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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1207448
審判番号 不服2007-31333  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-20 
確定日 2009-11-19 
事件の表示 平成10年特許願第110955号「パチンコ式遊技機における打球発射操作装置およびパチンコ式遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月 2日出願公開、特開平11-299971〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年4月21日に特許出願したものであって、平成19年10月18日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年11月20日付けで本件拒絶査定不服審判が請求され、同日付けで手続補正がされたものであり、当審において平成21年6月18日付けで最後の拒絶理由を通知し、これに対し、同年8月19日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成21年8月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年8月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「機内の遊技盤内で所要のパチンコゲームを展開し得る遊技機において、
前記遊技機(P)の前面下部に設置されて遊技者が把持し得る把持部材(45)における後側部(46)の外周前端に、遊技者の指のタッチ検出を打球発射の必要条件とされるタッチ感知環(57)を取着し、このタッチ感知環(57)と把持部材(45)の前側部(48)との間に、遊技者が指先操作し得るリング状に樹脂成形された回動操作部材(49)をねじりばね(61)により常には戻り方向へ付勢した状態で回動可能に組付け、この回動操作部材(49)の外周に、半径外方向に適宜高さに突出して遊技者の指を当て得る指当て部(65)を、把持部材(45)の後側部(46)に向けて前記タッチ感知環(57)の後端縁より後方まで突出した条件で形成すると共に、前記タッチ感知環(57)の後端縁より後方まで突出した条件で形成される指当て部(65)におけるねじりばね(61)により付勢される前記回動操作部材(49)の戻り方向の後側の付け根位置に基準マーク(67)を表示し、前記把持部材(45)における後側部(46)の外周前端に打込みマーク(68,69)を表示した
ことを特徴とするパチンコ式遊技機における打球発射操作装置。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「基準マーク(67)」の表示位置について、「指当て部(65)におけるねじりばね(61)により付勢される前記回動操作部材(49)の戻り方向の後側の付け根位置」と下線部の限定を付加したものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか以下検討する。

2.引用文献
当審において通知した最後の拒絶理由に引用された特開平9-695号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(1-ア)
「パチンコ遊技機1の額縁状に形成された前面枠2の開口には、扉保持枠3が周設され、該扉保持枠3にガラス扉枠4と前面扉板5とが一側(左側)を軸として開閉自在に設けられている。ガラス扉枠4の後方には、遊技盤10が配設され、前面扉板5の前面には、払出された景品玉を貯留しかつ打球として発射位置に1個ずつ供給しかつスピーカ7を内蔵する打球供給皿6が取付けられている。」(段落【0018】)

(1-イ)
「前記前面枠2の下方には、本実施例の要部を構成する打球操作ハンドル60を含むハンドルセット20と、前記打球供給皿6に貯留しきれない余剰の景品玉を貯留する余剰玉受皿8とが取付けられている。このハンドルセット20は、遊技者が操作し得る操作ハンドル60と、該操作ハンドル60が取付けられる取付基板21とから構成され、取付基板21を前面枠2の下部に穿設された取付穴2a(図3参照)の前方に取付けることにより操作ハンドル60がパチンコ遊技機1の前面に設けられることとなる。」(段落【0019】)

(1-ウ)
「操作ハンドル60は、取付基板21に一体的に突設される支柱61に装着固定されるベース部材63と、該ベース部材63に対し所定角度範囲内で回転自在に設けられかつ前記支柱61に軸受されるハンドル軸62を回転させる操作レバー70と、その操作レバー70の前方に配置されるハンドルキャップ79を有している。」(段落【0027】)

(1-エ)
「ベース部材63の前面には、複数(3本)の連結ボス67が前方に向かって突設され、該連結ボス67に外周に金属のタッチリング69が設けられる中間プレート68が挿入され、次いで操作レバー70が挿入され、最後に連結ボス67の端面と当接する止め穴76を有する狭持板75をビスで止着する。タッチリング69には、スイッチ配線34の一部が接続されている。そして、遊技者がタッチリング69に触れたことがタッチ検出回路(図示せず)により検出され、かつ操作レバー70が回動操作されてハンドルスイッチ64がONしたときには、打球発射装置の打球モータが回動駆動されて打玉が発射される。」(段落【0028】)

(1-オ)
「操作レバー70の外周には、遊技者が指を掛ける掛止凸部74が複数突設されている。この掛止凸部74は、前後方向に長く形成されており、ハンドルキャップ79の外周上にまで到達して指を掛けやすくしている。」(段落【0029】)

