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審決分類 |
審判 一部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) F16L 審判 一部無効 4項(134条6項)独立特許用件 F16L 審判 一部無効 2項進歩性 F16L |
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管理番号 | 1205411 |
審判番号 | 無効2006-80100 |
総通号数 | 120 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-12-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-05-26 |
確定日 | 2009-07-10 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3470804号「管路における不平均力の支持装置」の特許無効審判事件についてされた平成18年11月28日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成18年(行ケ)第10556号平成19年10月31日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3470804号の請求項1、3、7に係る発明についての特許を無効とする。 特許第3470804号の請求項2に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その4分の1を請求人の負担とし、4分の3を被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第3470804号についての手続の概要は、以下のとおりである。 平成13年 2月20日 特許出願 平成15年 9月12日 特許権の設定登録(特許第3470804号、請求項の数7) 平成18年 5月26日 無効審判請求 平成18年 8月18日 答弁書及び訂正請求書提出(*) 平成18年10月27日 口頭審理 口頭審理陳述要領書(請求人)提出 口頭審理陳述要領書(被請求人)提出 平成18年11月28日 審決(訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。) 平成18年12月27日 知的財産高等裁判所出訴(平成18年(行ケ)第10556号) 平成19年10月31日 知的財産高等裁判所判決言渡(審決を取り消す。) 平成20年 3月13日 最高裁判所決定(平成20年(行ヒ)第42号、上告審として受理しない(上告受理申立却下)。) 平成20年 4月10日 無効理由通知(発送日:同月15日) 平成20年 5月14日 意見書及び訂正請求書提出 平成20年 6月30日 弁駁書提出 (*)当該訂正の請求は、特許法第134条の2第4項の規定により取り下げられたものとみなされる。 第2 当事者の主張 1.審判請求書及び口頭審理陳述要領書における請求人の主張の概要 請求人は、審判請求書において、請求項1、3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、請求項2に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基づいて、請求項7に係る発明は、甲第1号証及び甲第3号証に係る発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの特許は、無効とすべきである旨主張し、証拠方法として甲第1?3号証を提出している。 また、平成18年10月27日付け口頭審理陳述要領書において、特に、請求項7に係る発明について、周知技術として実開昭49-134324号公報、実公昭58-31029号公報を提示し、請求項7に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。 [証拠方法] 甲第1号証:実願平3-111210号(実開平5-54686号)のCD-ROM 甲第2号証:特開昭62-184210号公報 甲第3号証:特開平11-218276号公報 2.答弁書及び口頭審理陳述要領書における被請求人の主張の概要 被請求人は、答弁書及び平成18年10月27日付け口頭審理陳述要領書において、本件の請求項1ないし3、7に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に係る発明とは相違し、甲第1号証ないし甲第3号証に係る発明を組み合わせても容易に発明することができたものではない旨主張している。 第3 当審における無効理由通知 当審において通知した無効理由は、概略、次のとおりである。 1.無効理由1 本件特許発明1、3、7は、いずれも、刊行物1記載の発明、刊行物2に記載の技術事項、及び、周知の技術事項(特開平7-280147号公報、特開平11-218276号公報参照。)に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件特許発明1、3、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条第1項第2号に該当するものであるから、無効とされるべきものである。 刊行物1:実願平3-111210号(実開平5-54686号)のCD-ROM(請求人の提示した「甲第1号証」。) 刊行物2:実公平3-51582号公報 2.無効理由2 本件特許発明2に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないものであり、同法第123条第1項第4号に該当するものであるから、無効とされるべきものである。 (1)特許法第36条第6項第1号違反について 本件特許発明2は、不平均力にもとづく管体の管軸方向への動き阻止を課題とするものであり、発明の詳細な説明には、フレームを孔部の径方向に二つ割りにし、一対の分割管支持部を設け、下側の分割管支持部における孔部の内周部に、複数のエッジ部を、周方向に沿う姿勢に設定し、周方向に一定間隔で設けた構成が開示されている(段落【0058】-【0059】参照。)。 しかし、本件特許発明2には、単に、「フレーム」及び「エッジ部」としか規定されておらず、発明の課題を解決するための「フレーム」及び「エッジ部」における上記事項が特定されていない。 したがって、本件特許発明2は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えてなされたものであり、発明の詳細な説明に記載したものではない。 (2)特許法第36条第6項第2号違反について 「エッジ部」がフレームに対し、どのように設けられているのか明確に記載されていない。そのため、エッジ部を設けることの技術的内容が明確でなく、不平均力にもとづく管体の管軸方向への動きが阻止されることとの関連が不明である。 また、エッジ部を有する「フレーム」の構造(フレームが二つ割りにされる構造)が明確に記載されていない。そのため、フレームの孔部への管体の挿通は、管体を管軸方向に移動させ孔部に挿通させる手法が採用されるものと解するのが相当であるが、該手法によりフレームの孔部に管体を挿通させたとき、管軸方向への動きを阻止する目的で設けられたエッジ部に悪影響を及ぼすことは明らかであり、そして、不平均力にもとづく管体の管軸方向への動きを阻止することにも悪影響を及ぼすことも明らかである。 したがって、請求項2の記載は、その技術的内容が明確でなく、発明を明確に表現したものとはいえない。 第4 無効理由通知後の当事者の主張 1.請求人の主張の概要 平成20年5月14日付け訂正請求の後に提出された平成20年6月30日付け弁駁書(以下、「弁駁書」という。)において、請求人は、請求項1、3、7に係る発明は、平成20年4月10日付け無効理由通知(以下、「無効理由通知」という。)で示された刊行物1、刊行物2及び周知技術(特開平7-280147号公報、特開平11-218276号公報(甲第3号証))に基づいて、当業者が容易になし得たものである旨主張している。 そして、請求項2に係る発明については、無効理由通知で示された刊行物1、刊行物2及び周知技術に加え、新たに、証拠方法として周知技術である甲第4号証を追加提示して、刊行物1、刊行物2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明ができたものである旨主張している。 請求項2に係る発明については、さらに、「明細書及び図面には、エッジ部が一方の分割管支持部のみに設けられ、くさび体が他方の分割管支持部のみに設けられる態様の構成しか記載されていないにも係わらず、訂正請求後の請求項2では、上記態様を超えた構成が記載されている」(弁駁書第6頁第33-36行)として、当該請求項に係る発明の特許が、特許法第36条第6項第1号違反の無効理由がある旨主張している。また、「「エッジ部」がフレームに対し、どの様に設けられているのか依然として明確でなく」(弁駁書第7頁第19-20行)として、当該請求項に係る発明の特許が、特許法第36条第6項第2号違反の無効理由もある旨主張している。 [証拠方法] 甲第4号証:実公平4-10470号公報 2.被請求人の主張の概要 無効理由通知に対して、被請求人は、平成20年5月14日付け意見書(以下、「意見書」という。)で、阻害要因が存在するために、刊行物2記載の技術事項を刊行物1記載の発明に適用することはできない旨主張している。 具体的には、「刊行物2における支持装置は、従来溶接により行っていた構成を改良するものであることを考えますと、管体が管軸方向に沿って移動しないようにフレーム(固定リング2)に対して強固に支持する態様であるもの」(意見書第6頁第2-4行)であるのに対し、刊行物1の管体を支持する装置は、「管体の管軸方向に沿った移動を許容することが明らか」(意見書第6頁第18-19行)なものであるため、「管体の移動を許容する態様で構成された不平均力の支持装置において、あえて刊行物2記載の管体の移動を許容しない構成を採用すべき理由はありません。刊行物1に記載のバンドで管体をあてがう構成では、元来、大きな不平均力が作用した時に、管体の管軸方向に沿った移動を強固に受け止めるという作用を奏することは原理的にありません。以上のように、刊行物2記載の技術事項を刊行物1記載の発明に適用するに、阻害要因が存在し、これら刊行物1,2に基づいて、当業者が容易に相当(審決注:「想到」の誤記である。)し得るものではないと考えられます。」(意見書第6頁第20-27行)と主張している。 さらに、被請求人は、意見書において、「くさび等の係止部材を押しボルトにより押圧することは従来周知の事項であるとし、特開平7-280147号公報、特開平11-218276号公報を具体的に挙げています。しかし、これらの先行技術は、いずれも管継手に関するものであり、本件特許発明や刊行物1のような不平均力の支持装置(ベースコンクリート等の支持部に対して管体を支持する装置)とは関係ありません。従って、仮に、押しボルトによる押圧する構成が管継手の分野で周知であったとしても、管継手ではない刊行物1の技術分野に適用することは容易ではないと思料します。」(意見書第6頁第28-34行)と主張している。 第5 訂正請求について 1.