• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1201052
審判番号 不服2007-21814  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-07 
確定日 2009-07-21 
事件の表示 特願2006- 38351「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-142048〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯等
本願は、平成11年9月20日に特許出願した特願平11-265717号の一部を平成18年2月15日に新たな特許出願としたものであって、平成19年3月19日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年5月22日付けで手続補正がされたが、同年7月11日付けで拒絶査定がされ、これに対し同年8月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年8月17日付けで手続補正がされたものである。

第2.平成19年8月17日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年8月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「横一列、縦一列あるいは斜め一列等の複数の当否決定ラインが表示領域に設けられ、該表示領域において、配列の定められた複数の識別情報をそれぞれ所定の変動方向で変動表示した後に確定表示する識別情報表示装置と、
前記複数の当否決定ラインの中から一又は複数の有効列を決定するための乱数値を発生する有効列決定乱数発生手段と、
前記複数の識別情報の変動表示が開始される毎に、前記有効列決定乱数発生手段により発生された乱数値に基づいて前記有効列を決定する有効列決定手段と、
遊技当否判定手段による当否判定結果に基づいて、前記有効列決定手段により決定された有効列上に確定表示される前記識別情報の組み合わせが所定のものとなるように、前記識別情報表示装置の作動制御を行う識別情報表示制御手段とを備え、
前記識別情報表示制御手段は、
前記識別情報表示装置の表示領域で前記識別情報としての図柄を2次元の表示状態でそれぞれスクロール変動表示させ、
前記遊技当否判定手段による当否判定結果が当り判定の場合には、
前記スクロール変動表示の後、前記図柄を前記有効列決定手段により決定された有効列上に予め定められた非当選の組み合わせで仮確定表示させるとともに、前記有効列決定手段により決定された有効列以外の領域に位置する図柄の配列上であって前記表示領域から外れた部位に、予め定められた当選の組み合わせからなる潜在表示態様を、前記有効列決定手段により決定された有効列上に確定表示させることが可能な状態で少なくとも1つ形成し、
前記仮確定表示の後、正面視で奥後方側に位置する前記潜在表示態様が透視可能となるように前記表示領域を透明又は半透明に3次元画像化することで、予め定められた軸線周りに回転する立体ベースオブジェクトを形成するとともに、前記立体ベースオブジェクトの表面に、前記図柄が平面的又は立体的にデザインされた識別情報画像オブジェクトを配列して、前記立体ベースオブジェクトを回転させることで、前記図柄を、前記仮確定表示に対応して定められた組み合わせを維持した3次元の表示状態で、かつ前記潜在表示態様が少なくとも1回は前記表示領域側で視認可能となるように一体で再変動表示させ、
前記再変動表示の後、前記有効列決定手段により決定された有効列上に、前記図柄を前記潜在表示態様で2次元の表示状態として最終確定表示させることを特徴とする遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。

上記補正は、補正前の「それぞれスクロール変動表示させ」に「2次元の表示状態で」との限定を付し、「前記仮確定表示の後、該仮確定表示に対応して定められた組み合わせを維持した状態で、かつ前記潜在表示態様が少なくとも1回は前記表示領域で視認可能となるように前記図柄を一体で再変動表示させ」との記載を「前記仮確定表示の後、正面視で奥後方側に位置する前記潜在表示態様が透視可能となるように前記表示領域を透明又は半透明に3次元画像化することで、予め定められた軸線周りに回転する立体ベースオブジェクトを形成するとともに、前記立体ベースオブジェクトの表面に、前記図柄が平面的又は立体的にデザインされた識別情報画像オブジェクトを配列して、前記立体ベースオブジェクトを回転させることで、前記図柄を、前記仮確定表示に対応して定められた組み合わせを維持した3次元の表示状態で、かつ前記潜在表示態様が少なくとも1回は前記表示領域側で視認可能となるように一体で再変動表示させ」と限定するものであり、補正前の「最終確定表示させる」に「2次元の表示状態として」との限定を付すものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(上記改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献および引用発明