また、引用文献1の【図3】の記載より、「掛止凸部74」は「ベース部材63」に向けて「タッチリング69」に一部重なるように形成されていることが分かる。

摘記した上記(1-ア)?(1-オ)の記載及び図面の記載によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「パチンコ遊技機1の前面枠2の開口に周設された扉保持枠3にガラス扉枠4と前面扉板5とが一側を軸として開閉自在に設けられ、ガラス扉枠4の後方には遊技盤10が配設され、
前面枠2の下方には、遊技者が操作し得る操作ハンドル60が取付けられ、操作ハンドル60は、ベース部材63と、外周にタッチリング69が設けられる中間プレート68と、ベース部材63に対し所定角度範囲内で回転自在に設けられる操作レバー70と、操作レバー70の前方に配置されるハンドルキャップ79を有し、操作レバー70の外周には、遊技者が指を掛ける掛止凸部74が複数突設され、かつ、ベース部材63に向けてタッチリング69に一部重なるよう形成され、
遊技者がタッチリング69に触れたことがタッチ検出回路により検出され、かつ操作レバー70が回動操作されてハンドルスイッチ64がONしたときには、打球発射装置の打球モータが回動駆動されて打玉が発射されるパチンコ遊技機1。」

3.本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「パチンコ遊技機1」及び「遊技盤10」は、本願補正発明の「パチンコ式遊技機」及び「遊技盤」に、それぞれ相当し、
さらに、引用文献1全体の記載等からみて、以下のことがいえる。

a.引用発明の「パチンコ遊技機1」は、その機内に「遊技盤10」があって、該「遊技盤10」内で「所要のパチンコゲームを展開し得る遊技機」であることは、パチンコ遊技機における技術常識より明らかである。

b.引用文献1の上記(1-ウ)、(1-エ)の記載、及び、【図2】、【図3】の記載より、引用発明における「操作ハンドル60」を構成する部材は、「ベース部材63」、「外周にタッチリング69が設けられる中間プレート68」、「操作レバー70」及び「ハンドルキャップ79」の順(以下、「配置順」という。)で、「パチンコ遊技機1」側から前方に向けて配置されていることが分かる。また、該「操作ハンドル60」は「遊技者が操作し得る」ものであるところ、その前提として「操作ハンドル60」のうち「パチンコ遊技1」に固定的に設けられる最後側の「ベース部材63」、及び、最前側の「ハンドルキャップ79」の外周を遊技者が把持し得ることは、引用文献1の【図3】の記載から見ても明らかであるので、該「ベース部材63」及び「ハンドルキャップ79」は、両部材を合わせて本願補正発明における「把持部材(45)」に相当するとともに、「ベース部材63」が本願補正発明における「把持部材(45)」の「後側部(46)」に、「ハンドルキャップ79」が本願補正発明における「把持部材(45)」の「前側部(48)」に、それぞれ相当する。
引用発明は「遊技者がタッチリング69に触れたことがタッチ検出回路により検出され、かつ操作レバー70が回動操作されてハンドルスイッチ64がONしたときには、打球発射装置の打球モータが回動駆動されて打玉が発射され」るのだから、該「遊技者がタッチリング69に触れたことがタッチ検出回路により検出され」ることは「打玉が発射され」るための1つの必要条件といえるため、引用発明における「タッチリング69」は、「遊技者の指のタッチ検出を打球発射の必要条件とされる」ものに相違ない。また、上記配置順、引用文献1の上記(1-エ)及び【図3】の記載より、該「タッチリング69」は、「中間プレート68」の外周に設けられつつ「ベース部材63」(把持部材(45)における後側部)の外周前端に取着されることは明らかであり、さらに引用発明の「操作ハンドル60」は、「パチンコ遊技機1」の「前面枠2の下方」に設けられているので、引用発明は、本願補正発明における「前記遊技機(P)の前面下部に設置されて遊技者が把持し得る把持部材(45)における後側部(46)の外周前端に、遊技者の指のタッチ検出を打球発射の必要条件とされるタッチ感知環(57)を取着し」に相当する技術事項を当然備える。

