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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1201640
審判番号 不服2007-19970  
総通号数 117 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-18 
確定日 2009-08-05 
事件の表示 特願2001-189641「画像形成装置、及び、画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月22日出願公開、特開2002- 82586〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年6月22日(優先権主張 平成12年6月27日)の出願であって、平成19年6月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年7月18日付けで審判請求がなされたものであって、平成21年2月2日付けで当審において拒絶理由の通知がなされ、これに対し、同年4月10日付けで手続補正書及び意見書が提出されたものであり、「画像形成装置、及び、画像形成方法」に関するものと認める。


第2 当審の拒絶理由通知の概要
平成21年2月2日付けの拒絶理由の通知には、次の指摘事項が含まれている。

『2.拒絶理由1
本件出願は、明細書及び図面の記載が下記(1)?(6)の点で不備のため、特許法第36条第4項、第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)本願発明は、動トルクの変動が少ないということを数式による値の範囲で示したものであるが、そのような数式による値の範囲が有効であるとして効果が確認されているのは、実施例で確認された、特定の画像形成装置において特定の画像形成条件の場合においてのみである。
具体的には、表2に示された、特定の感光体、特定のトナー、特定のクリーニングブレードについて、特定のクリーニング条件(当接角や当接荷重等)にて、【0258】に示される特定の複写機(konica7050)を使用して、【0265】?【0266】に示される特定の画像形成条件(実機での感光体周速は不明)においてのみ、本願の数式による値の範囲の有効性が確認されており、それ以外に想定されうる各種条件のものについては、有効性が何ら確認されていない。
したがって、特許請求の範囲において、前提となる上記の各種条件が特定されておらず、また、動トルクの測定条件も十分に特定されておらず、これら条件の範囲を超えて特許を請求することとなっており、特許法第36条第6号第1号の要件を満たしてない。
また、特許請求の範囲から、実施例以外のものについて、具体的な画像形成装置を想定することは不可能に近いから、発明の範囲も明確でなく、特許法第36条第6項第2号の要件も満たしていない。
さらに、実施例以外のものについて、特許請求の範囲に記載されるような条件を満たす画像形成装置や画像形成方法をどのようにして得ることができるのか不明であり、当業者がそれを確認するためには過度の実験と試行錯誤を必要とするから、特許法第36条第4項に規定する、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること、に違反している。

(2)本願発明1?9及び発明の詳細な説明記載の「T」、「M」、「N」、「E」、「S」、「K」、「G」が、何を表す値なのか技術的な意味が発明の詳細においても明確になっておらず、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明が不明瞭となっている。
例えば、「S」について、明細書の段落【0041】に、「Sは動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した概念値」と記載されているが、当該概念値について、10を掛けることや、対数をとること、「(M-E)/24E」と計算することの技術的な意味が不明である。

(3)本願発明1?9の「T」、「M」、「N」、「E」、「S」、「K」、「G」、「H」、「I」により、画像形成装置として、何を特定したことになるのか不明であり、発明の範囲が不明確となっており、発明の詳細な説明においても当業者が当該発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは言えない。
「T」、「M」、「N」、「E」、「S」、「K」、「G」、「H」、「I」を特定しただけでは、単に動トルクの変動が少ないという達成すべき結果によって物を特定しているだけであって、当該課題を解決する具体的手段が不明である。
確かに、発明の詳細な説明において、本願発明の実施例等が詳細に記載されている。しかし、どのような具体的な調整により動トルクの変動を抑えることが出来たのか不明であり、実施例以外のどのような画像形成装置が、本願発明の範囲に含まれるか否かすらわからない。また、当業者がどのようにすれば動トルクの変動を抑えることが出来るのかも不明であり、当業者が本願の発明の詳細な説明をみて、実施も出来ないものである。

(4)本願発明1?9は、発明の詳細な説明記載の実施例等の範囲を越えており、かつ、実施例を拡張又は一般化出来る範囲を超えており、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものともなっていない。
例えば、表6?9記載の評価結果の前提は、本願発明1のSが13以上という条件を満たすS=13であるが、評価として悪い結果がどの表においても存在している。したがってSが13以上という条件だけでは良好な結果が得られないことは明らかである。そのことは表3から、S,K,G,H,Jの全ての値が条件を満たしていなければブレードめくれやブレード鳴きに関して良い結果が得られないことからも、Sが13以上という条件だけで、良好な評価結果が得られる、つまり本願明細書記載の効果があるとすることは出来ず、本願発明1は、発明の詳細な説明の記載を越えている。

(5)発明の詳細な説明記載の実施例において、セッティングパウダーがどのようなものであり、どのように使用されているのか不明であり、また、セッティングパウダーを馴染ませるために感光体を1分間回転させているが、動トルクの測定が当該回転前から行われているのか、当該回転後から行うのか不明であり、更に、動トルクの測定がどのようになされているのかも不明であり、実施例において、トナーなしの状態で動トルクを図る状態がどのような条件にて行われているのか不明瞭となっており、結果として、実施例から導き出せる本願発明1?9も不明瞭となっている。
上記点について付け加えると、トナーなしで動トルクを測定するとしているが、セッティングパウダーがトナーと同様の役割を果たしているとも考えられ、また、動トルクはモーターの容量等により大きく変動することからも、例えば、平均動トルクといった値を一定値で評価することの技術的意義はない。

