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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200620339 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1198562
審判番号 不服2005-16004  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-22 
確定日 2009-06-09 
事件の表示 平成 9年特許願第503178号「日光遮蔽組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月27日国際公開、WO96/41614、平成14年 5月28日国内公表、特表2002-515851〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年6月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1995年6月8日 米国,1996年6月7日 米国)を国際出願日とする出願であって、最初の拒絶理由通知に応答がなく、平成17年5月17日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年8月22日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で手続補正がなされたものであり、その後、前置報告書を用いた審尋に応答して平成20年4月9日付け回答書が提出されたものである。

2.平成17年8月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年8月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の概略
本件補正により、特許請求の範囲は、
補正前(平成9年12月8日付けの特許法第184条の5第1項の規定による書面に添付の明細書翻訳文と請求の範囲の翻訳文(以下、「当初明細書」とも言う。)参照)の
「1.(a)無機の日光遮蔽剤、
(b)飽和脂肪酸塩、直鎖脂肪酸塩、アルキルスルホスクシネート、アルキルホスフェートおよびそれらの混合物からなる群より選ばれるアニオン性乳化剤、ならびに
(c)キャリアー油および少なくとも1種の皮膚軟化剤を含む油成分
を含んでなる日光遮蔽組成物。
2.?19.・・・省略・・・」から、
補正後(平成17年8月22日付け手続補正書参照)の
「【請求項1】(a)無機の日光遮蔽剤、
(b)飽和脂肪酸塩、直鎖脂肪酸塩、アルキルスルホスクシネート、アルキルホスフェートおよびそれらの混合物からなる群より選ばれるアニオン性乳化剤、ならびに
(c)キャリアー油および少なくとも1種の皮膚軟化剤を含む油成分
を含んでなり、かつ、
該キャリアー油が安息香酸と脂肪アルコールのエステル、アルコキシル化脂肪アルコールおよびポリエーテルで中断された脂肪酸エステルからなる群より選ばれ、そして該皮膚軟化剤が鉱物油、エステル油、植物油、シリコーンおよび合成エモリエントからなる群より選ばれ、かつ、キャリアー油体皮膚軟化剤の割合が1対3?3対1であることを特徴とする、日光遮蔽組成物。」
と補正された。

本件補正は、補正前の請求項2?19を削除し、請求項1において、「かつ、該キャリアー油が安息香酸と脂肪アルコールのエステル、アルコキシル化脂肪アルコールおよびポリエーテルで中断された脂肪酸エステルからなる群より選ばれ、そして該皮膚軟化剤が鉱物油、エステル油、植物油、シリコーンおよび合成エモリエントからなる群より選ばれ、かつ、キャリアー油体皮膚軟化剤の割合が1対3?3対1であることを特徴とする」(キャリアー油体皮膚軟化剤は、キャリアー油対皮膚軟化剤の誤記であることは明らかであるので、以下、後者の様に記載する。)との発明特定事項を追加するものである。
なお、キャリアー油対皮膚軟化剤の割合を特定することは、補正前の請求項2?19には記載されておらず、新たに特定されたものである。

(2)補正の適否
ところで、本件補正は、特許法第121条第1項の拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求の日から30日以内にされたものであって、同法第17条の2第1項第4号の補正に該当する。
そこで、この追加された点が、同法第17条の2の各項の規定する要件を満たすか否か検討する。

