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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G01G
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  G01G
審判 全部無効 2項進歩性  G01G
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  G01G
管理番号 1208472
審判番号 無効2007-800133  
総通号数 122 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-02-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-07-13 
確定日 2009-10-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2681104号「組合せ計量装置」の特許無効審判事件についてされた平成20年6月18日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成20年行ケ第10248号 平成20年9月29日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第2681104号に係る出願は、昭和61年11月15日に出願したものであって、平成9年8月8日に特許権の設定の登録(発明の名称:計量装置、発明の数:1)がなされるとともに同年11月26日に本件特許掲載公報(以下、「特許掲載公報」という。)が発行され、その後、被請求人より平成19年2月13日に、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)について訂正審判(訂正2007-390016)が請求され、同年3月8日付けで訂正を認める旨の審決がなされ確定した。
請求人より、平成19年7月13日に本件特許無効審判(無効2007-800133)が請求され、職権審理の結果、平成20年3月21日付けで無効理由を通知し、被請求人より同年4月25日に訂正請求がなされ、訂正を認める、上記無効理由により本件特許を無効とする旨の同年6月18日付け審決がなされた。
被請求人より、同年7月2日に上記審決に対する訴え(平成20年行ケ第10248号)が提起されるとともに、同年7月28日に訂正審判(訂正2008-390084)が請求されたところ、知的財産高等裁判所において、同年9月29日付けで特許法第181条第2項の規定に基づく審決取消の決定がなされ確定した。
被請求人より、同年10月14日に訂正請求がなされ(本訂正請求により上記平成20年4月25日付け訂正請求は同法134条の2第4項の規定により、また、上記訂正審判(訂正2008-390084)の請求は、同法第134条の3第4項の規定によりそれぞれ取り下げられたものとみなされた。)、請求人より、平成20年11月14日付けで弁駁書の提出があった。
以下、訂正審判(訂正2007-390016)により確定した訂正後の特許明細書及び図面を「特許明細書等」と、平成20年10月14日の訂正請求を「本件訂正」と、本件訂正の前後を通じて願書に添付した明細書の特許請求の範囲に記載された発明を「本件特許発明」と、本件特許発明に係る特許を「本件特許」と、平成20年6月18日付けでなされた本件特許を無効とする旨の審決を「先の審決」という。

なお、本件特許に関して、請求人より平成19年7月27日に別件の特許無効審判(無効2007-800148)が請求され、平成20年4月1日付けで本件審判の請求は成り立たない旨の審決がなされ、請求人より同年5月8日に上記審決に対する訴えが提起されたところ、同年10月27日に知的財産高等裁判所において請求を棄却する旨の判決(平成20年行ケ10170号)が言い渡され、確定した。
さらに、本件特許に関して、請求人より平成20年4月1日に別件特許無効審判(無効2008-800059)が請求され、平成20年8月7日付けで請求は成り立たない旨の審決がなされ、請求人より同年9月18日に上記審決に対する訴えが提起され、知的財産高等裁判所において平成20年行ケ10339号として係属している。
また、本件特許に係る損害賠償請求事件が大阪地方裁判所に平成19年(ワ)2076号として係属している。

第2 請求人の主張
請求人は、本件特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、下記甲第1号証から甲第68号証の証拠方法を提出するとともに、次のように主張している。

1 特許無効について
本件訂正の有無にかかわらず本件特許は特許法第29条第1項または第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
そして、本件特許を無効とすべき無効理由の内容は、平成19年7月13日付け審判請求書、同年12月10日付け弁駁書、平成20年2月14日の口頭審理(口頭審理陳述要領書を含む)、同年同月29日付け上申書及び同年3月18日付け上申書を総合すれば概略以下のとおりである。
(1)無効理由1
本件特許発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である実願昭58-101360号(実開昭60-8843号)のマイクロフィルム(甲第3号証、以下「引用例1」という。)に記載された発明であって、または、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。(以下、「無効理由1」という。)

(2)無効理由2
本件特許発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開昭60-238722号公報(甲第4号証、以下「引用例3」という。)に記載された発明であって、または、引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。(以下、「無効理由2」という。)

