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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C02F
審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許  C02F
管理番号 1202917
審判番号 無効2008-800193  
総通号数 118 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-10-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-10-01 
確定日 2009-08-24 
事件の表示 上記当事者間の特許第4114189号発明「水活性装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第4114189号は、平成16年8月31日に特許出願され、平成20年4月25日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、請求人株式会社計画科学研究所から平成20年10月1日付け審判請求書により本件特許の請求項1?4に係る発明について特許無効審判の請求がなされ、被請求人木村光男から平成20年12月10日付けで答弁書が提出されたところ、その後の手続の経緯は次のとおりである。

被請求人より口頭審理陳述要領書の提出:平成21年5月26日
口頭審理: 平成21年5月26日

II.本件特許発明
本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、「本件特許発明1?4」といい、全体については「本件特許発明」という。)は、本件特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるそれぞれ次のとおりのものである。

【請求項1】入浴水を貯留する浴槽内に吸引口と排出口を開放した循環路と、前記入浴水を前記吸引口から前記排出口へ向けて送水するポンプと、純水を供給する純水供給手段と、該純水供給手段に接続され前記純水を電気分解して発生する水素と酸素を前記循環路に供給するガス発生手段とを備えることを特徴とする水活性装置。
【請求項2】前記純水供給手段と前記ガス発生手段の間に、終端を有する分岐路を設け、前記ガス発生手段で発生する水素と酸素を前記分岐路に供給することにより、前記分岐路に前記純水供給手段から導かれる純水を、前記分岐路の終端から飲料水にして放出させることを特徴とする請求項1に記載の水活性装置。
【請求項3】前記ガス発生手段が発生する水素と酸素を、前記循環路又は前記分岐路に導く方向切換弁を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の水活性装置。
【請求項4】前記入浴水を濾過するフィルタを前記循環路に設けたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の水活性装置。

III.当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、本件特許発明1?4についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として次の書証をもって、以下に示す無効理由により本件特許は無効にされるべきと主張している。

(証拠方法)
甲第1号証:「スーパーハイブリッドウオーター」という題名の著作物
甲第2号証:著作権登録番号第31435号の著作権登録原簿の謄本

(1)無効理由1について
本件特許発明は、請求人代理人である三輪祐三が取締役をつとめる株式会社計画科学研究所において、請求人代理人である三輪祐三が研究開発並びに実験を手掛け、その成果を平成15年2月1日に「スーパーハイブリッドウオーター」という著作物(甲第1号証)として文化庁に著作権登録第31435号として登録していた技術を見知って、これを冒認し、その発明について特許を受ける権利を全く承継していないままに、被請求人が平成16年8月31日に特許出願をなしたものであり、特許法第123条第1項第6号に該当し、無効とされるべきである。
なお、請求人の上記主張は、平成21年5月26日の口頭審理において補正されたものである(第1回口頭審理調書)。
また、上記請求人の主張である「平成15年2月1日に「スーパーハイブリッドウオーター」という著作物(甲第1号証)として文化庁に著作権登録第31435号として登録」は「平成18年4月17日に「スーパーハイブリッドウオーター」という著作物(甲第1号証)として文化庁に著作権登録第31435号として登録」と当審では扱う。
この無効理由1に関して、請求人は、甲第1号証たる「スーパーハイブリッドウオーター」という著作物には平成15年2月1日に最初に公表されたと主張し、また、平成21年5月26日の口頭審理において、甲第1号証著作物には、上記平成15年2月1日より後に公表されたものが含まれると陳述した(第1回口頭弁論調書)。
(2)無効理由2について
本件特許発明は、本件特許出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1?4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効されるべきものである。
この無効理由2に関し、請求人は、特に、本件特許発明は甲第1号証の83頁21行?87頁35行、88頁26?28行の記載に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができたと主張している(審判請求書7頁33行?9頁14行)。

2.被請求人の反論
被請求人は、請求人の上記主張に対して、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として次の書証をもって、答弁書、口頭審理陳述要領書により請求人の主張する上記無効理由に対して、本件発明の特許は上記無効理由によって無効とすることができないと主張する。