(1)引用文献およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-52535号公報(公開日:平成10年2月24日)(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
・記載事項1
「複数の識別情報を表示可能な画像表示装置を備え、
該画像表示装置の表示態様に関連して複数の遊技状態が発生するとともに、予め定められた表示態様になった場合に、所定の遊技価値を付与可能な遊技機において、
前記画像表示装置の表示制御を行う画像表示制御手段を備え、
該画像表示制御手段は、前記予め定められた表示態様と成りうる有効表示領域の表示制御を行う有効領域表示制御手段と、
該有効表示領域以外の無効表示領域の表示制御を行う無効領域表示制御手段と、を含むとともに、前記有効表示領域と無効表示領域とを関連付けて表示制御することを特徴とする遊技機。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
・記載事項2
「特別図柄表示装置4にはリールという回転ドラム画像(以下、リール画像という)がカラーで3列表示され、大当り遊技の決定(予め定められた表示態様と成りうることに相当)に関係のある有効表示領域と、大当り遊技の決定に関係のない無効表示領域に分ける制御および有効表示領域と無効表示領域とを関連付けて表示する制御を行うことが可能になっている。リール画像は、複数の識別情報を一連で巡回して表示するものである。また、所定の条件の成立(例えば、リーチ発生)に基づき、複数の識別情報のうち所定の識別情報(例えば、「7」)を、特殊な識別表示(例えば、赤色の表示)にするとともに、無効表示領域において特殊な識別表示を認識可能(例えば、リール画像の裏側で赤色の「7」を認識可能)なように表示制御することが行われるようになっている。」(段落【0020】)
・記載事項3
「ガイドレール2を介して遊技領域中に打込まれた遊技球が、特別図柄始動口を兼ねた普通変動入賞装置6に入賞すると、特別図柄表示装置4の表示部4aの複数の領域(例えば有効表示領域、無効表示領域)において多数の識別図柄(数字、文字、記号、図柄等よりなるもの)が移動(スクロール)する表示(いわゆる変動表示)が行われて、変動表示ゲーム(画像変動遊技)が行われる。そして、この変動表示ゲーム結果としての停止表示態様が所定の態様(例えば、「7、7、7」などのゾロ目)であれば、大当りと呼ばれる遊技価値が発生する。」(段落【0022】)
・記載事項4
「普段処理では、始動記憶がある場合に、始動記憶数を一つ減らした後、乱数抽出による大当り判定を行って特図の停止図柄を決定する。次いで、停止図柄がリーチ図柄である場合には、リーチフラグをセットした後、変動処理の番号に処理番号を変更して、次のシーケンスで変動処理が行われるようにする処理を行う。」(段落【0029】)
・記載事項5
「ステップS22:図柄停止処理(通常停止処理)図柄停止処理では、例えば、特別図柄表示装置4の図柄をゆっくりとスクロールさせて所定時間経過後に停止させる処理が行われ、」(段落【0030】)
・記載事項6
「図7(a)は特別図柄表示装置4の表示画像を示す図であり、3列のカラーのリール(すなわち、リールという回転ドラム)を示す、そのうち、左列のリールは停止し、中列および右列のリールが回転している表示状態を示している。この場合、各リールは何れもその全体像が表示されている。例えば、左列のリールを例にとると、リールの表側には「5」、「7」、「9」の図柄および★図柄(星マーク)がカラーで表示され、リールの裏側には「1」、「3」の図柄および★図柄(星マーク)が上下反転かつ縮小して遠近感を出すようにして裏側に対応した所定色で表示される。そして、このリールでは、裏と表の表示態様を変化させることで、リール全体を分かりやすい演出にしている。なお、左列のリールが回転している場合も、同様に裏と表の表示態様が変化する。また、リールの幅は裏側よりも表側の方が幅広になっていて、より遠近感を出すようになっている。」(段落【0040】
・記載事項7
