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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1205599
審判番号 不服2008-9625  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-17 
確定日 2009-10-15 
事件の表示 特願2002-271418「電子写真画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 8日出願公開、特開2004-109438〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯
本願は、平成14年 9月18日の出願であって、平成20年 3月 7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年 4月17日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年 5月19日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。
さらに、同年 6月 6日付けで作成された前置報告書について、平成21年 4月 1日付けで審尋がなされたところ、審判請求人から同年 6月 4日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成20年 5月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年 5月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「電子写真感光体に形成された潜像を現像するために現像剤を担持して回転可能な複数の現像剤担持体と、前記複数の現像剤担持体のそれぞれに対応して現像剤担持体上の現像剤層を規制する複数の現像ブレードと、を有する電子写真画像形成装置において、
画像形成信号受信後、前記複数の現像剤担持体を予備回転させた後に前記複数の現像剤担持体のうち最初の現像剤担持体による画像形成動作を開始するよう構成したことを特徴とする電子写真画像形成装置。」
から
「電子写真感光体に形成された潜像を現像するために現像剤を担持して回転可能な複数の現像剤担持体と、前記複数の現像剤担持体のそれぞれに対応して現像剤担持体上の現像剤層を規制する複数の現像ブレードと、前記複数の現像剤担持体によって前記電子写真感光体に現像された像が転写される中間転写体と、を有する電子写真画像形成装置において、
画像形成信号を受信した後で、かつ前記複数の現像剤担持体のうち最初の現像剤担持体による画像形成動作を開始する前に、前記中間転写体をクリーニングするために前記中間転写体を1周以上回転させるクリーニング期間が設けられ、このクリーニング期間内で、前記複数の現像剤担持体のそれぞれを予備回転させることを特徴とする電子写真画像形成装置。」
に補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「画像形成信号受信後、前記複数の現像剤担持体を予備回転させた後に前記複数の現像剤担持体のうち最初の現像剤担持体による画像形成動作を開始する」との予備回転が行われる時期に関して、「電子写真画像形成装置」が「前記複数の現像剤担持体によって前記電子写真感光体に現像された像が転写される中間転写体」を備える点を追加するとともに、「前記複数の現像剤担持体のうち最初の現像剤担持体による画像形成動作を開始する前に、前記中間転写体をクリーニングするために前記中間転写体を1周以上回転させるクリーニング期間が設けられ、このクリーニング期間内で、前記複数の現像剤担持体のそれぞれを予備回転させる」ことを限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1号によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1号によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.独立特許要件について
(1)刊行物に記載された発明
(刊行物1について)
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-227211号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。(下線は当審において付与した。)

(1-a)「【請求項1】表面に潜像が形成された像担持体に対向する領域に、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、該現像剤担持体上に担持された該現像剤の量を規制する現像剤量規制部材と、該現像剤量規制部材にバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段とを有し、非現像時に該現像剤担持体を予備駆動して該現像剤担持体表面に該現像剤を担持させた後に、該現像剤を用いて像担持体上に形成された潜像を現像する現像器を備えた現像装置において、
該バイアス電圧印加手段によって該現像剤量規制部材に印加するバイアス電圧として、現像時には直流成分と交番成分とからなるバイアス電圧を用い、予備駆動時には直流成分のみからなるバイアス電圧を用いたことを特徴とする現像装置。」

(1-b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置に用いられる現像装置に係り、詳しくは現像剤担持体の予備駆動を行う現像器を備えた現像装置に関するものである。」

