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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない G21H
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正しない G21H
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正しない G21H
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない G21H
管理番号 1206068
審判番号 訂正2009-390073  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2009-06-03 
確定日 2009-10-29 
事件の表示 特許第3065590号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 請求の趣旨
本件審判請求の趣旨は、特許第3065590号(平成10年11月13日特許出願、平成12年5月12日設定登録)の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、その訂正事項は以下のとおりである。(当審注:以下において、訂正箇所に下線を付す。)

(1)訂正事項1:明細書の段落【0016】の
「【0016】
図1に示したように、本第1実施形態の物質活性化装置10は、放射線発生手段としての放射性物質を帯状の金属板と共に積層したものである。
前記放射性物質層11は、微弱線量の放射線を放射するモナズ石の粉末を、放射線を吸収しない合成樹脂を用いて帯板状に成形したものである。
また、この放射性物質層11の下側には、導電性を有する金属板としての帯板状の銅板12,13が積層されている。
一方、前記放射性物質層11の上側には放射線を遮断するための帯板状の鉛板14が積層されるとともに、さらにその上側には前述した銅板12,13と同一の銅板15が積層されている。
そして、この放射性物質層11、銅板12,13、鉛板14,銅板15は、リベット16を用いて相対スライド可能な状態でかしめられている。」
を、
「【0016】
図1に示したように、本第1実施形態の物質活性化装置10は、放射線発生手段としての放射性物質を帯状の金属板と共に積層したものである。
前記放射性物質層11は、微弱線量の放射線を放射するモナズ石等を含む花崗岩あるいはペグマタイトの粉末を、放射線を吸収しない合成樹脂を用いて帯板状に成形したものである。
また、この放射性物質層11の下側には、導電性を有する金属板としての帯板状の銅板12,13が積層されている。
一方、前記放射性物質層11の上側には放射線を遮断するための帯板状の鉛板14が積層されるとともに、さらにその上側には前述した銅板12,13と同一の銅板15が積層されている。
そして、この放射性物質層11、銅板12,13、鉛板14,銅板15は、リベット16を用いて相対スライド可能な状態でかしめられている。」
と訂正する。

(2)訂正事項2:明細書の段落【0018】の
「【0018】
これにより、放射性物質層11が放射する100ミリシーベルト程度の放射線は、ダクトD内を流れる吸入空気に作用してこれをイオン化させる。
同時に、このイオン化の際に生じた電荷が金属層12,13に帯電して電界および磁界を生じさせるとともに、このようにして生じた電界および磁界がイオン化した吸入空気に作用し、吸入空気の活性化を大幅に促進させる。
そして、このように活性化された空気が図示されない自動車エンジンのシリンダ内に供給されると、シリンダ内に噴射された燃料と充分に混合されるので、シリンダ内における燃料の燃焼効率が大幅に高まり、燃料消費率の低減および排気ガスの清浄化を促進することができる。」
を、
「【0018】
これにより、放射性物質層11が放射する100ナノシーベルト程度の放射線は、ダクトD内を流れる吸入空気に作用してこれをイオン化させる。
同時に、このイオン化の際に生じた電荷が金属層12,13に帯電して電界および磁界を生じさせるとともに、このようにして生じた電界および磁界がイオン化した吸入空気に作用し、吸入空気の活性化を大幅に促進させる。 そして、このように活性化された空気が図示されない自動車エンジンのシリンダ内に供給されると、シリンダ内に噴射された燃料と充分に混合されるので、シリンダ内における燃料の燃焼効率が大幅に高まり、燃料消費率の低減および排気ガスの清浄化を促進することができる。」
と訂正する

(3)訂正事項3:明細書の段落【0021】の
「【0021】
図4に示したように、本第2実施形態の物質活性化装置20は、導電性の金属である鋼管から成形された自動車の排気管EPを、導電性の金属層としてそのまま活用するものである。
すなわち、排気管EPの周りには、上下一対の半円筒状の保持部材21,22が、そのフランジ21a,22a同士をボルトBで締め付けることにより固定されている。そして、排気管EPと前記保持部材21,22との間の形成された隙間には、放射性物質層としてのモナズ石の粉末23が、図示されない耐熱シールを用いて密封状態に封入されている。」

