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関連判例 | 平成20年(ワ)7901号損害賠償請求事件平成20年(ワ)7782号損害賠償請求事件平成20年(ワ)7901号損害賠償請求事件平成20年(ワ)7782号損害賠償請求事件平成21年(行ケ)10128号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 C25D |
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管理番号 | 1207568 |
審判番号 | 無効2008-800139 |
総通号数 | 121 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-01-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2008-07-31 |
確定日 | 2009-12-08 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3025254号発明「めっき装置およびめっき方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3025254号の請求項1、3、6及び8に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件特許発明と当事者の主張 1 手続の経緯 本件特許第3025254号の請求項1?9に係る発明は、平成11年2月5日に特許出願され、平成12年1月21日に特許の設定登録がなされたものである。 これに対して、平成20年7月31日にアルメックスPE株式会社(以下「請求人」という)より、その請求項1、3、6、8に係る発明の特許について無効審判の請求がなされた。そこで、被請求人からの同年10月24日付け答弁書の提出の後に、当事者の双方から口頭審理陳述要領書の提出を受けて、平成21年3月9日に口頭審理がおこなわれた。なお、同年3月12日付けで被請求人から上申書が提出された。 2 本件特許発明 本件特許3025254号の請求項1、3、6及び8に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、3、6、8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本件特許発明1?4」という)。 「【請求項1】 被処理物を垂直状態に保持してめっき槽内を搬送するめっき装置において、 被処理物の保持とめっき電流の給電を行う搬送用ハンガー、 搬送用ハンガーを懸架してめっき電流を給電するめっき槽搬送手段、 搬送用ハンガーを移送する前処理コンベア、 前処理コンベアから搬送用ハンガーを取り外し、めっき槽搬送手段よりも高速に搬送用ハンガーを移送し、めっき槽搬送手段に被処理物を所定の間隔を保持して取り付ける位置決め搬送手段を有し、 めっき槽搬送手段が一定の速度で搬送した状態で、先にめっき槽搬送手段に取り付けられた被処理物との間隔をめっき厚さに不均一を生じない大きさに保持して、次の被処理物を取り付けた搬送ハンガーをめっき槽搬送手段に取り付けて搬送しながらめっき処理する ことを特徴とするめっき装置。 【請求項3】 被処理物の間隔が20mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載のめっき装置。 【請求項6】 被処理物を垂直状態に保持してめっき槽内を搬送しながらめっきするめっき方法において、被処理物を保持した搬送用ハンガーをめっき槽内を搬送するめっき槽搬送手段よりも高速に移動する位置決め搬送手段によって、めっき槽搬送手段に取り付けられて先に搬送される被処理物との間隔を所定の間隔に保持するように被処理物を保持した搬送用ハンガーをめっき層搬送手段に取り付けて一定の速度で搬送しながらめっき処理することを特徴とするめっき方法。 【請求項8】 被処理物の間隔が20mm以下であることを特徴とする請求項6または7記載のめっき方法。」 3 請求人の主張及び証拠方法 これに対して請求人は、本件特許の請求項1、3、6及び8に係る発明の特許を無効とするとの審決を求め、その理由として次の無効理由1及び2を挙げて、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当するので無効であると主張し、証拠方法として甲第1?3号証及び甲第7,8号証を提出している。なお、甲第4?6号証及びこれに関連する主張は、請求人により口頭審理において取り下げられた。 [無効理由1] 本件特許発明1?4は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1?3号証及び甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [無効理由2] 本件特許発明1、3は、本件特許出願前の他の出願であって、本件特許出願後に出願公開されたもの(甲第8号証)の願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された発明であって、出願人及び発明者のいずれも同一ではないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 4 被請求人の反論 一方、被請求人は、本件特許発明の前提技術として乙第1号証を提示し、本件特許発明1?4は、甲第1号証?甲第3号証及び甲7号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものでないので、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、また、本件特許発明1及び3は、甲第8号証に記載されたものではないので特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではないので、本件特許無効の審判請求は成り立たない旨を主張する。 第2 無効理由1について 1 刊行物の記載事項 (1)甲第1号証 請求人が提出した甲第1号証(特開平5-311496号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (ア)「本発明は、電気めっき、無電解めっき、化学研磨等の表面処理を行う際に、一連の処理工程に沿って処理すべき物品を自動的に移し換えて移送するための自動表面処理装置における移し換え移送機構に関するものである。」(【0001】段落) (イ)「本発明は、・・・前処理ゾーンおよび後処理ゾーンの複数タンクを備えた部分では間欠的移送方式を採用し、めっき等の表面処理ゾーンでは連続的移送方式を採用し、しかもこれら各処理ゾーン間の物品の移し換え移送を自動化し、常に均一な表面処理を可能とし、表面処理装置の信頼性を高め、・・・自動表面処理装置における移し換え移送機構を提供することを目的としている。」(【0004】段落) (ウ)「本発明の一実施例を図1を参照して説明する。1は、複数の前処理タンクを備えた前処理ゾーンで、物品(図示せず)を懸吊、保持したワークキャリヤ2が摺動するワークレール3_(1) が備えられ、ワークレール3_(1) の上方にはワークレール3_(1) に沿って所定範囲を前進、後退するティーバー4_(1 )が設けられ、・・・ティーバー4_(1) には前進時に必要なワークキャリヤ2に係合してこれを前進させ、後退時には回動してワークキャリヤ2上を後退することができる爪5_(1) が一定ピッチで取り付けられている。」(【0008】段落) (エ)「めっきタンク12上には無端チェーン14が連続走行可能に設けられ、この無端チェーン14にワークレール13上のワークキャリヤ2に係合するプッシャ15の基部が一定ピッチで枢着され、プッシャ15は上下方向に揺動自在となっている。」(【0009】段落) (オ)「いま、図3のように、ティーバー4_(1) ,4_(2) が前進限まで前進すると、爪5_(1) によってワークキャリヤ2のAはワークレール3_(1) からワークレール13へ移る・・・」(【0011】段落) (カ)図面を参照すれば、表面処理ゾーンにおけるキャリア間隔は、前処理ゾーンにおけるキャリア間隔よりも狭いことが見てとれる。 (2)甲第2号証 同じく甲第2号証(特開平10-168600号公報)には図面と共に次の事項が記載されている。 (ア)「電気めっき処理装置において、ジグと通称されているワーク支持具は、めっき処理されるワークを支持する機能と、電流を陰極バーからワークに通電する機能をもつものである。このワーク支持具は、陰極バーに吊り下げられる断面略コ字状の極棒接続部をもつハンガー部と、このハンガー部の下方に設けられたワーク取付け部とから構成されている。」(【0002】段落) (イ)「本発明のワーク支持具は、シート形状のワークを確実に支持でき、且つ電流を陰極バーからワークへ確実に通電できる。このように、シート形状のワークを確実に支持でき、且つ電流を陰極バーからワークへ確実に通電できるようにしたことによって、めっき処理の全工程が終了するまで振動や移動によっても、ワークの外れ、ワークの破れ、ワークの歪み、ワークに対する通電不良等がなく、めっき製品の品質安定化を期待できる。