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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1206490
審判番号 不服2008-22334  
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-01 
確定日 2009-11-02 
事件の表示 特願2003-333740「現像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月14日出願公開、特開2005- 99485〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成15年9月25日の出願であって、平成19年3月13日付けで通知した拒絶理由に対して、同年5月28日付けで手続補正書が提出され、続いて同年12月10日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対して平成20年2月8日付けで意見書のみが提出され、同年7月29日付けで拒絶査定がなされたものであって、これに対し、同年9月1日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月1日付けで手続補正書が提出され、その後、平成21年6月22日付けで、当審の審尋に対する回答書が提出されたものである。

上記平成20年10月1日付けの手続補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項2を、補正後の新たな請求項1とするものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1号によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定する「請求項の削除」に該当し、適法な補正と認める。
そして、本願の請求項1に係る発明は、上記手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のものと認められる。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)

「磁界発生部材を内包しトナーを搬送する回転スリーブと、前記回転スリーブの外周面上に形成されるトナー層の厚みを規制する磁性体の板状部材と、前記磁性体の板状部材に対して前記回転スリーブの回転方向上流側の側面に取付けられたマグネットとを備える現像装置であって、
前記マグネットは、前記回転スリーブ側の端部近傍に於ける前記磁性体の板状部材と接する面と反対の側面に、先端側ほど厚みが薄くなる傾斜部が形成され、
前記傾斜部は、前記回転スリーブ側の最先端部が、前記磁性体の板状部材に接するように形成されている現像装置。」


2.引用例に記載された発明
(1)引用例1
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2003-167426号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 固定マグネットを内包する回転スリーブと、この回転スリーブ上に形成されるトナー層の厚みを規制するトナー層厚規制部材とを有する、磁性一成分現像剤を用いた現像装置において、前記トナー層厚規制部材は、磁性体の板状部材から構成されたブレードと、このブレードにおける前記回転スリーブ回転方向上流側に取り付けられた磁石とを備え、
前記ブレードは、前記回転スリーブとの対向部に薄肉エッジ部が形成されたものであることを特徴とする現像装置。
【請求項2】 前記現像装置は、前記回転スリーブに前記ブレードが対向する位置よりも下側からトナーが供給される様に前記回転スリーブ及び前記ブレードが配置され、
前記回転スリーブの回転が、前記トナーが供給される部分から上方に向かう方向である請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】 前記薄肉エッジ部は、前記回転スリーブに対向する先端の厚みが0.4?0.8mmである請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】 前記磁石における前記回転スリーブ側の先端が、回転スリーブから離れる方向に前記薄肉エッジ部の先端よりも0.1?0.5mm後退した位置である請求項1?3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】 請求項1?4のいずれかに記載の現像装置を備え、この現像装置によって感光体上に形成された静電潜像を現像するものであることを特徴とする画像形成装置。」

(1b)「【0041】図3の(a)は上記現像ローラ14と上記トナー層厚規制部材16を示す部分拡大断面図であり、(b)はこのブレード-回転スリーブ間部分を更に拡大した断面図である。尚図2と同じ構成部分については同一の符号を付して重複説明を避ける。
【0042】上記ブレード11は磁性体の板状部材(例えば磁性ステンレス鋼、具体的にはSUS340やSUS430等)から構成されており、その回転スリーブ13との対向部に薄肉エッジ部17が形成されている。この薄肉エッジ部17は回転スリーブ13に対し、所定の間隔W_(1)(例えば0.2?0.4mm)を開けて回転スリーブ軸方向に平行に延在する様に配設されている。該薄肉エッジ部17の先端17aにおける厚みT_(2)は例えば0.4mm(好ましい厚みT_(2)の範囲としては0.4?0.8mm)であり、薄肉エッジ部17の突出長さL_(1)としては例えば0.5mm(好ましい突出長さL1の範囲としては0.3?0.8mm)である。ブレード11の幹部18の厚みT_(3)は例えば2mmであり、撓むことなくしっかりと薄肉エッジ部17の位置を保持している。この幹部18から上記薄肉エッジ部17への移行部19は斜めに傾斜する様にして厚みが徐々に薄くなっている。
【0043】上記磁石12は厚さT_(4)が例えば2mm、長さL_(2)が例えば10mmであり、現像ローラ14との対向側が、現像ローラ内マグネット15のブレード対向部分の磁極(S_(1))と同じS極で、反対側がN極となっている。該磁石12の現像ローラ14との対向側端(磁石12における回転スリーブ側の先端)12aは、上記薄肉エッジ部17の先端17aよりも現像ローラ14から離れており、薄肉エッジ部先端17aと磁石12の対向側端12aの間隔W_(2)は、例えば0.3mm(好ましいW_(2)としては0.1?0.5mm)である。」

