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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1200867
審判番号 不服2006-28061  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-14 
確定日 2009-07-16 
事件の表示 特願2003-367430「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日出願公開、特開2005-130919〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯

本願は、平成15年10月28日の特許出願であって、平成18年10月31日付で拒絶査定がされたのに対し、同年12月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年1月11日付けで明細書についての手続補正書(以下、「審判第1補正」という。)が提出されたものである。当審においてこれを審理した結果、平成21年3月2日付けで前記審判第1補正を却下するとともに、同日付けで拒絶理由を通知したところ、平成21年4月30日付けで意見書と手続補正書(以下、「審判第2補正」という。)が提出された。


2.本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、審判第2補正により補正された明細書の特許請求の範囲における【請求項1】の記載により特定されるべきものであり、その記載は次のとおりである。

「複数種類の図柄がリール図柄として表示される複数のメインリールと、複数種類の図柄が表示図柄として画像表示される画像表示手段と、開始操作手段とを備え、プレイヤーが前記開始操作手段を操作すると、前記複数のメインリールが回転し、前記画像表示手段に表示される前記表示図柄が可変表示され、前記複数のメインリールの停止状態における前記リール図柄の表示態様であるリール表示態様が予め定められた複数のリール入賞態様のいずれかに該当する場合に入賞し、入賞時の前記リール入賞態様に応じた数量の遊技媒体を払い出し、前記画像表示手段の可変表示が最終的に停止した時点の前記表示図柄の表示態様である画像表示態様が入賞時には予め定められた複数の画像入賞態様のいずれかとなり、前記リール入賞態様と前記画像入賞態様とを対応付ける所定の規則を記憶したスロットマシンであって、
前記画像表示手段は、前記複数のメインリールのそれぞれに対応した複数のサブリールを有し、
前記複数のメインリールと前記複数のサブリールそれぞれに対応して共通に設けられ、プレイヤーの停止操作に応じてそれぞれの停止指示信号を出力する複数の停止操作手段と、
前記複数のメインリールを制御する第1制御手段と、
前記複数のサブリールを制御する第2制御手段とを備え、
前記第1制御手段は、
複数のリール入賞態様のうちどの態様で入賞する可能性があるか、又は、入賞する可能性が無いかを示す入賞可能性情報を決定する決定手段と、
前記入賞可能性情報が入賞の可能性を示す場合において、前記停止指示信号が所定のタイミングで発生した場合に前記入賞可能性情報の示すリール入賞態様となるように前記複数のメインリールを制御し、前記停止指示信号が所定のタイミングで発生しなかった場合には全ての前記リール入賞態様とならないように前記複数のメインリールを制御するリール制御手段と、
入賞又は非入賞を示す入賞情報を生成する入賞情報生成手段と、
前記入賞可能性情報及び前記入賞情報を第2制御手段に供給する供給手段とを備え、
前記第2制御手段は、
前記複数のサブリールを定速で回転している状態から停止するまでの速度変化を定めた複数の停止パターンから一の停止パターンを選択し、前記入賞可能性情報が入賞の可能性を示す場合に、前記所定の規則に従って入賞の可能性がある前記リール入賞態様に対応する前記画像入賞態様を特定する特定手段と、
特定した前記画像表示態様となるように前記画像表示手段の可変表示を停止させる停止処理を実行し、前記画像表示手段の可変表示が停止した後に非入賞を示す前記入賞情報が得られた場合には、前記複数のメインリールのうち前記リール表示態様が前記リール入賞態様と一致しないメインリールに対応するサブリールの可変表示を再開させ前記画像表示態様が全ての前記画像入賞態様とならないように前記複数のサブリールを制御する画像制御手段とを備える
ことを特徴とするスロットマシン。」


3.引用刊行物に記載される事項の認定

本願出願前に頒布された刊行物であり、当審の拒絶理由に引用した、特開2002-204850号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がされている。
なお、記載事項ア.は引用例の技術内容を概括する特許請求の範囲であり、記載事項イ.は「一実施形態」で使用されている「シンボル」に関する記載である。記載事項ウ.-シ.は、「他の実施形態」に関する記載であり、記載事項ス.-タ.は「上述した実施形態」についての「なお」書きである。

・記載事項ア.
「【請求項1】種々の図柄を可変表示する可変表示手段と、乱数抽選によって遊技の内部入賞態様を決定する内部入賞態様決定手段と、この内部入賞態様決定手段により決定された内部入賞態様に対応した図柄の組み合わせを前記可変表示手段に停止表示させる停止表示制御手段と、前記可変表示手段とは別に設けられた画像表示を行う副表示手段とを備えて構成される遊技機において、
前記副表示手段は、関連する他機種の遊技情報を表示することを特徴とする遊技機。
【請求項2】前記他機種の遊技情報は、前記内部入賞態様決定手段により決定された内部入賞態様を連想させる情報であることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
・・・
【請求項5】内部入賞態様を連想させる前記情報は、関連する他機種の遊技機において、前記内部入賞態様決定手段により決定された内部入賞態様に対応して前記他機種の可変表示手段に停止表示される図柄組み合わせの情報であることを特徴とする請求項2に記載の遊技機。
【請求項6】前記可変表示手段は種々の図柄を複数列に可変表示するものであって、遊技者の操作に基づいて前記可変表示を各列毎に停止させる停止手段を有し、前記副表示手段はこの停止手段の操作に基づいて前記遊技情報を表示することを特徴とする請求項5に記載の遊技機。」

・記載事項イ.
「【0010】
【発明の実施の形態】本発明による遊技機をスロットマシンに適用した一実施形態について説明する。
【0011】図1は本実施形態によるスロットマシン1の正面図である。
【0012】スロットマシン1の前面パネル23の背後には3個のリール2,3,4が回転自在に設けられている。・・・
・・・
【0018】図2は、リール2,3,4の外周面に描かれたシンボル列を示している。各シンボル列は、複数種類のシンボルが21個配列されて構成されており・・・
【0027】また、シンボルテーブルは図4に概念的に示される。このシンボルテーブルは各リール2?4の回転位置とシンボルとを対応づけるものであり、図2に示したシンボル列を記号で表したものである。・・・・
【0028】同図の例では、例えば、第1のリール2が基準位置からコードナンバ“7”の回転位置で停止したときは、表示窓5の中央に“E”のコードに対応する「風鈴」のシンボルが現れ、その上下にはそれぞれ“B”,“G”のコードに対応する「花火師」,「氷」の各シンボルが現れることになる。」

・記載事項ウ.
「【0044】図22はこの他の実施形態によるスロットマシン19の外観を示す正面図である。・・・
【0045】スロットマシン19の本体中央部の前面パネル23には、可変表示装置を構成する3個のリール2,3,4が回転自在に設けられている。これらリール2,3,4は種々のシンボルを複数列に可変表示する可変表示手段を構成している。各リール2,3,4の外周面には複数種類のシンボルから成るシンボル列が描かれている。これらシンボルはスロットマシン19の正面の表示窓5,6,7を通してそれぞれ3個ずつ観察される。この表示窓5,6,7には、横3本と斜め2本の計5本の入賞ラインが設けられている。・・・
・・・
【0048】・・・WINランプ72は有効化入賞ラインに入賞組み合わせのシンボルが揃った時に点灯する。配当枚数表示部73は、3桁の7セグメントLEDからなり、入賞によるメダル払い出し枚数を表示する。・・
【0049】また、表示窓5?7の直ぐ下方の前面パネル23には7インチの液晶表示装置24が設けられている。この液晶表示部24は、可変表示手段を構成するリール2?4とは別に設けられた、画像表示を行う副表示手段を構成しており、内部入賞態様決定手段により決定された内部入賞態様を連想させる情報を、関連する他機種の遊技情報として表示する。ここでも、関連する他機種とは、例えば、段階的に新たに開発された新機種のスロットマシン19の1段階前に開発されていた機種のことを意味する。
・・・
【0051】また、液晶表示装置24の下方には、左側から、貯留メダル精算スイッチ14、スタートレバー15、および停止ボタン16,17,18が設けられている。貯留メダル精算スイッチ14は機械内部にクレジットされているメダルを精算する際に使用される。また、スタートレバー15の操作により各リール2?4の回転が一斉に開始する。停止ボタン16?18は、各リール2?4に対応して配置されており、これら各リール2?4の回転が一定速度に達したとき操作が有効化され、遊技者の操作に応じて各リール2?4の回転を停止する。これら停止ボタン16,17,18は、遊技者に操作されると各リール2,3,4の可変表示を各列毎に停止させる停止手段を構成している。」

記載事項エ.
「【0056】図24は、リール2,3,4の外周面に描かれたシンボル列を示している。各シンボル列は、複数種類のシンボルが21個配列されて構成されており、図の左から順に第1リール2,第2リール3,第3リール4に対応している。各シンボルには“1?21”のコードナンバが付されており、各リール2,3,4はシンボル列が図の下方向に移動するように回転駆動される。
【0057】シンボルの種類には、数字の7からなる「セブン」、指でVサインをした親方の絵からなる「親方」、英字のBARからなる「バー」、振ると音が鳴る鈴の絵からなる「鈴」、魚の鯛の絵からなる「鯛」、サクランボの絵からなる「チェリー」、および親方と記された扇子の絵からなる「扇子」の7種類がある。
【0058】一般遊技時にシンボル「セブン」、「親方」が有効化入賞ラインにそれぞれ3個揃うと15枚のメダルが払い出されてから、B・B(ビッグ・ボーナス)ゲームが実行される。また、一般遊技時に、シンボル「バー」の3個の組み合わせが有効化入賞ラインに揃うと15枚のメダルが配当されてから、R・B(レギュラー・ボーナス)ゲームが実行される。
【0059】また、一般遊技時に、シンボル「鈴」、「鯛」が有効化入賞ラインにそれぞれ3個揃うと小当たり入賞となって12枚、8枚のメダルが払い出される。また、一般遊技時に1つのシンボル「チェリー」が第1リール3の有効化入賞ラインに停止すると小当たり入賞となって2枚のメダルが払い出される。
【0060】また、一般遊技時にシンボル「扇子」が有効化入賞ラインに3個揃うとリプレイとなり、メダルの払い出しは無いものの、メダルを投入しなくてもさらに1回のゲームをすることが出来る。B・Bゲーム中の一般遊技時にこのシンボル「扇子」が有効化入賞ラインに3個揃うと8枚のメダルが払い出され、遊技状態はB・Bゲーム中一般遊技からジャックゲームへと移行する。また、このシンボル「扇子」の3個の組み合わせは、ジャックゲームにおけるジャックゲーム入賞発生の組合せでもある。このジャックゲームは、真ん中の入賞ラインL1上に「扇子」-「扇子」-「扇子」のシンボル組合わせを揃えるゲームである。」