訂正請求の内容 当審が通知した無効理由に対して、平成20年5月14日付けで被請求人が請求した訂正請求の訂正事項は、次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1中の「前記フレームに管体を固定する固定機構」を、「前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1中の「くさび体を設けてあり、このくさび体を、」を、「くさび体を設けてあり、このくさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、前記くさび体を、」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1中の「各くさび体の姿勢を設定してある」を、「各くさび体の姿勢を設定してあり、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、が一体に設けて構成されている」と訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2中の「前記フレームに管体を固定する固定機構」を、「前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構」と訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項2中の「エッジ部を前記フレームに設け」を、「エッジ部を、前記管体の周方向に沿うように前記フレームに設け」と訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項2中の「くさび体を設けてあり、このくさび体を、」を、「くさび体を設けてあり、このくさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、前記くさび体を、」と訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項2中の「各くさび体の姿勢を設定してある」を、「各くさび体の姿勢を設定してあり、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、により構成されると共に、前記管支持部は径方向に二つ割りにされた一対の分割管支持部として構成され、前記取付座部と、前記一対の分割管支持部の一方と、が一体に設けて構成されている」と訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項3中の「前記フレームに管体を固定する固定機構」を、「前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構」と訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項3中の「くさび体を設けてあると共に、」と「前記フレームは、」の間に、「前記くさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、」を挿入する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項3中の「前記管体を支持する管体支持部と」と「管軸方向」との間に、「、」を挿入する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項6中の「前記管体を支持する管体支持部と」と「管軸方向」との間に、「、」を挿入する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項7中の「前記フレームに管体を固定する固定機構」を、「前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構」と訂正する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項7中の「前記管体を支持する管体支持部と」と「管軸方向」との間に、「、」を挿入する。 (14)訂正事項14 発明の詳細な説明の段落【0009】中、「[構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあり、このくさび体を、前記管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してある。」を、「[構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあり、このくさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、前記くさび体を、前記管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してあり、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、が一体に設けて構成されている。」と訂正する。 (15)訂正事項15 発明の詳細な説明の段落【0013】中、「[構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記固定機構に、前記管体を挟んで前記管体の径方向一方側から前記管体の外面を受け止めるエッジ部を前記フレームに設け、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に前記管体の径方向他方側から押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあり、このくさび体を、前記管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してある。」を、「[構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記固定機構に、前記管体を挟んで前記管体の径方向一方側から前記管体の外面を受け止めるエッジ部を、前記管体の周方向に沿うように前記フレームに設け、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に前記管体の径方向他方側から押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあり、このくさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、このくさび体を、前記管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してあり、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、により構成されると共に、前記管支持部は径方向に二つ割りにされた一対の分割管支持部として構成され、前記取付座部と、前記一対の分割管支持部の一方と、が一体に設けて構成されている。」と訂正する。 (16)訂正事項16 発明の詳細な説明の段落【0017】中、「[構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあると共に、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている。」を、「[構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあると共に、前記くさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている。」と訂正する。 (17)訂正事項17 発明の詳細な説明の段落【0029】中、「前記管体を支持する管体支持部と」と「管軸方向」との間に「、」を挿入する。 (18)訂正事項18 発明の詳細な説明の段落【0033】中、「[構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な移動阻止体を設け、前記移動阻止体は、前記管体の外面に押圧される一対のエッジ部を、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態に設けて構成してあると共に、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている。」を、「[構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な移動阻止体を設け、前記移動阻止体は、前記管体の外面に押圧される一対のエッジ部を、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態に設けて構成してあると共に、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている。」と訂正する。 2.訂正の適否 (1)訂正事項1?3について 訂正事項1は、図1?4の記載に基づいて、固定機構の設置箇所がフレームであることを限定するもの、訂正事項2は、明細書の段落【0046】、及び図1?2の記載に基づいて、くさび体を押圧するための構成を限定するもの、訂正事項3は、明細書の段落【0042】、及び図1、3の記載に基づいて、フレームの取付座部と管支持部とが一体に構成されることを限定するものであって、それぞれ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)訂正事項4?7について 訂正事項4は、図1?5、7の記載に基づいて、固定機構の設置箇所がフレームであることを限定するもの、訂正事項5は、明細書の段落【0058】、【0059】、及び図5?7の記載に基づいて、エッジ部の設置態様を限定するもの、訂正事項6は、明細書の段落【0046】、【0062】、及び図2、7の記載に基づいて、くさび体の押圧するための構成を限定するもの、訂正事項7は、明細書の段落【0057】?【0059】及び図5の記載に基づいて、フレームが取付座部と二つ割りにされた一対の分割管支持部とにより構成され、取付座部と一方の分割管支持部とが一体に構成されることを限定するものであって、それぞれ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (3)訂正事項8?10について 訂正事項8は、図1?5、7の記載に基づいて、固定機構の設置箇所がフレームであることを限定するもの、訂正事項9は、明細書の段落【0046】、【0062】及び図2、7の記載に基づいて、フレームの構成を限定するものであって、それぞれ、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項10は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (4)訂正事項11について 訂正事項11は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (5)訂正事項12?13について 訂正事項12は、図1?4の記載に基づいて、固定機構の設置箇所がフレームであることを限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項13は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (6)訂正事項14?18について 訂正事項14?18は、特許請求の範囲に係る訂正事項1?13に伴い、発明の詳細な説明の整合を図るものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 (7)拡張・変更について 請求人は、請求項2に係る訂正事項6、7について、「訂正請求後の請求項2では、くさび体は、訂正事項6に基づく押しボルトを用いて押圧される態様と、訂正事項7に基づく分割管支持部の締結力を用いて押圧される態様の二つの押圧を同時に与えるもう1つの新たな態様、すなわち、くさび体が押しボルトと分割管支持部の両締め付けにより二重に押圧される態様が新たに想定させる」(弁駁書第3頁第13-17行)と主張し、訂正事項6及び7が実質上特許請求の範囲を変更するものであり訂正要件に違反する旨主張している(弁駁書第3頁第22-24行参照)ので、検討する。 訂正事項6は、「このくさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて」という事項をさらに追加し、構成を限定したものであり、また、訂正事項7は、「前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、により構成されると共に、前記管支持部は径方向に二つ割りにされた一対の分割管支持部として構成され、前記取付座部と、前記一対の分割管支持部の一方と、が一体に設けて構成されている」という事項をさらに追加し、構成を限定したものである。 すなわち、上記訂正事項は、管支持部について、管支持部が、「径方向に二つ割にされた一対の分割管支持部」で構成されることを特定しているにすぎず、一対の分割管支持部によりくさび体を介して管体を締め付けること、つまり、くさび体が「分割管支持部の締結力を用いて押圧される」ことまでは、特定していない。 また、管路における不平均力を支持して防護を図るという目的を達成するため、くさび体を介して管体を締め付けるには、くさび体が、押しボルトを用いて押圧される態様と、分割管支持部の締結力を用いて押圧される態様の、どちらか一方の態様を備えていれば足りるものであり、両方の態様を備えることは、技術的に意味がない。そのことは、本件明細書の段落【0062】-【0063】の「本第2実施形態では前記くさび体20は、くさび体収容部18A、18Bの壁部に螺合させた押ボルト21の先端部に押圧されているが、この構造に換えて次のように構成してあってもよい。つまり、前記押ボルト21を設けることなく、くさび体20をくさび体収容凹部19の内周面(図2参照)に押圧させる。この場合のくさび体20に対する押圧力は、一対の分割管支持部15A,15Bに対する連結ボルト25の締結力で生じさせる。」という記載からも、明らかである。 したがって、訂正請求後の請求項2に係る発明は、技術常識に照らせば、請求人が主張する「くさび体が押しボルトと分割管支持部の両締め付けにより二重に押圧される態様」を含むものではなく、請求人の上記主張に理由はなく、採用できない。 上記のとおり、訂正事項1?18は、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3.まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2ただし書き各号に掲げる事項を目的としており、また、同条第5項において準用する特許法第126条第3項、第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第6 本件特許発明 上記「第5」に記載のとおり、本件特許についての平成20年5月14日付け訂正請求は認められたので、本件の請求項1ないし3、7に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3、7に記載された次のとおりのものである。