(証拠方法)
乙第1号証:「株式会社計画科学研究所の登記簿謄本」
乙第2号証:「ネオエナジーコーポレーション株式会社の登記簿謄本」
乙第3号証:「アサヒ飲料株式会社のホームページの2005年2月15日のニュースリリースの印刷物」
乙第4号証:「キリンビバレッジ株式会社のホームページの2005年1月27日のニュースリリースの印刷物」
乙第5号証:「国際出願の公開公報 WO/2007/077912」
乙第6号証:「SHGを用いた燃料(SHO)改質の総括」と題し、「工学博士 野村晴彦 2006/01/25」と記載のある印刷物
乙第7号証:「株式会社計画科学研究所」あての「財団法人岐阜県公衆衛生検査センター」が作成した平成17年12月6日の日付けの記載がある「検査報告書」
乙第8号証:「株式会社計画科学研究所」あての「財団法人岐阜県公衆衛生検査センター」が作成した平成17年12月6日の日付けの記載がある「検査報告書」
乙第9号証:平成21年5月26日付けの口頭審理陳述要領書に添付された「宮田武の陳述書」と写真

(1)無効理由1について
1)被請求人は、乙第1号証を提出し、本件特許発明に係る特許出願の出願日である平成16年8月31日において、平成16年12月1日設立の請求人である株式会社計画科学研究所は存在せず、また、被請求人が同社の取締役に就任したのは平成17年1月4日(同年2月10日登記)であるから、請求人の主張の信憑性に疑念をいだかざるを得ないこと、
2)被請求人は、乙第2号証を提出し、本件特許発明を含む一連の技術開発は、被請求人が代表取締役を務める審判外のネオエナジーコーポレーション株式会社において、被請求人及び審判外宮田忠氏を中心に行われてきたものであり、そこへ請求人代理人が参加したもので、被請求人は本件特許発明の真の発明者であって、しかも、本件特許発明に係る特許出願の打合わせが平成16年7月30日に行われ、その際、弁理士楠本高義が発明者及び特許出願人の確認を行ったところ、発明者及び特許出願人を被請求人のみとする旨の合意が形成されたから、被請求人が単独で特許出願を行うことに何等違法性がないこと、
3)被請求人は、乙第3、4号証を提出し、甲第1号証の78頁の写真に写っているペットボトル、アサヒ飲料株式会社の「SUPER H_(2)O」とキリンビバレッジ株式会社の「aminosupli」は、それぞれ、2005年(平成17年)3月30日、2005年(平成17年)2月8日に全国発売開始されたものであり、請求人が甲第1号証の最初の公表日という平成15年2月1日には未発売であって、甲第1号証を平成15年2月1日に公表することは不可能であること、
4)被請求人は、乙第5号証を提出し、甲第1号証の80頁以降の「スーパーハイブリットウオーターの概要と使用方法の詳細」と題する部分には、請求人代理人である三輪祐三が出願人の一人となっている特願2005-379941(2005年12月28日出願)を優先権の基礎とした国際特許出願(PCT/JP2006/326187)の国際公開公報(WO 2007/077912)に記載された内容と略同一であり、甲第1号証が平成15年2月1日に公表されていたとのであれば、自己の特許出願の内容を特許出願の約2年11月前に公開していたこととなること、
5)被請求人は、乙第6号証を提出し、甲第1号証の116?117頁に記載されている内容は、野村晴彦氏による2006年1月25日付け論文の内容に一致していること、
6)被請求人は、乙第7?9号証を提出し、甲第1号証の36頁以降の「SHWを飲用した鶏と卵」と題した検証結果に関し、検証場所は宮田武氏が営む養鶏場であって、平成17年2月頃(口頭審理陳述要領書に記載のとおり第1回口頭審理において補正された)から検証が行われ、甲第1号証の38頁の検証結果は平成17年12月6日発行の検査報告書に基づくものと思量されること、
を主張し、本件特許の出願日である平成16年8月31日前に甲第1号証は存在し得ず、被請求人が甲第1号証に記載された技術を見知って冒認することはできないと主張する。
(2)無効理由2について
被請求人は、上記(1)で述べたように、本件特許の出願日である平成16年8月31日前に甲第1号証は公表されておらず、甲第1号証に記載された内容に基づいて本件特許発明を容易になすことはできないと主張する。