・記載事項オ.
「【0069】図27に示すメイン制御基板61における制御部はマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)30を主な構成要素とし、これに乱数サンプリングのための回路を加えて構成されている。マイコン30は、予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うメインCPU(中央演算処理装置)31と、プログラム記憶手段であるプログラムROM(リード・オンリ・メモリ)32およびバックアップ機能付き制御RAM(ランダム・アクセス・メモリ)33とを含んで構成されている。CPU31には、基準クロックパルスを発生するクロックパルス発生回路34および分周器35と、一定範囲の乱数を発生する乱数発生器36および発生した乱数の1つを特定する乱数サンプリング回路37とが接続されている。さらに、後述する周辺装置(アクチュエータ)との間で信号を授受するI/Oポート60が接続されている。ROM32は、入賞確率テーブル,シンボルテーブル,入賞シンボル組合せテーブル、およびシーケンスプログラムを格納するように記憶部が区分されている。これらテーブルの内容については後述する。
・・・
【0071】マイコン30からの制御信号により動作が制御される主要なアクチュエータとしては、各リール2,3,4を回転駆動するステッピングモータ55、・・・がある。・・・
【0072】また、マイコン30が制御信号を生成するために必要な入力信号を発生する主な入力信号発生手段としては、・・・スタートレバー15の操作を検出するスタートスイッチ15S、・・・がある。・・・
・・・
【0074】さらに、上記の入力信号発生手段としては、停止ボタン16,17,18が押された時に対応するリールを停止させる信号を発生するリール停止信号回路45と、・・・がある。・・・
【0075】また、このI/Oポート60にはサブ制御部通信ポート79が接続されており、マイコン30はこのサブ制御部通信ポート79を介してサブ制御基板62へ信号を送出する。・・・」

・記載事項カ.
「【0076】サブ制御基板62における制御部はマイコン81を主な構成要素とし、これに乱数サンプリングのための回路を加えて構成されている。マイコン81も、メイン制御基板61におけるマイコン30と同様、予め設定されたプログラムに従って制御動作を行うサブCPU82と、プログラム記憶手段であるプログラムROM83およびバックアップ機能付き制御RAM84とを含んで構成されている。CPU81にも、基準クロックパルスを発生するクロックパルス発生回路85および分周器86が接続されており、さらに、上記のメイン制御部通信ポート88や後述するアクチュエータとの間で信号を授受するI/Oポート87が接続されている。サブCPU82は、液晶表示装置24に遊技機データを表示させるのに必要なデータを、メイン制御基板61から送信されるコマンドに基づいてゲーム毎に算出し、制御RAM84に記憶したデータをゲーム毎に算出したデータに更新している。
・・・
【0078】また、I/Oポート87には画像制御IC(高集積化回路)90および音源IC91が接続されている。・・・
【0079】また、画像制御IC90には、キャラクタ・データが記憶されたキャラクタROM92およびカラーディスプレイ表示用メモリであるビデオRAM93が接続されており、画像制御IC90は、マイコン81の制御の下、7インチの液晶表示装置24に画像表示を行う。
【0080】段階的に新たに開発された新機種のスロットマシン19の1段階前に開発されていた機種が、例えば前述した実施形態で説明した図1に示すスロットマシン1である場合には、液晶表示装置24には、図2に示したリールシンボルが第1リール,第2リールおよび第3リールの複数列に可変表示される。後述するように、マイコン81は、その時の遊技状態および当選フラグの種類といった情報をメイン制御部通信ポート88を介してメイン制御基板61から取り込む。そして、取り込んだ遊技状態および当選フラグ等に基づき、液晶表示装置24に停止表示する画像パターンを決定し、画像制御IC90を制御して決定した停止表示パターンを液晶表示装置24に表示させる。」

・記載事項キ.
「【0081】図29はメイン制御基板61のROM32内に格納された入賞確率テーブルを概念的に示している。この入賞確率テーブルは、サンプリング回路37で抽出された乱数を各入賞態様に区分けするために使用され、乱数発生器36で発生する一定範囲の乱数を各入賞態様に区画するデータを記憶している。・・・
【0082】・・・抽出された乱数値がc未満であれば小当たり入賞(小ヒット)となり、この場合、a未満の場合には「チェリー」当たり要求フラグが立ち、a以上b未満の場合には「鯛」当たり要求フラグ、b以上c未満の場合には「鈴」当たり要求フラグが立つ。また、抽出された乱数値がc以上d未満であれば「再遊技」当たり要求フラグが立つ。また、抽出された乱数値がd以上e未満であれば中当たり入賞(中ヒット)となって「RB」当たり要求フラグが立ち、抽出された乱数値がe以上f未満であれば大当たり入賞(大ヒット)となって「BB」当たり要求フラグが立つ。また、f以上であれば入賞なしの「ハズレ」当たり要求フラグが立つ。
【0083】つまり、入賞態様は、サンプリングされた1つの乱数値がこのどの数値範囲に属するかによって決定され、当たり要求フラグによって表される。ここで、乱数発生器36,サンプリング回路37,入賞確率テーブルおよびマイコン30は、入賞態様決定手段を構成している。
・・・
【0085】また、上記のROM32内には図示しない入賞シンボル組合せテーブルが格納されている。・・・この入賞シンボル組合せテーブルは、第1リール2,第2リール3、第3リール4の停止制御時、および全リール停止後の入賞確認を行うときに参照される。」

・記載事項ク.
「【0094】次に、スタートレバー15の操作により、スタートスイッチ15Sからのスタート信号入力があったか否かが判別される(ステップ106)。この判別が“YES”の場合、次に、前回の遊技から4.1秒経過しているか否かが判別される(ステップ107)。4.1秒経過していない場合には、・・・
【0095】前回遊技から4.1秒経過すると、次に、乱数発生器36で発生した抽選用の乱数がサンプリング回路37によって抽出され(ステップ109)、その後、上記の4.1秒をカウントするための1遊技監視用タイマがセットされる(ステップ110)。次に、ステップ109で抽出された乱数に基づき、確率抽選処理が行われる(図32,ステップ111)。
・・・
【0106】次に、当選番号に応じた当たり要求フラグがセットされる(ステップ150)。当たり要求フラグの種類には、「チェリー」,「鯛」,「鈴」,「再遊技」,「RB」,および「BB」の6種類があり、この中のいずれか1つの当たり要求フラグがRAM33の所定領域にセットされる。いずれの当たり要求フラグも立っていない場合には「ハズレ」になる。ここで当たり要求フラグがセットされているとは、その入賞態様に内部当選しているということである。
・・・
【0113】図32のステップ111における確率抽選処理は以上のようにして行われる。次に、メインCPU31は、液晶表示装置24に演出表示させる演出パターンを選択する演出選択処理を行う(図32,ステップ112)。サブ制御基板62のROM83には各遊技状態毎に様々な演出パターンが予め記憶されており、このステップ112における演出選択処理は、その時の遊技状態に応じた演出パターンが予め記憶されたパターンの中から適宜選択されることによって行われる。
・・・
【0117】また、上記のステップ112では、メイン制御基板61のサブ制御部通信ポート79からサブ制御基板62のメイン制御部通信ポート88へ、遊技開始情報が送信される。
【0118】遊技開始情報は、遊技開始を表すコマンド種別と、前述した当たり要求フラグ等を表す24ビットのパラメータとから構成され、スタートレバー15の操作が検知されて確率抽選処理が行われた後に送信される。このパラメータは、最下位ビット0?最上位ビット23の24ビットとすると、上位のビット15?23に当たり要求フラグが表されている。例えば、ビット15にビットが立っている場合には当たり要求フラグはチェリー、ビット16にビットが立っている場合には当たり要求フラグは鯛であることを表し、同様に、ビット17,18,19,20にビットが立っている場合には当たり要求フラグはそれぞれ鈴,リプレイ,RB,BBであることを表している。
・・・
【0120】サブCPU82は、この遊技開始情報を受信すると、現在の遊技状態が一般遊技状態の時は、スピーカ39から遊技開始音を出音させると共に、液晶表示装置24に図2に示したシンボルのリール回転表示を行わせる。また、BBまたはRBの内部当たり中の一般遊技時には、スピーカ39からチャンス演出の効果音群を出音させると共に、液晶表示装置24にチャンス演出を行わせる。また、現在の遊技状態がRB遊技状態である場合には、スピーカ39から遊技開始音およびRB遊技演出の効果音群を出音させると共に、液晶表示装置24にRB遊技演出表示を行わせる。また、現在の遊技状態がBB遊技状態である場合には、スピーカ39から遊技開始音およびBB遊技演出の効果音群を出音させると共に、液晶表示装置24にBB遊技演出およびBB遊技残数の表示を行わせる。」

記載事項ケ.
「【0132】・・・第1リール停止ボタン16のオン操作が検出された場合には、第1リール停止ボタン16が遊技者によって操作された時点で、第1リール2のステッピングモータ55に供給された駆動パルスの数がRAM33から読み出され、第1リール2の回転位置と対応づけられる。第1リール2の回転位置が分かると、シンボルテーブル(図30参照)との対照により、観察窓5に現れている3個のシンボルがシンボルコードとして把握される。
【0133】この場合、大ヒットの当たり要求フラグが立っているときには、観察窓5の有効化入賞ライン上に大ヒットを構成するシンボルがあるか否かがチェックされる。同様に、中ヒット,小ヒットの当たり要求フラグが立っているときには、観察窓5の有効化入賞ライン上に中ヒット,小ヒットを構成するシンボルがあるか否かがチェックされる。有効化入賞ライン上に当たり要求フラグに対応したシンボルがあるときは、メインCPU31は即座に第1リール2を停止させる。
【0134】上記のチェック処理により、当たり要求フラグに対応したシンボルが観察窓5の有効化入賞ライン上に現れていない場合には、さらに第1リール2を制御コマ数(シンボル4コマ)分回転させたときにどのようなシンボルが現れてくるかをチェックする。もし、この中に当たり要求フラグに対応するシンボルが有ったときには、そのコマ位置までが滑りコマ数であり、第1リール2を滑りコマ数分回転させてそこで停止させる。この引き込み制御処理は以下に説明する第2リール3および第3リール4の各停止制御処理時にも同様にして行われる。
・・・・
【0139】次に、第3リール4の停止ボタン18のオン操作が検出された場合には、第3リール4の停止制御処理が行われる。この停止制御処理では、既に第1リール2および第2リール3が停止してそのシンボルの組合せが特定されているので、これらのシンボルの組合せに対し、第3リール4の各々のコードナンバ毎に入賞の可能性が判定され、図41に示すテーブルと同様にして入賞予想フラグが立てられる。
【0140】この予想フラグデータも第3リール4の停止ボタン18が操作されたときに参照され、大ヒットの予想が立っているときには、有効化入賞ライン上に大ヒットのシンボルが停止するように第3リール4の停止制御が実行される。この第3リール4の停止制御処理時には、既に停止している第1リール2,第2リール3のシンボルとの組合せによって当たり要求フラグ通りの入賞が得られるだけでなく、当たり要求フラグと異なる入賞が得られないようにリール停止位置が制御される。」

