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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1200216
審判番号 不服2007-20809  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-26 
確定日 2009-07-09 
事件の表示 特願2001-151242「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月26日出願公開、特開2002-336459〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯等
本願は、平成13年5月21日の出願であって、平成19年2月5日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成19年4月12日付けで手続補正がされ、平成19年6月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成19年7月26日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年8月22日付けで手続補正がされたものである。

第2.平成19年8月22日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年8月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「内部の領域の一部に特定領域(25)を有し且つ遊技者に有利な第1状態と遊技者に不利な第2状態とに変換動作可能な可変入賞手段(13)と、遊技球が入賞可能な特定入賞手段(14a)?(14c)と、該特定入賞手段(14a)?(14c)に遊技球が入賞することを条件に前記可変入賞手段(13)を前記第1状態に所定回数変換動作させる第1変換動作制御手段(27)と、前記特定領域(25)に遊技球が入賞することに基づいて遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(28)とを備えた弾球遊技機において、前記利益状態が発生した場合に、前記可変入賞手段(13)が前記第1状態に所定回数変換動作するか該所定回数変換動作する間に所定数の遊技球が入賞することを1ラウンドとして、所定の複数ラウンドを継続する、遊技者に有利な特別利益状態(A)と、該特別利益状態(A)よりもラウンド数が少なくて前記特別利益状態(A)よりも遊技者に不利な非特別利益状態(B)(C)との何れかで前記可変入賞手段(13)を所定回数変換動作させる利益状態制御手段(29)を備え、該利益状態制御手段(29)は先の前記利益状態が終了したときに特定遊技状態を発生させ、且つその利益状態の終了以降に前記可変入賞手段(13)に前記1ラウンド当たりの前記所定数の遊技球の数よりも少ない所定数の複数個の遊技球が入賞することにより該特定遊技状態を終了させる特定遊技状態発生手段(31)と、前記特定遊技状態でない通常遊技状態において前記利益状態が発生した場合に前記特別利益状態(A)と前記非特別利益状態(B)(C)との何れかを選択する利益状態選択手段(33)と、前記特定遊技状態において前記利益状態が発生したときに前記特別利益状態(A)を選択する特別利益状態選択手段(34)と、選択された前記特別利益状態(A)、非特別利益状態(B)(C)に応じて前記可変入賞手段(13)を変換動作させる変換動作制御手段(35)とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。

上記補正は、補正前の「所定回数変換動作させる」に「前記第1状態に」との限定を付し、補正前の「遊技者に有利な特別利益状態(A)」に「前記可変入賞手段(13)が前記第1状態に所定回数変換動作するか該所定回数変換動作する間に所定数の遊技球が入賞することを1ラウンドとして、所定の複数ラウンドを継続する、」との限定を付し、補正前の「該特別利益状態(A)よりも遊技者に不利な非特別利益状態(B)(C)」を「該特別利益状態(A)よりもラウンド数が少なくて前記特別利益状態(A)よりも遊技者に不利な非特別利益状態(B)(C)」と限定し、補正前の「先の前記利益状態の終了後に特定遊技状態を発生させ」を「先の前記利益状態が終了したときに特定遊技状態を発生させ」と限定し、補正前の「前記可変入賞手段(13)への所定数の遊技球の入賞により」を「その利益状態の終了以降に前記可変入賞手段(13)に前記1ラウンド当たりの前記所定数の遊技球の数よりも少ない所定数の複数個の遊技球が入賞することにより」と限定するものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-215840号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
・記載事項1