「図7(c)は3列のカラーのリールに対して有効表示領域枠U(左側のリールのみに符号を付け、その他は繁雑になるので符号を省略)を設けた表示例を示している。有効表示領域枠Uは、大当り遊技の決定に関係のあるリール範囲を囲むように設定されており、この範囲内で3列の図柄がゾロ目に揃うと、大当りが発生するものである。一方、有効表示領域枠U以外は大当り遊技の決定に関係のない無効表示領域になっている。例えば、図7(c)の例は斜方向のリーチラインRに沿って「7」あるいは「5」の図柄がゾロ目に揃うと大当りが発生するもので、リーチが発生して中列のリールのみが回転を続けている状態である。すなわち、有効表示領域枠Uにある図柄は全て大当り発生に関係のある有効なものであることを表示するので、全体像を表示したリールの場合には遊技者にとって非常に分かりやすいという利点がある。」(段落【0041】)
・記載事項8
「G.第3実施例(図9) 次に、図9は本発明の第3実施例を示す図であり、リールの図柄数を変えたものである。」(段落【0049】)
・記載事項9
「図9(b)に示す例は、無効表示領域で図柄が揃っているもので、各リールの裏側において「7」、「7」、「7」という図柄が横一列に並んで揃っている様子が一目瞭然に示されている。このように有効表示領域以外で図柄が揃っていることが容易に遊技者に認識されることにより、今までにない斬新な特図表現をすることができる。・・・また、裏側で揃った場合でも、時として有効表示領域枠Uを裏側に移動させて大当りを発生させたり、あるいは揃った状態で各リールを再変動(リスタート)させて、有効表示領域枠Uに移動させて大当りを発生させたり等の表示制御を行うと、より遊技の興趣が高められる。さらに、全リールをスロースクロールにして一斉に停止する全回転リーチを行うと、どの図柄が揃っているかが直に分かるため、より効果的である。」(段落【0050】)
・記載事項10
図7(a)には、左列のリールが停止し、「7」の図柄が中段に停止していることが図示されている。
・記載事項11
図7(c)には、右上がりのリーチラインRと右下がりのリーチラインRの2つのリーチラインRが図示されている。

(2)引用発明
記載事項6の「左列のリールは停止」および記載事項10の「「7」の図柄が中段に停止している」によれば、「左列のリールの中段に図柄が停止可能」なる技術事項が開示されており、記載事項7の「斜方向のリーチラインR」および記載事項11の「右上がりのリーチラインRと右下がりのリーチラインRの2つのリーチラインR」によれば、「斜め一列のラインが2つ設けられている」なる技術事項が開示されている。そして、図7(c)は図7(a)に対して「有効表示領域枠Uを設けた表示例」であるから、「3列のカラーのリール」においては「有効表示領域枠U内において左列のリールの中段に図柄が停止可能で、かつ斜方向の2つのリーチラインが設けられている」との技術事項が開示されている。
なお、記載事項9は「第3実施例」に関するものであるが、「第3実施例」はそれ以前の「実施例」に対して「リールの図柄数を変えたもの」(記載事項8)である。
そして、上記各記載事項を含む全記載及び図示によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「有効表示領域枠U内において左列のリールの中段に図柄が停止可能でかつ斜方向の2つのリーチラインが表示部4aに設けられ、表示部4aにおいて、複数の識別情報を一連で巡回して表示して変動表示ゲーム(画像変動遊技)が行われ、この変動表示ゲーム結果としての停止表示態様を表示する特別図柄表示装置4と、画像表示装置4の表示制御を行う画像表示制御手段を備えた遊技機において、
乱数抽出による大当り判定を行って特図の停止図柄を決定し、斜方向のリーチラインRに沿って「7」あるいは「5」の図柄がゾロ目に揃うと大当りを発生させ、
リールの表側には「5」、「7」、「9」の図柄および★図柄(星マーク)がカラーで表示され、リールの裏側には「1」、「3」の図柄および★図柄(星マーク)が上下反転かつ縮小して遠近感を出すようにして裏側に対応した所定色で表示され、リールの幅は裏側よりも表側の方が幅広になっていて、より遠近感を出すように、リールを画像表示装置4に表示するとともに、
遊技球が、特別図柄始動口を兼ねた普通変動入賞装置6に入賞すると、特別図柄表示装置4の表示部4aの複数の領域(例えば有効表示領域、無効表示領域)において多数の識別図柄が移動(スクロール)する表示(いわゆる変動表示)が行われて、変動表示ゲーム(画像変動遊技)が行われ、各リールの裏側において「7」、「7」、「7」という図柄が横一列に並んで揃った場合、揃った状態で各リールを再変動(リスタート)させて、有効表示領域枠Uに移動させて大当りを発生させたり等の表示制御を行う遊技機。」(以下、「引用発明」という。)

3.対比
