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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1199733
審判番号 不服2007-21283  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-02 
確定日 2009-06-25 
事件の表示 特願2005-374928「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成19年2月1日出願公開、特開2007-21173〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成17年12月27日(優先日、平成16年12月27日、平成17年6月17日)を出願日とする特許出願であって、平成18年12月6日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成19年2月9日に意見書及び補正書が提出されたが、同年6月26日付けで拒絶の査定がなされたため、これを不服として同年8月2日に本件拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成19年2月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。
「特定表示列を含み上から下に向けて可変表示が可能な複数の表示列を備え、前記複数の表示列の各々は複数のコマを有し、前記複数のコマの各々に複数種類の図柄が配列され、前記複数の表示列の各々に図柄を停止させる図柄停止位置として上段、中段及び下段が設定され、前記各表示列の図柄停止位置の組からなる入賞ラインが複数設定され、前記複数の表示列の可変表示が停止した状態で複数の入賞ラインのうちいずれかの図柄の並びが所定態様である場合にいずれかの賞に入賞し、入賞した賞に応じた遊技価値を付与し、前記特定表示列に配列される複数種類の図柄には第1図柄、第2図柄及び賞を構成しない図柄であるブランク図柄が含まれ、前記賞には、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第1図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置にはいずれの図柄が停止しても入賞となる第1賞と、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第2図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置には所定の図柄が停止すると入賞となる第2賞とが含まれるスロットマシンであって、
前記複数の表示列の可変表示を開始させる指示を遊技者が入力するための開始操作手段と、
前記複数の表示列の各々に対応して設けられ、前記可変表示を停止させる指示を遊技者が入力するための複数の停止操作手段と、
前記第1賞及び前記第2賞を含む複数の賞並びにハズレを抽選対象として抽選を実行し、抽選結果を示す抽選情報を生成する抽選手段と、
前記複数の停止操作手段のうちの一の停止操作手段が操作されると、当該一の停止操作手段が操作されたタイミングにおける対応する表示列の位置を基準として4コマを許容範囲として当該表示列を移動させて停止させる停止制御手段とを備え、
前記特定表示列において、前記第1図柄が配列されたコマを特定コマとしたとき、前記特定コマから上に2コマ離れた上側コマと下に2コマ離れた下側コマとに前記第2図柄が配置され、さらに前記特定コマと前記上側コマとの間のコマ及び前記特定コマと前記下側コマとの間のコマの全てに前記ブランク図柄が配置されることにより、前記特定表示列の前記上段、中段及び下段の図柄停止位置のいずれかに前記第1図柄が表示されるときに前記第1図柄と共に前記図柄停止位置に表示される図柄を前記第2図柄又は前記ブランク図柄に限定されるようにし、
前記停止制御手段は、
前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記複数の停止操作手段のうち前記特定表示列に対応する前記停止操作手段である特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定し、前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず前記第2図柄が前記特定した図柄停止位置に表示されるように前記許容範囲内で前記特定表示列を移動させて停止させ、
前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、前記特定表示列の中段を含む入賞ライン上の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2賞を構成する所定の図柄が位置する場合、当該所定の図柄を当該図柄停止位置に引き込んで最初に操作された停止操作手段に対応する表示列を停止させ、この後、前記特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、前記中段の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2図柄が位置する場合、当該第2図柄を前記中段の図柄停止位置に引き込んで前記特定表示列を停止させる、
ことを特徴とするスロットマシン。」

第3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-263242号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載が図面とともにある。
(ア)「【従来の技術】従来、この種の図柄合わせ遊技機としては、複数種の図柄をそれぞれに有する複数のリールを回転させて、ストップボタン等(可変表示停止装置)を操作して全てのリールを停止させるスロットマシンが知られている。このようなスロットマシンでは、遊技者が各リールの停止図柄を視認できる可変表示部における入賞ライン上に停止した図柄の組合せが、予め決められている入賞態様に係る図柄の組合せのいずれかであるかどうかにより、その入賞態様に応じて、遊技価値であるメダルを払い出したり、リプレイを許可したり、あるいは、一般遊技状態のときよりも遊技者が多くのメダルを獲得できるビッグボーナス(以下、「BB」と省略する。)ゲームやレギュラーボーナス(以下、「RB」と省略する。)ゲーム等を行う特別遊技状態に移行したりする等の特典が付与される。」(段落【0002】)