(1-c)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種の現像器では、現像剤担持体表面部分が現像器内を1度通過して現像剤の供給や現像剤量の規制を受けただけでは、ベタ画像潜像の現像による現像剤消費量のように比較的多い現像剤消費量に見合うだけの現像剤を、現像剤担持体に供給することは困難である。このため、例えば現像剤担持体の一周分以上にわたるベタ画像の潜像を現像する場合、この現像の間に現像剤担持体上の現像剤量は次第に減少していく。よって、このように現像剤担持体上の現像剤が過度に減少したままの状態で次の潜像の現像を行うと現像濃度の不足を生じてしまう。また、ベタ画像潜像のように現像剤消費量が比較的多い部分を有する潜像を現像した結果、このような現像剤の過度の減少が部分的に生じたままの状態で次の潜像の現像を行うと、現像濃度のむらを生じてしまう。このような不具合は、ベタ画像の形成頻度が高いフルカラーの画像形成装置で特に発生しやすい。このような不具合は、現像開始時点の現像剤担持体上の担持現像剤量を、例えば前述のようなベタ画像の潜像を現像する場合にも、画像上に過度の濃度不足が生じない程度の余裕を持った量に設定すれば防止できる。このためには、過去にいかなる潜像を現像していたとしても、現像開始時点における現像剤担持体上の現像剤量が、上述のように余裕を持った現像剤量になるよう、現像開始に先だって現像剤担持体を駆動して現像剤担持体に現像剤を供給する、現像剤担持体の予備駆動を行えば良い。そして、この現像剤担持体の予備駆動では、現像剤担持体上で現像剤を搬送することになり、現像剤飛散の恐れがあるため、この現像剤担持体の予備駆動は、可能な限り短い時間で終了できることが望ましい。」

(1-d)「【0014】
【実施例】
[実施例1]以下、本発明を、画像形成装置である電子写真複写機(以下、複写機という)の現像装置に適用した第1の実施例について説明する。以下の説明においては、現像剤として、摩擦により負の極性に帯電する例えば非磁性1成分トナー(以下、トナーという)を用いるものとする。図1は本実施例に係る現像装置の概略構成を示す断面図である。本実施例に係る現像装置は、図1に示すように1機の現像器21を備えており、該現像器21のケーシング22上部には、図中矢印aの方向に移動する像担持体としてのベルト状の感光体(以下、感光体ベルトという)1に対向する部分に開口部22aが形成されている。ここで、感光体はベルト状に限られるものではない。また、ケーシング22内には、該開口部22aにおいて感光体ベルト1と対向するように配設された現像剤担持体としての現像ローラ23と、該現像ローラ23の下方に、その表面が該現像ローラ23と摺擦するように配設された現像剤供給部材としての供給ローラ24と、該現像ローラ23上のトナーの量を規制するための現像剤量規制部材としての薄層ブレード25などが設けられている。」

(1-e)「【0033】以上の構成のリボルバ現像ユニット30は、色情報に同期して各現像器21Y、21M、21C、21Bを選択的に現像位置に配置するように回転中心軸を中心に回動し、各現像器21Y、21M、21C、21Bが、現像位置において現像ローラ23Y、23M、23C、23Bを図中矢印b方向に回転させて、順次感光体ベルト1上に形成された対応する静電潜像を現像する。そして、各現像像は図示しない転写紙上に重ね合わされる事により、フルカラー画像を形成する。」

(1-f)「【0040】図7は、感光体ベルト用モータの駆動、待機ユニットへの直流ブレードバイアス電圧の印加、リボルバ回転用モータの駆動、カレントユニットへの直流重畳交流ブレードバイアス電圧の印加のタイミングチャートを示している。なお、待機ユニットにおける現像ローラ予備回転駆動と、待機ユニットへの直流ブレードバイアス電圧の印加とのタイミングは一致しており、カレントユニットの駆動と、カレントユニットへの直流重畳交流ブレードバイアス電圧の印加とのタイミングは一致している。
【0041】そして本実施例のリボルバ現像ユニット30は、カレントユニット、つまり図4ではイエロー現像器21Yよりも、リボルバ現像ユニット30の回転方向上流側に位置するマゼンタ現像器21Mが待機ユニットとなる。待機位置に位置したマゼンタ現像器21Mでは、薄層ブレード25Mに印加する直流ブレードバイアス電圧が、例えば電気的なブレードバイアス切換えにより図7に示すようにONすると同時に現像ローラ23Mが予備回転を始める。そして、この予備回転により、現像ローラ23Mでは、表面にトナーが付着し始め、該表面上のトナーが薄層ブレード25Mによって均一な厚みのトナー層となる。」

