていないが、訂正特許請求の範囲の記載からみて、訂正を求めていることは明らかである。 ・訂正事項a(訂正請求書中の訂正事項1○) 特許請求の範囲の請求項1を 「【請求項1】 少なくとも底板と側壁を有する植物栽培コンテナにおいて、該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設けることを特徴とする植物栽培コンテナ。」から 「【請求項1】 少なくとも底板と側壁を有し、上方が開放した貯水槽トレーに載置される植物栽培コンテナにおいて、 該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、 該底板柱状部材の立設箇所以外で、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設け、 該底板柱状部材及び該側面柱状部材の上端で区画して、該植物栽培コンテナ内の上部をユニット載置空間、その下部を育成材充填空間とし、 該育成材充填空間に育成材が充填され、 該ユニット載置空間に板材、支持板を有する部材若しくは芝材からなるユニットが載置されることを特徴とする植物栽培コンテナ。」に訂正する。 ・訂正事項b(訂正請求書中の訂正事項2○) 特許請求の範囲の請求項2を 「【請求項2】 少なくとも底板と側壁を有する植物栽培コンテナにおいて、該底板からそれぞれが独立して上方に立設する複数の底板柱状部材と、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設する複数の側面柱状部材とを設け、該底板柱状部材を平面視略十字形とすることを特徴とする植物栽培コンテナ。」から 「【請求項2】 前記複数の底板柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とすることを特徴とする請求項1記載の植物栽培コンテナ。」に訂正する。 ・訂正事項c(訂正請求書中の訂正事項3○) 特許請求の範囲の請求項3を 「【請求項3】 少なくとも底板と側壁を有する植物栽培コンテナにおいて、該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設け、該底板柱状部材を平面視略十字形とすることを特徴とする植物栽培コンテナ。」から 「【請求項3】 前記複数の側面柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とすることを特徴とする請求項2記載の植物栽培コンテナ。」に訂正する。 ・訂正事項e 特許請求の範囲の請求項5を削除して訂正する。 ・訂正事項f 特許請求の範囲の請求項6を 「【請求項6】 請求項1乃至3の何れかに記載の植物栽培コンテナの複数が敷設面に複数連設される植栽設備、又は請求項4記載の植栽設備、又は請求項5記載の植栽設備の施工方法において、施工現場で植物栽培コンテナを連設し、該連設した植物栽培コンテナに対して育成材を充填することを特徴とする植栽設備の施工方法。」から 「【請求項5】 請求項1乃至3の何れかに記載の植物栽培コンテナの複数が敷設面に複数連設される植栽設備、又は請求項4記載の植栽設備の植栽設備の施工方法において、施工現場で植物栽培コンテナを連設し、該連設した植物栽培コンテナに対して育成材を充填することを特徴とする植栽設備の施工方法。」に訂正する。 ・訂正事項g(訂正請求書中の訂正事項4○) 段落【0007】(特許公報2頁48行?3頁1行)の 「少なくとも底板と側壁を有する植物栽培コンテナにおいて、該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設ける」を 「少なくとも底板と側壁を有し、上方が開放した貯水槽トレーに載置される植物栽培コンテナにおいて、該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、該底板柱状部材の立設箇所以外で、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設け、該底板柱状部材及び該側面柱状部材の上端で区画して、該植物栽培コンテナ内の上部をユニット載置空間、その下部を育成材充填空間とし、該育成材充填空間に育成材が充填され、該ユニット載置空間に板材、支持板を有する部材若しくは芝材からなるユニットが載置されることを特徴とする。底板柱状部材の支持部分と側面柱状部材の支持部分とで、ユニット材を載置するユニット載置空間と育成材充填空間とを区画し、底板柱状部材の上端部と側板柱状部材の上端部より上方をユニット載置空間、底板柱状部材の上端部と側板柱状部材の上端部より下方を育成材充填空間とするものである 」に訂正する。 ・訂正事項h(訂正請求書中の訂正事項5○) 段落【0013】(特許公報3頁25?28行)の 「上記植物栽培コンテナに於いて、底板柱状部材の支持部分と側面柱状部材の支持部分とで、ユニット材を載置するユニット載置空間と育成材充填空間とを区画し、底板柱状部材の上端部と側面柱状部材の上端部より上方をユニット載置空間、底板柱状部材の上端部と側面柱状部材の上端部より下方を育成材充填空間としてもよい。更に、」を削除して訂正する。 ・訂正事項i(訂正請求書中の訂正事項6○) 段落【0008】(特許公報3頁3?6行)の 「少なくとも底板と側壁を有する植物栽培コンテナにおいて、該底板からそれぞれが独立して上方に立設する複数の底板柱状部材と、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設する複数の側面柱状部材とを設け、該底板柱状部材を平面視略十字形とする」を 「前記複数の底板柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とする」に訂正する。 ・訂正事項j(訂正請求書中の訂正事項7○) 段落【0009】(特許公報3頁8?11行)の 「少なくとも底板と側壁を有する植物栽培コンテナにおいて、該底板からそれぞれが独立して上方に立設する複数の底板柱状部材と、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設する複数の側面柱状部材とを設け、該底板柱状部材を平面視略十字形とする」を 「前記複数の側面柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とする」に訂正する。 (1)訂正事項cについて 訂正事項cによる訂正後の請求項3において、「側面柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とする」と記載されているが、「平面視」とは、対象物全体を上からみた形状であり、「平面視略十字形とする」とは、上からみた全体形状が略十字形であることを意味しており、「平面視略十字形」の柱状部材とは、図13に示される底面柱状部材72のように、底面に接する部分から高さ方向全体に亘って断面略十字形の形状を含むと解される。 これに対し、本件特許明細書及び図面には、側面柱状部材の形状について次のように記載されている。 本件特許明細書の段落【0032】には、第2実施形態として、側面ユニット支持部7である柱状部材の頂部に略十字形の平面部7aが形成されることが記載され、同図6,7には、第2実施形態として、頂部に略十字形の平面部7aが形成された側面ユニット支持部7を有する植物栽培コンテナが示され、 同【0038】には、第4実施形態として、側面ユニット支持部71である柱状部材の頂部に略十字形の平面部71aが形成されることが記載され、同図10,11には、第4実施形態として、頂部に略十字形の平面部71aが形成された側面ユニット支持部71を有する植物栽培コンテナが示され、 同【0041】には、第5実施形態として、側面ユニット支持部71である柱状部材の頂部に略十字形の平面部71aが形成されることが記載され、また、図12?18には、第5実施形態として、頂部に略十字形の平面部71aを形成された側面ユニット支持部71を有する植物栽培コンテナが示されている。 しかし、底面に接する部分から高さ方向全体に亘って断面視略十字形であるものを設けた植物栽培コンテナが記載されているとはいえず、また、そのような植物栽培コンテナの形態を上記の記載から導き出すことができるともいえない。 また、同段落【0019】?【0030】、図1?5に記載される第1実施形態は、側面ユニット支持部7が水平方向の板状の実施形態であり、 同段落【0034】?【0036】、図8,9に記載される第3実施形態は、側面柱状部材のない実施形態であり、側面柱状部材について示唆するものではない。 また、本件特許請求の範囲の【請求項2】、本件特許明細書の段落【0008】には「底板柱状部材を平面視略十字形とする」と記載されており、同【0041】には「底面ユニット支持部72は前記側面ユニット支持部71が立設した箇所以外で且つ底面から複数立設する柱状部材で、頂部には平面視で略十字形、・・・等様々な形状の平面部72aが形成されている。」と記載されているが、これらの記載はいずれも、底面柱状部材に関するものである。 同段落【0013】には「・・・また、植物栽培コンテナに設けられる柱状部材は、不規則に立設して配置するようにしてもよく、又、複数の柱状部材は、頂部に平面部を有し、その平面部の形状を少なくとも2種以上としてもよい。・・・」と、同段落【0030】には、「・・・ユニット支持部7は上記板状のものの他、後述するような柱状部材でも良好であり、壁状部材等適宜ものが使用可能である。」と、同段落【0069】には、「・・・ユニット支持部7の構成及び形状は上記実施形態に限定されるものではなく、ユニット載置空間8と育成材充填空間9を形成可能な構成であればどの様な構成、形状であっても良い。」と記載されているが、側面柱状部材の具体的な形状を示唆するものでない。 また、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面における記載全体(発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段、発明の効果、発明を実施するための最良の形態として挙げられた第1?5実施形態、第1?4変形例等含む)を総合しても、底面柱状部材72のような底面に接する部分から高さ方向全体に亘って断面視略十字形である側面柱状部材を設けた植物栽培コンテナを導き出すことができるとはいえない。 