(イ)「このようなスロットマシンでは、一般に、遊技者が所定のスタートレバーを操作することで、マイコン等で構成される入賞態様選択手段により任意の入賞態様を決定する内部抽選が行われる。この内部抽選で、所定の入賞態様(以下、適宜「役」という。)が当選した場合には、その当選役に係る図柄の組合せが揃いやすくなるように、リールの停止制御がなされ、その当選役に係る図柄を揃えることが可能となる。逆に、内部抽選で、いずれの役にも当選しなかった場合には、遊技者によるストップボタン等の操作タイミングにかかわらず、役に対応する図柄の組合せを揃えることはできない。具体的には、何らかの役が内部当選した場合、一般に、遊技者によるストップボタン操作時に、その当選役の図柄が入賞ラインからリール回転方向上流側の約4図柄以内(停止制御範囲内)に存在するという条件を満たしたとき、すべてのリールについて、いわゆる「引込み」と呼ばれる停止制御を行われ、その図柄が入賞ライン上に停止表示されることになる。一方、役が内部当選していない場合には、遊技者のストップボタンの操作タイミングでは何らかの役に係る図柄の組合せが入賞ライン上に揃ってしまうようなときに、いわゆる「蹴り飛ばし」と呼ばれる停止制御が行われ、その図柄が入賞ライン上に停止表示しないことになる。」(段落【0003】)

(ウ)「【発明の実施の形態】・・・前面パネル3には、可変表示部を形成する表示窓4、メダル投入口5、スタートレバー6、可変表示停止装置を構成する3つの停止ボタン7a,7b,7c、クレジット精算ボタン8、スピーカ9、メダル払出ロ10aを有するメダル受皿10、報知パネル11、ライン表示部12、ゲーム表示部13、カウント表示部14、BET操作部15などが設けられている。」(段落【0037】)

(エ)「3つのリール16a,16b,16c(以下、適宜、それぞれを「左リール」、「中リール」、「右リール」という。)は、それぞれ、可変表示装置を構成するステッピングモータで構成された図示しないリール駆動モータによって回転駆動するようになっている。また、これらには、図4(a)から(g)に示す7種類の図柄が、所定の順序で21個プリントされている。なお、以下、図4(a)?(g)に示した図柄を、順に、「赤7」、「青7」、「縞7」、「スイカ」、「ベル」、「チェリー」、「リプレイ」という。」(段落【0039】)

(オ)「表示窓4には、リール16a,16b,16cを横断する5本の入賞ラインILが描かれており、それぞれ、上段横並び、中段横並び、下段横並び、右斜め上並び、右斜め下並びの入賞ラインを示している。これら入賞ラインIL上に予め定められた入賞態様である役に係る図柄(入賞図柄)の組合せが揃う(以下、単に「役が揃う」という。)と、メダル受皿10にメダルが払い出されたり、リプレイが許可されたりする。」(段落【0040】)

(カ)「表1に示すように、一般遊技状態では、入賞態様が「大当たり」と「小当たり」とに大別できる。一般遊技状態で「小当たり」となる入賞態様、いわゆる「小役」としては、「チェリー-ANY(図柄を問わず)-ANY(図柄を問わず)」からなる「チェリー役」、「スイカ-スイカ-スイカ」からなる「スイカ役」、「ベル-ベル-ベル」からなる「ベル役」、「リプレイ縞7-リプレイ」及び「リプレイリプレイリプレイ」からなる「リプレイ役」が定められている。」(段落【0047】)

引用文献1の上記(ア)、(イ)の記載は【従来の技術】として説明されるものであるが、この説明が上記(ウ)?(カ)の記載の技術事項にも当てはまることは明らかである。そして、上記(イ)の記載の「ストップボタン」と(ウ)の記載の「停止ボタン」は同義であり、同ボタンがリールごとに存することは自明である。また、【図6】の記載から、左リールには、「チェリー」を中心として、上及び下に2つ離れた位置に、それぞれ「リプレイ」が配されていることが分かる。なお、上記(カ)の記載中「リプレイ縞7-リプレイ」及び「リプレイリプレイリプレイ」は、表1の記載及びその余の入賞態様の図柄の組み合わせを参酌すると、それぞれ「リプレイ-縞7-リプレイ」及び「リプレイ-リプレイ-リプレイ」の誤記であることは明らかである。

