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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800196 審決 特許
無効200335505 審決 特許
無効200480218 審決 特許
無効200680021 審決 特許
無効200480075 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1207755
審判番号 無効2007-800016  
総通号数 121 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-01-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-01-31 
確定日 2009-12-03 
事件の表示 上記当事者間の特許第2527107号発明「固体分散体の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2527107号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第2527107号に係る出願は、平成4年4月14日(優先権主張、平成3年4月16日)を国際出願日とする出願であって、平成8年6月14日に特許権の設定登録がされた。
(2)その後、3件の特許異議の申立があり、平成9年異議第70779号として審理され、特許取消理由の通知に応答し平成9年8月1日付けで提出された訂正請求が認められ、各特許異議申立人の主張はいずれも採用されず、本件特許は維持された。
(3)ここに、請求人・佐伯憲生により平成19年1月31日に本件の特許発明に対して無効の審判が請求され、それに対し、被請求人・日本新薬株式会社より平成19年4月23日に答弁書が提出された。
(4)次いで、当審で、請求人と被請求人に平成19年6月29日付けの審尋がなされ、それに対し、前記被請求人から平成19年7月18日付けの回答書が提出され、前記請求人から平成19年7月18日付けの回答書が提出された。
(5)その後、請求人から平成20年2月12日付けで口頭審理陳述要領書が提出され、被請求人から平成20年2月13日付けで2通の上申書(上申書(3),上申書(4))が提出され、平成20年2月14日に口頭審理が行われ、そして、請求人から平成20年2月29日付けで上申書が提出され、被請求人から平成20年2月29日付けの上申書(上申書(5))と平成20年3月24日付けの上申書(上申書(6))が提出された。

2.本件特許発明
本件特許第2527107号の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】高分子担体中に薬物が溶解又は分散している固体分散体を製造するにあたって、スクリュー軸上にパドルを有する2軸型エクストルーダーを用いることを特徴とする当該固体分散体の製造方法。」

3.請求人の主張
これに対して請求人は、「特許第2,527,107号を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めて審判を請求し、次の無効理由を主張している。
『(2-1) 本件の平成9年8月1日付の訂正請求書による訂正は、平成6年法律第116号により改正され平成15年法律第47号で削除された特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項の規定に違反してなされたものであり、平成15年法律第47号附則第2条第11項の規定により、本件は特許法第123条第1項第8号の規定に該当し無効とされるべきものである。
(2-2) 本件発明は、甲第6号証に記載された発明と同一であり特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであるから、本件は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(2-3) 本件発明は、甲第2号証?甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。
(2-4) 本件明細書は特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件は同法第123条第1項第4号の規定に該当し無効とされるべきものである。』
そして、証拠方法として、下記甲第1号証?甲第10号証を提出している。更に、平成20年2月12日付け口頭審理陳述要領書では下記参考資料1、平成20年2月29日付け上申書では下記甲第11号証?甲第13号証を追加提出している。


甲第1号証: 粟津荘司ら編、「最新薬剤学」、第5改稿版、昭和62年、株式会社廣川書店発行、第64頁
甲第2号証: James L.White,”Twin Screw Extrusion.Tecnology and Principles” Hanser Publishers.Distributed in the United States of America and in Canada by Oxford University Press,New York,1990。 ISBN 3-446-15691-7 (甲第2号証の訳文の代わりとして、J.L.White著、酒井忠基訳、「二軸スクリュ押出し-その技術と理論-」(平成5年、株式会社シグマ出版発行)の提示がある。)
(なお、添付資料として添付され甲第2号証の押印がある写し(コピー)には、上から2枚目の頁の中程に「1990」と「ISBN 3-446-15691-7」との記載があるものの、その頁の下から2行目には、「Copyright ・・・・、New York、1991」の記載もある。)
甲第3号証: 「KEX 2軸混練押出機」のパンフレット、1989年10月
甲第4号証: 「栗本技報」、No.15、第9章、1986年7月、株式会社栗本鐵工所発行、第1?15頁
甲第5号証: 特開昭62-242630号公報
甲第6号証: 特開平1-305955号公報
甲第7号証: 特開昭61-63614号公報
甲第8号証: 橋本健次著 「混練技術」 昭和53年10月5日初版、産業技術センター発行、第4?5頁の目次、及び第147?155頁の「ロール形混練機」の項
甲第9号証: 栗本鐵工所の「クリモト コンティニュアス・ニーダ『KRC』」のパンフレット、1999年12月
甲第10号証: 中道孝一、安浦浩幸ら、Pharm.Tech.Japan、12巻、5号、715?729頁、1996年
甲第11号証: Amazon.co.jpのホームページ「Twin Screw Extrusion(ハードカバー)」の商品トップ頁(http://www.amazon.co.jp/gp/offer-listing/3446156917/ref=dp_olp_2/249-8288129-1994762)及びその商品の詳細ページ(http:// www.amazon.co.jp/gp/product/3446156917/ref=o1p-product_deta11s?ie=UTF8&me=&se11er=)のプリントアウト
甲第12号証: Kinokuniya BookWebのホームページの「Twin Screw Extrusion:Technology and Princip1es-US-」の商品ページ(http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/booksea.cgi?ISBN=1569901090)のプリントアウト
甲第13号証: AAPS Pharmsci 2000;2(1)artic1e 9(http://www.pharmsci.org/)1?8 頁
参考資料1: 濱田博晟著 「現場で活かす押出機マニュアル」 1993年5月20日初版発行、株式会社工業調査会 9?25頁、106?119頁、149?150頁の写し

審判請求書における無効理由の具体的主張の概略は次のとおりである。

(3-1)無効理由1:訂正不適(特許法第123条第1項第8号)
本件特許発明は、平成9年8月1日付け訂正請求で、(イ)「固体分散体」を「高分子担体中に薬物が溶解又は分散している固体分散体」と訂正され、(ロ)「2軸型エクストルーダー」を「スクリュー軸上にパドルを有する2軸型エクストルーダー」訂正されたものである。
しかし、(イ)の訂正については、溶解状態をも包含するよに拡張されたものであり、当初明細書に記載された事項であるとしても、「固体分散体」の範囲が拡張されたものであり、特許法第134条第5項で準用する同法第126条第2項に規定する拡張に該当し、(ロ)の訂正については、明瞭でない記載の釈明であれば、特許異議申立された引用文献によって新規性がないし、減縮を目的とするものであれば、全く別次元の特別な「スクリュー軸上にパドルを有する2軸型エクストルーダー」に変更されているものであり、平成6年法律第116号により改正された平成15年法律第47号で削除された特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項に規定する変更に該当する。
よって、平成15年法律第47号附則第2条第11項の規定により、特許法第123条第1項の規定により特許法第123条第1項第8号の規定に該当し無効とされるべきものである。

(3-2)無効理由2:特許法第29条第1項第3号(特許法第123条第1項第2号)
甲第6号証には、薬物と高分子担体とをパドルを有することができるモジュール形式のスクリューを有する2軸スクリュー押出機ZSK(甲第2号を参照証)を用いて製造することが記載されている。甲第6号証には、パドルを有することの明記はなされていないが、ZSK30を使用することが記載されており、係る記載は本件特許明細書におけるKEX-30なる記載と本質的に変わるところは無い。
係る方法で製造された製剤が固体分散体であることが甲第6号証に明記されていないけれども、薬物と高分子担体とを原料として使用すること、そしてパドルを有する2軸押出機でそれらを処理するという原料及び処理手段において両者に相違は無いのであるから、自然法則にのっとれば同じ原料で同じ手段で製造されたものは同じ物になるのであるから、甲第6号証に記載の方法で製造された物も、本件発明の方法で製造された物も同じ物になっているはずである。
したがって、本件発明は、甲第6号証に記載された発明と実質的に同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであるから、本件特許は同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とされるべきものである。