そうすると、訂正後の請求項3の「側面柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とする」という記載は、底面に接する部分から高さ方向全体に亘って断面視略十字形である側面柱状部材を設けた植物栽培コンテナという新たな実施形態を追加するものであり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。 よって、訂正事項cは、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内において記載されたということはできず、また、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。 したがって、訂正事項cは、特許法第134条の2第5項の規定において準用する同法第126条第3項及び4項の規定に適合するものではないから、当該訂正は認められない。 (2)訂正事項jについて 訂正事項jは、訂正事項cに対応して行われたものであるから、上記(1)に説示したと同様の理由により、訂正事項jについても、本件特許明細書等に記載した範囲内において記載したものということはできず、また、実質上特許請求の範囲を拡張するものである。 したがって、訂正事項jは、特許法第134条の2第5項の規定において準用する同法第126条第3項及び4項の規定に適合するものではないから、当該訂正は認められない。 (3)訂正事項a,b,e,f,g,h,iについて 訂正事項aは、「植物栽培コンテナ内の空間」について、底板柱状部材及び該側面柱状部材の上端で区画して、該植物栽培コンテナ内の上部をユニット載置空間、その下部を育成材充填空間とし、該育成材充填空間に育成材が充填され、該ユニット載置空間に板材、支持板を有する部材若しくは芝材からなるユニットが載置されることを限定し、「植物栽培コンテナ」を、上方が開放した貯水槽トレーに載置されるものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、 訂正事項bは、「植物栽培コンテナ内の空間」について、底板柱状部材及び該側面柱状部材の上端で区画して、該植物栽培コンテナ内の上部をユニット載置空間、その下部を育成材充填空間とし、該育成材充填空間に育成材が充填され、該ユニット載置空間に板材、支持板を有する部材若しくは芝材からなるユニットが載置されることを限定し、「植物栽培コンテナ」を、上方が開放した貯水槽トレーに載置されるものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、 訂正事項eは、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、 訂正事項fは、訂正前の請求項5を削除したことに伴い、項番を繰り上げ、引用請求項を整合させたものであるから、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、 訂正事項g,hは、訂正事項aに対応して行われたものであり、訂正事項iは、訂正事項bに対応して行われたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項a,b,g,h,iは、本件特許明細書の段落【0013】,【0038】,【0041】,【0043】,【0057】の記載に基づくものであるから、いずれも、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張するものではない。 また、訂正事項e,fは、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張するものではない。 したがって、訂正事項a,b,e,f,g,h,iは、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合し、同法第134条の2第5項の規定において準用する同法第126条第3項及び4項の規定に適合するものであるから、当該訂正を認める。 3.まとめ 請求項3に関する訂正事項c,jは、特許法第134条の2第5項の規定において準用する同法第126条第3項及び4項の規定に適合するものではないから、当該訂正は認められない。 請求項1,2,5,6に関する訂正事項a,b,e,f,g,h,iについては、特許法第134条の2第1項ただし書きの規定に適合するものであり、同法第134条の2第5項の規定において準用する同法第126条第3項及び4項の規定に適合するから、当該訂正を認める。 第3.本件発明 上記「第2.訂正請求について」で説示した点をふまえると、一部を除いて訂正が認められる平成20年8月29日付け訂正請求書による訂正後の特許請求の範囲に係る発明は、次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「【請求項1】 少なくとも底板と側壁を有し、上方が開放した貯水槽トレーに載置される植物栽培コンテナにおいて、 該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、該底板柱状部材の立設箇所以外で、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設け、 該底板柱状部材及び該側面柱状部材の上端で区画して、該植物栽培コンテナ内の上部をユニット載置空間、その下部を育成材充填空間とし、 該育成材充填空間に育成材が充填され、 該ユニット載置空間に板材、支持板を有する部材若しくは芝材からなるユニットが載置されていることを特徴とする植物栽培コンテナ。 【請求項2】 前記複数の底板柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とすることを特徴とする請求項1記載の植物栽培コンテナ。 【請求項3】 少なくとも底板と側壁を有する植物栽培コンテナにおいて、該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設け、該底板柱状部材を平面視略十字形とすることを特徴とする植物栽培コンテナ。 【請求項4】 請求項1乃至3の何れかに記載の植物栽培コンテナの複数が連係部で相互に連結して敷設面に連設されることを特徴とする植栽設備。 【請求項5】 請求項1乃至3の何れかに記載の植物栽培コンテナの複数が敷設面に複数連設される植栽設備、又は請求項4記載の植栽設備の施工方法において、施工現場で植物栽培コンテナを連設し、該連設した植物栽培コンテナに対して育成材を充填することを特徴とする植栽設備の施工方法。」 (以下、上記請求項1?5に係る発明を、それぞれ、「本件発明1?5」という。) 第4.当事者の主張 1.請求人の主張 請求人は、本件無効審判請求書において、「特許第3795058号の請求項1?6に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由として以下(1)(2)を主張している。 (1)無効理由1(特許法第29条第1項3号) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、特開2004-254711号(甲第1号証)により公開された出願(特願2004-181504号)を原出願とする分割出願に係るものであるが、出願の分割の要件を満たさないものであるから、出願日が原出願日の出願日に遡及するものではなく、本件特許発明に係る出願の現実の出願日(平成17年11月14日)前に、出願公開された原出願の公開公報(甲第1号証)に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきである旨主張し、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出している。 (2)無効理由2(特許法第29条第2項) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許出願前に頒布された甲第3?8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきである旨主張し、証拠方法として、甲第3号証ないし甲第8号証を提出している。 また、請求人は、本件訂正請求後に提出した平成20年10月9日付け弁駁書において、本件訂正後の請求項1ないし5に係る発明も、本件特許出願前に頒布された甲第3?8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、無効にすべきである旨を主張している。 (証拠方法) 《審判請求書に添付》 甲第1号証 特開2004-254711号公報(原出願の公開公報) 甲第2号証 平成19年(ワ)第11944号損害賠償事件判決文 甲第3号証 特開平10-164989号公報 甲第4号証 実開昭48-9532号公報に係る 実願昭46-50965号のマイクロフィルム 甲第5号証 実開昭50-89842号に係る 実願昭49-2169号のマイクロフィルム 甲第6号証 実開昭63-31755号に係る 実願昭61-124897号のマイクロフィルム 甲第7号証 特開昭63-157920号公報 甲第8号証 特開平10-98950号公報 2.被請求人の主張 被請求人は、平成20年8月29日付け答弁書において、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める」として、その理由として、本件訂正後の請求項1ないし5に係る発明は、適法に分割されたものであるから、遡及する出願日より後に公開された甲第1号証により新規性無しとされることなく、特許法第29条第1項第3号の無効理由に該当しないと共に、甲第3?8号証に対して進歩性を有するものであり、特許法第29条第2項の無効理由に該当しない旨を主張している。 第5.無効理由の検討 1.分割の適否及び本件特許に係る出願の出願日について (1)審判請求人は、本件特許に係る出願は分割の要件を満たしていないと主張するので、本件出願の分割の適否について以下検討する。 (2)本件原出願当初明細書には、屋上、ベランダ等における緑化対策のための植物栽培コンテナに関する技術分野においては従来技術として植木などをプランターによってユニット化し、様々なレイアウトを実現可能にしたシステムプランターが開示されていたが、配置換えやユニット交換の時にプランター全体を移動しなければならず、多大な労力及び費用を要するという問題があり、また、かかるプランターを住宅の狭いベランダ等で使用する場合、人間等が移動可能な範囲がより狭くなってしまい、ベランダ等を有効利用できなくなってしまうという問題もあって、植物等の配置換えや交換を容易にすると共に、植物等の上を人間等が歩行可能にし、狭い空間を有効利用可能にするという課題があったこと(本件原出願当初明細書【0001】、【0004】、【0008】?