(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」、「本件特許発明7」という。) 「【請求項1】 支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあり、 このくさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、 前記くさび体を、前記管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してあり、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、が一体に設けて構成されている管路における不平均力の支持装置。 【請求項2】 支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記管体を挟んで前記管体の径方向一方側から前記管体の外面を受け止めるエッジ部を、前記管体の周方向に沿うように前記フレームに設け、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に前記管体の径方向他方側から押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあり、 このくさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、 前記くさび体を、前記管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してあり、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、により構成されると共に、前記管体支持部は径方向に二つ割りにされた一対の分割管支持部として構成され、前記取付座部と、前記一対の分割管支持部の一方と、が一体に設けて構成されている管路における不平均力の支持装置。 【請求項3】 支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあると共に、 前記くさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている不平均力の支持装置。 【請求項7】 支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な移動阻止体を設け、 前記移動阻止体は、前記管体の外面に押圧される一対のエッジ部を、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態に設けて構成してあると共に、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている管路における不平均力の支持装置。」 第7 刊行物 1.刊行物に記載された事項 (1)刊行物1(甲第1号証) 無効理由通知で示した、上記刊行物1には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.「【請求項1】 受け台本体と、バンドとで構成するダグタイル管の管受け台であって、前記受け台本体は、所定の直径および肉厚を有し、かつ所定長さに切断したステンレス鋼鋼管の上下端に支持板および底板を溶接して構成し、さらに底板には固定用アンカーボルトの挿入孔を設け、支持板には両側立上げ部の間を下方に湾曲してなる管受け部材を設け、この管受け部材に載置したダクタイル管の外周にバンドを当てがい、このバンドによりダクタイル管を受け台本体に固定した構成を特徴とするダクタイル管の管受け台。 【請求項2】 ステンレス鋼鋼管の直径および支持板の幅寸法がダクタイル管の直径よりも小さいことを特徴とする請求項1のダクタイル管の管受け台。 【請求項3】 管受け部材の上面にグラフアイトとニッケルとからなる低摩擦溶射皮膜を形成していることを特徴とする請求項1のダクタイル管の管受け台。」(【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】?【請求項3】) イ.「【産業上の利用分野】 本考案は、ダクタイル管の管受け台に係り、とくにステンレス鋼鋼管を用いて、小さいスペースで、しかも大小径の異なるダクタイル管を確実に支持固定できる構造のダクタイル管の管受け台に関するものである。」(段落【0001】) ウ.「【従来の技術】 ダクタイル管は、数キロメートル、或いはそれ以上の長い距離に亘って延設されるもので、その直径は一般に75φ?2600φ程度である。このダクタイル管は、地下に掘削した共同溝に配設されることが多く、その内部に上下水、液体燃料などを流通させることが多い。このダクタイル管は、共同溝の所定の高さ位置に支持させるため、一定間隔ごとに多数の管け受台を設けることが必要となる。この管受け台は、その荷重に耐えるだけの強度が要求される。また、例えば図10に示すようにダクタイル管が上向き山形に屈曲している部位を流体が流れるとき、管には上向きの強い力Fが働き、管を浮上がらせようとする。これを押さえるためにも、ダクタイル管は強固な構造の管受け台にしっかりと固定することが必要である。」(段落【0002】) エ.「一方、共同溝の内部は限られたスペースであり、その内部にはダクタイル管以外にも、他の配管や各種ケーブルなどを配設するため、ダクタイル管の管受け台もできるだけ占有スペースは小さいことが望ましい。しかし、他方では、管受け台には強度が要求されるため、どうしても大型になりやすいという問題がある。」(段落【0003】) オ.「図8、図9を参照して管受け台の従来例1を説明する。図において、1はダクタイル管、2は管受け台である。管受け台2は、正面から見て門形の鉄骨枠3と、補強のためこの鉄骨枠3を被覆するコンクリート4とから構成されている。・・・(中略)・・・。鉄骨枠3の両下端部は、アンカーボルト8により、共同溝の地面10に固定されている。 鉄骨枠3の上部枠11の上面には、ダクタイル管1を受ける転がり止部材12がボルト13で固定されている。転がり止部材12はライナー(図示せず)を介して高さ調整自在に設けられている。14は平鋼を用いたダクタイル管固定用のバンドで、その両端に長尺のボルト15を固定している。このバンド14でダクタイル管1の上部外周を押え、ボルト15を鉄骨枠3の上部枠に開設した孔16に挿通したうえ、ナット17を締めて固定している。前記バンド14による固定が終わった後にコンクリート4の打設を行う。また、管受け台2が図10に示すようにダクタイル管1の山形の曲管部18を支持する場合は、ダクタイル管1に次の式1に示すような浮上力が働く。 π θ F=2・P───・D^(2)・sin─── 4 2 P:水圧(ton f/m^(2)) D:口径( m ) F:不平均力(ton f) θ:曲り角度 このため、図8の管受け台2において、図示鎖線で示す範囲までコンクリート4aを打設し、このコンクリート4aでダクタイル管1と鉄骨枠3とを被覆して強固に固定する。なお、コンクリート4、4aには、必要に応じて補強用の鉄筋を埋設することも行われる。前記の管受け台2は、構造が複雑で、その設置作業に大変手間どるとともに、大きなスペースを必要とする。さらに、ダクタイル管1の径が異なったり、管の支持強度、支持高さを変更する場合は、鉄骨枠3の各枠部材を含めて、管受け台2全体の枠組み寸法を変える必要がある。しかし、これは、管受け台2の生産性が悪く、コスト高になるという問題につながる。」(段落【0004】?【0007】) カ.「つぎに、従来例2として、図11、図12に示す管受け台22においては、受け台本体23を、プレキャストコンクリートにより工場で一体成形した後、現場に運び所定場所に設置したうえ、アンカーボルト8より受け台本体23を地面10に固定している。受け台本体23の上面凹部に円弧状にゴム板25を敷設し、その上にダクタイル管1を配設し、その後、平鋼を用いたバンド26によりダクタイル管1の上面外周を押え、バンド26のL字状に曲げた両端を、受け台本体23の上面両端に当てがい、その上からボルト27を植込み、ナット28にねじ込み固定している。 前記のプレキャストコンクリートを用いた管受け台22は、工場での量産性には適するが、ダクタイル管1の管径が変わったり、支持高さが変わった場合の汎用性がない。そのため、寸法の違う多種類の成形用の型枠を準備しておき、その都度、必要に応じて別の型枠を用いて受け台本体を成形している。しかし、これでは管受け台の生産性が低下し、コスト高につながるという欠点がある。」(段落【0008】?【0009】) キ.「従来例3として、図13、図14に示す管受け台32は、ステンレス鋼の鋼材を用いて受け台本体33を構成しており、その下端をアンカーボルト8を用いて共同溝の地面10に固定している。この場合、受け台本体33の上面にボルト30により転がり止部材31を固定し、この転がり止部材31に受け部材40を介してダクタイル管1を支持している。34は平鋼を用いたバンドであり、その両端に長尺のボルト35を固定している。このバンド34でダクタイル管1の上部外周を押え、かつ受け台本体33の上板36に開設した孔37にボルト35を通し、ナット38で締付け固定している。このステンレス鋼材を用いた管受け台32においては、図8の鉄骨材3を用いた管受け台2に比べ強度が大であるから、コンクリートの打設は必要がない。しかし、図13の管受け台32の構造そのものは、複数の枠部材を組立てて構成しているものであるから、支持するダクタイル管1の管径や支持高さが変わるときは、受け台本体33を構成するすべての部材の寸法を変更しなければならず、従来例1、2と同様に管受け台32の生産性が低くコスト高となる。」(段落【0010】) ク.「【考案が解決しようとする課題】 解決しようとする問題点は、従来の管受け台は、ダクタイル管の管径や支持高さ、支持強度などが変わるたび毎、受け台本体の構成を各部材の寸法に対応させる必要があり、管受け台の施工性、生産性に難点があることである。また、受け台本体の幅寸法は、構造上ダクタイル管の管径より大となり、それだけ、管受け台の占有スペースが大きくなり、共同溝内に配設する他の配管やケーブルなどの配設スペースを少ならしめるという点である。」(段落【0011】) ケ.「【実施例】 以下、本考案の第1実施例を図1?図5を参照して説明する。図1は本考案に係るダクタイル管の管受け台42の側面図、図2は同上正面図、図3は図2のA部の拡大図である。各図において、43は受け台本体、44はダクタイル管1の外周を押さえる固定用のバンドである。 前記受け台本体43には、所定の直径、肉厚のステンレス鋼鋼管を所定の長さに切断したものが使用される。また、この受け台本体43を、共同溝の地面10に確実かつ強固に固定するため、受け台本体43の下端には、底板45を溶接し、この底板45の上面と、受け台本体43の外周との間に放射状に複数の三角板状の補強板46を溶接している。そして、底板45に開設した複数のボルト挿入孔47にアンカーボルト8を挿入したうえ、このアンカーボルト8を共同溝の底面10に埋込み固定している。底板45に設けるボルト挿入孔47は、適宜増設することができ、これにより、受け台本体43の底面10への固定強度を増大することができる。なお、受け台本体43を構成するステンレス鋼鋼管の直径L_(1)は、ダクタイル管1の直径Lよりも小に設ける。 一方、受け台本体43の上端には、この受け台本体43の直径よりも若干幅の広いステンレス製の支持板48を溶接50により固定している。支持板48の両側は、上方に向け直角に折曲げて立上げ部51とし、両側立上げ部51の間に、管受け部材52を設けてある。この管受け部材52は、下方に円弧状に湾曲したステンレス鋼板により構成される。また、前記両側の立上げ部51には、それぞれ複数のボルト挿入孔53が開設されている。さらに、支持板48と管受け部材52との間には、所定の間隔をおいて、左右両側に補強板54を設けている。55は管受け部材52の上面に所定の厚みに装着したグラファイト溶射材からなる低摩擦溶射皮膜である。この低摩擦溶射皮膜55は、一般に低摩擦係数であり、この上に載置されるダクタイル管1に軸方向に一定以上の力が作用した場合、これの軸方向のずれを許容し得るものである。なお、支持板48の幅寸法L_(2)は、ダクタイル管1の直径Lよりも小に設ける。 ・・・(中略)・・・。 バンド44は、図示のようにダクタイル管1の外周に当てがい、これを取囲むように配設したうえ、その両端部56を支持板48の立上げ部51の両外側に当てがう。そして、前記バンド44の両端部56と補強板57と立上げ部51のボルト挿入孔53、58、59を合致させたうえ、各孔にボルト60を挿入し、両側立上げ部51の内側に固定したナット61にボルト60を螺合する。これにより、バンド44を介して、ダクタイル管1は受け台本体43に強固に固定される。」(【0016】?【0020】) コ.「【考案の効果】 本考案に係るダクタイル管の管受け台によると、次の作用効果がある。第1に受け台本体は、ステンレス鋼鋼管を所定の長さに切断したものを使用しているので、従来の管受け台に比べて構成が非常に簡潔であり、しかも十分な強度を持たせることができる。とくに、ダクタイル管の荷重が大きく、或いはダクタイル管に大きな浮力が働く場合などにおいて、受け台本体の支持強度を増大する必要がしばしば生じる。