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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03B
管理番号 1204177
審判番号 不服2006-28439  
総通号数 119 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-21 
確定日 2009-09-17 
事件の表示 特願2002-556304「プロジェクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月18日国際公開、WO02/56110〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は、平成14年1月15日(特許法41条に基づく優先権主張:優先日 平成13年1月15日、平成13年5月8日、優先権主張の基礎出願 特願2001-6187号、特願2001-137158号)を国際出願日とする特願2002-556304号の出願であって、平成18年8月15日付けで拒絶理由が通知され、同年10月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月14日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年12月21日付けで本件審判請求がされるとともに、平成19年1月16日付けで手続補正がなされたものである。
そして、当審においてこれを審理した結果、平成21年4月28日付けで拒絶理由を通知したところ、同年7月8日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで明細書について手続補正がされたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年7月8日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「プロジェクタであって、
光源装置を含む照明光学系と、
前記照明光学系からの光を画像情報に応じて変調する電気光学装置と、
前記電気光学装置で得られる変調光を投写する投写光学系と、
前記照明光学系から前記投写光学系までの光路に配置される複数の光学部品を搭載するための基枠と、
前記照明光学系から前記投写光学系までの光路に配置されるすべての光学部品を収納する筐体と、を備え、
前記複数の光学部品のうちの少なくとも1つは、
射出させる光の偏光状態を制御するための有機材料を含む偏光制御素子と、
0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を有し、前記偏光制御素子が貼り付けられた透光性部材と、を備える偏光制御部品であり、
前記基枠と前記筐体とは、金属製であり、
前記透光性部材と前記基枠と前記筐体とは、熱的に接続されており、
前記筐体の外面には、放射率を高める膜が形成されており、
前記光源装置と前記基枠との間には、断熱部材が配置されており、
前記光源装置と前記基枠とは、熱的に遮断されていることを特徴とするプロジェクタ。」

第2 当審の判断
1 本願発明に対する特許要件の判断の基準日
本願は、特許法第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う出願(優先日 平成13年1月15日、平成13年5月8日、優先権主張の基礎出願 特願2001-6187号、特願2001-137158号)である。そこで、本願発明に対する特許要件の判断の基準日について検討する。
本願発明には、「0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を有し、前記偏光制御素子が貼り付けられた透光性部材」という発明特定事項が記載されている。
しかし、優先権主張の基礎出願である特願2001-6187号及び特願2001-137158号には、前記「偏光制御素子が貼り付けられた透光性部材」の「熱伝導率」の下限を「0.8W/(m・K)」とすることは記載されていないから、「0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を有し、前記偏光制御素子が貼り付けられた透光性部材」であるという本願発明の発明特定事項は、優先権主張の基礎出願である特願2001-113193号及び特願2001-244499号のいずれにも記載されていない。
以上のとおり、本願発明は優先権主張の基礎出願である特願2001-6187号及び特願2001-137158号に記載されたものではないから、本願発明に対する特許要件の判断の基準日は、優先日ではなく、本願の現実の出願日である平成14年1月15日である。
(なお、本願発明の「前記筐体の外面には、放射率を高める膜が形成されて」いることという発明特定事項は、優先権主張の基礎出願である特願2001-6187号に記載されていない。)

2 引用刊行物の記載事項
当審で通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-288812号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のアないしテの記載が図面とともにある。

ア 「【請求項1】 光源部から出射された光束を光学的に処理して画像情報に対応した光学像を形成し、この光学像を投写光学系を介して投写面上に拡大投写するための投写型表示装置用の光学ユニットであって、
前記光源部から出射された光束を複数色の光束に分離する色分離光学系と、分離された各色の光束を画像情報に基づいて変調する複数のライトバルブと、該ライトバルブを介して変調された各色の変調光束を合成する色合成光学系と、該色合成光学系によって合成された変調光束を投写面に向けて拡大投写する投写光学系とを有し、
前記光源部、前記色分離光学系、前記ライトバルブ、前記色合成光学系、および前記投写光学系は、マグネシウム合金からなる成形品を用いたライトガイドに支持されていることを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】 請求項1において、前記ライトガイドには、前記色合成光学系および前記投写光学系を搭載するためのヘッド部が一体に構成されていることを特徴とする光学ユニット。
【請求項3】 請求項2において、前記ヘッド部には、前記色合成光学系を構成するプリズムを位置決め固定するための段差を備える光学部品載置部が構成されていることを特徴とする光学ユニット。
【請求項4】 請求項1または2において、前記ライトガイドには、前記色分離光学系を構成する光学部品または前記ライトバルブを位置決め固定するための光学部品位置決め部が構成されていることを特徴とする光学ユニット。」

イ 「【請求項8】 請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記ヘッド部および溝状の光学部品位置決め部が前記マグネシウム合金からなる成形品により形成されるとともに、前記ライトガイドと一体化されていることを特徴とする光学ユニット。」

ウ 「【請求項16】 請求項1ないし4のいずれかに規定する光学ユニットと、前記光源部等を駆動するための電源ユニットと、該電源ユニットおよび前記光学ユニットを収納する外装ケースとを備えて構成され、この外装ケースおよび前記ヘッド部は前記光学ユニットと同様のマグネシウム合金からなる成形品を用いて形成され、かつ、これらの外装ケース、ヘッド部および光学ユニットは一体的に形成されていることを特徴とする投写型表示装置。」

