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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1207203
審判番号 不服2007-27660  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-09 
確定日 2009-11-09 
事件の表示 特願2003- 37026「ゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 2日出願公開、特開2004-242938〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は平成15年2月14日の出願であって、平成19年3月12日付けで拒絶理由が通知され、同年5月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月31日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年10月9日に本件審判請求がされるとともに、同年10月16日付けで手続補正がなされたものである。


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年10月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成19年5月16日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲についての

「【請求項1】
金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって、
金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材と、
前記第1のヘッド部材が固着されるとともに繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とを含み、
前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成し、
前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成するとともに、
前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部と、前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、前記ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され、
しかも重心深度が40?55mmかつスイートスポット高さが15?30mmであることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記ソール壁部は、内部にシャフトが差し込まれる差込孔が設けられた上開放のパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着されたことを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって、
金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材と、
前記第1のヘッド部材が固着されるとともに繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とを含み、
前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成し、
前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成するとともに、
しかもこのソール壁部には、内部にシャフトが差し込まれる差込孔が設けられた上開放のパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着されるとともに、
前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部と、前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され、
かつこの第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔を設けたが形成されていることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記ソール壁部は、内部にシャフトが差し込まれる差込孔が設けられた上開放のパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着されたことを特徴とする請求項3記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記第2のヘッド部材は、前記ソール壁部と固着されヘッド側面部を構成するサイド壁部と前記クラウン壁部とを一体に具えることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記第1のヘッド部材は、主壁部と延長壁部とが連なる連なり部に、この連なりを部分的に切り欠いた切欠き部が設けられたことを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記延長壁部は、ヘッド後方に向かって厚さが漸増することを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。」

の記載を、

「【請求項1】
金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって、
金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材と、
前記第1のヘッド部材が固着されるとともに繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とを含み、
前記第1のヘッド部材の前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成し、
前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成するとともに、
前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部と、前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、前記ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され、
しかもこのソール壁部には、内部にシャフトが差し込まれる上開放の差込孔が設けられたパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着されるとともに、
この第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔が形成されたホーゼル筒部を設けたことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
重心深度が40?55mmかつスイートスポット高さが15?30mmであることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第2のヘッド部材は、前記ソール壁部と固着されヘッド側面部を構成するサイド壁部と前記クラウン壁部とを一体に具えることを特徴とする請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第1のヘッド部材は、主壁部と延長壁部とが連なる連なり部に、この連なりを部分的に切り欠いた切欠き部が設けられたことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記延長壁部は、ヘッド後方に向かって厚さが漸増することを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。」

と補正することを含むものである。

2 本件補正の適否の検討
(1)目的要件についての検討
ア 本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下単に「特許法第17条の2第4項」という。)に規定する要件を満たすか否かを検討する。

イ 本件補正は、(a)本件補正前の請求項1,2を削除し、(b)本件補正前の請求項3及び本件補正前の請求項3を引用する本件補正前の請求項5?7の「第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔を設けたが形成されている」を、本件補正後の請求項1及び本件補正後の請求項1を引用する本件補正後の請求項3?5の「第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔が形成されたホーゼル筒部を設けた」と補正し、(c-1)本件補正前の請求項3を引用する本件補正前の請求項4の「第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔を設けたが形成されている」を、本件補正後の請求項1を引用する本件補正後の請求項2の「第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔が形成されたホーゼル筒部を設けた」と補正し、本件補正前の請求項4の「ゴルフクラブヘッド」を、本件補正後の請求項2の「重心深度が40?55mmかつスイートスポット高さが15?30mmであることを特徴とする」「ゴルフクラブヘッド」と補正するとともに、(c-2)本件補正前の請求項4の「前記ソール壁部は、内部にシャフトが差し込まれる差込孔が設けられた上開放のパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着されたこと」を削除する補正を含むものである。
そして、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」は、補正前後の請求項に係る発明が一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない(東京高裁平成15年(行ケ)第230号、知財高裁平成17年(行ケ)第10192号、知財高裁平成17年(行ケ)第10156号参照)。
すると、本件補正のうち上記(a)の補正は、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正のうち上記(b)の補正(本件補正前の請求項3,5?7をそれぞれ本件補正後の請求項1,3?5とする補正)は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正及び/又は同項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とする補正に該当する。
さらに、本件補正のうち上記(c-1)の補正(本件補正前の請求項4を本件補正後の請求項2とする補正)は、上記(b)の補正に加えて、「ゴルフクラブヘッド」の「重心深度」及び「スイートスポット高さ」を数値限定する補正であるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正、又は、同項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とする補正に該当する。そして、本件補正のうち上記(c-2)の補正(本件補正前の請求項4を本件補正後の請求項2とする補正)は、本件補正前の請求項4が引用する本件補正前の請求項3に「このソール壁部には、内部にシャフトが差し込まれる差込孔が設けられた上開放のパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着される」という記載があり、本件補正前の請求項4の「前記ソール壁部は、内部にシャフトが差し込まれる差込孔が設けられた上開放のパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着されたこと」という記載と本件補正前の請求項3の前記記載が重複することから、本件補正前の請求項4の前記記載を削除したものであり、同項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とする補正に該当する。
したがって、本件補正は、同法第17条の2第4項の規定に適合する。