(3-3)無効理由3:特許法第29条第2項(特許法第123条第1項第2号)
甲第2号証?甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
甲第6及び甲第5号証に記載された発明に基づいて容易に発明された。
甲第6、5及び7号証に記載された発明に基づいて容易に発明された。
甲第6、2、4及び5号証に記載された発明に基づいて容易に発明された。
甲第7及び4号証に記載された発明に基づいて容易に発明された。
甲第7、8並びに4号証に記載された発明に基づいて容易に発明された。

(3-4)無効理由4:特許法第36条第4項及び第6項第2号(特許法第123条第1項第4号)
甲第2号証に記載されているように、「2軸エクストルーダー」における機能は、装置の問題というよりも、スクリュー軸上で選択されたエレメントの組み合わせによるモジュール構造に大きく依存していることが明らかで、本件発明の作用効果を確認し、またこれを追試しようとした場合には、パドルを有するスクリューエレメントのモジュール構造が明らかにされていなければ、当業者といえども容易に行なうこはできない。
又甲第4号証の記載からみてモジュール構造の組み合わせについては無限に近い組み合わせがある。本件発明者らによる甲第10号証には、固体分散体の調製においてはスクリューエレメントの組み合わせがポイントとなると明言している。
しかし、本件明細書は2軸スクリュー押出機におけるモジュール構造が明らかにされておらず、この点において、本件明細書は特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件は同法第123条第1項第4号の規定に該当し無効とされるべきものである。

(3-5)更に、審尋回答書、陳述要領書、上申書において、補足的に無効審判請求の根拠はいずれも正当なものであることを主張している。

4.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。
そして、審判請求人の無効理由1?4は、いずれも全く根拠のないものである旨を主張し、証拠方法として、下記の乙第1号証?乙第11号証を提出し、そして、審尋回答書、上申書(3)?(6)において、無効理由はいずれも根拠がないことを反論し、追加の証拠方法として、審尋に対する平成19年7月18日付け審尋回答書では下記乙第12号証?乙第14号証を、平成20年2月13日付けの2通の上申書(3)(4)では下記乙第15号証と乙第16号証を、平成20年3月24日付けの上申書(6)では参考資料1,2を提出している。


乙第1号証: 特許異議決定公報(平成9年異議第70779号)
乙第2号証: 本件特許出願公報または本件特許に対応する外国出願公報を引用する文献のリスト
乙第3号証: 日本薬剤学会論文賞の賞状の写し
乙第4号証: 製剤機械技術研究会仲井賞授賞決定の通知の写し
乙第5号証: Water-Insoluble Drug Formation(Rong Liu 編集、Interpharm Press)507?511頁の写し、509頁25?32行の訳文
乙第6号証: 最新薬剤学(第7版、平成13年、廣川書店)71頁の写し
乙第7号証: Journal of pharmaceutica1 Science 1971年、60巻、1281?1302頁の写し、1284頁左欄29?42行の訳文
乙第8号証: Pharm.Acta.Helv.1986年、61巻3号、69?88頁の写し、71頁左欄37?45行の訳文
乙第9号証: 化学工業、1986年4月号53?61頁の写し
乙第10号証: 経口投与製剤の設計と評価(平成7年、株式会社薬事時報社)167?189頁の写し
乙第11号証: 二軸スクリユ押出-その技術と理論-(J.L.White著、酒井忠基訳、平成5年、シグマ出版)273?274頁の写し
乙第12号証: クリモト技報(1996年9月、No.35、株式会社クリモト鐵工所発行)第2頁?6頁の写し
乙第13号証: 「ノンソルベント ハイソリッド デスパージョン システム」のカタログ(株式会社クリモト鐵工所発行)の写し
乙第14号証: 粉体工学用語辞典(第2版、2000年、日刊工業新聞社発行)第311頁の写し
乙第15号証: 塩ビとポリマー(1990年5月、第30巻、第5号、株式会社ポリマー工業研究所発行)第33頁?37頁の写し
乙第16号証: 実験報告書1(2008年2月13日,日本新薬株式会社 薬剤研究部製剤課課長 福井博 作成)
参考資料1:粉末X線回折結果の図1及び図2(乙第16号証の実験例1及び実験例2で得られた成形体固形物の粉末X線の結果を、本件明細書に添付の第4図及び第7図と同等な尺度で表示した図)
参考資料2:粉末X線回折結果の図(乙第16号証の実験に使用したロットのHPMCASのみの固形物と乙第16号証の実験例2に係るパドルありの成形体固形物)

答弁書、審尋回答書、各上申書における無効理由がないとの被請求人の具体的主張の概略は次のとおりである。

(4-1)答弁書における被請求人の答弁の概略は次のとおりである。
本件特許発明の目的は、熔融法、溶媒法が本質的に有する欠点を克服し、医薬上有用な固体分散体、特に、X線回折を測定した際に薬物のピークの消失が確認されるような製造方法を提供するこであり、本件特許出願公報並びに対応する外国出願公報が数多くの文献に引用され(乙第2号証)、本件特許発明の固体分散体の製造方法の医薬製剤技術の発展への貢献に対し賞が授与され(乙第3号証,乙第4号証)、熔融法でも溶媒法でもなくこれらと異なるサーモメカニカル法として分類されうるものである(乙第5号証)。諸外国に出願した全ての出願国で特許を受け、全て有効に存続している。
そして、請求人が挙げる本件特許の優先権主張日以前の主な先行技術文献として甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証があるところ、それぞれに対し概略次のような見解がある。
甲第5号証について、先の特許異議申立てにおける引用文献と同一であり、射出成形機、二軸スクリュー押出機、一軸スクリュー押出機などを区別なく使用して目的の固形薬剤を得ていて、スクリュー軸上にパドルを有する2軸型エクストルーダーを用いて目的の固形薬剤を得ることができたか否かについては何ら記載がない。甲第5号証に開示されている固形溶液の製造方法は、NVP重合体を使用した場合にのみ適用可能であり、NVPを含まない重合体に適用できないことが明示されている。また、甲第5号証に開示されている発明は、「混合物が胃液に難溶な熱可塑性物質を含有しないことを特徴とする」や「NVP重合体の水含有量が3.5重量%以下である」との限定が加えられている。
甲第6号証について、医薬製造に適用可能な連続計量方法を提供するものであり、押出機の一例として、Werner&Pfleidere製のZSK30型が記載されているが、この押出機の具体的な構成については甲第2号証を参照しても明らかではなく、スクリュー軸上にパドルを有する2軸型エクストルーダーについては何ら記載が無く、固体分散体ないしは固溶体などに関する何らの記載も示唆もない。
甲第7号証について、捏和混練を目的とするロール混合機のみで、押出成形機能のあるエクストルーダーについての記載はなく、ましてやスクリュー軸上にパドルを有する2軸型エクストルーダーについては何ら記載されていない。また、ポリビニルピロリドンを担体とする試料においてのみ、ロール混合機での捏和混練により薬物が非晶質化したものが得られたことを示している。