・・・また、本発明のワーク支持具は、めっき液中にワークを支持するための必要以上の支持具物品を投入する必要がないため、ワーク支持具へのめっき液の付着を大幅に改善でき、めっき液の他槽からの持込みや他槽への持出しによる処理液の混入を大幅に防止できる・・・。」(【0017】段落) (ウ)図面を参照すれば、ワークは支持具によりめっき液中に垂直に支持されていることは明らかである。 (エ)以上より、甲第2号証には、次の技術内容が記載されている。 シート状のワークをワーク支持具により垂直に支持してめっき液中で電気めっきするにあたり、電気めっきのための電流を、陰極バー、ワーク支持具を介してワークに通電すること。 (3)甲第3号証 同じく甲第3号証(特開平10-158896号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (ア)「本発明は、メッキ処理装置に関し、更に詳細には被メッキ物をプッシャで押圧することにより直線状に配置された複数の電極に沿って被メッキ物を水平移動させてメッキ処理を施すプッシャタイプのメッキ処理装置に関する。」(【0001】段落) (イ)「このプッシャタイプのメッキ処理装置は、多数の被メッキ物に同1条件でメッキを施すことができるので、プリント基板などの精密メッキに適している。」(【0004】段落) (ウ)「被メッキ物10にメッキ処理を施す場合は、第1陽電極20及び第1陰電極21間に電流が印加される。そうすると、図3に示すようにこの電流が保持手段15の給電板34、給電バー33、主バー31、係止部40、被メッキ物10及びメッキ液42を介して通電する。これによって、メッキ液42中のメッキ用金属、本例では銅が被メッキ物10の所定の位置に付着してメッキ処理が行われる。」(【0022】段落) (エ)図面を参照すれば、被メッキ物は支持具によりめっき液中に垂直に支持されていることは明らかである。 (オ)以上より、甲第3号証には、次の技術内容が記載されている。 プリント配線板等の被メッキ物を支持具で垂直に支持してメッキ液中を移動させつつ給電して電気メッキするに当たり、電流は、第1陰電極から被メッキ物の支持具を介して被メッキ物に流れていること。 (4)甲第7号証 同じく甲第7号証(米国特許明細書第5,558,757号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(原文は英語)。 (ア)「本発明は、第1に、浴内で陰極レール又は陰極フレーム上に間隔をおいて1列に配列されたワークピースに対して電気的被覆を行う方法の改善に関するものである。ここでは、陰極処理電流は、陰極レール又は陰極フレームを通り、上記したワークピースの列の方向に平行に流れる。・・・この方法において、ワークピースの列は、製品のひとまとまりごとに調整されて水平方向に移動する。」(第1欄第6?16行) (イ)「上記した端部3’及び3”は、各々a1、a2、a3の距離を有して離れている。実際には、a1等の距離は、比較的小さく保つべきである。さもなければ、ある距離をおいて互いに向かい合う端部3’及び3”の”K”と”A”の領域には、金属の沈積による厚肉化が起こるからである。これは、いわゆる「ドッグ・ボーン効果」と呼ばれる。(第3欄46?51行)。 (5)甲第8号証 同じく甲第8号章(特開平11-61495号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (ア)「本発明は、プリント基板などのシート状短冊製品を製品上部で懸垂状態に挟持し該製品上部で給電しながらタンク内の処理液中を横向きで直列にした搬送状態で搬送させて電気メッキする電気メッキ処理システムであり、特にシート面に対する均一なメッキ処理を可能にした電気メッキ処理システムに関する。」(【0001】段落) (イ)「各製品Wの横向き間隔を該製品Wの側端部に電流が過度に集中されない所定の狭い間隙幅となるよう所定の送りピッチで係合し、係合された前記ローラチェーン8の駆動によって前記治具2に懸垂状態に挟持された前記製品Wを前記陰極バー1に沿って横向きで直列にした搬送状態で搬送するように構成してある。」(【0008】段落) (ウ)「このように前記係合ローラ9のローラ間隔に対して前記係合突起5の各突起間隔を半分の間隔になるよう狭く形成したことによって、係合された前記ローラチェーン8の駆動によって前記治具2に懸垂状態に挟持された前記製品Wを前記陰極バー1に沿って横向きで直列にした搬送状態で搬送する際の、各製品Wの横向き間隔の誤差を少なくでき、よって各製品Wの横向き間隔を該製品Wの側端部に電流が過度に集中されない所定の狭い間隙幅を保持しながら搬送できる。」