したがって、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「左リール、中リール、右リールに、赤7、青7、縞7、スイカ、ベル、チェリー及びリプレイの各図柄を配し、遊技者がスタートレバーを操作することで、入賞態様を決定する内部抽選を行い、内部抽選で、所定の入賞態様が当選した場合には、遊技者によるリールごとのストップボタン操作時に、その当選役の図柄が入賞ラインからリール回転方向上流側の約4図柄以内に存在するという条件を満たしたとき、すべてのリールについて引込み停止制御を行い、役が内部当選していない場合には、その図柄が入賞ライン上に停止表示しないように蹴り飛ばし停止制御を行うスロットマシンであって、
表示窓には、各リールの3つの図柄が表示され、上段横並び、中段横並び、下段横並び、右斜め上並び及び右斜め下並びの5本の入賞ラインが定められ、これら入賞ライン上に予め定められた入賞態様である役に係る図柄の組合せが揃うと、メダルが払い出されたり、リプレイが許可され、
前記役には、「チェリー-ANY(図柄を問わず)-ANY(図柄を問わず)」からなる「チェリー役」、「リプレイ-縞7-リプレイ」及び「リプレイ-リプレイ-リプレイ」からなる「リプレイ役」があり、左リールには、「チェリー」を中心として、上及び下に2つ離れた位置に「リプレイ」が配されているスロットマシン。」

第4 本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「スタートレバー」及び「ストップボタン」は、本願発明の「前記複数の表示列の可変表示を開始させる指示を遊技者が入力するための開始操作手段」及び「前記複数の表示列の各々に対応して設けられ、前記可変表示を停止させる指示を遊技者が入力するための複数の停止操作手段」にそれぞれ相当し、
さらに、引用文献1の記載などからみて以下のことがいえる。
a.引用発明の各リールには複数の図柄が配され、スロットマシンにおいて、可変表示を「上から下に向けて」行うことが通常であるから、引用発明における「左リール、中リール、右リール」に配される図柄全体は、本願発明の「上から下に向けて可変表示が可能な複数の表示列」に相当する。そして、1つ1つの図柄配置位置が本願発明の「コマ」に相当するから、「前記複数の表示列の各々は複数のコマを有し、前記複数のコマの各々に複数種類の図柄が配列され」ることは、本願発明と引用発明の一致点である。さらに、引用発明の「5本の入賞ライン」は「上段横並び、中段横並び、下段横並び、右斜め上並び及び右斜め下並び」であり、「これら入賞ライン上に予め定められた入賞態様である役に係る図柄の組合せが揃うと、メダルが払い出されたり、リプレイが許可される」のであるから、「図柄停止位置として上段、中段及び下段が設定され、前記複数の表示列の可変表示が停止した状態で複数の入賞ラインのうちいずれかの図柄の並びが所定態様である場合にいずれかの賞に入賞し、入賞した賞に応じた遊技価値を付与」することも本願発明と引用発明の一致点である。

b.引用発明の「チェリー役」は「チェリー-ANY(図柄を問わず)-ANY(図柄を問わず)」からなる役であるから、引用発明における左のリールに配される図柄全体及び「チェリー役」は、本願発明の「特定表示列」及び「前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第1図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置にはいずれの図柄が停止しても入賞となる第1賞」にそれぞれ相当する。そして、「第1賞」を構成するための、左リールの図柄である「チェリー」が本願発明の「第1図柄」に相当し、「チェリー」が配列された左レールのコマが本願発明における「特定コマ」に相当する。

c.引用発明の「リプレイ役」は「前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置」に「リプレイ」が停止するだけでなく「他の表示列の図柄停止位置には所定の図柄が停止すると入賞となる」賞であるから、本願発明の「第2賞」に相当する。そして、「第2賞」を構成するための、左リールの図柄である「リプレイ」が本願発明の「第2図柄」に相当し、該「リプレイ」が「チェリー」(第1図柄)が配置された特定コマを中心として、上及び下に2つ離れた上側のコマと下側のコマに、それぞれ配されているので、「前記特定表示列において、前記第1図柄が配列されたコマを特定コマとしたとき、前記特定コマから上に2コマ離れた上側コマと下に2コマ離れた下側コマとに前記第2図柄が配置され」ることも本願発明と引用発明の一致点である。

