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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23R |
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管理番号 | 1207326 |
審判番号 | 不服2007-29464 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-31 |
確定日 | 2009-11-20 |
事件の表示 | 特願2003-293523「熱交換隔壁」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月10日出願公開、特開2005- 61725〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成15年8月14日の出願であって、特許法第30条第1項に規定する新規性喪失の例外適用(発表日:同年3月31日)の申請を伴うものであり、平成19年5月30日付けの拒絶理由通知に対して、同年7月31日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月27日付けで拒絶査定がなされた。 そして、同年10月31日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月30日付けで手続補正書が提出されて、特許請求の範囲を補正する手続補正がなされるとともに、同日付けで審判請求書の請求の理由についての手続補正がなされた。 その後、当審において、平成21年4月20日付けで書面による審尋がなされたものであって、その請求項1ないし15に係る発明は、平成19年11月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 内部に燃焼室を形成するライナ外壁と、 前記ライナ外壁の内側に設置され、前記ライナ外壁との間に冷却空気の流路を形成するパネルであるライナ内壁とを具備し、 前記ライナ内壁は、 前記燃焼室に面する基板と、 前記基板の前記流路側に分散的に設けられた第1突起と、 前記基板の前記流路側に分散的に設けられ、前記基板の表面に対して法線方向の長さが 前記第1突起よりも短い複数の第2突起とを具備し、 前記複数の第2突起の各々は、前記基板に平行な断面が四角形であり、 空気入口から供給される圧縮空気が、前記燃焼室と前記流路とに流れる ガスタービン用燃焼器。」 2.引用文献記載の発明 (1)原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭61-187501号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 ア.「被冷却面とこの被冷却面から隔置された対向面と前記被冷却面及び前記対向面の間に形成される冷却流路とから成り、前記被冷却面に平行または衝突して流れるように冷却流路内に冷却流体を供給して前記被冷却面の冷却を行うものにおいて、前記被冷却面上に前記冷却流路の高さよりかなり低い柱状の小突起を設置し、前記該小突起と組合せて、前記被冷却面上に前記小突起と前記対向面との中間の高さないしは前記冷却流路を貫通する柱状の大突起か、または前記対向面上に前記被冷却面までの中間の高さの柱状ないし板状の大突起を設置したことを特徴とする流体冷却構造。」(第1ページ左下欄第4ないし15行) イ.「本発明は流体冷却構造に係り、特に、ガスタービンの高温部品の内部冷却に好適な冷却構造に関する。」(第1ページ左下欄第18ないし20行) ウ.「高温部品の表面を低温の冷却流体により冷却する方法として、強制対流冷却やインピンジメント冷却が広く用いられている。」(第1ページ右下欄第2ないし4行) エ.「本発明の目的は、強制対流冷却、または、インピンジメント冷却において冷却作用が大きく、流動抵抗も比較的小さいような大・小突起を組合せ使用した流体冷却構造を提供することにある。」(第2ページ右下欄第5ないし8行) オ.「本発明の特徴は、被冷却面とこの被冷却面から隔置された対向面と被冷却面及び対向面の間に形成される冷却流路とから成り、被冷却面に平行(強制対流冷却に相当)または衝突(インピンジメント冷却に相当)して流れるように冷却流路内に冷却流体を供給して被冷却面の冷却を行うものにおいて、被冷却面上に冷却流路の高さよりかなり低い柱状の小突起を設置(粗面化に相当)し、さらに突起と組合せて、被冷却面上に小突起と対向面との中間の高さないしは冷却流路を貫通する柱状の大突起か、または対向面上に被冷却面までの中間の高さの柱状または板状の大突起を設置したことにある。このような構造のうち被冷却面上に柱状の大・小突起を設置した場合には、柱状の小突起周囲の境界層は三次元的で微小な乱れが流れのはく離をそれ程引起こさずに与えられるため、柱状の大突起が主流を乱すことで生じた境界層内外の流体粒子の交換が境界層内の微小な乱れと効果的に干渉し合つて熱伝達現象を活発化するだけでなく最初の公知例のように熱伝達の増大に伴う流動損失の急増を起こすことがない。」(第2ページ右下欄第10行ないし第3ページ左上欄第10行) カ.「本発明の一実施例を第1図および第2図に示す。これは被冷却面上にともに柱状の大・小突起を組合せて設置した場合で、強制対流冷却に適用したものである。