【0010】)、本件原出願発明は、かかる課題を解決するための手段として、植物栽培コンテナ内にユニット支持部を設け、その上端で区画された上部にユニット載置空間を形成すると共に下部に育成材充填空間を形成し、同空間に育成材を充填し、ユニット支持部上にユニット材を載置するとされたこと(同【0011】?【0015】)、この発明の効果として、植物栽培コンテナ本体内の上部空間をユニット載置空間とし、下部を育成材充填空間として形成することで、上部に載置されているユニット材を取り除いて新しいユニット材を載置するだけで容易にユニット材の配置換えや交換をすることが可能となると共に、ユニット載置空間内に載置されるユニット材を支持するユニット支持部を、コンテナと別体又は一体形成することで、ユニット材上部を人等が歩行する際に上からの圧力を植物栽培コンテナ本体全体で受けることができるため、植物等の上を人間等が歩行できるようにし、狭い空間を有効利用することができること(同【0016】?【0019】)が記載されている。また、本件原出願当初明細書には、ユニット支持部を、底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とする構成が記載されている(同【0013】、【0046】)。そして、図1?32に記載されたいずれの実施例にもユニット支持部とユニット材が設けられた状態が示され、柱状部材もユニット支持部として設けられており、ユニット支持部とユニット材を欠いた構成の植物栽培コンテナは全く開示されていない。 したがって、本件原出願当初明細書及び図面に記載されている発明は、底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材であるユニット支持部の上端によって区画されたユニット材載置空間と育成材充填空間を設けると共に、当該ユニット支持部上に、ユニット材が載置される構成の植物栽培コンテナを含み、ユニット支持部上にユニット材を載置することを必須の構成とするものであり、これにより「配置換えや交換が容易である」と共に「植物等の上を人間等が歩行可能」にするとの効果を奏するものである。このように、本件原出願当初明細書には、底板、側壁、側面柱状部材、底板柱状部材を有するものの、ユニット支持部上にユニット材を載置することがない植物栽培コンテナは、一切記載されておらず、本件原出願当初明細書の上記内容からすれば、その示唆もないというべきである。 (3)これに対し、本件発明3は、底板柱状部材及び該側面柱状部材の上端で区画して、該植物栽培コンテナ内の上部をユニット載置空間、その下部を育成材充填空間とし、底板柱状部材及び該側面柱状部材であるユニット支持部の上にユニット材を載置することが特定されていないことから、底板柱状部材及び該側面柱状部材であるユニット支持部の上にユニット材を載置しない植物栽培コンテナをも包含するものである。 そうすると、本件発明3は、本件原出願当初明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項又は同明細書等に記載した事項から自明な事項の範囲外の発明を含むものであり、本件原出願当初明細書、特許請求の範囲及び図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 よって、本件特許出願は本件原出願を適法に分割して出願されたものとはいえず、特許法44条1項の分割要件を充たしているとは認められない。 よって、本件特許出願の出願日の遡及は認められず、本件特許出願の出願日は、現実の出願日である平成17年11月14日となる。 2.無効理由1(特許法第29条第1項3号)について (1)甲第1号証の記載事項 本件特許出願の出願日(平成17年11月14日)前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開2004-254711号公報(本件原出願の公開公報),公開日:平成16年9月16日)には、以下の事項が記載されている。 (1a)「【請求項1】 少なくとも底板と外周壁を有し、上面が開口した植物栽培コンテナにおいて、該植物栽培コンテナ内にユニット支持部を設け、該ユニット支持部の上端で区画して該植物栽培コンテナの上部をユニット載置空間、その下部を育成材充填空間とすると共に、該ユニット支持部の上端まで育成材が充填され、該ユニット支持部上に、板材のユニット材若しくは支持板を有するユニット材が載置されることを特徴とする植物栽培コンテナ。」 (1b)「【請求項3】 前記ユニット支持部は、底板から側板に沿って柱状に立設する側面ユニット支持部と、底板から柱状に立設する底面ユニット支持部とを設けることを特徴とする請求項1又は2記載の植物栽培コンテナ。 【請求項4】 前記ユニット支持部は、平面視略十字形若しくは平面視略L字形若しくは平面視略I字形の柱状部材若しくはこれらの組み合わせである複数からなり、該複数のユニット支持部を不規則に配列してなることを特徴とする請求項1、2又は3記載の植物栽培コンテナ。」 (1c)「【0001】 本発明は、屋上、ベランダ等における緑化対策の一貫として使用する植物栽培コンテナに関する。」 (1d)「【0010】 本発明は上記のような不具合を解消するためになされたものであって、装飾性に優れ、配置換えや交換が容易であると共に、植物等の上を人間等が歩行可能にし、さらには狭い空間を有効利用可能な植物栽培コンテナを提供することを目的とする。」 (1e)「【0011】 本発明の植物栽培コンテナは、少なくとも底板と外周壁を有し、上方が開口した植物栽培コンテナにおいて、該植物栽培コンテナ内の上部にユニット載置空間を形成すると共に、該植物栽培コンテナ内の下部に育成材充填空間を形成することを特徴とする。 【0012】 さらに上記植物栽培コンテナは、ユニット載置空間と育成材充填空間を形成するためのユニット支持部を備えるようにし、例えば前記植物栽培コンテナ内にユニット支持部を設け、該ユニット支持部のユニット材支持部分で区画することで、前記ユニット載置空間及び前記育成材充填空間を形成することを特徴とする。前記ユニット載置空間はユニット支持部の上端部より上方に形成され、前記育成材充填空間はユニット支持部の上端部よりも下方に形成される。 【0013】 ここで、前記ユニット支持部は複数の柱状部材とし、さらには前記柱状部材を不規則に立設して配置すると好適である。又前記複数の柱状部材は頂部に平面部を有し、該平面部の形状を少なくとも2種類以上とすると好適である。又前記ユニット支持部を植物栽培コンテナ本体に一体形成すると良好である。 【0014】 また上記植物栽培コンテナは、少なくとも裏面に凸部が形成されたユニット材が、前記凸部と植物栽培コンテナ本体内に設けられたユニット支持部とで位置決め可能に載置される、例えば該凸部が前記ユニット支持部間に挟まれた状態で載置されることを特徴とする。又前記底板に吸水孔が設けられていると共に、上方が開放した貯水槽トレー上に載置される構成であることを特徴とする。 【0015】 そして、植物栽培コンテナ群は、少なくとも底板と外周壁を有し、上方が開口した植物栽培コンテナにおいて、該植物栽培コンテナ内の上部にユニット載置空間を形成すると共に、該植物栽培コンテナ内の下部に育成材充填空間を形成する植物栽培コンテナを複数敷設し、該植物栽培コンテナに複数種類のユニット材を選択的に載置する。即ち、複数の植物栽培コンテナの内の任意の植物栽培コンテナに任意のユニット材が選択的に載置可能に 構成されており、少なくとも2種類以上のユニット材を選択的に載置するものである。この植物栽培コンテナ群に使用する植物栽培コンテナは、上記したような植物栽培コンテナの中から必要なものを適宜選択して使用できる。」 (1f)「【0018】 また、上記ユニット載置空間内に載置されるユニット材を支持するユニット支持部をコンテナと別体又は一体形成することで、ユニット材上部を人等が歩行する際に上からの圧力を植物栽培コンテナ本体全体で受けることができると共に、強固にユニット材を保持できる。前記ユニット支持部は植物栽培コンテナと一体形成する方がより強固にユニット材を保持可能であって好適である。」 (1g)「【0020】 また、上記ユニット支持部を植物栽培コンテナ本体の底板から立設する複数の柱状部材で構成することで、上からの圧力に対して、個々独立した柱状部材が歩行による圧力を分散して受けることになるので、高い強度を発揮し、植物栽培コンテナの破損を防止できる。」 (1h)「【0025】 図に於いて植物栽培コンテナ1は、主として底板2と外周壁をなす側板3とを有し、上方が開口するように形成されている。前記底板2には通水兼通気孔4が設けられていると共に、底板2の外面には脚部5が形設されている。前記側板3には内向きへこみ部6が形成されていると共に、側板3の内面には(側面)ユニット支持部7(71)が設けられている。」 (1i)「【0032】 また前記育成材90は、施工現場で充填するようにしても良いが、予め工場などで充填し、現場ではユニット材80を載置するだけの状態で敷設するようにしてもよく、この場合は、育成材90を育成材充填空間9に充填してプレス機をかけた後に、少なくとも育成材90の上面をバインダ処理することが望ましく、例えば、ポバールなどをお湯でとかした液体を育成材90上に吹き付けて処理、アルギン酸溶液やでんぷん溶液等を散布し、バインダ粉の散布後にその散布面に温水等の水分を供給散布して処理、又はバインダシート等を載置してそのシート上面に温水などの水分を供給散布して処理すること等が考えられ、前記様々な処理後に表面を自然乾燥或いは強制乾燥等して乾燥処理する。」 (1j)「【0043】 本実施形態例は、上記第2実施形態例及び第3実施形態例を合わせた構成であり、側面ユニット支持部71は底板2から側板3に沿って所要箇所に複数立設する柱状部材で、頂部に略十字形及び略I字形の平面部71aが形成されていると共に、底面ユニット支持部72は底板2で且つ側面ユニット支持部71が立設した箇所以外に立設する複数の柱状部材で、頂部に円形の平面部72aが形成されている。水平である平面部71aと平面部72aは略同じ高さで略同一平面を形成し、前記平面部71a、72aによって分割或いは区画され、ユニット載置空間8と育成材充填空間9が形成されており、ユニット材80の底面は前記略十字形の平面部71aと円形の平面部72aで支持する構成である。 