このような場合、本考案によると、汎用性ある多種のステンレス鋼鋼管の中から、管径や肉厚が十分大きくて、目的とする強度を有するステンレス鋼鋼管を適宜選択することにより、この問題に容易に対処することができる。また、構成も簡潔で、従来に比べその製作コストを低く抑えることができる。 さらに、ダクタイル管には、その径が例えば75φ?2600φ以上と多種あり、それぞれの管受け台の支持位置の高さがきまっている。この場合も、ステンレス鋼鋼管の長さ寸法を変えることにより、容易に対応でき、従来のように管受け台全体の枠組みを変更しなくてよいため、低コストですむ。また、受け台本体は、十分な強度を有していて、しかもダクタイル管より外方に出張ることがなく、小スペースにできるもので、ダクタイル管が配設される共同溝内の限られたスペースを有効に利用することができるというすぐれた効果がある。」(段落【0023】?【0024】) (2)刊行物2 同じく、上記刊行物2には、図面と共に次の事項が記載されている。 サ.「(産業上の利用分野) 本考案は、配管をその側方にある梁等の支持体上に所定方向に移動自在に、或いは固定して支持するために、配管に固定されるクランプ装置に関するものである。 (従来の技術) 従来、配管を支持体上に支持するための装置においては、例えば配管の外周にラグを溶着しこのラグにスプリングハンガ等の支持装置を結合し、或いは配管の外周にサドルを溶着しこれを梁上に支持する等の手段が用いられている。 (考案が解決しようとする問題点) 上記従来の配管の支持手段においては、何れも支持部材を直接配管の外周に溶着するために、この作業が容易でなく、かつ特に原子力発電所用の配管では、溶接箇所検査が極めて厳重で、溶接後に面倒な熱処理作業を必要とするという問題点がある。」(第1頁第1欄第14行?同頁第2欄第3行) シ.「(問題点を解決するための手段) 本考案においては、上記従来の問題点を解決するため、配管Pの外周に固定され、この配管Pをサドル1等の支持部材を介して側方の支持体上に支持するようにした装置において、支持部材に配管Pを包囲する固定リング2を設け、この固定リング2と配管P外周との間に湾曲したクサビ3を両側から挿入し、これらクサビ3の外側端部に当接して配管Pを移動自由に包囲する一対の締め付けリング4,4ヲ固定リング2の両側に設け、両締め付けリング4,4をボルト5により締め付けてクサビ3を固定リング2内に押し込むことにより固定リング2を配管Pに固定して配管のクランプ装置を構成した。」(第1頁第2欄第4?17行) ス.「図において、1は配管Pを包囲する固定リング2を備えたサドルで、このサドル1は配管下方の支持体である水平梁上に所定方向に移動自在に、或いは固定して支持されている。固定リング2は、半割状の一対の半部2a,2aを突き合わせて互いにボルト締めして成り、配管Pの外周を緩く包囲している。」(第2頁第3欄第6?12行) また、第1図及び第2図、並びに、上記「シ.」の記載から、固定リング2と配管Pとに挟まれたクサビ3が、固定リング2から配管Pに向けて作用される押圧力によって配管Pの外面に押圧されることで、固定リング2に対して配管Pが配管の軸方向に移動するのを阻止するものであることは、明らかである。 さらに、第1図及び第2図の記載内容から、クサビ3が配管Pの軸方向に間隔を置いて複数配置されるとともに、配管Pの軸方向で対となるクサビ3のくさび作用の方向が、配管Pの軸方向で互いに反対方向になる状態に姿勢を設定してあることも、明らかである。 加えて、第1図及び第2図、並びに、上記「ス.」の記載から、固定リング2は、径方向に二つ割りにされた一対の半部2aとして構成され、サドル1と、一対の半部2aの一方と、が一体に設けられていることは、明らかである。 2.刊行物1(甲第1号証)記載の発明 刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されている。 「底面10に固定される受け台本体43と、受け台本体43に固定され、ダクタイル管の外周を取囲み固定するバンド44とを設け、 受け台本体43の下端に底板45が溶接され、底板45から立ち上がる受け台本体43及び受け台本体43の上端に溶接し固定される支持板48によりダクタイル管が支持され、また、底板45の上面と受け台本体43の外周との間に放射状に複数の三角板状の補強板46が溶接されて構成された、受け台本体43と、バンド44とで構成するダクタイル管の管受け台。」 第8 当審の判断 1.本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と刊行物1記載の発明とを対比する。 刊行物1記載の発明の「底面10」は、本件特許発明1の「支持部」に相当し、以下同様に、「ダクタイル管」は「管体」に、「バンド44」は「固定機構」に、「底板45」は「取付座部」に、「受け台本体43及び支持板48」は「管支持部」に、それぞれ相当する。 また、刊行物1記載の発明において、受け台本体43の下端に底板45が溶接され、底板45から立ち上がる受け台本体43及び受け台本体43の上端に溶接し固定される支持板48によりダクタイル管が支持された構成は、本件特許発明1において、取付座部と、この取付座部から立ち上がり管体を支持する管支持部とが一体に設けて構成されているフレームに相当する。 さらに、刊行物1記載の発明の「受け台本体43と、バンド44とで構成するダクタイル管1の管受け台」は、「管体の継手部に、管内の流体圧によって作用する力」を支持する構成を備えているから、本件特許発明1の「管路における不平均力の支持装置」(「曲がり管路を構成する複数の管体の継手部に、管内の流体圧によって作用する力」を支持する装置)に相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部とが一体に設けて構成されている管路における不平均力の支持装置。」 [相違点] 固定機構が、本件特許発明1では、フレームから管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設け、また、くさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、フレームのくさび体収容部に螺合されていて、くさび体を、管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してあるものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、バンドである点。 (2)判断 そこで、相違点について検討する。 刊行物2には、固定リング2から配管Pに向けて作用される押圧力によって配管Pの外面に押圧されることで、固定リング2に対して配管Pが配管の軸方向に移動するのを阻止可能なクサビ3を設け、該クサビ3を、配管Pの軸方向に間隔を置いて複数配置するとともに、配管Pの軸方向で対となるクサビ3のくさび作用の方向が、配管Pの軸方向で互いに反対方向になる状態に姿勢を設定したものが記載されている。 また、くさび等の係止部材を管体の外面に押圧するに当たり、係止部材上面を、くさび等の係止部材の収容部に螺合される押しボルトにより垂直方向に押圧することは、当業者にとって従来周知の技術事項(例えば、特開平7-280147号公報、特開平11-218276号公報を参照されたい。)である。 そして、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術事項とは、ともに、管体を支持する装置という同一の技術分野に属するものであり、また、管体の管軸方向に作用する力を抑えるように作用するものであるから、刊行物1記載の発明において、刊行物2記載の技術事項に倣って、固定機構に、ダクタイル管に向けて作用される押圧力によってダクタイル管の外面に押圧されるクサビを採用し、その際、クサビの上面を押しボルトにより垂直方向に押圧する構成を採用し、本件特許発明1の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 しかも、本件特許発明1の奏する作用効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術事項、及び、周知の技術事項の奏する作用効果から予測し得る程度のものであって、格別なものとは認められない。 (3)被請求人の意見書における主張について ア.阻害要因について ところで、被請求人は、刊行物1における支持装置は、管体の管軸方向に沿った移動を許容するものであり、一方、刊行物2における支持装置は、管体が管軸方向に沿って移動しないようにフレームに対して強固に支持する態様のものであり、刊行物2記載の技術事項を刊行物1記載の発明に適用することに阻害要因が存在する旨主張している(意見書第5頁第15行-第6頁第27行参照)ので、検討する。 確かに、刊行物1(甲第1号証)に記載の「受け台本体43と、バンド44とで構成するダクタイル管1の管受け台」は、両側立ち上げ部51の間に設けた管受け部材52の上面に、グラファイト溶射材からなる低摩擦溶射皮膜55を備え、「この上に載置されるダグタイル管1に軸方向に一定以上の力が作用した場合、これの軸方向のずれを許容しうる」(上記「第7 1.(1)ケ.」参照。)ものとされている。しかし、低摩擦溶射被膜55により軸方向にずれが許容され得るとしても、バンド44を介して、ダクタイル管1を受け台本体43に固定する構成は、管内の流体圧によって作用する力に起因して管路の継ぎ手に管体の管軸方向に作用する力を抑えるように作用するものと認められるから、刊行物1(甲第1号証)に記載の「受け台本体43と、バンド44とで構成するダクタイル管1の管受け台」が低摩擦溶射皮膜55を備えることをもって、上記認定を左右するものとはいえない。(平成18年(行ケ)第10556号知財高裁判決(平成19年10月31日判決言渡),第30頁第18行-第31頁第24行参照。) したがって、刊行物1における支持装置も、管体の管軸方向に作用する力を抑えるように作用するもの、即ち、管体が管軸方向に沿って移動しないようにフレームに対して支持する態様のものであり、刊行物2記載の技術事項を、刊行物1記載の発明に適用することに、阻害要因は存在せず、被請求人の上記阻害要因がある旨の主張は、採用できない。 イ.周知技術の適用について また、被請求人は、無効理由通知において、くさび等の係止部材を押しボルトにより押圧することは従来周知の事項であるとして例示した、特開平7-280147号公報、特開平11-218276号公報は、管継手の分野において周知の技術であり、不平均力の支持装置である刊行物1記載の発明に適用することは容易でない旨主張している(意見書第6頁第28-34行参照)ので、検討する。 上記、特開平7-280147号公報及び特開平11-218276号公報には、管の接続部分ではあっても、管の不平均力を抑えるために、管体外周に作用させ管体を固定する技術が開示されており、刊行物1記載の発明も、特開平7-280147号公報及び特開平11-218276号公報に開示される技術も、不平均力を抑えるために管体外周に作用させ管体を固定する点で共通するものであるから、当該周知技術を刊行物1記載の発明に適用することは、当業者が容易になし得たことである。 したがって、上記被請求人の主張は、採用できない。 (4)まとめ したがって、本件特許発明1は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術事項、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 2.本件特許発明2について 2-1.記載不備について (1)無効理由2について 当審において通知した、無効理由2(上記「第4 2.」参照)について検討すると、上記訂正事項5のとおり、本件特許発明2のエッジ部が、フレームに対しどのように設けられているか明確なものとなり、また、上記訂正事項7のとおり、エッジ部を有するフレームの構造が明確なものになったから、上記無効理由2は、解消された。 (2)請求人の主張について 請求人は、弁駁書において、本件特許発明2に係る特許に、特許法第36条第6項第1号違反の無効理由、及び、特許法第36条第6項第2号違反の無効理由がある旨主張している(第6頁第1行-第7頁第28行参照)ので、請求人の主張する記載不備に係る無効理由について検討する。 ア.特許法第36条第6項第1号違反について 請求人は、「訂正請求後の請求項2には、「エッジ部」及び「くさび体」と径方向に二つ割りにされた「一対の分割管支持部」との位置関係について何ら記載がない。そうすると、訂正請求後の請求項2における発明の技術的範囲は、「エッジ部」と「くさび体」とが管体の左右に対向するといった条件を満たすことを前提に、例えば、「エッジ部」と「くさび体」が、上下に分割された双方の分割管支持部の左側半分と右側半分にそれぞれ配置される態様の構成をも包含することとなる。」(弁駁書第6頁第18-25行)と主張し、そして、「明細書及び図面には、エッジ部が一方の分割管支持部のみに設けられ、くさび体が他方の分割管支持部にのみ設けられる態様の構成しか記載されていないにも係わらず、訂正請求後の請求項2では、上記態様を超えた構成が記載されている」(弁駁書第6頁第33-36行)と主張し、本件特許発明2に係る特許に、特許法第36条第6項第1号違反の無効理由がある旨主張している。 