IV.当審の判断
1.無効理由1について
請求人は、被請求人が甲第1号証の「スーパーハイブリッドウオーター」という著作物に記載の発明を見知って、これを冒認し、その発明について特許を受ける権利を全く承継していないままに平成16年8月31日に特許出願をなしたものと主張するが、甲第1号証の著作物は、請求人が口頭審理の場で陳述したとおり、最初の公表日という平成15年2月1日より後に公表されたものを含むものである。このことは、被請求人が主張している、甲第1号証の78頁の写真に写っているペットボトル、アサヒ飲料株式会社の「SUPER H_(2)O」とキリンビバレッジ株式会社の「aminosupli」は、それぞれ、2005年(平成17年)3月30日、2005年(平成17年)2月8日に全国発売開始されたものであり、請求人が甲第1号証の最初の公表日という平成15年2月1日には未発売であることから見ても明らかであるし、甲第1号証には、請求人代理人である三輪祐三が出願人の一人となっている特願2005-379941(2005年12月28日出願)を優先権の基礎とした国際特許出願(PCT/JP2006/326187)の国際公開公報(WO 2007/077912)に記載された内容と略同一の部分があることから見ても明らかである。
しかも、冒認したとされる平成15年2月1日には、請求人である株式会社計画科学研究所は存在せず、また、被請求人が同社の取締役に就任したのは平成17年1月4日であるから、被請求人が冒認することはできない。
さらに、請求人が主張する甲第1号証の83頁21行?87頁35行、88頁26?28行を含む甲1号証のいずれの箇所にも本件特許発明の特定事項である「入浴水を貯留する浴槽内に吸引口と排出口を開放した循環路と、前記入浴水を前記吸引口から前記排出口へ向けて送水するポンプと、純水を電気分解して発生する水素と酸素を前記循環路に供給するガス発生手段」は何等開示がなく、とても本件特許発明と甲第1号証に記載された発明が同じものであるとはいえない。
そうすると、被請求人が甲第1号証に記載された技術を見知って、これを冒認し、その発明について特許を受ける権利を全く承継していないままに平成16年8月31日に特許出願をなしたものであるとはいえない。

2.無効理由2について
上記無効理由1の検討のところで述べたように、甲第1号証は文化庁に登録された公表日である平成15年2月1日より後に公表された内容を含むものであるから、甲第1号証の最初の公表日は、平成15年2月1日でないことは明らかであり、甲第1号証が公表された時期は不明である。
よって、本件特許の出願日である平成16年8月31日前に甲第1号証は公表されているとはいえず、甲第1号証に記載された内容に基づいて本件特許発明を容易になすことはできない。

3.まとめ
してみれば、被請求人が、甲第1号証の記載に基づいて本件特許発明に係る特許出願を出願することはできないから、被請求人が甲第1号証に記載された発明を見知って、これを冒認し、その発明について特許を受ける権利を全く承継していないままに特許出願したとはいえない。
さらに、公知となった日時が不明であって、本件特許の出願日前に公知となったとはいえない甲第1号証に基づいて本件特許発明が容易になし得たものとすることもできない。

V.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1?4についての特許は、特許法123条第1項第1号、及び同条同項第6号の規定に該当するものとはできず、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-06-11 
結審通知日 2009-06-16 
審決日 2009-06-30 
出願番号 特願2004-251959(P2004-251959)
審決分類 P 1 113・ 152- Y (C02F)
P 1 113・ 121- Y (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 富永 正史  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 大黒 浩之

斉藤 信人
登録日 2008-04-25 
登録番号 特許第4114189号(P4114189)
発明の名称 水活性装置  
代理人 三輪 祐三  
代理人 中越 貴宣  
代理人 楠本 高義  

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