(【0009】段落) (6)乙第1号証 被請求人が提出した乙第1号証(特公平4-14199号公報)には、プリント基板を自動的に装着・離脱可能とするラック装置に関する発明が記載されている(第1欄22、23行)。これは、プリント基板の強固な保持及び解除を自動的に行えるとともに、異なった横幅のプリント基板にも即応できるラック装置である(第3欄10?14行) 2 当審の判断 請求人は、本件特許発明1?4は、甲第1?3号証及び甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると主張するので、以下これについて検討する。 (1)甲第1号証の記載内容 (i)甲第1号証には、被処理物品を、前処理ゾーンからめっき等の表面処理ゾーンへ、ワークレール上をワークキャリアで懸吊状態で搬送しつつ、めっきタンク中で被処理物を電気めっきする方法が記載されている(甲第1号証の摘記事項(ア)、(イ)、(ウ))。 (ii)当該ワークキャリアは、前処理ゾーンでは、ティーバーに設けられた爪でワークレール上を前進あるいは後退させられているので、ワークレール、ティーバー及び爪は、前処理コンベアを構成するものである(ウ)。 (iii)表面処理ゾーンにおいて、ティーバーが前進限まで前進し、爪によりワークキャリアはワークレール3_(1) からワークレール13へ移し替えられている(オ)。その際に、表面処理ゾーンにおけるキャリア間隔は前処理ゾーンにおけるそれよりも狭いので(カ)、前処理ゾーンから移し替えられたキャリアは、表面処理ゾーンで先行するキャリアに追いつくために、めっき槽での搬送手段による搬送速度より高速搬送で移動されることは当然のことである。また、ワークキャリアがワークレール13へ移し替えられた段階で、間隔が一定ピッチに設定されたプッシャに受け渡されているので、ワークキャリアは位置決め搬送されているといえる。 (iv)めっきゾーンでは、無端チェーンに一定ピッチで固定されたプッシャが、ワークキャリアを連続的に移送している(エ)。このため、ワークキャリアは、めっき液中を一定速度で、一定の間隔を保持して連続的に移送されている。 そうしてみると、甲第1号証には次の発明が記載されているといえる(以下「甲第1号証発明」という)。 被処理物品を前処理ゾーンからめっき等の表面処理ゾーンへワークキャリアで懸吊状態で搬送しつつ、めっきタンク中で被処理物を電気めっき装置であって、 ワークキャリアを前処理ゾーンで搬送する前処理コンベア、 ワークキャリアを前処理コンベアから取り外し、めっき搬送手段に所定間隔を保持して取り付ける位置決め搬送手段であって、取り外しではめっき搬送手段よりも高速にワークキャリアを移送する搬送手段、 めっき搬送手段が一定の速度で搬送した状態で、先にめっき槽搬送手段に取り付けられた被処理物を一定の間隔に保持して、次の被処理物を取り付けた搬送ハンガーをめっき槽搬送手段により連続的に取り付けることからなるめっき装置。 (2)対比・判断 甲第1号証発明における「ワークキャリア」は本願発明における「搬送用ハンガー」に相当するので、結局、本願発明と甲第1号証発明との一致点と相違点は次のとおりとなる。 <一致点> 被処理物を保持してめっき槽内を搬送するめっき装置において、 搬送用ハンガーを懸架するめっき槽搬送手段、 搬送用ハンガーを移送する前処理コンベア、 前処理コンベアから搬送用ハンガーを取り外し、めっき槽搬送手段よりも高速に搬送用ハンガーを移送し、めっき槽搬送手段に被処理物を所定の間隔を保持して取り付ける位置決め搬送手段を有し、 めっき槽搬送手段が一定の速度で搬送した状態で、先にめっき槽搬送手段に取り付けられた被処理物を一定の間隔に保持して、次の被処理物を取り付けた搬送ハンガーをめっき槽搬送手段に取り付けて搬送しながらめっき処理する ことを特徴とするめっき装置。 <相違点> 1 本件特許発明1での搬送用ハンガーは、被処理物を垂直状態に保持し、めっき槽搬送手段から搬送用ハンガーを通してめっき電流を給電しているが、この点について甲第1号証には具体的に明記していない。 2 本件特許発明1では、先にめっき槽搬送手段に取り付けられた被処理物との間隔を、めっき厚さに不均一を生じない大きさに保持しているが、甲第1号証発明では、一定の間隔に保持するとするがその程度が明らかでない。 (3)相違点の検討 (ア)相違点1について 甲第2及び甲第3号証に記載されているとおり、シート状の被処理物を支持具で垂直に支持してめっき液中でめっき処理を施すに当たり、めっき電流を、陰極バー、支持具を介して被処理物に通電することは、本件特許出願前に周知の技術である。また、甲第3号証には、被処理物をめっき液中で移動させつつ電気めっきすることも記載されている。 たしかに、甲第1号証発明では、めっき電流をどのように給電するのかを明記していない。