本願補正発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「表示部4a」は本願補正発明の「表示領域」に相当し、以下同様に、「図柄」は「識別情報」に、「特別図柄表示装置4」は「識別情報表示装置」に、「画像表示制御手段」は「識別情報表示制御手段」に、「乱数抽出による大当り判定」は「遊技当否判定手段による当否判定」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明について、以下のことがいえる。
(1)「有効表示領域枠U内において左列のリールの中段に図柄が停止可能でかつ斜方向の2つのリーチラインが表示部4aに設けられ、表示部4aにおいて、複数の識別情報を一連で巡回して表示して変動表示ゲーム(画像変動遊技)が行われ、この変動表示ゲーム結果としての停止表示態様を表示する特別図柄表示装置4」について
「左列のリールの中段に図柄が停止可能」であることから、中列のリールおよび左列のリールにおいても停止可能となっていることは自明であり、中段に図柄が停止するラインが設けられているということができる。また、「リーチラインR」との記載から、斜方向に図柄が停止するラインが2つ設けられているということができる。そして、中段のラインおよび斜方向のラインに所定の図柄が揃って停止した場合には大当りとなり、それ以外の場合には大当りとならないものであるから、上記各ラインは当否を決定するものであって本願補正発明の「当否決定ライン」に相当するものである。
また、「複数の識別情報を一連で巡回して表示して変動表示ゲーム(画像変動遊技)が行われ、この変動表示ゲーム結果としての停止表示態様を表示する」が本願補正発明の「配列の定められた複数の識別情報をそれぞれ所定の変動方向で変動表示した後に確定表示する」に相当することは明らかである。
そうすると、引用発明は、本願補正発明の「横一列、縦一列あるいは斜め一列等の複数の当否決定ラインが表示領域に設けられ、表示領域において、配列の定められた複数の識別情報をそれぞれ所定の変動方向で変動表示した後に確定表示する識別情報表示装置」に相当する構成を実質的に具備するものである。
(2)「乱数抽出による大当り判定を行って特図の停止図柄を決定し、斜方向のリーチラインRに沿って「7」あるいは「5」の図柄がゾロ目に揃うと大当りを発生させ」について
大当り判定の結果大当りである場合には、リーチラインRに沿って「7」あるいは「5」の図柄をゾロ目で揃える、すなわち識別情報の組み合わせが所定のものとなるように表示させるものである。そして、本願補正発明の「有効列」も「当否決定ライン」の一種であるから、「有効列」であるか否かは別として、引用発明と本願補正発明は「遊技当否判定手段による当否判定結果に基づいて、当否決定ライン上に確定表示される識別情報の組み合わせが所定のものとなるように、識別情報表示装置の作動制御を行う」という点で共通しているおり、引用発明においてこのような作動制御を「画像表示制御手段」が行っていることは明らかである。
(3)「リールの表側には「5」、「7」、「9」の図柄および★図柄(星マーク)がカラーで表示され、リールの裏側には「1」、「3」の図柄および★図柄(星マーク)が上下反転かつ縮小して遠近感を出すようにして裏側に対応した所定色で表示され、リールの幅は裏側よりも表側の方が幅広になっていて、より遠近感を出すように、リールを画像表示装置4に表示する」について
「リール」は、「遠近感を出すように」表示されるものであるから、また、引用文献1の図7?9の図示からみても、3次元画像化した「立体ベースオブジェクト」ということができ、後述するように「リール」はスクロールするものであるから、当該「立体ベースオブジェクト」は「予め定められた軸線周りに回転する」ものということができる。そして、「リール」上には図柄が表示されており、図柄はデザインされたものを用いることが遊技機においては普通であるから、「リール」上に表示された図柄は「平面的にデザインされた識別情報オブジェクト」ということができる。
更に、「リールの裏側には「1」、「3」の図柄および★図柄(星マーク)が上下反転かつ縮小して」表示されるものであって、これらの図柄は「有効表示領域」外におけるものであるから「潜在表示態様」ということができる。そして、この「潜在表示態様」は表示されるものであるから、また、引用文献1の図7?9の図示からみても、「透視可能」か否かは別にして、引用発明と本願補正発明は「正面視で奥後方側に位置する潜在表示態様が視認可能」である点で一致している。
以上総合すると、引用発明と本願補正発明は、「正面視で奥後方側に位置する潜在表示態様が視認可能で、3次元画像化した、予め定められた軸線周りに回転する立体ベースオブジェクトを形成し、立体ベースオブジェクトの表面に、図柄が平面的又は立体的にデザインされた識別情報画像オブジェクトを配列して、立体ベースオブジェクトを回転させる」という点で共通している。