【0044】 上記第4実施形態例の植物栽培コンテナ1を使用することにより、側面ユニット支持部71が所要箇所に、且つ底面ユニット支持部72が底板2に複数不規則に立設し、2種類の平面部71a、72aが多数形成されているため、ユニット材80上部等あらゆる角度からの踏圧に対して、ユニット材80全面を強固に支持できる。またユニット材80が芝材82である場合、芝刈り機等の車輪がユニット支持部7である柱状部材間に嵌まってしまい、別方向への転換を困難にするという不具合を解消でき、芝刈り機等の方向転換或いは移動をスムーズにできる。 【0045】 また、図12から図18までは本発明の植物栽培コンテナの第5実施形態例を示し、図12は第5実施形態例の植物栽培コンテナの平面図、図13は第5実施形態例の植物栽培コンテナの斜視図、図14は第5実施形態例の植物栽培コンテナの育成材充填状態の斜視図、図15は第5実施形態例の植物栽培コンテナへのユニット材(板材)載置作業説明図、図16は第5実施形態例の植物栽培コンテナへのユニット材(板材)載置状態を示す斜視図、図17は第5実施形態例の植物栽培コンテナへのユニット材(芝材)載置作業説明図、図18は第5実施形態例の植物栽培コンテナのユニット材(芝材)載置状態を示す斜視図であり、上記第1乃至4実施形態例と異なる箇所を中心に以下説明する。 【0046】 本実施形態例は上記第4実施形態例と類似し、側面ユニット支持部71は底板2から側板3に沿って所定箇所に複数立設した柱状部材で、頂部に略十字形の平面部71aが形成されていると共に、底面ユニット支持部72は前記側面ユニット支持部71が立設した箇所以外で且つ底面から複数立設する柱状部材で、頂部には平面視で略十字形、略L字形、略逆L字形、略I字形等様々な形状の平面部72aが形成されている。平面部71a、72aは略同じ高さで水平に略同一平面を形成し、前記平面部71a、72aによって分割或いは区画され、ユニット載置空間8と育成材充填空間9が形成され、ユニット材80の底面は前記平面部71aと平面部72aで支持する構成である。 【0047】 さらに底板2には頂部に吸水孔10aを設けられた下向き凸部10が形成されており、前記下向き凸部10によって、ユニット材80の上部からの踏圧に対して、植物栽培コンテナ1全体の歪みを防止するように構成されている。即ち、ユニット材80上部からの踏圧を側面ユニット支持部71と底面ユニット支持部72の両方で支持して、側面ユニット支持部71にかかる圧力は側板3或いは側板3及び底板2で分散し、底面ユニット支持部72にかかる圧力は底板2で分散すると共に、側板3にかかる圧力は側板3の下方に設けられた脚部5により受け、底板2の略中央部付近の圧力を前記下向き凸部10で受けるように形成されている。 【0048】 そして、図14に示すように、植物栽培コンテナ1の育成材充填空間9に育成材90を充填する場合、それぞれユニット支持部71、72の頂部である平面部71a、72aが育成材90の上部よりも僅かに高くなるように育成材90を充填すればよく、育成材90の充填量を容易に確認することができるようになっている。また、上記植物栽培コンテナ1内の育成材充填空間9に育成材90を充填した後に、ユニット材80として板材81(木材、石材、鉄材、プラスチック材等材質は問わない)或いは図17及び図18に示すような芝生82aを有する芝材82(天然芝、人工芝等問わない)等を上部から載置するだけで、植物栽培コンテナ1が完成するように構成されている。 【0049】 以上のように第5実施形態例の植物栽培コンテナ1を使用することにより、植物栽培コンテナ1本体の強度が増すと共に、ユニット材80上部からの圧力を分散して受けることができ、植物栽培コンテナ1本体やユニット材80の歪みや破損を極力防止することができる。また、ユニット材80を交換するだけで、植物栽培コンテナ1を使用して植物の栽培ができ、或いはデザインデッキの載置や交換を容易にすることができる。ユニット材80が万一破損した場合も容易に新しいユニット材80と交換することが可能であり、労力や費用面を軽減することができる。」 (1k)「【0057】 また、図25から28までは第5実施形態例の植物栽培コンテナの使用例を示し、図25は第5実施形態例の植物栽培コンテナと貯水トレーを示す斜視図、図26は第5実施形態例の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材の育成材がない状態での載置作業説明図、図27は第5実施形態例の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材の育成材がない状態での載置状態を示す断面図、図28は第5実施形態例の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材に育成材を充填した状態での載置状態を示す断面図である。 【0058】 上記使用例は、底面灌水型である第5実施形態例の植物栽培コンテナ1を貯水トレー11上に載置し、前記植物栽培コンテナ1上に凸部80aを有するユニット材80を載置する構成であり、前記植物栽培コンテナ1には底板2の下向き凸部(吸水凸部)10が設けられ、前記下向き凸部(吸水凸部)10の頂部には吸水用の吸水孔(開口部)10aが形成されている。これにより、貯水トレー11上に載置された植物栽培コンテナ1は、貯水トレー11内に貯留されている水分を下向き凸部10の吸水孔10aから毛細管現象により吸水するようになっている。」 (1l)「【0065】 次に植物栽培コンテナ1を複数敷設し、植物栽培コンテナ群1aを形成する場合について説明する。図30から図32までは植物栽培コンテナ1を複数敷設し、植物栽培コンテナ群1aを形成する場合の斜視図であり、図30は植物栽培コンテナ群の一部ユニット非載置状態を示す斜視図、図31は植物栽培コンテナ群の一部ユニット非載置状態と縁石を示す斜視図、図32は植物栽培コンテナ群の設置完了状態を示す斜視図である。 【0066】 図に於いて植物栽培コンテナ群1aは、第5実施形態例の植物栽培コンテナ1を複数敷設して形成したものであり、複数連設した植物栽培コンテナ1内には必要に応じて各々育成材90を充填し、ユニット支持部7で支持するようにユニット材80を載置している。植物栽培コンテナ群1aの周囲には必要な側辺に沿って縁石12が敷設されている。前記ユニット材80は好適には少なくとも2種類以上、例えば板材81、芝材82、ライト材83等からなるようにし、任意の植物栽培コンテナ1に前記ユニット材80を選択的に載置できるようにする。好適には、上記植物栽培コンテナ群1aに使用する植物栽培コンテナ1においては、側板3に内向きへこみ部6が形成されているので、前記内向きへこみ部6間及び貯水トレー11上部に空間部が形成され、前記空間部に給水管を敷設する。 【0067】 上記植物栽培コンテナ群1aによって、任意の植物栽培コンテナ1上に様々なユニット材80を載置することができ、多様な庭園等を形成することが可能となる。加えて、前記植物栽培コンテナ群1aの端縁を縁石12等で覆うことによって、よりデザイン性に優れた庭園を提供することができる。また、好適には内向きへこみ部6で形成された空間部に給水管を敷設する構成とし、外観上より優れた植物栽培コンテナ群1aが形成できる。加えて、前記給水管を水道から電磁弁等を介して自動的に給水できるように構成すれば、給水作業が省け、より容易に植物の栽培をすることができる。」 (1m)「【0071】 前記植物栽培コンテナ群1aにおいて、連結方法として、個々の植物栽培コンテナ1本体に連係部を形成し、連結するように構成してもよく、より植物栽培コンテナ1相互の連結が強固となると共に、安定性が増す。」 これらの記載及び甲第1号証の記載全体によれば、甲第1号証には、次の発明(以下、それぞれ、「甲1発明a」「甲1発明b」,「甲1発明c」いう。)が記載されていると認められる。 (甲1発明a) 「少なくとも底板と側壁を有し、上方が開放した貯水槽トレーに載置される植物栽培コンテナにおいて、 該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する柱状部材である複数の底面ユニット支持部と、該底面ユニット支持部の立設箇所以外で、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する柱状部材である複数の側面ユニット支持部とを設け、 該底面ユニット支持部及び該側面ユニット支持部の上端で区画して、該植物栽培コンテナ内の上部をユニット載置空間、その下部を育成材充填空間とし、 該育成材充填空間に育成材が充填され、 該ユニット載置空間に板材、支持板を有する部材若しくは芝材からなるユニットが載置され、前記複数の底面ユニット支持部のそれぞれの頂部を平面視略十字形の平面部とする植物栽培コンテナ。」 (甲1発明b) 「甲1発明aの植物栽培コンテナの複数が連係部で相互に連結して敷設面に連設される植栽設備。」 (甲1発明c) 「甲1発明aの植物栽培コンテナの複数が敷設面に複数連設される植栽設備、又は甲1発明bの植栽設備の施工方法において、施工現場で植物栽培コンテナを連設し、該連設した植物栽培コンテナに対して育成材を充填する植栽設備の施工方法。」 (2)対比・判断 (2-1)本件発明1について 本件発明1と甲1発明aを対比すると、甲1発明aの「柱状部材である底面ユニット支持部」,「柱状部材である側面ユニット支持部」は、それぞれ、本件発明1における「底板柱状部材」,「側面柱状部材」に相当する。 以上の点をふまえると、本件発明1と甲1発明aとは、 「少なくとも底板と側壁を有し、上方が開放した貯水槽トレーに載置される植物栽培コンテナにおいて、 該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、該底板柱状部材の立設箇所以外で、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設け、 該底板柱状部材及び該側面柱状部材の上端で区画して、該植物栽培コンテナ内の上部をユニット載置空間、その下部を育成材充填空間とし、 該育成材充填空間に育成材が充填され、 該ユニット載置空間に板材、支持板を有する部材若しくは芝材からなるユニットが載置されている植物栽培コンテナ。」である点で一致し、相違点はない。 したがって、本件発明1は、甲1発明aと同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2-2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1に「前記複数の底板柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とする」という事項を付加するものである。 