(2-1)新規事項の追加違反
当初明細書には、次の(イ)、(ロ)の記載がある。
(イ)「本発明の組成物にはまたキャリアー油も存在させるべきである。これは安息香酸脂肪アルコールエステル、アルコキシル化脂肪アルコール類、およびポリエーテル中断脂肪酸エステルの群から選択可能である。」(当初明細書第11頁1?3行参照)
(ロ)「好適には、油相に少なくとも2種類の材料、即ち上記キャリアー油と、日光遮蔽剤製品で有用であるとして本技術の通常の技術者に知られている通常の皮膚軟化剤、例えば鉱油、エステル油、植物油、シリコン類、合成皮膚軟化剤、例えば脂肪酸エステルなどを含めるべきである。」(当初明細書第12頁3?6行参照)
してみると、前記追加された前半部分の「かつ、該キャリアー油が安息香酸と脂肪アルコールのエステル、アルコキシル化脂肪アルコールおよびポリエーテルで中断された脂肪酸エステルからなる群より選ばれ、そして該皮膚軟化剤が鉱物油、エステル油、植物油、シリコーンおよび合成エモリエントからなる群より選ばれ」との発明特定事項は、当初明細書に記載があり、また、補正前の発明特定事項の「キャリアー油および少なくとも1種の皮膚軟化剤を含む油成分」を限定するものであることが明らかであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する限定的減縮に相当する。

他方、当初明細書には、前記追加された後半部分の「キャリアー油対皮膚軟化剤の割合」に関し、次の記載がある。
(ハ)「この皮膚軟化剤を該配合物中に上記キャリアー濃度との比率が約1:1から約3:1、最も好適には、約2:1になるように存在させるべきである。」(当初明細書12頁6?8行参照)
(ニ)「実施例1
・・・25gのVelsanD8P3(・・・)、・・・37.5gのMiglyol812(・・・)、・・。上記実施例1の得られたSPFは16.9であり、この組成物は美的感覚上も満足でき、且つ安定であった。」(当初明細書第18?19頁の実施例1参照)
(ホ)「実施例47-90
以下の実施例47-90は、当業者に周知であり、そして市販されている皮膚軟化油と組み合わせた、本発明の生成物中のキャリアー油の使用の重要性を説明する。それらは、実施例1と同様であるが、以下に示すように油成分のみを変えている。

^(1)カッコ内の値は、スペクトルのUVA領域における保護ファクターを示す。
^(2)多数のデータは、多回の別個の配合試験を示す。
上記に説明する商品名は、以下の市販されている化合物を言う:
Eumulgin L:PPG-1-PEG-9ラウリル グリコールエーテル
Hetester PHA:PGイソセテス-3-アセテート
Sandoxylates:PPG-2イソデセス(4-12)
Eumulgin B2:セテアレス-20
Procetyl AWS:PPG-2セテス-20
Cetiol 868:オクチル ステアレート
Citmol 316:トリイソセチル シトレート
Minno 21:ネオペンチル グリコール ジオクタノエート(および)ネオペンチル グリコール
Drakeol-7:鉱物油
Klearol:鉱物油
Arlamol:PPG-15 ステアリル エーテル
Crodamol ML:ミリスチル ラクテート
Procetyl 10:PPG-10 セチル エーテル
Marlox FK86:PPG-8 デセス-6
Ucon 50 HB-660:PPG-12 ブテス-16
Avanel S150:C_(12-15) パレス-15 スルホン酸ナトリウム
Velsan P8-3:イソプロピル C_(12-15) パレス-9 カルボキシレート」(当初明細書第24?28頁の実施例47?90参照)
(ヘ)実施例2?46、91?96では、その実施例1を引用するとし、実施例97?100には、前記(ニ),(ホ)と同様に、各成分が一数値で特定された組成物が記載されている。
(ト)なお、キャリアー油に関し、「・・安息香酸脂肪アルコールエステルは商標Finsolvの下で商業的に入手可能であり、例えば、・・から入手可能なFinsolv TNである。上記アルコキシル化脂肪アルコール類はいろいろな給源の下で入手可能であり、例えば・・・Eumulgin LおよびEumulgin B2、・・・Sandoxylates、・・・Marlox FK86、・・・Procetyl AWSなどである。 ・・・より好適には、このキャリアー油はC_(8)からC_(22)の脂肪アルキル(場合によってポリプロピレンオキシ)ポリエチレンオキシカルボン酸エステルであるべきであり、・・・最も好適には、このキャリアー油はイソプロピルPPG-2イソデセス(isodeceth)-7カルボキシレート、例えば・・・Velsan D8P3、または・・・・。他の同様な構造物には・・・Hetester PHAが含まれる。」(当初明細書第11頁4?22行参照)との説明があるが、皮膚軟化剤に関しては、「鉱油、エステル油、植物油、シリコン類、合成皮膚軟化剤、例えば脂肪酸エステル」(当初明細書第12頁5?6行参照)との説明があるだけで、具体的な化合物名や商品名について説明されていない。また、Miglyol812については、「カプリン/カプリル酸 トリグリセリド」との説明がある(第23頁4行目参照)。