(2)独立特許要件についての検討
上記第2の2(1)で検討したとおり、本件補正のうち本件補正前の請求項4を本件補正後の請求項2とする補正の目的には、同項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」が含まれる。
そこで、本件補正が平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項(以下、単に「特許法第17条の2第5項」という。)において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否か、すなわち、本件補正後の請求項2に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かを検討する。

ア 本件補正発明の認定
本件補正発明は、本件補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって、
金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材と、
前記第1のヘッド部材が固着されるとともに繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とを含み、
前記第1のヘッド部材の前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成し、
前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成するとともに、
前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部と、前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、前記ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され、
しかもこのソール壁部には、内部にシャフトが差し込まれる上開放の差込孔が設けられたパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着されるとともに、
この第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔が形成されたホーゼル筒部を設け、
重心深度が40?55mmかつスイートスポット高さが15?30mmであることを特徴とするゴルフクラブヘッド。」

イ 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である実願平5-28783号(実開平7-406号)のCD-ROM(以下「引用例」という。)には、以下の(a)ないし(f)の記載が図面とともにある。

(a)「【請求項1】 クラブフェイス(11)、冠部(12)、ソール部(13)、背面部(14)およびネック部(15)等の細部からなるクラブヘッド(10)において、
クラブフェイス(11)、ソール部(13)の中央部、背面部(14)の中央部、及び冠部(12)の両側部にかけて、1枚の金属強化板(20)で形成し、その他の部位に対して炭素繊維強化複合樹脂材を形成し、接着剤等にて両境界周縁を相互接合してなることを特徴とするゴルフ用クラブヘッド。」

(b)「【0002】
【従来の技術】
従来のゴルフ用クラブヘッドは、一般に図6で示すように、本体Qが単一材Sにて一様に覆われた構成となっている。単一材としてCFRPを用いたものは、軽量で、かつ、ヘッド部の占める体積を随意に変化できるため幅広い設計が可能である。
これとは別に単一材にステンレス鋼板を用いたものは、硬質であるため機械的強度に優れ、打球感が良く、又、製造コストが廉価であるという利点がある。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、CFRPで形成されたものは、衝撃に弱く、破裂や損耗が生じ易く、又、ステンレス鋼板で形成されたものは、その比重が大きい故に、比較的小容積のクラブヘッドしか製作できず、体積に制約を受けることから理想的なクラブヘッドを得ることはできない。
【0004】
本考案は、上述した課題を解決するためになされたものであり、機械的強度が必要とされる部位に対して、CFRPに替えて金属強化板を形成することで、必要な機械的強度を得ると共に、幅広い設計を可能としたゴルフ用クラブヘッドを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は、クラブフェイス(11)、冠部(12)、ソール部(13)、背面部(14)およびネック部(15)等の細部からなるクラブヘッド(10)において、
クラブフェイス(11)、ソール部(13)の中央部、背面部(14)の中央部、及び冠部(12)の両側部にかけて、1枚の金属強化板(20)で形成し、その他の部位に対して炭素繊維強化複合樹脂材を形成し、接着剤等にて両境界周縁を相互接合してなることを特徴とする。
【0006】
【作用】
上記構成によれば、クラブフェイス(11)、ソール部(13)の中央部、背面部(14)の中央部、及び冠部(12)の両側部等の機械的強度が必要とされる部位に対して、CFRPに替えて金属強化板を形成することで、必要な機械的強度が得られると共に、金属強化板のみで形成した場合に比べて重量を軽減できるので、その分、ヘッド自体の大きさを大きくしたりできるので幅広い設計が可能となる。」