(4)「遊技球が、特別図柄始動口を兼ねた普通変動入賞装置6に入賞すると、特別図柄表示装置4の表示部4aの複数の領域(例えば有効表示領域、無効表示領域)において多数の識別図柄が移動(スクロール)する表示(いわゆる変動表示)が行われて、変動表示ゲーム(画像変動遊技)が行われ、各リールの裏側において「7」、「7」、「7」という図柄が横一列に並んで揃った場合、揃った状態で各リールを再変動(リスタート)させて、有効表示領域枠Uに移動させて大当りを発生させたり等の表示制御を行う」について
(4-1)「各リールの裏側において「7」、「7」、「7」という図柄が横一列に並んで揃った場合、揃った状態で各リールを再変動(リスタート)させて」が、スクロール変動表示の後一旦停止するという「仮確定表示」することは意味していることは明らかである。そして、「仮確定表示」の際には有効表示領域Uに大当りでない図柄の組み合わせ、すなわち非当選の組み合わせが表示されるということは、引用文献1の図9(b)から明らかであり、そもそも有効表示領域Uに大当りの図柄の組み合わせが表示されていれば再変動させる必要はないものである。なお、図柄の表示に当たっては、その組み合わせを予め定めたものとすることは遊技機において慣用手段である。一方、「7」が横一列に並んで揃って表示されているのは「リールの裏側」なので、この位置は「有効表示領域Uでない領域に位置する図柄の配列上であって有効表示領域Uから外れた部位」ということができ、「7」が揃うということは「予め定められた当選の組み合わせ」ということができる。そして、その「予め定められた当選の組み合わせ」の表示態様は、有効表示領域から外れた部位であるから、「潜在表示態様」ということができる。更に、「揃った状態で各リールを再変動(リスタート)させて、有効表示領域枠Uに移動させ」れば大当りとなるのであるから、「有効表示領域Uに確定表示させることが可能な状態」であるといえる。上記において、引用発明の「有効表示領域枠U」に「表示」は、同じ図柄が有効領域U内に表示されても、有効表示領域U内の横または斜めの一列に表示されなければ大当りとならないのであるから、「当否決定ライン」上に表示されるか否かを示しているものと解される。
そうすると、「当否決定ライン」が「有効列」であるか否かは別として、引用発明と本願補正発明は、「遊技当否判定手段による当否判定結果が当り判定の場合には、スクロール変動表示の後、図柄を当否決定ライン上に予め定められた非当選の組み合わせで仮確定表示させるとともに、当否ライン以外の領域に位置する図柄の配列上であって表示領域から外れた部位に、予め定められた当選の組み合わせからなる潜在表示態様を、当否決定ライン上に確定表示させることが可能な状態で少なくとも1つ形成し」という点で共通している。
(4-2)引用発明が3次元画像化した立体ベースオブジェクトを回転させて変動表示を行う(以下、「3次元表示」という。)ものであることは上記(3)で検討したとおりであるが、引用文献1には2次元の表示状態については記載がないことから、引用発明においては変動表示は常に「3次元表示」により行われると解される。
そして、「仮確定表示」の前の「識別情報としての図柄」のスクロール変動表示について検討すると、引用発明は「3次元表示」で行われるのに対し、本願補正発明では「2次元の表示状態で」行われる点で相違しているが、この点は別にして、引用発明と本願補正発明は、「識別情報表示装置の表示領域で識別情報としての図柄をスクロール変動表示させ」る点で共通している。
また、「仮確定表示」の後について検討すると、引用発明は上記したとおり「3次元表示」でスクロール変動表示を行うものであって、「揃った状態で各リールを再変動(リスタート)させ」るものであるから、引用発明と本願補正発明は、「図柄を、仮確定表示に対応して定められた組み合わせを維持した3次元の表示状態で、一体で再変動表示させ」る点で共通している。
(4-3)「揃った状態で」「有効表示領域枠Uに移動させて大当りを発生」させるということは、当否決定ライン上に図柄を潜在表示態様で最終確定表示させることを意味していることは明らかであるから、表示状態が「2次元」か「3次元」かは別として、引用発明と本願補正発明は「再変動表示の後、当否決定ライン上に、図柄を潜在表示態様で最終確定表示させる」点で共通している。
(5)上記(3)、(4)のような表示に関する制御は、本願補正発明の「識別情報表示装置」に相当する「画像表示制御手段」が行っていることは自明である。

そうすると、両者は、
「横一列、縦一列あるいは斜め一列等の複数の当否決定ラインが表示領域に設けられ、表示領域において、配列の定められた複数の識別情報をそれぞれ所定の変動方向で変動表示した後に確定表示する識別情報表示装置と、
遊技当否判定手段による当否判定結果に基づいて、当否決定ライン上に確定表示される識別情報の組み合わせが所定のものとなるように、識別情報表示装置の作動制御を行う識別情報表示制御手段とを備え、