「【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ遊技機等の遊技機に関するものである。」(段落【0001】)
・記載事項2
「【課題を解決するための手段】以上の課題を解決すべく請求項1記載の発明は、例えば、V誘導部材等により開閉可能な所謂V入賞口等の特別入賞口を有する特別変動入賞装置と、この特別変動入賞装置を、遊技球の入賞により開放動作させる始動入賞口と、を備え、前記始動入賞口への遊技球の入賞により前記特別変動入賞装置の開放動作を1回または2回等の所定の態様で実行する始動遊技を行い、その始動遊技中に前記特別変動入賞装置内に入賞した入賞球が前記特別入賞口に入賞したことに基づいて、前記特別変動入賞装置を間欠的に所定回数開閉させる等の特別態様で開放動作させる大当たり状態等の特別遊技状態を発生可能であって、その特別遊技状態中の前記特別入賞口への入賞により、例えば、18回等の所定の上限回数に基づき、前記特別遊技状態を繰り返して発生可能とする遊技機において、前記始動入賞口への遊技球の入賞率を変化させる普通電動役物(所謂電チュー)等による補助変動入賞装置と、前記特別変動入賞装置内に設けられ、前記特別入賞口への入賞球の入賞率を変化させる、例えば、前記V誘導部材等による特別入賞率変更手段と、前記特別遊技状態の発生に基づき、図柄等による可変表示遊技を行う遊技状態決定用表示器等の可変表示装置と、を備え、前記特別遊技状態の発生に関連した所定条件の成立、例えば、最高継続回数で大当たり終了条件の成立等に基づき、前記特別遊技状態中を含み少なくともその終了後に、前記補助変動入賞装置による遊技態様を、例えば、前記普通電動役物(所謂電チュー)の開放時間、さらに、それに関連する普通図柄表示部の確率或いは変動時間等を変化させると共に、前記可変表示装置の図柄等の停止態様に基づき、前記特別遊技状態を繰り返す繰り返し難易度を、前記特別入賞率変更手段を制御することにより変更させる構成としたこと、を特徴としている。」(段落【0008】)
・記載事項3
「以上の特別変動入賞装置11の内部に設けられる特別入賞率変更手段は、正面視ほぼJ字状の誘導路13で囲まれた内方の下部に配置した左右揺動可能な床板部材16と、その上方に配置した昇降移動可能なV誘導部材17とからなり、図示例では、人物に模したV誘導部材17の下部に口を開けた状態の球保持部18を有している。この球保持部18に、正面視ほぼJ字状の誘導路13を通過した入賞球が保持されて、V誘導部材17が上昇すると、特別変動入賞装置11のほぼ中央部に開口した特別入賞口である所謂V入賞口19に、球保持部18に保持された入賞球が入賞するものとなる。さらに、以上の特別変動入賞装置11の上部には、LED表示器による遊技状態決定用表示器20が備えられており、この遊技状態決定用表示器20は、左右一対の羽根部材12,12の間に位置している。」(段落【0030】)
・記載事項4
「以上の遊技盤1は、第2種(所謂羽根物タイプ)のパチンコ遊技機に類するもので、遊技領域2に弾き出された図示しない遊技球が、下部左右の第1始動入賞口5,5の何れかに入賞すると、ほぼ中央部の特別変動入賞装置11の上部の左右一対の羽根部材12,12が、図示しないソレノイドの駆動により、図2に示すように、逆ハ字状に1回開放動作し、また、下部中央の第2始動入賞口6に遊技球が入賞すれば、左右一対の羽根部材12,12が、逆ハ字状に2回開放動作する。これと同時に、特別変動入賞装置11の始動遊技が行われ、即ち、各々のモータ(図14の床板駆動用モータ(モータ1)22、V誘導部材用モータ(モータ2)23参照)の駆動により、図2に示すように、床板部材16が左右揺動を行うと共に、V誘導部材17が下降動作を行う。」(段落【0031】)
・記載事項5
「そして、羽根部材12,12の逆ハ字状の開放状態において、遊技球が特別入賞装置11に入賞し、正面視ほぼJ字状の誘導路13を通過してその内方の床板部材16上に入賞球が達した時点で、例えば、図3に示すように、V誘導部材17の球保持部18に入賞球が保持されると、図4に示すように、その入賞球を球保持部18に保持したV誘導部材17が上昇して、V入賞口19に入賞球が入賞すると、特別変動入賞装置11において、その特別遊技状態である大当たり状態が後述するように発生する。・・・さらに、この大当たりの発生と共に、上方の遊技状態決定用表示器20において、複数の識別情報(例えば、数字、アルファベット、記号、絵等)による変動図柄が後述するように始動する。」(段落【0032】)
・記載事項6
「即ち、V誘導動作が行われて、羽根部材12,12の開放動作が18回になるか、または、カウントセンサー(カウントスイッチ)14により計数された入賞球が10個になるか、の何れかの所定の条件が成立すると、羽根部材12,12が閉じると共に、V誘導部材17が上昇する。ここで、V誘導部材17は、その球保持部18に入賞球を保持しているので、図4に示すように、最上部位置でV入賞口19に入賞球が入賞する。これにより、再び大当たり状態が発生し、即ち、大当たりが継続状態となり、そのV入賞口19に入った入賞球はVスイッチ27により計数されて、そのV入賞数が15個になるまで大当たりの最大継続回数が制限されている。」(段落【0044】)