(4-1-1)無効理由1についての反論
(イ)「溶解又は分散している」との訂正については、乙第6号証?乙第10号証の記載から、固溶体が固体分散体に包含されることは明らかである。
(ロ)「パドルを有する」との訂正については、特許請求の範囲の減縮を目的にするものであり、拡張または変更するものではない。目的に応じてパドルなどのスクリューエレメントは取り外して使用が可能である。
なお、特許公報に、発行時の転記ミスがある(13箇所摘示)ことを指摘する。

(4-1-2)無効理由2についての反論
甲第6号証には、使用される二軸スクリュー押出機がパドルを備えていたとの記載はなく、例示された押出機ZSK30の構成は、甲第2号証に記載されたZSK83/700とZSKが共通するとしてもそれだけではパドルを有するか不明であり、また、固体分散体についての記載もないから、本件特許発明は甲第6号証に記載された発明と同一ではない。

(4-1-3)無効理由3についての反論
(i)甲第5号証には、微結晶の含有が認められない固形溶液からなる押出物を得たことが開示されている一方で、NVPを含まない重合体と水に難溶な有効物質とから得た押出物を既に製造した結果当該押出物は固形溶液、即ち固体分散体にならなかったとを明言している。パドルを有する記載もない。
甲第6号証と甲第5号証の解決すべき課題が異なっているから、組み合わせる動機付けがないし、いずれの文献にも「スクリュー軸上にパドルを有する2軸型エクストルーダー」が開示されていないから、それらを組み合わせたとしても本件特許発明に到達し得ない。
本件発明は、スクリュー軸上にパドルを有する2軸型エクストルーダを用いることで、従来製造できないと思われていた広範囲な高分子担体についても固体分散体を製造することができるという顕著な効果を奏するものである。
よって、甲第6号証と甲第5号証に記載された発明を考慮しても、本件発明が進歩性有することは明らかである。
(ii)甲第7号証では、ポリビニルピドリドン以外の高分子基剤を用いて調製された混練物は、ある程度溶解速度が向上しているものの、NVP混練物ほどの溶解速度向上の増加は認められていない。乳鉢の場合よりより細かく粉砕されたにすぎず、薬物が一部非晶化したことを示す証拠もない。そして、パドルについて言及していないし、固体分散体は、NVP以外については得ていない。
よって、甲第6号証と甲第5号証と甲第7号証に記載された発明を考慮しても、本件発明が進歩性有することは明らかである。
(iii)甲第4号証は、連続混練機であって、先端出口部にダイ(金型)を有さず、押出成形機能を有さない。
甲第2号証は、1991年発行であって優先日前に頒布された先行技術文献とは認められないが、念のため検討すると、本件発明の固体分散体においては薬物こそが活性成分であり、高分子担体が添加剤であるのに対し、甲第2号証ではプラスチック工業以外(医薬製剤分野)における2軸押出機の使用について言及がなく、不均一な溶融状態の示唆があり、固体分散体を調製するための溶融法と同視できないものである。甲第2号証を勘案しても甲第6号証に記載ののZSK30の構成が明らかでないし、また、甲第2号証の添加剤はせいぜい数%にすぎず、本件発明の20?43重量%の量の薬物が含まれている場合と同列に見ることができない。
甲第5号証は、特定の重合体が必須であることを示すのみで、混練の促進が固体分散体の製造を促進するとの常識はない。
よって、本件発明は、本件出願時の技術水準における当業者の予測を超える優れた効果を有するのであるから、甲第6号、甲第2号証、甲第4号証および甲第5号証に記載された発明を考慮しても、本件発明が進歩性を有することは明らかである。
(iv)甲第4号証甲の単なる連続混練機を甲第7号証の発明に組合せても、本件発明に到達しない。甲第7号証で薬物が十分に非晶質の固体分散体が得られているいるのはNVPのみであって、甲第5号証の記載と整合している。
よって、甲第7号および甲第4号証の開示に基づいても本件発明を容易に想到できたことの論理付けをすることは不可能である。
(v)甲第8号証のコンティニュアスニーダが甲第9号証の構造とはならないし、甲第4号証、甲第7号証、甲第8号証のいずれにも2軸型エクストルーダーの記載はないから、それらの甲号証の開示に基づいても、本件発明を容易に想到できたことの論理付けをすることは不可能である。

(4-1-4)無効理由4についての反論
本件明細書には、本件発明の実施を不可能にするほどの不備があるとはいえず、本件明細書の記載に基づけば当業者であれば充分に実施可能であり、また、特許請求の範囲の記載も充分に明確である。
例えば、「実施例には、スクリューエレメントとしてパドルを含むKEX-30を用いたことが記載されており(訂正明細書18頁17行)、・・・パドルを含むモジュール形式の示す性能が本件発明の優れた効果をもたらすことは、本件明細書の記載から明らかである。」また、スクリューエレメントの配置は、容易に理解でき、特段困難ではない。甲4の連続混練機は、2軸型エクストルーダーとは異質なものであり、組合せの数を算出するには、前提において誤っている。 また、単なる理論上の組合せを誇大に述べている。現実に使用し得る組合せはごく限られたものである。

(4-2)審尋回答書、各上申書における無効理由3に対する被請求人の主張の概略は、次のとおりである。
甲第5号証を主引用例として、甲第2号証?甲第4号証を考慮したとしても、甲第2号証と甲第3号は本件優先日前に頒布されたものか明らかではなく、また、甲第4号証には、2軸型エクストルーダーとは異なる連続混練機がパドルを有するものが記載されているだけで、医薬製剤分野に関する記載も、固体分散体を製造しうるという証拠もないから、本件優先日当時において医薬製剤分野の当業者が本件特許発明を容易に想到することは困難であった。
更に、
(1)パドルを有する2軸エクストルーダーは、プラスチック工業の分野でもっぱら使用され(乙第11号証273頁、21?24行参照)、医薬製剤分野の当業者間では有用とされておらず、医薬製剤分野とは異質な技術分野で専ら知られ用いられていた。従いまして、本件特許発明に係る2軸型エクストルーダーを用いてNVP重合体を担体とする固体分散体を製造しようという動機付けを当業者が持つこと自体、本件特許を知らなければ容易なことではない。
(2)本件特許発明に係る2軸型エクストルーダーは、甲第5号証に記載の二軸スクリュー押出機とは、機能ないし効果等が明らかに異なる装置であり、かかる2軸型エクストルーダーを用いた本件特許発明は、甲第5号証に記載の発明の限界を超え、また甲第5号証等の記載からは合理的に予測することができない有利な効果を奏する。即ち、パドルの有無によって、固体分散体の製造に用い得る高分子担体の種類又は範囲に本質的な差が存在し、甲第5号証の発明ではNVP重合体のみ固体分散体の形成が可能であるのに対し、本件特許発明ではNVP以外の高分子でも広範囲に固体分散体の形成が可能である。
なお、パドルの有無によるデータ(担体として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを用いたもの)を乙第16号証で提出する。

5.当審の判断
先ず、無効理由3(特許法第29条第2項違反;発明の容易性)について検討する。

(5-1)甲各号証の公知性について
本件特許は、平成3年4月16日(1991年4月16日;特願平3-112554号)の優先権主張を伴うものであるところ、優先権出願の明細書の記載を検討すると、その主張は適法であるものと認められる。なお、請求人は、格別この点について争点としていない。
よって、各甲号証の公知性の判断基準日は、前記優先権主張日となる。

(a)甲第1号証,甲第5?8号証
これらは、公報または図書であって、本件優先権主張日前に頒布された刊行物と認められる。

(b)甲第4号証
甲第4号証は、株式会社栗本鐵工所の技報であるが、奇数頁の欄外上に「July 1986」の記載があり、本件優先権主張日前に頒布された刊行物と認められる。そして、この点について、被請求人から格別争うとの主張はなされていない。