・記載事項コ.
「【0143】次に、メインCPU31によって入賞検索処理が行われる(ステップ120)。この入賞検索処理では、有効化入賞ライン上に実際に揃っているシンボルの組合せを示す入賞フラグの種類と、確率抽選処理によって決定された当たり要求フラグの種類との一致がとられる。そして、次にこの入賞フラグが正常か否かが判別される(ステップ121)。・・・
・・・・
【0145】入賞フラグが正常の場合には、次に、その時の状態によって遊技メダルの貯留、または払い出し処理が行われる(ステップ123)。つまり、クレジットで遊技が行われている状態では、入賞によって獲得したメダル数分、貯留枚数表示部13に表示されるクレジット数が増加され、また、投入口8へのメダル投入で遊技が行われている状態では、入賞によって獲得した枚数のメダルが受け皿20へ払い出される。
【0146】また、このステップ123では、サブ制御部通信ポート79からサブ制御基板62へ入賞情報が送信される。この入賞情報は、入賞を表すコマンド種別と、入賞情報を表す24ビットのパラメータとから構成されており、全リール2?4が停止して入賞検索が行われた後に送信される。・・・」

・記載事項サ.
「【0153】図43はこのサブ側回胴停止処理の詳細を示すフローチャートである。
【0154】サブ側回胴停止処理では、まず、第1回胴停止コマンドがメイン制御基板61から送信されて来たか否かがサブCPU82によって判断される(図43,ステップ171)。回胴停止コマンドは、前述したように、メインフローのステップ116(図32参照)でメイン制御基板61から送信されるリール停止情報に含まれている。第1回胴停止コマンドが送信されて来ると、次に、サブCPU82により、1?21の数値の中から任意の1つの数値がランダムに抽出されて乱数抽出が行われる(ステップ172)。
【0155】この数値1?21は図2に示される他機種のスロットマシン1の各リールシンボルに付されたコードナンバ1?21に対応しており、乱数抽出された数値のコードナンバでリールが停止操作されたものと仮定する。液晶表示装置24に表示される他機種のスロットマシン1のリールの可変表示を停止させる停止ボタンは、新機種のスロットマシン19には存在しないため、この乱数抽出によって抽出された数値のコードナンバに対応するリールシンボル位置がリール仮想停止位置とされる。
【0156】なお、本実施形態では、乱数抽出によってリール仮想停止位置を決めて液晶表示装置24に模擬表示するリール回転表示の停止位置を決定しているが、このような乱数抽出を行わないで、本体側の停止ボタン16?18の操作に基づいて液晶表示装置24に遊技情報を表示するようにしてもよい。つまり、停止ボタン16?18の実際の操作タイミングにより、液晶表示装置24に模擬表示するリール回転表示の停止位置を決定するようにしてもよい。
【0157】次に、このように決定されたスロットマシン1の第1リールのリール仮想停止位置と、メイン制御基板61から送信されて来た遊技開始情報に含まれている遊技状態と、内部当選役とに基づいて、液晶表示装置24に可変表示されているスロットマシン1の第1リールの停止位置がサブCPU82によって決定され、その停止位置にこの第1リールの可変表示が停止される(ステップ173)。リール停止位置の決定に際しては、他機種のスロットマシン1のリール停止制御に用いられていたリール停止制御テーブルが参照され、新機種のスロットマシン19のリール停止位置の決定に際して用いられるリール停止制御テーブルとは異なるテーブルが用いられる。以下に述べる第2リールおよび第3リールの停止位置の決定に際しても同様である。
・・・・
【0160】このようにして液晶表示装置24に表示されている他機種のスロットマシン1のリール回転表示が、例えば図44に示すように、各リール表示列毎に停止される。すなわち、本実施形態では、新機種のスロットマシン19の内部入賞態様を連想させる情報として、関連する他機種のスロットマシン1において、新機種のスロットマシン19の内部入賞態様に対応して各リールに停止表示されるシンボル組み合わせの情報が、液晶表示装置24に表示される。

・記載事項シ.
「【0162】さらに、本実施形態によるスロットマシン19では、遊技者は、過去のスロットマシン1と新しいスロットマシン19の両方の興趣を楽しむことが可能となる。」

・記載事項ス.
「【0163】なお、上述した実施形態で液晶表示装置24に表示される他機種のリールシンボルの可変表示は、スロットマシン19の本体に備えられた各リール2?4の目押し補助として機能しないように次の各種の対策が施されている。ここで、目押しとは、遊技者が高速に回転するリールシンボルを注視してその移動表示のタイミングを測って停止ボタン16?18を操作し、所望のリールシンボルを入賞ライン上に停止表示させることを意味している。
【0164】まず、液晶表示装置24に表示される他機種のリールシンボルの可変表示が、スロットマシン19の本体に備えられた各リール2?4の可変表示と同期しないように行われている。つまり、液晶表示装置24に模擬表示される他機種の各リールの回転速度は、新機種の各リール2?4の回転速度と変えられている。
【0165】また、サブCPU82は、メイン制御基板61からスタートコマンドやストップコマンドを受信することにより、液晶表示装置24に表示する他機種のリールの可変表示を開始したり停止させたりして液晶表示の表示遷移を行っているが、メイン制御基板61からサブ制御基板62へ送信されるコマンドは、図45のタイミングチャートに示すように、任意の遅延時間経過後に行われている。
【0166】つまり、同図(a)に示すタイミングでスロットマシン19(遊技機)が動作すると、ランダムに決定される遅延時間が経過した同図(b)に示すタイミングで、メイン制御基板61からサブ制御基板62へコマンドが送信される。この結果、液晶表示装置24の表示が遷移するタイミングは、同図(c)に示すように遊技機が動作してから任意の時間経過した後になる。従って、液晶表示装置24の表示が遷移するタイミングは、スロットマシン19の本体に備えられた各リール2?4の可変表示の遷移タイミングと同期しない。」

・記載事項セ.
「【0167】また、内部入賞態様決定手段で決定された内部当選フラグが遊技開始情報に含められてメイン制御基板61からサブ制御基板62へ送信され、サブCPU82は受信したこの内部当選フラグに従った演出選択を行っているが、はずれの確定やボーナス内部当たりがサブ制御基板62側で判断出来ないようにするために、メイン制御基板61からサブ制御基板62へ送信される当選フラグは、加工されて擬似当選フラグとされている。つまり、内部入賞態様決定手段で決定された内部当選フラグが所定の確率で他の当選フラグに置き換えられて、メイン制御基板61からサブ制御基板62へ送信されている。
【0168】例えば、はずれの確定がサブ制御基板62側で判断出来ないようにするため、128分の1の確率で当選フラグがクリアされてはずれ当選フラグとされ、メイン制御基板61からサブ制御基板62へ送信されている。また、ボーナス内部当たりの確定がサブ制御基板62側で判断出来ないようにするため、128分の1の確率でボーナス当選以外の当選フラグにボーナス当選フラグがセットされ、メイン制御基板61からサブ制御基板62へ送信されている。」

・記載事項ソ.
「【0169】また、液晶表示装置24に表示する他機種のリールの第3停止リール表示においては、遊技機本体の全リール2?4の停止操作が完了しており、液晶表示装置24での演出表示が長時間にわたっても目押し補助とすることは出来ないため、パチンコ遊技機に見られるリーチ演出表示のような長時間の演出表示を行うことが出来る。
【0170】例えば、第3停止のストップコマンド受信後、20図柄滑って液晶表示を静止表示にすることが出来る。また、第3停止のストップコマンド受信後、対象の図柄変動表示を一旦静止表示とし、そのまま図柄配列データに従って再変動を低速で行い、任意の時間経過後に任意の図柄番号で静止表示することが出来る。また、第3停止のストップコマンド受信後、対象の図柄変動表示を反転し、任意の時間経過後に反転方向のまま、図柄配列データに従ってコマ送り表示を行い、任意の図柄番号で静止表示することが出来る。また、第3停止のストップコマンド受信後、対象の図柄変動表示を一旦静止表示とし、対象の図柄だけではなく、全図柄を高速で再変動させ、全図柄の静止表示、再変動を任意の回数繰り返した後、任意の図柄番号で完全静止表示することも出来る。また、第3停止のストップコマンドを受信しても図柄変動を表示を継続し、次遊技のためのメダル投入コマンドを受信したら静止表示することも出来る。この最後のアクションでは、第1停止、第2停止でも静止表示はしないようにし、次遊技のメダル投入まで、全図柄の変動表示を続ける。」