c.引用発明における「掛止凸部74」は、「遊技者が指を掛ける」ものであって、「操作レバー70の外周」に「突設され」るのだから、該「掛止凸部74」は、本願補正発明における「半径外方向に適宜高さに突出して遊技者の指を当て得る指当て部(65)」に相当するとともに、引用発明における「操作レバー70」は、本願補正発明における「遊技者が指先操作し得る」「回動操作部材(49)」に相当する。したがって、本願補正発明と引用発明とは「回動操作部材(49)の外周に、半径外方向に適宜高さに突出して遊技者の指を当て得る指当て部(65)を、把持部材(45)の後側部(46)に向けて形成する」という点で共通する。また、引用文献1に明記はないものの、「操作レバー70」をリング状に樹脂成形すること、及び、ねじりばね(61)により常には戻り方向へ付勢した状態で組付けることは、パチンコ遊技機における技術常識に属し、これらの点は一致点とすべきである。さらに、上記配置順、引用文献1の上記(1-エ)及び【図3】の記載より、引用発明における「操作レバー70」は、「タッチリング69」と「ハンドルキャップ79」(把持部材(45)の前側部(48))との間に位置することは明らかであり、「ベース部材63に対し所定角度範囲内で回転自在に設け」られるのだから、引用発明は、本願補正発明の「このタッチ感知環(57)と把持部材(45)の前側部(48)との間に、遊技者が指先操作し得るリング状に樹脂成形された回動操作部材(49)をねじりばね(61)により常には戻り方向へ付勢した状態で回転可能に組付け」に相当する技術事項を当然備える。

d.引用発明は「操作レバー70が回動操作され」て「打球発射装置」が作動するのであるから、引用発明の「パチンコ遊技機1」は「打球発射操作装置」の機能を有することは明らかである。

したがって、本願補正発明と引用発明は、
「機内の遊技盤内で所要のパチンコゲームを展開し得る遊技機において、
前記遊技機(P)の前面下部に設置されて遊技者が把持し得る把持部材(45)における後側部(46)の外周前端に、遊技者の指のタッチ検出を打球発射の必要条件とされるタッチ感知環(57)を取着し、このタッチ感知環(57)と把持部材(45)の前側部(48)との間に、遊技者が指先操作し得るリング状に樹脂成形された回動操作部材(49)をねじりばね(61)により常には戻り方向へ付勢した状態で回動可能に組付け、この回動操作部材(49)の外周に、半径外方向に適宜高さに突出して遊技者の指を当て得る指当て部(65)を、把持部材(45)の後側部(46)に向けて形成するパチンコ式遊技機における打球発射操作装置。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。

<相違点1>
「指当て部(65)」を把持部材(45)の後側部(46)に向けて形成するに当たり、本願補正発明では「タッチ感知環(57)の後端縁より後方まで突出した条件で」形成するのに対し、引用発明は「タッチリング69」に「一部重なるよう」形成するものの、「後端縁より後方まで突出した条件で」形成されてはいない点。

<相違点2>
本願補正発明は「前記タッチ感知環(57)の後端縁より後方まで突出した条件で形成される指当て部(65)におけるねじりばね(61)により付勢される前記回動操作部材(49)の戻り方向の後側の付け根位置に基準マーク(67)を表示し、前記把持部材(45)における後側部(46)の外周前端に打込みマーク(68,69)を表示し」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

4.相違点の判断及び本願補正発明の独立特許要件の判断
<相違点1>について
当審において通知した最後の拒絶理由に引用された特開平9-108409号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(2-ア)
「操作ハンドル17は、図2に示すように遊技機1に固定されるハンドルベース20と、ハンドルベース20正面に固定されるタッチ盤21と、上部に操作凸部22を有し、タッチ盤21正面に回動自由に嵌合され、一定の回動範囲を許容されたハンドル23と、により構成されている。操作ハンドル17内部には図3に示すようにタッチスイッチ24及びボリュームスイッチ25が設けられており、タッチスイッチ24はタッチ盤21に接続され、ボリュームスイッチ25のスイッチの先端はハンドル23裏面に係合されている。タッチスイッチ24からは遊技客がタッチ盤21に触れているかのタッチ信号が遊技機1裏面に配置された制御基盤26に送られる。また、ボリュームスイッチ25のスイッチはハンドル23を回動することによって連動され、ボリュームの大小が調整されるように構成されており、ボリューム信号は制御基盤26に送られる。制御基盤26はタッチ信号及びボリューム信号を受けることによって発射装置27を作動させ、前記ボリュームの大小によって、発射装置27の発射トルクを大小変化させるように構成されている。このことから、発射トルクの変化によって、発射される遊技球の飛距離も変化させることができる。」(段落【0008】)