エ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光源からの光束を3色光束に分解し、これらの各色光束を液晶パネルから構成されるライトバルブを通して映像情報に対応させて変調し、変調した後の各色の変調光束を再合成して、投写光学系を介してスクリーンなどの上に拡大投写する投写型表示装置、およびそれに用いる光学ユニットに関するものである。さらに詳しくは、このような光学ユニットに用いる光学部品の実装構造に関するものである。」

オ 「【0008】そこで、本発明の課題は、このような点に着目して、使用部材の材質を改良することにより、軽量化および放熱性能の向上を図れるとともに、高信頼性化を図ることのできる光学ユニットおよび投写型表示装置を提供することにある。」

カ 「【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明では、光源部から出射された光束を光学的に処理して画像情報に対応した光学像を形成し、それを投写光学系を介して投写面上に拡大投写するための投写型表示装置用の光学ユニットであって、前記光源部から出射された光束を複数色の光束に分離する色分離光学系と、分離された各色の光束を画像情報に基づいて変調する複数のライトバルブと、該ライトバルブを介して変調された各色の変調光束を合成する色合成光学系と、該色合成光学系によって合成された変調光束を投写面に向けて拡大投写する投写光学系とを有し、前記光源部、前記色分離光学系、前記ライトバルブ、前記色合成光学系、および前記投写光学系は、マグネシウム合金からなる成形品を用いたライトガイドに支持されていることを特徴とする。
【0011】本発明におけるマグネシウム合金からなる成形品とは、マグネシウム単独の素材からなるものに限定されることなく、マグネシウム合金からなる成形品をも含む意味である。
【0012】本発明において、光学ユニットのライトガイドに用いたマグネシウム合金からなる成形品は、樹脂からなる成形品に比較して、比重が小さく、かつ、放熱性および熱伝導率が高い。(以下略)」

キ 「【0014】また、ライトガイドを肉薄で構成しても十分な強度を有するので、肉薄にした分、光学ユニットのさらなる軽量化を図ることができる。さらに、ライトガイドを肉薄にすると、その分、放熱性が高まることに加えて、投写型表示装置内に空間的な余裕ができるので、外装ケースの通気口に配置する吸気ファンの前後に十分な空間を確保して冷却用空気の取り入れをスムーズにすることができるなど、構造面からも冷却効率を高めることができる。それ故、内部の温度上昇を抑えることができ、偏光変換素子などといった光学素子の耐熱面でのマージンを実質的に大きく確保できるので、信頼性が向上する。(以下略)」

ク 「【0054】1.第1の実施の形態
(全体構成)図1(A)、(B)は、それぞれ本形態の投写型表示装置の正面図、背面図である。図2(A)、(B)は、それぞれ本形態の投写型表示装置の平面図、底面図である。図3(A)、(B)は、それぞれ本形態の投写型表示装置の右側面図、左側面図である。
【0055】これらの図において、本形態に係る投写型表示装置1は、直方体形状をした樹脂製の外装ケース2を有している。外装ケース2は、基本的には、アッパーケース3と、ロアーケース4と、装置後面を規定しているリアケース5から構成されている。装置前面の中央からは投写レンズユニット6の先端側の部分が突出している。」

ケ 「【0068】(外装ケース内部の構造)図4には、投写型表示装置1の外装ケース2の内部における各構成部分の配置を示してある。この図に示すように、外装ケース2の内部において、その装置前方に向かって右端側には電源ユニット7が配置されている。これよりも装置右側に隣接した位置には、光源ランプユニット8や投写レンズユニット6を搭載した光学ユニット10が配置されている。
【0069】図5は、本形態の光学ユニット10の外観を示す斜視図である。
【0070】図5に示すように、本形態の光学ユニット10は、投写レンズユニット6以外の光学素子が収納され、上下のライトガイド901、902からなるライトガイド100と、投写レンズユニット6とから大略構成されている。ライトガイド100は、投写レンズユニット6と一体化され、固定ねじによりロアーケース4に固定される。」