これに対し、甲1記載の発明の「頂部を平面視略十字形の平面部とした底板柱状部材」は、図13に示されるように平面視略十字形のものであり、「平面視略十字形の底板柱状部材」に含まれるものであるから、本件発明2と甲1発明aとは、上記一致点に加えて、「前記複数の底板柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とする」点においても一致し、相違点はない。 したがって、本件発明2は、甲1発明aと同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2-3)本件発明3について 上記「(2-1)本件発明1について」「(2-2)本件発明2について」で検討した点をふまえると、本件発明3と甲1発明aは、「少なくとも底板と側壁を有する植物栽培コンテナにおいて、該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設け、該底板柱状部材を平面視略十字形とする植物栽培コンテナ。」である点で一致し、相違点はない。 したがって、本件発明3は、甲1発明aと同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2-4)本件発明4について 上記「(2-1)本件発明1について」「(2-2)本件発明2について」「(2-3)本件発明3について」で検討した点をふまえると、本件発明4と甲1発明bは、「請求項1乃至3の何れかに記載の植物栽培コンテナの複数が連係部で相互に連結して敷設面に連設される植栽設備。」である点で一致し、相違点はない。 したがって、本件発明4は、甲1発明bと同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2-5)本件発明5について 上記「(2-1)本件発明1について」「(2-2)本件発明2について」「(2-3)本件発明3について」」「(2-4)本件発明4について」で検討した点をふまえると、本件発明5と甲1発明cは、「請求項1乃至3の何れかに記載の植物栽培コンテナの複数が敷設面に複数連設される植栽設備、又は請求項4記載の植栽設備の施工方法において、施工現場で植物栽培コンテナを連設し、該連設した植物栽培コンテナに対して育成材を充填する植栽設備の施工方法。」である点で一致し、相違点はない。 したがって、本件発明5は、甲1発明cと同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件発明1,2,3は甲1発明aと同一であり、本件発明4は甲1発明bと同一であり、本件発明5は甲1発明cと同一であり、本件発明1?5についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。 3.むすび 以上のとおり、無効理由2について判断するまでもなく、本件発明1?5についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効にすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 植物栽培コンテナ及び植栽設備並びに植栽設備の施工方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、屋上、ベランダ等における緑化対策の一貫として使用する植物栽培コンテナ及び植栽設備、並びに植栽設備の施工方法に関する。 【背景技術】 【0002】 現代社会における都市部には自然が不足しているが、人間の自然に対する希求に応えて自然不足を補うべく、都市部における緑化対策が図られている。かかる緑化対策はビルの屋上、ベランダ、テラス、イベント会場等を人工的に緑化することで行われているが、その緑化対策に関する具体的な発明として、例えば特許文献1に床面に載置可能な平坦状の内底板の周縁に沿って枠板を立設して、その内部に芝を植え込むブロック箱体が開示されている。 【0003】 尚、その他の関連技術として特許文献2?8がある。 【0004】 【特許文献1】実公平1-25558号 【特許文献2】特開平11-46580号 【特許文献3】特開平6-141685号 【特許文献4】特開平9-51728号 【特許文献5】実開平4-129751号全文明細 【特許文献6】実開平5-87005号全文明細 【特許文献7】特開平10-98950号 【特許文献8】特開平8-70718号 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところで、上記従来例を観賞用・縁取り用の植物に対して使用する場合、近年の住宅事情においては狭いベランダ等で使用されることが想定されるが、かような使用によって人間が移動可能な範囲が狭くなってしまう等、ベランダ等を有効利用できなくなってしまうという不具合を生じている。 【0006】 本発明は上記のような不具合を解消するためになされたものであって、例えば植物等の上を人間が歩行する際の踏圧など圧力を高い強度で支持することが可能であり、狭い空間を有効利用することを可能にする植物栽培コンテナ及び植栽設備、並びに植栽設備の施工方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明の植物栽培コンテナは、少なくとも底板と側壁を有し、上方が開放した貯水槽トレーに載置される植物栽培コンテナにおいて、該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、該底板柱状部材の立設箇所以外で、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設け、該底板柱状部材及び該側面柱状部材の上端で区画して、該植物栽培コンテナ内の上部をユニット載置空間、その下部を育成材充填空間とし、該育成材充填空間に育成材が充填され、該ユニット載置空間に板材、支持板を有する部材若しくは芝材からなるユニットが載置されることを特徴とする。底板柱状部材の支持部分と側面柱状部材の支持部分とで、ユニット材を載置するユニット載置空間と育成材充填空間とを区画し、底板柱状部材の上端部と側面柱状部材の上端部より上方をユニット載置空間、底板柱状部材の上端部と側面柱状部材の上端部より下方を育成材充填空間とするものである。 【0008】 また、本発明の植物栽培コンテナは、前記複数の底板柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とすることを特徴とする。 【0009】 また、本発明の植物栽培コンテナは、前記複数の側面柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とすることを特徴とする。 【0010】 また、本発明の植栽設備は、上記植物栽培コンテナの複数が連係部で相互に連結して敷設面に連設されることを特徴とする。 【0011】 また、本発明の植栽設備は、連係部で相互に連結して敷設面に連設される複数の植物栽培コンテナと、植物栽培コンテナの底板からそれぞれが独立して上方に立設する複数の底板柱状部材と、植物栽培コンテナの底板からそれぞれが側壁に沿って立設する複数の側面柱状部材とを備え、該底板柱状部材を平面視略十字形とすることを特徴とする。 【0012】 また、本発明の植栽設備の施工方法は、上記植物栽培コンテナの複数が敷設面に複数連設される植栽設備、又は上記植栽設備の施工方法において、施工現場で植物栽培コンテナを連設し、該連設した植物栽培コンテナに対して育成材を充填することを特徴とする。 【0013】 尚、植物栽培コンテナにユニット材を載置する場合、裏面に凸部が形成されたユニット材を用い、前記凸部が柱状部材間に挟まれた状態でユニット材を載置する等、前記凸部と植物栽培コンテナ本体内に設けられた柱状部材とでユニット材を位置決めして載置するようにしてもよい。また、植物栽培コンテナは、底板に吸水孔が設けられていると共に、上方が開放した貯水槽トレーに載置される構成としてもよい。また、植物栽培コンテナに設けられる柱状部材は、不規則に立設して配置するようにしてもよく、又、複数の柱状部材は、頂部に平面部を有し、その平面部の形状を少なくとも2種以上としてもよい。また、柱状部材は植物栽培コンテナ本体に別体若しくは一体形成することが可能であるが、好適には一体形成するとよい。 【0014】 また、植栽設備は、少なくとも底板と外周壁を有し、上方が開口した植物栽培コンテナで、該植物栽培コンテナ内の上部にユニット載置空間を形成されると共に、該植物栽培コンテナ内の下部に育成材充填空間を形成される植物栽培コンテナを複数敷設して植物栽培コンテナ群を形成し、植物栽培コンテナ群の植物栽培コンテナに複数種類のユニット材を選択的に載置するようにしてもよい。即ち、複数の植物栽培コンテナの内の任意の植物栽培コンテナに任意のユニット材を選択して載置し、少なくとも2種類以上のユニット材を選択して載置する。前記植物栽培コンテナ群に使用する植物栽培コンテナは、上記したような植物栽培コンテナの中から必要なものを適宜選択して使用できる。 【発明の効果】 【0015】 本発明の植物栽培コンテナや植栽設備等は、植物栽培コンテナの底板からそれぞれが独立して上方に立設する複数の底板柱状部材と、植物栽培コンテナの底板からそれぞれが側壁に沿って立設する複数の側面柱状部材を設ける構成により、上からの圧力を個々独立した柱状部材で分散して受け且つ植物栽培コンテナ全体で受けることが可能となり、例えば植物等の上を人間が歩行する際の踏圧等の圧力を高い強度で支持することができる。従って、植物栽培コンテナの破損を防止することができ、又、狭い空間を有効利用することが可能となる。特に、柱状部材を植物栽培コンテナと一体形成する場合には、より高い強度で上からの圧力を支持することができる。 【0016】 また、植物栽培コンテナ本体内の上部空間をユニット載置空間とし、下部を育成材充填空間とし、ユニット載置空間にユニット材を載置する場合には、配置換えやユニット材の交換を行う際に、上部に載置されているユニット材を取り除いて新しいユニット材を載置するだけで行うことができ、その労力や費用を削減することが可能となる。従って、容易に配置換えや交換を行うことができると共に、優れた装飾性を実現することができる。更に、ユニット材の裏面に凸部を形成し、柱状部材間等に凸部を嵌め込む構成とする場合には、ユニット材の位置決めが容易となると共に、人等の歩行によるユニット材の前後左右の移動が強固に規制される。 