「【0021】
図4に示したように、本第2実施形態の物質活性化装置20は、導電性の金属である鋼管から成形された自動車の排気管EPを、導電性の金属層としてそのまま活用するものである。
すなわち、排気管EPの周りには、上下一対の半円筒状の保持部材21,22が、そのフランジ21a,22a同士をボルトBで締め付けることにより固定されている。そして、排気管EPと前記保持部材21,22との間の形成された隙間には、放射性物質層としてのモナズ石等を含む花崗岩あるいはペグマタイトの粉末23が、図示されない耐熱シールを用いて密封状態に封入されている。」
と訂正する。

(4)訂正事項4:明細書の段落【0022】の
「【0022】
これにより、排気管EP内を流れる自動車エンジンの排気ガスに向かってモナズ石23が放射する放射線の効果は、排気管EPによって形成される金属層によって大幅に高められる。
したがって、排気管EP内を流れる排気ガスに含まれる一酸化炭素や二酸化炭素若しくは窒素酸化物等の化合物は、放射線によってイオン化されると同時に、導電性の金属層としての排気管EPが生じさせる電界および磁界によって大幅に活性化された状態で触媒装置に送られ、きわめて効率よく清浄化される。」

「【0022】
これにより、排気管EP内を流れる自動車エンジンの排気ガスに向かってモナズ石等を含む花崗岩あるいはペグマタイトの粉末23が放射する放射線の効果は、排気管EPによって形成される金属層によって大幅に高められる。
したがって、排気管EP内を流れる排気ガスに含まれる一酸化炭素や二酸化炭素若しくは窒素酸化物等の化合物は、放射線によってイオン化されると同時に、導電性の金属層としての排気管EPが生じさせる電界および磁界によって大幅に活性化された状態で触媒装置に送られ、きわめて効率よく清浄化される。」
と訂正する。

(5)訂正事項5:明細書の段落【0025】の
「【0025】
図5に示したように、本第3実施形態の物質活性化装置30は、導電性の金属である自動車エンジンのシリンダブロックCBを、導電性の金属層としてそのまま活用するものである。
すなわち、シリンダブロックCBの表面には、上下一対の保持部材31,32によって密封状態に保持されたモナズ石の粉末33が、ボルトBによって固定されている。なお、シリンダブロックCBに密着する保持部材32は、鉄鋼等の導電性の金属材料から成形することが好ましい。」

「【0025】
図5に示したように、本第3実施形態の物質活性化装置30は、導電性の金属である自動車エンジンのシリンダブロックCBを、導電性の金属層としてそのまま活用するものである。
すなわち、シリンダブロックCBの表面には、上下一対の保持部材31,32によって密封状態に保持されたモナズ石等を含む花崗岩あるいはペグマタイトの粉末33が、ボルトBによって固定されている。なお、シリンダブロックCBに密着する保持部材32は、鉄鋼等の導電性の金属材料から成形することが好ましい。」
と訂正する。

(6)訂正事項6:明細書の段落【0026】の
「【0026】
これにより、モナズ石33が放射する放射線の効果は、導電性の金属層を形成するシリンダブロックCBおよび保持部材32によって大幅に増幅されるので、シリンダブロックCB内を流れる自動車エンジンの吸入空気若しくは排気ガスを効率よく活性化させることができる。」

「【0026】
これにより、モナズ石等を含む花崗岩あるいはペグマタイトの粉末33が放射する放射線の効果は、導電性の金属層を形成するシリンダブロックCBおよび保持部材32によって大幅に増幅されるので、シリンダブロックCB内を流れる自動車エンジンの吸入空気若しくは排気ガスを効率よく活性化させることができる。」
と訂正する。

(7)訂正事項7:明細書の段落【0098】の
「【0098】
以上、本発明に係る物質活性化装置の各実施形態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、放射線発生手段としてモナズ石の粉末を用いているが、法律上許容される範囲内でその他の放射線発生物質を利用することができる。」

「【0098】
以上、本発明に係る物質活性化装置の各実施形態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、放射線発生手段としてモナズ石等を含む花崗岩あるいはペグマタイトの粉末を用いているが、法律上許容される範囲内でその他の放射線発生物質を利用することができる。」
と訂正する。


第2 訂正の拒絶の理由
これに対し、当審が平成21年7月8日付けで通知した訂正の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