・記載事項7
「以上のような遊技態様を持つ特別変動入賞装置11においては、その遊技状態決定用表示器20による大当たり発生時の停止図柄によって以下の如く設定されている。即ち、遊技状態決定用表示器20による大当たり発生時の停止図柄が、“7”であれば、15R(ラウンド)までV誘導が行われ、また、“3”であれば、4RまでV誘導を行った後、5Rから振り切り処理が行われ、その他の場合には、2RまでV誘導を行った後、3Rから振り切り処理が行われるようになっている。」(段落【0049】)
・記載事項8
「即ち、時短状態中の普電開放処理(ステップ152)としては、電チュー7の5.8秒の開放または3個カウントを行い、また、通常状態中の普電開放処理(ステップS153)としては、電チュー7の0.3秒の開放または1個カウントを行う。」(段落【0074】)
・記載事項9
「次に、図23は図20の処理(ステップS112、図19、図20参照)に代わる普図時短制御処理の変更例のサブルーチンを示すフローチャートである。この普図時短制御処理は、大当たり終了時のラウンド数により時短発生回数を決定するものである。即ち、この普図時短制御処理では、先ず、ステップS231で、継続回数に対応する時短カウンタをセットする。ここで、継続回数に対応する時短カウンタとしては、1R→カウンタ1、2R→カウンタ2、・・・、15R→カウンタ15に予め設定されている。ただし、この時短カウンタは、普図当たり毎に減算される。また、カウンタの減算は、普図の変動遊技毎や始動遊技(SW1,SW2による)毎でも良い。」(段落【0076】)
・記載事項10
「このようなステップS231での継続回数に対応する時短カウンタのセットに続いて、次のステップS232で、時短カウンタの残り回数有りか否かを判断し、時短カウンタが残り回数有りであれば、次のステップS233に進み、また、時短カウンタの残り回数無しの場合には、大当たり処理(図19)のステップS112にリターンする。そして、ステップS233では、今回のカウンタ値と残りカウンタ値を加算してから、大当たり処理(図19)のステップS112にリターンする。」(段落【0077】)

以上を含む全記載及び図示によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「内部にV入賞口19を有し且つ左右一対の羽根部材12が逆ハ字状に開放動作する特別変動入賞装置11と、遊技球が入賞可能な第1始動入賞口5,5及び第2始動入賞口6と、第1始動入賞口5,5または第2始動入賞口6への遊技球の入賞により前記特別変動入賞装置の開放動作を1回または2回等の所定の態様で実行し、V入賞口19に入賞球が入賞すると、特別変動入賞装置11において、その特別遊技状態である大当たり状態を発生させるパチンコ遊技機であって、
大当たり状態が発生した場合に、特別変動入賞装置11の羽根部材12,12は、V誘導動作が行われて、その開放動作が18回になるか、または、カウントセンサー(カウントスイッチ)14により計数された入賞球が10個になるか、の何れかの所定の条件が成立するまで開放動作を行い、遊技状態決定用表示器20による大当たり発生時の停止図柄が、“7”であれば、15R(ラウンド)までV誘導が行われ、また、“3”であれば、4RまでV誘導を行った後、5Rから振り切り処理が行われ、その他の場合には、2RまでV誘導を行った後、3Rから振り切り処理が行われ、
大当たりが終了したときに、予め設定された継続回数と時短発生回数の対応で、大当たり終了時のラウンド数により時短発生回数を決定して、時短発生回数の残り回数無しとなるまで、通常状態で0.3秒の開放または1個カウントである電チュー7が時短状態で5.8秒の開放または3個カウントとなるパチンコ遊技機。」(以下、「引用発明」という。)

3.対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「V入賞口19」は本願補正発明の「特定領域(25)」に相当し、以下同様に、「特別変動入賞装置11」は「可変入賞手段(13)」に、「第1始動入賞口5,5」及び「第2始動入賞口6」は「特定入賞手段(14a)?(14c)」に、「大当たり状態」は「利益状態」に、「パチンコ遊技機」は「弾球遊技機」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明について、以下のことがいえる。
(1)「内部にV入賞口19を有し且つ左右一対の羽根部材12が逆ハ字状に開放動作する特別変動入賞装置11」について
「V入賞口19」は「特別変動入賞装置11」の内部の一部の領域に設けられものということができる。また、「左右一対の羽根部材12が逆ハ字状に開放動作する」ということは、羽根部材12が閉じた状態から開いた状態となり、更に閉じた状態になることを意味することは自明であり、開いた状態は遊技球が「特別変動入賞装置11」に入賞しやすいため「遊技者に有利な状態」ということができ、閉じた状態は遊技球が「特別変動入賞装置11」に入賞できないため「遊技者に不利な状態」ということができるから、「特別変動入賞装置11」は遊技者に有利な第1状態と遊技者に不利な第2状態とに変換動作可能なものと認められる。