してみると、「キャリアー油対皮膚軟化剤の割合」については、約1:1?約1:3の範囲(摘示(ハ)参照)と、実施例における具体的に特定された量(割合に変換は可能)が記載されているだけで、前記追加された「キャリアー油対皮膚軟化剤の割合が1対3?3対1であること」は、当初明細書に記載されていないことが明らかであり、自明であるとも認められない。
なお、請求人は、かかる記載は誤記であるため補正したい旨を審判請求理由において主張している(この点については次に検討する。)。

よって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

(2-2)独立特許要件違反
前記「2.(2-1)」における検討内容からみて、「キャリアー油体皮膚軟化剤の割合が1対3?3対1であること」に誤記があり、当初明細書に記載された「キャリアー油対皮膚軟化剤の割合が1対1?1対3であること」の誤記であると解される場合には、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する限定的減縮に相当するから、本件補正後の前記請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることが必要である。
なお、請求人は、審判請求理由において、当初明細書12頁6?8行(前記「2.(2-1)」の(ハ))の記載を参照しつつ、補正された請求項1には、『誤記:「キャリアー油体皮膚軟化剤」は、正しくは「キャリアー油対皮膚軟化剤」とあるべきであり、「割合が1対3?3対1」は、正しくは「割合が1対1?3対1」であるべきである。』が存在することが見出されたので補正したい旨を主張している。

そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

先ず、請求人の前記主張の「キャリアー油対皮膚軟化剤の割合が1対1?3対1」については、誤記の根拠とする前記(ハ)の記載からは、割合が請求人の主張と逆の「キャリアー油対皮膚軟化剤の割合が1対3?1対1」の意味と解されるところ、例えば実施例1((ニ)の摘示参照)においても、SPFが16.9である組成物中に含有される、25gのVelsanD8P3がキャリアー油で、37.5gのMiglyol812が皮膚軟化剤と認められることから、そのキャリアー油対皮膚軟化剤の割合が1:1.5と計算でき、前記当審の解釈と整合していることからみて、請求人の「キャリアー油対皮膚軟化剤の割合が1対1?3対1」と訂正したいとの主張は根拠を欠くものといわざるを得ない。