請求人の主張する「「エッジ部」と「くさび体」とが管体の左右に対向するといった条件を満たすことを前提に、例えば、「エッジ部」と「くさび体」が、上下に分割された双方の分割管支持部の左側半分と右側半分にそれぞれ配置される態様」がいかなる態様であるか明確ではないが、請求人の主張する態様が、上下に分割された、上方の分割管支持部の、左側半分にエッジ部、右側半分にくさび体が配置され、下方の分割管支持部の、左側半分にエッジ部、右側半分にくさび体が配置された態様(以下、「態様A」という。)であるとして、以下、検討する。 本件特許発明2が、くさび体によるくさび作用と、エッジ部による食い込み作用とによって不平均力にもとづく管体の管軸方向への動きを阻止する、という作用効果を奏するには、エッジ部とくさび体との関係において、エッジ部とくさび体とが管体の径方向に対向して設けられていることが必要であるところ、エッジ部とくさび体とが管体の径方向に対向して設けられていることは、本件特許発明2において、「管体を挟んで前記管体の径方向一方側から前記管体の外面を受け止めるエッジ部」及び「管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に前記管体の径方向他方側から押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体」との事項により明確に特定されている。 そして、請求人の主張する上記態様Aは、上記特定事項及び作用効果から、自明の実施の態様である。 なお、上記態様Aの他に想定できる、上下に分割された、上方の分割管支持部の、左側半分にエッジ部、右側半分にくさび体が配置され、下方の分割管支持部の、左側半分にくさび体、右側半分にエッジ部が配置された態様(以下、「態様B」という。)は、くさび体とエッジ部とが管体の径方向に対向しないものであるから、本件特許発明2の実施の態様でないことは明らかである。すなわち、請求人の主張する態様が、態様Bではなく態様Aであることは、この点からみても明らかである。 ところで、請求項に記載された発明から把握できる実施の態様は多数想定できるが、多数想定される実施の態様を、発明の詳細な説明に、すべて記載しきれるものではなく、また、すべて記載しなければならないものでもない。そして、自明の実施の態様は、具体的に発明の詳細な説明に記載されていないとしても、発明の詳細な説明に記載されているに等しい実施の態様ということができる。 したがって、請求人が主張するような、特許法第36条第6項第1号違反はなく、請求人の主張は、採用できない。 イ.特許法第36条第6項第2号違反について また、請求人は、「これらの記載内容(特に【0059】)及び図面から、確かに実施例では「エッジ部」の先端稜線が、孔部17の周方向に沿う姿勢に設定されているように解釈できる。しかし訂正事項5のように「エッジ部を、前記管体の周方向に沿うように前記フレームを設け」なる記載では、本件明細書【0059】の「複数のエッジ部24を、・・・一定間隔で設けてある。」ことを表現したに過ぎず、「エッジ部」がフレームに対し、どの様に設けられているのか依然として明確でなく、特許法第36条第6項第2号に違反している。一般に、「エッジ」の意味として「刃の稜線」という意味はあるが、本件明細書【0059】の記載事項などを考慮すると、上記訂正の記載の意味として、稜線が周方向に沿うことだけを意味するものとは解釈できない。「エッジ部」の意味として単に「端部」の意も存在することを考慮すれば、なおさらである。」(弁駁書第7頁第14-25行)と主張し、本件特許発明2に係る特許に、特許法第36条第6項第2号違反の無効理由がある旨主張している。 しかしながら、請求人も弁駁書で主張するように(第7頁第22行参照)、一般に、「エッジ」とは、刃の稜線を指すものであり、本件明細書の【0059】の「複数のエッジ部24を、下側の分割管支持部15Bにおける孔部17の内周部に、その周方向に一定間隔で設けてある。前記エッジ部24は孔部17の周方向に沿う姿勢に設定してある。」という記載に対応する図5をみると、「エッジ部24」の刃の稜線が、周方向に沿うように配置されたものが示されており、本件特許発明2の「エッジ部を、前記管体の周方向に沿うように前記フレームを設け」という事項は、「エッジ部」の刃の稜線が周方向に沿うようにフレームに設けらることを示すものであると理解できる。 さらに、エッジ部の、食い込み作用により、不平均力にもとづく管体の管軸方向への動きを阻止する、という作用効果を勘案すれば、本件特許発明2の「周方向に沿うように」という事項は、エッジ部の刃の稜線が「周方向に沿うように」設けられていることを特定するものと解するのが相当である。 ところで、請求人の「本件明細書【0059】の記載事項などを考慮すると、上記訂正の記載の意味として、稜線が周方向に沿うことだけを意味するものとは解釈できない。」という主張は、エッジ部の刃の稜線が軸方向に設けられるものも含んでいるという主張と解されるが、エッジ部の刃の稜線が軸方向に設けられるものでは、食い込み作用により、不平均力にもとづく管体の管軸方向への動きを阻止する、という作用効果を奏しないことは明らかであるから、請求人の当該主張は失当である。 そして、本件特許発明2は、「エッジ部を、前記管体の周方向に沿うように前記フレームを設け」という事項により、フレームに対して、エッジ部の刃の稜線が周方向に沿うように設けられることが明確に特定されている。 したがって、本件特許発明2に係る特許に、特許法第36条第6項第2号違反の無効理由がある旨の、請求人の主張は、採用できない。 2-2.進歩性について (1)対比 本件特許発明2と刊行物1記載の発明とを対比する。 刊行物1記載の発明の「底面10」は、本件特許発明2の「支持部」に相当し、以下同様に、「ダクタイル管」は「管体」に、「バンド44」は「固定機構」に、「底板45」は「取付座部」に、「受け台本体43及び支持板48」は「管支持部」に、それぞれ相当する。 また、刊行物1記載の発明において、受け台本体43の下端に底板45が溶接され、底板45から立ち上がる受け台本体43及び受け台本体43の上端に溶接し固定される支持板48によりダクタイル管が支持された構成は、本件特許発明2において、取付座部と、この取付座部から立ち上がり管体を支持する管支持部とで構成されているフレームに相当する。 さらに、刊行物1記載の発明の「受け台本体43と、バンド44とで構成するダクタイル管1の管受け台」は、「管体の継手部に、管内の流体圧によって作用する力」を支持する構成を備えているから、本件特許発明1の「管路における不平均力の支持装置」(「曲がり管路を構成する複数の管体の継手部に、管内の流体圧によって作用する力」を支持する装置)に相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、により構成されている管路における不平均力の支持装置。」 [相違点1] 固定機構が、本件特許発明2では、管体を挟んで前記管体の径方向一方側から前記管体の外面を受け止めるエッジ部を、前記管体の周方向に沿うように前記フレームに設け、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に前記管体の径方向他方側から押圧されることで、フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設け、また、くさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、フレームのくさび体収容部に螺合されていて、くさび体を、管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してあるものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、バンドである点。 [相違点2] 本件特許発明2は、管支持部は径方向に二つ割りにされた一対の分割管支持部として構成され、取付座部と、前記一対の分割管支持部の一方と、が一体に設けて構成されているのに対し、刊行物1記載の発明は、受け台本体43の下端に底板45が溶接され、底板45から立ち上がる受け台本体43及び受け台本体43の上端に溶接し固定される支持板48によりダクタイル管が支持された構成、すなわち、底板45(取付座部)と、この底板45(取付座部)から立ち上がりダクタイル管(管体)を支持する受け台本体43及び支持板48(管支持部)と、が設けられた構成としている点。 (2)判断 そこで、これら相違点1及び2について検討する。 ア.相違点1について 刊行物2には、固定リング2から配管Pに向けて作用される押圧力によって配管Pの外面に押圧されることで、固定リング2に対して配管Pが配管の軸方向に移動するのを阻止可能なクサビ3を設け、該クサビ3を、配管Pの軸方向に間隔を置いて複数配置するとともに、配管Pの軸方向で対となるクサビ3のくさび作用の方向が、配管Pの軸方向で互いに反対方向になる状態に姿勢を設定したものが記載されている。 また、くさび等の係止部材を管体の外面に押圧するに当たり、係止部材上面を、くさび等の係止部材の収容部に螺合される押しボルトにより垂直方向に押圧することは、当業者にとって従来周知の技術事項(例えば、特開平7-280147号公報、特開平11-218276号公報(甲第3号証)を参照されたい。)である。 しかしながら、刊行物2にも、従来周知の技術事項として示した、特開平7-280147号公報及び特開平11-218276号公報(甲第3号証)にも、「エッジ部」を「管体の周方向に沿うようにフレームに設け」、また、「エッジ部」を「管体を挟んで前記管体の径方向一方側から前記管体の外面を受け止める」ように設け、「管体の外面に前記管体の径方向他方側から押圧されることで、フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設け」る構成(以下、「構成A」という。)について、記載も示唆もされていない。 また、構成Aが、周知の技術事項であるともいえない。 なお、甲第2号証にも、構成Aを具備することについて、記載されておらず、また、示唆もされていない。 そして、構成Aを採用することで、くさび体によるくさび作用と、エッジ部の食い込み作用とによって、不平均力にもとづく管体の管軸方向への動きが阻止され、強固な防護工とすることができるという作用効果を奏するものであり(本件明細書段落【0061】参照)、構成Aが、単なる設計的事項ともいうことはできない。 ところで、請求人は、弁駁書で、「訂正請求後の請求項2に係る発明は、当業者が公知技術である刊行物1、2及び周知技術(甲第3号証、甲第4号証)に基づいて容易に成し得たものであるから、訂正請求後の請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項違反の無効理由を有する」(第5頁第30-33行)と主張しているので、検討するに、新たに追加された甲第4号証には、係止片10が押しボルト13に押されることで、係止片10の先端の食い込み刃10bが管に食い込んで管を支持する旨の記載があるのみで、上記構成Aについては、記載も示唆もされていない。 したがって、請求人の上記主張は、採用できない。 よって、刊行物1記載の発明において、刊行物2記載の技術事項に倣って、固定機構に、ダクタイル管に向けて作用される押圧力によってダクタイル管の外面に押圧されるクサビを採用し、その際、クサビの上面を押しボルトにより垂直方向に押圧する構成を採用したとしても、本件特許発明2と、刊行物1記載の発明とは、依然として、上記構成Aの点で相違するものであり、そして、本件特許発明2の上記構成Aは、当業者が容易に想到し得たものではない。 イ.相違点2について 刊行物2には、固定リング2は、径方向に二つ割りにされた一対の半部2aとして構成され、サドル1と、一対の半部2aの一方と、が一体に設けたものが記載されている。 そして、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術事項とは、ともに、管体を支持する装置という同一の技術分野に属するものであり、また、管体の管軸方向に作用する力を抑えるように作用するものであるから、刊行物1記載の発明において、刊行物2記載の技術事項を採用し、本件特許発明2の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)まとめ 以上を踏まえると、本件特許発明2の、「エッジ部」を「管体の周方向に沿うようにフレームに設け」、また、「エッジ部」を「管体を挟んで前記管体の径方向一方側から前記管体の外面を受け止める」ように設け、「管体の外面に前記管体の径方向他方側から押圧されることで、フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設け」る構成は、当業者が容易に想到し得たこととはいえず、本件特許発明2は、当業者が容易に発明し得たものではない。 3.本件特許発明3について (1)対比 本件特許発明3と刊行物1記載の発明とを対比する。 刊行物1記載の発明の「底面10」は、本件特許発明3の「支持部」に相当し、以下同様に、「ダクタイル管」は「管体」に、「バンド44」は「固定機構」に、「底板45」は「取付座部」に、「受け台本体43及び支持板48」は「管支持部」に、「補強板46」は「リブ」に、それぞれ相当する。 