そうすると、引用発明は、本願補正発明の「内部の領域の一部に特定領域(25)を有し且つ遊技者に有利な第1状態と遊技者に不利な第2状態とに変換動作可能な可変入賞手段(13)」に相当する構成を実質的に具備するものである。
(2)「第1始動入賞口5,5または第2始動入賞口6への遊技球の入賞により前記特別変動入賞装置の開放動作を1回または2回等の所定の態様で実行し」について
「開放動作を・・実行」することが遊技者に有利な第1状態に変換動作することを含むことは上記(1)で検討したとおりであり、その変換動作をさせる手段を引用発明は当然有するものであり、当該手段は本願補正発明の「第1変換動作制御手段(27)」に相当する。
そうすると、引用発明は、本願補正発明の「特定入賞手段(14a)?(14c)に遊技球が入賞することを条件に可変入賞手段(13)を第1状態に所定回数変換動作させる第1変換動作制御手段(27)」に相当する構成を実質的に具備するものである。
(3)「V入賞口19に入賞球が入賞すると、特別変動入賞装置11において、その特別遊技状態である大当たり状態を発生させる」について
引用発明は、大当たり状態を発生させる手段を当然有するものであり、当該手段は本願補正発明の「利益状態発生手段(28)」に相当するものであるから、本願補正発明の「特定領域(25)に遊技球が入賞することに基づいて遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(28)とを備えた」に相当する構成を実質的に具備するものである。
(4)「大当たり状態が発生した場合に、特別変動入賞装置11の羽根部材12,12は、V誘導動作が行われて、その開放動作が18回になるか、または、カウントセンサー(カウントスイッチ)14により計数された入賞球が10個になるか、の何れかの所定の条件が成立するまで開放動作を行い、遊技状態決定用表示器20による大当たり発生時の停止図柄が、“7”であれば、15R(ラウンド)までV誘導が行われ、また、“3”であれば、4RまでV誘導を行った後、5Rから振り切り処理が行われ、その他の場合には、2RまでV誘導を行った後、3Rから振り切り処理が行われ」について
「開放動作」が第1状態に変換動作することを含むことは上述のとおりであり、「開放動作が18回になるか、または、カウントセンサー(カウントスイッチ)14により計数された入賞球が10個になるか、の何れかの所定の条件が成立するまで開放動作を行い」は、次に検討を行う引用発明における「ラウンド」を意味していることは当業者にとって明らかであって、本願補正発明の「可変入賞手段(13)が第1状態に所定回数変換動作するか所定回数変換動作する間に所定数の遊技球が入賞することを1ラウンドとして」に相当することも明らかである。
そして、大当たり発生時の停止図柄が“7”であれば15R(ラウンド)までV誘導が行われるということは、所定の複数ラウンドを継続する、遊技者に有利な特別利益状態ということができる。また、4RまでV誘導を行う場合、2RまでV誘導を行う場合は、15RまでV誘導する場合に比較してラウンド数が少なく遊技者にとって不利なものであるから、本願補正発明の「非特別利益状態」に相当する。更に、これらのラウンドで特別変動入賞装置11の開放動作が行われるものであるから、引用発明は当然そのための手段を有しているものであり、これは本願補正発明の「利益状態制御手段(29)」に相当するものである。
また、上記のように、V誘導されるラウンド数は停止図柄によって選択されるということができ、引用発明は当然そのための手段を有しているものであり、これは本願補正発明の「利益状態選択手段(33)」に相当するものである。更に、選択されたラウンド数に応じて特別変動入賞装置11の開放動作が行われるものであるから、引用発明は当然そのための手段を有しているものであり、これは本願補正発明の「変換動作制御手段(35)」に相当するものである。
そうすると、引用発明は、本願補正発明の「利益状態が発生した場合に、可変入賞手段(13)が第1状態に所定回数変換動作するか該所定回数変換動作する間に所定数の遊技球が入賞することを1ラウンドとして、所定の複数ラウンドを継続する、遊技者に有利な特別利益状態(A)と、該特別利益状態(A)よりもラウンド数が少なくて特別利益状態(A)よりも遊技者に不利な非特別利益状態(B)(C)との何れかで可変入賞手段(13)を所定回数変換動作させる利益状態制御手段(29)」、「特定遊技状態でない通常遊技状態において利益状態が発生した場合に特別利益状態(A)と非特別利益状態(B)(C)との何れかを選択する利益状態選択手段(33)」、及び「選択された特別利益状態(A)、非特別利益状態(B)(C)に応じて可変入賞手段(13)を変換動作させる変換動作制御手段(35)」に相当する構成を実質的に具備するものである。