識別情報表示制御手段は、
識別情報表示装置の表示領域で識別情報としての図柄をスクロール変動表示させ、
遊技当否判定手段による当否判定結果が当り判定の場合には、スクロール変動表示の後、図柄を当否決定ライン上に予め定められた非当選の組み合わせで仮確定表示させるとともに、当否ライン以外の領域に位置する図柄の配列上であって表示領域から外れた部位に、予め定められた当選の組み合わせからなる潜在表示態様を、当否決定ライン上に確定表示させることが可能な状態で少なくとも1つ形成し、
仮確定表示の後、正面視で奥後方側に位置する潜在表示態様が視認可能で、3次元画像化した、予め定められた軸線周りに回転する立体ベースオブジェクトを形成し、立体ベースオブジェクトの表面に、図柄が平面的又は立体的にデザインされた識別情報画像オブジェクトを配列して、立体ベースオブジェクトを回転させることで、図柄を、仮確定表示に対応して定められた組み合わせを維持した3次元の表示状態で、一体で再変動表示させ、再変動表示の後、当否決定ライン上に、図柄を潜在表示態様で最終確定表示させる遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明は、複数の当否決定ラインの中から一又は複数の有効列を決定するための乱数値を発生する有効列決定乱数発生手段と、複数の識別情報の変動表示が開始される毎に、有効列決定乱数発生手段により発生された乱数値に基づいて前記有効列を決定する有効列決定手段を有するのに対し、引用発明ではそのような構成を有するか不明な点。
<相違点2>
遊技当否判定手段による当否判定結果に基づいて、識別情報表示装置の作動制御を行う識別情報表示制御手段により、識別情報の組み合わせが所定のものとなるように確定表示されるのが、本願補正発明では有効列決定手段により決定された有効列上であるのに対し、引用発明では当否決定ライン上である点。
<相違点3>
仮確定表示の前において、スクロール変動表示させる識別情報としての図柄が、本願補正発明では2次元の表示状態であるのに対し、引用発明では3次元の表示状態である点。
<相違点4>
予め定められた非当選の組み合わせで図柄を仮確定表示するのが、本願補正発明では有効列決定手段により決定された有効列上であるのに対して、引用発明では当否決定ライン上である点。
<相違点5>
予め定められた当選の組み合わせからなる潜在表示態様が、本願補正発明では有効列決定手段により決定された有効列以外の領域に位置する図柄の配列上であって、有効列決定手段により決定された有効列上に確定表示させることが可能な状態で少なくとも1つ形成されるのに対し、引用発明では当否決定ライン以外の領域に位置する図柄の配列上であって、当否決定ライン上に確定表示させることが可能な状態で少なくとも1つ形成する点。
<相違点6>
仮確定表示の後、正面視で奥後方側に位置する潜在表示態様が、本願補正発明では透視可能となるように表示領域を透明又は半透明に3次元画像化するのに対し、引用発明ではそのような構成を有しない点。
<相違点7>
仮確定表示の後、潜在表示態様が一体で再変動表示する際に、本願補正発明では少なくとも1回は前記表示領域側で視認可能とするのに対し、引用発明ではそのような構成を有するか不明な点。
<相違点8>
再変動表示の後、図柄を潜在表示態様で最終確定表示させるのが、本願補正発明では有効列決定手段により決定された有効列上であるのに対し、引用発明では当否決定ライン上である点。
<相違点9>
再変動表示の後、図柄を潜在表示態様で最終確定表示させるのが、本願補正発明では2次元の表示態様としてであるのに対し、引用発明では3次元の表示態様である点。

4.判断
上記各相違点について検討する。
<相違点1、2、4、5、8>について
相違点1、2、4、5、8は、関連するのであわせて検討する。
本願補正発明では、当否決定ラインの中から一又は複数の有効列を決定し、当否判定結果に基づいて有効列上の識別情報(図柄)の組み合わせが所定のものとなるように制御されているのに対し、引用発明では複数ある当否決定ラインのいずれかに図柄を揃って表示するものであるが、図柄を揃える当否決定ラインをどのように決定するのかは不明である。
遊技機において、複数の当否決定ラインの中から一又は複数の列を決定するための乱数を発生する列決定乱数発生手段と、列決定乱数発生手段により発生された乱数値に基づいて列を決定する列決定手段を有し、決定された列上に当否判定結果に基づいて所定の識別情報の組み合わせを確定表示することは、以下の例のごとく周知技術Aである。
(周知例)
・特開平11-28276号公報(特に、段落【0058】、【0062】、【0063】、図5参照。)
・特開平10-127884号公報(特に、段落【0014】、【0015】参照)