被冷却面1とそれより離して置かれた対向面2との間に冷却流路3が形成されており、冷却流体4は冷却流路3の一端から供給される。被冷却面1上には冷却流路3の高さよりかなり低い柱状の小突起5が密に設置され、冷却流路3を貫通する柱状の大突起6も適当な間隔を置いて設置されている。冷却流体4の主流は柱状の大突起6の前後で急加・減速され、主流と境界層7とが連成した大きな乱れが発生するため、境界層7内外の流体粒子の交換が盛んになる。一方、柱状の小突起5の周囲でも、冷却流体4の境界層7内の流れに急加・減速に伴う微小な乱れが与えられるが、この乱れは三次元的ではく離をそれ程引起こさない性質を持っている。従つて、このような境界層7内の微小乱れに柱状の大突起6による大きな乱れが重畳した場合、境界層7内と境界層7内外との流体粒子の交換が効果的に干渉し合つて熱伝達現象を活発化させるだけでなく、大きな乱れから二次的に境界層7のはく離が誘導されることが少ないため、流動損失は大・小突起が単独に設置された場合の合計値よりそれ程大きくならない。」(第3ページ右上欄第6行ないし同ページ左下欄第9行) (2)上記(1)のア.ないしカ.の記載事項及び図面からわかること。 キ.上記(1)のウ.及びオ.の記載事項から次のことがわかる。 高温部品の表面は、高温部品の本体に面する被冷却面1であるとともに、当該被冷却面1と対向面2との間に低温の冷却流体4の冷却流路3が形成されること。 ク.上記(1)のカ.の記載事項並びに第1及び2図から次のことがわかる。 大突起6及び複数の小突起5は、被冷却面1の冷却流路3側に、それぞれ分散的に設けられるとともに、複数の小突起5は、被冷却面1の表面に対して法線方向の長さが大突起6よりも短いこと。 (3)引用文献記載の発明 上記(1)のア.ないしカ.の記載事項及び図面並びに上記(2)のキ.及びク.を総合すると、引用文献には次の発明が記載されている。 「対向面2と、 前記対向面2の高温側に設置され、前記対向面2との間に冷却流体4の冷却流路3を形成する高温部品の表面とを具備し、 前記高温部品の表面は、 前記高温部品に面する被冷却面1と、 前記被冷却面1の前記冷却流路3側に分散的に設けられた大突起6と、 前記被冷却面1の前記冷却流路3側に分散的に設けられ、前記被冷却面1の表面に対して法線方向の長さが前記大突起6よりも短い複数の小突起5とを具備する ガスタービン用高温部品。」(以下、「引用文献記載の発明」という。) 3.対比 本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「冷却流路3」は、その技術的意義からみて、本願発明における「流路」に相当し、以下同様に、「大突起6」は「第1突起」に、「小突起5」は「第2突起」に、それぞれ相当する。 そして、ガスタービンにおいては、「燃焼器」の「内部」に「燃焼室」が設けられるとともに、「燃焼器」の「内側」が高温であることから、引用文献記載の発明における「高温部品」は、本願発明における「燃焼器」または「燃焼室」に、「高温部品」である限りにおいて相当するとともに、引用文献記載の発明における「高温側」は、本願発明における「内側」に、「高温側」である限りにおいて相当する。 また、引用文献記載の発明における「対向面2」は、「冷却流路3」を形成する壁面であり、本願発明における「ライナ外壁」は、「ライナ内壁」と対向する壁面を有するのであるから、引用文献記載の発明における「対向面2」は、本願発明における「ライナ外壁」に、「対向壁面」である限りにおいて相当し、同様に、引用文献記載の発明における「高温部品の表面」は、「冷却流路3」を形成する壁面であり、本願発明における「ライナ内壁」は、「ライナ外壁」の「内側」すなわち「高温側」に設置される壁面であるから、引用文献記載の発明における「高温部品の表面」は、本願発明における「ライナ内壁」に、「高温壁面」である限りにおいて相当する。 さらに、引用文献記載の発明における「被冷却面1」は、「大突起6」及び「小突起5」が設けられる板状の部材の表面であり、本願発明における「基板」は、「第1突起」及び「第2突起」が設けられる表面を有する「基板」であるから、引用文献記載の発明における「被冷却面1」は、本願発明における「基板」に、「基板面」である限りにおいて相当する。 加えて、引用文献記載の発明における「冷却流体4」は、本願発明における「冷却空気」に、「冷却流体」である限りにおいて相当する。 よって本願発明と引用文献記載の発明とは、 「対向壁面と、 前記対向壁面の高温側に設置され、前記対向壁面との間に冷却流体の流路を形成する高温壁面とを具備し、 前記高温壁面は、 前記高温部品に面する基板面と、 前記基板面の前記流路側に分散的に設けられた第1突起と、 前記基板面の前記流路側に分散的に設けられ、前記基板面の表面に対して法線方向の長さが前記第1突起よりも短い複数の第2突起とを具備する ガスタービン用高温部品。」 である点で一致し、以下の(1)及び(2)の点で相違する。 (1)相違点1 ガスタービン用高温部品に関して、 本願発明は、「ガスタービン用燃焼器」に関するものであって、 「内部に燃焼室を形成するライナ外壁と、 前記ライナ外壁の内側に設置され、前記ライナ外壁との間に冷却空気の流路を形成するパネルであるライナ内壁とを具備し、 前記ライナ内壁は、 前記燃焼室に面する基板と、 前記基板の前記流路側に分散的に設けられた第1突起と、 前記基板の前記流路側に分散的に設けられ、前記基板の表面に対して法線方向の長さが前記第1突起よりも短い複数の第2突起とを具備する 空気入口から供給される圧縮空気が、前記燃焼室と前記流路とに流れる ガスタービン用燃焼器。」 