(5)「大当たりが終了したときに、予め設定された継続回数と時短発生回数の対応で、大当たり終了時のラウンド数により時短発生回数を決定して、時短発生回数の残り回数無しとなるまで、通常状態で0.3秒の開放または1個カウントである電チュー7が時短状態で5.8秒の開放または3個カウントとなる」について
大当たり終了後時短発生回数の残り回数無しとなるまでの間の遊技状態(以下、「遊技状態」という。)は、電チュー7の開放時間が長くなり、カウント数も増加するものであるから通常状態とは異なる状態であり、大当たりが終了したときになる状態であるから、本願補正発明の「特定遊技状態」に相当するものである。そして、引用発明は上記「遊技状態」を発生させる手段を当然有するものであり、「特定遊技状態」の終了条件は別として、当該手段は本願補正発明の「特定遊技状態発生手段(31)」に相当するから、引用発明と本願補正発明は「先の利益状態が終了したときに特定遊技状態を発生させる特定遊技状態発生手段」を有する点で共通している。
また、上記「遊技状態」において遊技球がV入賞口19に入賞した場合にどのような大当たり状態を発生させるか引用文献1には明記されていないが、上記「遊技状態」における大当たりについて特別な処理を行うことが記載されていないことから、「通常状態」で遊技球がV入賞口19に入賞した場合の大当たり状態の発生と同じ(15R、4R、2RのいずれかまでV誘導)と解するのが自然である。また、引用発明はそのための手段を当然有するものであり、特定遊技状態において利益状態が発生したときに利益状態を選択するという点に限って、当該手段は本願補正発明の「特別利益状態選択手段」に相当する。
そうすると、引用発明と本願補正発明は、選択する利益状態が何であるかは別にして、「特定遊技状態において利益状態が発生したときに利益状態を選択する特別利益状態選択手段」を有する点で共通している。

そうすると、両者は、
「内部の領域の一部に特定領域を有し且つ遊技者に有利な第1状態と遊技者に不利な第2状態とに変換動作可能な可変入賞手段と、遊技球が入賞可能な特定入賞手段と、特定入賞手段に遊技球が入賞することを条件に可変入賞手段を第1状態に所定回数変換動作させる第1変換動作制御手段と、特定領域に遊技球が入賞することに基づいて遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段とを備えた弾球遊技機において、
利益状態が発生した場合に、可変入賞手段が第1状態に所定回数変換動作するか該所定回数変換動作する間に所定数の遊技球が入賞することを1ラウンドとして、所定の複数ラウンドを継続する、遊技者に有利な特別利益状態と、該特別利益状態よりもラウンド数が少なくて特別利益状態よりも遊技者に不利な非特別利益状態との何れかで可変入賞手段を所定回数変換動作させる利益状態制御手段を備え、
先の利益状態が終了したときに特定遊技状態を発生させる特定遊技状態発生手段と、特定遊技状態でない通常遊技状態において利益状態が発生した場合に特別利益状態と非特別利益状態との何れかを選択する利益状態選択手段と、特定遊技状態において利益状態が発生したとき利益状態を選択する特別利益状態選択手段と、選択された特別利益状態、非特別利益状態に応じて可変入賞手段を変換動作させる変換動作制御手段とを備えた弾球遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
特定遊技状態発生手段が、本願補正発明では利益状態の終了以降に可変入賞手段に1ラウンド当たりの所定数の遊技球の数よりも少ない所定数の複数個の遊技球が入賞することにより特定遊技状態を終了させるのに対し、引用発明では大当たり終了時のラウンド数により決定された時短発生回数が残り回数無しとなると終了する点。
<相違点2>
特定遊技状態において利益状態が発生したとき特別利益状態選択手段が選択する利益状態が、本願補正発明では特別利益状態であるのに対し、引用発明では特別利益状態と非特別利益状態との何れかである点。
<相違点3>
利益状態制御手段は、本願補正発明では特定遊技状態発生手段、利益状態選択手段、特別利益状態選択手段及び変換動作制御手段を備えたものであるのに対し、引用発明ではそのような構成となっているか不明な点。

4.判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
引用発明において、「時短発生回数」は、始動入賞口への入賞球数に相当することは明らかである。
そして、遊技者にとって有利な状態を入賞口への入賞球数によって終了させることは、弾球遊技機において慣用手段である。例えば、第1種のパチンコ遊技機における開放状態となった大入賞口は所定時間または所定個数の入賞個数によって閉鎖状態とされる。また、引用発明においても、始動入賞口への入賞は、その結果として特別変動入賞装置11への入賞することを目的としているから、始動入賞口への入賞も特別変動入賞装置11への入賞も利益の制限手段とした場合に同様の作用を奏するものである。