(6)トナーが無しの状態で計測された値が、実際に使用されるトナーがある状態の実機に対して、どのような関係に有るのか不明であり、トナー無しでの評価結果がどのようにトナー有りの実機に影響をおよぼすのかも不明瞭であり、結果として、トナー無しで評価することの技術的意義が不明となっている。』


第3 手続補正書及び意見書の内容
これに対し、請求人より、平成21年4月10日付けで手続補正書及び意見書が提出されたところ、それらには以下の内容が含まれている。

1.補正された特許請求の範囲
特許請求の範囲は、補正により、次のとおりの記載になった。
「【請求項1】有機感光体上に形成された静電潜像をトナーを含有する現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を有機感光体から転写材に転写した後、有機感光体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置において、
前記有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を有し、表面層を構成する層に少なくとも粘度平均分子量が5万以上8万以下のポリカーボネート樹脂を含有するものであり、
前記トナーは、
トナー粒子の形状係数の変動係数が16%以下で、該トナー粒子の個数粒度分布における個数変動係数が27%以下で、
形状係数が1.2?1.6の範囲にあるトナー粒子を65個数%以上含有し、
かつ、角がないトナー粒子を50個数%以上含有するものであり、
前記クリーニングブレードは、
温度25℃における硬度が65°以上75°以下、反発弾性が31以上76以下で、前記有機感光体への当接角が15°以上25°以下、当接荷重が0.1N/m以上3N/m以下であり、
前記有機感光体と前記クリーニングブレード間に発生する周波数10Hz?10kHzの動トルク値の変動が下記式1で表わされる時、下記式2の関係式を満足するように設計されていることを特徴とする画像形成装置。
式1
T=X_(1)^(2)+X_(2)^(2)+・・・・・+X_(24)^(2) M=(X_(1)+X_(2)+・・・・・+X_(24))^(2)/24
N=〔{(X_(1)+X_(3)+・・X_(23))^(2)+(X_(2)+X_(4)+・・X_(24))^(2)}/12〕-M
E=(T-M-N)/22
X_(1):0?1分間の動トルクの最大値(単位:N・m)
X_(2):0?1分間の動トルクの最小値(単位:N・m)
X_(3):1?2分間の動トルクの最大値
X_(4):1?2分間の動トルクの最小値
X_(5):2?3分間の動トルクの最大値
X_(6):2?3分間の動トルクの最小値



X_(23):11?12分間の動トルクの最大値
X_(24):11?12分間の動トルクの最小値
式2
S≧13
但し、Sは、動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した概念値で、下記式で示される。
S=10log{(M-E)/24E}
また、上記式1で表される動トルク値の変動は、トナーを前記有機感光体で現像させない状態の下で測定したものであり、かつ、測定開始から12分までの間の各1分間の動トルクの測定に基づく。

【請求項2】有機感光体上に形成された静電潜像をトナーを含有する現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を有機感光体から転写材に転写した後、有機感光体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置において、
前記有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を有し、表面層を構成する層に少なくとも粘度平均分子量が5万以上8万以下のポリカーボネート樹脂を含有するものであり、
前記トナーは、
トナー粒子の形状係数の変動係数が16%以下で、該トナー粒子の個数粒度分布における個数変動係数が27%以下で、
形状係数が1.2?1.6の範囲にあるトナー粒子を65個数%以上含有し、
かつ、角がないトナー粒子を50個数%以上含有するものであり、
前記クリーニングブレードは、
温度25℃における硬度が65°以上75°以下、反発弾性が31以上76以下で、前記有機感光体への当接角が15°以上25°以下、当接荷重が0.1N/m以上3N/m以下であり、
前記有機感光体と前記クリーニングブレード間に発生する周波数10Hz?10kHzの動トルク値の変動が下記式1で表される時、下記式2及び下記式3の関係式を満足するように設計されていることを特徴とする画像形成装置。
式1
T=X_(1)^(2)+X_(2)^(2)+・・・・・+X_(24)^(2) M=(X_(1)+X_(2)+・・・・・+X_(24))^(2)/24
N=〔{(X_(1)+X_(3)+・・X_(23))^(2)+(X_(2)+X_(4)+・・X_(24))^(2)}/12〕-M
E=(T-M-N)/22
X_(1):0?1分間の動トルクの最大値(単位:N・m)
X_(2):0?1分間の動トルクの最小値(単位:N・m)
X_(3):1?2分間の動トルクの最大値
X_(4):1?2分間の動トルクの最小値
X_(5):2?3分間の動トルクの最大値
X_(6):2?3分間の動トルクの最小値