・記載事項タ.
「【0171】また、液晶表示装置24に表示される旧機種の図柄の出目によっても、新機種におけるBBまたはRBゲームのボーナス内部当選に気付かない遊技者への配慮として、所定確率でボーナスの内部当選を液晶表示装置24に明示して告知する構成としてもよい。
【0172】この場合、サブCPU82は、メイン制御基板61側から受信した遊技開始情報にBBまたはRBの内部当選フラグが含まれているときは、スピーカ39から特定のスタート音を出音させると共に、液晶表示装置24に特定のキャラクターを登場させて図柄の出目を強制的に変え、BBまたはRBが内部当たり中であることが明確に分かる確定告知画面を表示させる。
【0173】例えば、スタートレバー15が操作されると、図46(a)に示すように、特定のスタート音が出音されると共に、液晶表示装置24に変動表示されている各図柄列の前にイルカを模したキャラクター図柄「フリッパー」が表示出現される。その後、第一停止のストップコマンドが受信されると、同図(b)に示すように、第1停止リールの図柄列の変動が停止されると共に、「フリッパー」が波と共に出現表示される。そして、第2停止のストップコマンドが受信されると、同図(c)に示すように、「フリッパー」の背後に波が押し寄せて変動表示されている各図柄列が全く見えなくなってしまう。そして、第3停止のストップコマンドが受信されると、同図(d)に示すように、波が引き初め、背後の各リールの図柄列がリーチ目の出目となって露わになってくる。
【0174】やがて、波が完全に退くと、リーチ目が表示されていた画面が、BB内部当たりの場合は、同図(e)または同図(f)に示すBB確定告知画面に強制的に変えられ、「7」や「花火師」といったBB図柄が揃えられて表示される。この表示によって、衆目一致のBB内部当選の告知がなされる。また、RBが内部当選している場合は、波が完全に退いた後、同図(g)に示すRB確定告知画面に強制的に変えられ、「のれん」のRB図柄が揃えられて表示される。この表示によって、衆目一致のRB内部当選の告知がなされる。
【0175】従って、このような構成によれば、新たなスロットマシン19のボーナス内部当選は、対応するボーナス図柄が強制的に揃えられて液晶表示装置24に表示されることによって明確に遊技者に告知される。」


4.引用発明の認定

記載事項ウ.以降にある「他の実施形態」を基礎として、引用例に開示される技術事項を検討する。

(1)「スロットマシン19」について
記載事項ウ.の「スロットマシン19」は「可変表示装置」として「リール2、3、4」を備えており、そこには「複数種類のシンボル」が描かれている。また、「リール2?4とは別に設けられた、画像表示を行う副表示手段」として「液晶表示部24」も備えている。さらに、「スタートレバー15」を備えており、「スタートレバー15の操作により各リール2?4の回転が一斉に開始」する。「各リール2?4に対応して設置」された「停止ボタン16?18」も備えており、「停止ボタン16,17,18は、遊技者に操作されると各リール2,3,4の可変表示を各列毎に停止」させる。
記載事項エ.によると、「リール2、3、4」の「シンボルの種類」は「数字の7からなる「セブン」、指でVサインをした親方の絵からなる「親方」、英字のBARからなる「バー」、振ると音が鳴る鈴の絵からなる「鈴」、魚の鯛の絵からなる「鯛」、サクランボの絵からなる「チェリー」、および親方と記された扇子の絵からなる「扇子」の7種類」であり、「有効化入賞ライン」に「セブン」、「親方」、「鈴」、「鯛」等が「それぞれ3個揃う」等となると「入賞」となって、「15枚」、「12枚」、「8枚」等の「メダルが払い出される」。
記載事項オ.によると、このスロットマシンは「メインCPU31」を含む「マイコン30」を有する「メイン制御基板61」を備えており、「各リール2,3,4を回転駆動するステッピングモータ55」は「マイコン30からの制御信号により動作が制御」されている。
記載事項カ.によると、このスロットマシンは「サブCPU82」を含む「マイコン81」を有する「サブ制御基板62」も備えており、「液晶表示装置24には、図2に示したリールシンボルが第1リール,第2リールおよび第3リールの複数列に可変表示される」とともに、「マイコン81」は「その時の遊技状態および当選フラグの種類といった情報」を「メイン制御基板61から取り込」み、「取り込んだ遊技状態および当選フラグ等に基づき、液晶表示装置24に停止表示する画像パターンを決定し、画像制御IC90を制御して決定した停止表示パターンを液晶表示装置24に表示させる」。ここで、「図2に示したリールシンボル」とは、記載事項イ.に戻れば「風鈴」、「花火師」、「氷」といった「シンボル」が「21個配列された」ものであり、記載事項ア.における特許請求の範囲の用語でいえば「関連する他機種の」ものである。

ここまでを整理すると、引用例には、
「数字の7からなる「セブン」、指でVサインをした親方の絵からなる「親方」、英字のBARからなる「バー」、振ると音が鳴る鈴の絵からなる「鈴」、魚の鯛の絵からなる「鯛」、サクランボの絵からなる「チェリー」、および親方と記された扇子の絵からなる「扇子」の7種類のシンボルがかかれたリール2、3、4を可変表示装置として備え、
リール2?4とは別に設けられた、画像表示を行う副表示手段として液晶表示部24を備え、液晶表示部24には関連する他機種のシンボルである「風鈴」、「花火師」、「氷」等のシンボルを21個配列した第1リール、第2リールおよび第3リールの複数列に可変表示し、
スタートレバー15を備え、スタートレバー15の操作により各リール2?4の回転が一斉に開始し、
各リール2?4に対応して設置された停止ボタン16?18も備え、停止ボタン16,17,18は、遊技者に操作されると各リール2,3,4の可変表示を各列毎に停止させ、
リール2、3、4の有効化入賞ラインに「セブン」、「親方」、「鈴」、「鯛」等がそれぞれ3個揃う等となると入賞となって、「15枚」、「12枚」、「8枚」等のメダルが払い出され、
各リール2,3,4を回転駆動するステッピングモータ55を制御するマイコン30を有するメイン制御基板61を備え、マイコン30はメインCPU31を含み、
メイン制御基板61から取り込んだ遊技状態および当選フラグ等に基づき、液晶表示装置24に停止表示する画像パターンを決定し、画像制御IC90を制御して決定した停止表示パターンを液晶表示装置24に表示させる、サブCPU82を含むマイコン81を有するサブ制御基板62を備える、スロットマシン19」
なる発明事項が開示されている。

(2)「メイン制御基板61」について
上記の発明事項中、「メイン制御基板61」についてさらに見ると、記載事項キ.によれば、「入賞態様決定手段」も構成しており、「乱数」の「抽出」により「ハズレ」も含めた「当たり要求フラグ」を立てている。また、記載事項ク.によると、「メイン制御基板61」は「前述した当たり要求フラグ等を表す24ビットのパラメータ」を含む「遊技開始情報」を「サブ制御基板62」へと送信しており、該送信のための「サブ制御部通信ポート79」を有している。
また、記載事項ケ.によれば、「メインCPU31」は、「第1リール停止ボタン16が遊技者によって操作された時点」で、「有効化入賞ライン上」または「制御コマ数(シンボル4コマ)分」の「中に当たり要求フラグに対応するシンボルが有ったとき」には、「そのコマ位置まで」を「滑りコマ数」として「第1リール2」を「停止」させ、「第2リール3および第3リール4の各停止制御処理時」にも「同様」の「引き込み制御処理」を行い、「この第3リール4の停止制御処理時」には「既に停止している第1リール2,第2リール3のシンボルとの組合せによって当たり要求フラグ通りの入賞が得られるだけでなく、当たり要求フラグと異なる入賞が得られないようにリール停止位置が制御される」。
さらに、記載事項コ.によると、「メインCPU31」は「有効化入賞ライン上に実際に揃っているシンボルの組合せを示す入賞フラグの種類と、確率抽選処理によって決定された当たり要求フラグの種類との一致」をとる「入賞検索処理」を行い、「入賞を表すコマンド種別と、入賞情報を表す24ビットのパラメータとから構成」される「入賞情報」を「サブ制御部通信ポート79からサブ制御基板62へ」送信している。

すなわち、引用例には「メイン制御基板61」について、
「メイン制御基板61は、
乱数の抽出により、ハズレも含めた当たり要求フラグを立てる入賞態様決定手段を構成しており、当たり要求フラグ等を表す24ビットのパラメータを含む遊技開始情報をサブ制御基板62へと送信するサブ制御通信ポート79を有し、
メインCPU31により、第1リール停止ボタン16が遊技者によって操作された時点で、有効化入賞ライン上または制御コマ数(シンボル4コマ)分の中に当たり要求フラグに対応するシンボルが有ったときには、そのコマ位置までを滑りコマ数として第1リール2を停止させ、第2リール3および第3リール4の各停止制御処理時にも同様の引き込み制御処理を行い、第3リール4の停止制御処理時には、既に停止している第1リール2,第2リール3のシンボルとの組合せによって当たり要求フラグ通りの入賞が得られるだけでなく、当たり要求フラグと異なる入賞が得られないようにリール停止位置が制御され、
メインCPU31は、有効化入賞ライン上に実際に揃っているシンボルの組合せを示す入賞フラグの種類と、確率抽選処理によって決定された当たり要求フラグの種類との一致をとる入賞検索処理を行い、入賞を表すコマンド種別と、入賞情報を表す24ビットのパラメータとから構成される入賞情報をサブ制御部通信ポート79からサブ制御基板62へ送信する」
という発明事項が開示されている。

(3)「サブ制御基板62」について
また、上記の発明事項中、「サブ制御基板62」についてさらに見ると、記載事項ク.によれば、「サブCPU82」は「この遊技開始情報を受信すると、現在の遊技状態が一般遊技状態の時」は、「液晶表示装置24」に図2に示した「シンボルのリール回転表示を行わせ」ている。「BBまたはRBの内部当たり中の一般遊技時」には「チャンス演出」を、「RB遊技状態」には「RB遊技演出」を、「BB遊技状態」には「BB遊技演出」を、「液晶表示装置24」で行わせている。さらに、これら動作の開始契機となる「遊技開始情報」は、「スタートレバー15の操作が検知されて確率抽選処理が行われた後に送信される」ものである。
記載事項サ.によると、液晶表示装置24に表示する「サブ側回胴」の「停止処理」では、メイン制御基板61から送信されるリール停止情報に含まれている第1回胴停止コマンドが送信されて来る」と「乱数抽出が行われ」、「乱数抽出された数値のコードナンバでリールが停止操作されたものと仮定」した「第1リールのリール仮想停止位置」とすることが記載されている。そのうえで、停止動作については「このように決定されたスロットマシン1の第1リールのリール仮想停止位置と、メイン制御基板61から送信されて来た遊技開始情報に含まれている遊技状態と、内部当選役とに基づいて、液晶表示装置24に可変表示されているスロットマシン1の第1リールの停止位置がサブCPU82によって決定され、その停止位置にこの第1リールの可変表示が停止され」ること、「リール停止位置の決定に際しては、他機種のスロットマシン1のリール停止制御に用いられていたリール停止制御テーブルが参照」されること、「第2リールおよび第3リールの停止位置の決定に際しても同様」であることが記載されている。このような停止制御により、「スロットマシン19の内部入賞態様に対応して各リールに停止表示されるシンボル組み合わせの情報が、液晶表示器24に表示」される。
記載事項ス.-記載事項タ.は「上述した実施形態」についての「なお」書きであるが、記載事項ス.によれば「液晶表示装置24に表示される他機種のリールシンボルの可変表示」は「各リール2?4の目押し補助として機能しないように」、「各リール2?4の可変表示と同期しないように行われて」いる。そのため「回転速度は、新機種の各リール2?4の回転速度と変えられている」とともに、「メイン制御基板61からサブ制御基板62」への「スタートコマンドやストップコマンド」の送信を「ランダムに決定される遅延時間」遅らせている。また、記載事項ソ.によれば「液晶表示装置24」における「第3停止リール表示」については「20図柄滑って」静止、「一旦静止表示」の後「再変動を低速で行い、任意の時間経過後に任意の図柄番号で静止表示」ほか、「反転方向」や「コマ送り表示」を介して「任意の図柄番号で静止表示することが出来る」ことも記載されている。