2 証拠方法
これら無効理由について請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
(1)甲第1号証 訂正2007-390016審判事件の審決書
(2)甲第2号証 特許第2681104号公報
(3)甲第3号証 実願昭58-101360号(実開昭60-884 3号)のマイクロフィルム
(4)甲第4号証 特開昭60-238722号公報
(5)甲第5号証 財団法人国際科学振興財団編『科学大辞典』丸善株 式会社発行(表紙、目次頁、705頁、奥付頁のみ 抜粋)
(6)甲第6号証 見城尚志・菅原晟著『ステッピングモータとマイコ ン制御』総合電子出版社発行(表紙、目次頁、21 頁、奥付頁のみ抜粋)
(7)甲第7号証 海老原大樹・岩佐孝夫著『ステッピングモータ活用 技術』株式会社工業調査会発行(表紙、目次頁、3 ?6頁、50?55頁、奥付頁のみ抜粋)
(8)甲第8号証 特開昭60-231210号公報
(9)甲第9号証 特開昭59-123494号公報
(10)甲第10号証 特開昭60-217963号公報
(11)甲第11号証 ADW-X23R取扱説明書(表紙、目次頁、B-3-0 0頁、B-7-00頁、D-15-00頁、D-1 6-00頁、D-22-00頁、E-3-00頁の み抜粋)
(12)甲第12号証 FNL-302CCカタログ
(13)甲第13号証 昭和61年9月16日付日刊工業新聞(12?13 頁、22頁のみ抜粋)
(14)甲第14号証 「'86粉体工業展」の展示ブース配列図
(15)甲第15号証 「'86粉体工業展」の展示ブース写真
(16)甲第16号証 「'86粉体工業展」の展示ブース写真
(17)甲第17号証 「'86粉体工業展」の展示ブース写真を拡大したも の
(18)甲第18号証 特開昭54-31005号公報
(19)甲第19号証 特開昭60-48514号公報
(20)甲第20号証 杉山坊著『マイコンとデジタルサーボ技術入門』近 代図書株式会社発行(表紙、目次頁、84?85頁 、奥付頁のみ抜粋)
(21)甲第21号証 P. P. Acarnley著『Stepping Motors: a
guide to modern theory and practice-2nd
edition』Peter Peregrinus Ltd.発行(表紙 、目次頁、98?100頁、奥付頁のみ抜粋)
(22)甲第22号証 特開昭60-190197号公報
(23)甲第23号証 特開昭60-141197号公報
(24)甲第24号証 特開昭60-69397号公報
(25)甲第25号証 特開昭59-122400号公報
(26)甲第26号証 特開昭60-213298号公報
(27)甲第27号証 特開昭59-144906号公報
(28)甲第28号証 特開昭60-129809号公報
(29)甲第29号証 Takashi Kenjo著『Stepping motors and
their microprocessorcontrols』Oxford
University Press発行(表紙、目次頁、
184?191頁、奥付頁のみ抜粋)
(30)甲第30号証 特開昭58-56785号公報
(31)甲第31号証 特開昭59-4573号公報
(32)甲第32号証 Takeyoshi Nagao著『Feeding control of
automatic bagging sale』Mechanical
Problems in Measuring Force and Mass,
Martinus Nojhoff Publishers発行(表紙、
目次頁、75?84頁のみ抜粋)
(33)甲第33号証 特開昭59-122397号公報
(34)甲第34号証 特開昭61-177197号公報
(35)甲第35号証 実願昭57-123283号(実開昭59-274 25号)のマイクロフィルム
(36)甲第36号証 特開昭60-10126号公報
(37)甲第37号証 実願昭59-168452(実開昭61-8222 9号)のマイクロフィルム
(38)甲第38号証 ステッピングモータのハードウェア解説
(http://www.robotics.ee.shibaura-it.ac.jp/
manual/chap2/motorh ard.html)
(芝浦工業大学ロボティクス研究室内)
(39)甲第39号証 ADW-221R納品用承認図面
(40)甲第40号証 ADW-221Rの取り扱い説明書
(41)甲第41号証 ADW-341RWの納品用承認図面
(42)甲第42号証 ADW-341RWの取り扱い説明書
(43)甲第43号証 ADW-130RWの納品用承認図面
(44)甲第44号証 ADW-130RWの取り扱い説明書
(45)甲第45号証 特開昭55-31987号公報
(46)甲第46号証 実願昭57-164887号(実開昭59-691 97号公報)のマイクロフィルム
(47)甲第47号証 特開昭60-17320号公報
(48)甲第48号証 特開昭60-238723号公報
(49)甲第49号証 米国特許4705125号明細書(和訳添付)
(50)甲第50号証 本件特許出願に係る出願当初明細書及び図面
(51)甲第51号証 平成5年4月23日付け出願審査請求書
(52)甲第52号証 平成5年4月23日付け手続補正書
(53)甲第53号証 平成6年5月18日付け拒絶理由通知書
(54)甲第54号証 平成6年8月22日付け手続補正書
(55)甲第55号証 平成6年8月22日付け意見書
(56)甲第56号証 平成6年10月12日付け手続補正指令書
(57)甲第57号証 平成6年11月16日付け手続補正書
(58)甲第58号証 平成7年2月14日付け拒絶査定
(59)甲第59号証 平成7年4月13日付け審判請求書
(60)甲第60号証 平成7年5月15日付け審判請求理由補充書
(61)甲第61号証 平成7年5月15日付け手続補正書
(62)甲第62号証 平成8年3月19日付け拒絶理由通知書
(63)甲第63号証 平成8年6月24日付け手続補正書
(64)甲第64号証 平成8年6月24日付け意見書
(65)甲第65号証 平成8年10月1日付け拒絶理由通知書
(66)甲第66号証 平成8年12月24日付け手続補正書
(67)甲第67号証 平成8年12月24日付け意見書
(68)甲第68号証 平成9年4月28日付け審決書

