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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B |
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管理番号 | 1204163 |
審判番号 | 不服2006-12620 |
総通号数 | 119 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-11-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-06-19 |
確定日 | 2009-09-17 |
事件の表示 | 平成11年特許願第228112号「携帯通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月23日出願公開、特開2001- 53671〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年8月12日の出願であって、平成18年5月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年6月19日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。その後、当審において、平成21年4月27日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成21年7月7日付けで意見書が提出されたものである。 2.当審における拒絶理由通知 当審において平成21年4月27日付けで通知した拒絶理由通知書では、特許法第36条について次の事項を指摘している。 『本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 記 1.本願の発明の詳細な説明を参照しても、本願発明における「自端末の電源ONが要求されたときに前記検出された電源電池の出力電圧が前記第2の動作判定閾値よりも低い状態にある場合は低電圧警報の報知動作を行わずに自端末の電源をOFFする」点の技術上の意義を理解することができないので、本願の発明の詳細な説明は特許法施行規則第24条の2に規定する要件を満たしておらず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 この点を以下の1-1から1-4にて詳述する。 1-1.本願発明が解決しようとする課題は「低電圧警報して電源断した後でも、電源入り要求時に、電源入りが行なわれた旨をユーザに報知することができるとともに、電池電圧が低い場合での不安定な動作を防止することができる携帯通信端末を提供する」点にあり(第0011段落)、その効果として『低電圧警報後電源断した後での、「電源入らず」等のクレームを未然に防止することができるとともに、電池電圧が低い場合での不安定な動作を未然に防止することができる』点(第0026段落)及び「上記2つの電源ON許可閾値間を低電圧警報の報知を行なう閾値としているので、低電圧警報後電源断した後、ユーザが電源ON(入り)要求を行なえば、再度、低電圧警報の報知が行なわれるので、その時に電池残量が少ないことを認識することができ、それにより、電池交換あるいは電池の充電といった対応をすることができる」点(第0027段落)を挙げている。 上記第0026段落、第0027段落には、低電圧警報の報知を行う場合について記載されており、電池電圧が電源ON許可閾値電圧1より低いときに、低電圧警報の報知を行わないことの効果については記載されていない。 したがって、 「自端末の電源ONが要求されたときに前記検出された電源電池の出力電圧が前記第1の動作判定閾値よりも高い状態にある場合は通常の動作を行い、その後、前記第1の動作判定閾値よりも低く前記第2の動作判定閾値よりも高い状態になると低電圧警報の報知動作を行なった後に自端末の電源をOFF」することの技術上の意義及び、 「自端末の電源ONが要求されたときに前記検出された電源電池の出力電圧が前記第1の動作判定閾値よりも低く前記第2の動作判定閾値よりも高い状態にある場合は低電圧警報の報知動作を行なった後に自端末の電源をOFF」することの技術上の意義が理解できるように、発明の詳細な説明が記載されている。 しかし、 「自端末の電源ONが要求されたときに前記検出された電源電池の出力電圧が前記第2の動作判定閾値よりも低い状態にある場合は低電圧警報の報知動作を行なわずに自端末の電源をOFFする」することの技術上の意義が理解できるようには、発明の詳細な説明は記載されていない。 