「2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の有無
(1)訂正事項1、3?7について
訂正事項1、3、5、7は「モナズ石の粉末」を、訂正事項4、6は、「モナズ石」を、いずれも「モナズ石等を含む花崗岩あるいはペグマタイトの粉末」とする訂正である。

ここで、モナズ石は、例えば広辞苑第三版に
「モナズ‐いし【?石】
(monazite)セリウム・トリウム・ジルコン・イットリウムなどを含む鉱物。単斜晶系、柱状結晶。塊状または砂状で、色は黄・褐・赤色など。希土類元素の重要原料。[株式会社岩波書店 広辞苑第三版]」
と記載されているように単体で存在する周知の鉱物であって、それ自体明りょうであるから、上記訂正事項1、3?7は、明りょうでない記載の釈明を目的としたものでない。
また、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正のいずれを目的としたものでもない。

そして、訂正前の願書に添付した明細書又は図面には、放射線を放射する物質としてモナズ石が記載されると共に、段落【0098】に「例えば、上述した実施形態においては、放射線発生手段としてモナズ石の粉末を用いているが、法律上許容される範囲内でその他の放射線発生物質を利用することができる。」と記載されているのみであるところ、花崗岩やペグマタイトが石英や長石等の複数の鉱物を含む岩石であることは一般的に周知の事項である(例えば、広辞苑第三版には、
「かこう‐がん【花崗岩】
(granite)深成岩の一。石英・正長石・斜長石・雲母などを主成分とする岩石。完晶質粒状の組織をなし、質が堅牢・美麗なので、建築・土木用材として賞用、また、分解したものは製陶の材料。御影(ミカゲ)石。[株式会社岩波書店 広辞苑第三版]」
と記載されている。)から、このように複数の鉱物からなる岩石を使用することに関しては、訂正前の願書に添付した明細書又は図面に記載されておらず、当業者にとって自明な事項でもない。
よって、上記訂正事項1、3?7は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものでない。

また、請求項1?22に記載された発明は、発明特定事項として「放射線発生手段」を有するが、明細書の発明の詳細な説明の記載を「モナズ石」から「モナズ石等を含む花崗岩あるいはペグマタイト」と訂正することにより、上記「放射線発生手段」の具体例として、モナズ石以外の放射線発生物質を含む花崗岩あるいはペグマタイト、が追加されたことになるため、上記訂正事項1、3?7は、実質上、特許請求の範囲を拡張するものである。

よって、訂正事項1、3?7は、特許法第126条第1項ただし書き各号のいずれにも該当せず、同条第3?4項の規定にも適合しない。


(2)訂正事項2について
訂正事項2は、放射性物質層11が放射する放射線を「100ミリシーベルト」から「100ナノシーベルト」とする訂正である。

願書に添付した明細書又は図面には、訂正事項2で訂正された箇所以外に、放射性物質層が放射する放射線量については何ら記載されていないため、明細書又は図面の記載などから「ミリ」シーベルトが明らかな誤記であったと認めるべき根拠を見いだすことはできない。
また、仮に、これが年間線量当量であって、法律上許容される範囲と比較して「100ミリシーベルト」が過大すぎるとしても、100nSv/年では自然放射線以下の線量となってしまい、物質を活性化させるために放射線を照射する、という本願の趣旨と矛盾する。加えて、単位の接頭語として、ミリ(m)とナノ(n)との間にマイクロ(μ)があることを考慮すると、学術的に見ても「m」が一義的に「n」の誤記であったとする根拠がない。
してみれば、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められる根拠がない。
よって、上記訂正事項2は、当該誤記の訂正を目的としたものとはいえない。