X_(23):11?12分間の動トルクの最大値
X_(24):11?12分間の動トルクの最小値
式2
S≧13
但し、Sは、動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した概念値で、下記式で示される。
S=10log{(M-E)/24E}
式3
0.001<K<0.9
但し、K(単位:N・m)は、下記式で示される。
K={(M-E)/24}^(1/2) また、上記式1で表される動トルク値の変動は、トナーを前記有機感光体で現像させない状態の下で測定したものであり、かつ、測定開始から12分までの間の各1分間の動トルクの測定に基づく。

【請求項3】有機感光体上に形成された静電潜像をトナーを含有する現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を有機感光体から転写材に転写した後、有機感光体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置において、
前記有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を有し、表面層を構成する層に少なくとも粘度平均分子量が5万以上8万以下のポリカーボネート樹脂を含有するものであり、
前記トナーは、
トナー粒子の形状係数の変動係数が16%以下で、該トナー粒子の個数粒度分布における個数変動係数が27%以下で、
形状係数が1.2?1.6の範囲にあるトナー粒子を65個数%以上含有し、
かつ、角がないトナー粒子を50個数%以上含有するものであり、
前記クリーニングブレードは、
温度25℃における硬度が65°以上75°以下、反発弾性が31以上76以下で、前記有機感光体への当接角が15°以上25°以下、当接荷重が0.1N/m以上3N/m以下であり、
前記有機感光体と前記クリーニングブレード間に発生する周波数10Hz?10kHzの動トルク値の変動が下記式1で表される時、下記式2及び下記式4の関係式を満足するように設計されていることを特徴とする画像形成装置。
式1
T=X_(1)^(2)+X_(2)^(2)+・・・・・+X_(24)^(2) M=(X_(1)+X_(2)+・・・・・+X_(24))^(2)/24
N=〔{(X_(1)+X_(3)+・・X_(23))^(2)+(X_(2)+X_(4)+・・X_(24))^(2)}/12〕-M
E=(T-M-N)/22
X_(1):0?1分間の動トルクの最大値(単位:N・m)
X_(2):0?1分間の動トルクの最小値(単位:N・m)
X_(3):1?2分間の動トルクの最大値
X_(4):1?2分間の動トルクの最小値
X_(5):2?3分間の動トルクの最大値
X_(6):2?3分間の動トルクの最小値



X_(23):11?12分間の動トルクの最大値
X_(24):11?12分間の動トルクの最小値
式2
S≧13
但し、Sは、動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した概念値で、下記式で示される。
S=10log{(M-E)/24E}
式4
0<G≦0.1
但し、G(単位:N・m)は、動トルクの変動を示す概念値で、下記式で示される。
G=E^(1/2) また、上記式1で表される動トルク値の変動は、トナーを前記有機感光体で現像させない状態の下で測定したものであり、かつ、測定開始から12分までの間の各1分間の動トルクの測定に基づく。

【請求項4】有機感光体上に形成された静電潜像をトナーを含有する現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を有機感光体から転写材に転写した後、有機感光体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置において、
前記有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を有し、表面層を構成する層に少なくとも粘度平均分子量が5万以上8万以下のポリカーボネート樹脂を含有するものであり、
前記トナーは、
トナー粒子の形状係数の変動係数が16%以下で、該トナー粒子の個数粒度分布における個数変動係数が27%以下で、
形状係数が1.2?1.6の範囲にあるトナー粒子を65個数%以上含有し、
かつ、角がないトナー粒子を50個数%以上含有するものであり、
前記クリーニングブレードは、
温度25℃における硬度が65°以上75°以下、反発弾性が31以上76以下で、前記有機感光体への当接角が15°以上25°以下、当接荷重が0.1N/m以上3N/m以下であり、
前記有機感光体と前記クリーニングブレード間に発生する周波数10Hz?10kHzの動トルク値の変動が下記式1で表される時、下記式2及び下記式5の関係式を満足するように設計されていることを特徴とする画像形成装置。
式1
T=X_(1)^(2)+X_(2)^(2)+・・・・・+X_(24)^(2) M=(X_(1)+X_(2)+・・・・・+X_(24))^(2)/24
N=〔{(X_(1)+X_(3)+・・X_(23))^(2)+(X_(2)+X_(4)+・・X_(24))^(2)}/12〕-M
E=(T-M-N)/22
X_(1):0?1分間の動トルクの最大値(単位:N・m)
X_(2):0?1分間の動トルクの最小値(単位:N・m)
X_(3):1?2分間の動トルクの最大値
X_(4):1?2分間の動トルクの最小値
X_(5):2?3分間の動トルクの最大値
X_(6):2?3分間の動トルクの最小値



X_(23):11?12分間の動トルクの最大値
X_(24):11?12分間の動トルクの最小値
式2
S≧13
但し、Sは、動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した概念値で、下記式で示される。
S=10log{(M-E)/24E}
式5
0<H≦0.2
但し、H(単位:N・m)は、最大トルクの平均値と最小トルクの平均値の差を表し、
下記式で示される。
H={(X_(1)+X_(3)+X_(5)・・X_(23))/12-(X_(2)+X_(4)+X_(6)・・X_(24))/12}
また、上記式1で表される動トルク値の変動は、トナーを前記有機感光体で現像させない状態の下で測定したものであり、かつ、測定開始から12分までの間の各1分間の動トルクの測定に基づく。