そうすると、引用発明において、特定遊技状態の終了させる条件として始動入賞口への入賞個数に代えて、同じく入賞口である特別変動入賞装置への入賞個数とすることは、当業者にとって設計事項にすぎない。更に、入賞個数として、1ラウンド当たりの所定数の遊技球の数よりも少ない所定数の複数個とすることは、遊技者へ与える有利さの度合い、パチンコ遊技機全体の遊技性を考慮して適宜決定すればよい設計事項に過ぎない。
<相違点2>について
原査定の拒絶の理由に引用された「パチンコ必勝ガイド、白夜書房、平成4年10月1日号、第4巻第19号(通巻73号)68頁」(以下、「引用文献2」という。)に「その際に表示された絵柄によって最高継続ラウンド数が決定されるようになっており、右下の図のように、V以外の出目では、5ラウンド継続が最高となっているのだ。」「1回でもVが表示されれば、その後3回の大当りでは、確実に最高継続15回(表示V)が約束されるのである。」と記載されているように、特定の条件において複数種類ある利益状態のうち最も利益のある状態を必ず発生させることは従来公知である。
そうすると、上記引用文献2に記載された技術事項を参酌し、引用発明において、時短状態での大当たりを特定の条件として採用し、その時の大当たりを遊技者にとって最も利益の大きい15RまでのV誘導のみとすることは、当業者であれば想到容易である。したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
<相違点3>について
特定遊技状態発生手段、利益状態選択手段、特別利益状態選択手段及び変換動作制御手段は、遊技に関する制御を行う手段であるから、引用発明において同様に遊技に関する制御を行う「利益状態制御手段」に担当させることは設計事項である。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明の認定
平成19年8月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年4月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「内部の領域の一部に特定領域(25)を有し且つ遊技者に有利な第1状態と遊技者に不利な第2状態とに変換動作可能な可変入賞手段(13)と、遊技球が入賞可能な特定入賞手段(14a)?(14c)と、該特定入賞手段(14a)?(14c)に遊技球が入賞することを条件に前記可変入賞手段(13)を所定回数変換動作させる第1変換動作制御手段(27)と、前記特定領域(25)に遊技球が入賞することに基づいて遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段(28)とを備えた弾球遊技機において、前記利益状態が発生した場合に、遊技者に有利な特別利益状態(A)と該特別利益状態(A)よりも遊技者に不利な非特別利益状態(B)(C)との何れかで前記可変入賞手段(13)を所定回数変換動作させる利益状態制御手段(29)を備え、該利益状態制御手段(29)は先の前記利益状態の終了後に特定遊技状態を発生させ、且つ前記可変入賞手段(13)への所定数の遊技球の入賞により該特定遊技状態を終了させる特定遊技状態発生手段(31)と、前記特定遊技状態でない通常遊技状態において前記利益状態が発生した場合に前記特別利益状態(A)と前記非特別利益状態(B)(C)との何れかを選択する利益状態選択手段(33)と、前記特定遊技状態において前記利益状態が発生したときに前記特別利益状態(A)を選択する特別利益状態選択手段(34)と、選択された前記特別利益状態(A)、非特別利益状態(B)(C)に応じて前記可変入賞手段(13)を変換動作させる変換動作制御手段(35)とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。」

2.本願発明の進歩性の判断
(1)引用文献
拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「第2 1.補正後の本願発明」で記載した限定を戻したものに相当するものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに構成要件を限定したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、引用文献2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-30 
結審通知日 2009-05-12 
審決日 2009-05-25 
出願番号 特願2001-151242(P2001-151242)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥西村 仁志  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 森 雅之
池谷 香次郎
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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