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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1197459
審判番号 不服2006-9823  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-15 
確定日 2009-05-13 
事件の表示 特願2002-511066「メモリコントローラハブ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月20日国際公開、WO01/97006、平成16年 2月 5日国内公表、特表2004-503859〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2001年5月25日(パリ条約による優先権主張2000年6月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年10月21日付けで拒絶理由が通知され、平成18年1月25日付けで手続補正がなされたものの、同年2月9日付けで拒絶査定がなされた。その後、同年5月15日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年1月25日付けで補正された明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
メモリコントローラハブであって;
システムメモリを使用してグラフィックスデータを記憶しかつそのシステムメモリの機能を制御するように構成されたデータストリームコントローラ;
プロセッサインタフェース;
システムメモリインタフェース;
前記データストリームコントローラに連結されかつグラフィックスデータにグラフィックス操作を実行するように構成されたグラフィックスサブシステム;及び
前記メモリコントローラハブを外部グラフィックス装置に連結するように構成された専用グラフィックスポート;
を備え、
前記専用グラフィックスポートは、第1モードにおいてグラフィックスデータを前記外部グラフィックス装置と前記システムメモリインターフェースとの間で転送し、第2モードにおいてグラフィックスデータを前記グラフィックスサブシステムと前記外部グラフィックス装置に代えて同専用グラフィックスポートに連結されたローカルメモリとの間で転送するように構成されたメモリコントローラハブ。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由には、 後藤弘茂,2000年のIntel,ASCII,日本,株式会社アスキー,2000年1月1日,第24巻,第1号,p.244-249(CSDB番号:国内技術雑誌2001-00689-012)(以下、「引用文献」という。)が引用された。
そこで、本願発明の進歩性判断の前提となる引用文献の適格性についてまず検討する。この引用文献に記載されている815チップというのは、本件請求人の製品であり、また、引用文献中に「OEMメーカーからの情報によると、815を使うと、メーカーは複数のマザーボードで3種類のモデル構成ができるようになるという。」と記載されているように、雑誌の記事内容は本件請求人の製品のOEMメーカーからの情報に基づいている。そのため、この雑誌による815チップセットの公表は、請求人にとって「意に反して公知」となったことも考えられる。
特許法第30条第2項では「特許を受ける権利を有する者の意に反して第29条第1項各号の一に該当するに至った発明について、その該当するに至った日から六月以内にその者が特許出願をしたときも、前項と同様とする。」とされ、例外的に新規性の喪失を適用しない旨の規定がある。本件について関係する出願の経緯をみると、
2000年1月1日 引用文献による815チップの機能の公表
2000年6月14日 優先権の基礎となる米国出願
2001年5月25日 国際出願(日本国への出願日は2001年5月25日となる。)
となっている。
そこで、仮に引用文献による公表が「意に反した」ものである場合、前述のとおり特許法第30条第2項の規定によれば、2000年7月1日までに特許出願すれば例外的に新規性の喪失を免れることができる。しかしこの場合の出願は日本国への出願のことであり、本件の場合は日本国への出願は2001年5月25日となるから、「該当するに至った日」から六月を越えており、特許法第30条第2項の適用を受けられない。なお、米国出願は「該当するに至った日」から六月以内であるが、パリ条約の優先権の効果は、第1国出願と第2国出願の間に行われた行為によって不利益を受けないというものであり、日本出願の出願日が米国出願の出願日に遡及するものではないから、特許法第30条第2項の規定に関してパリ条約の優先権は適用されない。
従って、仮に引用文献による公表が「意に反する」ものであったとしても、本件においては特許法第30条第2項の適用を受けることができない。