(c)甲第9?13号証、請求人の提示した参考資料1
これらは、本件優先権主張日後の刊行物であり、参考資料として提示されている。

(d)甲第3号証
甲第3号証は、本件特許明細書の実施例で使用されたKEX-30のパンフレットの可能性があるが、全頁に共通して「M 20・02・99」と判読できるパンチ孔が認められるものの刊行物としての一体性に疑義があり、またその公知性に疑義があるところ、(i)口頭審理において原本の持参提出を求めたが提出されず原本の確認ができないものであり、提出できない理由も「部数約2000部程度と少ない」とのことで納得し得るものでないこと、(ii)上から9,10,12枚目の右肩に記載された「CORD DATE」欄の「91-7-10」は、その文書の作成日(1991年7月10日)と推認されること、(iii)請求人が主張する頒布日が書類の途中(全12枚中の上から4枚目)にあって不自然であること、(iv)上から6枚目までと上から7枚目以降とでは文体等が異質なように見受けられること、(v)口頭審理において、甲第3号証の頒布日について明らかにする追加の証拠の提出を求めたが、「甲第3号証については、頒布日を明らかにする追加の資料は無い。」(第1回口頭審理調書参照)と請求人は陳述していることを総合的に勘案し、本件優先権主張日前に頒布されたものとは認められない。

(e)甲第2号証
ここで、甲第2号証とは、審判請求書に添付され甲第2号証の押印がある写し(コピー)の元の図書を指すものと解して、以下検討する。
甲第2号証は優先権主張日前に頒布された刊行物であると、請求人は主張する。
しかし、2枚目下から2行目に「Copyright ・・Carl Hanser Verlag,・・・・1991」の記載があって、1991年に発行されたものと認められるが、その発行月日が不明であり、以下(イ)?(ニ)で検討するように、請求人から提出された参考資料(甲第11,12号証)並びに、請求人の主張を検討しても、それだけでは本件優先権主張日(1991年4月16日)前に頒布された刊行物であるとすることができない。
(イ)2枚目中央部分に「New York:Oxford Univ. Press. 1990」の記載があるが、1990年に発行されて、それより後の1991年のCopyrightが付されるのは不自然である。
(ロ)審尋に対する請求人の平成19年7月18日付けの回答書((2)を参照)では、本件コピーは1991年のカールハンザー出版によるものであるが、1990年にオックスフォード大学出版により出版されているから、本件特許出願前(優先権主張日前の誤記と認める)に頒布されたことが明らかである旨主張している。しかし、1990年出版物の記載内容と甲第2号証の記載内容が同一であるとの証拠は提示されていない。
(ハ)請求人の平成20年2月12日付けの口頭審理陳述要領書では、丸善の洋書担当に問い合わせたところ、1990年にカールハンザー社とオックスフォード大学出版により初版が発行され、それぞれのISBN番号がそこに記載(当審注:甲第2号証には、前記(イ)で摘示した記載の次の行に「ISBN3-446-15691-7」の記載があり、そして、空白部の後1行飛んで「ISBN3-446-15691-7 Carl Hanser Verlag,・・・」、更に次行に「ISBN0-19-520798-X Oxford University Press.・・・」の記載がある。)されていて、下段に記載の1991年は、「再版」(第2刷)された年を意味しているということであって、甲第2号証の書籍が1990年に初版として頒布されたということである旨主張している。しかし、この主張は、伝聞によるものにすぎずその主張を裏付ける証拠の提示は無いから、1990年出版物の記載内容と甲第2号証の記載内容が同一であることを明らかにするものではない。
(ニ)口頭審理後の平成20年2月29日付け上申書において、インターネットで検索した頁のコピーが甲第11,12号証として提出されているところ、甲第11号証(amazon社のホームページ)には、「Twin Screw Extrusion(ハードカバー) J.L.White(著)」と「Hanser Publishers(1990/06)」,「ISBN-10:3446156917」,「ISBN-13:978-3446156913」,「発売日:1990/06」との記載があり、甲第12号証(Kinokuniyaのホームページ)には、「Twin Screw Extrusion:Technology and Principles-US-」,「ISBN:9781569901090(Hardcover:ハードカバー版)」,「Reprint Edition」,「White,James Lindsay/Publisher:Hanser Gardener Pubns Published 1991/03 入手不能・・」との記載がある。
そして、請求人は、「甲2第号証の書籍は、アマゼンで中古書籍の販売として取り扱われており、ISBN-10が3446156917(甲第2号証の書籍のISBNで、10桁表示のISBNである。現在は13桁のISBN(ISBN-13)も使用されているが、甲第2号証には13桁のISBNは標記されていない。甲第2号証の2枚目参照)の書籍は1990年6月に出版されたものであることが明らかにされており(甲第11号証)、甲第2号証の書籍は本件の優先日前に頒布されたものであるということになる。
また、紀伊国屋ブックウェッブサイトには、甲第2号証の書籍について、「リプリント版 出版1991/03」と記載されており、1991年3月にリプリント版が出版されたことが明らかにされている(甲第12号証参照)。 さらに、アマゾンの英文のウェッブサイトにおいても、ハンザー社から1991年3月にリプリント版として出版されていることが記載されている。
したがって、甲第2号証の書籍は、1990年6月に初版が発行され、1991年3月に再版(リプリント版(第2刷))されたものである。そして、再版はリプリントであり初版のものと内容が同じであることは当然である。また、仮に再版であったとしても、その発行日は、本件の優先日である1991年4月16日よりも前の1991年3月であることが甲第12号証により明らかにされている。」
と主張している。なお、「アマゾンの英文のウェッブサイトにおいても、ハンザー社から1991年3月にリプリント版として出版されていることが記載されている。」と主張するが、その記載を示す証拠は提示されていない。
しかし、甲第11,12号証の記載内容が妥当であるか論ずるまでもなく、甲第12号証に記載されたISBN:9781569901090の番号は、甲第2号証に記載された「ISBN3-446-15691-7」と「ISBN0-19-520798-X」と一致しないし、甲第11号証に記載された「ISBN-10:3446156917」と「ISBN-13:978-3446156913」のいずれにも一致しないものであることを勘案すると、請求人の前記主張を受けいれることはできず、甲第2号証が1991年3月に再版されたものであると認定することはできない
また、甲第11号証の記載からみて初版が仮に1990年6月の発行であったとしても、その初版の記載内容が甲第2号証に記載された内容と同一であると認定することはできない(前記(ロ),(ハ)と同様)。
以上のとおり、甲第2号証は、請求人から提示された証拠からは、本件優先権主張日より前に頒布されたと認定できない。
一方、少なくとも、甲第2号証は本件優先権主張日と同年(1991年)に発行されたものと認めるのが相当であり、甲第2号証の記載は従来技術を取りまとめたものであり、図書の発行準備等を勘案すると、本件優先権主張日当時の技術水準を判断する資料として採用することに支障はないものというべきである。

(5-2)甲各号証の記載事項
甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証には、それぞれ次のような技術事項の記載がある。なお、下線については、原文にあるものの他は当審で付与したものである。