しかし、甲2及び甲3号証に記載された技術を参酌すれば、被処理物を垂直に保持し、搬送手段から搬送用ハンガーを通して給電を行うことが、その一つの実施態様として当然に含まれるであろうことは、当業者であれば当然に理解することと認める。 したがって、相違点1に関する具体的態様を、甲第1号証発明は当然に包含しているといえる。 (イ)相違点2について 甲第7号証に関する摘記事項(イ)から明らかなように、被めっき物であるワークシートを電気メッキするに際し、ドッグボーン効果と呼ばれるシート端部での厚肉化現象を避けるために、ワークシートの間隔を小さく保つことは、本件特許出願前に当業者には公知の技術事項である。そして、摘記事項(ア)に示されるように、甲第7号証に記載された発明では、ワークピースを水平方向に移動させつつメッキ処理することも従来技術としている以上、この公知の技術事項を甲第1号証に記載されるような連続メッキ処理に適用することも示唆されているとすることができる。 したがって、甲第1号証におけるめっき液中での被処理物の一定間隔を、ドッグボーン効果は発生しない程度の小さな間隔とすること、すなわち、めっき厚さに不均一を生じない大きさに保持することは、当業者が容易に想到することである。なぜなら、甲7号証に記載された技術は、甲1号証発明と同一の技術に関するもので、均一めっき膜を形成する点で課題も共通するからである。その効果も、甲第7号証に記載された事項の範囲内である。 (ウ)以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第1?3号証及び甲第7号証に記載された発明により、当業者が容易になしえたものであると認める。本件特許発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 (4)本件特許発明2について 本件特許発明2は、被処理物の間隔を20mm以下に限定することを特徴事項とするものである。 しかし、本件特許発明1に関する相違点2の検討で示したように、甲第7号証にはシート端部での厚肉化現象を避けるためにワークシートの間隔を小さく保つことが記載されている。この技術を甲第1号証発明に適用するに際し、その間隔をどの程度にするかについての数値範囲を設定することは、望まれる製品の特性や実験条件等の各種データを参酌して当業者が適宜なしうるものである。また、20mm以下とすることにより、本件特許発明2において、格別に顕著あるいは特異な効果が達成されているとすることもできない。 したがって、本件特許発明2は、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証及び甲第7号証に記載された発明により、当業者が容易になしえたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。 (5)本件特許発明3及び4について 本件特許発明3は、本件特許発明1のめっき装置に係る発明に関し、その特徴事項の一部を方法的に表現したものであり、全ての特徴事項は本件特許発明1に包含される。このため、本件特許発明1と同様に、甲第1?3号証及び甲第7号証に記載された発明により、当業者が容易になしえたものである。 また、本件特許発明4については、方法の発明に関する特許発明3に関し、被処理物の間隔を20mm以下と限定するものである。本件特許発明2に関する進歩性の判断と同様、甲第1?3号証及び甲第7号証に記載された発明により、当業者が容易になしえたものである。 このため、本件特許発明3及び4は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。 第3 むすび 以上のとおりであるから、本件特許発明1?4に係る特許は、無効理由2を検討するまでもなく、特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-03-24 |
結審通知日 | 2009-03-30 |
審決日 | 2009-04-13 |
出願番号 | 特願平11-29078 |
審決分類 |
P
1
123・
121-
Z
(C25D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 正紀、川端 修 |
特許庁審判長 |
真々田 忠博 |
特許庁審判官 |
徳永 英男 國方 康伸 |
登録日 | 2000-01-21 |
登録番号 | 特許第3025254号(P3025254) |
発明の名称 | めっき装置およびめっき方法 |
代理人 | 井上 一 |
代理人 | 石川 幸吉 |
代理人 | 永井 義久 |
代理人 | 石川 幸吉 |