そこで、引用文献の技術内容を検討するに、引用文献には次の事項が図面と共に記載されている。

A.「2000年の主役は815チップセット
815はIntel810チップセットと同様に、3Dグラフィックスコアを統合したチップセットで、サポートするメモリはSDRAMだと、パソコン業界関係者の間では言われている。違いは、AGP4xグラフィックスチップを外付けもできることだ。810にAGPインターフェースをつけたものが815ということになる。
OEMメーカーからの情報によると、815を使うと、メーカーは複数のマザーボードで3種類のモデル構成ができるようになるという。
(1)は、815が内蔵するグラフィックスコアを使い、ビデオメモリはメインメモリを共有する場合。これは810と同じで、もっともローコストだが、メモリ帯域を必要とする3Dグラフィックスの性能は低くなる。
(2)は、815の内蔵グラフィックスコアを使わないで、AGPグラフィックスカードを外付けする場合。これなら、米nVIDIA社のGeForceのようなハイエンドグラフィックスを搭載できるため、最高のパフォーマンスを発揮できる。
(3)は、815の内蔵グラフィックスコアを使うが、AGPインターフェースにディスプレイキャッシュを搭載するケース。この場合は、2Dグラフィックス性能は(1)のケースと変わらないが、メモリの帯域が必要な3Dグラフィックスの性能が向上する。つまり、(1)と(2)の中間的なソリューションだ。
こうした構成が可能となるため、815マザーボードでは、1種類でローエンドからハイエンドまでをカバーすることができるようになった。また、(1)や(3)の構成でも、エンドユーザーがマシンを買ったあとに、AGPグラフィックスカードを買い足してグラフィックス性能を上げることができるようになる。」(246頁右欄4行から247頁左欄9行)

また、上記(1)から(3)の3種類のモデル構成として、246頁には3つの図が示されており、各図には以下の事項が記載されている。

B.「左図:内蔵グラフィックスを使う
内蔵グラフィックスコア、AGP4xインターフェース、SDRAMインターフェースを有するGMCHにおいて、AGPスロットは持たないか、空いたままとなっており、PC133メインメモリに一部をビデオメモリとして利用している。

中央図:AGPグラフィックスチップを使う
内蔵グラフィックスコア、AGP4xインターフェース、SDRAMインターフェースを有するGMCHにおいて、AGPグラフィックスチップとビデオメモリを搭載したAGPグラフィックスカードがAGPスロットに挿入され、PC133メインメモリはビデオメモリとして利用しない。

右図:内蔵グラフィックスコアとディスプレイキャッシュを使う
内蔵グラフィックスコア、AGP4xインターフェース、SDRAMインターフェースを有するGMCHにおいて、ディスプレイキャッシュSDRAMがAGPスロットに挿入され、PC133メインメモリの一部はビデオメモリ領域となっている。」

上記Bに記載のGMCHとは、グラフィクスメモリコントローラハブのことであり、メモリとマイクロプロセッサの接続などを担うMCHにグラフィックスアクセラレータ機能が統合されたものであるから、プロセッサインターフェースを有することは明らかである。また、メモリ制御機能を持つメモリコントローラを有することも明らかであり、上記Bの左図、右図をみるとメインメモリの一部をビデオメモリ領域として使用しているから、このメモリコントローラはメインメモリの一部にビデオデータ記憶する機能を有するものである。

3種類のモデル構成の1つは、上記Aの(2)に記載のモデルであり、これは上記Bの中央図に示されるモデルである。それは、AGPスロットに、AGPグラフィックスチップとビデオメモリを搭載したAGPグラフィックスカードが挿入され、内蔵グラフィックスコアを使用せずにAGPグラフィックスカードのAGPグラフィックスコアとビデオメモリを使用してグラフィックス処理を実行するものである。もう一つのモデルは、上記A(3)に記載のモデルであり、これは上記Bの右図に示されるモデルである。それは、AGPスロットにディスプレイキャッシュSDRAMが挿入され、内蔵グラフィックスコアとディスプレイキャッシュSDRAMを使用してグラフィック処理を行なうものである。