甲第2号証
英文であるので、訳文を示す。(なお、該当頁と共に訳本の対応する頁を示す。)
(2-i)「4.12 ニーディングディスクを組み合わせた機械
ニーディングディスは、本来、かみ合い型同方向回転二軸スクリュ押出機において、混練効果を促進する目的で開発されたものである(第10.2,10.6,10.7章参照)。このエレメントを非かみ合い型二軸スクリュ押出機に利用すると、他のスクリュエレメントよりもさらに大きな逆流促進効果と輸送能力の調節とが可能となることをKim,Min,White らが報告している。・・・」(第104頁下から7行?末行;訳本第99頁参照)
(2-ii)「Werner and Pfleiderer社の開発チームはG.FahrやH.Ockerによって率いられ、その中にはR.FritschやH.Herrmannらも含まれていた。最初の装置が試作されたのは1955年であるが、その後こうした共同開発の過程で一連の装置が次々と生み出されていった。1958?59年にErdmengerはニーディングディスクを備えたモジュール形式の二軸スクリュ押出機に関する特許を出願している。この特許は1964年になって米国で権利化されたが、モジュール形式に加えて、スクリュエレメントとニーディングディスクとの組み合わせを採用したことは、その後もこの同方向回転二軸スクリュ押出機を支えるキーとなったのである。すなわち、順送りスクリュエレメントは原料の輸送に、逆送りスクリュエレメントは圧力の制御に、また、ニーディングディスクは溶融や混練の制御にそれぞれ重要な役割を果たすようになったのである。
ところで、Werner and Pfleiderer社は1957年にはすでにモジュール形式のかみ合い型同方向回転二軸スクリュ押出機の製造を始めていた。図10.7-1はErdmengerの開発した当時の二軸スクリュー押出機ZSK83/700型(ZSKとはZwei Schnecken Kneterの略)の写真である。1959年にFritschとFahrとが発表した報文にはZSK83/700型二軸スクリュ押出機の最新型が載っている。この装置は順送りと逆送りのスクリュエレメントと3条ネジのニーディングディスクを備え、また、適宜異なった位置にベントロを設けて、途中からコンパウンディング用原料を加えることを可能とした構造となっている(図10.7-2)。このときのスクリュの口径は83mmで、長さは700mm、L/D は8.4であった。
Werner and Pfleiderer社がモジュール形式のかみ合い型同方向回転二軸スクリュ押出機を商業ベースで生産し始めたのは1950年代の終わりからである。1964年の Herrmannの報文にはZSK160型(スクリュ径160mm)に至る各種スケールの二軸スクリュ押出機が詳細に記述されている。この中で、Herrmannはポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、合成ゴム等の熱可塑性樹脂の混練、脱揮、均質化および可塑化への適用例を紹介している。また、1966年には彼はZSK型押出機を用いた混練操作に関す基礎研究成果を発表している。
1963年になると、Werner and Pfleiderer社はプロセスエンジニアリングに関する特許や、スクリュエレメントの製造法、およびこれらの装置(図10.7-2参照)の応用に関する特許を次々と出願している。これらの特許には、例えば、熱可塑性樹脂のブレンドや脱揮といった一般的なプロセスも含まれている。さらに、Werner and Pfleiderer社のOckerが1968年に揮発分の除去(脱揮)技術について出願した特許には、逆送りスクリュエレメントや減圧部を含めたスクリュ形状について次の記述がみられる。すなわち、「二軸スクリュ押出機内を流れる原料の中の揮発分は減圧状態にしたベント口で気化させて装置外へ排出させる。そして、このベント口を出た後には軸封止効果を発揮させるために第2の絞り部を設ける」というものである。これらの技術は、例えばチョコレートの製造、熱硬化性樹脂の混練、さらに石鹸の連続押出しなどの特殊な製造プロセスにも適用されていった。」(第209頁下から22行?第210頁下から5行;訳本第204?206頁参照)
(2-iii)「12.5 混 練 特 性
BigioとErwinは図12.5-1に示す構造の装置を利用して、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機における混練特性に関する基礎研究を行っている。この研究では二軸スクリューの長さ方向における縞の厚みの減少過程を検討している。そして、縞の数や界面の面積の増加はスクリューの長さ方向に沿って直線的に比例して増加することが見出され、特に、ニーディングディスク部では図12.5-2と図12.5-3に示すように、縞の数の増加と混合度合の進行とが急速に行われることが確認された。」(第260頁下から17行?下から10行;訳本第255頁参照)

甲第4号証
(4-i)「KRCニーダーとは、Kurimoto Readco Continuous Kneader の略称であり、1971年にTELEDYNE-READCO社(米国)より技術導入を実施して以来、日本のニーズに適応した国産化を行い、・・・・」(第1頁左欄下から11?5行参照)
(4-ii)「(1)抜群の連続混練性能
密閉バレル、小さいクリアランス、パドル相互のセルフクリーニグ作用、同方向回転、材料に最適なパドルの組合せ等により、非常に短時間で処理物に均一分散、圧縮、引延し、せん断、粉砕作用を万遍なく与える。したがってバッチニーダの30分?60分に相当する混練を、投入から排出迄短時間(15秒?10分)にワンパスで処理できる能力を持つ。」(第1頁右下欄下から14行?下から6行参照)
(4-iii)「2.2 KRCニーダの構造と性能
クリモトKRCニーダは、横型密閉式を標準とする連続混練機である。まゆ型のバレルの内に、2本の攪拌軸を横一列に並べ、それぞれの軸に、スクリューとパドルを組込み、同一方向に等速で回転させる。バレルの一端上部から供給された原料は、スクリューで混練ゾーンに送り込まれ、ここでパドルに依り混練されて、バレルの他端下部、側面または前方より連続的に排出される。」(第2頁左欄22?30行参照)
(4-iv)「(3)パドルの組合せ
図4のように2本のシャフトには、スクリューと20?40個のパドルが組込まれており、これらは1枚ずつ自由に組替えができる。例えばパドルの第1番目には、5×4=20(パドルおよびスクリューの種類×角度)とおりのものが使用可能である。
したがって機械全体では、20^(20?40)≒∞ 無限に近い組合せがある。しかし原料の種類、目的などに応じた基本的なパドルパターンがあり、適宜使いわけしている。
上記の“パドルの自由な組合せ”により、このニーダの適応粘度は、液状から数10万ポイズの高粘度物質まで広がり、そのための用途も、プラスチック、食品、化学反応、薬品、窯業、汚泥のセメント固化と多岐にわたっている。また滞留時間も大きな幅で調整可能である。
・・・図 略・・・
(4)セルフクリーニング機能
図5のように、2本のシャフトに組込まれた左右一対のパドルは、90度位相がずれており(擬三角形は同位相)これらは、一方のパドルの先端が、他方のパドルの側面をクリーニングするように、一定の微少の間隙を保ちながら、同一方向に回転する。
したがって、投入された原料は、パドルとバレル間パドルやスクリュー相互間の、非常にシビヤなセルフクリーニング作用により、遅滞することなく、ピストンフローで排出されていく。
(5)混練機構
このニーダの主要な混練機構は、下記のとおりである。
パドルの組合せにより生じる、軸方向の材料への圧縮および引延し。
パドルの回転によって生じる、軸と垂直方向の材料への圧縮および引延し。
パドルとバレル間、パドル相互間での材料への剪断、材料の性状に適応したパドルパターンで混練を行うと、上記混練機構が有効に働き、材料に不連続な体積変化をつぎつぎ与え、短時間で有効な混練をおこなうことができる。」(第3頁左欄4行?同頁右欄12行参照)

