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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1201059
審判番号 不服2008-1595  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-21 
確定日 2009-07-21 
事件の表示 平成10年特許願第 64422号「結像レンズおよびこれを用いた光学装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月17日出願公開、特開平11-249013〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成10年2月27日の出願であって、平成19年7月23日付けで拒絶理由が通知され、同年9月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年12月11日付けで拒絶査定がされたため、これを不服として平成20年1月21日付けで本件審判請求がされたものである。
そして、当審においてこれを審理した結果、平成20年10月29日付けで拒絶理由を通知したところ、同年12月26日付けで意見書が提出されたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年9月20日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「物体側から順に、物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなる第1レンズおよび第2レンズと、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなる第3レンズと、像側に凸面を向けた、両面が共に非球面である正のメニスカスレンズからなる第4レンズが配列されてなることを特徴とする結像レンズ。」


第2 当審の判断
1 引用刊行物の記載事項
当審で通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-288512号公報(以下「引用例」という。)には、以下の(ア)ないし(エ)の記載が図面とともにある。

(ア)「【請求項1】物体側から像側へ向かって順次、第1ないし第3群を配してなり、第2,第3群間に絞りを有し、第1群は凸面を物体側に向けた正メニスカスレンズ、第2群は凹面を像側に向けた負メニスカスレンズ、第3群は凸面を像側に向けた正メニスカスレンズであって、第2,第3群が樹脂材料により形成され、これら第2群および第3群がそれぞれ、少なくとも1つ非球面を有し、第j群(J=1?3)レンズのd線に対するアッベ数及び焦点距離を、それぞれjをサフィックスとしてν_(j)及びf_(j)、全系の合成焦点距離をfとするとき、
(1) 29<ν_(2)<33
(2) 55<ν_(3)<62
(3) 0.6<|f_(2)|/f_(3)<0.8
(4) 0.5<f_(1)/f<1.0
なる条件を満足することを特徴とする3群3枚構成の原稿読取用レンズ。
【請求項2】請求項1に於いて、物体側から数えて第i番目の面(絞り面を含む)の曲率半径をiをサフィックスとしてR_(i)(i=1?7)、物体側から数えて第i番目の面とi+1番目の面との光軸上の面間隔をiをサフィックスとしてD_(i)とするとき、
(5) 0.8<R_(1)/(D_(1)+D_(2)+D_(3)+D_(4))<1.0
(6) 0.7<|R_(7)|/(D_(5)+D_(6))<1.2
なる条件を満足することを特徴とする原稿読取用レンズ。」

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は原稿読取用レンズに関する。」

(ウ)「【0012】
【作用】上記のように、この発明の原稿読取用レンズでは第2群,第3群を樹脂材料で構成し、第2群及び第3群のそれぞれに1面以上の非球面を採用して収差の良好化を図っている。
【0013】また、樹脂材料による第2,第3群を負・正メニスカスレンズの組合せとして温・湿度変化による焦点移動を小さく抑え、像面の移動を軽減している。
【0014】3群3枚構成のレンズでは色収差の補正のため、正レンズに低分散の材料を用い、負レンズに高分散の材料を用いるが、この発明の原稿読取用レンズでは、第2,第3群を樹脂材料で構成するので樹脂材料による制限を受ける。
【0015】条件(1)(2)は、第2,第3群の形成に使用可能な樹脂材料の範囲内で色収差を補正するための条件である。これらの条件の範囲を外れると、適当な樹脂材料が無かったり、あるいは良好な色収差補正を行うことができない。
【0016】上述の如く、この発明では第2,第3群を負・正メニスカスレンズの組合せとし、温度の変化による像面の移動を、負メニスカスレンズの影響と正メニスカスレンズの影響が有効に相殺しあうようにしている。条件(3)は、第2,第3群の屈折力を適正に配分することにより温度変化による像面位置の変化をレンズ系のみで補正できるようにするための条件である。条件(3)の範囲内では、機械的な補正手段を必要としない程度に、温度変化による像面の変動を小さく抑えることができる。
【0017】条件(4)は、レンズ系としてのコンパクト性と、収差とを良好に保つための条件である。上限を超えると、第1群の径・肉厚とも大きくなりコンパクト性が損なわれ、材料費も高くなってコストが上昇する。また中間画角においてメリディオナルが正となり、非点隔差が大きくなり、コマ収差も悪化する。下限を超えると、第1番目のレンズ面の曲率半径R_(1)が小さくなって加工性が悪くなり、コストの上昇を招く。また球面収差・コマ収差・非点収差の補正が困難になる。
【0018】この発明の原稿読取用レンズは各レンズのレンズ面が、当該レンズ面より絞り側に曲率中心を持ち、且つ絞りに対して対称な配置となっている。
【0019】請求項2の原稿読取用レンズに関する条件(5)(6)は、第1番目の面と第7番目の面の曲率半径を適切に配分することによりコマ収差・非点収差・歪曲収差を良好に補正するための条件である。これら条件(5)(6)の範囲を外れると、上記各収差のバランス良い補正が困難になる。」