以上より、引用文献には次の発明が記載されている。

グラフィックスメモリコントローラハブ(GMCH)であって、
メインメモリの一部をビデオメモリ領域として利用しメインメモリの機能を制御するように構成されたメモリコントローラと、
プロセッサインターフェースと、
SDRAMインターフェースと、
ビデオデータにグラフィックス操作を実行するように構成された内蔵グラフィックスコアと、
グラフィックスメモリコントローラハブにAGPグラフィックスカードを挿入するように構成されたAGPスロットを備え、
前記AGPスロットは、第1のモデル構成としてAGPグラフィックスチップとビデオメモリを搭載したAGPグラフィックスカードが挿入され、内蔵グラフィックスコアとメインメモリを使用せずにAGPグラフィックスカードのAGPグラフィックスコアとビデオメモリを使用してグラフィックス処理を実行し、第2のモデル構成として、ディスプレイキャッシュSDRAMが挿入され、内蔵グラフィックスコアとディスプレイキャッシュSDRAMを使用してグラフィック処理を行なうように構成されたグラフィックスメモリコントローラハブ

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「メインメモリ」「ビデオデータ」「メモリコントローラ」「内蔵グラフィックスコア」「AGPグラフィックスカード」は、それぞれ、本願発明の「システムメモリ」「グラフィックスデータ」「データストリームコントローラ」「グラフィックスサブシステム」「外部グラフィックス装置」に相当する。
引用発明の「SDRAMインターフェース」は、メインメモリとしてのSDRAMとのインターフェースをとるものであるから、本願発明の「システムメモリインタフェース」に相当する。
本願発明の対象は「メモリコントローラハブ」であるが、この「メモリコントローラハブ」に専用グラフィックスポートを有するとの表現をとっているのに対し、引用発明では本願発明の「専用グラフィックスポート」に相当する部分を含めてグラフィックスメモリコントローラハブと表現しているのであって、本願発明の「メモリコントローラハブ」と引用発明の「グラフィックスメモリコントローラハブ」とは実質的に同等のものである。
引用発明では、メインメモリの一部をビデオメモリ領域として利用しているのであるから、この領域にビデオデータを記憶しており、引用発明における「メインメモリの一部をビデオメモリ領域として利用しメインメモリの機能を制御するように構成されたメモリコントローラ」は、本願発明の「システムメモリを使用してグラフィックスデータを記憶しかつそのシステムメモリの機能を制御するように構成されたデータストリームコントローラ」に相当するものである。
引用発明のグラフィックスメモリコントローラハブは、MCHにグラフィックスアクセラレータ機能が統合されたものであるから、内部グラフィックスコアはメモリコントローラに連結されているとみることができる。従って、引用発明の「ビデオデータにグラフィックス操作を実行するように構成された内蔵グラフィックスコア」は、本願発明の「前記データストリームコントローラに連結されかつグラフィックスデータにグラフィックス操作を実行するように構成されたグラフィックスサブシステム」に相当する。
引用発明の「AGPスロット」は、アクセラレイティドグラフィクスポートのスロットのことであるから、専用のグラフィックスポートを有するものであり、引用発明の「AGPスロット」と本願発明の「専用グラフィックスポート」は同等のものである。
引用発明の第2のモデル構成は、AGPスロットにAGPグラフィックスカードの代わりにディスプレイキャッシュSDRAMが挿入されるものであり、内蔵グラフィックスコアがディスプレイキャッシュSDRAMを使用する際には、ディスプレイキャッシュSDRAMとの間でグラフィックスデータの転送が行われることになり、また、ディスプレイキャッシュSDRAMはローカルメモリと言って良いものであるから、引用発明において「 第2のモデル構成として、ディスプレイキャッシュSDRAMが挿入され、内蔵グラフィックスコアとディスプレイキャッシュSDRAMを使用してグラフィック処理を行う」際の動作は、本願発明における「第2モードにおいてグラフィックスデータを前記グラフィックスサブシステムと前記外部グラフィックス装置に代えて同専用グラフィックスポートに連結されたローカルメモリとの間で転送する」ことに相当するものである。
引用発明の第1のモデル構成は、AGPスロットにAGPグラフィックスカードが挿入されたものであり、本願発明の第1モードは外部グラフィックス装置を専用グラフィックスポートに連結したときの動作を規定するものであるから、引用発明の第1のモデル構成の時の動作態様は本願発明の第1モードに対応し、共に、外部グラフィックス装置を用いてグラフィックス処理を行う点で共通している。そして、引用発明ではメインメモリをビデオメモリとして利用しないことから、グラフィックスデータを前記外部グラフィックス装置と前記システムメモリインターフェースとの間で転送するものでないと言える。