(1c)上記(1b)において参照する【図3】は、以下のとおりである。



上記(1a)?(1c)の摘記事項等を総合して勘案すると、引用例1には以下の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が実質的に記載されている。
「固定マグネットを内包する回転スリーブと、この回転スリーブ上に形成されるトナー層の厚みを規制するトナー層厚規制部材とを有する、磁性一成分現像剤を用いた現像装置において、
前記トナー層厚規制部材は、磁性体の板状部材から構成されたブレードと、このブレードにおける前記回転スリーブ回転方向上流側に取り付けられた磁石とを備える現像装置であって、
前記磁石は厚さが例えば2mmである現像装置。」


(2)引用例2
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開昭63-135973号公報(原査定の引用文献4。以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(2a)「第3図の(a)?(e)は各種形状の磁性体のみから成る規制部材で矢印方向に回転するスリーブ2上に配設され、スリーブ2の内側にあって固定されている磁石ロール3の磁力と協同して現像剤層厚を規制する。第3図(a)は下面がスリーブ2平面に平行に配置された断面矩形の規制部材、第3図(b)は断面楔形の規制部材で下端の突出部尖端にスリーブ2平面と平行な平面を有する第3図(c)はその下端にスリーブ2の上流側に向って下降する傾斜面を有し規制された現像剤流を主として下降先端近傍で磁気的に規制すると共に規制された現像剤を下降傾斜面に流出することにより現像剤の流動を円滑ならしめごみなどの蓄積を防止する構成としている。第3図(d)は、41,42の複数の規制部材を設けて段階的に規制できる構成としている。又第3図(e)はスリーブ2の下流側に向って下降する傾斜面を有し、かつ下端にスリーブ2の表面と平行な平面を有し、規制部材4の規制部へ現像剤が円滑に流入できるようにしている。」(4頁右下欄12行?5頁左上欄10行)

(2b)上記(2a)において参照する第3図(e)は、以下のとおりである。




(3)引用例3
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開昭63-135972号公報(原査定の引用文献5。以下、「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(3a)「第2図の(a)?(e)は各種形状の磁性体のみから成る規制部材で矢印方向に回転するスリーブ2上に配設され、スリーブ2の内側にあって回転する磁石ロール3の磁力と協同して現像剤層厚を規制する。第2図(a)は下面がスリーブ2平面に平行に配置された断面矩形の規制部材、第2図(b)は断面楔形の規制部材で下端の突出部尖端にスリーブ2平面と平行な平面を有する。第2図(c)はその下端にスリーブ2の上流側に向って下降する傾斜面を有し規制された現像剤流を主として下降先端近傍で磁気的に規制すると共に規制された現像剤を下降傾斜面に流出することにより現像剤の流動を円滑ならしめ、ごみなどの蓄積を防止する構成としている。第2図(d)は、41,42の複数の規制部材を設けて段階的に規制できる構成としている。又第2図(e)はスリーブ2の下流側に向って下降する傾斜面を有し、かつ下端にスリーブ2の表面と平行な平面を有し、規制部材4の規制部へ現像剤が円滑に流入できるようにしている。」(4頁右上欄19行?左下欄17行)」

(3b)上記(3a)において参照する第2図(e)は、以下のとおりである。




(4)引用例4
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開昭63-313180号公報(原査定の引用文献7。以下、「引用例4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(4a)「第1図は本発明を実施するための一例としての現像装置の概略を示す構成断面図である。」(2頁右下欄10行?11行)

(4b)「さらに、補助ブレードに接して固定されるキャリア返し5は、非磁性ブレード3の先端より1mm程度の段差をつけて現像スリーブlの長手方向に平行に配置されている。このキャリア返し5は、図示のごとくスリーブ表面から離れるにしたかって、スリーブlの回転方向上流側に、すなわち容器10の内部に向って傾いている。この傾きによって、塗布量規制部材の近傍において過剰にトナーを取り込むことを防止している。」(3頁右上欄15行?左下欄3行)

(4c)上記(4a)において参照する第1図は、以下のとおりである。




(5)引用例5
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開昭63-225268号公報(原査定の引用文献9。以下、「引用例5」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(5a)「第3図は現像剤限定部材26の非磁性ブレード側に磁性体50を設置した場合を示してある。」(5頁12行?13行)