d.引用発明では「入賞態様を決定する内部抽選を行」い、抽選結果に「ハズレ」が含まれることは自明であるから、本願発明の「前記第1賞及び前記第2賞を含む複数の賞並びにハズレを抽選対象として抽選を実行し、抽選結果を示す抽選情報を生成する抽選手段」を引用発明は当然備える。

e.引用発明では「遊技者によるリールごとのストップボタン操作時に、その当選役の図柄が入賞ラインからリール回転方向上流側の約4図柄以内に存在するという条件を満たしたとき、すべてのリールについて引込み停止制御を行」うのだから、本願発明の「前記複数の停止操作手段のうちの一の停止操作手段が操作されると、当該一の停止操作手段が操作されたタイミングにおける対応する表示列の位置を基準として4コマを許容範囲として当該表示列を移動させて停止させる停止制御手段」を引用発明は当然備える。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「特定表示列を含み上から下に向けて可変表示が可能な複数の表示列を備え、前記複数の表示列の各々は複数のコマを有し、前記複数のコマの各々に複数種類の図柄が配列され、前記複数の表示列の各々に図柄を停止させる図柄停止位置として上段、中段及び下段が設定され、前記各表示列の図柄停止位置の組からなる入賞ラインが複数設定され、前記複数の表示列の可変表示が停止した状態で複数の入賞ラインのうちいずれかの図柄の並びが所定態様である場合にいずれかの賞に入賞し、入賞した賞に応じた遊技価値を付与し、前記特定表示列に配列される複数種類の図柄には第1図柄、第2図柄が含まれ、前記賞には、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第1図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置にはいずれの図柄が停止しても入賞となる第1賞と、前記入賞ラインを構成する前記特定表示列の図柄停止位置に前記第2図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置には所定の図柄が停止すると入賞となる第2賞とが含まれるスロットマシンであって、
前記複数の表示列の可変表示を開始させる指示を遊技者が入力するための開始操作手段と、
前記複数の表示列の各々に対応して設けられ、前記可変表示を停止させる指示を遊技者が入力するための複数の停止操作手段と、
前記第1賞及び前記第2賞を含む複数の賞並びにハズレを抽選対象として抽選を実行し、抽選結果を示す抽選情報を生成する抽選手段と、
前記複数の停止操作手段のうちの一の停止操作手段が操作されると、当該一の停止操作手段が操作されたタイミングにおける対応する表示列の位置を基準として4コマを許容範囲として当該表示列を移動させて停止させる停止制御手段とを備え、
前記特定表示列において、前記第1図柄が配列されたコマを特定コマとしたとき、前記特定コマから上に2コマ離れた上側コマと下に2コマ離れた下側コマとに前記第2図柄が配置されてなるスロットマシン。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

<相違点1>
特定表示列に配列される複数種類の図柄につき、本願発明が「賞を構成しない図柄であるブランク図柄」を含み「前記特定コマと前記上側コマとの間のコマ及び前記特定コマと前記下側コマとの間のコマの全てに前記ブランク図柄が配置されることにより、前記特定表示列の前記上段、中段及び下段の図柄停止位置のいずれかに前記第1図柄が表示されるときに前記第1図柄と共に前記図柄停止位置に表示される図柄を前記第2図柄又は前記ブランク図柄に限定されるようにし」しているのに対し、引用発明はブランク図柄を含むとはいえず、そのような図柄配置になっていない点。