3 各証拠方法の記載事項
上記各証拠方法の記載事項の概要は以下のとおりである。
(1)甲第1号証
訂正2007-390016審判事件の審決書(結論:特許第2681104号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。)である。
(2)甲第2号証
本件特許掲載公報である。
(3)甲第3号証
無効理由1で引用された主引用例である。詳細については後述する。
(4)甲第4号証
無効理由2で引用された主引用例である。詳細については後述する。
(5)甲第5号証
ステップモータとパルスモータは同義であることが記載されている。
(6)甲第6号証
ステップモータとパルスモータは同義であることが記載されている。
(7)甲第7号証
ステッピングモータを用いて被駆動部材を駆動する場合、刻々の動作変化が制御されること、被駆動部材の刻々の動作変化をモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定することが記載されている。
(8)甲第8号証
ステッピングモータを用いて被駆動部材を駆動する場合、被駆動部材の刻々の動作変化をモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定し、それに基づきモータを制御すること、及び動作設定がコントロールパネルを用いて行うことが記載されている。
(9)甲第9号証
ステッピングモータを用いて被駆動部材を駆動する場合、被駆動部材の刻々の動作変化をモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定し、それに基づきモータを制御すること、及び動作設定がコントロールパネルを用いて行うことが記載されている。
(10)甲第10号証
計量ホッパにおいて、ゲートの動作変化を設定する入力手段をコントロールパネルに設けることが記載されている。
(11)甲第11号証
計量ホッパにおいて、ゲートの動作変化を設定する入力手段をコントロールパネルに設けることが記載されている。
(12)甲第12号証
計量ホッパにおいて、ゲートの動作変化を設定する入力手段をコントロールパネルに設けることが記載されている。
(13)甲第13号証
甲第12号証に係る製品を'86粉体工業展に請求人が出品したことが認められる。
(14)甲第14号証
'86粉体工業展で請求人とシーエス機械製作所とが隣同士のブースであったことが認められる。
(15)甲第15号証
シーエス機械製作所が隣に写っている、展示パネルの折れ線グラフはFNL-302CCカタログのグラフと同じものであることが認められる。
(16)甲第16号証
FNL-302CCコントロールパネルが展示されていたこと、そのカタログも頒布されていたことが認められる。
(17)甲第17号証
展示パネルがFNL-302CCのカタログのグラフと同じであることが認められる。
(18)甲第18号証
原料分配装置においてゲートの開閉にステッピングモータを用い、被駆動部材の刻々の動作変化を任意に設定すること、それに基づきモータを制御することが記載されている。
(19)甲第19号証
モータの動特性データを格納したテーブルを用いてステッピングモータの動作設定を行うことが記載されている。
(20)甲第20号証
モータの動特性データを格納したテーブルを用いてステッピングモータの動作設定を行うことが記載されている。
(21)甲第21号証
モータの動特性データを格納したテーブルを用いてステッピングモータの動作設定を行うことが記載されている。
(22)甲第22号証
モータの動特性データを格納したテーブルを用いてステッピングモータの動作設定を行うことが記載されている。
(23)甲第23号証
モータの動特性データを格納したテーブルを用いてステッピングモータの動作設定を行うこと、ステッピングモータの駆動制御において加減速が行われることが記載されている。
(24)甲第24号証
モータの動特性データを格納したテーブルを用いてステッピングモータの動作設定を行うこと、ステッピングモータの駆動制御において加減速が行われることが記載されている。
(25)甲第25号証
モータの動特性データを格納したテーブルを用いてステッピングモータの動作設定を行うこと、ステッピングモータの駆動制御において加減速が行われることが記載されている。
(26)甲第26号証
モータの動特性データを格納したテーブルを用いてステッピングモータの動作設定を行うこと、ステッピングモータの駆動制御において加減速が行われることが記載されている。
(27)甲第27号証
モータの動特性データを格納したテーブルを用いてステッピングモータの動作設定を行うこと、ステッピングモータの駆動制御において加減速が行われることが記載されている。
(28)甲第28号証
モータの動特性データを格納したテーブルを用いてステッピングモータの動作設定を行うこと、ステッピングモータの駆動制御において加減速が行われることが記載されている。
(29)甲第29号証
モータの動特性データを格納したテーブルを用いてステッピングモータの動作設定をすること、ステッピングモータの駆動制御において加減速が行われることが記載されている。
(30)甲第30号証
ステッピングモータの動作設定がコントロールパネルを用いて行われることが記載されている。
(31)甲第31号証
ステッピングモータの動作設定がコントロールパネルを用いて行われることが記載されている。
(32)甲第32号証
ゲートの動作変化を設定する入力手段をコントロールパネルに設けることが記載されている。
(33)甲第33号証
ステッピングモータの駆動制御において加減速が行われることが記載されている。
(34)甲第34号証
ステッピングモータの駆動制御において加減速が行われることが記載されている。
(35)甲第35号証
計量装置において、被軽量物の種類や供給量に応じて被駆動部材の動作変化を複数記憶しておき呼び出すようにすることが記載されている。
(36)甲第36号証
計量装置において、被軽量物の種類や供給量に応じて被駆動部材の動作変化を複数記憶しておき、呼び出すようにすることが記載されている。
(37)甲第37号証
計量装置において、被軽量物の種類や供給量に応じて被駆動部材の動作変化を複数記憶しておき呼び出すようにすることが記載されている。
(38)甲第38号証
スッテッピングモータの一般的構造、特徴、駆動回路、制御方法が記載されている。
(39)甲第39号証
計量装置であるADW-221Rがコントロールパネルを備えたものであることが記載されている。
(40)甲第40号証
計量装置であるADW-221Rがホッパゲートの開閉動作をコントロールパネルを用いて設定することが記載されている。
(41)甲第41号証
計量装置であるADW-221Rがコントロールパネルを備えたものであることが記載されている。
(42)甲第42号証
計量装置であるADW-341RWがコントロールパネルを備えたものであることが記載されている。
(43)甲第43号証
計量装置であるADW-130RWがコントロールパネルを備えたものであることが記載されている。
(44)甲第44号証
計量装置であるADW-130RWがホッパゲートの開閉動作をコントロールパネルを用いて設定することが記載されている。
(45)甲第45号証
計量装置のゲート開度を半開等に調整するが記載されている。
(46)甲第46号証
計量装置のゲート開閉時の騒音が大きくなることが記載されている。
(47)甲第47号証
ホッパーゲートをステッピングモータにより駆動制御することが記載されている。
(48)甲第48号証
ホッパーゲートをステッピングモータにより駆動制御することが記載されている。
(49)甲第49号証
本件特許の対応米国特許明細書であり、被駆動部材の刻々の動作変化をモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段を備え、設定されたゲートの動作変化に基づいてモータを制御し、カムやリンク機構を介してゲートの開閉動作を行うことが記載されている。
(50)甲第50号証
本件特許の出願時における特許請求の範囲及び発明の詳細な説明欄には、「モータとしてステップモータを用い」とあることが記載されている。
(51)甲第51号証
本件特許の出願審査請求の内容が記載されている。
(52)甲第52号証
被請求人が1回目に行なった自発補正の内容が記載されている。
(53)甲第53号証
審査段階における拒絶理由通知の内容が記載されている。
(54)甲第54号証
本件特許の審査段階において被請求人が2回目に行なった補正(上記拒絶理由通知を受けて行なったもの)の内容が記載されている。
(55)甲第55号証
甲第54号証の手続補正書と同日付で被請求人が提出した意見書の内容が記載されている。
(56)甲第56号証
甲第54号証の手続補正書を差し替えるように通知された手続補正指令書の内容が記載されている。
(57)甲第57号証
甲第56号証の手続補正指令書を受けて被請求人が提出した手続補正書の内容が記載されている。
(58)甲第58号証
本件特許に係る拒絶査定の内容が記載されている。
(59)甲第59号証
被請求人が請求した拒絶査定不服審判(拒絶査定不服7-07456号)の審判請求書の内容が記載されている。
(60)甲第60号証
上記拒絶査定不服審判の審判請求理由補充書の内容が記載されている。
(61)甲第61号証
被請求人が3回目に行なった補正(上記拒絶査定不服審判の請求に伴い行なったもの)の内容が記載されている。
(62)甲第62号証
上記拒絶査定不服審判の審理における1回目の拒絶理由通知の内容が記載されている。
(63)甲第63号証
被請求人が4回目に行なった補正(上記拒絶査定不服審判の審理においてなされた上記1回目の拒絶理由通知[甲第62号証]を受けて行なったもの)の内容が記載されている。
(64)甲第64号証
甲第63号証の手続補正書と同日付で被請求人が提出した意見書の内容が記載されている。
(65)甲第65号証
上記拒絶査定不服審判の審理における2回目の拒絶理由通知の内容が記載されている。
(66)甲第66号証
被請求人が5回目に行なった補正(上記拒絶査定不服審判の審理においてなされた2回目の拒絶理由通知[甲第65号証]を受けて行なったもの)の内容が記載されている。
(67)甲第67号証
甲第66号証の手続補正書と同日付で被請求人が提出した意見書の内容が記載されている。
(68)甲第68号証
上記拒絶査定不服審判の審決書(結論:原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする。)である。

