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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B |
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管理番号 | 1200273 |
審判番号 | 不服2008-4162 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-02-21 |
確定日 | 2009-07-06 |
事件の表示 | 特願2002-353560「偏光板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月 2日出願公開、特開2004-184809〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明の認定 本願は平成14年12月5日の出願であって、平成19年10月30日付けで拒絶理由が通知され、同年12月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年1月21日付けで拒絶査定がされたため、これを不服として同年2月21日付けで本件審判請求がされるとともに、同年3月21日付けで手続補正書が提出されたものである。 そして、当審においてこれを審理した結果、平成21年1月13日付けの補正の却下の決定により平成20年3月21日付けの手続補正を却下するとともに、平成21年1月13日付けで拒絶理由を通知したところ、平成21年3月13日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで明細書について手続補正がされたものである。 したがって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年3月13日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「延伸することにより原反幅方向にカールがそれぞれ生じており、下記式からなる貼りあわせ指標の値が60以下である2枚の保護シートを、カールの向きがそれぞれ逆方向となるように偏光子の両面に貼りあわせることを特徴とする偏光板の製造方法。 (貼りあわせ指標)=(a-b)/a×100 (2枚の保護シートのカール量をそれぞれa、b(a>b)とする)」 第2 当審の判断 1 引用刊行物の記載事項 (1)当審で通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-179819号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下のアないしエの記載が図示とともにある。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、セルロースエステルフィルムに関し、特に液晶表示装置の偏光板保護フィルム及び表示装置用部材として好適なセルロースエステルフィルムに関する。 【0002】 【従来の技術】近年、液晶表示装置(LCD)は種々のところに使用されるに伴って、耐久性とくに温度湿度変化に対する耐久性が要望され、それに伴いLCDの部品である偏光板についても代表的耐久性である寸法安定性に対する要望が大きくなってきた。また、後加工での取り扱い適性から、カール性に優れたフィルムも望まれている。 【0003】ところで、現在、LCDに用いられている偏光板用の保護フィルムとしては主にセルローストリアセテート(TAC)フィルムが用いられており、その製造方法はセルロースエステル溶液を支持体上に流延した後、剥離して得られるセルロースエステルフィルムを乾燥、巻き取るいわゆる流延成膜が一般的である。 【0004】この工業的工程では連続的な成膜を行うため、流延、製膜、乾燥の搬送では張力がかかり、これがフィルムの内部応力を発生し歪として残してしまうという問題があった。 【0005】また平面性や光学特性向上のため、テンター等の手段によって、幅手方向(TD方向)で幅保持もしくは延伸処理を行うこともある。この場合にもテンターの延伸倍率等によっては歪を残してしまう場合があった。」 イ 「【0007】この歪を持ったままの偏光板用保護フィルムは、液晶表示装置等に組み込まれた際にフィルムの寸法変化として現れ、皺が発生したり、剥離を起こしたり、保護フィルムの寸法変化によって偏光板の寸法変化もおこし、LCDの表示機能に光漏れなどの障害を起こした。 【0008】さらに、このフィルム中に残存する歪の程度がフィルム表裏で異なると、表裏どちらかにフィルムはカールし、カールの強いものでは偏光板貼合工程など偏光板作成工程での取り扱いが困難となり、歩留まりを劣化させコスト高を生む等の問題を発生させた。」 ウ 「【0078】本発明の偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。例えば、セルローストリエステルフィルムをアルカリ処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6-94915号、同6-118232号に記載されているような接着性を高める方法を使用しても良い。」 エ 「【0094】(実施例88)実施例46で作成したフィルムを40℃の2.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で60秒間アルカリ処理し、3分間水洗して鹸化処理層を形成し、アルカリ処理フィルムを得た。 