<相違点2>
本願発明の停止制御手段が「前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記複数の停止操作手段のうち前記特定表示列に対応する前記停止操作手段である特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定し、前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず前記第2図柄が前記特定した図柄停止位置に表示されるように前記許容範囲内で前記特定表示列を移動させて停止させ、」(審判請求書における分説に倣い、以下、「構成要件H」という。)「前記抽選情報が前記第2賞の当選を示すゲームにおいて、前記特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると、前記特定表示列の中段を含む入賞ライン上の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2賞を構成する所定の図柄が位置する場合、当該所定の図柄を当該図柄停止位置に引き込んで最初に操作された停止操作手段に対応する表示列を停止させ、この後、前記特定停止操作手段が操作されたことを検知すると、前記中段の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2図柄が位置する場合、当該第2図柄を前記中段の図柄停止位置に引き込んで前記特定表示列を停止させる」(同じく以下、「構成要件I」という。)、すなわち構成要件H、Iの停止制御を行うのに対し、引用発明がこのような停止制御を行うとはいえない点。

第5 本願発明の進歩性の判断
便宜上<相違点2>について、まず検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-346037号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載が図面とともにある。
(キ)「前記スロットマシンには、入賞を発生させるための前記遊技手順が報知される特定の入賞役(たとえば、図柄「ベル」の組合わせによる小役)が予め定められており、前記遊技制御手段は、入賞の発生を許容するか否かを決定する決定手段(たとえば、SC5)と、該決定手段により前記特定の入賞役について入賞の発生が許容されたか否かを判別する判別手段(たとえば、SC7)と、該判別手段により前記特定の入賞役について入賞の発生が許容されたと判別された場合に、前記遊技手順情報として、入賞を発生させるための遊技手順を設定する情報設定手段(たとえば、SC9)とを含み、該情報設定手段は、前記判別手段により前記特定の入賞役について入賞の発生が許容されなかった場合には、前記遊技手順情報として、予め定められた遊技手順(たとえば、順押しの順序)を通知する情報を設定する(たとえば、SC12)。」(段落【0023】)

(ク)「当選フラグの設定状況に応じて入賞図柄または外れ図柄を引込む制御を“引込み制御”という。」(段落【0091】)

(ケ)「スロットマシン1では、小役入賞として、小役1?小役3が用意されている。このうち、小役1は、メダルの払出し数が15枚である“15枚小役”である。また、小役2は、メダルの払出し数が9枚である“9枚小役”であり、小役3は、メダルの払出し数が2枚である“2枚小役”である。」(段落【0108】)

(コ)「小役1の図柄の組合わせは、「スイカ、スイカ、スイカ」である。小役2の図柄の組合わせは、「ベル、ベル、ベル」である。スロットマシン1では、この図柄「ベル」の組合わせによる小役が、押し順が限定される特定の入賞役として設定されている。以下、この小役を特に、“押し順限定役”という。(段落【0109】)

(サ)「図4に示されるように、「ベル」は、すべてのリールにおいて、連続する5図柄以内に常に存在するように配列されている。このため、どの位置で目押しがされたとしても、リールの引込み制御によって「ベル」を引込むことが可能になっている。(段落【0110】)

(シ)「小役3の図柄の組合わせは、「チェリー、任意、任意」であり、左リール4Lに「チェリー」が停止すると他のリールの出目にかかわらず有効ライン毎に2枚のメダルが払出される。このように、「チェリー」は、中リールおよび右リールの出目とは無関係に入賞を発生させるので、単図柄と呼ばれる。(段落【0111】)

(ス)「押し順限定役(図柄「ベル」の組合わせによる小役)が内部当選した際の押し順のナビゲーションに従って“順押し(左、中、右の順)”以外でリール停止操作が行なわれた場合、「ベル、ベル、ベル」を入賞ラインに引込む際に、図柄配列の関係上、内部当選当選していない「チェリー」までが同時にいずれかの有効ラインに引込まれて複合入賞が発生してしまう可能性がある。そこでスロットマシン1では、押し順限定役が内部当選した際に押し順が順押し以外のものに決定された場合には、図柄配列の関係上、「チェリー」が入賞図柄として引き込まれてくる可能性がない中段の入賞ラインに「ベル」を引込むようにリールが制御される。」(段落【0112】)

また、【図4】の記載から、左リールには、図柄番号2番の「チェリー」から下に2つ離れた位置、及び、図柄番号12番の「チェリー」から上に2つ離れた位置に、押し順限定役を構成する「ベル」が配されていることが分かる。