第3 職権審理による無効理由
先の審決をした審判体の職権審理による平成20年3月21日付けの無効理由の内容は概略以下のとおりである。

1 無効理由3
本件特許発明は、引用例1に記載された発明及び本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開昭61-35192号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。(以下、「無効理由3」という。)

2 証拠方法
無効理由3に関連して請求人が平成20年5月23日付け上申書及び同年11月14日付け弁駁書により提出した証拠方法は以下のとおりである。
( 1)甲第69号証 特開昭58-223718号公報
( 2)甲第70号証 特開昭58-41324号公報
( 3)甲第71号証 大阪地裁19(ワ)2076号損害賠償請求事件に 係る原告(被請求人)準備書面(12)
( 4)甲第72号証 実願昭58-58197号(実開昭59-1639 29号公報)のマイクロフイルム
( 5)甲第73号証 実願昭58-28565号(実開昭59-1356 39号公報)のマイクロフイルム
( 6)甲第74号証 特開昭59-21531号公報
( 7)甲第75号証 特開昭61-182888号公報
( 8)甲第76号証 特開昭60-156117号公報
( 9)甲第77号証 特開昭62-236388号公報
(10)甲第78号証 特開昭59-132796号公報
(11)甲第79号証 大阪地裁19(ワ)2076号損害賠償請求事件に 係る原告(被請求人)準備書面(15)
(12)甲第80号証 特開昭58-19516号公報