(5b)「しかし、単純に磁性粒子の搬送性を低下させることは前述のトナーの取り込み作用を考慮すると、不可能である。又、規制部で上述の様にスリーブ内磁極23aに対向して磁性体を配置し、集中磁界を発生させる磁性粒子のスリーブ上への摺擦力を向上することも上述の如く、現像剤循環部材26のつくる空間に磁極の最大磁力発生部を配置する効果を低減させる。
そこで本実施例においては磁極23aよりもスリーブ回転方向に関して下流側に該磁性体50を設け、磁極23aのブレード側の磁力線がほぼスリーブ表面の接線方向に集中する如く構成した。」(5頁左下欄14行?右下欄5行)

(5c)上記(5a)において参照する第3図は、以下のとおりである。



3.本願発明1と引用例1記載の発明の対比
引用例1記載の発明の「固定マグネット」、「磁性体の板状部材から構成されたブレード」、「磁石」は、それぞれ、本願発明1の「磁界発生部材」、「磁性体の板状部材」、「マグネット」に相当する。
したがって、両者は、
「磁界発生部材を内包しトナーを搬送する回転スリーブと、前記回転スリーブの外周面上に形成されるトナー層の厚みを規制する磁性体の板状部材と、前記磁性体の板状部材に対して前記回転スリーブの回転方向上流側の側面に取付けられたマグネットとを備える現像装置。」
で一致し、以下の点で相違する。

(1)相違点1
本願発明1は、マグネットが、回転スリーブ側の端部近傍に於ける磁性体の板状部材と接する面と反対の側面に、先端側ほど厚みが薄くなる傾斜部が形成され、前記傾斜部は、前記回転スリーブ側の最先端部が、前記磁性体の板状部材に接するように形成されているのに対して、引用例1記載の発明は、磁石(マグネット)が、例えば厚さ2mmであり、先端側ほど厚みが薄くなる傾斜部が形成されていない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
上記2.(2)および2.(3)に示されるように引用例2及び3には、現像剤の円滑な流入のために下流側に向って下降する傾斜面を有する規制部材が記載されている。また、上記2.(4)に示される引用例4にも、スリーブ回転方向上級側に、容器の内部に向って傾いたキャリア返しを設け、規制部材の近傍において過剰にトナーを取り込むことを防止している。さらに、上記2.(5)で示される引用例5では、第3図等より、スリーブ回転方向下流側に向って下降する傾斜面を有する 磁性体50および現像剤循環部材26が規制されている。
以上のことより、規制部材全体として、現像剤の円滑な流れを阻害しないように、スリーブ回転方向下流側に向って下降する傾斜面を有することは、周知の技術的事項である。
また、現像剤の円滑な流れのためには、規制部材全体として、スリーブ回転方向下流側に向って下降する傾斜面のあとに、上昇する傾斜面や長い平坦面を有するように構成することをできる限り避けることは、当業者なら上記周知技術等から、当然設計時に考慮に入れておくべき技術的事項である。
したがって、当該周知技術を引用例1記載の発明のマグネットに適用して、相違点1に係る構成を有するようにすることは当業者なら容易に想到しうるものである。

なお、審判請求人は、平成20年10月1日付けで補正された審判請求書において、
「さらに、周知技術として、磁石の角を面取りしたりエッジをR形状とすれば磁石の角部への磁界の集中を防ぐことができることや、磁石よりなる先端側ほど厚みが薄く形成された現像剤層厚規制部材の先端に磁界が集中することが開示されています。
しかしながら、本願発明は、「マグネットの傾斜部における磁性体の板状部材と反対の側における磁力の集中を緩和し、その分、マグネットの傾斜部における磁性体の板状部材の側の最先端部に磁力を集中させて、最先端部が接する磁性体の板状部材の回転スリーブ側の端部の磁力を強化する」ものであり、単に、磁石の角を面取り等して磁界の集中を緩和したり、磁石の先端側ほど薄く形成して磁界を集中させるだけの技術ではありません。
したがって、周知技術を参照したとしても、本願発明の構成までは、容易に想到できません。」と主張している。
しかしながら、トナーの円滑な流れのためにマグネットに傾斜面を設けることは上記4.(1)に述べたように周知の技術的事項であって、磁力の点を考慮せずとも、当業者なら引用例1記載の発明および周知の技術的事項から、容易に想到しうるものである。

(2)効果について
そして、全体として、本願発明1によってもたらされる効果は、引用例1記載の発明及び周知の技術的事項から、当業者なら予測しうる程度のことであって、格別なものではない。


5.むすび
以上のとおりであり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1記載の発明および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により、特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2009-09-01 
結審通知日 2009-09-03 
審決日 2009-09-15 
出願番号 特願2003-333740(P2003-333740)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横林 秀治郎伏見 隆夫  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 大森 伸一
赤木 啓二
発明の名称 現像装置  
代理人 北村 修一郎  

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