引用文献2における「チェリー」及び「押し順が順押し以外のものに決定された」は、本願発明における「第1図柄」及び「特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作された」に、それぞれ相当する。また、引用文献2における「押し順限定役」は、図柄「ベル」の組合せによる小役であって、左リール4Lに「チェリー」が停止することで入賞となる小役3(本願発明の「第1賞」に相当)以外の賞であり、この「押し順限定役」が「内部当選した際に」は、「抽選情報が」同役の「当選を示すゲームにおいて」と同義である。よって、引用文献2には、抽選情報が第1賞以外の賞である押し順限定役の当選を示すゲームにおいて、特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作された場合、第1図柄が入賞図柄として引き込まれてくる可能性がない入賞ラインに、押し順限定役を構成する図柄を引込み制御する技術(以下、「引用文献2記載の技術事項」)が記載されている。

まず、<相違点2>の構成要件Iについて検討すると、引用文献2における「押し順が順押し以外のものに決定された」は、上記のとおり本願発明における「特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作された」に相当するとともに、構成要件Iのうち「前記特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると」及び「この後、前記特定停止操作手段が操作されたことを検知すると」と同義である。
ところで、引用文献1の上記(イ)の記載に示すように、入賞ラインを構成する特定表示列の図柄停止位置に特定の図柄が停止し他の表示列の図柄停止位置にはいずれの図柄が停止しても入賞となる賞(以下、「単独入賞」といい、該「単独入賞」を構成する特定表示列における特定の図柄を「単独入賞図柄」という。)以外の賞が内部当選した際、単独入賞との複合入賞を回避すべく、特定表示列にて単独入賞図柄を蹴り飛ばし、特定表示列を含む複数の表示列にて単独入賞以外の賞を構成する図柄を引込むよう停止制御を行う点は、引用発明において当然考慮し得る設計事項というべきものであり、その際問題となるのは、単独入賞図柄が配される特定コマの上下2コマずつであって、引用発明における単独入賞図柄である「チェリー」の上及び下に2つ離れた位置に配される「リプレイ」も該当する。そして、引用文献2は、押し順限定役に関するものであるものの、決定された押し順に従って停止操作する限りにおいては、押し順限定役を構成する図柄に対する停止制御も、その他の入賞図柄に対する停止制御も、単独入賞との複合入賞を回避しつつ単独入賞以外の賞を構成する図柄を入賞ラインに引込むよう制御する点で何ら変わることはないため、引用文献2記載の技術事項を、引用発明における、抽選情報が単独入賞以外の「リプレイ役」(本願発明の「第2賞」に相当)の当選を示すゲームにおいて、特定停止操作手段以外の前記停止操作手段が最初に操作された場合の停止制御に適用し、「リプレイ役」を構成する「リプレイ」を、単独入賞図柄である第1図柄(「チェリー」)が入賞図柄として引き込まれてくる可能性がない入賞ラインに引込み制御するよう構成することは、スロットマシンの分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)にとって想到容易である。ここで、引用発明における、第1図柄(「チェリー」)が配される特定コマと単独入賞以外の第2賞を構成する第2図柄(「リプレイ」)との位置関係から、第1図柄が入賞図柄として引き込まれてくる可能性がない入賞ライン、つまり、第2賞を構成する第2図柄が引き込まれる入賞ラインは「中段」となることは明らかである。
また、構成要件Iの「前記特定表示列の中段を含む入賞ライン上の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2賞を構成する所定の図柄が位置する場合、当該所定の図柄を当該図柄停止位置に引き込んで最初に操作された停止操作手段に対応する表示列を停止させ」及び「前記中段の図柄停止位置から前記許容範囲に前記第2図柄が位置する場合、当該第2図柄を前記中段の図柄停止位置に引き込んで前記特定表示列を停止させ」る事項は、第2賞を構成する第2図柄及び所定の図柄が引き込まれる入賞ラインが「中段」(あるいは「中段」を含むもの)となることを除けば、特定停止操作手段以外の停止操作手段が最初に操作された場合に当然なすべき各表示列の停止制御を停止操作手段毎に具体的に記載したに過ぎず、格別なものとはいえない。