3 各証拠方法の記載事項
上記各証拠の記載事項の概要は以下のとおりである。
(1)甲第69号証
本件特許明細書に記載されている「計量機」との用語が、同明細書に引用されている被請求人の出願にかかる公開特許公報おいて、「計量ホッパ、計量ホッパゲート、重量検出器にて組立てられた装置部分」と定義されていることが記載されている。
(2)甲第70号証
組合せ演算の結果選択されたホッパの制御手段に動作指令を与えてゲートを動作させることは、組合せ計量装置に必須の構成であることが記載されている。
(3)甲第71号証
平成19年(ワ)第2076号 損害賠償請求事件の原告(被請求人)準備書面(12)である。
(4)甲第72号証
カムによってホッパゲートの動作が行なわれていることが記載されている。
(5)甲第73号証
速度可変のモータを用いて偏心カムをプログラム制御して、被移送物の移送を制御することが記載されている。
(6)甲第74号証
カムの回転をプログラム制御して、被駆動部材の動作を制御することが記載されている。
(7)甲第75号証
カムの回転をプログラム制御して、被駆動部材の動作を制御することが記載されている。
(8)甲第76号証
被駆動部材の刻々の動作変化をモータの動特性データとしてテーブルあるいはメモリ等に任意に設定することによって該部材の動作を任意に制御できることが記載されている。
(9)甲第77号証
被駆動部材の刻々の動作変化をモータの動特性データとしてテーブルあるいはメモリ等に任意に設定することによって該部材の動作を任意に制御できることが記載されている。
(10)甲第78号証
被駆動部材の刻々の動作変化をモータの動特性データとしてテーブルあるいはメモリ等に任意に設定することによって該部材の動作を任意に制御できることが記載されている。
(11)甲第79号証
平成19年(ワ)第2076号 損害賠償請求事件の原告(被請求人)準備書面(15)である。
(12)甲第80号証
品物の種類に対応して計量機ないし計量ホッパを設け、複数存在する同一種類のホッパたる計量機ないし計量ホッパを対象に、個々の計量機ないし計量ホッパを独立に動作させることが記載されている。

第4 被請求人の主張
被請求人は、平成20年10月14日に特許明細書等の訂正を請求するとともに、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、本件審判の請求には理由がないことについて、証拠方法として下記乙第1号証から乙第12号証を提出するとともに、平成19年10月2日付け答弁書、平成20年2月14日の口頭審理(口頭審理陳述要領書を含む)、同年3月14日付け上申書、同年4月25日付け意見書及び同年10月14日付け訂正請求書において概略以下のとおり主張している。

1 無効理由1について
引用例1には本件特許発明の特徴部というべき「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記パルスモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定」することが記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明は引用例1に記載された発明ではなく、また、一般にパルスモータを用いて被駆動部材を刻々に動作変化させることが周知技術だとしても本件特許発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

2 無効理由2について
引用例3は所定期間毎のゲートの動作変化を設定しておらず、設定されるのは時間とは無関係の「切換重量」及び「ゲートの開度」である。
したがって、引用例3には本件特許発明の特徴部というべき「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記モータの動特性データとしてテーブルに任意に設定」することが記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明は引用例3に記載された発明ではなく、また、一般にパルスモータを用いて被駆動部材を刻々に動作変化させることが周知技術だとしても本件特許発明は引用例3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

3 無効理由3について
引用例1には、本件特許発明に係る解決すべき課題であるカム制御技術を用いた組合せ計量装置においてゲートの動作変化の変更に対応できるようにする、との課題が記載も示唆もされておらず、さらにこの課題を解決すべく採用した本件特許発明の特徴部というべき「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記パルスモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定」することについても、記載も示唆もされていない。
したがって、パルスモータを用いてモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定することで被駆動部材を刻々に動作変化させる技術が引用例2により公知だとしても、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 証拠方法
被請求人が提出した証拠方法は以下のとおりである。
(1) 乙第1号証 特開昭60-79228号公報
(2) 乙第2号証 実願昭56-132244(実開昭58-3752 0号)のマイクロフィルム
(3) 乙第3号証 広辞苑第五版 抄
(4) 乙第4号証 特開昭60-217983号
(5) 乙第5号証 実用新案登録第2509995公報
(6) 乙第6号証 実願昭57-67392号(実開昭58-1695 32号)のマイクロフィルム
(7) 乙第7号証 特開昭60-22626号公報
(8) 乙第8号証 実願昭62-157371号(実開平1-6109 5号)のマイクロフィルム
(9) 乙第9号証 「絵とき空気圧技術実務マニュアル」抄(昭和61年 11月30日初版発行)
(10)乙第10号証 「Dataweigh Σ SIGMA seri es」カタログ写し
(11)乙第11号証 特開昭59-102123号公報
(12)乙第12号証 特開昭60-71917号公報

5 各証拠方法の記載事項
上記各証拠方法の記載事項の概要は以下のとおりである。
(1) 乙第1号証
穀物の種類によって摩擦係数の異なる場合や、粒大変化がある場合等も、実施の流量測定で流量が補正され設定流量で排出させることができることが記載されている。
(2) 乙第2号証
組合せ計量機におけるホッパーの駆動装置として、ステッピングモータを利用してもよいことが記載されている。
(3) 乙第3号証
「刻々」、「制御」についての普通の用語としての意味が、それぞれ「一刻毎、刻一刻」及び「機械や設備が目的通り作動するように操作すること」であることが記載されている。
(4) 乙第4号証
エアシリンダ式アクチュエータの開閉が「開」と「閉」の二値の制御しか存在しないことが記載されている。
(5) 乙第5号証
請求人に係る定量秤についての実用新案登録公報である。
(6) 乙第6号証
組合せ計量装置において、モータで制御されるカムの回転によってゲートの開閉動作を行うことが記載されている。
(7) 乙第7号証
組合せ計量装置において、モータで制御されるカムの回転によってゲートの開閉動作を行うことが記載されている。
(8) 乙第8号証
組合せ計量装置において、カムの形状によってゲートの動作変化を制御することが記載されている。
(9) 乙第9号証
エアシリンダ式アクチュエータは通常の空気圧シリンダは前進端と後進端の2位置で使用する2位置形であることが記載されている。
(10)乙第10号証
組合せ計量装置における「供給量」とは「かさ(体積)」のことであることが記載されている。
(11)乙第11号証
計量装置において、「設定重量」と被計量物の量(体積)とが対応関係にないことが記載されている。
(12)乙第12号証
計量装置において、「設定重量」と被計量物の量(体積)とが対応関係にないことが記載されている。