(2-イ)
「また、図2及び図4に示すように、ハンドル23の上面であって操作凸部22の左側部近辺には三角形状の指示マーク30が設けられており、ハンドルベース20の上面には、1?5までのアラビア数字が横一列に整列された目盛31が設けられている。更に前述したアラビア数字の各々の間には棒線状の小目盛が3本ずつ設けられている。指示マーク30及び目盛31は、ハンドル23が前述した待機状態の時には、図4(a)に示すように、ハンドル23の指示マーク30が目盛31のアラビア数字の0を指し、ハンドル23が最大に右に回動した時には、図4(b)に示すように、ハンドル23の指示マーク30が目盛31のアラビア数字の5を指すように構成されている。」(段落【0009】)

(2-ウ)
「上述した構成の操作ハンドル17においては、遊技客がタッチ盤21に手を触れ、ハンドル23を右に回動させると、上受皿10から供給された遊技球は発射装置27によって発射されるが、ハンドル23に設けられている指示マーク30及びハンドルベース20に設けられている目盛31によってハンドル23の現状の回動量が表示される」(段落【0010】)

引用文献2に記載のものにおける「ハンドルベース20」、「ハンドル23」、「操作凸部22」及び「タッチ盤21」は、本願補正発明における「把持部材(45)の後側部」、「回動操作部材(49)」、「指当て部(65)」及び「タッチ感知環(57)」に、それぞれ相当する。そして、引用文献2の【図2】、【図4】の記載より、「操作凸部22」は「ハンドルベース20」に向けて「タッチ盤21」の後端縁より後方まで突出した条件で形成されていることが分かる。よって、引用文献2には、指当て部(65)を、把持部材(45)の後側部に向けてタッチ感知環(57)の後端縁より後方まで突出した条件で形成する技術事項(以下、「引用文献2記載の技術事項」という。)が開示されている。そして、引用発明に、上記引用文献2記載の技術事項を適用することに格別の困難性は認められないので、相違点1に係る本願補正発明のように構成することは、パチンコ遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)にとって想到容易である。

<相違点2>について
便宜上、「<相違点2-1>基準マーク(67)と打込マーク(68,69)を表示する構成について」と「<相違点2-2>基準マーク(67)の表示位置の構成について」とに分けて検討する。

<相違点2-1>基準マーク(67)と打込マーク(68,69)を表示する構成について
パチンコ式遊技機における打球発射操作装置において、回動操作部材の回動量調節を容易にするために、回動操作部材と遊技機側に固定される把持部材とに、それぞれマークを表示することは、上記引用文献2(特に、上記(2-イ)、(2-ウ)、【図2】及び【図4】参照)の他、特開昭56-15774号公報(特に、第3頁左下欄18行?同頁右下欄16行および第2図参照)、実願昭53-166317号(実開昭55-81380号)のマイクロフィルム(特に第4頁16行?第5頁3行および第3図参照)に示すとおり、本願出願前に周知の技術(以下、「周知技術A」という。)である。そして、当該周知技術Aは、引用発明において、回動操作部材の回動量調節を容易にするために、当業者が難無く採用できる技術手段である。

<相違点2-2>基準マーク(67)の表示位置の構成について
当審にて新たに発見した特開平9-276484号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
(3-ア)
「ハンドル39に、グリップ本体40には目盛り41を記載し、グリップリング42には、指示部43を設けて、プレイヤーが一時的にハンドル39から手を離した場合にも、プレイ中に指示部43が指した目盛り41を覚えておけば、容易に所望とする玉発射位置にハンドル39を設定できるようにしてもよいものである。」(段落【0050】)」