であるのに対して、 引用文献記載の発明は、「ガスタービン用高温部品」であるものの、そもそも、「ガスタービン用燃焼器」を含むかどうか不明であるとともに、「対向壁面」が「ライナ外壁」の壁面であるのか、「高温壁面」が「パネルであるライナ内壁」の壁面であるかのか、「基板面」が「基板」の表面であるのか、「高温側」が「内側」であるのか、及び「冷却流体」が「冷却空気」であるのかが、それぞれ不明であり、さらに「内部に燃焼室を形成する」とともに「空気入口から供給される圧縮空気が、前記燃焼室と前記流路とに流れる」かどうかも不明である点(以下、「相違点1」という。)。 (2)相違点2 複数の第2突起に関して、本願発明は、「前記複数の第2突起の各々は、前記基板に平行な断面が四角形」であるのに対して、引用文献記載の発明は、複数の「第2突起」に相当する「小突起6」の断面の形状が不明である点(以下、「相違点2」という。)。 4.判断 (1)相違点1について 「ガスタービン用高温部品」に、「ガスタービン用燃焼器」が含まれることは、ガスタービンにおける技術常識からみて、自明であるとともに、ガスタービンにおいて、 「内部に燃焼室を形成するライナ外壁と、 前記ライナ外壁の内側に設置され、前記ライナ外壁との間に冷却空気の流路を形成するパネルであるライナ内壁とを具備し、 前記ライナ内壁は、 前記燃焼室に面する基板と、 前記基板の前記流路側に設けられた突起とを具備し、 空気入口から供給される圧縮空気が、前記燃焼室と前記流路とに流れる ガスタービン用燃焼器。」 を用いることは、本願出願前において周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、特開2002-162036号公報、特開2000-88252号公報、特開平10-82527号公報等参照。)である。 そして、引用文献記載の発明を、上記周知技術1を考慮して、「ガスタービン用燃焼器」の発明とする際に、「対向壁面」を「ライナ外壁」の壁面とし、「高温壁面」を高温である「パネルであるライナ内壁」の壁面とし、「基板面」を「基板」の表面とし、「高温側」を高温である「内側」とし、「冷却流体」を「冷却空気」とし、さらに、「内部に燃焼室を形成する」とともに「空気入口から供給される圧縮空気が、前記燃焼室と前記流路とに流れる」こととすることは、当業者が適宜なし得ることである。 そうすると、引用文献記載の発明の「ガスタービン用高温部品」を、上記周知技術1を考慮して、「ガスタービン用燃焼器」とすることにより、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (2)相違点2について 乱流を促進するための突起の各々について、「基板に平行な断面」の形状を「四角形」とすることは、本願出願前において周知の技術(以下、「周知技術2」という。例えば、特開2003-130354号公報(平成15年5月8日公開)の段落【0033】及び【0034】並びに図4ないし6、特開平5-214958号公報の段落【0015】ないし【0021】並びに図3及び4、米国特許第6578627号明細書(平成15年6月17日特許)の第3欄第16行ないし第4欄第23行、D.E.Metzger, C.S.Fan, and J.W.Pennington、“HEAT TRANSFER AND FLOW FRICTION CHARACTERISTICS OF VERY ROUGH TRANSVERSE RIBBED SURFACES WITH AND WITHOUT PIN FINS”、Proceedings. ASME-JSME Thermal Engineering Joint Conference、(United States)、American Society of Mechanical Engineers、1983年、Vol.1、p.429-435の第431ページ右上欄第6ないし10行及び図3等参照。)である。 そうすると、引用文献記載の発明の複数の「第2突起」に相当する「小突起6」の各々について、上記周知技術2を考慮して、当該各々の「第2突起」の「基板に平行な断面」の形状を「四角形」とすることにより、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 (3)また、本願発明を全体としてみても、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとは認められない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明並びに上記周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-25 |
結審通知日 | 2009-09-28 |
審決日 | 2009-10-09 |
出願番号 | 特願2003-293523(P2003-293523) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F23R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 稲葉 大紀、近藤 泰 |
特許庁審判長 |
小谷 一郎 |
特許庁審判官 |
柳田 利夫 志水 裕司 |
発明の名称 | 熱交換隔壁 |
代理人 | 工藤 実 |
代理人 | 工藤 実 |