(エ)図1から、引用例の第1群のレンズは、凸面を物体側に向けた1枚の正メニスカスレンズであることを読み取ることができる。

2 引用例に記載の発明の認定
引用例の上記記載事項(ア)ないし(エ)から、引用例には次の発明が記載されていると認めることができる。

「物体側から像側へ向かって順次、第1ないし第3群を配してなり、第2,第3群間に絞りを有し、第1群は凸面を物体側に向けた1枚の正メニスカスレンズ、第2群は凹面を像側に向けた負メニスカスレンズ、第3群は凸面を像側に向けた正メニスカスレンズであって、第2,第3群が樹脂材料により形成され、これら第2群および第3群がそれぞれ、少なくとも1つ非球面を有し、
第j群(J=1?3)レンズのd線に対するアッベ数及び焦点距離を、それぞれjをサフィックスとしてν_(j)及びf_(j)、全系の合成焦点距離をfとするとき、
(1) 29<ν_(2)<33
(2) 55<ν_(3)<62
(3) 0.6<|f_(2)|/f_(3)<0.8
(4) 0.5<f_(1)/f<1.0
なる条件を満足し、
物体側から数えて第i番目の面(絞り面を含む)の曲率半径をiをサフィックスとしてR_(i)(i=1?7)、物体側から数えて第i番目の面とi+1番目の面との光軸上の面間隔をiをサフィックスとしてD_(i)とするとき、
(5) 0.8<R_(1)/(D_(1)+D_(2)+D_(3)+D_(4))<1.0
(6) 0.7<|R_(7)|/(D_(5)+D_(6))<1.2
なる条件を満足する、原稿読取用レンズ。」(以下「引用発明」という。)

3 本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
(1)引用発明の「凸面を物体側に向けた1枚の正メニスカスレンズ」からなる「第1群」と、本願発明の「物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなる第1レンズおよび第2レンズ」とは、「物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなるレンズ群」である点で一致する。

(2)引用発明の「凹面を像側に向けた負メニスカスレンズ」からなる「第2群」と、本願発明の「物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなる第3レンズ」とは、「物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなるレンズ」である点で一致する。

(3)引用発明の「凸面を像側に向けた正メニスカスレンズ」からなる「第3群」と、本願発明の「像側に凸面を向けた、両面が共に非球面である正のメニスカスレンズからなる第4レンズ」とは、「像側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなるレンズ」である点で一致する。

(4)上記(1)?(3)を踏まえると、引用発明の「物体側から像側へ向かって順次、第1ないし第3群を配してなり、」「第1群は凸面を物体側に向けた1枚の正メニスカスレンズ、第2群は凹面を像側に向けた負メニスカスレンズ、第3群は凸面を像側に向けた正メニスカスレンズ」であることと、本願発明の「物体側から順に、物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなる第1レンズおよび第2レンズと、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなる第3レンズと、像側に凸面を向けた、両面が共に非球面である正のメニスカスレンズからなる第4レンズが配列されてなること」とは、「物体側から順に、物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなるレンズ群と、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなるレンズと、像側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなるレンズが配列されてなること」という点で一致する。

(5)引用発明の「原稿読取用レンズ」は、本願発明の「結像レンズ」に相当する。

(6)すると、本願発明と引用発明とは、

「物体側から順に、物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなるレンズ群と、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなるレンズと、像側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなるレンズが配列されてなる結像レンズ。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1〉
物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなるレンズ群が、本願発明においては、「物体側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなる第1レンズおよび第2レンズ」からなるのに対して、引用発明においては、「凸面を物体側に向けた1枚の正のメニスカスレンズ」からなる点。