コ 「【0083】(光学ユニット)図7?11を参照して、光学ユニット10に組み込まれている光学系について説明する。なお、図8?11は、それぞれ図7のA-A線、B-B線、C-C線、D-D線における断面図である。本例の光学系は、照明光学系923と、この照明光学系923から出射される光束を、赤、緑、青の各色光束R、G、Bに分離する色分離光学系924と、各色光束を変調するライトバルブとしての3枚の液晶ライトバルブ925R、925G、925Bと、変調された色光束を再合成する色合成光学系としてのプリズムユニット910と、合成された光束をスクリーン上に拡大投写する投写レンズユニット6から構成される。
【0084】照明光学系923は、光源ランプユニット8(光源部)と、インテグレータレンズ921、922と、偏光変換素子920と、集光レンズ930と、反射ミラー931とを備えている。
【0085】光源ランプユニット8は、図12に示すように、光源ランプ801と、これを内蔵しているランプハウジング802から構成されている。光源ランプ801は、メタルハライドランプ等のランプ本体805と、リフレクタ806から構成されており、ランプ本体805からの光を光軸に沿ってインテグレータレンズ921の側に向けて出射する。ランプ本体805としては、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0086】ランプハウジング802は、光軸方向の前面が開口となっている。ランプハウジング802の側面部分には冷却用空気の通過孔808、809、およびリフレクタ806の背面側に形成された通過孔(図示せず。)が形成されている。本例では、このランプハウジング802と光源ランプ801が一体に形成され、ランプ交換時には、これらを一体のままで着脱する。
【0087】インテグレータレンズ921、922は、マトリクス状に配置された複数の矩形レンズの集合体からなり、光源ランプ801から出射された光束を複数の部分光束に分割する。偏光変換素子920は、インテグレータレンズ921、922によって分割された部分光束の各々を、一種類の偏光成分の光に変換する光学素子である。インテグレータレンズ921、922によって分割され、偏光変換素子920によって一種類の偏光成分の光に変換された部分光束のそれぞれは、集光レンズ930によって、ライトバルブ925R、925G、925Bの面に重畳される。反射ミラー931は、照明光学系からの出射光の中心光軸を装置前方向に向けて直角に折り曲げるためのものである。
【0088】色分離光学系924は、赤緑反射ダイクロックミラー941と、緑反射ダイクロイックミラー942と、反射ミラー943から構成される。まず、赤緑反射ダイクロイックミラー941において、照明光学系923から出射された光束に含まれている赤色光束Rおよび緑色光束Gが直角に反射されて、緑反射ダイクロイックミラー942の側に向かう。青色光束Bはこのミラー941を通過して、後方の反射ミラー943で直角に反射されて、青色光束の出射部からプリズムユニット910の側に出射される。ミラー941において反射された赤および緑の光束R、Gのうち、緑反射ダイクロイックミラー942において、緑色光束Gのみが直角に反射されて、緑色光束の出射部から色合成光学系の側に出射される。このミラー942を通過した赤色光束Rは、赤色光束の出射部から導光系927の側に出射される。導光系927は、入射側レンズ974と、入射側反射ミラー971と、出射側反射ミラー972と、これらの間に配置した中間レンズ973と、液晶パネル925Bの手前側に配置した集光レンズ953とで構成されている。
【0089】色分離光学系924の青色光束Bおよび緑色光束Gの出射部の出射側には、それぞれ集光レンズ951、952が配置されている。各出射部から出射した各色光束は、これらの集光レンズ951、952に入射して平行化される。
【0090】このように平行化された青色および緑色の光束B、Gは液晶ライトバルブ925B、925Gに入射して変調され、各色光に対応した画像情報(映像情報)が付加される。すなわち、これらのライトバルブは、不図示の駆動手段によって画像情報に応じてスイッチング制御されて、これにより、ここを通過する各色光の変調が行われる。このような駆動手段は公知の手段をそのまま使用することができる。一方、赤色光束Rは、導光系927を介して対応する液晶ライトバルブ925Rに導かれて、ここにおいて、同様に画像情報に応じて変調が施される。本例の液晶ライトバルブは、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として用いたものを使用できる。なお、図8、図10中、9251は、液晶ライトバルブ925R、925G、925Bに信号を供給するためのフレキシブルプリント基板である。
【0091】また、液晶ライトバルブ925R、925G、925Bは、プリズムユニット910の各端面に対して対向するように配置され、その前後にはガラス板に貼り付けた合成樹脂製の偏光板(図示せず。)が配置される。
【0092】次に、各液晶ライトバルブ925R、G、Bを通って変調された各色光束は、色合成光学系に入射され、ここで合成される。本例では、前述のようにダイクロイックプリズムからなるプリズムユニット910を用いて色合成光学系を構成している。ここで合成された光束は、投写レンズユニット6を介して、所定の位置にあるスクリーン上に拡大投写される。
【0093】このように本形態では、光源ランプ805から出射された光束は、ライトガイド100内で反射ミラー931によって反射され、ライトガイド100のL字形の平面形状に沿う大回りのL字形の光路を進行して色分離光学系924およびプリズムユニット910に到達する。従って、各光学部品が狭い領域内に配置されながらも、光路を最大限長く設定してある。それ故、F値の小さなレンズを用いながら、かつ、インテグレータレンズ921、922や偏光変換素子920の配置位置を十分に確保しながら、光源ランプユニット8から出射された光束を平行光束として液晶ライトバルブ925R、925G、925Bに到達させることができる。
【0094】図13(A)は本形態の光学ユニットを構成する下ライトガイド901の斜視図である。図14は、この下ライトガイド901に用いたマグネシウム合金からなる成形品の部分だけの斜視図であり、図15は、この下ライトガイド901においてマグネシウム合金からなる成形品と一体成形してある樹脂部分だけを抜き出した斜視図である。
【0095】これらの図13(A)、14、15に示すように、下ライトガイド901の本体部分はマグネシウム合金からなる成形品900から構成されている。この下ライトガイド901には、光源ランプユニット8、証明光学珪923(審決注:「照明光学系923」の誤記と認める。)、色分離光学系924、導光系927、液晶ライトバルブ925R,925G,925B、プリズムユニット910を配置するための空間800、9240、9250が構成され、それぞれの空間には、上記の光学系を構成するための各種光学素子を位置決めするための光学部品位置決め部190(図13(A)では偏光変換素子920を位置決め固定する部分だけに符号を付してある。)が構成されている。また、光源ランプユニット8を配置するための空間800は、光源ランプユニット8の上面をマグネシウム合金からなる成形品900が覆うように構成されている。
【0096】一方、光学部品位置決め部190は、マグネシウムのダイキャスト成形で形成できないような構造、あるいは高い精度が求められることから樹脂で形成してある。光学部品位置決め部190には、樹脂部分199の対向面同士に上下方向に延びる固定溝198が形成され、照明光学系、色分離光学系、導光系液晶ライトバルブ(審決注:「導光系、液晶ライトバルブ」の誤記と認める。)、および色合成光学系を構成する光学部品のうち、平板状の光学部品または平面部(フランジ部)を備える光学部品については、すべて光学部品位置決め部190の固定溝198を利用して固定されている。すなわち、これら平板状の光学部品は固定溝198内に差し込んだ後、接着剤などで固定される。(以下略)」