また、刊行物1記載の発明において、受け台本体43の下端に底板45が溶接され、底板45から立ち上がる受け台本体43及び受け台本体43の上端に溶接し固定される支持板48によりダクタイル管が支持され、また、底板45の上面と受け台本体43の外周との間に放射状に複数の三角板状の補強板46が溶接された構成は、本件特許発明3において、取付座部と、この取付座部から立ち上がり管体を支持する管支持部と、リブとが一体に設けて構成されているフレームに相当する。 さらに、刊行物1記載の発明の「受け台本体43と、バンド44とで構成するダクタイル管1の管受け台」は、「管体の継手部に、管内の流体圧によって作用する力」を支持する構成を備えているから、本件特許発明3の「管路における不平均力の支持装置」(「曲がり管路を構成する複数の管体の継手部に、管内の流体圧によって作用する力」を支持する装置)に相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、リブとが一体に設けて構成されている管路における不平均力の支持装置。」 [相違点1] 固定機構が、本件特許発明3では、フレームから管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設け、また、くさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、フレームのくさび体収容部に螺合されて設定されるものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、バンドである点。 [相違点2] 本件特許発明3は、リブを、管軸方向に沿うものとしたのに対し、刊行物1記載の発明は、放射状に複数の三角板状の補強板を、底板(取付座部)とダクタイル管(管体)との間に設けたものとしている点。 (2)判断 そこで、これら相違点1及び2について検討する。 ア.相違点1について 刊行物2には、固定リング2から配管Pに向けて作用される押圧力によって配管Pの外面に押圧されることで、固定リング2に対して配管Pが配管の軸方向に移動するのを阻止可能なクサビ3を設けたものが記載されている。 また、くさび等の係止部材を管体の外面に押圧するに当たり、係止部材上面を、くさび等の係止部材の収容部に螺合される押しボルトにより垂直方向に押圧することは、当業者にとって従来周知の技術事項(例えば、特開平7-280147号公報、特開平11-218276号公報を参照されたい。)である。 そして、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術事項とは、ともに、管体を支持する装置という同一の技術分野に属するものであり、また、管体の管軸方向に作用する力を抑えるように作用するものであるから、刊行物1記載の発明において、刊行物2記載の技術事項に倣って、固定機構に、ダクタイル管に向けて作用される押圧力によってダクタイル管の外面に押圧されるクサビを採用し、その際、クサビの上面を押しボルトにより垂直方向に押圧する構成を採用し、本件特許発明3の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ.相違点2について 刊行物1に、「この受け台本体43を、共同溝の地面10に確実かつ強固に固定するため、受け台本体43の下端には、底板45を溶接し、この底板45の上面と、受け台本体43の外周との間に放射状に複数の三角板状の補強板46を溶接している。」(上記「第7 1.(1)ケ.」参照)との記載があることに照らすならば、刊行物1記載の発明の、放射状に複数の三角板状のものを、底板(取付座部)とダクタイル管(管体)との間に設けた補強板(リブ)は、「受け台本体43を・・・地面10に確実かつ強固に固定するため」の構成の一つである。 そして、「受け台本体43を・・・地面10に確実かつ強固に固定するため」に、補強板(リブ)の大きさや高さをどの程度のものとするか、補強板(リブ)をどの方向に、どれだけ配置するか、といったことは、当業者が適宜行う設計的事項であるから、当業者にとって、刊行物1記載の発明の補強板(リブ)を、「管軸方向に沿う」構成とすることは、容易に想到し得たことである。 しかも、本件特許発明3の奏する作用効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術事項、及び、周知の技術事項の奏する作用効果から予測し得る程度のものであって、格別なものとは認められない。 したがって、本件特許発明3は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術事項、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 4.本件特許発明7について (1)対比 本件特許発明7と刊行物1記載の発明とを対比する。 刊行物1記載の発明の「底面10」は、本件特許発明7の「支持部」に相当し、以下同様に、「ダクタイル管」は「管体」に、「バンド44」は「固定機構」に、「底板45」は「取付座部」に、「受け台本体43及び支持板48」は「管支持部」に、「補強板46」は「リブ」に、それぞれ相当する。 また、刊行物1記載の発明において、受け台本体43の下端に底板45が溶接され、底板45から立ち上がる受け台本体43及び受け台本体43の上端に溶接し固定される支持板48によりダクタイル管が支持され、また、底板45の上面と受け台本体43の外周との間に放射状に複数の三角板状の補強板46が溶接された構成は、本件特許発明1において、取付座部と、この取付座部から立ち上がり管体を支持する管支持部と、リブとが一体に設けて構成されているフレームに相当する。 さらに、刊行物1記載の発明の「受け台本体43と、バンド44とで構成するダクタイル管1の管受け台」は、「管体の継手部に、管内の流体圧によって作用する力」を支持する構成を備えているから、本件特許発明7の「管路における不平均力の支持装置」(「曲がり管路を構成する複数の管体の継手部に、管内の流体圧によって作用する力」を支持する装置)に相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、リブとが一体に設けて構成されている管路における不平均力の支持装置。」 [相違点1] 固定機構が、本件特許発明7では、フレームから管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な移動阻止体を設け、また、移動阻止体が、管体の外面に押圧される一対のエッジ部を、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態に設けられているものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、バンドである点。 [相違点2] 本件特許発明7は、リブを、管軸方向に沿うものとしたのに対し、刊行物1記載の発明は、放射状に複数の三角板状の補強板を、底板(取付座部)とダクタイル管(管体)との間に設けたものとしている点。 (2)判断 そこで、これら相違点1及び2について検討する。 ア.相違点1について 刊行物2には、固定リング2から配管Pに向けて作用される押圧力によって配管Pの外面に押圧されることで、固定リング2に対して配管Pが配管の軸方向に移動するのを阻止可能なクサビ3を設けたものが記載されている。 また、くさび体等の移動阻止体において、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態で使用される一対のエッジ部を設けることは、当業者にとって従来周知の技術事項(例えば、特開平7-280147号公報、特開平11-218276号公報、実公昭56-52468号公報を参照されたい。)である。 そして、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の技術事項とは、ともに、管体を支持する装置という同一の技術分野に属するものであり、また、管体の管軸方向に作用する力を抑えるように作用するものであるから、刊行物1記載の発明において、刊行物2記載の技術事項に倣って、固定機構に、ダクタイル管に向けて作用される押圧力によってダクタイル管の外面に押圧されるクサビ等の移動阻止体を採用し、その際、移動阻止体は、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態で使用される一対のエッジ部を設けたものを採用し、本件特許発明7の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ.相違点2について 刊行物1に、「この受け台本体43を、共同溝の地面10に確実かつ強固に固定するため、受け台本体43の下端には、底板45を溶接し、この底板45の上面と、受け台本体43の外周との間に放射状に複数の三角板状の補強板46を溶接している。」(上記「第7 1.(1)ケ.」参照)との記載があることに照らすならば、刊行物1記載の発明の、放射状に複数の三角板状のものを、底板(取付座部)とダクタイル管(管体)との間に設けた補強板(リブ)は、「受け台本体43を・・・地面10に確実かつ強固に固定するため」の構成の一つである。 そして、「受け台本体43を・・・地面10に確実かつ強固に固定するため」に、補強板(リブ)の大きさや高さをどの程度のものとするか、補強板(リブ)をどの方向に、どれだけ配置するか、といったことは、当業者が適宜行う設計的事項であるから、当業者にとって、刊行物1記載の発明の補強板(リブ)を、「管軸方向に沿う」構成とすることは、容易に想到し得たことである。 しかも、本件特許発明7の奏する作用効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術事項、及び、周知の技術事項の奏する作用効果から予測し得る程度のものであって、格別なものとは認められない。 したがって、本件特許発明7は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の技術事項、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 第8 むすび 以上のとおり、本件特許発明1、3、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。 また、本件特許発明2に係る特許については、請求人の主張する理由及び証拠によっては無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が4分の1、被請求人が4分の3を負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 管路における不平均力の支持装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあり、 このくさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、 前記くさび体を、前記管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してあり、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、が一体に設けて構成されている管路における不平均力の支持装置。 【請求項2】支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記管体を挟んで前記管体の径方向一方側から前記管体の外面を受け止めるエッジ部を、前記管体の周方向に沿うように前記フレームに設け、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に前記管体の径方向他方側から押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあり、 このくさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、 前記くさび体を、前記管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してあり、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、により構成されると共に、前記管支持部は径方向に二つ割りにされた一対の分割管支持部として構成され、前記取付座部と、前記一対の分割管支持部の一方と、が一体に設けて構成されている管路における不平均力の支持装置。 【請求項3】支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあると共に、 前記くさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている不平均力の支持装置。 【請求項4】支持部に固定されるフレームと、前記フレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記フレームに形成した雌ねじ部に螺合された状態で前記管体の外面を先端部で押圧して、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な雄ねじ部材を設けてあり、 この雄ねじ部材の先端部を窪ませてある管路における不平均力の支持装置。 