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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C01B
管理番号 1198535
審判番号 不服2006-12862  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-21 
確定日 2009-06-10 
事件の表示 特願2002- 41275「非シリカ系酸化物多孔体及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月27日出願公開、特開2003-238118〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年2月19日の出願であって、平成18年5月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年7月21日付けで手続補正がなされ、その後、当審において、平成20年12月26日付けで、拒絶理由が通知され、これに対して、平成21年3月6日に意見書が提出されるとともに、手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?11に係る発明は、平成21年3月6日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうちの、請求項1、7に係る発明は以下のとおりのものである。
【請求項1】
「主成分がケイ酸骨格からなるシリカ系物質を含まない無機酸化物から構成される非シリカ系酸化物多孔体を製造する方法であって、非シリカ系酸化物メソ構造体を合成するための界面活性剤及び無機原料のアルミニウム源及びリン源が含まれる前駆体溶液に、アルキル鎖長の短い有機官能基で連結した自己集合することがないシラン化合物を添加し、それにより非シリカ系酸化物骨格内に前記シラン化合物を含有するメソ構造体を生成せしめ、有機成分燃焼時にも疎水的にすることで水分子による規則構造の破壊を抑制し、均一なメソ孔を有する非シリカ系酸化物多孔体を調製し、しかる後に、上記生成物の有機成分の一部又は全部を除去することによりメソ多孔質材料とする、ことを特徴とする非シリカ系酸化物多孔体の製造方法。」
【請求項7】
「主成分がケイ酸骨格からなるシリカ系物質を含まない無機酸化物から構成される非シリカ系酸化物多孔体であって、(1)非シリカ系酸化物の無機骨格内部に、アルキル鎖長の短い有機官能基で連結したシラン化合物中の有機官能基が導入されたメソ構造体から有機成分の一部又は全部を除去することにより作製された非シリカ系酸化物多孔体であり、(2)非シリカ系酸化物が、リン酸アルミニウムであり、(3)当該非シリカ系酸化物がメソ孔を有する、ことを特徴とする非シリカ系酸化物多孔体。」

3.当審で通知した拒絶理由の概要
当審における、平成20年12月26日付け拒絶理由通知(以下、「先の拒絶理由通知」という。)で、「2.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」と通知した。その指摘事項のうち、指摘事項(1)の概要は以下のとおりである。

(1)請求項1に係る発明について、発明の詳細な説明に具体的に説明された「1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン」をもって、請求項1の、「アルキル鎖の短い官能基で連結したシラン化合物」にまで一般化できるとはいえないから、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に実質的に記載された範囲を超えるものを特許請求するものであり、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。
同様の理由により、請求項7に係る発明は、発明の詳細な説明に実質的に記載された範囲を超えるものを特許請求するものであり、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。