1-2.第0011段落に記載の課題を解決し、第0026段落、第0027段落に記載の効果を得るためには、図2及び図3における電源ON許可閾値電圧2よりも低い電圧が検出された時に警報を報知し、かつ、電源をOFFにするだけで事足りる。 むしろ、図2及び図3において、電源ON許可閾値電圧1よりも電池電圧が低下してしまうと、低電圧警報が報知されることなく電源OFFとなってしまうために、依然として「電源入らず」というクレームを防止できないことになる。 1-3.さらには、本願出願前公知の技術と比較した場合の本願発明特有の効果も不明である。 特開昭61-6932号公報には、「制御キー部16の電源キー17を押すことにより電源開閉スイッチ素子12をオンさせる(ステップS1)と、電圧検出回路11において電源1の電圧を検出し(ステップS2)、その結果、当該電圧が設定レベル以下に低下しているときにはステップS3において表示手段19を作動させ、その旨を表示する一方、ステップS4において、制御手段14の指令に基づき電源開閉スイッチ素子12をオフさせる」(第2頁右下欄第17行から第3頁左上欄第5行参照)とあり、この公報に記載された発明によっても、低電圧警報後電源断した後に、ユーザが電源ONをしたときに再度低電圧警報の報知が行われることは明らかであり、本願発明と同等の効果を奏するといえる。 この公報には上記設定レベルよりも低い閾値については何も言及がないが、電源電圧がさらに下がり、表示手段を駆動することができなくなれば、低電圧警報を表示することなく電源OFFとなることも明らかである。あるいは、電源電圧が極端に低ければそもそも電源を入れようとしても入らないという状態になる。 してみると、本願発明において、わざわざ電源ON許可閾値電圧2よりも低い電源ON許可閾値電圧1を設けて、電源ON許可閾値電圧1よりも電池電圧が低下した場合に低電圧警報を報知せずに電源OFFする(ステップ203)という状態Cを設けることによって、上記公報に記載された発明に比べて何が改善されているのかを理解することができない。 1-4.上記1-1から1-3のとおりであるから、電源ON許可閾値電圧1及びステップ203の作用効果を理解することができず、よって、電源ON許可閾値電圧1(請求項の記載によれば「第2の動作判定閾値」)を設け、電源電圧がそれを下回ったときに低電圧警報を報知せずに電源OFFするという状態Cを設けることを含む発明の技術上の意義を理解できない。 2.図2のステップS203における「電源OFF」の動作と、ステップS206における「電源OFF」の動作とが、具体的にどのような動作であるのかを理解することができない。 この点について第0024段落を参照すると、ステップS206については「自らの電源をOFFしている」とあるので携帯通信端末への給電を断つ動作であると解釈できる一方、ステップS203については「電池電圧が低すぎるので電源が入らないように見せている」とあるので、本当は電源は入っているのだが使用者には電源が入らないように見せている、つまり、携帯通信端末への給電は断たれていないと解釈できる。 しかしながら、ステップS203の動作はステップS206の動作よりも電源電圧が低い状態なので、上述の解釈は不合理であるとも思え、S203とS206が実際にはどういう動作をしているのか、理解することができない。 』 3.審判請求人の意見 審判請求人は、平成21年7月7日付け意見書において、以下の意見を述べている。 『(2)本願発明が特許されるべき理由 (a)本願発明の説明 これに対して、出願人は、本願の発明の要旨を説明すると共に、以下の通り意見を申し述べます。 本願請求項1に記載の発明は、 「自端末の電源電池の出力電圧を検出する検出手段と、 第1の動作判定閾値と、前記第1の動作判定閾値より低く設定された第2の動作判定閾値とを記憶する記憶手段と、 自端末の電源ONが要求されたときに前記検出された電源電池の出力電圧が前記第1の動作判定閾値よりも高い状態にある場合は通常の動作を行い、 その後、前記第1の動作判定閾値よりも低く前記第2の動作判定閾値よりも高い状態になると低電圧警報の報知動作を行った後に自端末をOFFし、 自端末の電源ONが要求されたときに前記検出された電源電池の出力電圧が前記第2の動作判定閾値よりも低い状態にある場合は低電圧警報の報知動作を行わずに自端末の電源をOFFする動作制御手段と を具備することを特徴とする携帯通信端末」にあります。 即ち、請求項1に係る発明によれば、低電圧警報して電源OFFした後に、ユーザによる電源ON要求が行われた場合、第2の動作判定閾値以上の出力電圧を確保できない場合には、低電圧警報の報知を行わずに電源をOFFします(以下、単に動作Aと記載します)。