サ 「【0099】さらに、図13(A)、図14に示すように、下ライトガイド901には、合成光学系と投写光学系とを固定するためのヘッド部903も一体に構成されている。ヘッド部903は、装置の幅方向に向けて垂直な姿勢で延びる垂直壁91と、この垂直壁91の下端から水平に延びる底壁92とから基本的に構成されている。底壁92の表面には色合成光学系の光学部品載置部として、段差198Aを備える薄い樹脂部分199(図15参照)が底壁92と一体に構成され、この光学部品載置部190A上に、プリズムユニット910を構成する各プリズム片が段差198Aによって位置決めされた状態で固定される。なお、この樹脂部分199も、先に述べた光学部品位置決め部190を構成する樹脂部分199(図9参照)と同様、アウトサート形式により形成されている。従って、光学部品載置部190を構成する樹脂部分199は、樹脂通し孔909を介してマグネシウム合金からなる成形品900を挟むようにしてマグネシウム合金からなる成形品900に固着されている。
【0100】垂直壁91の中央部分には、プリズムユニット910からの出射光が通過するための矩形の開口91bが形成されている。この垂直壁91には投写レンズユニット6の基端側(フランジ部分)を固定するためのねじ孔91dが4か所に形成されている。従って、垂直壁91の前面側の表面には投写レンズユニット6の基端側をねじ止めだけで固定でき、その後面側において底壁92の上面にはプリズムユニット910を直接、固定できる。
【0101】このように、下ライトガイド901には、ヘッド部903が予め一体成形されており、ライトガイド901とヘッド部91との間には組合せガタや公差のばらつきがないので、その垂直壁91を挟むようにして投写レンズユニット6とプリズムユニット910とを固定するだけで相互の位置合わせを容易に行うことができる。それ故、組立て作業が容易であるとともに、光軸調整や複雑な位置決め機構や調整機構を設けなくてもよいので、コストの低減を図ることができる。しかも、これらの一体性にも優れているので、組み立て後に衝撃力等が作用しても、相互の位置ずれが発生するおそれが極めて少ないという利点がある。」

シ 「【0103】以上説明したように、本実施形態では、ライトガイド901を構成するにあたって樹脂からなる成形品やアルミニウム合金からなる成形品ではなくてマグネシウム合金からなる成形品を用いている。このマグネシウム合金からなる成形品は、樹脂からなる成形品に比較して比重が小さい。たとえば、樹脂からなる成形品の比重は約2.7とアルミニウム合金からなる成形品と同等であるのに対して、マグネシウム合金からなる成形品の比重は約1.8であるため、光学ユニットを軽量化することができる。
【0104】また、ライトガイド901を約1.5mm程度にまで肉薄にしても、マグネシウム合金からなる成形品900は、光源ランプ805、色合成光学系を構成するプリズムユニット910、または電源ユニット7からの発熱、および光学部品の重量に耐えるので、光軸を精度よく保つことができる。それ故、ライトガイド901を肉薄にできる分、さらに光学ユニット10の軽量化を図ることができ、携帯や取り扱いが容易となる。
【0105】さらに、マグネシウム合金からなる成形品900は材料面からみて放熱性が高く、かつ、肉薄にできるという点からも内部からの放熱性も高めることができる。従って、内部の温度上昇を抑えることができる。たとえば、樹脂製であるため熱に弱い偏光変換素子を例にあげれば、樹脂製のライトガイドを用いた従来構造に比較して、マグネシウム合金からなる成形品900を用いた本形態の構造によれば、偏光変換素子の定常状態における温度を10℃?20℃も下げることができる。それ故、偏光変換素子などといった光学素子の耐熱面でのマージンを大きく確保できるので、信頼性が向上する。逆にいえば、同等の寿命で良ければ、より小型の光学素子を従来と同じ使用条件で用いることができることとなり、小型化しながら高輝度の表示に対応できる。
【0106】また、同等の寿命で良くて同じサイズの光学素子を用いるとすれば、その分、照度の向上を図ることができるといえる。」

ス 「【0110】また、図11に示すように、プリズムユニット910は下ライトガイド901のヘッド部903において底壁92の上に配置されるが、この底壁92の上面に一体に構成されている光学部品位置決め部190Aがプリズム固定板として機能する。このため、本実形態では、別体のプリズム固定板を用いる必要がない。(以下略)」

セ 「【0113】2.第2の実施形態
図16には本発明の第2実施形態が示されており、この実施形態は、前記第1実施形態がライトガイドのみをマグネシウム合金からなる成形品で構成したものであるのに対し、ライトガイドとともに光学部品位置決め部もマグネシウム合金からなる成形品で構成したものである。
【0114】この場合、マグネシウムの粉末を樹脂と混練し、成形後に熱または熱と圧力によって樹脂部分を飛散させて精密に成形する成形方法により光学部品位置決め部190をも含めて一体成形加工させてもよい。
【0115】なお、この実施形態および次に述べる第3実施形態において、前記第1実施形態と同様の構造、使用部材には同一符号を付すとともに、その詳細な説明は省略または簡略化する。」

