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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1207264
審判番号 不服2006-28842  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-27 
確定日 2009-11-24 
事件の表示 特願2001-391910「浄水器用吸着材の製造方法および、浄水器用吸着材を用いた浄水器」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 8日出願公開、特開2003-190941〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成13年12月25日の出願であって、平成18年10月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

II.本願発明
本願の請求項6に係る発明は、平成18年10月2日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項6】合成リン酸カルシウム系化合物の粉末と水の混合スラリーを80℃?150℃で乾燥した後、200℃?500℃で加熱固化する浄水器用吸着材の製造方法。 」

III.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である、特開平2-180706号公報 (以下、「引用例1」という。)及び特開2001-47038号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

1.引用例1
(1-A)
「有機バインダーを含まないリン酸カルシウム化合物のスラリーを、傾斜した回転軸を有する容器に装填する工程と、該容器を室温以上に加温しながら回転させる工程とを含む多孔性リン酸化合物粒子集合体の製造方法。」(特許請求の範囲の(3))

(1-B)
「この発明は、リン酸化合物粒子集合体及びその製造方法に関する。この発明のリン酸化合物粒子集合体は、細胞や生理活性物質の分離吸着のためのクロマトグラフィー充填剤・・・として用いることができる。」(第1頁右下欄2?7行)

(1-C)
「本発明の粒子集合体の圧縮強度は、0.1kg/mm^(2)ないし5.0 kg/mm^(2)、好ましくは0.2kg/mm^(2)ないし3.0 kg/mm^(2)である。」(第3頁左下欄1?3行)

(1-D)
「本発明における「リン酸化合物」とは、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム・・・を包含する。」(第3頁右下欄6?8行)

(1-E)
「本発明の・・・粒子集合体は、以下のようにして製造することができる。
まず、リン酸化合物のスラリーを調製し、それを回転軸が傾斜した容器に入れる。リン酸化合物のスラリーは、従来よりこの分野において周知のものを用いることができる。・・・適当な水性スラリーの濃度は10重量%ないし60重量%、特には20重量%ないし50重量%程度である。スラリーの媒体は水が最も好ましい・・・。
次に、上記容器を室温以上の温度に加温しながら、容器を上記回転軸の回りに回転させる。・・・。
上記方法により得られた多孔性リン酸化合物粒子集合体は、そのまま分離剤又は細胞培養用支持体として用いることもできるが、さらに焼成することもできる。焼成することにより、細孔径分布の制御が容易になり、機械強度が向上するという効果が得られる。焼成条件は特に限定されないが、200℃ないし1200℃、特には300℃ないし900℃で1時間ないし50時間、特には3時間ないし10時間行なうことが好ましい。」(第3頁右下欄9?第4頁右上欄20行)

(1-F)
実施例1及び2
図に示す装置を用い、表1に示す製造条件により球状粒子集合体を製造した。用いたリン酸化合物スラリーはヒドロキシアパタイト水性スラリーであり、・・・。製造後、粒子を50℃で10時間乾燥させた。・・・。
実施例3?5
実施例2で得られた試料を300℃、500℃又は700℃で3時間焼成し、表2に示す諸物性値を測定した。結果を表2に示す。」(第4頁左下欄12行?右下欄6行)

(1-G)
表2(第5頁)に、実施例3及び実施例4について、それぞれ、焼成温度が300℃、500℃の場合、比表面積が85m^(2)/g、53m^(2)/g、細孔容積が0.52ml/g、0.46ml/g、細孔径が20nm、30nm、気孔率が63%、60%、圧縮強度が0.5kg/mm^(2)、1.0kg/mm^(2)であったことが示されている。

2.引用例2
(2-A)
「鉛、カドミウム等の重金属イオンを選択的に吸着する浄化剤として重金属用キレート樹脂、ヒドロキシアパタイトが知られている。特にヒドロキシアパタイトは、キレート樹脂に比べ吸着能に優れている。・・・。
しかし、ヒドロキシアパタイトは、粒径の小さいものを用いた方が重金属吸着能が高いものの、圧力損失が大きいため、浄水器が早期に目詰まりを起こしたり、微粉末が漏出し、実用化するには問題が多かった。また、ヒドロキシアパタイトの粒径を焼結により大きくすると目詰まりの発生や微粉末の漏出は解決できるが、重金属イオン吸着能が低下する・・・」(段落【0004】?【0005】)