これにより、段落番号「0026」に記載されているように、出力電圧が低い場合での不安定な動作を未然に防止することができます。 一方、低電圧警報して電源OFFした後に、ユーザによる電源ON要求が行われた場合、第1の動作判定閾値を下回るものの第2の動作判定閾値以上の出力電圧を確保できるときには、低電圧警報を報知し電源をOFFします(以下、単に動作Bと記載します)。これにより、段落番号「0026」に記載されているように、出力電圧が低い場合での不安定な動作を未然に防止することができ、更に、従来の、低電圧警報後電源断した後での「電源入らず」等のクレームを未然に防止することができます。 (b)拒絶理由通知書1-1に関する指摘について これに対し、審判官殿は拒絶理由通知書の1-1節にて、「『自端末の電源ONが要求されたときに前記検出された電源電池の出力電圧が前記第2の動作判定閾値よりも低い状態にある場合は低電圧警報の報知動作を行わずに自端末の電源をOFFする』ことの技術上の意義が理解できるようには、発明の詳細な説明は記載されていない」と述べられております。 しかしながら、段落番号「0011」及び「0026」に記載されておりますように、動作Aを行う技術的な意義は、出力電圧が低い場合での不安定な動作を未然に防止することができる、という効果を奏するところにあります。 仮に、動作Aを省いて、第1の動作判定閾値を下回る全ての出力電圧で動作Bを行うとすると、低電圧警報を行うことが出来ないほど出力電圧が低い場合であっても、動作Bを行わなければなりません。動作Bにある低電圧警報を行うことが、消費電流を要することは明らかです。従って、段落番号「0010」に記載されておりますように、出力電圧が低い状態で消費電流を要する処理を行うことで、端末自体が不安定な動作となってしまう不都合が発生することとなります。そこで、本願発明においては動作Aを行うことで、第2の動作判定閾値を下回るほど出力電圧が低い場合には、低電圧警報を省いて電源をOFFしています。これにより、端末の不安定な動作を未然に防止しています。 このように、本願の明細書には、審判官殿が指摘しておられます動作Aの技術上の意義が記載されているものと思料いたします。 (c)拒絶理由通知書1-2に関する指摘について また、審判官殿は、「第0011段落に記載の課題を解決し、第0026段落、第0027段落に記載の効果を得るためには、図2及び図3における電源ON許可閾値電圧2よりも低い電圧が検出された時に警報を報知し、かつ、電源をOFFにするだけで事足りる」と述べられております。 しかしながら、(b)の項で述べましたように、動作Aを省いて、第1の動作判定閾値を下回る全ての出力電圧で動作Bを行うとすると、依然として第2の動作判定閾値を下回るほど出力電圧が低い場合での、端末自体の不安定な動作を未然に防止することができません。本願の発明においては、電池の出力電圧が第2の動作判定閾値よりも低い状態にある場合は動作Bではなく動作Aを行うことで、出力電圧が低い場合での不安定な動作を未然に防止しています。 従って、段落番号「0011」及び段落番号「0026」に記載された「電池電圧が低い場合での不安定な動作を未然に防止することができる」という課題の解決及び効果の発揮は、動作Aを含めた発明の動作によって初めて行われるものであると思料いたします。 (d)拒絶理由通知書1-3に関する指摘について また、審判官殿は、「本願出願前公知の技術と比較した場合の本願発明特有の効果も不明である」、「本願発明において、わざわざ電源ON許可閾値電圧2よりも低い電圧ON許可閾値電圧1を設けて、電源ON許可閾値電圧1よりも電池電圧が低下した場合に低電圧警報を報知せずに電源OFFする(ステップ203)という状態Cを設けることによって、上記公報に記載された発明に比べて何が改善されているのかを理解することができない」と述べられております。 しかしながら、特開昭61-6932号公報に記載された発明においては、依然として第2の動作判定閾値を下回るほど出力電圧が低い場合での、端末自体の不安定な動作を未然に防止することができません。 審判官殿が上記公報を元にご指摘されている「電源電圧がさらに下がり、表示手段を駆動することができなくなれば、低電圧警報を表示することなく電源OFFとなる」という状態は、低電圧警報を行うことが出来ないほど電池の出力電圧が低い場合において、低電圧警報を伴う動作Bを試みている状態であります。この状態では、段落番号「0010」に記載されておりますように、出力電圧が低い状態で消費電流を要する処理を行っているために、端末自体が不安定な動作となっている不都合が発生しています。