ソ 「【0118】以下、このような観点も含めて詳述する。
【0119】本第2実施形態では、光学部品位置決め部190’もマグネシウム合金からなる成形品としたので、位置決め部190’の形態を前記樹脂製の位置決め部190に対して変えてある。
【0120】すなわち、図16、17に詳細を示すように、まず、平板状でない光学部品、つまり、集光レンズ951?953、中間レンズ973を位置決めする部位A-190’は、高さ寸法がHの本体部199’と、高さ寸法がhのガイド部198’と、レンズ951等の下端部を支持する受け部195とを有している。このガイド部198’は本体部199’から外側に突出するとともにレンズ951等の両側面部を挟み込む溝状に形成され、その高さ寸法hは、1/2<H<3/4とされているが、好ましくは、本体部199’の高さ寸法Hの1/2?2/3程度である。そして、本体部の高さ寸法Hはレンズの直径とほぼ同じ寸法に形成されている。また、受け部195もレンズ951等の両側面部を挟み込むように形成されており、本体部199’においてガイド部198’の反対側には補強および湯流れ性改善用のリブ196が形成されている。
【0121】ここで、ガイド部198’の高さ寸法を低くしたのは、レンズ951等をガイドできればよく、また、そのレンズ951等は円盤状のためガイド部198’の高さ寸法を必ずしもレンズ951等の直径と同じとする必要はなく、また、成形加工が容易となるようにしたためである。
【0122】光学部品位置決め部190’のうち、平板状の光学部品、つまり、インテグレータレンズ921、922、偏光変換素子920、反射ミラー941?943、971、972用の位置決め部Bー190’は、図18、19に示すように3点固定構造となっている。
【0123】すなわち、下ライトガイド901の底面に当該下ライトガイド901と一体形成されミラー941等の下部を支持する溝状の受け部982と、下ライトガイド901の側面に当該下ライトガイド901と一体形成され反射ミラー941等の上部かつ両平面を支持する上部支持部983とで構成され、この上部支持部983は上下方向にずれて配置された2つの位置決め部材983A、983Bで形成されている。また、受け部982、上部支持部983において反射ミラー941等と当接する二面のうち一面は取り付け基準面984となっており、この取り付け基準面984の抜き勾配は例えば0°?0.008°となっている。また、この取り付け基準面984とは別の2面の抜き勾配は1?20°となっている。このように、受け部982、支持部983に勾配を設けることにより、成形後の収縮による型への喰い付きを防止することができる。
【0124】そして、このような受け部982および上部支持部983おける取り付け基準面984とは別の他の2面と反射ミラー941等との間には、図20に示すように、ミラー941等をガタつきなく支持するために、スポンジ、テープおよび樹脂等の弾性部材でなる緩衝材985が配置されている。
【0125】このような第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる他、緩衝材985によってミラーやレンズ類に加わる衝撃を緩衝でき、また、樹脂部分がないので、マグネシウム合金からなる成形品は樹脂からなる成形品に比較して比重が小さくなり、かつ、放熱性の面および強度の面で優れているという特長を最大限活かすことができるという効果がある。
【0126】また、樹脂部分がない分、放熱性の高いマグネシウム合金からなる成形品の露出面積が広いので、この点からも放熱性の面で有利である。さらに樹脂成形部分がないので、樹脂成形後のバリ取りなどの二次加工を完全に省くことができ、低コスト化に有利である。」

タ 「【0128】3.第3の実施形態
図21、22には本発明の第3実施形態が示されており、この実施形態では、ライトガイド、ヘッド部、光学部品位置決め部の他に外装ケースもマグネシウム合金からなる成形品とし、外装ケースとライトガイドとを一体化したものである。それ以外の部分については前述した実施形態と同様である。
【0129】本実施形態の投写型表示装置1’では、ロアケース4’を含む外装ケース2’をマグネシウム合金からなる成形品で形成してあり、このような外装ケース2’は面積も広いので、湯(マグネシウム溶融金属)が隅々まで充分にゆきわたるように形成されている。(以下略)」

チ 「【0139】このような第3実施形態によれば、前記第1、2実施形態の効果と同様の効果を得ることができる他、外装ケース2’もマグネシウム合金からなる成形品となっているので、第1、2実施形態の投写型表示装置よりも一段と軽量化、放熱性に優れたものとなり、また、強度の面でも優れたものとなるという効果がある。(以下略)」

ツ 「【0145】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る光学ユニットおよび投写型表示装置では、使用部材の材質を変えることにより、つまり、光学ユニットのライトガイドをマグネシウム合金からなる成形品とすることにより、このマグネシウムは樹脂からなる成形品に比較して比重が小さいので、軽量化を図ることができ、また、樹脂からなる成形品に比較して肉薄でも高い強度を有するため、その薄肉化によって光学ユニットを軽量化することができ、放熱性や冷却効率を高めることができる。(以下略)」

テ 「【0146】特に、外装ケースもマグネシウム合金からなる成形品で構成した場合、装置全体を一段と軽量化、小型化することができるとともに、光学ユニットの放熱板の機能を併せ持つことになり、光学素子類の発熱を抑えて信頼性の向上、または照度アップを可能とする。(以下略)」

3 引用例1に記載の発明の認定
引用例1の第1実施形態(上記記載事項クないしスを参照。)、第2実施形態(上記記載事項セないしソを参照。)、第3実施形態(上記記載事項タないしチを参照。)のうち、外装ケースもマグネシウム合金からなる成形品で構成されているのは第3実施形態のみであるから、上記記載事項テの「特に、外装ケースもマグネシウム合金からなる成形品で構成した場合」とは、上記第3実施形態の場合を指すことは明らかである。
すると、引用例1の上記記載事項アないしテから、引用例1には次の発明が記載されていると認めることができる。