第5 訂正の適否についての当審の判断
1 訂正の内容
被請求人が平成20年10月14日に請求した本件訂正の内容は、以下のとおりである。
以下、本件訂正後の願書に添付した明細書及び図面を「訂正明細書等」という。(下線は、特許明細書等からの訂正部分を示す。)
(1)訂正事項a
特許明細書等の特許請求の範囲について、
(訂正前)
「被計量物品を貯蔵し排出するホッパと、
該ホッパの排出口に設けられたゲートと、
該ゲートを開閉駆動するモータとを備えた計量装置であって、
前記ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記モータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、
設定されたゲートの動作変化に基づいて前記モータを制御する制御手段とを設け、
前記入力手段はコントロールパネルに含まれており、
被計量物の種類や供給量に応じて前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とする
計量装置。」を、
(訂正後)
「被計量物品を貯蔵し排出する複数種類のホッパと、
各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲートと、
各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータとを備えた組合せ計量装置であって、
前記モータは、ホッパ毎に設けられたステップモータであり、前記ステップモータによりゲートを開閉駆動する、指定されたホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記ステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、
組合せ演算の結果選択されたホッパについて設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する制御手段とを設け、
前記入力手段はコントロールパネルに含まれており、
被計量物の種類や供給量に応じて、前記指定されたホッパについての前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とする
組合せ計量装置。」と訂正する。

(2)訂正事項b
特許明細書等(平成19年6月29日付け特許審決公報(以下、「特許審決公報」という。)7頁33行)に、
「ゲートの開閉リングの摩耗等によってクリアランスが拡大すると」とあるのを、
「ゲートの開閉リンクの摩耗等によってクリアランスが拡大すると」と訂正する。

(3)訂正事項c
特許明細書等(特許審決公報7頁43?47行)に、
「本発明の計量装置は、被計量物品を貯蔵し排出するホッパと、該ホッパの排出口に設けられたゲートと、該ゲートを開閉駆動するモータとを備えた計量装置であって、前記ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記モータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、設定されたゲートの動作変化に基づいて前記モータを制御する制御手段とを設け、前記入力手段はコントロールパネルに含まれており、被計量物の種類や供給量に応じて前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とするものである」とあるのを、
「本発明の計量装置は、被計量物品を貯蔵し排出する複数種類のホッパと、各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲートと、各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータとを備えた組合せ計量装置であって、前記モータは、ホッパ毎に設けられたステップモータであり、前記ステップモータによりゲートを開閉駆動する、指定されたホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記ステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、組合せ演算の結果選択されたホッパについて設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する制御手段とを設け、前記入力手段はコントロールパネルに含まれており、被計量物の種類や供給量に応じて、前記指定されたホッパについての前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とするものである」と訂正する。

(4)訂正事項d
発明の名称について、「計量装置」を「組合せ計量装置」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
ア 訂正事項aのうち「被計量物品を貯蔵し排出する複数種類のホッパと、各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲート」とする訂正は、訂正前の特許請求の範囲においては本件特許発明の計量装置におけるホッパの種類及びゲートに何ら限定がなかったのを、「複数種類のホッパ」及び「各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲート」と限定するものであるから、これらの訂正は特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。
これらの訂正は、訂正前の特許明細書等における「計量装置には種々のホッパが用いられているが、第9図には組合せ計量装置Aの概略構成が示されている。図において、被計量物品は、分散テーブルa、供給トラフb、プールホッパdを介して計量ホッパeに供給され、ロードセル等の重量検出器により重量が計量される。ハウジングcは、分散テーブルa、供給トラフbを支持している。計量ホッパで計量された被計量物品は、外側シュートf、または内側シュートgよりタイミングホッパh、jに供給され、下側シュートiまたはkより排出される」との記載(特許審決公報7頁18?23行)、及び特許掲載公報第9図において、プールホッパd、計量ホッパe、タイミングホッパh、jにそれぞれゲートが設けられている記載に基づくものであるから、訂正前の特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項aのうち、「各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータとを備えた組合せ計量装置」及び「前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とする組合せ計量装置」とする訂正は、それぞれ、訂正前の特許請求の範囲においては「開閉駆動」の構成に何らの限定がなかったのを、「リンク機構を介して」開閉駆動されるものと限定するものであり、また、本件特許発明の計量装置を単なる「計量装置」から「組合せ計量装置」に限定するものであるから、これら訂正は特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。
これらの訂正は、訂正前の特許明細書等における、「ステップモータは図示しないリンク機構を介してホッパのゲートと連結されてホッパ6のゲートを開閉制御する」との記載(特許審決公報8頁9行)、並びに「組合せ演算の結果、選択されて排出指令を受ける」との記載(同10頁46行)及び「組合せ選択されなかった計量ホッパ」との記載(同頁49行)をそれぞれ根拠とするものであるから、訂正前の特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項aのうち、「前記モータは、ホッパ毎に設けられたステップモータであり、」との構成を付加する訂正は、「各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータ」を「ホッパ毎に設けられたステップモータ」に限定する訂正であるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。
次に、請求人は平成20年11月14日付け弁駁書において、上記訂正は新規事項の追加にあたるから本件訂正は認められない旨主張しているのでこの点について以下に検討する。
該訂正に関する訂正前の特許明細書等の記載として次の点が挙げられる。
(i)「ステップモータは図示しないリンク機構を介してホッパのゲートと連結されてホッパ6のゲートを開閉制御する」との記載(特許審決公報8頁9行)。
(ii)ホッパ6に対しステップモータ5が設けられている特許掲載公報【第1図】の記載。
(iii)「ホッパゲートの開度指定やスピード変更は、全てのホッパを対象にして一括して設定することもできれば、個々のホッパ毎に個別に指定することもできる。
例えば、第4図(b)に示すようなメッセージを表示させて、ホッパ毎に個別に指定しても良い。このように個別に指定できるようにすると、例えば、特開昭58-223718号公報に開示されているような、所謂親子計量において有効となる。即ち、親機と子機とでは、それぞれ動作スピードが異なるし、又、ホッパへの供給量も異なるので、それぞれに適したスピードとゲート開度を指定することによって最適制御を行わせることができる。」との記載(同10頁28?34行)。
(iv)メッセージの表示として、
計量機 ○○番目
・ホッパゲート開度 ○○%
・開閉周期 ○○%
を示した特許掲載公報【第4図】(b)の記載。