つまり、審判官殿がご指摘されている「電源電圧がさらに下がり、表示手段を駆動することができなくなれば、低電圧警報を表示することなく電源OFFとなる」という状態は、表示手段の駆動に伴う消費電流が原因となり、端末自体が不安定な動作となることで生じた電源OFFであり、正に本願の発明が回避しようとしている状態であります。 本願の発明では、動作Aを行うことによって、上記公報に記載された発明を実施した際には回避することの出来ない端末自体の不安定な動作を、未然に防止することができるという独自の効果を奏するものであると思料いたします。 (e)拒絶理由通知書1-4に関する指摘について 上記(b)?(d)に述べたように、審判官殿が指摘しておられます「電源ON許可閾値電圧1(請求項の記載によれば『第2の動作判定閾値』)を設け、電源電圧がそれを下回ったときに低電圧警報を報知せずに電源OFFするという状態Cを設けることを含む発明の技術上の意義」は明確になったものと思料いたします。 (f)拒絶理由通知書2に関する指摘について また、審判官殿は「S203とS206が実際にはどういう動作をしているのか、理解することができない」と述べられております。 S203に関わる一連の動作は、段落番号「0019」及び「0020」に記載されている通り、「電源ON許可閾値電圧1より低いと判定した場合(ステップS202YES)、自らの電源をOFFする(ステップS203)。」という動作であります。 一方、S206に関わる一連の動作は図2に記載されている通り、S205の動作を行った後に行われる動作であります。この動作は段落番号「0021」及び「0022」に記載されている通り、「電源ON許可閾値電圧2より低いと判定された場合(ステップS204YES)、表示部(LCD)17に低電圧警報を表示し、且つアラーム音を鳴動させ、利用者に電池電圧が低電圧であることを報知する(ステップS205)。その後、さらに数秒から数十秒アラームを鳴動させた後、自らの電源をOFFする(ステップS206)。」という動作であります。即ち、S203は低電圧警報を行わずになされる電源OFF動作であり、S206は低電圧警報を行った後になされる電源OFF動作であります。 従って、図2のステップS203における「電源OFF」の動作と、ステップS206における「電源OFF」の動作とが、具体的にどのような動作であるかは、明細書にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものであると思料いたします。 (g)特許法第36条第4項に関する指摘についてまとめ 以上(b)?(e)に述べたように、本願発明の動作の技術上の意義は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがこれを理解するために明確且つ十分に記載されているものと思料いたします。 また、以上(f)に述べたように、本願発明の動作は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確且つ十分に記載されているものと思料いたします。』 4.当審の判断 4-1.拒絶理由における指摘事項1-1及び1-2について 上記意見書(2)(b)及び(c)によれば、審判請求人は、明細書の第0011段落及び第0026段落を根拠として、「動作A」すなわち図2におけるステップ203及び図3における状態Cを設ける意義を「端末の不安定な動作を未然に防止」することであると説明している。 しかしながら、第0026段落は平成17年10月31日付けの手続補正書によって補正され、端末の不安定な動作に関する記載はなくなっている。 一方、第0011段落を参照すると、「電池電圧が低い場合での不安定な動作を防止することができる」と書いてあるのみであり、具体的にどのような不安定な動作を防止できるのかについては記載がない。 そこで、明細書及び図面の他の部分で、本願発明の「不安定な動作」に関する記載箇所を参照する。 明細書第0001段落には、「発明は、電池の容量が少なくなり電源電圧が低くなり安定した動作ができなくなる前に低電圧警報を報知してから電源をOFFする機能を有する携帯通信端末に関し、特に、電源電池の出力電圧に応じた端末電源のON/OFF動作の制御方法の改良に関する」との記載がある。この記載によれば、本願発明は、電源電圧が低くなり安定した動作ができなくなる前に警報を報知してから電源をOFFするものである。 つまり、第0001段落の記載から、電源電圧の低下による不安定な動作が、図2のステップ205及び206すなわち図3の状態B(意見書の「動作B」に該当)によって防止されていることはいえるが、不安定な動作が状態Cによって防止されているとはいえない。 上記以外に本願発明の不安定な動作について述べている箇所はない。 