次に、前記(ホ)の実施例47-90(表IV)を検討する。
その際に、「本発明の組成物は、・・・、最低10のSPFを有する日光遮蔽製剤を提供する。」(当初明細書8頁12?13行参照)との記載から、SPFが10以上を作用効果有り、10未満を作用効果無しとして以下判断することとし、また、表IV中ではキャリアー油と皮膚軟化剤が順序関係なく記載されているので、混乱を避けるために以下の算出する割合は、「キャリアー油:皮膚軟化剤」の数値として表示する。
(a)例えば、(48)のFinsolvTN(2.5%)/Miglyol812(3.75%)は、前者がキャリアー油で後者が皮膚軟化剤と解されるから、割合が1:1.5でSPFが15.8と作用効果あり、(73)のジメチコン(3.75%)/VelsanD8P3(2.74%)は、前者が皮膚軟化剤で後者がキャリアー油と解されるから、割合が1:1.5でSPF14.1と作用効果ある。
(b)例えば、(56)のProcetylAWS(3.75%)/Miglyol812(2.5%)は、前者がキャリアー油で後者が皮膚軟化剤と解されるから、1.5:1でSPF10.6と作用効果があり、(76)のEumulginL(6.25%)/Miglyol812(3.75%)は、前者がキャリアー油で後者が皮膚軟化剤と解されるから、1.6:1でSPF11.2と作用効果がある。
(c)例えば、(58)のProcetylAWS(3.75%)/Citmol316(3.75%)は、前者がキャリアー油で後者が皮膚軟化剤と解されるから、割合は1:1でSPFが11.6と作用効果があるけれども、例えば、(50)のFinsolvTN(3.125%)/鉱物油iNF(3.125%)は、前者がキャリアー油で後者が皮膚軟化剤と解されるから、割合は1:1でSPFが9.1と作用効果がなく、(51)のFinsolvTN(3.125%)/Cetiol868(3.125%)は、前者がキャリアー油で後者が皮膚軟化剤と解されるから、割合は1:1でSPFが8.2と作用効果がない。
(d)例えば、(53)のVelsanD8P3(6.25%)は、キャリアー油が単独で用いられていてもSPF10.0と作用効果があり、(49)のFinsolvTN(3.125%)/VelsanD8P3(2.5%)はいずれもキャリアー油であるにもかかわらずSPFが16.4又は18.4と作用効果があり、(68)のKlearol(5.0%)は、皮膚軟化剤が単独で用いられていてもSPF11.0と作用効果がある。
(e)表IV中に、キャリアー油と皮膚軟化剤の両者を併用する場合であって、その使用割合に関し、皮膚軟化剤がキャリアー油の3倍を超える場合乃至はキャリアー油が皮膚軟化剤の3倍を超える場合の比較対象となり得る例(データ)が何ら示されていない。

これら(a)?(e)の評価からすると、「キャリアー油対皮膚軟化剤の割合」を、「1:1?3:1」または「1:3?1:1」のいずれに特定しても、割合がその範囲内でも作用効果を奏さない無い場合があり、逆に割合がその範囲外でも作用効果を奏する場合があり、また、使用割合に関し皮膚軟化剤がキャリアー油の3倍を超える場合(乃至はキャリアー油が皮膚軟化剤の3倍を超える場合)の比較対象とできる例(データ)の記載が無く、更に、いずれか単独での使用でも作用効果を奏する場合があるから、そのような割合に特定する技術的意義が不明であるという他ない。なお、「1:3?3:1」の場合でも、(c),(d)の点で作用効果が無い場合があり、その技術的意義が不明であるといえる。
したがって、本願補正発明は、仮に当初明細書に明示された割合に訂正されたとしても、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えていると判断できるから、本願補正発明と発明の詳細な説明に発明として記載したものとが実質的に対応しているとはいえず、特許法第36条第6項第1号の規定に違反する。
よって、本願補正発明は、特許法第36条第6項1号の規定に適合しないため特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2-3)むすび
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、乃至は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年8月22日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?19にかかる発明は、当初明細書の特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は次のとおりである。
「1.(a)無機の日光遮蔽剤、
(b)飽和脂肪酸塩、直鎖脂肪酸塩、アルキルスルホスクシネート、アルキルホスフェートおよびそれらの混合物からなる群より選ばれるアニオン性乳化剤、ならびに
(c)キャリアー油および少なくとも1種の皮膚軟化剤を含む油成分
を含んでなる日光遮蔽組成物。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第94/4131号パンフレット(以下、「引用例」という。)には、次のよう技術事項が記載されている。なお、英文であるため翻訳文を示し、下線は、当審が付したものである。