請求人は、平成21年6月3日付け請求書において、「一方、願書に最初に添付した明細書の段落【0098】に「法律上許容される範囲内でその他の放射線発生物質を利用することができる」と記載されているように、本特許発明は「法律上許容される範囲内」において成立しているものであり、本来「100ナノシーベルト」であるところを「100ミリシーベルト」とタイプミスしたままでは、法律上許容される範囲を数十倍超過することになり、特許法第36条第4項第1号に規定されているように「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をできる程度に明確かつ十分に記載したものである」とは言えないと指摘されるおそれがある。これにより、訂正事項2は「誤記の訂正」を目的とした訂正を行うものである。」と主張している。
しかしながら、上記したように、「m」が一義的に「n」のタイプミスであったとする客観的な根拠がない。
しかも、「法律上許容される範囲を数十倍超過することにな」ると述べているが、どのような法律に基づいて「許容される範囲を数十倍超過」としているのか不明である。(例えば、電離放射線障害防止規則は、放射線業務従事者の被ばく限度を「一年間につき五十ミリシーベルトを超えない」というようにシーベルトを用いて定めているが、本願はシーベルトのみで記載されているから、一年間等の時間の単位を必要とする前記規則とは単位が異なるため、前記規則は請求人の主張する法律には含まれないこととなる。)

以上の理由により、請求人の主張を参酌しても、上記訂正事項2は誤記の訂正を目的としたものとはいえない。
そして、上記訂正事項2が特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでないことは明らかであるし、仮に明りょうでない記載の釈明を目的としたものであったとしても、前述のとおり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものでもない。
なお、上記訂正事項2が、仮に、誤記の訂正を目的とするものであったとしても、願書に最初に添付した明細書又は図面には放射性物質層の放射線量が「100ナノシーベルト」であることは何ら記載されていない上、そのことが願書に最初に添付した明細書又は図面の記載から明らかであるとする根拠がないことは前述の理由と同様であるので、上記訂正事項2は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではない。

よって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書き各号のいずれにも該当せず、同条第3項の規定にも適合しない。


3 まとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き各号のいずれにも該当せず、同条第3?4項の規定にも適合しない訂正事項を含むものである。
したがって、本件訂正は認められない。」


第3 当審の判断
上記訂正の拒絶の理由に対して、指定した期間内である平成21年8月10日付けで意見書が提出された。
その主張内容について検討すると、以下のとおりである。

(1)訂正事項1、3?7について
請求人は、上記意見書において、「しかしながら、「広辞苑第三版」は「国語辞典」であり、「モナズ石」が如何なる鉱物であるかを詳細に記載したものではありません。」と主張するとともに、審判請求書に添付した特開平6-123004号公報(以下、「参考例1」という。)、のほかに、2008年9月17日?19日にわたって開催された「日本地球化学会第55会年会」において星野他が発表した「花崗岩質岩石の生成機構の指標としてのモナズ石の希土類元素パターン」(日本地球化学会年会要旨集,vol55(2008) pp.103-/http://www.jstage.jst.go.jp/article/geochemproc/55/0/103/_pdf/-char/ja/)(以下、「参考例2」という。)及び、インターネット上の百科事典である「ウィキペディア」における「モナズ石」の項(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%8A%E3%82%BA%E7%9F%B3)(以下、「参考例3」という。)を挙げ、「これにより、「モナズ石」が、それ自体は単体で存在する鉱物ではなく、花崗岩等に含まれて産出するものであることは明らかであります。
一方、モナズ石は、それ自体が単体で生産され販売されているものでないことが、当業者には周知の事実です。
これにより、特許第3065590号の明細書に「モナズ石」と記載したままでは、特許法第36条第4項第1号に規定されているように「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をできる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは言えない」と指摘されるおそれがあります。」と主張する。

しかしながら、上記訂正の拒絶の理由にも記したように、「モナズ石」がいかなる鉱物であるかは、国語辞典にも記載されているように周知の鉱物である。
また、請求人の提示する参考例2には、「そこで、褐レン石と同様に軽希土類元素(LREE)を主成分として固溶するモナズ石に対しても、正確な化学組成を決定し、その鉱物の生成機構と母岩形成の指標としての希土類リン酸塩鉱物の意義を解明することを研究目的とした。」、「日本列島に産出する21地域のモナズ石の化学組成は、日本電子製電子線マイクロアナライザー(EPMA)の波長分散型X線分光器(WDS)によって測定された。・・・(中略)・・・。また、花崗岩質岩石の種類の違いによるモナズ石の化学組成の傾向を明らかにするために、イルメナイト系列とマグネタイト系列の花崗岩、ペグマタイト、アプライト中に産出するものを研究試料とした。」及び「この結果とHoshino et al.(2006)の結果を対応させると、本研究のモナズ石の母岩の種類の違いによる希土類元素パターンの違いは、褐レン石に比べて、花崗岩、ペグマタイト、アプライトのような岩石種の分化の程度をより明瞭に反映することが明らかとなった。」と記載されているから、「モナズ石」は、当業者であれば花崗岩やペグマタイトからモナズ石だけを分離し、その化学組成を測定できる程度に単体で存在し得る鉱物であることが明らかである。
さらに、請求人の提示する参考例3には、「モナズ石(モナズせき、monazite-(Ce)、モナザイト)は、鉱物(リン酸塩鉱物)の一種。ペグマタイト、花崗岩、片麻岩、砂岩などに含まれる。通常、小さな孤立した結晶として発生する。」及び「モナザイトの語源は、ギリシア語の mona`zein (孤立する)であり、結晶が孤立して存在するところから来ている。」と記載されており、「モナズ石」と表題の付いた粉末状の写真が掲載されているから、「モナズ石」は、ペグマタイトや花崗岩の中に孤立した結晶として単体で存在する鉱物であり、且つモナズ石だけを分離可能であることが明らかである。

