• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23K
管理番号 1207454
審判番号 不服2008-18856  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-24 
確定日 2009-11-19 
事件の表示 特願2003-117697「カーボン型およびこれを用いたセラミックヒータの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日出願公開、特開2004-314166〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年4月22日(優先権主張平成15年2月26日)の出願であって、平成20年5月28日付けで手続補正がなされ、同年6月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、平成20年9月25日付けで、審判請求の理由が補充されるとともに、同日付の手続補正書が提出されたが、この手続補正書は、特許法第17条の2第1項第4号の期間内にしたものではないので却下された。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成20年5月28日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】セラミック体にリード部材をロウ付けする際に載置するためのカーボン型であって、その密度が1.5?1.9g/cm3であり、前記セラミック体の長さに対して30%以上の非接触部をなす座ぐりを有することを特徴とするカーボン型。」(以下、請求項1に記載の発明を「本願発明」という。)

第3.引用例
○引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-312967号公報(以下、「引用例1」という。)には、「ロー付け用治具およびそれを用いたセラミックヒーターの製造方法」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

ア.【特許請求の範囲】
「【請求項1】 芯材と、前記芯材を被覆する絶縁シートと、前記芯材と前記絶縁シートの間に埋設された抵抗発熱体と、一端部に設けられるとともに前記抵抗発熱体に接続された端子とから構成されたセラミックヒーター用部材の前記端子にリード線をロー付けするためのロー付け用治具であって、前記セラミックヒーター用部材及び前記リード線をロー付け可能な状態で載置することができる形状に溝部が形成され、さらに、ロー付け部分の近傍にロー材を載置するためのロー材載置用溝部及び加熱により溶融したロー材をロー付け部に流れ込ませるためのロー材誘導用溝部が形成されていることを特徴とするロー付け用治具。」

イ.段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミック中に抵抗発熱体が埋設されたセラミックヒーターの端子部のロー付けに用いるロー付け用治具及びそれを用いたセラミックヒーターの製造方法に関する。」

ウ.段落【0006】?【0010】
「【0006】従来、セラミックヒーター用部材にリード線をロー付けする場合には、カーボン製のロー付け用治具を用いていた。図4は、このカーボン製のロー付け用治具を模式的に示した平面図であり、図5は、この治具にセラミックヒーター用部材を載置した状態を模式的に示した部分拡大平面図である。
【0007】平面視矩形状のカーボン製のロー付け用治具30は、表面の一部が削除されて凹部が形成されており、セラミックヒーター用部材20aを載置する部分は、凸部31、32を構成している。
【0008】そして、凸部31には、複数のセラミックヒーター用部材20aを並列して載置するために断面がV字状にカットされた複数の溝部31aが形成されており、凹部32には、リード線26を載置するための複数の溝部32aが形成されている。
【0009】セラミックヒーター用部材20aをロー付けする際には、図5に示すように、セラミックヒーター用部材20aを溝部31aに載置し、さらに、2個のリード線26を、外部端子25の両側から外部端子25に接触させた状態で載置する。
【0010】次に、外部端子25に接触しているリード線26の上に、外部端子25と接触するようにロー材27を載置した後、これらの工程が終了したロー付け用治具30を加熱炉に搬入し、ロー材27を溶融させることによりロー付けを行う。」

エ.段落【0019】?【0021】
「【0019】図1(a)は、本発明のロー付け用治具の一例を模式的に示した平面図であり、(b)は、その一部を拡大して示した部分拡大平面図であり、図2は、この治具にセラミックヒーター用部材を載置した状態を模式的に示した部分拡大平面図である。
【0020】カーボン製のロー付け用治具10は、セラミックヒーター用部材20aを迅速に加熱することができるように、一部を除いて表面の大部分が切削されて凹部が形成されており、セラミックヒーター用部材20aを載置する部分のみが帯状に残され、凸部11、12を構成している。
【0021】そして、凸部11には、複数のセラミックヒーター用部材20aを並列して載置するために断面がV字状にカットされた溝部11aが複数形成されている。一方、凸部12には、図1(b)に示したように、セラミックヒーター用部材20aの下端部分を載置するための本体用溝部12a、リード線26を載置するためのリード線用溝部12b、ロー材27を載置するためのロー材載置用溝部12c、及び、加熱により溶融したロー材27をロー付け部に流れ込ませるためのロー材誘導用溝部12dが形成されている。このロー材誘導用溝部12dは、ロー付け部に近づくにつれて低くなるように傾斜がつけられていることが望ましい。」