そして、上記周知技術Aにおいて、「決定された列」は大当りに関与(列上に所定の図柄が揃うと大当り)するものであるから、本願補正発明の「有効列」に相当するのものである。上記周知技術Aにおいては大当り時に列を決定するものであり、「複数の識別情報の変動が開始される毎に」列を決定するものではない。しかし、大当り時以外に列を決定したとしても大当りとする所定の図柄を当該列上に表示することはあり得ないから、大当たり時に列を決定するか、「複数の識別情報の変動が開始される毎に」に列を決定するかは、その作用に差異はなく、設計事項に過ぎないものといわざるを得ない。
そうすると、引用発明において複数の当否決定ラインのうち図柄を揃える当否決定ラインを決定するに際して上記周知技術Aを採用することに技術的困難性はないから、引用発明に上記周知技術Aを採用することにより、複数の当否決定ラインの中から一又は複数の有効列を決定するための乱数値を発生する有効列決定乱数発生手段と、有効列決定乱数発生手段により発生された乱数値に基づいて前記有効列を決定する有効列決定手段を有するものとするとともに、複数の識別情報の変動表示が開始される毎に有効列を決定するものとして相違点1に係る本願補正発明の構成とすること、識別情報の組み合わせが所定のものとなるようにする確定表示を有効列決定手段により決定された有効列上として相違点2に係る本願補正発明の構成とすること、非当選の組み合わせで図柄を仮確定表示するのを有効列決定手段により決定された有効列上として相違点4に係る本願補正発明の構成とすること、図柄を潜在表示態様で最終確定表示するのを有効列決定手段により決定された有効列上として相違点8に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。
更に、予め定められた当選の組み合わせからなる潜在表示態様についても、引用発明は複数ある当否決定ラインのうちいずれかに図柄を揃って表示するものであるから、引用発明に上記周知技術Aを適用し、有効列決定手段により決定された有効列以外の領域に位置する図柄の配列上であって、有効列決定手段により決定された有効列上に確定表示させることが可能な状態で少なくとも1つ形成することとし、相違点5に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。
<相違点3、9>について
相違点3、9は、関連するのであわせて検討する。
相違点3、9をまとめると、本願補正発明では、2次元の表示状態でスクロール変動表示させた後仮確定表示させ、仮確定表示後は3次元の表示態様で再変動表示させ、再変動表示の後、2次元の表示状態として最終確定表示させるのに対し、引用発明ではすべての段階で3次元の表示状態としている点で相違しているということができる。
当審で発見した特開平8-141169号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「可変表示装置2が立体画像を表示可能なように構成し、通常遊技では可変表示装置2に平面画像を表示し、リーチ発生や大当り時になると、平面画像から立体画像に切り換える制御を行って可変表示装置2に立体画像を表示する。」(【要約】【構成】)、「(3)所定の遊技状態としてリーチゲームや大当りゲームを設定した場合、これらは遊技者が興趣を増す状態で間欠的に興趣が増す遊技状態となる。したがって、この間欠的に興趣が増す遊技状態のときにだけ可変表示装置の画像を平面図柄から立体図柄に切り換えることにより、興趣が増す遊技状態のとき遊技者へのインパクトをより高めることができる。」(段落【0046】)と記載されており、興趣が増す遊技状態のとき遊技者へのインパクトをより高めるため、可変表示装置2の表示を平面画像から立体画像に切り換える制御を行うことが開示されている。
そして、引用発明において、仮確定表示後の再変動表示の状態は、遊技者にとって興趣が増す状態(大当りの期待感が高まる状態)であることは自明である。また、遊技機において、遊技状態のどの状態(リーチ状態、再変動表示の状態、大当り状態)で遊技者へのインパクトをどの程度与えるかは設計的事項に過ぎないものである。
そうすると、引用発明に引用文献2に記載された技術事項を適用し、仮確定表示前のスクロール変動表示を2次元の表示状態とし、再変動表示の後の最終確定表示を2次元の表示状態とし、相違点3、9に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。
<相違点6>について
一般に画像処理技術において、3次元の表示状態とする場合に、正面視で奥後方側に位置する潜在画像を透視可能となるように手前に表示される画像を透明又は半透明にすることは、以下の例のごとく周知技術Bである。
(周知例)
・特開平9-318381号公報(特に、段落【0023】、図3参照)