(1-g)「【0044】そして、待機位置にある現像器の薄層ブレード、つまり図4ではマゼンタ現像器21Mの薄層ブレード25Mに印加する直流ブレードバイアス電圧がOFFして現像ローラ23Mの予備回転が終了すると同時に、図7に示すようにリボルバ回転用モータがONして作動を開始する。このリボルバ回転用モータの作動により、待機位置にあるマゼンタ現像器21Mは現像位置に配置されてカレントユニットとなる。このとき、待機位置にある現像器よりも、リボルバ現像ユニット30の回転方向上流側に配置されている現像器、つまり図4ではシアン現像器21Cが待機ユニットとなる。
【0045】現像位置にある現像器は、その薄層ブレードに印加する直流重畳交流ブレードバイアス電圧がONされると同時に現像ローラが回転駆動し、感光体ベルト1上の潜像を現像する。そして、待機位置にある現像器、つまり図4中のシアン現像器21Cは、現像位置に配置され現像に使用される前に、その現像ローラ23Cが予備回転を開始する。」

(1-h)「【0048】また、次の現像に使用する現像器の現像ローラを予備回転させ、該現像ローラ表面に均一なトナー層を形成した後に、該現像器を現像位置に配置させて現像を行うので、現像開始時点から現像ローラ表面上での均一なトナー層を用いて良好な現像を行うことができる。」

(1-i)図4として、




(1-j)図7として、




上記の事項をまとめると、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。

「表面に潜像が形成された像担持体に対向する領域に、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、該現像剤担持体上に担持された該現像剤の量を規制する現像剤量規制部材と、該現像剤量規制部材にバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段とを有し、非現像時に該現像剤担持体を予備駆動して該現像剤担持体表面に該現像剤を担持させた後に、該現像剤を用いて像担持体上に形成された潜像を現像する現像器を備えた現像装置であって、
該現像器は回転中心軸を中心に回転自在に設けられたリボルバ現像ユニットに収容される複数の各色現像器であり、各色現像器が待機位置にある時予備回転を行い、その後現像位置に移動されて現像を行うものである、
画像形成装置に用いられる現像装置。」

(2)対比
本願補正発明と刊行物1発明とを比較する。
まず、刊行物1発明における「表面に潜像が形成された像担持体に対向する領域に、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体」、「該現像剤担持体上に担持された該現像剤の量を規制する現像剤量規制部材」は、「回転中心軸を中心に回転自在に設けられたリボルバ現像ユニットに収容される複数の各色現像器」に用いられる、複数のものであるから、それぞれ、本願補正発明における「電子写真感光体に形成された潜像を現像するために現像剤を担持して回転可能な複数の現像剤担持体」、「前記複数の現像剤担持体のそれぞれに対応して現像剤担持体上の現像剤層を規制する複数の現像ブレード」に相当する。
また、刊行物1発明における「画像形成装置に用いられる現像装置」は、露光装置、転写装置、定着装置等の他の装置とともに画像形成装置を形成することは自明の事項であるから、本願補正発明における「電子写真画像形成装置」に相当する。
そして、刊行物1発明において「各色現像器が待機位置にある時予備回転を行い、その後現像位置に移動されて現像を行うものである」のは、「感光体ベルト用モータがONされた後」で、「予備回転された現像器が現像位置へ移動され、カレントユニットが駆動される前」であるから(前記摘記事項(1-j)参照)、「画像形成信号を受信した後」であることは明らかである。
そうすると、刊行物1発明における「各色現像器が待機位置にある時予備回転を行い、その後現像位置に移動されて現像を行うものである」構成と、本願補正発明における「画像形成信号を受信した後で、かつ前記複数の現像剤担持体のうち最初の現像剤担持体による画像形成動作を開始する前に、前記中間転写体をクリーニングするために前記中間転写体を1周以上回転させるクリーニング期間が設けられ、このクリーニング期間内で、前記複数の現像剤担持体のそれぞれを予備回転させる」構成とは、「画像形成信号を受信した後、前記現像剤担持体を予備回転させる」構成で共通する。
さらに、刊行物1発明における「回転中心軸を中心に回転自在に設けられたリボルバ現像ユニットに収容される複数の各色現像器」については、本願明細書及び図面の記載から明らかなとおり、本願補正発明も実施例において同様の構成を有している。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「電子写真感光体に形成された潜像を現像するために現像剤を担持して回転可能な複数の現像剤担持体と、前記複数の現像剤担持体のそれぞれに対応して現像剤担持体上の現像剤層を規制する複数の現像ブレードと、を有する電子写真画像形成装置において、
画像形成信号を受信した後、前記現像剤担持体を予備回転させる、電子写真画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、「複数の現像剤担持体によって前記電子写真感光体に現像された像が転写される中間転写体」を有し、かつ、「前記中間転写体をクリーニングするために前記中間転写体を1周以上回転させるクリーニング期間が設けられ」ているのに対し、
刊行物1発明には、そのような特定がない点。