「光学ユニットと、光源ランプユニット(光源部)等を駆動するための電源ユニットと、前記電源ユニットおよび前記光学ユニットを収納する外装ケースとを備えた投写型表示装置において、
前記光学ユニットは、照明光学系と、前記照明光学系から出射される光束を、赤、緑、青の各色光束R、G、Bに分離する色分離光学系と、前記各色光束を画像情報に応じて変調する3枚の液晶ライトバルブと、前記液晶ライトバルブによって変調された各色の変調光束を再合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって合成された変調光束を拡大投写する投写光学系から構成され、
前記照明光学系は、前記光源ランプユニット(光源部)と、インテグレータレンズと、一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子と、集光レンズと、反射ミラーとを備え、
前記光源ランプユニット(光源部)は、光源ランプと、これを内蔵しているランプハウジングから構成され、
前記色分離光学系は、赤緑反射ダイクロックミラーと、緑反射ダイクロイックミラーと、反射ミラーから構成され、
前記液晶ライトバルブの前後には、ガラス板に貼り付けた合成樹脂製の偏光板が配置され、
前記色合成光学系は、ダイクロイックプリズムからなるプリズムユニットを用いて構成され、
前記投写光学系は、投写レンズユニットであり、
前記照明光学系、前記色分離光学系、前記液晶ライトバルブ、および前記色合成光学系を構成する光学部品のうち、平板状の光学部品または平面部(フランジ部)を備える光学部品はすべて、放熱性及び熱伝導率が高いマグネシウム合金からなる下ライトガイドに一体化されたマグネシウム合金からなる光学部品位置決め部に固定され、
前記色合成光学系及び前記投写光学系は、前記下ライトガイドに一体化されたマグネシウム合金からなるヘッド部に固定され、
前記ライトガイド、前記ヘッド部、前記光学部品位置決め部の他に前記外装ケースもマグネシウム合金からなる成形品とし、前記外装ケースと前記ライトガイドとを一体化して、前記外装ケースも前記光学ユニットの放熱板の機能を併せ持つことになり、前記光学部品の発熱を抑えて信頼性の向上、または照度アップを可能とした
投写型表示装置。」(以下「引用発明」という。)

4 本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
(1)引用発明の「投写型表示装置」は、本願発明の「プロジェクタ」に相当する。

(2)引用発明の「光源ランプユニット(光源部)」は、本願発明の「光源装置」に相当する。
また、引用発明の「光源ランプユニット(光源部)」「を備え」た「照明光学系」は、本願発明の「光源装置を含む照明光学系」に相当する。

(3)引用発明の「前記照明光学系から出射される光束」が「色分離光学系」によって「分離された」「赤、緑、青の各色光束」「を画像情報に応じて変調する3枚の液晶ライトバルブ」は、本願発明の「前記照明光学系からの光を画像情報に応じて変調する電気光学装置」に相当する。
また、引用発明の「前記液晶ライトバルブによって変調された各色の変調光束」「を拡大投写する投写光学系」は、本願発明の「前記電気光学装置で得られる変調光を投写する投写光学系」に相当する。

(4)引用発明の「一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子」、「照明光学系」の「反射ミラー」、「赤緑反射ダイクロックミラー」、「緑反射ダイクロイックミラー」、「色分離光学系」の「反射ミラー」、「合成樹脂製の偏光板」、「液晶ライトバルブ」は、本願発明の「前記照明光学系から前記投写光学系までの光路に配置される複数の光学部品」に相当する。
そして、引用発明の「一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子」、「照明光学系」の「反射ミラー」、「赤緑反射ダイクロックミラー」、「緑反射ダイクロイックミラー」、「色分離光学系」の「反射ミラー」、「合成樹脂製の偏光板」、「液晶ライトバルブ」は、いずれも、「前記照明光学系、前記色分離光学系、前記液晶ライトバルブ、および前記色合成光学系を構成する光学部品のうち、平板状の光学部品または平面部(フランジ部)を備える光学部品」であり、引用発明の「前記照明光学系、前記色分離光学系、前記液晶ライトバルブ、および前記色合成光学系を構成する光学部品のうち、平板状の光学部品または平面部(フランジ部)を備える光学部品」は「すべて、放熱性及び熱伝導率が高いマグネシウム合金からなる下ライトガイドに一体化されたマグネシウム合金からなる光学部品位置決め部に固定され」るから、引用発明の「前記照明光学系、前記色分離光学系、前記液晶ライトバルブ、および前記色合成光学系を構成する光学部品のうち、平板状の光学部品または平面部(フランジ部)を備える光学部品」を「固定」する「マグネシウム合金からなる光学部品位置決め部」を「一体化」した「マグネシウム合金からなる下ライトガイド」は、本願発明の「前記照明光学系から前記投写光学系までの光路に配置される複数の光学部品を搭載するための基枠」に相当する。