【0095】次に厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1kg、ホウ酸4kgを含む水溶液100kgに浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を作った。この偏光膜の両面に前記アルカリ処理フィルムを完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として各々貼り合わせ偏光板試料を作製した。この偏光板を80℃の恒温槽に入れ500時間後に取り出したところ、偏光板に剥がれなどの変化は無かった。」 (2)また、当審で通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-258050号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下のオないしクの記載が図示とともにある。 オ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置(以下、LCDと略称することがある。)に使用される偏光板及びそれを用いた液晶表示装置に関する。 【0002】 【従来の技術】LCDは、パソコン等に使用されており、近年、急激にその需要が増加している。LCDの用途は広がってきており、近年はモニター用途にも使用されるようになってきている。 【0003】LCDに使用する偏光板は、例えば、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略称することがある。)フィルムを、二色性を有するヨウ素又は二色性染料で染色する染色工程、ホウ酸やホウ砂等で架橋する架橋工程、及び一軸延伸する延伸工程の後に乾燥して偏光子(偏光フィルム)とし、トリアセチルセルロース(以下、TACと略称することがある。)フィルム等の保護層と貼り合わせて製造されている。なお、染色、架橋、延伸の各工程は、別々に行なう必要はなく同時に行なってもよく、また、各工程の順番も任意でよい。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、PVA系の偏光子に単にTACフィルムを貼り合わせると、両者の伸縮率の相違により偏光板がカールしてしまうという問題があった。また、この偏光板を加熱・加湿条件に置いた場合には更にカールが激しくなるという問題もあった。 【0005】そこで、本発明は前記従来の問題を解決するため、偏光子と保護フィルムを貼り合わせてもの(審決注:「貼り合わせても」の誤記と認める。)カール(そり)が発生しない偏光板及びそれを用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。」 カ 「【0015】 【発明の実施の形態】TACフィルムには可塑剤が使用されており、その可塑剤の量がTACフィルムの表と裏で相違する場合に前記偏光板のカール(そり)が発生することが多いことが分かった。そこで、前記偏光板のカール(そり)の原因が、TACフィルムの表と裏で可塑剤の量が異なることにより、TACフィルムの伸縮率が異なることであると考えて本発明に至った。即ち、本発明は、FTIR-ATR法を用いてTACフィルムの表面の可塑剤の量について測定を行ない、PVAフィルムの両面にTACフィルムを貼り合わせる際に、TACフィルムの同一面(表面の可塑剤の量が同一の面)をPVAフィルムに接するように貼り合わせるものである。これにより、PVAフィルムの両面のTACフィルムの伸縮力が相殺されて偏光板のカール(そり)を防止することができる。また、本発明の偏光板は、加熱・加湿条件においてもカール(そり)を少なくすることができる。その結果、LCDパネルに偏光板を貼り合わせる際に気泡のかみ込みを防止することができ、液晶表示装置の製造作業の効率化を図ることができる。」 キ 「【0051】 【実施例】以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明する。 【0052】(実施例1)合成樹脂フィルムとして重合度2400、原反の厚さ75μm、原反幅800mm、無延伸のPVAフィルムを、主成分が水である最初の浴(第1浴)にて3倍に延伸した後、ヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液からなる染色浴にて1.1倍に延伸し、その後、ホウ酸とヨウ化カリウムの入った架橋浴に浸漬した後、水の入った洗浄浴にて1.8倍に延伸し、乾燥した後に偏光子として巻き取った。 【0053】次に、保護フィルムとしてTACフィルムを準備した。以下、このTACフィルムの片面を面、他方の面を面として説明する。前記保護フィルムの両面をFTIR-ATR法で測定して、面の1488cm-1付近のピーク高さを(A)、1365cm-1付近のピーク高さを(B)、面の1488cm-1付近のピーク高さを(A’)、1365cm-1付近のピーク高さを(B’)とし、(A)/(B)=(C)、(A’)/(B’)=(C’)、及び(C)/(C’)を測定した。その結果を表1に示す。 【0054】続いて、前記偏光子の両面に前記TACフィルムの面が接するように貼り合わせて偏光板を得た。この偏光板を吸収軸45°又は135°で12.1インチサイズに切り出し、作製直後の初期カール(そり)量と、この切り出した偏光板を温度23℃、湿度60%で1時間放置した後のカール(そり)量を測定した。その結果を表1に示す。 【0055】なお、カール(そり)量の測定は、水平面にカールした偏光板を凹状態に置き、最もカール(そり)量の大きい箇所の水平面からの距離を測定する方法で行なった。 