(c)「【0009】
【実施例】
図1ないし図5に、本考案の一実施例になるクラブヘッド10を示している。尚、図1の斜視図において、図面左側、図面右側をそれぞれ前方、後方と呼び、図面手前を左側、その反対側を右側と呼ぶ。
クラブフェイス11、冠部12、ソール部13、背面部14およびネック部15等の細部からなるクラブヘッド10において、クラブフェイス11、ソール部13の中央部、背面部14の中央部、及び冠部12の両側部に、金属強化板としてステンレス鋼板20を形成している。
【0010】
更に詳しく述べれば、このステンレス鋼板20は、図2の側面図で示すように、クラブフェイス11から上方に延伸して冠部位12の左側に至り、ここより、図3の上面図で示すように、冠部12の中央部に向けて、半円状の小円孤21が、冠部12の左側の一部に対して上方から覆うように形成している。
又、このクラブフェイス11において、ステンレス鋼板20は、下方に向かうにつれてその幅が短くなっており、そして、そのステンレス鋼板20は、図4の底面図で示すように、ほぼ一定幅でソール部13を横切り、更に、背面部14を立ち上がって、冠部12の右側の中央部を覆うように、比較的大きい半円状の円孤23を形成している。
【0011】
このようにステンレス鋼板20を形成した部位以外の、ネック部15、冠部12のほぼ稜線に沿った中央部位、ソール部13の前方・後方部、および背面部14の前方・後方部に対しては、すべてCFRPを形成する。図5は断面図を示している。」

(d)「【0012】
上記構成としたクラブヘッドの製作例を以下に述べる。
まず、精密鋳造により、ステンレス鋼板20を所定の形状に切り出し、そして所定の形状に折曲する。次にCFRPと接合される周縁に対して、砂吹きにより表面処理して接着剤の着きを良くする。そして、CFRPの予備含浸材料を、ステンレス鋼板20で形成された空間内に充填装入して、そのままダイス内に入れて所定時間、加熱加圧し、かつ拡張するように気体を吹き込むことで、ステンレス鋼板20とCFRPとを一体形成し、冷却後、ダイスから取り出し、クラブヘッドの半完成品を得る。この半完成品に対して、研磨、仕上げ加工、塗装を施すことで本願考案のクラブヘッドが完成する。」

(e)「【0013】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案は、ステンレス鋼板のごとき金属強化板をクラブヘッドの必要部位に対して形成したので、所要の機械的強度を保持することができ、衝撃による破裂や損耗を防げる。そして、その他の部位に対しては比重の小さいCFRPを形成したため、その分、クラブヘッドの体積を大きくでき、又、比重の大きい前記金属強化板の位置を前後にずらしたり、幅を適宜変更することで、クラブヘッドの重心位置をも随意に設定することもでき、幅広い設計が可能となる。」

(f)図5から、引用例のゴルフ用クラブヘッドは中空構造であることを読み取ることができる。なお、上記記載事項(d)の「CFRPの予備含浸材料を、ステンレス鋼板20で形成された空間内に充填装入して、そのままダイス内に入れて所定時間、加熱加圧し、かつ拡張するように気体を吹き込むことで、ステンレス鋼板20とCFRPとを一体形成」するという記載(なお、下線は当審が付した。)はこれを裏付ける。