【請求項5】有機感光体上に形成された静電潜像をトナーを含有する現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を有機感光体から転写材に転写した後、有機感光体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置において、
前記有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を有し、表面層を構成する層に少なくとも粘度平均分子量が5万以上8万以下のポリカーボネート樹脂を含有するものであり、
前記トナーは、
トナー粒子の形状係数の変動係数が16%以下で、該トナー粒子の個数粒度分布における個数変動係数が27%以下で、
形状係数が1.2?1.6の範囲にあるトナー粒子を65個数%以上含有し、
かつ、角がないトナー粒子を50個数%以上含有するものであり、
前記クリーニングブレードは、
温度25℃における硬度が65°以上75°以下、反発弾性が31以上76以下で、前記有機感光体への当接角が15°以上25°以下、当接荷重が0.1N/m以上3N/m以下であり、
前記有機感光体と前記クリーニングブレード間に発生する周波数10Hz?10kHzの動トルク値の変動が下記式1で表される時、下記式2及び下記式6の関係式を満足するように設計されていることを特徴とする画像形成装置。
式1
T=X_(1)^(2)+X_(2)^(2)+・・・・・+X_(24)^(2) M=(X_(1)+X_(2)+・・・・・+X_(24))^(2)/24
N=〔{(X_(1)+X_(3)+・・X_(23))^(2)+(X_(2)+X_(4)+・・X_(24))^(2)}/12〕-M
E=(T-M-N)/22
X_(1):0?1分間の動トルクの最大値(単位:N・m)
X_(2):0?1分間の動トルクの最小値(単位:N・m)
X_(3):1?2分間の動トルクの最大値
X_(4):1?2分間の動トルクの最小値
X_(5):2?3分間の動トルクの最大値
X_(6):2?3分間の動トルクの最小値



X_(23):11?12分間の動トルクの最大値
X_(24):11?12分間の動トルクの最小値
式2
S≧13
但し、Sは、動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した概念値で、下記式で示される。
S=10log{(M-E)/24E}
式6
0.001<J≦ 0.8
但し、J(単位:N・m)は、動トルクの最大値と最小値から求まる平均的な動トルク値で、下記式で示される。
J=(X_(1)+X_(2)+X_(3)+・・X_(24))/24
また、上記式1で表される動トルク値の変動は、トナーを前記有機感光体で現像させない状態の下で測定したものであり、かつ、測定開始から12分までの間の各1分間の動トルクの測定に基づく。

【請求項6】有機感光体上に形成された静電潜像をトナーを含有する現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を有機感光体から転写材に転写した後、有機感光体上に残留したトナーを除去するクリーニングブレードを有する画像形成装置において、
前記有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を有し、表面層を構成する層に少なくとも粘度平均分子量が5万以上8万以下のポリカーボネート樹脂を含有するものであり、
前記トナーは、
トナー粒子の形状係数の変動係数が16%以下で、該トナー粒子の個数粒度分布における個数変動係数が27%以下で、
形状係数が1.2?1.6の範囲にあるトナー粒子を65個数%以上含有し、
かつ、角がないトナー粒子を50個数%以上含有するものであり、
前記クリーニングブレードは、
温度25℃における硬度が65°以上75°以下、反発弾性が31以上76以下で、前記有機感光体への当接角が15°以上25°以下、当接荷重が0.1N/m以上3N/m以下であり、
前記有機感光体と前記クリーニングブレード間に発生する周波数10Hz?10kHzの動トルク値の変動が下記式1で表される時、下記式2?下記式6の関係式を満足するように設計されていることを特徴とする画像形成装置。
式1
T=X_(1)^(2)+X_(2)^(2)+・・・・・+X_(24)^(2) M=(X_(1)+X_(2)+・・・・・+X_(24))^(2)/24
N=〔{(X_(1)+X_(3)+・・X_(23))^(2)+(X_(2)+X_(4)+・・X_(24))^(2)}/12〕-M
E=(T-M-N)/22
X_(1):0?1分間の動トルクの最大値(単位:N・m)
X_(2):0?1分間の動トルクの最小値(単位:N・m)
X_(3):1?2分間の動トルクの最大値
X_(4):1?2分間の動トルクの最小値
X_(5):2?3分間の動トルクの最大値
X_(6):2?3分間の動トルクの最小値