・特開平7-334778号公報(特に、段落【0021】、図2参照)
そうすると、上記周知技術Bを勘案すれば、引用発明において、少なくともリールの手前側を透明又は半透明とする、すなわち表示領域を透明又は半透明の3次元画像化することにより、奥後方に位置する画像を視認可能とするようにし、相違点6に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。
<相違点7>について
本出願前、遊技機において、いわゆる「全回転リーチ」は広く知られたものであるが、その「全回転リーチ」においては、全リールが同速度で回転するものであって、大当りの図柄の組み合わせが少なくとも1回は当否決定ラインの位置に表示されるものであることは、例を挙げるまでもなく、周知技術Cである。
そうすると、上記周知技術Cを勘案すれば、引用発明において、潜在表示態様が一体で再変動表示する際に少なくとも1回は表示領域側で視認可能とすることは、当業者にとって想到容易である。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術A?Cから当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術A?Cに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明の認定
平成19年8月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年5月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「横一列、縦一列あるいは斜め一列等の複数の当否決定ラインが表示領域に設けられ、該表示領域において、配列の定められた複数の識別情報をそれぞれ所定の変動方向で変動表示した後に確定表示する識別情報表示装置と、
前記複数の当否決定ラインの中から一又は複数の有効列を決定するための乱数値を発生する有効列決定乱数発生手段と、
前記複数の識別情報の変動表示が開始される毎に、前記有効列決定乱数発生手段により発生された乱数値に基づいて前記有効列を決定する有効列決定手段と、
遊技当否判定手段による当否判定結果に基づいて、前記有効列決定手段により決定された有効列上に確定表示される前記識別情報の組み合わせが所定のものとなるように、前記識別情報表示装置の作動制御を行う識別情報表示制御手段とを備え、
前記識別情報表示制御手段は、
前記識別情報表示装置の表示領域で前記識別情報としての図柄をそれぞれスクロール変動表示させ、
前記遊技当否判定手段による当否判定結果が当り判定の場合には、
前記スクロール変動表示の後、前記図柄を前記有効列決定手段により決定された有効列上に予め定められた非当選の組み合わせで仮確定表示させるとともに、前記有効列決定手段により決定された有効列以外の領域に位置する図柄の配列上であって前記表示領域から外れた部位に、予め定められた当選の組み合わせからなる潜在表示態様を、前記有効列決定手段により決定された有効列上に確定表示させることが可能な状態で少なくとも1つ形成し、
前記仮確定表示の後、該仮確定表示に対応して定められた組み合わせを維持した状態で、かつ前記潜在表示態様が少なくとも1回は前記表示領域で視認可能となるように前記図柄を一体で再変動表示させ、
前記再変動表示の後、前記有効列決定手段により決定された有効列上に、前記図柄を前記潜在表示態様で最終確定表示させることを特徴とする遊技機。」

2.本願発明の進歩性の判断

(1)引用文献
拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「第2.[理由]1.補正後の本願発明」で記載した限定を元に戻したものである。
そうすると、相違点3、6、9は存在せず、相違点1、2、4、5、7、8については前記第2の4.に記載したとおりであるから、本願発明は引用発明、周知技術A、Cに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術A、Cに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-25 
結審通知日 2009-05-27 
審決日 2009-06-09 
出願番号 特願2006-38351(P2006-38351)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥西村 仁志  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 井上 昌宏
森 雅之
発明の名称 遊技機  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