すなわち、引用例には「サブ制御基板62」について、
「サブ制御基板62は、
スタートレバー15の操作が検知されて確率抽選処理が行われた後に送信される遊技開始情報を受信すると、現在の遊技状態が一般遊技状態の時は液晶表示装置24に前記関連する他機種のシンボルのリール回転表示を行わせ、BBまたはRBの内部当たり中の一般遊技時にはチャンス演出を、RB遊技状態にはRB遊技演出を、BB遊技状態にはBB遊技演出を、液晶表示装置24で行わせ、
液晶表示器24におけるサブ側回胴の停止処理では、メイン制御基板61から送信されるリール停止情報に含まれている第1回胴停止コマンドが送信されて来ると、乱数抽出が行われ、乱数抽出された数値のコードナンバでリールが停止操作されたものと仮定した第1リールのリール仮想停止位置とし、このように決定されたスロットマシン1の第1リールのリール仮想停止位置と、メイン制御基板61から送信されて来た遊技開始情報に含まれている遊技状態と、内部当選役とに基づいて、他機種のスロットマシン1のリール停止制御に用いられていたリール停止制御テーブルを参照し、液晶表示装置24に可変表示されているスロットマシン1の第1リールの停止位置がサブCPU82によって決定され、その停止位置にこの第1リールの可変表示が停止され、第2リールおよび第3リールについても同様の処理がされて、スロットマシン19の内部入賞態様に対応して各リールに停止表示されるシンボル組み合わせの情報が、液晶表示器24に表示され、
液晶表示装置24に表示される他機種のリールシンボルの可変表示は、回転速度が新機種の各リール2?4の回転速度と変えられているとともに、メイン制御基板61からサブ制御基板62へのスタートコマンドやストップコマンドの送信をランダムに決定される遅延時間遅らせることで、各リール2?4の可変表示と同期しないようにして、各リール2?4の目押し補助として機能しないようにされており、
液晶表示装置24における第3停止リール表示については、20図柄滑って静止、一旦静止表示の後再変動を低速で行い、任意の時間経過後に任意の図柄番号で静止表示するほか、反転方向やコマ送り表示を介して静止表示することが出来る」
という発明事項が開示されている。

(4)引用発明まとめ
以上をまとめると、引用例には、
「数字の7からなる「セブン」、指でVサインをした親方の絵からなる「親方」、英字のBARからなる「バー」、振ると音が鳴る鈴の絵からなる「鈴」、魚の鯛の絵からなる「鯛」、サクランボの絵からなる「チェリー」、および親方と記された扇子の絵からなる「扇子」の7種類のシンボルがかかれたリール2、3、4を可変表示装置として備え、
リール2?4とは別に設けられた、画像表示を行う副表示手段として液晶表示部24を備え、液晶表示部24には関連する他機種のシンボルである「風鈴」、「花火師」、「氷」等のシンボルを21個配列した第1リール、第2リールおよび第3リールの複数列に可変表示し、
スタートレバー15を備え、スタートレバー15の操作により各リール2?4の回転が一斉に開始し、
各リール2?4に対応して設置された停止ボタン16?18も備え、停止ボタン16,17,18は、遊技者に操作されると各リール2,3,4の可変表示を各列毎に停止させ、
リール2、3、4の有効化入賞ラインに「セブン」、「親方」、「鈴」、「鯛」等がそれぞれ3個揃う等となると入賞となって、「15枚」、「12枚」、「8枚」等のメダルが払い出され、
各リール2,3,4を回転駆動するステッピングモータ55を制御するマイコン30を有するメイン制御基板61を備え、マイコン30はメインCPU31を含み、
メイン制御基板61から取り込んだ遊技状態および当選フラグ等に基づき、液晶表示装置24に停止表示する画像パターンを決定し、画像制御IC90を制御して決定した停止表示パターンを液晶表示装置24に表示させる、サブCPU82を含むマイコン81を有するサブ制御基板62を備える、スロットマシン19であって、
メイン制御基板61は、
乱数の抽出により、ハズレも含めた当たり要求フラグを立てる入賞態様決定手段を構成しており、当たり要求フラグ等を表す24ビットのパラメータを含む遊技開始情報をサブ制御基板62へと送信するサブ制御通信ポート79を有し、
メインCPU31により、第1リール停止ボタン16が遊技者によって操作された時点で、有効化入賞ライン上または制御コマ数(シンボル4コマ)分の中に当たり要求フラグに対応するシンボルが有ったときには、そのコマ位置までを滑りコマ数として第1リール2を停止させ、第2リール3および第3リール4の各停止制御処理時にも同様の引き込み制御処理を行い、第3リール4の停止制御処理時には、既に停止している第1リール2,第2リール3のシンボルとの組合せによって当たり要求フラグ通りの入賞が得られるだけでなく、当たり要求フラグと異なる入賞が得られないようにリール停止位置が制御され、
メインCPU31は、有効化入賞ライン上に実際に揃っているシンボルの組合せを示す入賞フラグの種類と、確率抽選処理によって決定された当たり要求フラグの種類との一致をとる入賞検索処理を行い、入賞を表すコマンド種別と、入賞情報を表す24ビットのパラメータとから構成される入賞情報をサブ制御部通信ポート79からサブ制御基板62へ送信し、
サブ制御基板62は、
スタートレバー15の操作が検知されて確率抽選処理が行われた後に送信される遊技開始情報を受信すると、現在の遊技状態が一般遊技状態の時は液晶表示装置24に前記関連する他機種のシンボルのリール回転表示を行わせ、BBまたはRBの内部当たり中の一般遊技時にはチャンス演出を、RB遊技状態にはRB遊技演出を、BB遊技状態にはBB遊技演出を、液晶表示装置24で行わせ、
液晶表示器24におけるサブ側回胴の停止処理では、メイン制御基板61から送信されるリール停止情報に含まれている第1回胴停止コマンドが送信されて来ると、乱数抽出が行われ、乱数抽出された数値のコードナンバでリールが停止操作されたものと仮定した第1リールのリール仮想停止位置とし、このように決定されたスロットマシン1の第1リールのリール仮想停止位置と、メイン制御基板61から送信されて来た遊技開始情報に含まれている遊技状態と、内部当選役とに基づいて、他機種のスロットマシン1のリール停止制御に用いられていたリール停止制御テーブルを参照し、液晶表示装置24に可変表示されているスロットマシン1の第1リールの停止位置がサブCPU82によって決定され、その停止位置にこの第1リールの可変表示が停止され、第2リールおよび第3リールについても同様の処理がされて、スロットマシン19の内部入賞態様に対応して各リールに停止表示されるシンボル組み合わせの情報が、液晶表示器24に表示され、
液晶表示装置24に表示される他機種のリールシンボルの可変表示は、回転速度が新機種の各リール2?4の回転速度と変えられているとともに、メイン制御基板61からサブ制御基板62へのスタートコマンドやストップコマンドの送信をランダムに決定される遅延時間遅らせることで、各リール2?4の可変表示と同期しないようにして、各リール2?4の目押し補助として機能しないようにされており、
液晶表示装置24における第3停止リール表示については、20図柄滑って静止、一旦静止表示の後再変動を低速で行い、任意の時間経過後に任意の図柄番号で静止表示するほか、反転方向やコマ送り表示を介して任意の図柄番号で静止表示することが出来る、
スロットマシン19」
なる発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