ウ 引用例記載の発明の認定
引用例の上記記載事項(a)ないし(f)から、引用例には次の発明が記載されていると認めることができる。

「クラブフェイス11、冠部12、ソール部13、背面部14およびネック部15等の細部からなるクラブヘッド10において、
クラブフェイス11、ソール部13の中央部、背面部14の中央部、及び冠部12の両側部にかけて、1枚の金属強化板20で形成し、その他の部位に対して炭素繊維強化複合樹脂材を形成し、接着剤等にて両境界周縁を相互接合してなる中空構造のゴルフ用クラブヘッド。」(以下「引用発明」という。)

エ 本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
(ア)引用発明の「クラブフェイス11」、「ソール部13の中央部」は、それぞれ、本件補正発明の「ボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部」、「該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部」に相当する。
したがって、引用発明の「クラブフェイス11、ソール部13の中央部、背面部14の中央部、及び冠部12の両側部にかけて」「形成」された「1枚の金属強化板20」は、本件補正発明の「金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材」に相当する。

(イ)引用発明の「その他の部位に対して」「形成」された「炭素繊維強化複合樹脂材」は、本件補正発明の「繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材」に相当する。
また、引用発明の「両境界周縁」は「1枚の金属強化板20」と「炭素繊維強化複合樹脂材」の境界周縁をいうことは明らかであるから、引用発明の「接着剤等にて両境界周縁を相互接合」することは、本件補正発明の「前記第1のヘッド部材が」「第2のヘッド部材」に「固着される」ことに相当する。

(ウ)a 引用発明の「クラブフェイス11」は「1枚の金属強化板20で形成」されるから、引用発明の「1枚の金属強化板20で形成」される「クラブフェイス11」は、フェイス面の輪郭と相似形をなし該フェイス面の主要部を形成するものであることは明らかである。

b また、請求人は、平成19年5月16日付けの意見書において、本件補正前の請求項3を、「A 金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって」、「B 金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材と、」「前記第1のヘッド部材が固着されるとともに繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とを含み」、「C 前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成し」、「D 前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成するとともに」、「G しかもこのソール壁部には、内部にシャフトが差し込まれる差込孔が設けられた上開放のパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着され」、「E 前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部と、前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され」、「H かつこの第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔を設けたが形成されていること」「を特徴とするゴルフクラブヘッド。」と分説するとともに、「実願平5-28783号(実開平7-406号)のCD-ROM(引用文献1)」としたうえで、「引用文献1・・・には、・・・本件発明の分かち書きA,Bとともに実質的に分かち書きC,Dの構成を記載しています。」と述べている(なお、下線は当審で付した。)。
さらに、請求人は、平成19年12月12日付けの手続補正により補正された平成19年10月9日付けの審判請求書の請求の理由において、本件補正後の請求項2が引用する本件補正後の請求項1を、「A 金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって」、「B 金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材と」、「C 前記第1のヘッド部材が固着されるとともに繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とを含み」、「D 前記第1のヘッド部材の前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成し」、「E 前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成するとともに」、「F 前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部と、前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、前記ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され」、「G しかもこのソール壁部には、内部にシャフトが差し込まれる上開放の差込孔が設けられたパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着されるとともに」、「H この第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔が形成されたホーゼル筒部を設けた」「ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。」と分説するとともに、「実願平5-28783号(実開平7-406号)のCD-ROM(引用文献1)」としたうえで、「引用文献1・・・には、・・・本件発明の分かち書きA,Bとともに実質的に分かち書きC?Eの構成を記載しています。」と述べている(なお、下線は当審で付した。)。
したがって、請求人は、本件の手続において一貫して、本件補正発明の「前記第1のヘッド部材の前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成」することが引用例に実質的に記載されていることを認めている。

c 上記a,bから、引用発明の「1枚の金属強化板20で形成」される「クラブフェイス11」は、本件補正発明の「フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成」する「前記第1のヘッド部材の前記主壁部」に相当する。