甲第5号証
(5-i)「1.少なくとも1種の医薬物質と少なくとも1種の溶融可能な薬理学的に容認される製剤用結合剤との混合物から固形薬剤を製造する際に、溶融可能な結合剤として水含量が3.5重量%以下で、少なくとも20重量%のN-ビニルピロリドン-2を重合含有する溶剤不含のN-ビニルピロリドン重合体を使用し、その際重合含有されることのあるコモノマーのすべてが窒素及び/又は酸素を含有するものとし、そして混合物のガラス転移温度が130℃以上であるときは、有機溶剤中で又は開始剤として有機過酸化物を使用して水溶液中で重合を行うことにより得られたN-ビニルピロリドン重合体を使用し、そして混合物が胃液に難溶な熱可塑性物質を混合含有しないことを特徴とする、前記の医薬物質及び製剤用結合剤からの混合物を、射出又は押出しにより成形することによる固形薬剤の製法。
2.?5. ・・・(略)・・・
6.重合体溶融物に溶剤又は水を添加しないで分子分散状に溶解し、そして溶融物の凝固後に固体溶液を形成する水に難溶な有効物質を使用することを特徴とする、特許請求の範囲第1項ないし第5項のいずれかに記載の方法。」(特許請求の範囲の請求項1,6参照)
(5-ii)「本発明は、結合剤としてN-ビニルピロリドン-2(NVP)の重合体を含有する固形薬剤を射出し又は押出して成形することにより製造する方法に関する。
普通の錠剤機はピストンと型を用いて打錠することにより操作される。この方法は強力に予備混合された特別に調製された製錠用材料を必要とするので、工程が多く費用も多くかかる。希望する時間後に含有する有効物質を放出する固形製剤を製造する場合は特に高価となる。この製剤は一方では遅効性にするために必要であり、他方では有効物質の吸収を改善するために必要である。
難溶性有効物質の吸収の改善は、水溶性重合体中の有効物質の固形溶液を使用することによつて可能である。従来知られているNVP重合体中のこの種の固形溶液は、有機溶剤中の有効物質及び重合体の一緒の溶液から、溶剤を除去することによつて製造された。疎水性有効物質を親水性重合体に溶解することもできるが、普通は塩素化炭化水素を必要とした。しかしそれを完全に除去するには多額の費用を要する。環境への悪影響を避けるためには、溶剤を廃ガスからも完全に除去せねばならず、これにも費用を要する。この方法は多数の文献に記載されている(・・・・中略・・・参照)。
有効物質/重合体の混合物を押出し成形することは既に報告されている(例えば西独特許1229248号明細書、フアルマンイテイカ・アクタ・ヘルベチカ41巻1966年340頁及び46巻1971年31頁参照)。しかしいずれの場合にも、溶剤不含のNVP重合体を他の重合体又は水と混合しないで単独で押出したことも、水に難溶な有効物質の水溶性重合体中の固形溶液が生成したことも報告されていない。
フオイクト著レールブツフ・デル・フアルマツオイテイツシエン・テヒノロギー5版1984年221?222頁には、有効物質/熱可塑性樹脂混合物を、射出し又は押出して普通の形に成形することが記載されているが、詳しい説明がなく、特にこれに適する重合体の種類に関しては何も説明されていない。この場合は明らかに強親水性の重合体については考慮されていない。なぜならばこのものは、これまで製薬の分野では乾燥溶融物としては使用されず、常に溶剤(普通は水)と共に混練して加工されていたからである(例えば英国特許1388786号参照)。」(第2頁左下欄13行?第3頁右上欄6行参照)
(5-iii)「重合体結合剤は、全成分の混合物中で50?180℃好ましくは60?130℃において軟化し又は溶融するので、この物質は押出し可能である。したがつて混合物のガラス転移温度は、いずれの場合も180℃以下好ましくは130℃以下であるべきである。必要ならば、普通の薬理学的に容認される軟化用補助物質、例えば長鎖アルコール、・・・(中略)・・・により、これを低下させることができる。軟化剤は好ましくは重合体の20重量%以下で足りる。
NVP重合体はこのような添加物を必要としないで、すなわち有効物質及び場合により普通の製剤助剤との混合物として、特別の軟化用添加物なしで、希望の温度範囲で溶融し又は軟化することが特に好ましい。・・・」(第3頁左下欄19行?第4頁左上欄1行参照)
(5-iv)「固形溶液という概念は専門家に公知であつて、例えば前記の文献にも記載されている。重合体中の医薬有効物質の固形溶液においては、有効物質は重合体中に分子分散状で存在する。
前記のような有効物質がNVP重合体中で固形溶液を生成することは予想外であつた。なぜならば水に難溶な有効物質が他の重合体中では固形溶液(分子分散状に分布したもの)を形成しないで、各重合体中に固体粒子の形で存在することが電子顕微鏡により認められているからでである。結晶状有効物質の場合は、これは固形溶液でなく、デバイーシヤーラー図を示す。」(第5頁右下欄11行?第6頁左上欄2行参照)
(5-v)「有効物質を結合剤及び場合により他の普通の製剤用添加物と混合することは、重合体結合剤の溶融の前又は後に、常法により行われる。混合を、混合部を有する押出機特に二軸スクリュー押出機により、又は射出成形機のスクリュ一部で行うことが好ましい。
成形は射出成形により、あるいは押出したのちまだ可塑性の棒状物を成形することにより行われ、例えば熱時破断により顆粒となし、あるいは例えば棒状物を、2個の反対方向に走行しかつロール面上で対向する抑圧面(この面の形が錠剤の形を定める)を有する2個のロールの間を圧搾通過させることにより、錠剤にする。冷時破断も行われ、場合により得られた顆粒を圧搾して錠剤にする。本発明において押出しとは射出成形をも意味する。」(第6頁右上欄3?18行参照)
(5-vi)「実施例3
N-ビニルピロリドン60重量%及び酢酸ビニル40重量%から成るK値30の共重合体47.5部、錠剤崩壊剤としての架橋ポリビニルピロリドン2.5部及びテオフイリン50部を、二軸スクリュー押出機により混合して押し出す。5回の射出の温度はいずれも120℃である。ノズル温度は130℃とする。まだ可塑性の棒状体を、西独特許出願公開3612211号明細書に記載の装置により、だ円形錠剤に圧搾する。この錠剤は機械的影響に対し安定である。有効物質の放出時間は30?45分である。」(第7頁左下欄1?12行参照)
(5-vii)「実施例12ないし14
N-ビニルピロリドン60重量%及び酢酸ビニル40重量%から成るK値30の共重合体36部、ステアリルアルコール4部、テオフイリン40部及び下記のもの
実施例12:殿粉
実施例13:乳糖
実施例14:しよ糖
各20部を、6回射出の二軸スクリュー押出機により混合し、実施例1と同様にして錠剤成形する。射出温度は90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、130℃で、ノズル温度は135℃である。この錠剤は有効物質を6時間で完全に放出する。
実施例15 ・・・(中略)・・・
実施例16
下記の共重合体50部及びベラパミル50部を、実施例12ないし14と同様にして成形する。この場合の有効物質の放出時間は約3時間である。固形溶液を製造するために用いられた共重合体は下記のものである。
A)60重量%NVP及び40重量%酢酸、K値約33
B)100重量%NVP、K値30
C)100重量%MVP、K値12
D)100重量%NVP、K値17
重合体B、C及びDは、西独特許出願公開3642633号の方法により、水中で開始剤として有機過酸化物を使用して製造された。
実施例17
共重合体A3部及びベンゾカイン1.5部を、すきの刃混合器中で予備混合し、簡単な6回射出押出機により、ノズル方向への下記温度において押し出す。30℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃。ノズル温度はいずれも70℃である。押出物は固形溶液から成り、デバイーシヤーラー写真によれば、これは微結晶を含有することが全く認められない。同様にしてほぼ同じ結果において、下記表に示すものが得られた。」(第8頁左上欄下から3行?同頁左下欄末行参照)