〈相違点2〉
像側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなるレンズが、本願発明においては「両面が共に非球面である」のに対して、引用発明においては「少なくとも1つ非球面を有」する点。

4 相違点についての判断
(1)相違点1について
光学像をレンズ系により結像させる結像レンズの分野において、1枚の正レンズを2枚の正レンズにパワー分割することによって、収差特性をより良好なものとすることは、本願の出願時において当業者に周知の技術的事項である(一例として、特開昭61-133915号公報(第3頁左下欄第13?15行等)を参照。)。
すると、引用発明において、収差補正をより良好なものとするために、その「凸面を物体側に向けた1枚の正のメニスカスレンズ」からなる「第1群」のレンズを上記周知技術に基づいてパワー分割し、それぞれ物体側に凸面を向けた2枚の正のメニスカスレンズにより構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
引用発明の「第3群が」「少なくとも1つ非球面を有」することは、「第3群」のレンズの両面を非球面とすることを示唆するものである。
すると、上記相違点2は実質的に相違点とはいえない。

(3)ア なお、請求人は、平成20年12月26日付けの意見書において、「本願発明の実施例では焦点距離が100mmとして収差計算をしているのに対し、引用発明の実施例では焦点距離が20mmとして収差計算されております。・・・上述したように焦点距離が5倍違うことを考慮すると、互いに同じスケールのグラフ上に、収差曲線を表して比較した場合には、本願発明の実施例の収差は引用例のものの収差の1/5という極めて小さく良好な範囲に収まっていることになりますので、両者の収差上の差異は歴然としております。」、「この差異は、F/NOおよび画角の差による影響分を差し引いたとしても顕著であります。このような良好な収差は、物体側から、正レンズ、負レンズ、および正レンズからなる3枚構成のレンズ系において、最も結像面側の第3レンズの一方の面を非球面に形成しても、到底得られるものではなく、物体側から、正レンズ、正レンズ、負レンズ、正レンズの4枚構成とし、最も結像面側の第4レンズの両面を非球面とすることで初めて達成することができるものであります。このことは本願発明の作用効果の1つであって、引用発明及び周知技術から予期し得ない格別のものであります。」と主張するとともに(以下「主張(ア)」という。)、「本願発明当時における読取用レンズ等のレンズ設計におきましては、レンズの両面を非球面としなくても、どちらか一方の面を非球面とすれば所定の効果が得られるという観念が強かったこともあって、両面を非球面とすることでより大きな効果が得られることは、容易に想定できることではありませんでした。」と主張している(以下「主張(イ)」という。)。

イ(ア)まず、上記主張(ア)について検討する。
請求人の上記主張(ア)は、本願発明の実施例に基づく主張であり、本願発明に基づく主張とはいえない。
すなわち、本願発明では本願の明細書の発明の詳細な説明の段落【0014】に記載されているような条件式(1),(2)に関する数値限定はなされていないから、本願発明には、本願の明細書の発明の詳細な説明の段落【0015】に記載されているように「条件式(1)の範囲外では、球面収差、歪曲収差を良好に保とうとすると非点収差が大きくなってしまい」、「条件式(2)の範囲外では、歪曲収差を小さくしようとするとコマ収差が悪化」し、「したがって、条件式(1)および条件式(2)の範囲外では、画像読取用レンズとして必要な性能、すなわち画面全域にわたる均質な像が得られなくなる」という課題が依然として存在する。
したがって、請求人の上記主張(ア)は本願発明に基づく主張とは認められず、これを採用することはできない。

(イ)次に、上記主張(イ)について検討する。
上記第2の4(2)で述べたとおり、引用発明の「第2群および第3群がそれぞれ、少なくとも1つ非球面を有」することは、「第3群」のレンズの両面が非球面を有することをも示唆するものである。
したがって、請求人の上記主張(イ)も採用できない。

ウ 以上のとおりであるから、請求人の上記主張(ア)及び(イ)はいずれも採用することができない。

5 本願発明の進歩性の判断
以上検討したとおり、引用発明に上記相違点1ないし2に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。
また、本願発明の効果も、引用例に記載された発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
したがって、本願発明は引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-20 
結審通知日 2009-05-21 
審決日 2009-06-02 
出願番号 特願平10-64422
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 英信  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 吉野 公夫
日夏 貴史
発明の名称 結像レンズおよびこれを用いた光学装置  
代理人 川野 宏  
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