IV.引用発明
引用例1には、その記載事項(1-A)に「有機バインダーを含まないリン酸カルシウム化合物のスラリーを、傾斜した回転軸を有する容器に装填する工程と、該容器を室温以上に加温しながら回転させる工程とを含む多孔性リン酸化合物粒子集合体の製造方法。」が記載され、この粒子集合体の製造方法について、記載事項(1-E)に「リン酸化合物のスラリーを調製し、・・・リン酸化合物のスラリーは、従来よりこの分野において周知のものを用いることができる。・・・スラリーの媒体は水が最も好ましい」、記載事項(1-D)に「「リン酸化合物」とは、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムを包含する。」と記載されているから、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムを包含する周知のリン酸化合物の水スラリーを用いることが記載されているといえる。また、記載事項(1-E)に「得られた多孔性リン酸化合物粒子集合体は、さらに焼成することもできる。焼成することにより、細孔径分布の制御が容易になり、機械強度が向上するという効果が得られる。焼成条件は特に限定されないが、・・・300℃ないし900℃で・・・行なうことが好ましい。」と記載され、記載事項(1-F)に「実施例1及び2」として、「球状粒子集合体を製造した。用いたリン酸化合物スラリーはヒドロキシアパタイト水性スラリーであり、・・・。製造後、粒子を50℃で10時間乾燥させた」こと、「実施例3?5」として、「実施例2で得られた試料を300℃、500℃又は700℃で3時間焼成し」たことが記載されているから、ヒドロキシアパタイト水性スラリーを用いて製造した粒子を50℃で10時間乾燥させ、得られた試料を300℃又は500℃で3時間焼成することにより機械強度が向上した多孔性リン酸化合物粒子集合体を製造することが記載されているといえる。そして、その多孔性リン酸化合物粒子集合体の用途として、記載事項(1-B)に「この発明のリン酸化合物粒子集合体は、細胞や生理活性物質の分離吸着のためのクロマトグラフィー充填剤として用いることができる。」と記載されている。
以上のことから、引用例1には、
「ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムを包含する周知のリン酸化合物の水スラリーを調製し、50℃で10時間乾燥させ、得られた試料を300℃又は500℃で3時間焼成することにより、機械強度が向上し、細胞や生理活性物質の分離吸着のためのクロマトグラフィー充填剤として用いることができる多孔性リン酸化合物粒子集合体の製造方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

V.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明を対比すると、本願発明の「合成リン酸カルシウム系化合物」は、本願明細書の段落【0010】の「合成リン酸カルシウム系化合物は、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウムから選ばれる少なくとも1種類以上であると、それぞれ吸着性能に優れるため好ましい。」なる記載によれば、引用発明の「ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムを包含する周知のリン酸化合物」に含まれ、引用発明も水スラリーを調製する以上、リン酸化合物を粉末状で使用することは技術常識であるから、引用発明の「ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムを包含する周知のリン酸化合物の水スラリー」は、本願発明の「合成リン酸カルシウム系化合物の粉末と水の混合スラリー」に相当する。
また、引用発明のリン酸化合物の水スラリーを「50℃で10時間乾燥させ」る工程は、本願発明の「合成リン酸カルシウム系化合物の粉末と水の混合スラリーを80℃?150℃で乾燥」する工程と、スラリーを乾燥させる点で共通する。
また、本願発明の「200℃?500℃で加熱固化する」ことについて、本願明細書には、所定温度で「加熱固化する」又は「加熱固化を行う」との記載の他、段落【0019】の「加熱時間は30分?5時間行えばよく」、<実施例1>(段落【0029】)の「200℃で1時間加熱して」なる記載がある以外、「加熱固化」についての特別な説明は見当たらないので、本願発明の「加熱固化する」とは、通常の雰囲気で加熱することを意味するものと解釈される。そうすると、引用発明の「300℃又は500℃で3時間焼成すること」は、300℃又は500℃で加熱する点で、本願発明の「200℃?500℃で加熱固化する」ことに相当するといえる。
そして、引用発明の「細胞や生理活性物質の分離吸着のためのクロマトグラフィー充填剤として用いることができる」との記載の「分離吸着のためのクロマトグラフィー充填剤」は一種の吸着材といえるので、引用発明の「多孔性リン酸化合物粒子集合体」は一種の吸着材として用いることができるといえる。
よって、両者は、
「合成リン酸カルシウム系化合物の粉末と水の混合スラリーを乾燥した後、200℃?500℃で加熱固化する吸着材の製造方法。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>本願発明は、「スラリーを80℃?150℃で乾燥」するのに対して、引用発明は、「50℃で10時間乾燥」する点。

<相違点2>本願発明は「浄水器用吸着材の製造方法」であるのに対して、引用発明は「分離吸着のためのクロマトグラフィー充填剤として用いることができる多孔性リン酸化合物粒子集合体の製造方法」である点。