従来技術の不安定な動作については、第0003段落、第0004段落、第0008段落及び第0010段落に、電源電圧の低下によって不安定な動作が生じること、特に第0008段落及び第0010段落には位置登録など大きな電流を要する場合には動作が不安定になることについて記載があるが、不安定な動作が具体的にどのような動作であるのかについての具体的な説明はない。 結局、本願の明細書及び図面からは、電源電圧が低下した状態で大電流が要求されると動作が不安定になること、そのような不安定な動作を回避するために本願発明は状態Bを設けていることが記載されているのみで、状態Cの技術的意義については何も述べていない。 してみると、本願発明において状態Cが設けられている技術的意義は明らかではない。 したがって、上記拒絶理由の指摘事項1-1及び1-2は依然として解消していない。 4-2.拒絶理由における指摘事項1-3について 上記意見書(2)(d)にある『つまり、審判官殿がご指摘されている「電源電圧がさらに下がり、表示手段を駆動することができなくなれば、低電圧警報を表示することなく電源OFFとなる」という状態は、表示手段の駆動に伴う消費電流が原因となり、端末自体が不安定な動作となることで生じた電源OFFであり、正に本願の発明が回避しようとしている状態であります』との説明は、以下の点で採用できない。 本願の明細書及び図面には、表示手段の駆動に伴う消費電流が原因で端末自体が不安定な動作となることについて記載がなく、端末自体が不安定な動作となることで電源OFFが生じることについても記載がなく、かつ、端末自体が不安定な動作となることで生じた電源OFFが、正に本願の発明が回避しようとしている状態である、ということについても記載がない。 さらに、上記説明は、本願発明が、電源がOFFになる状態を回避するために、電源をOFFするのであるということを述べたものであり、内容としても不合理である。 したがって、上記説明は採用できない。 してみると、本願発明の状態Cの動作と、特開昭61-6932号公報に記載された発明において電源が入らなくなるほど電源電圧が低下した場合の動作との技術的な違いは、依然として明らかではない。 4-3.拒絶理由における指摘事項1-4について 以上4-1及び4-2に述べたとおりであるので、本願発明の状態Cの技術的意義は依然として不明確である。 状態Cの技術的意義が不明であれば、電源ON許可閾値電圧1(請求項の記載によれば「第2の動作判定閾値」)をどのようにして定めるべきかの指標も得られないので、本願の発明の詳細な説明は、発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 4-4.拒絶理由における指摘事項2について 上記意見書(2)(f)において、審判請求人は、S203の動作は第0019段落及び第0020段落に記載されているとおり、自らの電源をOFFする動作であると説明している。 しかしながら、上記拒絶理由における指摘は、第0024段落にある「状態Cとは、ステップS203の状態を示し、この場合、電池電圧が低すぎるので電源が入らないように見せている」(下線は合議体)との記載についてのものである。 第0024段落の当該記載は依然として存在し、かつ、第0020段落の記載と一致していないため、ステップS203の「電源OFF」という動作が、第0020段落のように電源を実際にOFFする動作を指すのか、それとも第0024段落のように、実際は電源をOFFするのではないが電源をOFFしたように見せる動作なのかが、依然として不明である。 したがって、ステップS203の動作が特定できないから、本願の発明の詳細な説明は、発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願は、特許法施行規則第24条の2に規定する要件を満たしておらず、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないとして当審において平成21年4月27日付けで通知した拒絶理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-07-22 |
結審通知日 | 2009-07-24 |
審決日 | 2009-08-04 |
出願番号 | 特願平11-228112 |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(H04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 聡史 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
丸山 高政 近藤 聡 |
発明の名称 | 携帯通信端末 |
代理人 | 堀口 浩 |
代理人 | 堀口 浩 |