(エ)a 引用発明の「ソール部13の中央部」は「1枚の金属強化板20で形成」されるから、引用発明の「1枚の金属強化板20で形成」される「ソール部13の中央部」は、ソール部の主要部をなすソール壁部を形成するものであることは明らかである。

b また、請求人は、平成19年5月16日付けの意見書において、本件補正前の請求項3を、「A 金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって」、「B 金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材と、」「前記第1のヘッド部材が固着されるとともに繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とを含み」、「C 前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成し」、「D 前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成するとともに」、「G しかもこのソール壁部には、内部にシャフトが差し込まれる差込孔が設けられた上開放のパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着され」、「E 前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部と、前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され」、「H かつこの第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔を設けたが形成されていること」「を特徴とするゴルフクラブヘッド。」と分説するとともに、「実願平5-28783号(実開平7-406号)のCD-ROM(引用文献1)」としたうえで、「引用文献1・・・には、・・・本件発明の分かち書きA,Bとともに実質的に分かち書きC,Dの構成を記載しています。」と述べている(なお、下線は当審で付した。)。
さらに、請求人は、平成19年12月12日付けの手続補正により補正された平成19年10月9日付けの審判請求書の請求の理由において、本件補正後の請求項2が引用する本件補正後の請求項1を、「A 金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって」、「B 金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材と」、「C 前記第1のヘッド部材が固着されるとともに繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とを含み」、「D 前記第1のヘッド部材の前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成し」、「E 前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成するとともに」、「F 前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部と、前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、前記ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され」、「G しかもこのソール壁部には、内部にシャフトが差し込まれる上開放の差込孔が設けられたパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着されるとともに」、「H この第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔が形成されたホーゼル筒部を設けた」「ことを特徴とするゴルフクラブヘッド。」と分説するとともに、「実願平5-28783号(実開平7-406号)のCD-ROM(引用文献1)」としたうえで、「引用文献1・・・には、・・・本件発明の分かち書きA,Bとともに実質的に分かち書きC?Eの構成を記載しています。」と述べている(なお、下線は当審で付した。)。
したがって、請求人は、本件の手続において一貫して、本件補正発明の「前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成する」ことが引用例に実質的に記載されていることを認めている。

c 上記a,bから、引用発明の「1枚の金属強化板20で形成」される「ソール部13の中央部」は、本件補正発明の「前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成する」「前記延長壁部」に相当する。

(オ)引用発明の「その他の部位」には、「冠部12の両側部」を除く「冠部12」が含まれる。したがって、引用発明の「その他の部位に対して炭素繊維強化複合樹脂材を形成し」たことと本件補正発明の「前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部と、前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、前記ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され」ることとは、「前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部が形成され」る点で一致する。

(カ)引用発明の「クラブフェイス11、ソール部13の中央部、背面部14の中央部、及び冠部12の両側部にかけて、1枚の金属強化板20で形成し、その他の部位に対して炭素繊維強化複合樹脂材を形成し、接着剤等にて両境界周縁を相互接合してなる中空構造のゴルフ用クラブヘッド」は、本件補正発明の「金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッド」に相当する。

(キ)以上から、本件補正発明と引用発明とは、

「金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって、
金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材と、
前記第1のヘッド部材が固着されるとともに繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とを含み、
前記第1のヘッド部材の前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成し、
前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成するとともに、
前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部が形成されるゴルフクラブヘッド。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1〉
本件補正発明では「前記第2のヘッド部材には、」「前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、前記ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され」ているのに対し、引用発明にはこのような限定がない点。

〈相違点2〉
本件補正発明では、「ソール壁部には、内部にシャフトが差し込まれる上開放の差込孔が設けられたパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒が一体に固着されるとともに、」「この第2のヘッド部材には、前記受け筒を挿入される受け孔が形成されたホーゼル筒部を設け」るのに対し、引用発明にはこのような限定がない点。

〈相違点3〉
本件補正発明の「ゴルフクラブヘッド」は「重心深度が40?55mmかつスイートスポット高さが15?30mmである」のに対し、引用発明の「ゴルフ用クラブヘッド」にはこのような限定がない点。