【0017】 また、柱状部材を不規則な配列で配置する構成とする場合、又は柱状部材の頂部の平面部の形状を少なくとも2種類以上からなるものとして構成する場合には、例えばユニット材が芝材等の場合に芝刈り機等の車輪が柱状部材間に嵌まってしまい、芝刈り機等の別方向への転換を困難にするという不具合を解消することができ、芝刈り機等の方向転換或いは移動がスムーズにできるようになると共に、上からの圧力に対して様々な角度から植物栽培コンテナの破損を防止できる。 【0018】 また、植物栽培用コンテナを貯水トレーの上に載置する構成とする場合には、給水回数を少なくすることが可能となる。また、ユニット材を少なくとも2種類以上で構成する場合には、植物栽培コンテナを複数敷設して植物栽培コンテナ群を形成する際に、ユニット材を選択して様々なレイアウトの緑化エリアを作り出すことが可能となると共に、気分転換等でのレイアウト変更、又はユニット材等の破損時の交換を容易にできる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0019】 以下、本発明の植物栽培コンテナ、及び植物栽培コンテナ群で構成される植栽設備の具体的な実施形態について、図面に沿って説明する。図1から図5は本発明の第1実施形態の植物栽培コンテナを示し、図1は植物栽培コンテナの平面図、図2は植物栽培コンテナの斜視図、図3は植物栽培コンテナのA-A矢視断面図、図4は植物栽培コンテナへのユニット材載置作業説明図、図5は植物栽培コンテナへのユニット材載置状態を示す断面図である。 【0020】 図に於いて植物栽培コンテナ1は、主として底板2と外周壁をなす側板3とを有し、上方が開口するように形成されている。前記底板2には通水兼通気孔4が設けられていると共に、底板2の外面には脚部5が形設されている。前記側板3には内向きへこみ部6が形成されていると共に、側板3の内面には(側面)ユニット支持部7(71)が設けられている。 【0021】 前記通水兼通気孔4は底板2の所定箇所に複数設けられ、植物栽培コンテナ1内の水分を下方へ排出でき、且つ下方から植物栽培コンテナ1内に通気できるようになっている。通水兼通気孔4の数、形状、場所等は、実施形態に限定されるものではなく、様々な数、形状、場所であってよい。なお通水兼通気孔4を設けることは好適な構成であるが、通水兼通気孔4を設けない構成とすることも可能である。 【0022】 前記脚部5は底板2の外面から下方に延びて形設され、通気及び通水(排水)をより良くするようになっている。脚部5の形状、場所及び個数等は本実施形態に限定されるものではないが、底板2の略中央部に設けるようにすると、底板2に対する上方からの圧力に対する抵抗力・耐久力が高まり、より強固に植物栽培コンテナ1本体を保持することが可能となる。 【0023】 前記内向きへこみ部6は側板3において、底板2から植物栽培コンテナ1の開口である上方へ向かうほど或いは上方へ向かう途中で、植物栽培コンテナ1の開口面積が大きくなるように形成されている。内向きへこみ部6を形成することによって、植物栽培コンテナ1を複数敷設した場合に、植物栽培コンテナ1の下方及び側方における通気及び通水(排水)が良好になる。なお内向きへこみ部6を形成すると好適であるが、内向きへこみ部6を設けない構成とすることも可能であり、また、例えば底板2から上方にかけて側板3を斜めに形成して、開口面積が上方に向かうに従って漸次増大するようなテーパ状の側板3としても好適である。 【0024】 前記(側面)ユニット支持部7は水平方向の板状で、ユニット材支持部分である上端に位置する平面部7aを有し、側板3から植物栽培コンテナ1の中央に向かって突出しており、側板3の全域に一体形成されている。植物栽培コンテナ1内の空間はユニット支持部7の平面部7aを境界として分割或いは区画されることになり、図3に示すように、植物栽培コンテナ1内の上部であるユニット支持部7から上方にユニット載置空間8が形成されると共に、植物栽培コンテナ1内の下部であるユニット支持部7から下方に育成材充填空間9が形成される。なおユニット支持部7及びユニット材支持部分の形状、形成状態等は上記構成以外でも、本発明の趣旨の範囲内で適宜である。 【0025】 そして、上記植物栽培コンテナ1に育成材90及びユニット材80を載置するが、これは図4及び図5に示すように、まず最初に植物栽培コンテナ1本体内の下方に設けられた育成材充填空間9に、育成材充填空間9の上端であるユニット支持部7の位置まで育成材90を充填し、その後ユニット材80として例えばウッドデッキ等の板材(板状体)81をユニット支持部7上に載置する。 【0026】 前記育成材90はどのようなものであってもよいが、屋上、或いはベランダ等に敷設する場合は、出来るだけ軽量であればより良く、パーライト、バーミキュライト、ピートモス、バーク堆肥、チャフコン、木質腐朽有機物、ゼオライト等が考えられる。また上記育成材の内の数種類を、又は必要と思われる根腐れ防止用の珪酸塩白土などを植栽の種類、環境などに応じて適宜選定し、これを保水性、排水性を良好にするためバランスよく配合した軽量育成材等が考えられる。かかる通気性良好な軽量育成材を採用することにより、植物の根が傷むことを防止できる。これらの軽量育成材による荷重は、従来の客土の約1/3であり、敷設面への荷重付加を軽減することができる。 【0027】 また前記育成材90は、施工現場で充填するようにしても良いが、予め工場などで充填し、現場ではユニット材80を載置するだけの状態で敷設するようにしてもよく、この場合は、育成材90を育成材充填空間9に充填してプレス機をかけた後に、少なくとも育成材90の上面をバインダ処理することが望ましく、例えば、ポバールなどをお湯でとかした液体を育成材90上に吹き付けて処理、アルギン酸溶液やでんぷん溶液等を散布し、バインダ粉の散布後にその散布面に温水等の水分を供給散布して処理、又はバインダシート等を載置してそのシート上面に温水などの水分を供給散布して処理すること等が考えられ、前記様々な処理後に表面を自然乾燥或いは強制乾燥等して乾燥処理する。 【0028】 なお前記バインダ処理は、植物育成条件や育成材90の混合物の性質、特長などを考慮して適宜選定する。そして、バインダ処理により、少なくとも育成材90の表面が固定化されるので、育成材90の飛散、移動が防止でき、運搬などの取り扱いが極めて容易となる。 【0029】 上記植物栽培コンテナ1は、育成材充填空間9とユニット載置空間8が形成されているため、育成材90を充填する際の目安としてユニット支持部7まで充填すればよく、育成材90の充填作業が容易となると共に、植物栽培コンテナ1を複数敷設した場合に、ユニット支持部7を設けたことで、植物栽培コンテナ1相互間においてユニット材80の上端の高低差が生じにくくなり、且つユニット材80のがたつきが生じにくくなる。 【0030】 さらに、ユニット材80上部からの踏圧は、(側面)ユニット支持部7により受けることができるため、育成材90が極端に圧縮されることがなく、ユニット材80の傾きやがたつきを防止することができる。なおユニット支持部7は上記板状のものの他、後述するような柱状部材でも良好であり、壁状部材等適宜ものが使用可能である。 【0031】 次に、植物栽培コンテナの他の実施形態について説明する。図6及び図7は本発明の第2実施形態の植物栽培コンテナを示し、図6は本発明の第2実施形態の植物栽培コンテナの平面図、図7は本発明の第2実施形態の植物栽培コンテナの斜視図であり、上記第1実施形態と異なる箇所を中心に以下説明する。 【0032】 本実施形態の(側面)ユニット支持部7(71)は、植物栽培コンテナ1の底板2から側板3に沿って所定箇所に複数立設した柱状部材で、その頂部には略十字形、及び略I字形で水平の平面部7aが形成されており、前記平面部7a上でユニット材80の底面を支持する構成である。これにより、本実施形態も上記第1実施形態と同様に、ユニット支持部7の平面部7aによって分割或いは区画され、ユニット載置空間8と育成材充填空間9が形成されることとなる。 【0033】 上記第2実施形態の植物栽培コンテナ1を使用することにより、ユニット材80の上部からの踏圧を植物栽培コンテナ1の側板3及び底板2で支持することができると共に、前記ユニット支持部7が植物栽培コンテナ1の底板2及び側板3に設けられた内向きへこみ部6上で支持されるため、ユニット支持部7の強度が増し、且つ、ユニット支持部7への踏圧を側板3で分散することができ、より強固に載置されるユニット材80を支持可能となる。 【0034】 また、図8及び図9は本発明の植物栽培コンテナの第3実施形態を示し、図8は第3実施形態の植物栽培コンテナの平面図、図9は第3実施形態の植物栽培コンテナの斜視図であり、上記第1実施形態及び第2実施形態と異なる箇所を中心に以下説明する。 【0035】 本実施形態の(底面)ユニット支持部7(72)は、植物栽培コンテナ1の底板2から不規則な配列で立設した複数の柱状部材で、頂部に円形の平面部7aを形成され、前記平面部7a上でユニット材80の底面を支持する構成である。本実施形態も上記第1実施形態、第2実施形態と同様に、ユニット支持部7の平面部7aによって分割或いは区画され、ユニット載置空間8と育成材充填空間9が形成されている。 【0036】 上記第3実施形態の植物栽培コンテナ1を使用することにより、(底面)ユニット支持部7が植物栽培コンテナ1の底板2に複数不規則に立設しているため、ユニット材80の上部からの踏圧を植物栽培コンテナ1の底板2で分散することができ、ユニット材80全面を強固に支持できる。 【0037】 また、図10及び図11は本発明の植物栽培コンテナの第4実施形態を示し、図10は第4実施形態の植物栽培コンテナの平面図、図11は第4実施形態の植物栽培コンテナの斜視図であり、上記第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態と異なる箇所を中心に以下説明する。 【0038】 本実施形態は、上記第2実施形態及び第3実施形態を合わせた構成であり、側面ユニット支持部71は底板2から側板3に沿って所要箇所に複数立設する柱状部材で、頂部に略十字形及び略I字形の平面部71aが形成されていると共に、底面ユニット支持部72は底板2で且つ側面ユニット支持部71が立設した箇所以外に立設する複数の柱状部材で、頂部に円形の平面部72aが形成されている。水平である平面部71aと平面部72aは略同じ高さで略同一平面を形成し、前記平面部71a、72aによって分割或いは区画され、ユニット載置空間8と育成材充填空間9が形成されており、ユニット材80の底面は前記略十字形の平面部71aと円形の平面部72aで支持する構成である。 