X_(23):11?12分間の動トルクの最大値
X_(24):11?12分間の動トルクの最小値
式2
S≧13
但し、Sは、動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した概念値で、下記式で示される。
S=10log{(M-E)/24E}
式3
0.001<K<0.9
但し、K(単位:N・m)は、下記式で示される。
K={(M-E)/24}^(1/2) 式4
0<G≦0.1
但し、G(単位:N・m)は、動トルクの変動を示す概念値で、下記式で示される。
G=E^(1/2) 式5
0<H≦0.2
但し、H(単位:N・m)は、最大トルクの平均値と最小トルクの平均値の差を表し、
下記式で示される。
H={(X_(1)+X_(3)+X_(5)・・X_(23))/12-(X_(2)+X_(4)+X_(6)・・X_(24))/12}
式6
0.001<J≦ 0.8
但し、J(単位:N・m)は、動トルクの最大値と最小値から求まる平均的な動トルク値で、下記式で示される。
J=(X_(1)+X_(2)+X_(3)+・・X_(24))/24
また、上記式1で表される動トルク値の変動は、トナーを前記有機感光体で現像させない状態の下で測定したものであり、かつ、測定開始から12分までの間の各1分間の動トルクの測定に基づく。

【請求項7】請求項1?6のいずれか1項に記載された画像形成装置の前記有機感光体上に形成された静電潜像を前記トナーを含有する現像剤により現像し、
該現像により顕像化されたトナー像を前記有機感光体から転写材に転写した後、
前記有機感光体上に残留した前記トナーを前記クリーニングブレードで除去することを特徴する画像形成方法。」
なお、以下、「請求項1に係る発明」、「請求項2に係る発明」・・・「請求項7に係る発明」を、「本願発明1」、「本願発明2」・・・「本願発明7」という。

2.意見書の内容
また、請求人は、意見書にて、上記「第2」で示した拒絶理由の通知に対して、次のように反論している。

『3-1.拒絶理由1に対する反論
(1)拒絶理由(1)及び(4)について
前述しました様に、本願出願人は今回、本願発明を構成する有機感光体、トナー及びクリーニングブレードを特定する補正を行いました。そして、本願出願人は、今回行った補正により、本願特許請求の範囲に記載の技術が本願明細書の発明の詳細な説明と実施例に開示されている技術に一致したものになっているものと思量いたします。
したがいまして、動トルクの測定条件につきましても、今回行いました補正により、本願発明は、特定された有機感光体、トナー及びクリーニングブレードの存在下で動トルク測定を行うものであることが明白になりました。そして、特定された有機感光体、トナー及びクリーニングブレードの存在下での動トルク測定は、当業者であれば、仮に出願時明細書に数値等の条件が具体的に細かく記載されていなくても、確実に行えるものと思量いたします。これらの理由から、本願特許請求の範囲に記載の発明は、本願明細書の発明の詳細な説明と実施例に開示されている技術に一致したものであり、また、本願明細書の記載内容に基づいて当業者が実施できるものであると思量されます。したがいまして、拒絶理由通知(1)は解消したものと思量いたします。
また、拒絶理由(4)につきましても、本願出願人が今回行いました補正により、本願請求項1?5に係る発明は発明の詳細な説明や実施例に記載された技術範囲を超えているものではありません。また、本願請求項2?5に係る発明に対して、本願出願人は動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した概念値Sの関係式2を加える補正を行いました。
この補正により、本願請求項2?5に係る発明が、特定の有機感光体、トナー及びクリーニングブレードを用い、かつ、動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した概念値Sが13以上となる条件の下で、さらに動トルクを特定することにより、各々の効果が奏されたことを見出したものであることを明らかにしております。
この様に、本願請求項1?5に係る発明は概念値Sの値が13以上という条件に加えて、特定の有機感光体、トナー、クリーニングブレードの存在下で良好な結果が得られることを見出したものであり、発明の詳細な説明の記載を超えた内容のものではありません。
したがいまして、拒絶理由通知(4)も解消したものと思量いたします。
以上の理由から、拒絶理由(1)及び(4)は解消したものと思量いたします。