5.引用発明と本願発明との一致点・相違点の認定

引用発明と本願発明とを比較する。引用発明は「スロットマシン19」であり、本願発明における「スロットマシン」に相当する。
引用発明における「可変表示装置」である「7種類のシンボルがかかれたリール2、3、4」は、本願発明における「複数種類の図柄がリール図柄として表示される複数のメインリール」に相当する。また、引用発明における「液晶表示部24」は、「画像表示を行う副表示手段」であり、「関連する他機種のシンボルである「風鈴」、「花火師」、「氷」等のシンボル」を表示しているから、本願発明における「複数種類の図柄が表示図柄として画像表示される画像表示手段」に相当する。また、引用発明は「液晶表示部24」におけるこれらの「シンボル」を「第1リール、第2リールおよび第3リールの複数列に可変表示」するから、本願発明に「前記画像表示手段は、前記複数のメインリールのそれぞれに対応した複数のサブリールを有し」とある点も、引用発明と本願発明との一致点である。
引用発明における「スタートレバー15」は本願発明における「開始操作手段」に相当し、引用発明において「スタートレバー15の操作により各リール2?4の回転が一斉に開始」することは本願発明における「プレイヤーが前記開始操作手段を操作すると、前記複数のメインリールが回転し」に相当する。また、引用発明で「一般遊技状態」の場合、「液晶表示装置24に前記関連する他機種のシンボルのリール回転表示を行わせ」なる動作の契機は「スタートレバー15の操作が検知されて確率抽選処理が行われた後に送信される遊技開始情報を受信する」ことであるから、少なくとも本願発明においても当然に存在する「一般遊技状態」の場合には、「プレイヤーが前記開始操作手段を操作する」と「前記画像表示手段に表示される前記表示図柄が可変表示され」ることも、引用発明と本願発明との一致点である。
引用発明において「リール2、3、4の有効化入賞ラインに「セブン」、「親方」、「鈴」、「鯛」等がそれぞれ3個揃う等となると入賞」となることは、停止状態における表示態様についてのことであることが明らかであり、入賞となる「「親方」、「鈴」、「鯛」等がそれぞれ3個揃う等」の複数の態様も予め定められていることが明らかであるから、本願発明における「前記複数のメインリールの停止状態における前記リール図柄の表示態様であるリール表示態様が予め定められた複数のリール入賞態様のいずれかに該当する場合に入賞し」に相当する。また、引用発明において「「15枚」、「12枚」、「8枚」等のメダルが払い出され」ることは、本願発明における「入賞時の前記リール入賞態様に応じた数量の遊技媒体を払い出し」に相当する。
引用発明における「各リール2?4に対応して設置された停止ボタン16?18」は、本願発明における「前記複数のメインリール」の「それぞれに対応」して設けられた「複数の停止操作手段」に相当し、引用発明において「停止ボタン16,17,18は、遊技者に操作されると各リール2,3,4の可変表示を各列毎に停止させ」るからには、本願発明と同様に「プレイヤーの停止操作に応じてそれぞれの停止指示信号を出力」している。
引用発明において「各リール2,3,4を回転駆動するステッピングモータ55を制御するマイコン30を有するメイン制御基板61」は、本願発明における「前記複数のメインリールを制御する第1制御手段」に相当し、引用発明において「液晶表示装置24に停止表示する画像パターンを決定し、画像制御IC90を制御して決定した停止表示パターンを液晶表示装置24に表示させる、サブCPU82を含むマイコン81を有するサブ制御基板62」は本願発明における「前記複数のサブリールを制御する第2制御手段」に相当する。
引用発明における「メイン制御基板61」は、「乱数の抽出により、ハズレも含めた当たり要求フラグを立てる入賞態様決定手段を構成」しているとともに、後述される「第1リール2」?「第3リール4」の制御によれば「当たり要求フラグ通りの入賞が得られるだけでなく、当たり要求フラグと異なる入賞が得られないようにリール停止位置が制御」されるのであるから、ここにおける「ハズレも含めた当たり要求フラグ」は本願発明における「複数のリール入賞態様のうちどの態様で入賞する可能性があるか、又は、入賞する可能性が無いかを示す入賞可能性情報」に相当する。また、引用発明における「メイン制御基板61」は本願発明における「第1制御手段」と同様、該「入賞可能性情報」を「決定する決定手段」を有している。
引用発明において、「第1リール停止ボタン16が遊技者によって操作された時点で、有効化入賞ライン上または制御コマ数(シンボル4コマ)分の中に当たり要求フラグに対応するシンボルが有ったときには、そのコマ位置までを滑りコマ数として第1リール2を停止させ、第2リール3および第3リール4の各停止制御処理時にも同様の引き込み制御処理を行」うことは、本願発明において「前記入賞可能性情報が入賞の可能性を示す場合において、前記停止指示信号が所定のタイミングで発生した場合に前記入賞可能性情報の示すリール入賞態様となるように前記複数のメインリールを制御」することに相当する。また引用発明において、前述「操作された時点」での「制御コマ数」分までしか「引き込み制御」をしないとともに、「第3リール4の停止制御処理時には、既に停止している第1リール2,第2リール3のシンボルとの組合せによって当たり要求フラグ通りの入賞が得られるだけでなく、当たり要求フラグと異なる入賞が得られないようにリール停止位置が制御」している以上、本願発明と同様に「前記停止指示信号が所定のタイミングで発生しなかった場合には全ての前記リール入賞態様とならないように前記複数のメインリールを制御」している。引用発明においてこのような停止制御実行中の「メインCPU31」は、本願発明における「リール制御手段」に相当する。
引用発明における「入賞情報」は入賞又は非入賞も示すことが明らかであるから、本願発明における「入賞又は非入賞を示す入賞情報」に相当し、この情報を生成する局面における「メインCPU31」は本願発明における「入賞情報生成手段」に相当する。また、引用発明において前述した「当たり要求フラグ等」を含む「遊技開始情報」及び「入賞情報」を「サブ制御基板62」へと送信する「サブ制御部通信ポート79」は、本願発明における「前記入賞可能性情報及び前記入賞情報を第2制御手段に供給する供給手段」に相当する。
引用発明において、「サブ制御基板62」による「液晶表示装置24」における「サブ側回胴の停止処理」についてみると、「メイン制御基板61から送信されるリール停止情報に含まれている第1回胴停止コマンドが送信されて来る」ことを契機としているとともに、「メイン」の「リール停止」自体が「停止ボタン16」等の操作に依存することは明らかであるから、「停止ボタン16?18」が操作されて出力されるそれぞれの停止信号は、「リール2?4」のみに対応するものではなく、液晶表示装置24上の各サブ側回胴にも対応していると言い得る。そのため、本願発明の「複数の停止操作手段」が「前記複数のメインリールと前記複数のサブリールそれぞれに対応して共通に」設けられている点も、引用発明と本願発明との一致点である。
引用発明における「リール2?4」の入賞時の態様は、内部的な抽選による「当たり要求フラグ」に対応するものである。これに対して「液晶表示装置24」側で停止表示するシンボル組み合わせは、同じ「当たり要求フラグ」を用いつつ「他機種のスロットマシン1のリール停止制御に用いられていたリール停止制御テーブルを参照」して決定するのであるから、「リールが停止操作されたものと仮定」した「リール仮想停止位置」を併せて考慮するにせよ、停止操作タイミングが適正であった場合の停止表示シンボル組み合わせは、「リール2?4」用の「当たり要求フラグ」に対応づけて当然に記憶されている。すなわち、本願発明の如く「前記画像表示手段の可変表示が最終的に停止した時点の前記表示図柄の表示態様である画像入賞態様」を「入賞時には予め定められた複数の画像入賞態様のいずれか」とするかはひとまず措くとして、引用発明にも「当たり要求フラグ」に対応する「画像入賞態様」が存在しており、本願発明に「前記リール入賞態様」と「画像入賞態様とを対応付ける所定の規則を記憶した」とある点は、両者の一致点である。
さらに、「リールが停止操作されたもの」とする位置と「内部当選役とに基づいて」停止表示するシンボルを定めるに際しては、「内部当選役」に基づいたシンボル表示の組み合わせを特定して「リールが停止操作されたもの」とする位置と比較することが通常必要であるから、引用発明の「サブ制御基板62」は、本願発明にいう「前記入賞可能性情報が入賞の可能性を示す場合に、前記所定の規則に従って入賞の可能性がある前記リール入賞態様に対応する前記画像入賞態様を特定する特定手段」を実際上有している。また、引用発明の「サブ制御基板62」は「液晶表示装置24」上でこのような画像表示制御を行っている以上、本願発明の「第2制御手段」と同様に「前記複数のサブリールを制御する画像制御手段」も備えている。

以上をまとめると、引用発明と本願発明とは、

「複数種類の図柄がリール図柄として表示される複数のメインリールと、複数種類の図柄が表示図柄として画像表示される画像表示手段と、開始操作手段とを備え、プレイヤーが前記開始操作手段を操作すると、前記複数のメインリールが回転し、一般遊技状態の場合には前記画像表示手段に表示される前記表示図柄が可変表示され、前記複数のメインリールの停止状態における前記リール図柄の表示態様であるリール表示態様が予め定められた複数のリール入賞態様のいずれかに該当する場合に入賞し、入賞時の前記リール入賞態様に応じた数量の遊技媒体を払い出し、前記リール入賞態様と画像入賞態様とを対応付ける所定の規則を記憶したスロットマシンであって、
前記画像表示手段は、前記複数のメインリールのそれぞれに対応した複数のサブリールを有し、
前記複数のメインリールと前記複数のサブリールそれぞれに対応して共通に設けられ、プレイヤーの停止操作に応じてそれぞれの停止指示信号を出力する複数の停止操作手段と、
前記複数のメインリールを制御する第1制御手段と、
前記複数のサブリールを制御する第2制御手段とを備え、
前記第1制御手段は、
複数のリール入賞態様のうちどの態様で入賞する可能性があるか、又は、入賞する可能性が無いかを示す入賞可能性情報を決定する決定手段と、
前記入賞可能性情報が入賞の可能性を示す場合において、前記停止指示信号が所定のタイミングで発生した場合に前記入賞可能性情報の示すリール入賞態様となるように前記複数のメインリールを制御し、前記停止指示信号が所定のタイミングで発生しなかった場合には全ての前記リール入賞態様とならないように前記複数のメインリールを制御するリール制御手段と、
入賞又は非入賞を示す入賞情報を生成する入賞情報生成手段と、
前記入賞可能性情報及び前記入賞情報を第2制御手段に供給する供給手段とを備え、
前記第2制御手段は、
前記入賞可能性情報が入賞の可能性を示す場合に、前記所定の規則に従って入賞の可能性がある前記リール入賞態様に対応する前記画像入賞態様を特定する特定手段と、
前記複数のサブリールを制御する画像制御手段とを備える
ことを特徴とするスロットマシン。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明では「開始操作手段」が「操作」されると「前記画像表示手段に表示される前記表示図柄が可変表示」されるのに対して、引用発明では「一般遊技状態」では「スタートレバー15」が操作されると「液晶表示装置24」におけるリール回転表示を行わせるものの、その他の遊技状態においては表示演出の内容が詳細に示されておらず、同様のリール回転表示を行わせて同様の演出をするか不明である点。

<相違点2>
本願発明では「前記画像表示手段の可変表示が最終的に停止した時点の前記表示図柄の表示態様である画像表示態様が入賞時には予め定められた複数の画像入賞態様のいずれか」となるのに対し、引用発明ではそうなっていない点。

<相違点3>
本願発明では「入賞の可能性がある前記リール入賞態様に対応する前記画像入賞態様を特定する特定手段」が「前記複数のサブリールを定速で回転している状態から停止するまでの速度変化を定めた複数の停止パターンから一の停止パターンを選択」するのに対して、引用発明では「液晶表示装置24」に表示される「リールシンボルの可変表示」は、回転速度が「各リール2?4の回転速度と変えられている」こともあり、「定速で回転している状態」から停止を開始するか不明である点、及び、「引用発明」では「液晶表示装置24」における「第3停止リール表示」については「反転方向やコマ送り表示を介して任意の図柄番号で静止表示」等複数の停止パターンがあるものの、「第3停止リール」以外についても複数の停止パターンを用意し、「当たり要求フラグ」に対応するシンボル組み合わせを特定する手段に一の停止パターンを選ばせてはいない点。