オ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
ゴルフクラブヘッドの技術分野において、複数の部材を組み合わせてゴルフクラブヘッドを構成する際、複数の部材の一つの部材に他の部材の周縁部を支えるバックアップ部を設けて、前記一つの部材と前記他の部材とを組み合わせることは、本件出願時において当業者に周知の技術である(例えば、原査定に引用された特開2002-336390号公報(特に、段落【0010】、図2(b))、特開平10-15122号公報(特に、段落【0004】、図15)、特開昭52-110136号公報(特に、第3頁右上欄第9?15行、第4図)を参照。)。
そして、引用発明の「ゴルフ用クラブヘッド」は、「クラブフェイス11、ソール部13の中央部、背面部14の中央部、及び冠部12の両側部にかけて、1枚の金属強化板20で形成し」、「その他の部位に対して炭素繊維強化複合樹脂材を形成し」、「接着剤等にて両境界周縁を相互接合してなる」ものであるから、引用発明の「ゴルフ用クラブヘッド」も、複数の部材を組み合わせて構成されたゴルフクラブヘッドである。
すると、引用発明の「ゴルフ用クラブヘッド」に上記周知技術を適用して、引用発明の「その他の部位に対して」「形成」された「炭素繊維強化複合樹脂材」に、「1枚の金属強化板20」の「クラブフェイス11」の背面の周縁部を支えるバックアップ部、及び、「1枚の金属強化板20」の「ソール部13の中央部」の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部を形成することは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(イ)相違点2について
ゴルフクラブヘッドの技術分野において、ゴルフクラブヘッドの内部にシャフトが差し込まれる上開放の差込孔が設けられたパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒をソールに一体に固着するとともに、前記ゴルフクラブヘッドに前記受け筒を挿入される受け孔が形成されたホーゼル筒部を設けることは、本件出願時において当業者に周知の技術である(例えば、特開2001-17584号公報(特に、段落【0006】、【0033】、図3,6)、実願昭57-119434号(実開昭59-24064号)のマイクロフィルム(特に、第3頁第8行?第4頁第5行、第1?2図)を参照。)。
すると、引用発明の「ゴルフ用クラブヘッド」に上記周知技術を適用して、シャフトが差し込まれる上開放の差込孔が設けられたパイプ状をなす斜め上向きにのびる受け筒を引用発明の「1枚の金属強化板20」の「ソール部13の中央部」に一体に固着するとともに、引用発明の「炭素繊維強化複合樹脂材」の「ネック部15」に前記受け筒を挿入される受け孔を形成することは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(ウ)相違点3について
ゴルフクラブヘッドの技術分野において、ゴルフクラブヘッドの重心深度が大きい方が望ましいこと、及び、ゴルフクラブヘッドのスイートスポット高さや重心高さが低い方が望ましいことは、本件出願時において当業者に周知の技術である(例えば、原査定で引用された特開2002-17903号公報(特に、段落【0023】?【0024】、【0030】)、特開平11-347157号公報(特に、段落【0002】?【0024】、【0030】)、特開平11-123255号公報(特に、段落【0007】、【0015】?【0019】、【0027】)を参照。)。また、本件補正発明において数値により特定される重心深度やスイートスポット高さは、上記周知技術で挙げた特開2002-17903号公報(特に、段落【0029】の【表1】を参照。)、特開平11-123255号公報(特に、段落【0050】の【表6】を参照。なお、平成19年5月16日付けの意見書において請求人が主張するように、本件補正後の明細書の記載(特に、段落【0036】、図15)に照らすと、本件補正発明の「重心深度」の定義と特開平11-123255号公報の「重心深度」の定義(特に、段落【0021】、図3)は異なるが、ゴルフクラブヘッドのリアルロフト角(段落【0050】の【表6】によれば、「重心深度」が40mmである第2変形例及び第3変形例では、リアルロフト角は10.0°、9.0°である。)を考慮すると、特開平11-123255号公報において定義される「重心深度」が40mmであれば、本件補正発明で定義される「重心深度」が40?55mmの範囲内にあることは明らかである。)に記載されている。
すると、引用発明の「ゴルフ用クラブヘッド」に上記周知技術を適用して、重心深度を40?55mmとし、かつ、スイートスポット高さを15?30mmとすることは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、上記相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