上記相違点について、検討する。

<相違点1>について
一般に、スラリー等の水分含有物質の加熱乾燥に際しては、熱変性等のおそれがある場合の乾燥温度の上限値には制限があるものの、その上限値以下であれば、乾燥条件は、乾燥温度だけでなく、乾燥温度と乾燥時間との調節によって、所望の温度において所望の乾燥状態までの乾燥が可能であることは技術常識である。引用発明は、50℃で10時間乾燥した試料を、更に高い温度の300℃又は500℃で3時間焼成するものであるから、前記したような乾燥温度の上限値の制限がある場合には当たらず、乾燥時間を調節することにより、50℃よりも高い温度(例えば、80℃程度)でも乾燥工程を行うことが可能であることは当業者の容易に想到し得ることである。そして、引用発明は、焼成することにより機械強度が向上した多孔性リン酸化合物粒子集合体を製造するものであるから、製造される多孔性リン酸化合物粒子集合体の機械強度や製造コスト等を考慮して、引用発明において乾燥温度を80℃?150℃とすることが当業者にとって格別困難なこととは認められない。
一方、本願発明は乾燥温度は規定されるものの、本願明細書全体の記載をみても乾燥時間については何ら言及されていない。前述のとおり、加熱乾燥条件は乾燥温度と乾燥時間との調節が重要であるといえるところ、乾燥温度のみを限定する本願発明が、80℃?150℃で乾燥することにより、その範囲を外れる温度で乾燥した場合に比べて格別顕著な効果を奏するものとはいえない。

<相違点2>について
引用例2(記載事項(2-A))に記載されるとおり、ヒドロキシアパタイトは鉛等の重金属イオンを選択的に吸着する吸着能に優れた浄化剤として周知のものであり、ヒドロキシアパタイトの鉛の吸着能に着目してヒドロキシアパタイトを浄水器用吸着材として用いることも周知技術である(更に必要であれば、特開平9-29241号公報の特に、段落【0009】、【0012】、【0025】、【0031】等参照)。
そして、引用例2(記載事項(2-A))には、ヒドロキシアパタイトを浄水器用吸着材として用いた場合における微粉末の漏出等、ヒドロキシアパタイトの機械的強度の問題点、及び、その解決方法の一つとしてヒドロキシアパタイトを焼結することが開示されているといえる。
一方、引用発明は、ヒドロキシアパタイトを包含するリン酸化合物の水スラリーから得られた試料を焼成することにより、機械強度が向上した多孔性リン酸化合物粒子集合体の製造方法であって、引用例1の記載事項(1-C)、(1-F)及び(1-G)によれば、300℃又は500℃で焼成することにより、比表面積、細孔容積、細孔径、気孔率の値が吸着材としての機能を奏するといえる物性値を有し、機械強度が向上して、圧縮強度が0.5kg/mm^(2)、1.0kg/mm^(2)である多孔性リン酸化合物粒子集合体が得られるのであるから、引用例2の開示事項に基づいて、引用発明の製造方法で製造される多孔性リン酸化合物粒子集合体を浄水器用吸着材として用いること、すなわち、引用発明の製造方法により浄水器用吸着材を製造することは、当業者が容易に想到し得ることである。

なお、請求人は、審判請求書(平成19年4月4日付け手続補正書)の「3.(1)の項」で「引用文献1(引用例1)が説示するのは「乾燥温度が50℃、固化温度が300?500度の組み合わせでは、高くとも圧縮強度が5.0kg/mm^(2)(SI単位換算で0.51N/mm^(2))程度のヒドロキシアパタイトからなる吸着材しか得られない。」という点であるのは明らかです。」と主張しているが、換算すると、1kg/mm^(2)=9.8N/mm^(2)であるから、5.0kg/mm^(2)は49N/mm^(2)となり、引用例1の実施例3、4にはそれぞれ、圧縮強度0.5kg/mm^(2)、1.0kg/mm^(2)、すなわち、4.9N/mm^(2)、9.8N/mm^(2)であるヒドロキシアパタイトが記載されていることは明らかであり、上記主張は失当である。
また、請求人は、引用文献1(引用例1)、引用文献2(引用例2)とも、「浄水器用吸着材とともに多孔質膜を用いる構成が記載されていない」旨も主張しているが、上記「<相違点2>について」で示した本願と同一の出願人による特開平9-29241号公報(【請求項1】等参照)にも記載のとおり、浄水器において、吸着材とともに多孔質膜を用いることは周知技術であって、しかも、請求項6に記載された発明の特定事項に基づかない主張である。
以上のとおりであるから、これら主張はいずれも採用できない。

そして、本願発明の上記<相違点1>、<相違点2>を具備することによる明細書記載の効果は、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知の事項から予測し難いものであるということはできない。

したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のことから、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものであり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-14 
結審通知日 2009-01-15 
審決日 2009-01-27 
出願番号 特願2001-391910(P2001-391910)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 光子  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 松本 貢
小川 慶子
発明の名称 浄水器用吸着材の製造方法および、浄水器用吸着材を用いた浄水器  
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