[相違点2]
「画像形成信号を受信した後、前記現像剤担持体を予備回転させる」構成に関し、本願補正発明においては「前記複数の現像剤担持体のうち最初の現像剤担持体による画像形成動作を開始する前に、(前記中間転写体をクリーニングするために前記中間転写体を1周以上回転させるクリーニング期間が設けられた、)前記中間転写体のクリーニング期間内で、前記複数の現像剤担持体のそれぞれを予備回転させる」のに対し、
刊行物1発明においては、「各色現像器が待機位置にある時予備回転を行い、その後現像位置に移動されて現像を行うもの」であって、「前記複数の現像剤担持体のうち最初の現像剤担持体による画像形成動作を開始する前に、前記中間転写体のクリーニング期間内で、前記複数の現像剤担持体のそれぞれを予備回転させる」との特定がない点。

[相違点3]
刊行物1発明は、「該現像剤量規制部材にバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段」を有するのに対し、
本願補正発明には、そのような特定がない点。


(3)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1について]
まず、刊行物1発明は中間転写体を有するものではないが、電子写真画像形成装置において、中間転写体方式は、記録媒体の種類に制限が少なく、厚紙等にも転写可能であり、また、ベルト形状であればレイアウトの自由度が高く、小型化が可能である、といった長所を有するため、文献を提示するまでもなく一般に広く用いられている周知の技術であるから、中間転写体を採用するか否かは、当業者が適宜選択できる設計的事項に過ぎない。
そして、中間転写体のクリーニング期間については、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-75683号公報(段落【0037】参照)に「画像形成開始時にクリーニング手段によって中間転写体5をクリーニングし、その後で画像形成を開始する」と記載されるとおり、画像形成動作を開始する前に中間転写体をクリーニングすることも広く知られた周知の技術であって、中間転写体をクリーニングする際に、中間転写体をどの程度回転させるかも当業者が適宜決定できる設計的事項である。
したがって、「複数の現像剤担持体によって前記電子写真感光体に現像された像が転写される中間転写体」を有し、かつ、「前記中間転写体をクリーニングするために前記中間転写体を1周以上回転させるクリーニング期間が設けられ」ている点は、当業者が適宜為し得た設計的事項である。

[相違点2について]
つぎに、刊行物1発明の予備回転については、「現像ローラ表面に均一なトナー層を形成した後に、該現像器を現像位置に配置させて現像を行うので、現像開始時点から現像ローラ表面上での均一なトナー層を用いて良好な現像を行うことができる」(前記摘記事項(1-h)参照)ことを目的としたものであるから、刊行物1発明における予備回転は、複数の現像剤担持体(現像器)のそれぞれについて行われることが必要であり、かつ、現像開始前であればよいことは自明の事項である。
してみると、複数の現像剤担持体の予備回転を、各現像剤担持体について逐次、待機位置において予備回転を行った後、それぞれ現像位置で現像を行う構成とするか、それとも、それぞれの予備回転を画像形成動作が開始される前に行うかは、当業者が、コストと性能、費用対効果を考慮して適宜選択し得る程度の事項に過ぎない。
そして、現像剤担持体の予備回転を行う際に、現像剤担持体の予備回転と中間転写体のクリーニングとは、ともに画像形成動作を開始する前に行われるのであるから、両者を並行して処理し、中間転写体のクリーニング期間内で予備回転を行うようなすことは、電子写真画像形成装置に一般に求められるプリント時間の短縮化の観点からすれば当業者が適宜なし得る程度の事項に過ぎない。
したがって、「記複数の現像剤担持体のうち最初の現像剤担持体による画像形成動作を開始する前に、(前記中間転写体をクリーニングするために前記中間転写体を1周以上回転させるクリーニング期間が設けられた、)前記中間転写体のクリーニング期間内で、前記複数の現像剤担持体のそれぞれを予備回転させる」構成を採用することは、当業者が適宜為し得たことである。