【0039】 上記第4実施形態の植物栽培コンテナ1を使用することにより、側面ユニット支持部71が所要箇所に、且つ底面ユニット支持部72が底板2に複数不規則に立設し、2種類の平面部71a、72aが多数形成されているため、ユニット材80上部等あらゆる角度からの踏圧に対して、ユニット材80全面を強固に支持できる。また、ユニット材80が芝材82である場合、芝刈り機等の車輪がユニット支持部7である柱状部材間に嵌まってしまい、別方向への転換を困難にするという不具合を解消でき、芝刈り機等の方向転換或いは移動をスムーズにできる。 【0040】 また、図12から図18までは本発明の植物栽培コンテナの第5実施形態を示し、図12は第5実施形態の植物栽培コンテナの平面図、図13は第5実施形態の植物栽培コンテナの斜視図、図14は第5実施形態の植物栽培コンテナの育成材充填状態の斜視図、図15は第5実施形態の植物栽培コンテナへのユニット材(板材)載置作業説明図、図16は第5実施形態の植物栽培コンテナへのユニット材(板材)載置状態を示す斜視図、図17は第5実施形態の植物栽培コンテナへのユニット材(芝材)載置作業説明図、図18は第5実施形態の植物栽培コンテナのユニット材(芝材)載置状態を示す斜視図であり、上記第1乃至4実施形態と異なる箇所を中心に以下説明する。 【0041】 本実施形態は上記第4実施形態と類似し、側面ユニット支持部71は底板2から側板3に沿って所定箇所に複数立設した柱状部材で、頂部に略十字形の平面部71aが形成されていると共に、底面ユニット支持部72は前記側面ユニット支持部71が立設した箇所以外で且つ底面から複数立設する柱状部材で、頂部には平面視で略十字形、略L字形、略逆L字形、略I字形等様々な形状の平面部72aが形成されている。平面部71a、72aは略同じ高さで水平に略同一平面を形成し、前記平面部71a、72aによって分割或いは区画され、ユニット載置空間8と育成材充填空間9が形成され、ユニット材80の底面は前記平面部71aと平面部72aで支持する構成である。 【0042】 さらに底板2には頂部に吸水孔10aを設けられた下向き凸部10が形成されており、前記下向き凸部10によって、ユニット材80の上部からの踏圧に対して、植物栽培コンテナ1全体の歪みを防止するように構成されている。即ち、ユニット材80上部からの踏圧を側面ユニット支持部71と底面ユニット支持部72の両方で支持して、側面ユニット支持部71にかかる圧力は側板3或いは側板3及び底板2で分散し、底面ユニット支持部72にかかる圧力は底板2で分散すると共に、側板3にかかる圧力は側板3の下方に設けられた脚部5により受け、底板2の略中央部付近の圧力を前記下向き凸部10で受けるように形成されている。 【0043】 そして、図14に示すように、植物栽培コンテナ1の育成材充填空間9に育成材90を充填する場合、それぞれユニット支持部71、72の頂部である平面部71a、72aが育成材90の上部よりも僅かに高くなるように育成材90を充填すればよく、育成材90の充填量を容易に確認することができるようになっている。また、上記植物栽培コンテナ1内の育成材充填空間9に育成材90を充填した後に、ユニット材80として板材81(木材、石材、鉄材、プラスチック材等材質は問わない)或いは図17及び図18に示すような芝生82aを有する芝材82(天然芝、人工芝等問わない)等を上部から載置するだけで、植物栽培コンテナ1が完成するように構成されている。 【0044】 以上のように第5実施形態例の植物栽培コンテナ1を使用することにより、植物栽培コンテナ1本体の強度が増すと共に、ユニット材80上部からの圧力を分散して受けることができ、植物栽培コンテナ1本体やユニット材80の歪みや破損を極力防止することができる。また、ユニット材80を交換するだけで、植物栽培コンテナ1を使用して植物の栽培ができ、或いはデザインデッキの載置や交換を容易にすることができる。ユニット材80が万一破損した場合も容易に新しいユニット材80と交換することが可能であり、労力や費用面を軽減することができる。 【0045】 また、図19から図24までは上記第5実施形態の植物栽培コンテナ1に様々なユニット材を載置する場合を示し、図19は第1変形例のユニット材裏面を示す斜視図、図20は植物栽培コンテナへ第1変形例のユニット材を載置した状態を示す平面図、図21は第2変形例のユニット材裏面を示す斜視図、図22は植物栽培コンテナへ第2変形例のユニット材を載置した状態を示す平面図、図23は第3変形例のユニット材裏面を示す斜視図、図24は植物栽培コンテナへ第3変形例のユニット材を載置した状態を示す平面図である。 【0046】 図19から図24のユニット材80は板材81で、前記ユニット材80には裏面に凸部80aが形成されており、この凸部80aが様々な形状で形成され、植物栽培コンテナ1内に立設している側面ユニット支持部71或いは底面ユニット支持部72等の間に挟まるように構成されている。即ち、凸部80aが側面ユニット支持部71或いは底面ユニット支持部72等の間で狭持され、又は嵌合されることになる。 【0047】 図19及び図20のユニット材80には、ユニット材80の裏面に2本の四角柱状の凸部80aが形成され、このユニット材80を植物栽培コンテナ1のユニット載置空間8に載置した場合に、第5実施形態の植物栽培コンテナ1における一番側板側にある底面ユニット支持部72と対応する側面ユニット支持部71間に凸部80aが挟まるようになっている。 【0048】 図21及び図22のユニット材80には、ユニット材80の裏面に方形枠状の凸部80aが形成され、このユニット材80を植物栽培コンテナ1のユニット載置空間8に載置した場合に、第5実施形態の植物栽培コンテナ1における一番側板側にある底面ユニット支持部72と対応する側面ユニット支持部71間に凸部80aが挟まるようになっている。 【0049】 図23及び図24のユニット材80には、ユニット材80の裏面に略#形状の凸部80aが形成され、このユニット材80を植物栽培コンテナ1のユニット載置空間8に載置した場合に、底面ユニット支持部72間に凸部80aが挟まれるようになっている。 【0050】 上記のようにユニット材80の裏面に凸部80aを形成することにより、ユニット材80の位置決めが容易となると共に、ユニット材80上部からの圧力に対して、或いは前後左右等の横方向の圧力に対しても、側面ユニット支持部71や底面ユニット支持部72でユニット材80を良好に支持することが可能となる。 【0051】 さらに、前記凸部80aが植物栽培コンテナ1の育成材充填空間9に充填されている育成材90内に入り込むようにすることで、育成材90全体及び植物栽培コンテナ1全体でユニット材80に対する圧力を受けることとなり、ユニット材80の安定性が増し、前後左右等の横方向の圧力に特に強くなる。又ユニット材80の載置状態を維持することで、より馴染んだ状態で植物栽培コンテナ1に載置されることとなる。なお上記凸部80aには様々な形状が考えられ、前記第1?4実施形態の植物栽培コンテナ1等に適用可能な凸部81の構成も本発明に含まれる。 【0052】 また、図25から図28までは第5実施形態の植物栽培コンテナの使用例を示し、図25は第5実施形態の植物栽培コンテナと貯水トレーを示す斜視図、図26は第5実施形態の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材の育成材がない状態での載置作業説明図、図27は第5実施形態の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材の育成材がない状態での載置状態を示す断面図、図28は第5実施形態の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材に育成材を充填した状態での載置状態を示す断面図である。 【0053】 上記使用例は、底面灌水型である第5実施形態の植物栽培コンテナ1を貯水トレー11上に載置し、前記植物栽培コンテナ1上に凸部80aを有するユニット材80を載置する構成であり、前記植物栽培コンテナ1には底板2の下向き凸部(吸水凸部)10が設けられ、前記下向き凸部(吸水凸部)10の頂部には吸水用の吸水孔(開口部)10aが形成されている。これにより、貯水トレー11上に載置された植物栽培コンテナ1は、貯水トレー11内に貯留されている水分を下向き凸部10の吸水孔10aから毛細管現象により吸水するようになっている。 【0054】 上記植物栽培コンテナ1を貯水トレー11上に載置する場合、貯水トレー11内の水分の上位部(水面)が植物栽培コンテナ1の底板2よりも下方に位置し、下向き凸部10及び脚部5が水没するように構成し、植物栽培コンテナ1と貯水トレー11内の水分の上位部(水面)間に空気層を形成する。この空気層内の空気は通水兼通気孔4から育成材90内に補給され、根腐れを防止し、また、降雨時などの余剰水は通水兼通気孔4を通って貯水トレー11内に貯留されるようになっている。 【0055】 上記使用例において育成材90を充填して使用する場合は、植物栽培コンテナ1を貯水トレー11内に載置し、この植物栽培コンテナ1の育成材充填空間9内に育成材90を充填し、上方からユニット載置空間8にユニット材80を載置することで完成する。 【0056】 上記のように植物栽培コンテナ1及び貯水槽トレー11等からなる植物栽培コンテナとして使用することで、ユニット材80を強固に支持可能であると共に、ユニット材80が芝材82である場合に、水分供給回数を極端に軽減することが可能となる。加えて下向き凸部10によって、植物栽培コンテナ1の底板2にかかる圧力を支えることもできる。 【0057】 また、図29は本発明におけるユニット材の第4変形例(ライト材)を示す正面図である。ユニット材80であるライト材83は、上記板材81のユニット材80と同様に、裏面に凸部83aを形成された支持板83b上に支柱83cが立設し、支柱83cの上部にライト83dが固設された構成である。 【0058】 上述した各実施形態においては、ユニット材80として板材81、芝材82、ライト材83について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ライト83dの代わりに、支持板上に腰掛け、机、時計台、手摺り、支柱、遊具等に使用する支柱等を固定しても良く、その他に、支持板の略中央部に噴水用の開口部を形成し、この噴水用開口部と水道を管で連結し、噴水材のユニット材80を形成するようにしても良い。又芝材82のかわりに、植木、花等の植物をユニット材80として使用するようにしても良い。 