(i)「実施例I-V
サンスクリーンを含有する日々保湿用ローション
次の成分が、混合技術を使用して油/水エマルジョンを形成するのに組み合わされた。

^(1)ダウコーニング200/350液として入手できる
^(2)Tri-K工業会社,Emerson,N.J.からMT-500Bそして/又はMT-600Bとして入手できる
^(3)Tri-K工業会社からMT-500SA(ステアリン酸、アルミナ、シリカで被覆)として入手できる
^(4)Tioxide会社からオクチルパルミテートの懸濁液として入手できる
得られたエマルジョンは、日々の保湿用として肌に対する局所的な適用に有効であり、UV光照射の有害な作用からの保護を提供する。」(第16頁16行?第17頁32行参照)
(ii)「物理的日光遮蔽剤
・・・
無機の物理的日光遮蔽剤としては、・・・二酸化チタン、・・・等が挙げられる。」(第9頁13?24行参照)
(iii)「乳化剤
・・・
適切な乳化剤として、・・・ジエタノールアミンジセチル/セチルホスフェート、・・・が挙げられる。」(第12頁9?35行参照)
(iv)「エモリエント
・・・・
適切なエモリエントとしては、・・・シリコーンオイル(例えば、ジメチコーン、・・・)・・・・が挙げられる。」(第14頁12?19行参照)

これらの記載によれば、特に実施例の配合成分を検討し、引用例には、
「二酸化チタン(無機の物理的日光遮蔽剤)と、DEAセチルホスフェート(乳化剤)と、C_(12-15)アルキルベンゾエートと、ジメチコーン(エモリエント)とを含有する、UV光照射の有害な作用からの保護をするエマルジョン。」
の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)対比、判断
そこで、本願発明と引用例発明を対比する。
(α)引用例発明の「二酸化チタン(無機の物理的日光遮蔽剤)」は、本願発明の「無機の日光遮蔽剤」として例示され、使用されている「二酸化チタン」に相当する。
(β)引用例発明の「DEAセチルホスフェート(乳化剤)」は、アニオン性であることも明らかであるから、本願発明の「飽和脂肪酸塩、直鎖脂肪酸塩、アルキルスルホスクシネート、アルキルホスフェートおよびそれらの混合物からなる群より選ばれるアニオン性乳化剤」のアルキルホスフェートとして例示された「セチルリン酸DEA」に相当する。
(γ)引用例発明の「C_(12-15)アルキルベンゾエート」は、「C_(12-15)アルキル」のアルコールが脂肪アルコールを意味し、「ベンゾエート」が安息香酸のエステルを意味するから、本願発明の「キャリアー油」として例示された「安息香酸脂肪アルコールエステル」に相当する。
(δ)引用例発明の「ジメチコーン(エモリエント)」は、本願発明の「皮膚軟化剤」として例示された「シリコン類」に相当する。
(ε)引用例発明の「UV光照射の有害な作用からの保護をするエマルジョン」は、UV光照射に対する保護が一般に日光遮蔽に用いられていることに鑑みると、本願発明の「日光遮蔽組成物」に相当する。

してみると、両発明は、
「(a)二酸化チタン(無機の日光遮蔽剤)、
(b)セチルリン酸DEA(アルキルホスフェート)から選ばれるアニオン性乳化剤、ならびに
(c)安息香酸脂肪アルコールエステルおよびジメチコーン(皮膚軟化剤)を含む油成分
を含んでなる日光遮蔽組成物。」
で一致し、次の相違点Aで形式的に相違する。
<相違点A>
安息香酸脂肪アルコールエステルについて、本願発明では「キャリアー油」と規定されているのに対し、引用例発明ではそのように規定していない点

そこで、相違点Aについて検討する。
本願発明と引用例発明で使用している安息香酸脂肪アルコールエステルに相違は無いのであるから、キャリアー油と表現するか否かは、本質的な差異ではない。
よって、本願発明は、引用例発明と同一である。

なお、審判請求理由において、乳化剤の「アルキルホスフェート」を削除する旨も希望しているが、特許法では審判請求に際して補正できる期間を定めているところ、既にその期間内に手続補正書を提出しているのであるから、単なる誤記の訂正であればともかく、それ以上の補正の機会を与えることは法律の想定するところではない。

(3)むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当する。それ故、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-19 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-19 
出願番号 特願平9-503178
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
P 1 8・ 561- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天野 貴子  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 谷口 博
星野 紹英
発明の名称 日光遮蔽組成物  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  

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