<相違点4>
本願発明では「前記入賞可能性情報が入賞の可能性を示す場合」には、「特定した前記画像入賞態様となるように前記画像表示手段の可変表示を停止させる停止処理を実行」するのに対して、引用発明では「内部当選役」以外の要素、たとえば「リール仮想停止位置」及び「液晶表示装置24」での引き込み可能コマ数等、停止に至るまでの変動態様に応じては、「内部当選役」に対応するシンボルの組み合わせへと停止処理が行われない場合もあり得る点。
なお、本願発明の上述構成については、本願発明を引用する請求項2において「入賞情報」が途中で得られた場合にはこれと異なる処理を行うことが記載されていることから、上述の処理を必ず実行することまでは意味しないとも解することができ、上述の処理が実行される場合がありさえすれば足りる意味とすれば、相違点とはならない。
しかしながら、ここでは特定の例外処理を行うのでない場合は上述の処理を行うものと善解した場合について、一応の相違点として、検討対象とする。

<相違点5>
本願発明では「前記画像表示手段の可変表示が停止した後に非入賞を示す前記入賞情報が得られ」る場合もあるのに対して、引用発明では、「メイン制御基板61から送信されるリール停止情報」を受けて「液晶表示装置24」上の対応するリールの停止が開始されること、「各リール2?4」は「制御コマ数」が「シンボル4コマ」以内であり停止操作から実際の停止までの時間が短いこと、及び「液晶表示装置24」側の「第3停止リール表示」では「20図柄滑って静止」等があり得ることを勘案すると、「各リール2?4」より先に「液晶表示装置24」の「リールシンボルの可変表示」が停止して「入賞情報」が後から得られるという場合は、通常生じないと考えられる点。

<相違点6>
本願発明では「前記画像表示手段の可変表示が停止した後に非入賞を示す前記入賞情報が得られた場合」には、「前記複数のメインリールのうち前記リール表示態様が前記リール入賞態様と一致しないメインリールに対応するサブリールの可変表示を再開させ前記画像表示態様が全ての前記画像入賞態様とならないように」するのに対して、引用発明ではそうなっていない点。

6.相違点の検討、及び本願発明の進歩性の判断

(1)相違点1について
引用発明においては、「関連する他機種」のシンボルである「花火師」等の画像を記憶させ、可変表示と停止という演出動作を実施させるための手段も有しているとともに、引用例では記載事項シ.に「過去のスロットマシン1と新しいスロットマシン19の両方の興趣を楽しむことが可能となる。」と記載されているとおり、関連する他機種の興趣をも楽しませることも示されている。そうであれば、引用発明において、一般遊技以外の遊技状態においても、関連する他機種の興趣を併せて楽しませるよう、記憶させたシンボル画像やその可変表示と停止という制御のための資源を利用し、「スタートレバー15」の操作で始まるシンボル画像の可変表示から停止までの表示を組み込んだ演出とすることは、設計事項である。
なお、この点につき請求人は、平成21年4月30日付けの意見書において、引用例における「ボーナスゲーム中の演出」がその演出内容を明記していない以上、一般遊技状態とは異なる表示であって、「大当たり」である旨の表示などでなければならないといった主張をしている。しかしながら、スロットマシンではボーナスゲーム中にもスタートレバーを操作してゲームを行うのであるから、引用発明におけるボーナスゲーム中の液晶表示装置上の表示について、請求人が主張するようにずっと「大当たり」である旨の表示に止まっていなければならない理由はない。先に述べたとおり、引用発明は既に「過去のスロットマシン1」のシンボルを可変表示させて停止させる手段を備えているとともに、引用例では液晶表示装置上で「過去のスロットマシン1」の興趣を併せて楽しませることが示唆されているのであるから、ボーナスゲーム中において、一般遊戯状態にはない付加的な装飾画像を加える等のことは適宜あり得るとしても、「過去のスロットマシン1」のシンボルを可変表示させて停止させる表示を組み込んだ演出とすることは、上述したとおり設計事項と言わざるを得ない。

(2)相違点2について
遊技機において、入賞時に入賞を盛り上げる演出を行い、非入賞時にハズレ演出を行うことは、きわめて一般的な事項であり、入賞情報が入賞を示す場合に、液晶表示装置も用いて入賞したゲーム結果を盛り上げる演出を行わせることは、たとえば特開2003-180920号公報に「その後、最終停止コマンドを受けたら、回転リール1a?1cの実際の停止状態に合わせて戦闘機の動きを演出し、当選状態が実行化されたか非当選状態であるかに応じて遊技動作を盛り上げる」(段落【0042】)及び「なお、液晶表示部における演出画面はゲーム画面でなくても良く、例えば、普段は回転リールと同様に回転しているが・・・」(段落【0043】)と記載され、また特開2002-793号公報に「画像表示部178は、画像によって図柄を変動して表示させるので、リールによる可変表示部71のよりも図柄の変動態様に制限を受けることが少ない。また、画像表示部178では、画像による図柄の変動と共に当たりの状態となった場合などに各種の演出も行うことができる。」(段落【0243】)と記載される各周知技術の如く、当業者であれば当然に想到できる事項である。
ここで、引用発明では液晶表示装置24を制御するサブ制御基板62に入賞情報を送っているとともに、引用例では記載事項シ.に「過去のスロットマシン1と新しいスロットマシン19の両方の興趣を楽しむことが可能となる。」と記載されているとおり、関連する他機種の興趣をも楽しませることも示されている。また、一致点の認定において述べたとおり、引用発明では「内部当選役とに基づいて、他機種のスロットマシン1のリール停止制御に用いられていたリール停止制御テーブルを参照」する関係上、スロットマシン19の内部当選役に対応した「液晶表示装置24」側の他機種のシンボル組み合わせが存在している。さらに、「過去のスロットマシン1」自体にも、記載事項タ.に「「7」や「花火師」といったBB図柄が揃えられて」と記載があるように、入賞を印象づけるシンボルの組み合わせが当然に存在するものである。
そうであれば、引用発明を出発点として、スロットマシン19の内部当選役に対応させた液晶表示装置24側の他機種のシンボルの組み合わせとして、「BB図柄が揃えられて」等の、内部当選役に対応する入賞を印象づけるシンボルの組み合わせを選択するとともに、ゲーム結果を盛り上げる入賞ゲーム時においては、「液晶表示装置24」上の関連する他機種のシンボルによっても入賞興趣をも併せて楽しませるよう、途中どのような可変表示をおこなわせるにせよ、最終的には入賞の内部当選役に対して予め定められたシンボルの組み合わせとして、入賞ゲーム結果を盛り上げることとし、相違点2に係る本願発明の構成を得ることは、困難性のない事項である。
なお、この点につき請求人は、平成21年4月30日付けの意見書において、引用発明におけるリール停止制御テーブルに何が記憶されているのか記載がないし、入賞に対応した内部当選役に対応した液晶表示装置24側のシンボルの組み合わせを記憶する旨の記載がないから、引用発明にはそのような液晶表示装置24側のシンボル組み合わせは存在しないといった趣旨の主張をしている。しかしながら、一致点の認定において説示したとおり、引用発明が「内部当選役とに基づいて」液晶表示装置24側のシンボルについてもリール停止制御テーブルを参照し、「内部当選役とに基づいて」液晶表示装置24側で停止表示するシンボルを定める以上は、まずは内部当選役に基づく液晶表示装置24側のシンボル組み合わせ自体を特定可能とすることが通常であるから、引用発明は内部当選役に基づく液晶表示装置24側のシンボル組み合わせを特定する情報を持たないとする請求人の主張は失当である。

(3)相違点3について
引用発明において、「液晶表示装置24」における「リールシンボルの可変表示」の回転速度を「各リール2?4の回転速度」と変える理由は、「各リール2?4の目押し補助として機能しない」ようにすることであるが、「液晶表示装置24」側の回転速度を毎回変えて「定速」としないとされているわけではない一方、「各リール2?4の回転速度」と異なる速度を適宜選定すれば、「液晶表示装置24」のみを見て「各リール2?4」を目押しすることはきわめて困難となることが明らかである。さらに、「サブ制御基板62」への「スタートコマンド」の「送信」を「ランダム」に遅延させる引用発明の構成を維持する場合には、「液晶表示装置24」のみを見て「各リール2?4」を目押しすることは、実際上不可能である。そうであれば、引用発明における「液晶表示装置24」上の「リールシンボルの可変表示」について、停止を開始する前の回転速度を毎回変えることなく、一度「定速で回転している状態」まで加速してから停止動作を開始させることは、単なる設計事項というほかはない。
また、引用発明では「液晶表示装置24」上の「第3停止リール」についてのみ、「20図柄滑って静止」や「再変動を低速で行い、任意の時間経過後に任意の図柄番号で静止表示」、「反転方向やコマ送り表示を介して任意の図柄番号で静止表示」等が示されており、これに関して引用例では、摘示した記載事項ソ.の段落【0169】に、「第3停止リール表示においては、遊技機本体の全リール2?4の停止操作が完了しており、液晶表示装置24での演出表示が長時間にわたっても目押し補助とすることは出来ないため、パチンコ遊技機に見られるリーチ演出表示のような長時間の演出表示を行うことが出来る」との記載がされている。しかしながら、「目押し補助」の防止については上記「定速で回転」について検討したとおり、回転速度を「リール2?4」と異ならせるだけで相当な効果があるとともに、相違点2についての検討で参照した前掲特開2002-793号公報の段落【0243】にも「画像表示部178は、画像によって図柄を変動して表示させるので、リールによる可変表示部71のよりも図柄の変動態様に制限を受けることが少ない。・・・」と記載されている如く、引用発明においては当該「第3停止リール」のみならず、「液晶表示装置24」上の他のリールについても同様に、図柄の変動態様についての制限は少ないことが明らかである。
そうであれば、引用発明において、「液晶表示装置24」上の「第3停止リール」に関して示された「20図柄滑って静止表示」や「再変動を低速で行い、任意の時間経過後に任意の図柄番号で静止表示」、「反転方向やコマ送り表示を介して任意の図柄番号で静止表示」といった複数の停止パターンを、同「液晶表示装置24」上の他のリールについても用意したうえで、いずれか一のパターンが選択されるようにすることは、演出上の変動態様の豊富化という一般的な動機に基づいて、当業者であれば容易に想到できた事項と言わざるを得ない。その際、引用発明では「内部当選役とに基づいて・・・・リール停止制御テーブルを参照」する手段が、該「内部当選役」にも対応する「リール2?4」での入賞態様に対応したシンボルの組み合わせを特定したうえで、停止制御を行うのであるから、同手段に停止パターンをも選択させるようにすることは、設計事項と言わざるを得ない。
すなわち、相違点3に係る本願発明の構成を得ることは、当業者にとって困難性のない事項である。
なお、請求人は平成21年4月30日付けの意見書において、引用発明にはサブリールを定速で回転する状態から停止させる点や、複数の停止パターンから一の停止パターンを選択する点がないと主張しているが、これらの点についてはここに説示したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