【0056】(実施例2)異なるTACフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。また、実施例1と同様の測定結果を表1に示す。 【0057】(実施例3)更に、異なるTACフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして偏光板を作製した。また、実施例1と同様の測定結果を表1に示す。」 ク 「【0062】表1から明らかなように、実施例1、実施例2及び実施例3の偏光板は、初期カール量及び加熱・加湿後のカール量ともに15mm以下である。これに対し、比較例1、比較例2及び比較例3の偏光板では、初期カール量が25?50mm、加熱・加湿後のカール量が25?80mmであり、激しくカール(そり)が生じることが分かる。 【0063】 【発明の効果】以上説明したとおり、本発明は、保護フィルムの表面近傍の可塑剤の量が表裏で異なる場合、偏光子への保護フィルムの貼り合わせを表裏で対象(審決注:「対称」の誤記と認める。)にすることで、保護フィルムの伸縮力を均衡させ、偏光板のカール(そり)を防止するもので、その工業的価値は大である。」 2 引用例1に記載の発明の認定 引用例1の上記記載事項ウ及びエには、引用例1の本発明の偏光板の作製方法として、偏光膜の両面に偏光板用保護フィルムを貼り合わせる方法を採用した旨記載されている。そして、引用例1の本発明は、引用例1の上記記載事項ア及びイに記載された従来例を踏まえてなされた発明である。また、偏光板の作製方法として、偏光膜の両面に偏光板用保護フィルムを貼り合わせる方法は、本願出願時における技術常識でもある。したがって、引用例1の上記記載事項イの段落【0008】の「偏光板作成工程」における「偏光板貼合工程」には、偏光膜の両面に偏光板用保護フィルムを貼り合わせる工程が含まれることは明らかである。 すると、引用例1の上記記載事項アないしエから、引用例1には、次の発明が記載されていると認めることができる。 「流延成膜法における流延、製膜、乾燥の搬送の各工程で張力がかかったりテンター等の手段によって幅手方向に延伸処理を行ったりすることで内部に歪が残存するフィルムであって、前記歪の程度が前記フィルムの表裏で異なるためにカールするフィルムを、偏光板用保護フィルムとして偏光膜の両面に貼り合わせる偏光板の製造方法。」(以下、「引用発明1」という。) 3 本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定 (1)引用発明1の「偏光板用保護フィルムとして偏光膜の両面に貼り合わ」される「フィルム」は、本願発明の「2枚の保護シート」に相当する。 したがって、引用発明1の「フィルムを、偏光板用保護フィルムとして偏光膜の両面に貼り合わせる」ことと、本願発明の「2枚の保護シートを、カールの向きがそれぞれ逆方向となるように偏光子の両面に貼りあわせる」こととは、「2枚の保護シートを、偏光子の両面に貼りあわせる」点で一致する。 (2)引用例1の上記記載事項アの段落【0005】には、「また平面性や光学特性向上のため、テンター等の手段によって、幅手方向(TD方向)で幅保持もしくは延伸処理を行うこともある。この場合にもテンターの延伸倍率等によっては歪を残してしまう場合があった。」と記載されている。また、引用例1の上記記載事項イの段落【0008】には、「このフィルム中に残存する歪の程度がフィルム表裏で異なると、表裏どちらかにフィルムはカールし、カールの強いものでは偏光板貼合工程など偏光板作成工程での取り扱いが困難とな」ると記載されている。そして、流延成膜フィルムの側縁部をクリップで挟み込み搬送しながら、フィルムの幅方向にクリップで張力を加え延伸してフィルムの平面性を保持するようにした流延成膜フィルムのテンター法による延伸の分野では、偏光板の保護フィルムに用いるためにフィルム平面性の要求が高くなると、フィルムの延伸率が上がり、この延伸率の上昇に伴いフィルムの側縁のカール量が大きくなることは、本願出願時における技術常識である(一例として、特開2002-248680号公報(段落【0001】?【0006】)を参照。)。そして、上記技術常識における「カール」は「フィルムの側縁のカール」、すなわち、「フィルムの幅方向」の「カール」であることも明らかである。 かかる技術常識に照らすと、引用発明1の「フィルム」に生じる「カール」は、「テンター等の手段によって幅手方向に延伸処理を行」うことによって生ずるものであり、引用発明1の「フィルム」に生じる「カール」は「フィルム」の幅方向に生ずることは明らかである(なお、平成21年3月13日付けの意見書において、請求人は、「引用文献1の段落【0005】及び【0008】には、偏光板用の保護フィルムを幅手方向で幅保持又は延伸処理を行った場合に歪みが残存し、この歪みに起因して保護フィルムにカールが発生する旨の記載があります。」と述べていることから、上記のような認定を請求人も自認している。)。 したがって、引用発明1の「テンター等の手段によって幅手方向に延伸処理を行」う「ことで内部に歪が残存するフィルムであって、前記歪の程度が前記フィルムの表裏で異なるためにカールするフィルム」と、本願発明の「延伸することにより原反幅方向にカールがそれぞれ生じており、下記式からなる貼りあわせ指標の値が60以下である2枚の保護シート」とは、「延伸することにより原反幅方向にカールがそれぞれ生じて」いる「2枚の保護シート」である点で一致する。 (3)以上から、本願発明と引用発明1とは、 「延伸することにより原反幅方向にカールがそれぞれ生じている2枚の保護シートを、偏光子の両面に貼りあわせることを特徴とする偏光板の製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点〉 本願発明では、「偏光子の両面に貼りあわ」される「2枚の保護シート」の「下記式からなる貼りあわせ指標の値が60以下」であり、かつ、前記「2枚の保護シート」の「カールの向きがそれぞれ逆方向」であるのに対し、引用発明1の「偏光板用保護フィルムとして偏光膜の両面に貼り合わ」される「フィルム」にはこのような限定がない点。 4 相違点についての判断 (1)引用例2の上記記載事項オの段落【0004】には「両者の伸縮率の相違により偏光板がカールしてしまう」ことが記載され、引用例2の上記記載事項カには、「TACフィルムの表と裏で可塑剤の量が異なることにより、TACフィルムの伸縮率が異なる」こと、「PVAフィルムの両面にTACフィルムを貼り合わせる際に、TACフィルムの同一面(表面の可塑剤の量が同一の面)をPVAフィルムに接するように貼り合わせるものである。これにより、PVAフィルムの両面のTACフィルムの伸縮力が相殺されて偏光板のカール(そり)を防止することができる」ことが記載され、引用例2の上記記載事項クには、「保護フィルムの表面近傍の可塑剤の量が表裏で異なる場合、偏光子への保護フィルムの貼り合わせを表裏で対称にすることで、保護フィルムの伸縮力を均衡させ、偏光板のカール(そり)を防止する」ことが記載されている。これらの記載から、引用例2には、保護フィルムの表面近傍の可塑剤の量が表裏で異なると、保護フィルムの表裏で伸縮率が異なることになり、その結果、保護フィルムがカールしてしまうため、かかる保護フィルムを偏光子(偏光フィルム)に貼り合わせて偏光板を製造すると、偏光板がカールしてしまうという課題を解決するために、偏光子(偏光フィルム)の両面に、カールの向きがそれぞれ逆方向である同一の保護フィルムを貼り合わせた旨記載されていることは明らかである(なお、平成21年3月13日付けの意見書において、請求人は、「引用文献2には、同一の保護フィルムを偏光子の両面に貼り合わせることは開示されている」と述べていることから、引用例2において、偏光子(偏光フィルム)の両面に貼り合わされる偏光板保護フィルムが同一のものであることは、請求人も自認している。)。 したがって、引用発明1の「カールするフィルムを、偏光板用保護フィルムとして偏光膜の両面に貼り合わせる」際、引用例2の記載に基づいて、引用発明1の「カールするフィルム」のカールの向きをそれぞれ逆方向として、「カールするフィルムを、偏光板用保護フィルムとして偏光膜の両面に貼り合わせる」ようにすることは、当業者にとって容易に想到し得る。 (2)ここで、引用例2において偏光子(偏光フィルム)の両面に、カールの向きがそれぞれ逆方向である同一の保護フィルムを貼り合わせるようにすることは、本願発明で定義されるa,bがa=bであり、貼り合わせ指標=0の場合に当たることは自明である。 そして、引用例2において偏光子(偏光フィルム)の両面に、カールの向きがそれぞれ逆方向である同一の保護フィルムを貼り合わせるようにしたのは、保護フィルムのカールの影響を最も効果的に相殺することができ、その結果、偏光板のカールを最も効果的に抑制できるからであることは、当業者にとって自明である。 すると、偏光子(偏光フィルム)の両面にカールの向きがそれぞれ逆方向である保護フィルムを貼り合わせることによって偏光板のカールを抑制するためには、必ずしも、2枚の保護フィルムのカール量が同じである必要はなく、2枚の保護フィルムのカール量の差が一方の保護フィルムのカール量に比して小さければ足りること、すなわち、本願発明で定義される貼り合わせ指標が0に近いほど、保護フィルムのカールの影響をより効果的に相殺することができ、その結果、偏光板のカールをより効果的に抑制できることは当業者にとって自明である。したがって、本願発明で定義される貼り合わせ指標ができるだけ0に近づくように、引用発明1の2枚の「カールするフィルム」を選択することは、当業者にとって容易に想到し得る。 また、上記第2の4(1)で述べたように、引用発明1の「カールするフィルム」のカールの向きをそれぞれ逆方向として、「カールするフィルムを、偏光板用保護フィルムとして偏光膜の両面に貼り合わせる」に当たり、引用発明1の製造方法によって生ずる「カール」量及び許容できる「偏光板」のカールの程度を考慮して、貼り合わせ指標の上限の値を本願発明のように定めることは、当業者が適宜設定し得る設計的事項である。 (3)したがって、引用発明1に上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。 5 本願発明の進歩性の判断 以上検討したとおり、引用発明1に上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。 また、本願発明の効果も、引用例1,2に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。 したがって、本願発明は引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-05-08 |
結審通知日 | 2009-05-12 |
審決日 | 2009-05-25 |
出願番号 | 特願2002-353560(P2002-353560) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴野 幹夫 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
日夏 貴史 村田 尚英 |
発明の名称 | 偏光板の製造方法 |
代理人 | 特許業務法人ユニアス国際特許事務所 |