(5)引用発明の「インテグレータレンズ」、「一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子」、「集光レンズ」、「照明光学系」の「反射ミラー」、「赤緑反射ダイクロックミラー」、「緑反射ダイクロイックミラー」、「色分離光学系」の「反射ミラー」、「合成樹脂製の偏光板」、「液晶ライトバルブ」、「色合成光学系」の「ダイクロイックプリズム」、「投写レンズ」は、本願発明の「前記照明光学系から前記投写光学系までの光路に配置されるすべての光学部品」に相当する。
また、引用発明の「照明光学系は、」「インテグレータレンズと、一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子と、集光レンズと、反射ミラーとを備え」、「前記色分離光学系は、赤緑反射ダイクロックミラーと、緑反射ダイクロイックミラーと、反射ミラーから構成され」、「液晶ライトバルブの前後には、ガラス板に貼り付けた合成樹脂製の偏光板が配置され」、「色合成光学系は、ダイクロイックプリズムからなるプリズムユニットを用いて構成され」、「投写光学系は、投写レンズユニットであり」、引用発明の「光学ユニットは、照明光学系と、前記照明光学系から出射される光束を、赤、緑、青の各色光束R、G、Bに分離する色分離光学系と、前記各色光束を画像情報に応じて変調する3枚の液晶ライトバルブと、前記液晶ライトバルブによって変調された各色の変調光束を再合成する色合成光学系と、前記色合成光学系によって合成された変調光束を拡大投写する投写光学系から構成され」るから、引用発明の「インテグレータレンズ」、「一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子」、「集光レンズ」、「照明光学系」の「反射ミラー」、「赤緑反射ダイクロックミラー」、「緑反射ダイクロイックミラー」、「色分離光学系」の「反射ミラー」、「合成樹脂製の偏光板」、「液晶ライトバルブ」、「色合成光学系」の「ダイクロイックプリズム」、「投写レンズ」は、いずれも、引用発明の「光学ユニット」を構成する光学部品である。したがって、引用発明の「光学ユニットを収納する外装ケース」は、本願発明の「前記照明光学系から前記投写光学系までの光路に配置されるすべての光学部品を収納する筐体」に相当する。

(6)引用発明の「マグネシウム合金からなる下ライトガイド」及び「外装ケースもマグネシウム合金からなる成形品と」することは、「前記基枠と前記筐体とは、金属製であ」ることに相当する。
また、引用発明では、(ア)「下ライトガイド」、「光学部品位置決め部」、及び、「外装ケース」は、いずれも、「放熱性及び熱伝導率が高いマグネシウム合金」からなり、(イ)「前記外装ケースと前記ライトガイドとを一体化して」おり、(ウ)「外装ケースも前記光学ユニットの放熱板の機能を併せ持つことになり、前記光学部品の発熱を抑え」ている。そして、引用発明において「下ライトガイド」と「外装ケース」とが熱的に接続されていなければ、たとえ前記(ア)(イ)の構成を採用したとしても、引用発明の「一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子」、「合成樹脂製の偏光板」、「液晶ライトバルブ」等の光学部品からの熱を「外装ケース」に放散させることができないから、前記(ア)ないし(ウ)に照らし、引用発明の「下ライトガイド」と「外装ケース」が熱的に接続されていることは明らかである。したがって、引用発明の「下ライトガイド」と「外装ケース」が熱的に接続されていることと、本願発明の「前記透光性部材と前記基枠と前記筐体とは、熱的に接続されて」いることとは、「前記基枠と前記筐体とは、熱的に接続されて」いる点で一致する。

(7)液晶ライトバルブにおける液晶材料が有機材料であること、及び、液晶ライトバルブが偏光を制御するものであることは、本願の出願時における技術常識である。
また、上記(4)で述べたとおり、引用発明の「一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子」、「照明光学系」の「反射ミラー」、「赤緑反射ダイクロックミラー」、「緑反射ダイクロイックミラー」、「色分離光学系」の「反射ミラー」、「合成樹脂製の偏光板」、「液晶ライトバルブ」は、本願発明の「前記照明光学系から前記投写光学系までの光路に配置される複数の光学部品」に相当する。
すると、引用発明の「一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子」、「合成樹脂製の偏光板」、「液晶ライトバルブ」は、いずれも、本願発明の「前記複数の光学部品のうちの少なくとも1つは、」「射出させる光の偏光状態を制御するための有機材料を含む偏光制御素子」「を備える偏光制御部品であ」ることに相当する。

(8)すると、本願発明と引用発明とは、

「プロジェクタであって、
光源装置を含む照明光学系と、
前記照明光学系からの光を画像情報に応じて変調する電気光学装置と、
前記電気光学装置で得られる変調光を投写する投写光学系と、
前記照明光学系から前記投写光学系までの光路に配置される複数の光学部品を搭載するための基枠と、
前記照明光学系から前記投写光学系までの光路に配置されるすべての光学部品を収納する筐体と、を備え、
前記複数の光学部品のうちの少なくとも1つは、
射出させる光の偏光状態を制御するための有機材料を含む偏光制御素子を備える偏光制御部品であり、
前記基枠と前記筐体とは、金属製であり、
前記基枠と前記筐体とは、熱的に接続されていることを特徴とするプロジェクタ。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1〉
本願発明の「偏光制御部品」は「0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を有し、前記偏光制御素子が貼り付けられた透光性部材」を備えているのに対し、引用発明の「一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子」、「合成樹脂製の偏光板」、「液晶ライトバルブ」にはそのような限定がない点。

〈相違点2〉
本願発明では「前記透光性部材と前記基枠と前記筐体とは、熱的に接続されて」いるのに対し、引用発明では「下ライトガイド」と「外装ケース」が熱的に接続されている点。

〈相違点3〉
本願発明の「前記筐体の外面には、放射率を高める膜が形成されて」いるのに対し、引用発明の「外装ケース」にはそのような限定がない点。

〈相違点4〉
本願発明の「前記光源装置と前記基枠との間には、断熱部材が配置されており」、「前記光源装置と前記基枠とは、熱的に遮断されている」のに対し、引用発明には「光源ランプユニット(光源部)」と「下ライトガイド」との間に断熱部材を設けるとの限定がない点。