(2)拒絶理由(2)について
次に、本願請求項1?6及び発明の詳細な説明に記載の「T」、「M」、「N」、「E」、「S」、「K」、「G」は、いずれも、特定の有機感光体、トナー、クリーニングブレードの存在下での動トルクの変動を品質工学で規定するSN比で特定する際に使用するパラメータで、品質工学(タグチメソッド)で使用されるものです。本願発明では、請求項1?6の各項において動トルクの変動を品質工学で規定する各種SN比で特定しており、これらパラメータは各種SN比を導き出す上で使用されるものです。これらパラメータの意味は、公知の文献や電気通信回線を介して得られるホームページ等に開示されており、本願明細書に細かい説明がなくても、当業者であれば理解できるものと思量されます。
品質工学で使用されるこれらパラメータは、たとえば、下記のURLにも開示されております。
http://www.qes.gr.jp/introduction/whatqe2/qeview10.htm
また、本願発明では、品質工学で使用されるこれらパラメータを概念値として規定しておりますが、これは本願発明でタグチメソッドと呼ばれる品質工学の内容を使用しているので概念としております。さらに、これら概念値の技術的な意味は、品質工学の考え方に基づく計算式を示したものであり、本願明細書にはこれら概念値についての計算式としての説明は以下の様に明記されております。
先ず、「T」は、本願明細書の段落0037?0039の記載から明らかな様に、動トルク測定開始から12分までの各1分間に発生する動トルクの最大値を2乗した値の和を意味するものであります。また、「M」は「T」と同様、本願明細書の段落0037?0039の記載から明らかな様に、動トルク測定開始から12分までの各1分間に発生する動トルクの最小値を2乗した値の和を測定時間である12の2倍の値である24で除して得られた値を意味するものです。
また、「N」は、本願明細書の段落0037?0039の記載から明らかな様に、動トルク測定開始から12分までの各1分間に発生する動トルクの最大値の和を2乗した値より測定開始から12分までの各1分間に発生する動トルクの最小値の和を2乗した値を差し引いて得られる値に測定時間である12を除して得られた値に、さらに、前述の「M」を差し引いて得たものであります。さらに、「E」は、本願明細書の段落0037?0039の記載から明らかな様に、前述の「T」より前述の「M」、「N」を引いて得られた値に22を除して得られたものであり、段落0041に記載の様に動トルクの変動値(バラツキ)を意味するものであります。
次に、「S」は、本願明細書の段落0041に記載の様に、動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した概念値で、13以上とすることによりクリーニングブレードと感光体が安定した摩擦力を維持してトナーのクリーニングが順調に行えることを意味するものです。また、「K」は、本願明細書の段落0042に記載の様に、動トルクの平均的な値を示す概念値で、0.001よりも大で0.9未満とすることにより感光体とクリーニングブレードの間に十分な摩擦力が発生することを意味するものです。また、「G」は、本願明細書の段落0043に記載の様に、動トルクの変動を示す概念値で、0よりも大で0.1以下とすることにより感光体とクリーニングブレードの間に安定した摩擦力が発生することを意味するものであります。
この様に、「T」、「M」、「N」及び「E」の技術的な意味は、本願明細書の段落0037?0039及び0041に記載された品質工学の考え方での計算式を示したものであり、「S」、「K」、「G」の技術的な意味も同様に品質工学の考え方での計算式を示すものとして本願明細書の上記段落中に記載されております。したがいまして、「T」、「M」、「N」、「E」、「S」、「K」、「G」の技術的な意味は、本願明細書に記載されておりますので、拒絶理由(2)は解消したものと思量いたします。

(3)拒絶理由(3)について
本願請求項1?6及び発明の詳細な説明に記載の「T」、「M」、「N」、「E」、「S」、「K」、「G」、「H」は、いずれも、特定の有機感光体、トナー、クリーニングブレードの存在下での動トルクの変動をSN比で特定する際に使用する品質工学(タグチメソッド)でのパラメータです。本願発明では、特定の有機感光体、トナー、クリーニングブレードの存在下で動トルクの変動をSN比で規定する際、これらパラメータにより機械的強度が低く表面にキズを発生させ易いとされる有機感光体表面から、すり抜けが起き易いとされる形状のトナーよりなる残留トナーを確実に除去できることを可能にしております。
具体的には、段落0270?0274に示す様に「S」が13以上とすることにより、上記特定の有機感光体、トナー、クリーニングブレードを用いた画像形成環境で、ブレードめくれ、トナーすり抜け、異常音が発生しないことが確認されております。また、段落0275?0279に示す様に、「S」が13、かつ、「K」が0.001よりも大きく0.9未満のときに、上記特定の有機感光体、トナー、クリーニングブレードを用いた画像形成環境で、ドラム傷とトナーフィルミングが発生しないことが確認されております。
また、段落0280?0282に示す様に、「S」が13、「G」が0.001以上0.1以下のときに、上記特定の有機感光体、トナー、クリーニングブレードを用いた画像形成環境でトナー飛散が発生しないことが確認されております。さらに、段落0283?0285に示す様に、「S」が13、「H」が0.001以上0.2以下のときに、上記特定の有機感光体、トナー、クリーニングブレードを用いた画像形成環境で帯電極の汚染が発生しないことが確認されております。なお、「S」は品質工学でいうところの「感度」を意味するものであります。
この様に、本願明細書には、画像形成環境において有機感光体、トナー、クリーニングブレードを特定するとともに動トルクに関する「T」、「M」、「N」、「E」、「S」、「K」、「G」、「H」を規定することにより、動トルクの変動を抑制することができることが開示されております。そして、有機感光体、トナー及びクリーニングブレードが特定された画像形成環境下で動トルクを測定することは、当業者であれば、仮に出願時明細書に数値等の条件が具体的に細かく記載されていなくても、確実に行えるものであると思量されます。
以上の様に、本願明細書では本願請求項1?6に記載の「T」、「M」、「N」、「E」、「S」、「K」、「G」、「H」を特定することにより、特定の有機感光体、トナー及びクリーニングブレードを用いた画像形成装置に関し、機械的強度が低く表面にキズを発生させ易い有機感光体表面より、すり抜けを起こすことなく残留トナーを確実に除去できることを可能にすることが明記されております。したがいまして、拒絶理由(3)は解消したものと思量いたします。