オ.段落【0022】?【0024】
「【0022】セラミックヒーター用部材20aをロー付けする際には、図2に示すように、セラミックヒーター用部材20aを溝部11aと溝部12aとにかけ渡し、さらに、2個のリード線26を、溝部12bに載置する。図2に示したように、2個のリード線26は、溝部12bに載置されると、自動的に外部端子25にロー付けできる状態となる。また、ロー材27は、その先端がロー材誘導用溝部12dに出るように、ロー材載置用溝部12cに載置する。
【0023】これらの工程が終了した後、ロー付け用治具10を加熱炉に搬入すると、ロー材27はロー付け温度まで加熱される。これにより、ロー材27は溶融し、ロー材誘導用溝部12dに沿って外部端子25部分まで流れ込み、リード線26及び外部端子25に融着する。
【0024】この後、ロー付け用治具10を加熱炉より搬出することにより温度を降下させると、ロー材27がロー付け部で固化し、図3(b)に示すように、リード線26がロー材27を介して外部端子25部分で支持、固定され、ロー付けが完了する。」

以上によれば、引用例1には、
「セラミックヒーターの端子部のロー付けに用いる、カーボン製のロー付け用治具であって、セラミックヒーター用部材を迅速に加熱することができるように、一部を除いて表面の大部分が切削されて凹部が形成されているロー付け用治具。」
との発明(以下、「引用例発明1」という。)が開示されていると認められる。

○引用例2
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-354482号公報(以下、「引用例2」という。)には、「セラミックろう付け用黒鉛治具」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。

カ.【特許請求の範囲】
「【請求項1】 空気中、973K、5時間における酸化消耗率が10質量%以下であるセラミックろう付け用黒鉛治具。
【請求項2】 かさ密度が1.80Mg/m3以上、ショア硬度が85以上である請求項1に記載のセラミックろう付け用黒鉛治具。」

キ.段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体のセラミックパッケージの位置決めやリードピン、リードフレームのろう付等に使用されるセラミックろう付け用黒鉛治具に関する。」

ク.段落【0006】?【0007】
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この黒鉛材であっても、熱膨張係数の一致性が十分だとはいえず、ろう付け時に黒鉛治具とリードピン等が接触することがあり、そのため、黒鉛治具の摩耗等が発生していた。また、一般的に、これらセラミックパッケージのろう付けは空気中で行われるため、黒鉛治具が、酸化消耗し、リードピン等の位置決め精度が悪くなるという問題もあった。
【0007】そこで、本発明は、熱膨張率をセラミック基板等と合わせるとともに、硬度を高め、耐摩耗性を向上させ、さらには耐酸化性に優れたセラミックろう付け用黒鉛治具を提供することを目的とする。」

ケ.段落【0008】?【0011】
「【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための本発明のセラミックろう付け用黒鉛治具は、空気中、973K、5時間における酸化消耗率が10質量%以下である。また、かさ密度が1.80Mg/m3 以上、ショア硬度が85以上であるものが好ましい。また、623?723Kでの熱膨張係数が7.0?7.5×10-6/K、1073?1123Kでの熱膨張係数が7.5?8.5×10-6/Kであるものが好ましい。また、室温での熱伝導率が60W/(m・K)以上であるものが好ましい。
【0009】本発明における黒鉛治具は、コークス等のフィラー(骨材)と、ピッチ等のバインダー(結合材)とを混合し、これを所定の形状に成形したのち、熱処理によってバインダーを炭素化固結させて形成された黒鉛材より所定の形状に加工されて得られる。そして、骨材の熱的性質及び物理的性質について適切なものを選定することにより酸化消耗率、かさ密度、ショア硬度、熱膨張係数、熱伝導率を所定範囲に収めることができる。
【0010】酸化消耗率は、予め質量を測定しておいた黒鉛を、空気中で973Kで5時間熱処理した時の質量変化から算出したものである。一般に、セラミックのろう付けは、セラミック基板を1073?1273Kに加熱して行われており、このセラミック基板を載置する黒鉛治具の温度はこの温度より高くなることはない。したがって、空気中で973Kで5時間熱処理した時の酸化消耗率が10質量%以下、好ましくは5質量%以下であれば、例えば、1073?1273Kの温度範囲で処理された場合と同等と考えることができ、ろう付け処理後の寸法精度の低下を抑制することができる。
【0011】また、かさ密度を1.80Mg/m3 以上、好ましくは1.85Mg/m3 以上とし、ショア硬度を85以上、好ましくは90以上とする。かさ密度を1.80Mg/m3 以上、好ましくは1.85Mg/m3 以上とすることで、酸化活性点を減少させることができ、耐酸化性を向上させることができる。また、ショア硬度を85以上、好ましくは90以上とすることで、耐摩耗性が向上し、セラミックろう付け時にリードピン等と接触した場合であっても、摩耗することがなく、ピンピッチ等の寸法精度が低下することがない。」