【請求項5】支持部に固定されるフレームと、前記フレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記管体を挟んで前記管体の径方向一方側から前記管体の外面を受け止めるエッジ部を前記フレームに設け、前記フレームに形成した雌ねじ部に螺合された状態で前記管体の径方向他方側から前記管体の外面を先端部で押圧して、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な雄ねじ部材を設けてあり、 この雄ねじ部材の先端部を窪ませてある管路における不平均力の支持装置。 【請求項6】支持部に固定されるフレームと、前記フレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記フレームに形成した雌ねじ部に螺合された状態で前記管体の外面を先端部で押圧して、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な雄ねじ部材を設けると共に、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている管路における不平均力の支持装置。 【請求項7】支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な移動阻止体を設け、 前記移動阻止体は、前記管体の外面に押圧される一対のエッジ部を、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態に設けて構成してあると共に、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている管路における不平均力の支持装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は管路における不平均力の支持装置に関する。 【従来の技術】 【0002】 例えば図20に示すように、一般に曲がり管路2においては、管路2を構成する複数の管体3の継ぎ手部4に、管内の流体圧によって不平均力が作用する。 【0003】 そして、この不平均力に起因して管路の継手部に管体の軸芯方向(以下、管軸方向と称する)の力が作用することから、管路を支持するための支持構造が必要になる。 【0004】 従来、上記の管路を支持するのに、図21に示すように、鉄筋コンクリート(6は鉄筋である)製の躯体5で共同溝1内の管体3を固定してあった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 上記従来の支持構造によれば、共同溝1のような狭い空間での鉄筋コンクリート施工が困難で、施工に手間がかかるという問題があった。 【0006】 上記の問題を解消する技術として、鋼製のバンドをボルトによって管体の周囲に巻付け固定する技術が提案されているが、この技術ではバンドと管体との間の摩擦抵抗力で管体の管軸方向の移動を防止することから、管路における不平均力を強固に支持することは困難である。 【0007】 本発明は上記実情に鑑みて成されたもので、その目的は、管路における不平均力を支持して防護を図ることができるようにする点にある。 【0008】 【課題を解決するための手段】 請求項1による発明の構成・作用・効果は次の通りである。 【0009】 [構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあり、 このくさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、 前記くさび体を、前記管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してあり、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、が一体に設けて構成されている。 【0010】 [作用]管体の外面に押圧されるくさび体によって、この管体とフレームとが一体化される。そして、くさび体のくさび作用によって、不平均力に基づく管体の管軸方向への動きが阻止される。しかも、管体が管軸方向のいずれの方向に移動しようとしてもいずれか一方のくさび体が作用し、これにより、管体の移動を阻止して、不平均力を受け止めることができる。このため、強固な防護工とすることができる。 【0011】 [効果]従って、管路における不平均力を支持して防護を図ることができる管路における不平均力の支持装置を提供することができた。 【0012】 請求項2による発明の構成・作用・効果は次の通りである。 【0013】 [構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記管体を挟んで前記管体の径方向一方側から前記管体の外面を受け止めるエッジ部を、前記管体の周方向に沿うように前記フレームに設け、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に前記管体の径方向他方側から押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあり、 このくさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、 このくさび体を、前記管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、前記管軸方向で隣合う一対のくさび体のくさび作用方向が、前記管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体の姿勢を設定してあり、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、により構成されると共に、前記管支持部は径方向に二つ割りにされた一対の分割管支持部として構成され、前記取付座部と、前記一対の分割管支持部の一方と、が一体に設けて構成されている。 【0014】 [作用]前記エッジ部と、管体の外面に押圧されるくさび体とによって、この管体とフレームとが一体化される。しかも、くさび体によるくさび作用と、管体の外面に対するエッジ部の食い込み作用とによって、不平均力にもとづく管体の管軸方向への動きが阻止される。しかも、管体が管軸方向のいずれの方向に移動しようとしてもいずれか一方のくさび体が作用し、これにより、管体の移動を阻止して、不平均力を受け止めることができる。このため、強固な防護工とすることができる。 【0015】 [効果]従って、管路における不平均力を支持して防護を図ることができる管路における不平均力の支持装置を提供することができた。 【0016】 請求項3による発明の構成は、次の通りである。 【0017】 [構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能なくさび体を設けてあると共に、前記くさび体上面を垂直方向に押圧する押しボルトが、前記フレームのくさび体収容部に螺合されていて、前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている。 【0018】 【0019】 【0020】 請求項4による発明の構成・作用・効果は次の通りである。 【0021】 [構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記固定機構に、前記フレームに形成した雌ねじ部に螺合された状態で前記管体の外面を先端部で押圧して、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な雄ねじ部材を設けてあり、この雄ねじ部材の先端部を窪ませてある。 【0022】 [作用]管体の外面に押圧される雄ねじ部材によって、この管体とフレームとが一体化される。そして、雄ねじ部材の押圧力で、不平均力にもとづく管体の管軸方向への動きが阻止される。これにより、強固な防護工とすることができる。しかも、雄ねじ部材の先端部を窪ませてあるから、雄ねじ部材の先端部が管体の外面に食い込みやすくなる。 【0023】 [効果]従って、管路における不平均力を支持して防護を図ることができる管路における不平均力の支持装置を提供することができた。 【0024】 請求項5による発明の構成・作用・効果は次の通りである。 【0025】 [構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに管体を固定する固定機構とを設け、前記固定機構に、前記管体を挟んで前記管体の径方向一方側から前記管体の外面を受け止めるエッジ部を前記フレームに設け、前記フレームに形成した雌ねじ部に螺合された状態で前記管体の径方向他方側から前記管体の外面を先端部で押圧して、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な雄ねじ部材を設けてあり、この雄ねじ部材の先端部を窪ませてある。 【0026】 [作用]前記エッジ部と、管体の外面を押圧する雄ねじ部材とによって、この管体とフレームとが一体化される。しかも、雄ねじ部材による押圧作用と、管体の外面に対するエッジ部の食い込み作用とによって、不平均力にもとづく管体の管軸方向への動きが阻止される。これにより、強固な防護工とすることができる。しかも、雄ねじ部材の先端部を窪ませてあるから、雄ねじ部材の先端部が管体の外面に食い込みやすくなる。 【0027】 [効果]従って、管路における不平均力を支持して防護を図ることができる管路における不平均力の支持装置を提供することができた。 【0028】 請求項6による発明の構成は次の通りである。 【0029】 [構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記フレームに形成した雌ねじ部に螺合された状態で前記管体の外面を先端部で押圧して、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な雄ねじ部材を設けると共に、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている。 【0030】 【0031】 【0032】 請求項7による発明の構成・作用・効果は次の通りである。 【0033】 [構成]支持部に固定されるフレームと、前記フレームに設けられ、このフレームに管体を固定する固定機構とを設け、 前記固定機構に、前記フレームから前記管体に向けて作用される押圧力によって前記管体の外面に押圧されることで、前記フレームに対して前記管体が管軸方向に移動するのを阻止可能な移動阻止体を設け、 前記移動阻止体は、前記管体の外面に押圧される一対のエッジ部を、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態に設けて構成してあると共に、 前記フレームは、前記支持部に固定される取付座部と、この取付座部から立ち上がり前記管体を支持する管支持部と、管軸方向に沿うリブと、が一体に設けて構成されている。 【0034】 [作用]管体の外面に押圧される移動阻止体によって、この管体とフレームとが一体化される。 【0035】 前記移動阻止体は、前記管体の外面に押圧される一対のエッジ部を、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態に設けて構成してあるから、管体が管軸方向のいずれの方向に移動しようとしてもいずれか一方のエッジ部が管体に対して食い込み作用し、これにより、管体の移動を阻止して、不平均力を受け止めることができる。このため、強固な防護工とすることができる。 【0036】 [効果]従って、管路における不平均力を支持して防護を図ることができる管路における不平均力の支持装置を提供することができた。 【0037】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。 【0038】 [第1実施形態] 図19に示すように、継手部4を備えた管体3から成る管路2を共同溝内に配置してある。 【0039】 前記管体3は本発明にかかる管路における不平均力の支持装置に支持させてあり、次に前記管路における不平均力の支持装置について説明する。 【0040】 図1,図2,図3,図4に示すように、前記管路における不平均力の支持装置は、共同溝のベースコンクリート12(支持部に相当)にボルト固定される鋳鉄製のフレーム11と、フレーム11に管体3を固定する固定機構23とを設けて構成してある。 【0041】 前記固定機構23に、フレーム11から管体3に向けて作用される押圧力によって管体3の外面に押圧されることで、フレーム11に対して管体3が管軸方向に移動するのを阻止可能な金属製のくさび体20を設けてある。 【0042】 前記フレーム11は、板状の取付座部14と、この取付座部14から立ち上がった管支持部15と、管軸方向に沿うリブ16とを一体に設けて構成してある。 前記管支持部15に、管体3を挿通させる丸孔部17を貫通形成してある。 【0043】 <固定機構23の構造> 前記固定機構23について説明すると、前記管支持部15の管軸方向の両端部側の孔部17の周囲に複数のくさび体収容部18A、18Bを一体形成してある。 【0044】 各くさび体収容部18A、18Bは、管支持部15から管軸方向に突出するように形成されて、図2に示すように、その内部に、管体3の外面に対向するくさび体収容凹部19を形成してある。 