してみれば、上記意見書の主張を採用すべき根拠は何ら見いだせず、「モナズ石」との記載のみであっても、それがどのような物質であるかは当業者にとって何ら不明りょうではないから、訂正事項1、3?7は、明りょうでない記載の釈明を目的としたものでもない。
また、訂正事項1、3?7は、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正いずれを目的としたものでもないから、特許法第126条第1項ただし書き各号のいずれにも該当しない。

さらに、訂正事項1、3?7が、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものでないこと、及び実質上、特許請求の範囲を拡張するものであること、については、上記訂正の拒絶の理由のとおりである。
よって、訂正事項1、3?7は、特許法第126条第3?4項の規定にも適合しない。


(2)訂正事項2について
請求人は、上記意見書において、「しかしながら、このタイプミスは「不注意」によるものであり、その客観的な根拠を提示することは到底できるものではありません。」と主張している。
ここで、「「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、明細書又は図面の記載などから明かな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう」(審判便覧 改訂12版 54-10項「3.誤記の訂正」)のであるから、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものとの客観的な根拠がない以上、訂正事項2が誤記の訂正を目的としたものとは認められない。

請求人は、上記意見書において、「しかしながら、特許第3065590号の明細書の[0098]段落に「法律上許容される範囲内で」と記載されているところ、当該法律が「電離放射線障害防止規則」を意味するものであることは、当業者には自明なことであります。」とも主張しているが、仮に、当該主張を認めたとしても、「電離放射線障害防止規則」においても、上記訂正の拒絶の理由に記したように「一年間につき五十ミリシーベルトを超えない」(同規則第4条第1項)というように、ミリシーベルトの単位をも表記に用いているから、当該主張を斟酌しても、「ミリシーベルト」が「ナノシーベルト」の誤記であったとは認められない。

また、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的としたものでもないから、特許法第126条第1項ただし書き各号のいずれにも該当しない。

仮に、訂正事項2が、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであったとしても、願書に添付した明細書又は図面には、訂正事項2で訂正された箇所以外に、放射性物質層が放射する放射線量については何ら記載されていないから、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものでもない。
なお、訂正事項2が、仮に、誤記の訂正を目的とするものであったとしても、願書に最初に添付した明細書又は図面には放射性物質層の放射線量が「100ナノシーベルト」であることは何ら記載されていない上、そのことが願書に最初に添付した明細書又は図面の記載から明らかであるとする根拠がないことは前述の理由と同様であるので、訂正事項2は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではない。

よって、訂正事項2は、特許法第126条第3項の規定にも適合しない。


第4 むすび
以上のとおり、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き各
号のいずれにも該当せず、同条第3?4項の規定にも適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-25 
結審通知日 2009-08-27 
審決日 2009-09-14 
出願番号 特願平10-323833
審決分類 P 1 41・ 854- Z (G21H)
P 1 41・ 841- Z (G21H)
P 1 41・ 852- Z (G21H)
P 1 41・ 853- Z (G21H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 尚英  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 今関 雅子
小松 徹三
登録日 2000-05-12 
登録番号 特許第3065590号(P3065590)
発明の名称 物質活性化方法および装置  
代理人 宮嶋 学  
代理人 永井 浩之  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 岡田 淳平  
代理人 吉武 賢次  

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