本願発明と引用発明とは次の点で一致する。
(一致点)
メモリコントローラハブであって;
システムメモリを使用してグラフィックスデータを記憶しかつそのシステムメモリの機能を制御するように構成されたデータストリームコントローラ;
プロセッサインタフェース;
システムメモリインタフェース;
前記データストリームコントローラに連結されかつグラフィックスデータにグラフィックス操作を実行するように構成されたグラフィックスサブシステム;及び
前記メモリコントローラハブを外部グラフィックス装置に連結するように構成された専用グラフィックスポート;
を備え、
前記専用グラフィックスポートは、
第1モードにおいて外部グラフィックス装置を用いてグラフィックス処理を行い、第2モードにおいてグラフィックスデータを前記グラフィックスサブシステムと前記外部グラフィックス装置に代えて同専用グラフィックスポートに連結されたローカルメモリとの間で転送するように構成されたメモリコントローラハブ

一方、本願発明と引用発明とは次の点で相違する。
(相違点)
第1モードにおいて、外部グラフィックス装置を用いたグラフィックス処理が、本願発明では、グラフィックスデータを前記外部グラフィックス装置と前記システムメモリインターフェースとの間で転送するものであるのに対し、引用発明はグラフィックスデータを前記外部グラフィックス装置と前記システムメモリインターフェースとの間で転送するものでない点

5.相違点についての検討
本願出願日以前におけるAGPに関する周知事項として、特開平11-167523号公報には、次の記載がある。
(あ) 「【0007】一方、これら精巧なマイクロプロセッサは、コンピュータ支援製図および製造、エンジニアリング・シミュレーション、ゲーム等のために、先進の三次元(「3-D」)グラフィックスを使用する複雑なアプリケーション・プログラムを実行することを可能にした。増々複雑化する3-Dグラフィックスは、メモリに格納されている、増々大量化するグラフィックス・データに対するアクセス速度を一層高速化しなければならない。このメモリは、ビデオ・グラフィックス・プロセッサ・システムの一部であってもよいが、好ましくは、メイン・コンピュータ・システム・メモリの一部であれば、最良である(コストが最も低い)。インテル社は、"Accelerated Graphics Port"(AGP:加速グラフィックス・ポート)と呼ばれる低コストであるが改善された3-Dグラフィックス規格を率先して提案した。AGP3-Dを用いると、グラフィックス・データ、特に、テクスチャを、グラフィックス・コントローラのローカル・メモリからコンピュータ・システム・メモリに移行させることができる。コンピュータ・システム・メモリはグラフィックス・コントローラのローカル・メモリよりも低コストであり、グラフィックス・データの格納以外にも、多数の他の使用に容易に合わせることができる。
【0008】インテル社が提案したAGP3-Dグラフィックス規格は、高速データ・パイプライン、即ち、「AGPバス」をグラフィックス・コントローラとシステム・メモリとの間に定義する。このAGPバスは、グラフィックス・コントローラがシステム・メモリからテクスチャを読み出し、しかもコンピュータ・システムの他の非グラフィックス・オペレーションに影響を及ばすことのない程の十分な帯域幅を有する。インテル社の3-Dグラフィックス規格は、信号、プロトコル、電気的、および機械的仕様をAGPバスおよびそれに取り付けられているデバイスに与える仕様書である。この仕様書は、1996年7月31日付けで、"Accelerated Graphics Port Interface Specification Revision 1.0"(加速グラフィックス・ポート・インターフェース仕様書改訂第1.0版)と題するものである。その開示内容は、この言及により本願にも含まれるものとする。AGP仕様書は、カリフォルニア州サンタ クララのインテル社から入手可能である。」