引用文献3に記載のものにおける「グリップリング42」、「指示部43」、「グリップ本体40」及び「目盛り41」は、本願補正発明における「回動操作部材(49)」、「基準マーク(67)」、「把持部材の後側部(46)」及び「打込みマーク(68,69)」に、それぞれ相当する。そして、引用文献3の【図12】の記載には、「グリップリング42」の外周に複数の指当て用の凸部が形成されていること、及び、これら複数の凸部のうちの一つの凸部の付け根位置に「指示部43」を表示する点が明示されており、加えて引用文献3の上記(3-ア)の「プレイ中に指示部43が指した目盛り41」との記載を参酌すると、「グリップリング42」を回動操作する際には、【図12】に示す状態から「グリップリング42」を時計方向に回転させることは自明である。さらに、回動操作部材は、ねじりばねにより戻り方向へ付勢した状態で組付けられるという技術常識を加味すれば、上記「指示部43」は、ねじりばねにより付勢される「グリップリング42」の戻り方向の後側に位置すると認められる。よって、引用文献3には「指当て部(65)におけるねじりばね(61)により付勢される前記回動操作部材(49)の戻り方向の後側の付け根位置に基準マーク(67)を表示」する技術事項(以下、「引用文献3記載の技術事項」という。)が開示されている。
そして、引用発明に周知技術Aを適用することの容易性は、上記「<相違点2-1>基準マーク(67)と打込マーク(68,69)を表示する構成について」で述べたとおりであり、その際、基準マークが示す回動量を視認し易くすることは、当業者が当然考慮する事項であるので、上記引用文献3記載の技術事項を併せて採用することに、格別の困難性があるとは認められない。

上記した<相違点2-1>及び<相違点2-2>の検討結果を踏まえると、引用発明に、上記引用文献3記載の技術事項及び周知技術Aを適用し、「前記タッチ感知環(57)の後端縁より後方まで突出した条件で形成される指当て部(65)におけるねじりばね(61)により付勢される前記回動操作部材(49)の戻り方向の後側の付け根位置に基準マーク(67)を表示し、前記把持部材(45)における後側部(46)の外周前端に打込みマーク(68,69)を表示」すること、すなわち、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者にとって想到容易である。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明、引用文献2記載の技術事項、引用文献3記載の技術事項及び周知技術Aから当業者が容易に予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術事項、引用文献3記載の技術事項及び周知技術Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
1.本願発明の認定
平成21年8月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成19年11月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「機内の遊技盤内で所要のパチンコゲームを展開し得る遊技機において、
前記遊技機(P)の前面下部に設置されて遊技者が把持し得る把持部材(45)における後側部(46)の外周前端に、遊技者の指のタッチ検出を打球発射の必要条件とされるタッチ感知環(57)を取着し、このタッチ感知環(57)と把持部材(45)の前側部(48)との間に、遊技者が指先操作し得るリング状に樹脂成形された回動操作部材(49)をねじりばね(61)により常には戻り方向へ付勢した状態で回動可能に組付け、この回動操作部材(49)の外周に、半径外方向に適宜高さに突出して遊技者の指を当て得る指当て部(65)を、把持部材(45)の後側部(46)に向けて前記タッチ感知環(57)の後端縁より後方まで突出した条件で形成すると共に、前記タッチ感知環(57)の後端縁より後方まで突出した条件で形成される指当て部(65)の付け根位置に基準マーク(67)を表示し、前記把持部材(45)における後側部(46)の外周前端に打込みマーク(68,69)を表示した
ことを特徴とするパチンコ式遊技機における打球発射操作装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用文献
当審において通知した最後の拒絶理由に引用された引用文献1(特開平9-695号公報)及び引用文献2(特開平9-108409号公報)の記載事項は、前記「第2[理由]2.及び4.」に記載したとおりである。

3.本願発明の進歩性の判断
本願発明は、上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明における「基準マーク(67)」の表示位置に関し、「指当て部(65)におけるねじりばね(61)により付勢される前記回動操作部材(49)の戻り方向の後側の付け根位置に」から下線部の限定を省いたものに実質的に相当する。そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに上記下線部の限定を付加したものに実質的に相当する本願補正発明が、引用発明、引用文献2記載の技術事項、引用文献3記載の技術事項及び周知技術Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものであることは前記「第2[理由]4.」に述べたとおりであり、更に、引用文献3記載の技術事項は、「指当て部(65)におけるねじりばね(61)により付勢される前記回動操作部材(49)の戻り方向の後側の付け根位置に基準マーク(67)を表示」するものであるので、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術事項及び周知技術Aに基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-09-15 
結審通知日 2009-09-24 
審決日 2009-10-07 
出願番号 特願平10-110955
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽高橋 三成  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
河本 明彦
発明の名称 パチンコ式遊技機における打球発射操作装置およびパチンコ式遊技機  
代理人 山田 健司  
代理人 山本 喜幾  
代理人 多賀 久直  

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