5 相違点についての判断
(1)相違点1,2について
ア 液晶プロジェクタの分野において、液晶プロジェクタに使用される偏光板、一種類の偏光光に変換する偏光変換素子、及び、液晶ライトバルブの過熱防止のために、偏光板、一種類の偏光光に変換する偏光変換素子、及び、液晶ライトバルブに、サファイア等の0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を有する透光性部材を適用することは、本願の出願時において当業者に周知の技術的事項である(一種類の偏光光に変換する偏光変換素子にサファイア等の熱伝導率の高い透光性部材を適用する点については、例えば、特開2000-47032号公報(段落【0001】?【0002】、【0009】、図1等)、特開2001-318359号公報(請求項7、段落【0001】?【0004】、【0008】、【0012】?【0013】、図3?5,7等)、特開2002-6281号公報(【0001】、【0015】?【0018】、段落【0031】?【0043】、【0046】?【0053】、図2,4?8等)を参照。また、偏光板にサファイア等の熱伝導率の高い透光性部材を適用する点については、例えば、特開2000-206507号公報(段落【0001】、【0009】、【0029】?【0030】、【0043】?【0057】、図3?6等)、特開2000-338478号公報(【0001】、【0012】、段落【0029】?【0031】、図3等)、特開平11-231277号公報(段落【0001】、【0011】?【0013】、【0029】?【0034】、図1?6等)を参照。さらに、液晶ライトバルブにサファイア等の熱伝導率の高い透光性部材を適用する点については、例えば、特開平11-231277号公報(段落【0001】、【0011】?【0013】、【0029】?【0034】、図1?6等)、特開2000-89364号公報(段落【0069】?【0094】、図8?11等)や、特開2000-147472号公報(段落【0001】、【0003】、【0012】?【0013】、図3?4等)を参照。)。
そして、引用発明の「投写型表示装置」は「液晶ライトバルブ」を備えた「投写型表示装置」であるから、引用発明と上記周知技術とは液晶プロジェクタという技術分野において共通する。
すると、上記周知技術に基づいて、引用発明の「一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子」、「合成樹脂製の偏光板」、「液晶ライトバルブ」に、サファイア等の0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を有する透光性部材を適用することは、当業者にとって容易に想到し得る。

イ そして、引用発明では、「前記ライトガイド、前記ヘッド部、前記光学部品位置決め部の他に前記外装ケースもマグネシウム合金からなる成形品とし、前記外装ケースと前記ライトガイドとを一体化して、前記外装ケースも前記光学ユニットの放熱板の機能を併せ持つことになり、前記光学部品の発熱を抑えて」いるから、引用発明では「一種類の偏光成分の光に変換する樹脂製の偏光変換素子」、「合成樹脂製の偏光板」、「液晶ライトバルブ」等の光学部品からの熱を、「光学部品位置決め部」、「ライトガイド」、「外装ケース」の順に逃がすようにしていることは明らかであり、また、上記アの周知技術では、偏光変換素子、偏光板、液晶ライトバルブからの熱をサファイア等の0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を有する透光性部材に逃がすようにしていることから、上記アで述べたように引用発明に上記周知技術を適用するに当たり、サファイア等の0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を有する透光性部材を「下ライトガイドに一体化された」「光学部品位置決め部」に固定して、サファイア等の0.8W/(m・K)以上の熱伝導率を有する透光性部材と「下ライトガイド」とを熱的に接続すること、すなわち、本願発明の「前記透光性部材と前記基枠」とを「熱的に接続」することは、当業者が通常行う設計的事項である。

ウ したがって、引用発明に上記相違点1,2に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点3について
電子機器から生じる熱を外部に放散させるために、前記電子機器を収容するケースの外面に放射率を高める膜を形成することは、本願の出願時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、特開平4-84496号公報、実願昭57-174919号(実開昭59-78675号)のマイクロフィルム(第11頁第15行?第12頁第5行等)を参照。)。
そして、引用発明の「投写型表示装置」が電子機器であることは技術常識であるから、引用発明と上記周知技術とは電子機器という技術分野において共通する。
すると、上記周知技術に基づいて、引用発明の「光学ユニットの放熱板の機能を併せ持つ」「外装ケース」の外面に放射率を高める膜を形成することは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、引用発明1に上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)相違点4について
液晶プロジェクタの分野において、光源部を載置する部材と光学部品を載置する部材との間に断熱部材を介在させて、両者を熱的に遮断することは、本願の出願時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、特開平7-152009号公報(段落【0016】?【0019】、図1等)、特開平4-191726号公報(第3頁左上欄第19行?右上欄第8行、第1図(a)、第2図等)を参照。)。
そして、引用発明の「投写型表示装置」は「液晶ライトバルブ」を備えた「投写型表示装置」であるから、引用発明と上記周知技術とは液晶プロジェクタという技術分野において共通する。
すると、上記周知技術に基づいて、引用発明の「光源ランプユニット」の「ランプハウジング」と「下ライトガイド」との間に断熱部材を介在させて、両者を熱的に遮断することは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、引用発明に上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。

6 本願発明の進歩性の判断
以上検討したとおり、引用発明に上記相違点1ないし4に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。
また、本願発明の効果も、引用例1に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
したがって、本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 なお、上記2ないし6では、上記1で述べたとおり、本願発明の進歩性の判断の基準日を優先日ではなく本願の現実の出願日としたが、仮に、本願発明の進歩性の判断の基準日を優先日としても、同様の議論が当てはまる(ただし、上記5において周知例として挙げた特開2001-318359号公報及び特開2002-6281号公報を除くとともに、上記2ないし6における「本願の出願前」、「本願の出願時」を、それぞれ、「本願の優先日前」、「本願の優先日当時」と読み替える。)。

8 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-17 
結審通知日 2009-07-21 
審決日 2009-08-06 
出願番号 特願2002-556304(P2002-556304)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 小松 徹三
日夏 貴史
発明の名称 プロジェクタ  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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