[相違点3について]
バイアス電圧印加手段に関して、本願補正発明においても、何らかのバイアス電圧印加手段を有することは、本願明細書の記載(「薄層化された現像ローラ305上のトナーは、回転により現像部に搬送され、所定の現像バイアスを印加することにより感光体ドラム1の静電潜像をトナー像に可視化させる。」、段落【0048】)から明らかである。
そして、トナーへの電荷注入による帯電を積極的に利用するため、現像ローラ(現像剤担持体)への電圧印加に加えて、規制ブレード(現像剤量規制部材)にもバイアスを印加することも周知の技術である。
したがって、「該現像剤量規制部材にバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段」を有するか否かは、設計上の微差に過ぎない。

[本願補正発明が奏する効果について]
そして、本願補正発明が有する「予備回転のための時間を別途設ける必要がなく、画像形成時間が長くなることもない」との効果については、並行処理によれば処理のための時間をそれぞれ設けることなく、短時間で完了させることができることは一般に広く知られる周知の技術に過ぎず、並行処理及びその効果が当業者に周知である以上、前記の効果は当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。

(4)請求人の主張について
また、請求人は、平成20年 5月19日付けで補正された請求理由において、『刊行物1の発明にあっては、4個の現像器を順次感光体ベルトに対向させて現像するとき、それぞれの現像器が現像位置に至る1つ前の待機位置において予備回転するようにしている。このように、現像位置と異なる待機位置において予備回転をさせるためには、現像駆動の駆動源とは別に予備回転のための駆動源を設ける必要があり、構成が複雑になる。これに対して本願発明は「画像形成信号を受信した後で、かつ前記複数の現像剤担持体のうち最初の現像剤担持体による画像形成動作を開始する前に、前記複数の現像剤担持体のそれぞれを予備回転させる」ために、現像位置での予備回転が可能であり、予備回転のための駆動源を別途設ける必要がない。』と主張している。
しかしながら、本願補正発明において、予備回転を行う位置に関してなんら限定されるものではないから、上記主張は請求項の記載に基づかないものである。
仮に、本願補正発明において、予備回転を行う位置が特定されていたとしても、上記(3)で検討したとおり、予備回転を行う位置や時期の設定は、当業者がコスト、性能等を考慮して適宜決定できる設計的事項である。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(5)まとめ
以上のように、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができたものではない。

3.補正却下の決定についてのむすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1号によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年 5月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成19年 7月26日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであり、特に、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「電子写真感光体に形成された潜像を現像するために現像剤を担持して回転可能な複数の現像剤担持体と、前記複数の現像剤担持体のそれぞれに対応して現像剤担持体上の現像剤層を規制する複数の現像ブレードと、を有する電子写真画像形成装置において、
画像形成信号受信後、前記複数の現像剤担持体を予備回転させた後に前記複数の現像剤担持体のうち最初の現像剤担持体による画像形成動作を開始するよう構成したことを特徴とする電子写真画像形成装置。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、及び、その記載事項は、前記第2.2.(1-a)?(1-j)で示したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記第2.2.で検討した本願補正発明から、「前記複数の現像剤担持体によって前記電子写真感光体に現像された像が転写される中間転写体」を備える点を削除するとともに、予備回転が行われる時期が、「前記中間転写体をクリーニングするために前記中間転写体を1周以上回転させるクリーニング期間が設けられ、このクリーニング期間内で」ある点を削除したものである。

してみると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2.2.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
なお、請求人は、当審からの審尋への回答書において、請求項1を補正する用意がある旨記載しているが、特許法が補正の時期的制限を設けていることの趣旨に鑑みて、補正の機会を設けることとはしない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-05 
結審通知日 2009-08-11 
審決日 2009-08-28 
出願番号 特願2002-271418(P2002-271418)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03G)
P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 恭  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 大森 伸一
柏崎 康司
発明の名称 電子写真画像形成装置  
代理人 特許業務法人中川国際特許事務所  

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