カ 本件補正発明の独立特許要件の判断
以上のとおり、引用発明に上記相違点1ないし3に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。
また、本件補正発明の効果も、引用例に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
したがって、本件補正発明は引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3)むすび
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
なお、上記(2)オ(イ)で挙げた周知例は審査段階において挙げられていないが、特許法第159条第2項において、同法第50条は、「第50条ただし書中『第17条の2第1項第3号に掲げる場合』とあるのは、『第17条の2第1項第3号又は第4号に掲げる場合』」と読み替えて準用され、同法第50条は、「審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第17条の2第1項第3号に掲げる場合において、第53条第1項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。」とされ、補正の却下について意見書を提出する機会は与えなくてよいとされているから、本件補正の却下に当たり、上記補正の却下の理由を事前に通知する必要はない(知財高裁平成19年(行ケ)第10056号参照。)。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求についての判断
1 本件発明の認定
本件補正が却下されたから、平成19年5月16日付けの手続補正により補正された明細書及び図面に基づいて審理すると、本件出願の請求項1に係る発明は、平成19年5月16日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって、
金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材と、
前記第1のヘッド部材が固着されるとともに繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とを含み、
前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成し、
前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成するとともに、
前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部と、前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、前記ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され、
しかも重心深度が40?55mmかつスイートスポット高さが15?30mmであることを特徴とするゴルフクラブヘッド。」(以下「本件発明」という。)

2 引用刊行物の記載事項及び引用例記載の発明の認定
原査定の拒絶理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である引用例には、上記第2の2(2)イに摘記したとおりの事項が記載されており、引用例に記載された発明は、上記第2の2(2)ウに記載したとおりである。

3 本件発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
上記第2の2(2)エで述べたことを踏まえると、本件発明と引用発明とは、

「金属材料と繊維強化樹脂とを用いて形成された中空構造のゴルフクラブヘッドであって、
金属材料からなりかつボールを打球するフェース面の少なくとも一部を形成する主壁部と該主壁部からヘッド後方にのびる延長壁部とを一体に有する第1のヘッド部材と、
前記第1のヘッド部材が固着されるとともに繊維強化樹脂からなる第2のヘッド部材とを含み、
前記主壁部は、フェース面の輪郭と相似形をなし該フェース面の主要部を形成し、
前記延長壁部は、前記主壁部の下の縁からヘッド後方にのびる板状をなしかつソール部の主要部をなすソール壁部を形成するとともに、
前記第2のヘッド部材には、ヘッド上面の少なくとも一部を構成するクラウン壁部が形成されたゴルフクラブヘッド。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1’〉
本件発明では「前記第2のヘッド部材には、」「前記主壁部の背面の周縁部を支えるバックアップ部と、前記ソール壁部の上向き面の周縁部を支えるバックアップ部とが形成され」ているのに対し、引用発明にはこのような限定がない点。

〈相違点2’〉
本件発明の「ゴルフクラブヘッド」は「重心深度が40?55mmかつスイートスポット高さが15?30mmである」のに対し、引用発明の「ゴルフ用クラブヘッド」にはこのような限定がない点。

4 本件発明の進歩性の判断
上記相違点1’,2’は、それぞれ、本件補正発明と引用発明との上記相違点1,3と実質的に同じである。
そして、上記相違点1,3に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することが当業者にとって想到容易であることは上記第2の2(2)オ(ア)(ウ)で述べたとおりであるから、同様の理由により、上記相違点1’,2’に係る本件発明の発明特定事項を採用することも当業者にとって想到容易である。
また、上記相違点1’,2’に係る本件発明の発明特定事項を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本件発明は引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本件発明が特許を受けることができない以上、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-08-25 
結審通知日 2009-09-01 
審決日 2009-09-14 
出願番号 特願2003-37026(P2003-37026)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
日夏 貴史
発明の名称 ゴルフクラブヘッド  
代理人 住友 慎太郎  
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