(4)相違点4について
引用発明において、相違点3について検討した如く、「第3停止リール」について示された「20図柄滑って静止表示」や「再変動を低速で行い、任意の時間経過後に任意の図柄番号で静止表示」、「反転方向やコマ送り表示を介して任意の図柄番号で静止表示」といった停止パターンを「液晶表示装置24」上の各リールについて採らせる場合、後二者の停止パターンでは当然に「任意」の図柄へと停止処理が可能となるのみならず、「液晶表示装置24」上のリールシンボル数が「21個」であるから「20図柄滑って静止表示」を滑りの許容上限とすれば最初のパターンでも任意の図柄へと停止処理が可能となる。また、引用発明として認定していないが、引用例には摘示した記載事項タ.にある如く、「BB内部当たりの場合」に「「7」や「花火師」といったBB図柄が揃えられて表示」、「RBが内部当選している場合」に「「のれん」のRB図柄が揃えられて表示」という表示態様を、「液晶表示装置24に明示して告知」する形態とすることも示唆されている。
そうであれば、引用発明を出発点としても、「液晶表示装置24」における「告知」自体をわかりやすい明示的なものとする代案を延長して、相違点3に係る構成の「停止パターン」を用意するに際して、例示された如く任意のシンボルへと停止処理が可能な停止パターンを用意するとともに、「内部当選役」に基づいた停止処理を該「内部当選役」に対応する図柄の組み合わせが揃うように行わせ、相違点4に係る本願発明の構成を得ることは、困難性のない事項である。
なお、請求人は平成21年4月30日付けの意見書において、本願発明では入賞可能性情報が入賞の可能性を示す場合には、メインリールの停止操作のタイミングとは無関係に、サブリールにおいて入賞態様となるように可変表示を停止させる停止処理を実行する趣旨の主張をしているが、引用発明において、後に検討する相違点5の如くサブリールを先に停止させる場合を除いては、各メインリールの停止操作が各サブリールの停止開始の契機となる構成を維持することで、各メインリールに対応する停止操作手段が各サブリールにも対応しているという本願発明との一致点を維持しつつ、サブリールたる液晶表示装置24上のリールを内部当選役に対応する図柄へと停止処理させることの想到容易性はここに説示したとおりであり、請求人の主張は採用できない。

(5)相違点5について
引用発明では、「メイン制御基板61から送信されるリール停止情報」が送られてから「液晶表示装置24」上の対応するリールが停止されているとともに、引用例には摘示した記載事項ソ.の段落【0169】に「第3停止リール表示においては、遊技機本体の全リール2?4の停止操作が完了しており、液晶表示装置24での演出表示が長時間にわたっても目押し補助とすることは出来ないため、・・・」との記載もあることから、「液晶表示装置24」における可変表示の終了タイミングについて、「各リール2?4の目押し補助として機能しない」という配慮が存在することは認める。しかしながら、相違点3について検討したとおり、「目押し補助」とすることの防止については「液晶表示装置24」側の可変表示速度を「リール2?4」と異ならせるのみで相当程度の効果を得られることが明らかである。また、引用発明では「BBまたはRBの内部当たり中の一般遊技時」が存在し、遊技者にとって重要性の高いBBやRBの内部当たりは実際に入賞するまで持ち越されるのであるから、あるゲームで「液晶表示装置24」の可変表示終了を「リール2?4」の停止操作より遅らせることは、次以降のゲームで内部当選役に応じた狙うべき図柄を定めることを防止せず、狙うべき図柄の推測を許さないという意味での「目押し補助の防止」は、引用発明においても強い要請ではない。むしろ「メイン制御基板61から取り込んだ遊技状態および当選フラグ等に基づき、液晶表示装置24に停止表示する画像パターンを決定」する補助表示演出を行う以上は、内部当選役をある程度の割合で示すのであるから、その意味において狙うべき図柄の推測をどの程度許すかは、引用発明における設計事項というべきである。
ここにおいて、たとえば特開2000-37498号公報に「内部当り対象賞がBB、RB、SB、再遊技、及び十数枚又はそれ以下のメダルを払い出す小物(・・・)等を含む場合、特定の賞は、それら全てでもよく、・・・、任意に選択することもできる。」(段落【0051】)及び「内部当り設定報知手段により内部当り状態設定を報知する時期は、次のマル1乃至マル4の何れかが抽選によりランダムに決定される。マル1 特定の賞(例えばBB)の抽選に当選した直後(何れのリールも停止する前) マル2 1個目のリールを停止させた時点 マル3 2個目のリールを停止させた時点 マル4 3個目のリールを停止させた時点」(段落【0082】、なお「マル1 」等は「○」の中「1」等の数字があることを示す。)と記載され、また特開2001-29542号公報に「なおいずれのタイミングで報知を行うかについては、あらかじめ図6の各報知パターンのうちのいずれかを選択して、固定設定しておいてもよいが、抽選により、各種の報知パターンがランダムに出現するように設定してもよい。」(段落【0049】)とも記載されているように、内部当りを報知するタイミングを、全てのリールが停止する前も含めた複数のタイミングから、適宜抽選で決定することは周知技術である。
そうであれば、引用発明において、「当選フラグ等に基づき、液晶表示装置24に停止表示する画像パターンを決定」した停止表示を行うタイミングを、上記周知技術の如く全てのリールが停止する前も含めた複数のタイミングから抽選で決定するようにして、「液晶表示装置24」の「リールシンボルの可変表示」の停止後に「入賞情報」が得られる場合も生じ得るようにし、相違点5に係る本願発明の構成を得ることは、当業者であれば容易に想到し得た事項である。
そしてその際、「メイン制御基板61から送信されるリール停止情報」の「送信」は常に行うようにして、「全てのリールが停止する前」が抽選された場合についてのみ、「液晶表示装置24」上の各「可変表示」の停止契機を、対応するリールの「停止情報」よりも早期に生じる信号として、一致発明及び相違点1?4に係る本願発明の構成には変更を加えず済ませることは、単なる設計事項である。
なお、請求人は平成21年4月30日付けの意見書において、引用発明にはサブリールに対応した停止ボタンが存在しない趣旨の主張をしているが、引用発明において、ここで検討した如くサブリールを先に停止させる場合を除いては、各メインリールの停止操作が各サブリールの停止開始の契機となっているから、一致点に関して述べたとおり、各メインリールに対応する停止操作手段が各サブリールにも対応している点は本願発明との一致点である。そして、ここで検討したとおり、引用発明において、抽選によってメインリールより先にサブリールを停止させる場合を設けた際に、メインリールより先にサブリールが停止するときに限ってみれば、サブリールは対応する停止操作手段の操作を待たず停止を開始するが、停止操作手段の操作を待たずにサブリールが停止を開始する場合があることによって、停止操作手段がサブリールにも対応しているという関係自体が失われるものではなく、その点については本願発明においても同様である。すなわち、相違点5に係る本願発明の構成の想到容易性については先に説示したとおりであるとともに、引用発明において各メインリールに対応している停止操作手段が各サブリールにも対応しているという本願発明との一致点にも変更はないから、請求人の主張は採用できない。

(6)相違点6について
引用例では、記載事項シ.に「過去のスロットマシン1と新しいスロットマシン19の両方の興趣を楽しむことが可能となる。」と記載されているとおり、関連する他機種のシンボルを用いたゲームの興趣をも併せて楽しませることが示されているから、相違点2について検討した如く、入賞ゲームにおいて「液晶表示装置24」上の最終的な停止表示シンボルを入賞の内部当選に対応したシンボル組み合わせとして「関連する他機種シンボル」による入賞興趣も味わわせるに際して、非入賞ゲームについても、「液晶表示装置24」上の最終的な停止表示シンボルを、いずれの入賞とも対応しない他機種のシンボル組み合わせとして、関連する他機種のシンボルを用いた非入賞の興趣を味わわせるようにすることは、想到困難性のある事項ではない。このように、入賞時の演出と区別される非入賞時の演出設定は、一般的な演出の設計としても、当然に想到し得る事項である。請求人はこの点が、引用例には動機付けも示唆もないとともに、想到困難である趣旨の主張をしているが、この点については、先に相違点2に関し検討し、ここでも述べたとおりであるから、請求人の当該主張は採用できない。
その際、相違点4及び相違点5で検討したとおり、引用発明において「入賞情報」が得られるより前に「液晶表示装置24」上の「リールシンボルの可変表示」が停止する場合もあり得るようにし、また「内部当選役」を用いた停止制御では該「内部当選役」及び入賞に対応するシンボルの組み合わせへと「リールシンボルの可変表示」が停止されるようにした場合には、「当たり要求フラグ」が入賞の可能性を示しながら「液晶表示装置24」の可変表示停止より後に非入賞を示す「入賞情報」が得られるときには、実際には非入賞であるのに「液晶表示装置24」上の停止表示シンボルの組み合わせは入賞対応のものとなる食い違いが生じることとなる。そうであれば、最終的な停止表示シンボルを非入賞対応として、他機種のシンボルによっても非入賞ゲームの興趣を味わわせるようにするには、これを再変動させていずれの入賞にも対応しないものとさせることは当然である。
なお、かような整合のための再変動を行うに際して、「リール2?4」の側でハズレとなったリールに対応するリールを液晶側でもハズレとさせることは、単なる設計事項に過ぎない。
すなわち、相違点6に係る本願発明の構成を得ることに困難性はない。

(7)進歩性のまとめ
以上のとおり、相違点1乃至6に係る本願発明の構成を得ることはいずれも設計事項若しくは当業者にとって困難性がなかったものであり、また、そうしたことによる効果も格別のものとは認めることができない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-13 
結審通知日 2009-05-19 
審決日 2009-06-01 
出願番号 特願2003-367430(P2003-367430)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 小原 博生
有家 秀郎
発明の名称 スロットマシン  
代理人 大林 章  

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