甲第6号証
(6-i)「1.成分を連続的に計量して成形することを特徴とする、製剤用混合物の製法。
2.成分を押出機内に連続的に計量供給し、そして押出された可塑性の棒状物を成形することを特徴とする、第1請求項に記載の方法。
3.成分を二軸スクリュー押出機内に連続的に計量供給し、そして押出された可塑性の棒状物を成形することを特徴とする、第1請求項に記載の方法。」(特許請求の範囲の請求項1?3参照)
(6-ii)「押出機において又は射出成形機のスクリュ一部においても、混合がさらに改善されているので、混合物の組成の場合により生じうる短期間の変動は補償される。」(第2頁右上欄13?16行参照)
(6-iii)「例えば1種の成分につき1個の差動計量秤(K-TRON Soder AG製のCH-5702)が用いられた。個々の成分はこの秤により、押出機(多くの場合Werner & Pfleidere製のZSK30型)又は射出成形機のホツパー中に直接に計量供給された。」(第2頁左下欄17行?同頁右下欄2行参照)
(6-iv)「下記実施例中の部及び%は重量に関する。
実施例1
N-ビニルピロリドン-2(MVP)60%及びビニルアセテート(Vac)40%からの、K値(フイケンチヤー著Cellulose-Chemie 13巻1932年58?64及び71?74頁による)が30の共重合体45部、ステアリルアルコール5部及びテオフイリン50部を、3個の前記の計量秤により計量して前記の型の押出機のホツパー中に供給し、そして押出した。6回の通過からなる押出機シリンダーの温度は、30、60、60、60、60及び60℃であり、押出ダイを100℃に加熱した。この得られた棒状物を、EP-A240906のクレーム5及び6、添付の図面に記載された装置を用いて直接に長円形の錠剤に圧縮した。これらの錠剤の分析は下記の結果を有する。
活性物質: 49.9 50.2 49.7%
ステアリルアルコール:5.10 4.92 5.03%
実施例2
実施例1の共重合体50部及びテオフイリン50部を二軸スクリュー押出機中で、実施例1と同様に混合して押出し、次いで同様に長円形の錠剤に圧縮した。押出機の通過の温度は、30、60、60、60、90及び120℃であった。押出ダイは同様に120℃であった。
活性物質含量の分析:49.3、50.1 及び50.5%」(第2頁右下欄8行?第3頁左上欄14行参照)
(6-v)「実施例11
K値30を有するポリヒドロキシエチルメタクリレート50部及びテオフイリン50部を、実施例1と同様に加工した。通過の温度は、・・・(後略)。」(第3頁右下欄4?10行参照)

(5-3)甲第5号証に記載の発明
甲第5号証には、「前記5.(5-2)」の甲第5号証の摘示記載からみて、特に、実施例で「2軸スクリュー押出機により混合して押出し」ていること(摘示(5-vi),(5-vii)参照)、また、固形薬剤が「固形溶液(分子分散状に分布したもの)」を意味するとの説示(摘示(5-i)の請求項6、(5-iv)参照)があることを勘案し、
「少なくとも1種の医薬物質と少なくとも1種の溶融可能な薬理学的に容認される製剤用結合剤との混合物から固形薬剤(固形溶液(分子分散状に分布したもの))を製造する際に、溶融可能な結合剤として水含量が3.5重量%以下で、少なくとも20重量%のN-ビニルピロリドン-2を重合含有する溶剤不含のN-ビニルピロリドン重合体を使用し、その際重合含有されることのあるコモノマーのすべてが窒素及び/又は酸素を含有するものとし、そして混合物のガラス転移温度が130℃以上であるときは、有機溶剤中で又は開始剤として有機過酸化物を使用して水溶液中で重合を行うことにより得られたN-ビニルピロリドン重合体を使用し、そして混合物が胃液に難溶な熱可塑性物質を混合含有しないことを特徴とする、前記の医薬物質及び製剤用結合剤からの混合物を、2軸スクリュー押出機により混合して押出しにより成形することによる固形薬剤の製法。」
の発明(以下、「甲第5号証発明」という。)が記載されていると認められる。

(5-4)対比・判断
そこで、本件特許発明(前記「2.」参照)と甲第5号証発明とを対比する。
なお、請求人は、無効理由3の具体的請求理由において、引用例として甲第2号証?甲第8号証を挙げている。甲第5号証を主引用例とする容易性の主張は特に明示的に示されていないが、審尋(B5参照)並びに口頭審理(第1回口頭審理調書参照)において、当審から甲第5号証を主引用例とする容易性について言及し、被請求人に対し見解を求めた。

(a)本件特許発明は「高分子担体」を必須構成要件とするが、ここにいう「高分子担体」に、甲第5号証発明の「溶融可能な結合剤として水含量が3.5重量%以下で、少なくとも20重量%のN-ビニルピロリドン-2を重合含有する溶剤不含のN-ビニルピロリドン重合体を使用し、その際重合含有されることのあるコモノマーのすべてが窒素及び/又は酸素を含有するものとし、そして混合物のガラス転移温度が130℃以上であるときは、有機溶剤中で又は開始剤として有機過酸化物を使用して水溶液中で重合を行うことにより得られたN-ビニルピロリドン重合体」(以下、該重合体を「甲第5号証特定のN-ビニルピロリドン重合体」ともいう。)が包含されることは明らかである。
ところで、甲第5号証には、水に難溶な有効物質が他の重合体中では固形溶液を形成しないことが記載(摘示(5-iv)参照)されているけれども、本件特許発明では単に「高分子担体」と「薬物」と規定しているだけであって、前記特定の「甲第5号証特定のN-ビニルピロリドン重合体」を用いる場合を包含するものであり、また、本件特許発明の高分子担体として、例えば、「ポリビニルピロリドン」なども挙げられていることからみて、前記特定の「甲第5号証特定のN-ビニルピロリドン重合体」を排除するものとする事情はなく、前記記載は何ら一致点の判断を左右するものではない。

(b)甲第5号証発明の「少なくとも1種の医薬物質と少なくとも1種の溶融可能な薬理学的に容認される製剤用結合剤との混合物から固形薬剤(固形溶液(分子分散状に分布したもの))」は、該結合剤が甲第5号証特定のN-ビニルピロリドン重合体とされていること、及び、結晶状有効物質が固形溶液でない場合にデバイーシヤーラー図を示すとされている(摘示(5-iv)参照)ところ、実施例でデバイーシヤーラー写真で美結晶が全く認められなかったとされている(摘示(5-vii)参照)ことから、本件特許発明の「高分子担体中に薬物が溶解又は分散している固体分散体」に相当する。
なお、被請求人は、甲第5号証発明では、甲第5号証特定のN-ビニルピロリドン重合体を用いる場合に、「高分子担体中に薬物が溶解又は分散している固体分散体」が得れることを是認している(第1回口頭審理調書やその後の平成20年2月29日付け上申書(5)参照)。

(c)甲第5号証発明の「2軸スクリュー押出機により混合して押出しにより成形する」は、ノズルを用いていることも明らか((5-vi),(5-vii)参照)であり、且つ成形するものであることから、本件特許発明の「2軸型エクストルーダーを用いる」に相当する。