【0059】 上記のような様々なユニット材80を使用することで、植物栽培コンテナ1を複数敷設した場合に、より様々なレイアウトを楽しむことができ、気分転換等をすることができる。 【0060】 次に植物栽培コンテナ1を複数敷設し、植物栽培コンテナ群1aを形成する場合について説明する。図30から図32までは植物栽培コンテナ1を複数敷設し、植物栽培コンテナ群1aを形成する場合の斜視図であり、図30は植物栽培コンテナ群の一部ユニット非載置状態を示す斜視図、図31は植物栽培コンテナ群の一部ユニット非載置状態と縁石を示す斜視図、図32は植物栽培コンテナ群の設置完了状態を示す斜視図である。 【0061】 図に於いて植物栽培コンテナ群1aは、第5実施形態の植物栽培コンテナ1を複数敷設して形成したものであり、複数連設した植物栽培コンテナ1内には必要に応じて各々育成材90を充填し、ユニット支持部7で支持するようにユニット材80を載置している。植物栽培コンテナ群1aの周囲には必要な側辺に沿って縁石12が敷設されている。前記ユニット材80は好適には少なくとも2種類以上、例えば板材81、芝材82、ライト材83等からなるようにし、任意の植物栽培コンテナ1に前記ユニット材80を選択的に載置できるようにする。好適には、上記植物栽培コンテナ群1aに使用する植物栽培コンテナ1においては、側板3に内向きへこみ部6が形成されているので、前記内向きへこみ部6間及び貯水トレー11上部に空間部が形成され、前記空間部に給水管を敷設する。 【0062】 上記植物栽培コンテナ群1aによって、任意の植物栽培コンテナ1上に様々なユニット材80を載置することができ、多様な庭園等を形成することが可能となる。加えて、前記植物栽培コンテナ群1aの端縁を縁石12等で覆うことによって、よりデザイン性に優れた庭園を提供することができる。また、好適には内向きへこみ部6で形成された空間部に給水管を敷設する構成とし、外観上より優れた植物栽培コンテナ群1aが形成できる。加えて、前記給水管を水道から電磁弁等を介して自動的に給水できるように構成すれば、給水作業が省け、より容易に植物の栽培をすることができる。 【0063】 さらに、植物栽培コンテナ群1aを貯水槽トレー11上に載置した植物栽培コンテナ1によって形成する場合、例えば貯水トレー11の側壁に鉤型の連係部を形成すると共に、側壁或いは前記連係部に水流用の凹溝を形成し、それぞれの貯水トレー11を前記鉤型の連係部により連結する。この連結された貯水トレー群上に育成材90を充填した植物栽培コンテナ1を載置し、最後に好みのユニット材80をレイアウトに合わせて載置する。これにより、各貯水トレー11間を前記凹溝を介して水分が流れ、少なくとも一箇所に水分を補給すれば全貯水トレーに行き渡り、且つ長期間水分補給をする必要が無くなる。好適には前記凹溝を給水管に直交する一方向に規制して設け、水流方向を前記一方向に規制するようにすると前記作用はより顕著となる。 【0064】 また上記構成においては、複数敷設された前記貯水トレー11の流水に対して、流水経路の最終端の貯水トレー11の凹溝がオーバーフロー用の凹溝としての役割を果たし、過剰給水や降雨時等の余剰水をこのオーバーフロー用の凹溝から排出することが可能となる。 【0065】 以上、本発明の植物栽培コンテナ1及び植物栽培コンテナ群1aについて説明したが本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、以下のような拡張及び変形をすることができる。 【0066】 前記植物栽培コンテナ群1aにおいて、連結方法として、個々の植物栽培コンテナ1本体に連係部を形成し、連結するように構成してもよく、より植物栽培コンテナ1相互の連結が強固となると共に、安定性が増す。 【0067】 また、縁石12はどのような形状であってもよく、植物栽培コンテナ1の側板3を隠す形状であれば良い。また、その他に、縁石12と植物栽培コンテナ1間にボーダー充填材を埋める構成であっても良い。 【0068】 また、植物栽培コンテナ1の形状は実施形態に限定されるものではなく、様々な形状のものであっても良く、例えば円形、半円、三角形、六角形など様々である。 【0069】 また、ユニット支持部7の構成及び形状は上記実施形態に限定されるものではなく、ユニット載置空間8と育成材充填空間9を形成可能な構成であればどの様な構成、形状であっても良い。 【0070】 また、ユニット材80の裏面に構成される凸部80aもどの様な形状、構成であってもよく、ユニット支持部7と挟まる構成、或いは嵌合、係合可能な構成であれば良い。 【産業上の利用可能性】 【0071】 本発明は、例えば屋上、ベランダ等に設置する植栽設備に利用することができる。 【図面の簡単な説明】 【0072】 【図1】本発明の第1実施形態の植物栽培コンテナの平面図。 【図2】本発明の第1実施形態の植物栽培コンテナの斜視図。 【図3】本発明の第1実施形態の植物栽培コンテナのA-A矢視断面図。 【図4】本発明の第1実施形態の植物栽培コンテナへのユニット材載置作業説明図。 【図5】本発明の第1実施形態の植物栽培コンテナへのユニット材載置状態を示す断面図。 【図6】本発明の第2実施形態の植物栽培コンテナの平面図。 【図7】本発明の第2実施形態の植物栽培コンテナの斜視図。 【図8】本発明の第3実施形態の植物栽培コンテナの平面図。 【図9】本発明の第3実施形態の植物栽培コンテナの斜視図。 【図10】本発明の第4実施形態の植物栽培コンテナの平面図。 【図11】本発明の第4実施形態の植物栽培コンテナの斜視図。 【図12】本発明の第5実施形態の植物栽培コンテナの平面図。 【図13】本発明の第5実施形態の植物栽培コンテナの斜視図。 【図14】本発明の第5実施形態の植物栽培コンテナの育成材充填状態の斜視図。 【図15】本発明の第5実施形態の植物栽培コンテナへのユニット材(板材)載置作業説明図。 【図16】本発明の第5実施形態の植物栽培コンテナへのユニット材(板材)載置状態を示す斜視図。 【図17】本発明の第5実施形態の植物栽培コンテナへのユニット材(芝材)載置作業説明図。 【図18】本発明の第5実施形態の植物栽培コンテナのユニット材(芝材)載置状態を示す斜視図。 【図19】本発明の第1変形例のユニット材裏面を示す斜視図。 【図20】植物栽培コンテナへ第1変形例のユニット材を載置した状態を示す平面図。 【図21】本発明の第2変形例のユニット材裏面を示す斜視図。 【図22】植物栽培コンテナへ第2変形例のユニット材を載置した状態を示す平面図。 【図23】本発明の第3変形例のユニット材裏面を示す斜視図。 【図24】植物栽培コンテナへ第3変形例のユニット材を載置した状態を示す平面図。 【図25】第5実施形態の植物栽培コンテナと貯水トレーを示す斜視図。 【図26】第5実施形態の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材の育成材がない状態での載置作業説明図。 【図27】第5実施形態の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材の育成材がない状態での載置状態を示す断面図。 【図28】第5実施形態の植物栽培コンテナと貯水トレーとユニット材に育成材を充填した状態での載置状態を示す断面図。 【図29】本発明におけるユニット材の第4変形例(ライト材)を示す正面図。 【図30】植物栽培コンテナ群の一部ユニット非載置状態を示す斜視図。 【図31】植物栽培コンテナ群の一部ユニット非載置状態と縁石を示す斜視図。 【図32】植物栽培コンテナ群の設置状態を示す斜視図。 【符号の説明】 【0073】 1 植物栽培コンテナ 1a 植物栽培コンテナ群 2 底板 3 側板 4 通水兼通気孔 5 脚部 6 内向きへこみ部 7 ユニット支持部 71 側面ユニット支持部 72 底面ユニット支持部 7a、71a、72a 平面部 8 ユニット載置空間 80 ユニット材 80a 凸部 9 育成材充填空間 90 育成材 10 下向き凸部 10a 吸水孔 11 貯水トレー 12 縁石 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも底板と側壁を有し、上方が開放した貯水槽トレーに載置される植物栽培コンテナにおいて、 該底板からそれぞれが独立して上方に立設し且つ踏圧を支持する複数の底板柱状部材と、 該底板柱状部材の立設箇所以外で、該底板からそれぞれが側壁に沿って立設し且つ踏圧を支持する複数の側面柱状部材とを設け、 該底板柱状部材及び該側面柱状部材の上端で区画して、該植物栽培コンテナ内の上部をユニット載置空間、その下部を育成材充填空間とし、 該育成材充填空間に育成材が充填され、 該ユニット載置空間に板材、支持板を有する部材若しくは芝材からなるユニットが載置されることを特徴とする植物栽培コンテナ。 【請求項2】 前記複数の底板柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とすることを特徴とする請求項1記載の植物栽培コンテナ。 【請求項3】 前記複数の側面柱状部材のそれぞれを平面視略十字形とすることを特徴とする請求項2記載の植物栽培コンテナ。 【請求項4】 請求項1乃至3の何れかに記載の植物栽培コンテナの複数が連係部で相互に連結して敷設面に連設されることを特徴とする植栽設備。 【請求項5】請求項1乃至3の何れかに記載の植物栽培コンテナの複数が敷設面に複数連設される植栽設備、又は請求項4記載の植栽設備の施工方法において、施工現場で植物栽培コンテナを連設し、該連設した植物栽培コンテナに対して育成材を充填することを特徴とする植栽設備の施工方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2009-01-19 |
結審通知日 | 2009-02-27 |
審決日 | 2009-03-12 |
出願番号 | 特願2005-328501(P2005-328501) |
審決分類 |
P
1
113・
113-
ZA
(A01G)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 郡山 順 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
石川 好文 五十幡 直子 |
登録日 | 2006-04-21 |
登録番号 | 特許第3795058号(P3795058) |
発明の名称 | 植物栽培コンテナ及び植栽設備並びに植栽設備の施工方法 |
代理人 | 藤本 昇 |
代理人 | 元井 成幸 |
代理人 | 高橋 隆二 |
代理人 | 高橋 隆二 |
代理人 | 元井 成幸 |