(4)拒絶理由(5)について
本願発明では、実施例においてセッティングパウダーを用いております。画像形成装置では、使用開始時の初期段階でブレードの巻き込みが発生することを防ぐために、感光体とクリーニングブレードの表面にセッティングパウダーと呼ばれる潤滑性を付与するための粉体が塗布され、この状態でプリント作成が行われます。使用開始時の初期段階でブレードの巻き込み発生を防ぐためにセッティングパウダーを用いることは、たとえば、特開平10-143043号公報等にも開示されており、当業者の間ではよく知られたものといえます。セッティングパウダーは、ポリフッ化ビニリデン樹脂粉末等の樹脂粉末により、ブレードの巻き込み防止を実現させるとともに、初期段階より、所定画質のトナー画像形成が支障なく行える様、各種画像形成条件に応じたスペックが設計されているものであります。
本願発明では、画像形成に使用されるトナー、有機感光体、クリーニングブレードの条件が具体的に特定されておりますので、当業者であれば、この条件に対応可能なセッティングパウダーを一義的に選択できることは明白であると考えられます。したがいまして、本願明細書のセッティングパウダーに関する記載内容であれば、動トルクの測定条件に関して不明な点は存在しないものと考えられ、実施例における動トルク測定条件の記載も不明瞭な内容のものではないと思量されます。以上の理由により、拒絶理由(5)は解消したものと思量いたします。

(5)拒絶理由(6)について
本願発明では、トナーが存在しない状態で測定された動トルクを用いるものでありますが、前述した様に、当該動トルクは有機感光体とクリーニングブレードにセッティングパウダーを塗布した状態で測定されたものであります。前述しました様に、本願発明は、画像形成に使用するトナー、有機感光体、クリーニングブレードが特定されておりますので、この画像形成環境で使用可能なセッティングパウダーのスペックも当業者であれば一義的に決められるものと思量されます。
したがいまして、本願発明では、動トルクがトナー無しの状態で計測された値であっても、使用したセッティングパウダーのスペックを介して、トナーが存在する状態で測定される動トルクに関連づけることは可能と思量されます。以上の理由により、拒絶理由(6)は解消したものと思量いたします。
以上の理由により、本願出願人は審判官が認定された今回の拒絶理由1は全て解消されたものと思量いたします。』


第4 当審の判断
1.拒絶理由1の(1)について
本願発明1?7は、「前記有機感光体は、導電性支持体上に、少なくとも、中間層、電荷発生層、電荷輸送層を有し、表面層を構成する層に少なくとも粘度平均分子量が5万以上8万以下のポリカーボネート樹脂を含有するものであり、前記トナーは、トナー粒子の形状係数の変動係数が16%以下で、該トナー粒子の個数粒度分布における個数変動係数が27%以下で、形状係数が1.2?1.6の範囲にあるトナー粒子を65個数%以上含有し、かつ、角がないトナー粒子を50個数%以上含有するものであり、前記クリーニングブレードは、温度25℃における硬度が65°以上75°以下、反発弾性が31以上76以下で、前記有機感光体への当接角が15°以上25°以下、当接荷重が0.1N/m以上3N/m以下であり、前記有機感光体と前記クリーニングブレード間に発生する周波数10Hz?10kHzの動トルク値の変動が下記式1(記載省略)で表わされる時、下記式2(記載省略)の関係式を満足するように設計されていることを特徴とする画像形成装置。」である。この記載から、感光体、トナー、クリーニングブレードに関する条件は最低限の条件であって、当該条件を満たせば式2を自動的に満たすものではないことは明らかである。したがって、本願発明1?7は、感光体、トナー、クリーニングブレードに関する条件に加えて、式2(S≧13)を満たすことが本願発明1記載の画像形成装置を特定する条件の必須の条件である。しかしながら、式2は、請求人も説明しているように、タグチ・メソッドを参考とする式であって、種々の実験条件により影響を受けた結果の品質の評価式であり、その評価式の値を一定の値に納めるために「画像形成装置」の具体的構成をどのように設計すべきなのかが、本願発明1?7には全く記載されておらず、式2をどのように満たすかが全く不明である。
例えば、クリーニングブレードの当接荷重は、本願発明1?7では、「0.1N/m以上3N/m以下」と規定されているが、評価1(段落【0256】?【0269】)では、【表2】にあるように、「1?3N/m」の設定であり、評価2(段落【0270】?【0274】)では、段落【0271】に記載された「0.1?0.3N/m」の設定であって、後者は前者の1/10程度になっている。
そして、評価1では、感光体、トナーの詳細に加え、ブレードの詳細(当接角、材質、自由長、厚さ等)が明らかにされており、当該評価を当業者が再現することに困難は一応少ないといえる。
しかしながら、評価2では、当接荷重が評価1に比して1/10程度の評価1とは大きく異なる小さい値であるにも係わらず、評価1のブレードの詳細条件がそのまま利用できるとは考えられない。
そうすると、評価2では、ブレードの詳細等のクリーニング条件(当接角、材質、自由長、厚さ等)をどのように設定すれば、評価2で良好とされるものが得られるのかが記載されているとは言えず(評価2は、段落【0270】において、クリーニング条件を各条件毎に適切に選択してS値を変化させた旨の記載があるのみである。)、また、そのような条件は、当業者にとって自明でもなく、その評価の再現のためには、当業者に過度な試行錯誤を強いるものである。あるいは、良好な評価結果のものを得るためには、ブレードの当接荷重やクリーニング条件が関係なく、他の条件が重要であるというのであれば、その重要条件が明らかにされる必要があるところ、その重要な条件が当業者が理解される程度には本願明細書には記載されていないし、また、当業者にとって自明でもない。この点は評価3?6についても同様である。
以上のことより、依然として、実施例以外のものについて、どのようにして、本願発明1?7記載の画像形成装置を得ることができるのか不明であり、発明の詳細な説明からも、どのように本願発明1?7記載の画像形成装置を得ることができるか不明である。