4.当審の判断
請求項1には、「非シリカ系酸化物メソ構造体を合成するための界面活性剤及び無機原料のアルミニウム源及びリン源が含まれる前駆体溶液に、アルキル鎖長の短い有機官能基で連結した自己集合することがないシラン化合物を添加し、それにより非シリカ系酸化物骨格内に前記シラン化合物を含有するメソ構造体を生成せしめ」と記載されている。
まず、当該記載の、「非シリカ系酸化物骨格内に前記シラン化合物を含有するメソ構造体」という事項について検討すると、「骨格内」に「含有する」とは、その文言からみれば、「骨格内」に結合により「含有する」ことであるのか、あるいは、結合によらずに「含有する」ことであるのか、必ずしも明確ではないが、本願明細書の段落【0009】の、「非シリカ系酸化物材料の表面修飾体を合成する際に、有機官能基を、無機骨格表面にではなく、無機骨格内部に導入することにより初期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。」との記載、および、段落【0022】の、「アルミノリン酸種と結合していない有機官能基で連結したシラン化合物がメソ構造体中には存在しないことを表している。即ち、有機官能基で連結したシラン化合物は、全てリン酸アルミニウム骨格内部に組み込まれていると言うことになる。」との記載によれば、当該、「非シリカ系酸化物骨格内に前記シラン化合物を含有するメソ構造体」とは、非シリカ系酸化物骨格内にシラン化合物が結合により含有されているメソ構造体、ということを意味するといえる。
そして、この、非シリカ系酸化物骨格内にシラン化合物が結合により含有されているメソ構造体は、請求項1の上記記載によれば、「前駆体溶液に、アルキル鎖長の短い有機官能基で連結した自己集合することがないシラン化合物を添加すること」により、生成せしめられるのであるが、ここで、「アルキル鎖長の短い有機官能基で連結した自己集合することがないシラン化合物」とは、加水分解によってシラノール基を生成するものも、そうでないものも包含するものと解される。
これに対して本願明細書の発明の詳細な説明には、段落【0027】?【0034】の「実施例1」?「実施例4」では、シラン化合物として、「1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン」を使用することが記載されており、また、段落【0022】には「核磁気共鳴分析は、Si原子が酸素原子を介して幾つ結合を有するかも明らかにできる分析手法であり、その分析結果は、・・・アルミノリン酸種と結合していない有機官能基で連結したシラン化合物はメソ構造体中には存在しないことを表している。」と記載されているから、シラン化合物としての、「1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン」のSi原子が、酸素原子を介して非シリカ系酸化物骨格に結合したメソ多孔体が記載されているといえる。ここで、「1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン」のSi原子が酸素原子を介して非シリカ系酸化物骨格に結合する、とは、当該化合物において反応性が高いのは、技術常識からみてメトキシ基であること、また、平成18年1月4日付け意見書、および、平成18年8月31日に提出された審判請求書を補正対象書類とする手続補正書(方式)の、「シラン化合物の加水分解によって生成するシラノール基が非シリカ組成を主成分とする骨格構造中に組み込まれるため」と記載されていることからみて、当該化合物の加水分解によって生成するシラノール基の介在により、当該化合物と非シリカ系酸化物骨格とが結合する、ということであるといえる。そうすると、本願の発明の詳細な説明中には、「1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン」の加水分解によって生成するシラノール基の介在により、当該「1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン」が非シリカ系酸化物骨格内に結合せしめられたメソ構造体が記載されているということができる。
しかしながら、「アルキル鎖長の短い有機官能基で連結した自己集合することがないシラン化合物」が包含しうる、加水分解によってシラノール基を生成するものでないシラン化合物を使用することについては、発明の詳細な説明をみても、一切の具体的説明がない。
そして、技術常識に照らしても、加水分解によってシラノール基を生成するものでないシラン化合物が、界面活性剤及び無機原料のアルミニウム源及びリン源が含まれる前駆体溶液に添加されることにより、非シリカ系酸化物とシラン化合物との間に結合が生じるとは直ちにいえないことを鑑みれば、加水分解によってシラノール基を生じるものでないシラン化合物を、「アルキル鎖長の短い有機官能基で連結した自己集合することがないシラン化合物」として用いた場合にも、非シリカ系酸化物骨格内にシラン化合物が含有せしめられるとはいえない。
そして、この点について、平成21年3月6日に提出された意見書には、何の釈明もない。
そうすると、請求項1に係る発明について、発明の詳細な説明に具体的に説明された「1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン」をもって、請求項1の、「アルキル鎖長の短い官能基で連結した自己集合することがないシラン化合物」にまで一般化できるとはいえないから、請求項1に係る発明は、依然として、発明の詳細な説明に実質的に記載された範囲を超えるものを特許請求するものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、請求項7に係る発明について、請求項7には、「自己集合することがない」との特定のない、「アルキル鎖長の短い有機官能基で連結したシラン化合物」との特定がある。そうすると、上記請求項1について説明したのと同様の理由により、発明の詳細な説明に具体的に説明された「1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン」をもって、請求項7の「アルキル鎖長の短い官能基で連結したシラン化合物」にまで一般化できるとはいえない。そして、これに対して、平成21年3月6日に提出された意見書には何の釈明もないので、請求項7に係る発明は、依然として、発明の詳細な説明に実質的に記載された範囲を超えるものを特許請求するものであり、特許法第36条第1項に規定する要件を満たしていない。

5.むすび
以上のことより、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-08 
結審通知日 2009-04-13 
審決日 2009-04-24 
出願番号 特願2002-41275(P2002-41275)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安齋 美佐子  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 繁田 えい子
木村 孔一
発明の名称 非シリカ系酸化物多孔体及びその製造方法  
代理人 須藤 政彦  

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