これら(i)ないし(iv)の記載を総合すれば、ホッパゲートの開閉動作はステップモータを制御することによりリンク機構を介して行われ、その動作変化についてはホッパ毎に個別に指定し得るものであることが読み取れるところ、ゲートはホッパ毎に設けられているのであるから、ゲートの開閉動作のために設けられたステップモータはゲート毎に、すなわちホッパ毎に設けられているとみるのが自然である。
したがって、該訂正は、訂正前の特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、新規事項の追加にあたらない。
(請求人の主張について)
この点に関して、請求人は前記弁駁書において、
「ステップモータは図示しないリンク機構を介してホッパのゲートと連結されてホッパ6のゲートを開閉制御する」との記載(特許審決公報8頁9行)や第1図の記載は、複数のホッパに対して1個のステップモータを設ける構成を排除しない旨主張し、また、
「ホッパゲートの開度指定やスピード変更は、全てのホッパを対象にして一括して設定することもできれば、個々のホッパ毎に個別に指定することもできる」との記載(特許審決公報10頁28?29行)は、単に、「ホッパゲートの開度指定やスピード変更」が、「個々のホッパ毎に個別に指定することもできる」という、「制御」に関する事項を開示しているに過ぎないから、「ホッパ毎にステップモータが設けられている」という装置の「構造」に関する事項を明示する根拠とならない旨主張している。
そこで検討するに、上記で説示したように本件特許明細書等のすべての記載、特に、上記記載事項(i)ないし(iv)を総合することにより導かれるステップモータとホッパとの関係に係る技術事項については、ステップモータがホッパ毎に設けられているとみるのが自然であるから、請求人の主張は妥当でない。

そして、この訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項aのうち、「前記ステップモータによりゲートを開閉駆動する、指定されたホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記ステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段」とする訂正、及び「被計量物の種類や供給量に応じて、前記指定されたホッパについての前記ゲートの動作を任意に制御できるようにした」とする訂正は、訂正前の「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記モータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段」が設定の対象とするホッパを限定していなかったのに対し、「前記ステップモータによりゲートを開閉駆動する、指定されたホッパについて」設定するものと限定し、同時に、訂正前の「被計量物の種類や供給量に応じて前記ゲートの動作を任意に制御できるようにした」における前記ゲートを、前記指定されたホッパについての前記ゲートと限定したものであるから、これら訂正は特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。
これらの訂正は、訂正前の本件明細書における、「エアシリンダを使用するものでは、各ホッパのゲート開閉スピードを個別に変えることは容易であるが、逆に全てのスピードを同じに調節することは難かしいので、計量スピードは、ゲート開閉のスピードが最も遅いものに合さなければならないという難点があった」との技術的課題が存在した旨の記載(特許審決公報7頁36?38行)、「ホッパゲートの開度指定やスピード変更は、全てのホッパを対象にして一括して設定することもできれば、個々のホッパ毎に個別に指定することもできる」との記載(同10頁28?29行)、そして、該「開度指定やスピード変更」を「指定することもできるホッパ」は、「ステップモータは図示しないリンク機構を介してホッパのゲートと連結されてホッパ6のゲートを開閉制御する」ようになっていることから、ステップモータと直結されているホッパである旨の記載(同8頁9行)、及びホッパ6に対しステップモータ5が設けられている特許掲載公報【第1図】の記載を根拠とするものであるから、訂正前の特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項aのうち、「組合せ演算の結果選択されたホッパについて設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する制御手段とを設け」とする訂正は、訂正前の特許請求の範囲においては設定されたゲートに何らの限定がなかったのを「組合せ演算の結果選択されたホッパについて」と限定すると共に、制御手段によって制御されるモータを単なる「モータ」から「ステップモータ」と限定するものであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。
これらの訂正は、訂正前の特許明細書等における、「組合せ演算の結果、選択されて排出指令を受けると、ステップモータを直ちにドライブして、レバーにより、応答遅れなくローラをプッシュしてゲートを開放させる」との、組合せ演算の結果選択されたホッパについてステップモータをドライブする排出指令が出力される旨の記載(特許審決公報10頁46?47行)、「コンピュータの出力指令は、ドライバ4を介してステップモータ5に送出され、…ホッパ6のゲートを開閉制御する」との、コンピュータ(制御手段)が開閉制御の指令をモータのドライバに出力する旨記載(同8頁8?9行)、及び「ステップモータは図示しないリンク機構を介してホッパのゲートと連結されてホッパ6のゲートを開閉制御する」との記載(同8頁9行)を根拠とするものであるから、訂正前の特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