2.拒絶理由1の(2)及び(3)について
請求人は意見書において、本願発明の「S」は、意見書の記載によると動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した概念値であると説明しているが、それ以上の説明はない。しかし、「S」を表す10log{(M-E)/24E}は、例えば、T,M,Nで表記すると、「S」は10log{(22M-T+N’))/24(T-N’)}:(N’=〔{(X_(1)+X_(3)+・・X_(23))^(2)+(X_(2)+X_(4)+・・X_(24))^(2)}/12〕)等でも表されるが、当該式及び式2からも、どの値が動トルクの平均値であって、どの値が動トルクの変動値であるのか依然不明であり、さらに、「S」が動トルクの平均値を動トルクの変動値で除した値であることも依然として不明である。同様に、「K」、「E」、「G」、「H」、「I」が、何を表した値であるのかも依然不明であり、意見書においても、単に式を説明するだけであり、「K」、「E」、「G」、「H」、「I」の技術的意義は依然として不明である。
さらに、これら「S」等の条件の範囲に入る画像形成装置がどのようなものかも想定ができない。加えて、「S」、「K」、「E」、「G」、「H」、「I」を本願発明1?7記載の範囲に納めるように、どのように設計するかについてもなんら明確にされておらず、当業者が、本願発明1?7を実施することが不可能である。
以上のことより、本願発明1?7及び発明の詳細な説明は、依然として不明瞭である。

3.拒絶理由1の(4)について
本願発明1は、Sが13以上との条件を満たせば、良好はクリーニング性能を発揮できるとの効果を達成できるものである。しかし、表6?9記載の評価結果によると、Sが13以上という条件に加えて、「K」、「G」、「H」等の条件も満たさなければ、良好なクリーニング性能を発揮できておらず、さらに表3からは、「S」、「K」、「G」、「H」等、全ての条件が揃って初めて、良好な結果が得られている。
これらのことから、良好な結果を得るためには、「S」、「K」、「G」、「H」等すべての条件が必要であり、Sのみ、或いはSとKのみ等では、本願発明の目的が達成できない。
また、仮に「S」が、動トルクの平均値(N・m)を動トルクの変動値(N・m)で除した値であるとしても、本願発明1において「S≧13」だけを規定することにより、クリーニングブレードの変動が安定するとは言えるが、請求人が主張するような「クリーニングブレードと感光体が安定した摩擦力を維持してトナーのクリーニングが順調に行えることを意味する」とまでいえるものかは疑わしい。言い換えると、そもそも動トルクの絶対値(N・m)を前提とした上で、動トルクの変動値(N・m)や、動トルクの変動値(N・m)と動トルクの変動値(N・m)の比を評価することに意味があると考えるべきである。つまり、Sが13以上の場合、確かにクリーニングブレードは安定するであろうが、動トルクが大きい場合や、小さい場合は、本願明細書の評価1や2で評価したトナーすり抜け、ブレードめくれ、異常音発生に不具合が生じるおそれが多分にあり、Sが13以上でありさえ良いということは何ら実証されていない。
以上のことより、本願発明1?7のように、条件をSのみ、或いはSとKのみ等とすることは、発明の詳細な説明記載の実施例等で否定された条件を含む条件設定となっており、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載のものを超えるものとなっている。

4.上記1.?3.で述べたとおり、本願の請求項1?7に係る発明は、依然として、発明の詳細な説明に記載したものでなく、また、明確でもなく、本願の発明の詳細な説明も、依然として、当業者が請求項1?7に係る発明の実施をすることができる程度の明確かつ十分に記載したものではない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項、第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-05-28 
結審通知日 2009-06-02 
審決日 2009-06-15 
出願番号 特願2001-189641(P2001-189641)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G03G)
P 1 8・ 536- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 下村 輝秋金田 理香  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伏見 隆夫
大森 伸一
発明の名称 画像形成装置、及び、画像形成方法  

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