また、AGPに関する周知事項として、鈴木直美,鈴木直美の「PC Watch 先週のキーワード」第29回:4月27日?5月8日,[online],1998年,株式会社インプレス,[2006年2月1日検索],インターネット には、次の記載がある。
(い)「●AGP(Accelerated Graphics Port)エージーピー(アクセラレイティドグラフィクスポート)
Intel社が'96年7月にリリースした、グラフィックスアクセラレータ専用の高速なバス規格。バス幅はPCI(Peripheral Component Interconnect)と同じ32bitだが、バスクロック33MHzのPCIに対し、AGPはシステムバスと同じ66MHzをベースに(現在ではシステムバス100MHzの製品もあるが)、2倍、4倍('98年3月リリースのリビジョン2.0で追加)の高速転送モードを持ち、主として3Dグラフィックスやフルモーションビデオに有効な以下の2つのメリットを提供する。

・高速な専用バスの確保
さまざまなデバイスが使用するPCIバスとは独立した形で、グラフィックスアクセラレータ専用の高速バスを用意することによって、グラフィックスシステムのパフォーマンスを向上させる。 最大転送速度は、標準クロックの1Xモードで266MB/秒、倍クロックの2Xモードで533MB/秒、4倍クロックの4Xモードで1,066MB/秒(*1)。

・メインメモリの共有
メインメモリの一部をビデオメモリにマッピングする機能をサポートしており、テクスチャマッピング(立体の表面にグラフィックスを貼ること)等に使用する大量のメモリを、ビデオカード上に搭載しておく必要が無くなる(2D用の2?4MBといった少ないメモリだけでも、高品位な3Dアクセラレーションが期待できる)。」

上記(あ)によれば、グラフィックスデータを格納するメモリはグラフィックスシステムのメモリでも良いがコンピュータシステムのメインメモリであればコストが安く、AGPではグラフィックスデータをグラフィックスコントローラのローカルメモリからコンピュータシステムメモリに移行できるとされている。また、上記(い)によれば、AGPはメインメモリの一部をビデオメモリにマッピングする機能を持っていることがわかり、これらはAGPに関して周知の事項である。この様に見てくると、AGPを使うグラフィックス処理では、グラフィックスデータの記憶にシステムメモリを用いることが想定されていることになる。
引用発明において、第2のモデル構成は、AGPスロットに挿入するAGPグラフィックスカードにビデオメモリを有しており、このビデオメモリを使用してAGPグラフィックスコアがグラフィックス処理を行っている。そして、第2のモデルに対応する解説には「米nVIDIA社のGeForceのようなハイエンドグラフィックスを搭載できるため、最高のパフォーマンスを発揮できる」と記されており、また、メインメモリの一部をビデオメモリとして利用する第1のモデル構成に対応する解説には「これは810と同じで、もっともローコストだが、メモリ帯域を必要とする3Dグラフィックスの性能は低くなる」と記されている。このように、引用発明の第2のモデル構成は、AGPを用いて高性能のグラフィックス性能を発揮出来るタイプについて示したものと考えられる。そして、AGPに関する前記周知事項によれば、グラフィックスデータをローカルメモリからシステムメモリに移行することにより低コストにできる点やAGPがビデオメモリの一部をビデオメモリとして使用することをサポートしている点を併せ考えると、引用発明では高性能タイプとしてAGPグラフィックスカード上のビデオメモリを使う構成が示されているが、低コスト化のためにシステムメモリを使用することは容易に想到されることである。そして、システムメモリにグラフィックスデータを格納する態様においては、グラフィックスデータを外部グラフィックス装置とシステムメモリインターフェースとの間で転送することになることは明らかである。
従って、この相違点を格別のものと言うことはできない。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用文献に記載された発明および周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-03 
結審通知日 2008-12-09 
審決日 2008-12-24 
出願番号 特願2002-511066(P2002-511066)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 多賀 実  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 山崎 達也
吉田 美彦
発明の名称 メモリコントローラハブ  
代理人 特許業務法人プロスペック特許事務所  

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