コ.【表1】には、かさ密度が1.75Mg/m3(比較例2)から、1.95Mg/m3(比較例4)にわたる黒鉛治具が、実施例と比較例合わせて9例、示されている。

以上によれば、引用例2には、
「セラミックパッケージの位置決めやリードピン、リードフレームろう付等に使用するセラミックろう付け用黒鉛治具であって、そのかさ密度が1.75Mg/m3から1.95Mg/m3の間で種々設定されたセラミックろう付け用黒鉛治具。」
との発明(以下、「引用例発明2」という。)が開示されていると認められる。

第4.対比・判断
本願発明と引用例発明1とを比較すると、セラミック体にリード部材をロウ付けする際に載置するための型である点で、両者は共通しており、さらに、後者の「カーボン製のロー付け用治具」は、前者の「カーボン型」に相当し、さらに、後者の、「凹部」は、セラミックヒーターを載置しないのであるから、セラミックヒーターに接触していないとみることができ、前者の「非接触部」に相当するものといえる。

してみれば、両者の一致点は以下のとおりである。
<一致点>
「セラミック体にリード部材をロウ付けする際に載置するためのカーボン型であって、非接触部を有するカーボン型。」

そして、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明は、「その密度が1.5?1.9g/cm3」であるのに対して、引用例発明1のカーボンの密度は不明である点。

<相違点2>
本願発明は、非接触部が「セラミック体の長さに対して30%以上」の「座ぐり」であるのに対して、引用例発明1では、凹部であって、長さの比も規定されていない点。

<相違点1>について検討する。
引用例発明2における、セラミックろう付け用黒鉛治具の「かさ密度」は、本願発明のカーボン型の「密度」に相当し、引用例発明2にて用いられている単位、「Mg/m3」は、本願発明で用いられている単位「g/cm3」に、相当することは明らかである。
そして、本願発明の密度範囲は、上記第3.コ.にみられるように、出願前に公然知られた密度を含むものであり、カーボン型のように、骨材と結合材の調節により密度を変えることができるならば、型を加熱・冷却しやすくするために密度の上限を設定するのは設計的事項である。
また、特に本願発明が、密度の上限を「1.9g/cm3」とした点についてみると、一般的にいって、物質の密度が高ければ、その物質でできた物体の熱容量も大きくなり、したがって、その物体は加熱・冷却が遅くなるのは常識的な事項であり、その上限を特定することに格別の困難性はない。
以上のとおり、相違点1に係る本願発明の構成は引用例発明2に示されているということができ、セラミック体にリード部材をロウ付けする際に使用する型である点でも、引用例発明1と引用例発明2は共通しているから、これらを組み合わせるにあたっての阻害要因があるとすることもできない。
してみれば、相違点1に係る構成の違いは、引用例発明1に引用例発明2を組み合わせたにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2>について検討する。
本願発明の「座ぐり」が示す形状は、必ずしも明らかではないが、図3(a)、(b)の記載によれば、長さXの範囲でセラミック体6の下部側面に接触しない、長さ方向に垂直な断面が角型状の凹部が座ぐり22と認められる。
そして、引用例発明1の凹部も、迅速に加熱することができるように設けられたものであるから、この凹部によって、加熱と同様に迅速に冷却できることも明らかであり、加熱・冷却のためのガスがセラミック体の周囲を通過するための空間を設け、型がセラミック体に接触しないようにしたものである点で、本願発明の座ぐりと同様な作用をなすものといえる。
また、非接触部を「セラミック体の長さに対して30%以上」とした点についても、引用例発明1においても、凹部は大部分であるとされており、その割合を30%以上とした点は単なる数値の限定にすぎないものである。
してみれば、相違点2に係る構成の違いは、設計的事項であり、当業者が容易に想到し得たものである。

作用ないし効果について
本願発明の作用ないし効果も引用例発明1、引用例発明2に記載の発明及び周知事項から当業者が予想できる範囲のものである。

第5.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例発明1、引用例発明2、及び設計的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は、その余の請求項に係る発明について見るまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

なお、却下された平成20年9月25日付け手続補正書は、特許請求の範囲の請求項1には、座ぐりに関して、「穴形状である」との限定を加えんとするものであった。これについてみると、「穴」という用語は底のある「あな」を示すものであるから、この限定によって、「座ぐり」という発明特定事項にさらなる技術的意味を持たせるものとは認められない。また、この「穴形状である」という事項が、底のない貫通孔を意味するものであるとしても、加熱・冷却のためのガスの流通を促進するために孔を空けるのは周知事項にすぎないものである。してみれば、上記手続補正書が却下されなかったとしても、本願は拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2009-09-18 
結審通知日 2009-09-24 
審決日 2009-10-07 
出願番号 特願2003-117697(P2003-117697)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 和幸  
特許庁審判長 小椋 正幸
特許庁審判官 佐々木 一浩
菅澤 洋二
発明の名称 カーボン型およびこれを用いたセラミックヒータの製造方法  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