【0045】 前記くさび体20は各くさび体収容凹部19に収容してある。つまり、各くさび体20を、管軸方向に所定の間隔を置いて複数配置するとともに、管軸方向で隣合う一対のくさび体20のくさび作用方向が、管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体20の姿勢を設定してある。 【0046】 前記くさび体20は、くさび体収容部18A、18Bの壁部に螺合させた押ボルト21の先端部に押圧されている。 【0047】 前記くさび体20はその一方の面が管体3の外面に接している。押ボルト21は、くさび体20の形状に対応させて管体3に対して傾斜させてある。 【0048】 図2において22は、くさび体収容部18A、18Bの外面と管体3の外面との隙間を埋めて防食を図るコーキング材である。このようにして、固定機構23を構成してある。 【0049】 本発明にかかる支持装置で共同溝の内部で管体3を支持する場合、ベースコンクリート12の所定の位置にアンカーボルトでフレーム11を固定し、このフレーム11の管支持部15の孔部17に管体3を通した状態で管路2を敷設する。 【0050】 例えば、管支持部15を孔部17の径方向二つ割りの構成とすることもできる。この場合は管路2を敷設した後に管体3に管支持部15の上半部を被せるようにして施工する。 【0051】 また、管体3を孔部17に通す前に、くさび体20をあらかじめ収容部18A、18Bに収容して適宜の手段により仮止めしておく。 【0052】 次に、押ボルト21を回転操作して、この押ボルト21によりくさび体20を押圧する。すると、このくさび体20は押ボルト21と管体3との間に挟み込まれて押圧された状態となる。 【0053】 すなわち、くさび体収容部18A、18Bおよび管支持部15を介して、フレーム11と管体3との間に挟み込まれて押圧された状態となる。 【0054】 上記の支持構造において、不平均力が大きくなると、管体3が継手部4から抜け出すように作用し、これによって管体3はフレーム11に対し管軸方向に移動しようとする。 【0055】 しかしながら、くさび体20は、管軸方向で隣合う一対のくさび体20のくさび作用方向が、管軸方向で互いに反対方向になる状態に各くさび体20の姿勢を設定してあるから、管体3がいずれの方向に移動しようとしてもいずれか一方のくさび体20が作用する。 【0056】 したがって、このような管体3の移動を阻止して、不平均力を受け止めることができる。 【0057】 [第2実施形態] 本実施形態の管路における不平均力の支持装置は、第1実施形態の支持装置とは固定機構の構造等が異なっている(この点については後述の第3実施形態・第4実施形態・第5実施形態・第6実施形態でも同じである)。以下、異なる構造について説明する。 【0058】 図5,図6,図7に示すように、フレーム11の管支持部15を、孔部17の径方向に二つ割りにして、一対の分割管支持部15A,15B同士を連結ボルト25で連結してある。 【0059】 前記固定機構23に、管体3を挟んで管体3の径方向一方側から管体3の外面を受け止める複数のエッジ部24を、下側の分割管支持部15Bにおける孔部17の内周部に、その周方向に一定間隔で設けてある。前記エッジ部24は孔部17の周方向に沿う姿勢に設定してある。 【0060】 そして、上側の分割管支持部15Aにくさび体20を設けてある。くさび体20とその周りの構造とは第1実施形態におけるそれらの構造と同一であり、その説明は省略する。 【0061】 上記の構造によれば、前記エッジ部24と、管体3の外面に押圧されるくさび体20とによって、この管体3とフレーム11とが一体化される。しかも、くさび体20によるくさび作用と、管体3の外面に対するエッジ部24の食い込み作用とによって、不平均力にもとづく管体3の管軸方向への動きが阻止される。これにより、強固な防護工とすることができる。 【0062】 本第2実施形態では前記くさび体20は、くさび体収容部18A、18Bの壁部に螺合させた押ボルト21の先端部に押圧されているが、この構造に換えて次のように構成してあってもよい。 【0063】 つまり、前記押ボルト21を設けることなく、くさび体20をくさび体収容凹部19の内周面(図2参照)に押圧させる。この場合のくさび体20に対する押圧力は、一対の分割管支持部15A,15Bに対する連結ボルト25の締結力で生じさせる。 【0064】 [第3実施形態] 図8,図9,図10,図11に示すように、フレーム11の管支持部15を、孔部17の径方向に二つ割りにして、一対の分割管支持部15A,15B同士を連結ボルト25で連結してある。 【0065】 前記固定機構23に、分割管支持部15A,15Bに形成した複数の雌ねじ部に螺合された状態で管体3の外面を先端部で押圧して、フレーム11に対して管体3が管軸方向に移動するのを阻止可能な複数の雄ねじ部材26を、管軸方向に2列並び状態で周方向に分散する状態に設けてある。 【0066】 前記雄ねじ部材26は先端部を窪ませて、管体3の外面に食い込みやすくしてある。 【0067】 上記の構造により、管体3の外面に押圧される雄ねじ部材26によって、この管体3とフレーム11とが一体化される。そして、雄ねじ部材26の押圧力で、不平均力にもとづく管体3の管軸方向への動きが確実に阻止される。これにより、強固な防護工とすることができる。 【0068】 本第3実施形態では前記フレーム11の管支持部15を孔部17の径方向に二つ割り構造に構成したが、この構造に換えて二つ割りすることなく一体構造に構成してあってもよい。 【0069】 [第4実施形態] 図12,図13,図14,図15,図16に示すように、フレーム11の管支持部15を、孔部17の径方向に二つ割りにして、一対の分割管支持部15A,15B同士を連結ボルト25で連結してある。 【0070】 前記固定機構23に、管体3を挟んで管体3の径方向一方側(下方側)から管体3の外面を受け止める複数のエッジ部24を、下側の分割管支持部15Bにおける孔部17の内周部に、その周方向に一定間隔で設けてある。前記エッジ部24は管体3の周方向に沿う姿勢に設定してある。 【0071】 そして、上側の分割管支持部15Aに第3実施形態における雄ねじ部材26を設けてある。雄ねじ部材26とその周りの構造とは第3実施形態におけるそれらの構造と同一であり、その説明は省略する。 【0072】 上記の構造によれば、前記エッジ部24と、管体3の外面を押圧する雄ねじ部材26とによって、この管体3とフレーム11とが一体化される。しかも、雄ねじ部材26による押圧作用と、管体3の外面に対するエッジ部24の食い込み作用とによって、不平均力にもとづく管体3の管軸方向への動きが阻止される。これにより、強固な防護工とすることができる。 【0073】 [第5実施形態] 図17(a)に示すように、前記固定機構23に、フレーム11から管体3に向けて作用される押ネジ26の押圧力によって管体3の外面に押圧されることで、フレーム11に対して管体3が管軸方向に移動するのを阻止可能な移動阻止体27を設け、この移動阻止体27は、管体3の外面に押圧される一対のエッジ部29を、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態に設けて構成してある。 【0074】 上記の構造により、管体3の外面に押圧される移動阻止体27によって、この管体3とフレーム11とが一体化される。 【0075】 前記移動阻止体27は、管体3の外面に押圧される一対のエッジ部29を、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態に設けて構成してあるから、管体3が管軸方向のいずれの方向に移動しようとしてもいずれか一方のエッジ部29が作用し(図17(b)参照)、これにより、管体3の移動を阻止して、不平均力を受け止めることができる。 【0076】 [第6実施形態] 図18に示すように、前記固定機構23に、フレーム11から管体3に向けて作用される一対の押ネジ26の押圧力によって管体3の外面に押圧されることで、フレーム11に対して管体3が管軸方向に移動するのを阻止可能な移動阻止体27を設け、この移動阻止体27は、管体3の外面に押圧される一対のエッジ部29を、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態に設けて構成してある。 【0077】 前記一対の押ネジ26は管軸方向でボルト先端側ほど互いに近接する傾斜姿勢に設定してある。 【0078】 上記の構造により、管体3の外面に押圧される移動阻止体27によって、この管体3とフレーム11とが一体化される。 【0079】 前記移動阻止体27は、管体3の外面に押圧される一対のエッジ部29を、管軸方向で所定の間隔を置いて位置する状態に設けて構成してあるから、管体3が管軸方向のいずれの方向に移動しようとしてもいずれか一方のエッジ部29が作用し、これにより、管体3の移動を阻止して、不平均力を受け止めることができる。 【0080】 [別実施形態] 前記フレーム11の管支持部15を、孔部17の径方向に二つ割りにして、一対の分割管支持部15A,15B同士を連結ボルト25で連結した構造において、二つ割り方向は上下方向に限られるものではなく、例えば、左側の分割管支持部と右側の分割管支持部とに横方向に2分割してあってもよい。 【0081】 第2実施形態と第4実施形態におけるエッジ部24を上側の分割管支持部15Aに設け、下側の分割管支持部15Bにくさび体20(第4実施形態の場合は雄ねじ部材26)を設けるよう構成してあってもよい。 【0082】 第5実施形態の別実施形態として、第2及び第4実施形態におけるエッジ部24を、一方の分割管支持部(第2及び第4実施形態での符号は15A又は15B)に設け、他方の分割管支持部に前記移動阻止体27と押ネジ26を設けて前記固定機構23を構成してあってもよい。 【0083】 前記管体3は金属管に限られる物ではなく樹脂管であってもよい。 【0084】 前記管体3は気体・液体・気液混合体のいずれを通す管体であってもよい。 【0085】 以上の実施形態では前記管体3を、本発明にかかる支持装置を介してベースコンクリート12に支持させたが、前記支持装置を介して管体3を側壁に支持させる場合や、天井壁に支持させる場合であっても、本発明は適用することができる。 【0086】 前記取付座部14は湾曲形状であってもよい(この場合、例えば丸パイプに取付座部14を外嵌させることができる。 【0087】 前記くさび体20や雄ねじ部材の数は上記の実施形態の数に限られるものではない。 【0088】 上記の実施形態では、前記エッジ部24を管軸方向に一列設けてあるだけであるが、前記エッジ部24を所定間隔を空けて前記管軸方向に複数列(例えば2列)設けてあってもよい。 【図面の簡単な説明】 【図1】 管路における不平均力の支持装置の側面図 【図2】 同装置における要部の縦断面図 【図3】 同装置の正面図 【図4】 同装置の平面図 【図5】 第2実施形態の管路における不平均力の支持装置の側面図 【図6】 図5のB-B視図 【図7】 図5のA-A視図 【図8】 第3実施形態の管路における不平均力の支持装置の側面図 【図9】 図8のA-A視図 【図10】 第3実施形態の管路における不平均力の支持装置の正面図 【図11】 図8のB-B視図 【図12】 第4実施形態の管路における不平均力の支持装置の側面図 【図13】 図12のA-A視図 【図14】 図12のB-B視図 【図15】 図12のC-C視図 【図16】 第4実施形態の管路における不平均力の支持装置の正面図 【図17】 第5実施形態の要部の断面図 【図18】 第6実施形態の要部の断面図 【図19】 同装置を用いた共同溝内配管の例を示す平面図である。 【図20】 従来の共同溝内配管の例を示す平面図である。 【図21】 図20に示す部分の側面図である。 【符号の説明】 3 管体 11 フレーム 12 支持部 23 固定機構 24 エッジ部 26 雄ねじ部材 29 エッジ部 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2006-11-13 |
結審通知日 | 2008-08-18 |
審決日 | 2008-09-01 |
出願番号 | 特願2001-42868(P2001-42868) |
審決分類 |
P
1
123・
832-
ZD
(F16L)
P 1 123・ 856- ZD (F16L) P 1 123・ 121- ZD (F16L) |
最終処分 | 一部成立 |
前審関与審査官 | 遠藤 秀明 |
特許庁審判長 |
岡 千代子 |
特許庁審判官 |
長崎 洋一 関口 哲生 |
登録日 | 2003-09-12 |
登録番号 | 特許第3470804号(P3470804) |
発明の名称 | 管路における不平均力の支持装置 |
代理人 | 谷口 俊彦 |
代理人 | 谷口 俊彦 |
代理人 | 尾崎 雄三 |
代理人 | 清水 英雄 |
代理人 | 高木 祐一 |
代理人 | 重信 和男 |
代理人 | 尾崎 雄三 |
代理人 | 尾崎 雄三 |
代理人 | 梶崎 弘一 |
代理人 | 鈴木 崇生 |
代理人 | 谷口 俊彦 |
代理人 | 鈴木 崇生 |
代理人 | 梶崎 弘一 |
代理人 | 中野 佳直 |
代理人 | 鈴木 崇生 |
代理人 | 梶崎 弘一 |