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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B08B
管理番号 1201061
審判番号 不服2008-3341  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-13 
確定日 2009-07-21 
事件の表示 特願2004-210299号「洗濯水の製造機構」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月9日出願公開、特開2004-344887号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成6年11月16日に出願した特願平6-282247号(以下、「原出願」という。)の一部を平成16年7月16日に新たな特許出願としたものであって、平成20年1月9日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年1月15日)、これに対し、同年2月13日に拒絶査定に対する審判の請求がなされ、当審において、同年12月1日付けで拒絶理由が通知され、平成21年1月30日付けで意見書が提出されたものである。そして、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年6月7日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「供給された電解質水溶液に活性酸素を生成せしめるような電解通路を具備し、これにより洗濯対象物に活性酸素の酸化分解作用を及ぼしめる洗濯水を得るようにしていると共に、洗濯水が洗濯対象物に及ぼされて成る洗濯排水の少なくとも一部を、再び電解通路に供給して活性酸素と次亜臭素酸を生成せしめると共に水素イオン濃度が約7から8.2程度までの領域になるように電気分解し、洗濯水に再生するようにしたことを特徴とする洗濯水の製造機構。」

2.先願発明
これに対して、当審の拒絶の理由に引用された、本願の原出願である特願平6-282247号(特許第3948760号)の請求項1に係る発明(以下、「先願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「供給された電解質水溶液に活性酸素を生成せしめるような電解通路を具備し、これにより洗濯対象物に活性酸素の酸化分解作用を及ぼしめる洗濯水を得るようにしていると共に、洗濯水が洗濯対象物に及ぼされて成る洗濯排水の少なくとも一部を、再び電解通路に供給して活性酸素と次亜臭素酸を生成せしめると共に水素イオン濃度が約7から8.2程度までの領域になるように臭化ナトリウムの共存下で電気分解し、洗濯水に再生するようにしたことを特徴とする洗濯水の製造機構。」

3.本願発明と先願発明との対比
本願発明と先願発明とを対比すると、両者は、
「供給された電解質水溶液に活性酸素を生成せしめるような電解通路を具備し、これにより洗濯対象物に活性酸素の酸化分解作用を及ぼしめる洗濯水を得るようにしていると共に、洗濯水が洗濯対象物に及ぼされて成る洗濯排水の少なくとも一部を、再び電解通路に供給して活性酸素と次亜臭素酸を生成せしめると共に水素イオン濃度が約7から8.2程度までの領域になるように電気分解し、洗濯水に再生するようにしたことを特徴とする洗濯水の製造機構。」で一致し、
電気分解について、先願発明では、「臭化ナトリウムの共存下で」行われるという発明特定事項を備えるのに対して、本願発明では、「臭化ナトリウムの共存下で」行われるという構成を備えない点で相違する。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
まず、先願発明を先願とし、本願発明を後願とした場合について検討する。
本願発明においては、電気分解が行われる条件について特定するものではないことから、電気分解が行われる条件としては、「臭化ナトリウムの共存下で」行われるものと、「臭化ナトリウムの共存下で」行われないものとを含むものである。
そして、電気分解が「臭化ナトリウムの共存下で」行われるものは、先願である先願発明と一致するため、本願発明と先願発明との間に相違点は存在せず、両者は同一の発明となる。
次に、本願発明と先願発明との先願、後願の関係を入れ替えてみた場合について検討する。
この場合も、同様に、本願発明と後願である先願発明とは一致するため、本願発明と先願発明とは同一の発明となる。
ところで、先願発明は既に特許されており(特許第3948760号参照のこと。)、協議を行うことができない。

なお、審判請求人は、平成21年3月19日付け意見書において、「特許法第39条第2項の審査基準3.4には、同日に出願された二つの出願の各々の請求項に係る発明どうしが同一か否かの判断手法について次のように記載されている。
『(2)発明Aを先願とし、発明Bを後願としたときに後願発明Bが先願発明Aと同一とされても、発明Bを先願とし、発明Aを後願としたときに後願発明Aが先願発明Bと同一とされない場合には、両者は「同一の発明」に該当しないものとして取り扱う。
(説明)
例えば発明Aが下位概念の発明で、発明Bが上位概念の発明である場合のように、発明Aが先願で発明Bが後願であるときには後願発明Bを先願発明Aと同一とするが、発明Bが先願で発明Aが後願であるときには後願発明Aを先願発明Bと同一としないような発明A、Bが同日に出願された場合、両発明を同一の発明であるとすることは、先後願の場合には後願の発明Aを先願の発明Bと同一としないことからみて適切ではない。』
すなわち、本件発明はご指摘の通り原発明の上位概念に該当するものと考えられるところ、前記審査基準の(説明)などに鑑みると上位概念の発明「本件発明」と下位概念の発明「原発明」とは「同一の発明」に該当しないものとして取り扱われるべきであり、本件発明は特許法第39条第2項に規定の要件を具備するものである。」と主張する。

この点につき、以下に検討する。
審査基準において、同日に出願された上位概念の発明と下位概念の発明とを「同一の発明」に該当しないものとして取り扱うのは、「発明Aを先願とし、発明Bを後願としたときに後願発明Bが先願発明Aと同一とされても、発明Bを先願とし、発明Aを後願としたときに後願発明Aが先願発明Bと同一とされない場合には、両者は『同一の発明』に該当しないものとして取り扱う。」と明記されているように、あくまでも、「発明Aを後願としたときに後願発明Aが先願発明Bと同一とされない」という条件が成立することをその前提とするものである。
したがって、審査基準は、本願発明のように本願発明と先願発明との間に、そのどちらを先願としても本願発明と先願発明との間で同一発明の関係が成り立つ場合について規定するものではない。
ゆえに、審判請求人の意見書における主張は、採用できない。

5.むすび
したがって、本願発明は、先願発明と同一であるので、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-21 
結審通知日 2009-05-22 
審決日 2009-06-08 
出願番号 特願2004-210299(P2004-210299)
審決分類 P 1 8・ 4- WZ (B08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 哲男  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 長浜 義憲
長崎 洋一
発明の名称 洗濯水の製造機構  

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