してみると、両発明は、
「溶融可能な結合剤として水含量が3.5重量%以下で、少なくとも20重量%のN-ビニルピロリドン-2を重合含有する溶剤不含のN-ビニルピロリドン重合体を使用し、その際重合含有されることのあるコモノマーのすべてが窒素及び/又は酸素を含有するものとし、そして混合物のガラス転移温度が130℃以上であるときは、有機溶剤中で又は開始剤として有機過酸化物を使用して水溶液中で重合を行うことにより得られたN-ビニルピロリドン重合体(高分子担体)中に薬物が溶解又は分散している固体分散体を製造するにあたって、2軸型エクストルーダーを用いる当該固体分散体の製造方法。」
で一致するが、他方、次の相違点で相違する。
<相違点>
本願発明では、「スクリュー軸上にパドルを有する」のに対し、甲第5号証発明では、そのように特定していない点。

そこで、この相違点について検討する。
甲第2号証は、従来技術を取りまとめたもので、図書の発行準備等が必要であり、少なくとも、本件優先権主張日と同じ1991年に発行された図書と認められる(前記(5-1)の(e)参照)ことから、本件優先権主張日当時の技術レベルを示すものと解するのが相当であり、二軸スクリュー押出機においてニーディングディスクを組み込む態様が知られているものであり、ニーディングディスクによって混練効果を促進すること、ニーディングディスク部では混合度合いの進行が急速に行われること((2-i)、(2-ii)、(2-iii)参照)などが知られていたものと解するのが相当である。なお、「ニーディングディスク」は、「パドル」と同一の技術事項と認められ、請求人も被請求人も同一のものを指すことを認めている(第1回口頭審理調書、及び、審尋に対する請求人の平成19年7月18日付け回答書と被請求人の平成19年7月18日付け回答書を参照)。
また、甲第4号証には、ニーダー(混練機)ではあるが、スクリュー軸上にパドルを設けた態様の記載があり、パドルの組み合わせによって短時間で有効な混練を行なうことができる(摘示(4-ii)、(4-iv)の(5)参照)との説示がある。
してみると、混練機能を有する二軸スクリュー部にパドルを組み込む態様は知られているものと認められる。そして、パドルを併用することによって十分な混練が速やかに進むことが明らかであったと言えるから、二軸スクリュー押出機(即ち2軸型エクストルーダー)において、混練をより十分に又速やかに行うために、パドルを併用することは当業者が容易に想到し得たものと認めらる。
なお、被請求人が提示した本件優先権主張日前の刊行物である乙第15号証には、栗本鐵工所のKEXエクストルーダーには、ニーディングディスクを組み込めること、「数種のピッチのスクリュー、逆スクリュー、特殊なニーディスク、などのスクリューエレメントを組み合わせることができ、あらゆる混練処理に最適なスクリュープロファイルに対応。」(第36頁右欄参照)できることの記載があり、本件特許明細書に記載された実施例で用いられたKEX-30も仕様例の一つとして示されている(第37頁の仕様の表参照)ことからみて、本件特許発明は、ニーディングディスク、即ちパドルを組み込むことができるエクストルーダーが既に存在している状況でなされたことが明らかといえる。

ここで、作用効果について検討すると、訂正された本件特許明細書には、
「発明の効果
本発明によれば、薬物及び高分子担体を高温状態に置かず、かつ有機溶媒を一切使用せずとも、固体分散体を得ることができる。
本発明によれば、固体分散体を単独で成形し取り出すことができ、ダイの排出孔径や形状を変化させることで任意の大きさ、又は任意の形の固体分散体を製造することができる。
その他、熔融法、溶媒法が有する欠点がない。」
と記載されている。
しかし、このような作用効果は、甲第5号証発明においても奏されていることは明らかである。なお、製造時の温度条件は、本件特許発明の発明特定事項ではないし、甲第5号証発明でも70℃程度の例も示されているので本件特許発明との本質的な差はない。
更に、パドルを併用することによって格別予想外の作用効果を奏しているとも認められない。なお、パドルの有無によって、混練度合いや速やかさに程度の差が生じるのは予測の範囲内であり、本質的な差異があることは本件明細書では明らかにされていない。

なお、被請求人は、次の点を主張する。
(1)パドルを有する2軸エクストルーダーは、プラスチック工業の分野でもっぱら使用され(乙第11号証273頁、21?24行参照)、医薬製剤分野の当業者間では有用とされておらず、医薬製剤分野とは異質な技術分野で専ら知られ用いられていた。従いまして、本件特許発明に係る2軸型エクストルーダーを用いてNVP重合体を担体とする固体分散体を製造しようという動機付けを当業者が持つこと自体、本件特許を知らなければ容易なことではない。
(2)本件特許発明に係る2軸型エクストルーダーは、甲第5号証に記載の二軸スクリュー押出機とは、機能ないし効果等が明らかに異なる装置であり、かかる2軸型エクストルーダーを用いた本件特許発明は、甲第5号証に記載の発明の限界を超え、また甲第5号証等の記載からは合理的に予測することができない有利な効果を奏する。即ち、パドルの有無によって、固体分散体の製造に用い得る高分子担体の種類又は範囲に本質的な差が存在し、甲第5号証の発明ではNVP重合体のみ固体分散体の形成が可能であるのに対し、本件特許発明ではNVP以外の高分子でも広範囲に固体分散体の形成が可能である。 なお、パドルの有無によるデータ(担体として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートを用いたもの)を乙第16号証で提出する。

しかし、前記(1)の主張については、薬剤の成形において二軸押出機を用いることは、甲第5号証の他、甲第6号証(活性成分とN-ビニルピロリドンやポリヒドロキシエチルメタクリレートなどの成分を二軸スクリュー押出機で混合物とすることが記載されている。)にも記載されていることからみて明らかであり、また、二軸押出機にパドルを装着することが本件優先権主張日当時知られていたものと認められ、パドルの装着は二軸押出機の改良としてなされていたことを勘案すると、二軸押出機を用いる薬剤の形成(即ち甲第5号証発明)において、二軸押出機にパドルを装着した態様とすることに格別の創意工夫が必要であったとは認められない。
前記(2)の主張については、上記当審の判断が甲第5号証特定のN-ビニルピロリドン重合体の使用を前提に一致点を認定しているのであり、本件特許発明でNVP以外の高分子でも広範囲に固体分散体の形成が可能であるとしても、前記一致点として認定した発明で勘案すべき作用効果ではない。また、乙第16号証でパドルの有無によるデータを提示しているが、甲第5号証発明ではパドルが無くとも固形分散体が形成されているのであるから、上記判断を左右するものではない。
なお、パドルの有無によって、機能ないし効果が明らかに異なるものであれば、パドルを特定していない特許発明を、パドルを有する訂正特許発明に訂正することは、単なる限定的減縮ではなく、実質的な変更であると解する他なくなる。

(5-5)まとめ
よって、本件特許発明は、甲第2号証によって認められる技術水準並びに甲第4号証、甲第6号証の記載を勘案し甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-12 
結審通知日 2008-05-15 
審決日 2008-05-29 
出願番号 特願平4-507772
審決分類 P 1 113・ 121- Z (A61K)
最終処分 成立  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 塚中 哲雄
瀬下 浩一
登録日 1996-06-14 
登録番号 特許第2527107号(P2527107)
発明の名称 固体分散体の製造方法  
代理人 中登 俊幸  
代理人 佐伯 裕子  
代理人 小板橋 浩之  
代理人 清水 尚人  
代理人 一入 章夫  
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