次に、構成要件Hの「図柄停止位置として上段、中段、又は下段のいずれかを特定し、前記第1図柄が上段、中段、及び下段の図柄停止位置のいずれにも停止せず前記第2図柄が前記特定した図柄停止位置に表示されるように前記許容範囲内で前記特定表示列を移動させて停止させ」る事項について検討する。
引用文献2には、押し順が順押しに決定され(本願発明の「前記複数の停止操作手段のうち前記特定表示列に対応する前記停止操作手段である特定停止操作手段が最初に操作されたことを検知すると」に相当)、その決定された押し順に従い停止操作された場合の停止制御について明示的な記載はないものの、特定表示列にて単独入賞図柄を蹴り飛ばし、単独入賞以外の賞を構成する図柄を引込むよう停止制御を行う点は上記で述べたとおり設計事項であり、構成要件Hの上記事項は、抽選情報が第2賞の当選を示すゲームにおいて、特定停止操作手段が最初に操作された場合に当然なすべき特定表示列の停止制御を具体的に記載したに過ぎず、格別なものとはいえない。
すなわち、相違点2に係る本願発明の構成要件H及び構成要件Iの停止制御を行うことは、当業者にとって想到容易である。

<相違点1>について検討するに、単独入賞図柄であるチェリーが配列された特定コマに隣接するコマに、賞を構成しないブランク図柄を配することは、以下周知例1?3に示すとおり、スロットマシンの図柄配列として従来周知の技術(以下、「周知技術」という。)である。

・周知例1:特開2004-159829号公報
周知例1の特に段落【0018】及び【図5】参照。

・周知例2:「パチスロ必勝ガイド攻略年鑑2003」第6巻第3号(通巻第55号)56-63頁(株式会社白夜書房,2003年2月1日発行)
周知例2の56頁「各役払い出し表」とその注記、並びに、62頁左上「絵柄配列図」「左」の2番、9番の赤色絵柄「チェリー」及び薄く表示されている絵柄を参照。

・周知例3:「パチスロ必勝ガイド攻略年鑑2002」第5巻第2号(通巻第39号)112-115頁(株式会社白夜書房,2002年2月1日発行)
周知例3の第112頁「各役払い出し表」、並びに、第115頁左下「絵柄配列図」「左」の4番、17番の赤色絵柄「チェリー」及び薄い青色と黄色の略G字状の図柄を参照。

上記で述べた通り、単独入賞との複合入賞を回避する上で考慮すべきは、単独入賞図柄が配される特定コマの上下2コマずつであるところ、上に2コマ離れた上側コマと下に2コマ離れた下側コマについて構成要件Iの停止制御を行って、これら上側コマあるいは下側コマに配される第2図柄を中段の図柄停止位置に引込む際、上記特定コマの上下に隣接するコマが特定表示列において上段あるいは下段に位置することとなるため、これら隣接するコマに配する図柄と入賞ラインを構成する他の表示列の図柄について停止制御を工夫する必要性が生じる。そうでれば、他の表示列について図柄停止制御の負担を軽減すべく、特定コマ及びこれと上下に隣接するコマに配する図柄配列に上記周知技術を採用し、第1賞を構成する第1図柄が配された特定コマの上下に隣接するコマに、入賞を構成しないブランク図柄を配することは当業者にとって想到容易である。ここで、特定コマに隣接するコマのうち上あるいは下の一方をブランク図柄とするより、上及び下両方をブランク図柄とした方が、他の表示列について図柄停止制御の負担を一層軽減できることは明らかであるので、後者を採用することは設計事項である。実際、上記周知例3の絵柄配列は、特定コマに隣接するコマを全てブランク図柄としている。そして、上記のように「第1図柄」、「第2図柄」及び「ブランク図柄」を配置すれば、当然「前記特定表示列の前記上段、中段及び下段の図柄停止位置のいずれかに前記第1図柄が表示されるときに前記第1図柄と共に前記図柄停止位置に表示される図柄を前記第2図柄又は前記ブランク図柄に限定される」ことになる。よって、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって想到容易である。

そして、本願発明の効果は、引用発明、引用文献2記載の技術事項及び上記周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術事項及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明が特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-22 
結審通知日 2009-04-28 
審決日 2009-05-11 
出願番号 特願2005-374928(P2005-374928)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 河本 明彦
森 雅之
発明の名称 スロットマシン  
代理人 大林 章  
代理人 矢代 仁  
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