カ まとめ
以上、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、訂正前の「ゲートの開閉リング」との記載を正しく「ゲートの開閉リンク」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするものであって、訂正前の特許明細書等の「(5)ゲート開閉リンクの摩耗によって・・・騒音を押さえることができる。」との記載(特許審決公報第11頁第20?21行)に基づくものであるから、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項cについて
訂正事項cは、特許請求の範囲の訂正に伴い、これに対応する発明の詳細な説明の記載を整合させて訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項dについて
訂正事項dは、特許請求の範囲の訂正に伴い、発明の名称をこれと整合させて訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、特許明細書等に記載されている事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は平成6年法律第116号改正附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされる同法による改正前の特許法第134条第2項ただし書の規定に適合し、かつ、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年法律第116号改正附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされる同法による改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第6 無効理由についての当審の判断
1 本件特許発明
本件特許発明は、上記のとおり訂正が認められるから本件訂正明細書等の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された下記のとおりのものである。
「被計量物品を貯蔵し排出する複数種類のホッパと、
各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲートと、
各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータとを備えた組合せ計量装置であって、
前記モータは、ホッパ毎に設けられたステップモータであり、前記ステップモータよりゲートを開閉駆動する、指定されたホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記ステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、
組合せ演算の結果選択されたホッパについて設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する制御手段とを設け、
前記入力手段はコントロールパネルに含まれており、
被計量物の種類や供給量に応じて、前記指定されたホッパについての前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とする
組合せ計量装置。」
(以下、「本件特許発明」という。)

2 無効理由3について
先ず、先の審決の結論の理由とした無効理由3について検討する。
(1)引用例1の記載事項及び引用発明
無効理由3の主引用例であって、引用例1である実願昭58-101360号(実開昭60-8843号)のマイクロフィルム(甲第3号証)には、次の事項(a)ないし(d)が図面とともに記載されている。
(a)「本考案実施例の組合せ秤を第1図乃至第2図により説明すれば、図中(1)は縦長の板を隣り合うように設けてなる分散板であり、該分散板(1)上の被計量物を互いに異なる方向に搬送するように分散板(1)の下方に電磁振動式のフイーダ(9)を設けると共に、分散板(1)の外側辺に供給トラフ(2)を列状に並設する。供給トラフ(2)は断面略コの字状に形成した搬送路であり、下方に電磁振動式のフイーダ(10)を設けると共に、各供給トラフの搬出端にプールホッパー(5)を設ける。プールホッパー(5)はホッパー本体(3)と底蓋(7)とからなる被計量物貯溜用のホッパーであり、各プールホッパー(5)の下方に計量ホッパー(6)を配設する。計量ホッパー(6)はホッパー本体(4)と底蓋(8)とからなり、ロードセル(11)を介してフレーム(12)に設けたもので、該ホッパー(6)内の被計量物を計量するものである。上記底蓋(7)(8)は夫々軸(13)(14)を介してフレーム(12)に設けてなり、その開閉機構は夫々リンク(15)(16)、カム(17)(18)及びパルスモータ(19)とからなる。即ちパルスモータ(19)の回転によってカム(17)(18)が回転して、リンク(15)(16)を夫々所定角度回動して底蓋(7)(8)を開閉動するものである(第3図)。」(明細書第3頁第12行?第4頁第18行)
(b)組合せ秤の要部拡大図である第3図から、カム(17)、(18)はいずれも偏心カムであることが見て取れる。
(c)また、「パルスモータ(19)の回転によってカム(17)(18)が回転して、リンク(15)(16)を夫々所定角度回動して底蓋(7)(8)を開閉動する」との記載及び第3図に示されたパルスモータ(19)、カム(17)、(18)及びリンク(15)、(16)の関係を表す図面の記載とから、一つのパルスモータ(19)により、該モータのロータに同軸固定された二つのカム(17)、(18)が同時に回転すると解するのが自然である。
(d)また、甲第3号証は組合せ秤に関するものであるから、明示した記載はないものの、その性質上当然に、「複数の計量ホッパ(6)のうち組合せ演算の結果選択された計量ホッパ(6)に排出指令を出力して、対応する底蓋(8)をリンク(16)とカム(18)の組を介して開閉駆動するパルスモータ(19)を制御する制御手段」を備えているといえる。

以上、記載事項(a)ないし(d)及び第1図ないし第3図を総合勘案すると、引用例1には次の発明が記載されていると認める。
「被計量物品を貯蔵し排出する、プールホッパー5及びその下方に配設された計量ホッパ6と、
該プールホッパー5及びその下方に配設された計量ホッパ6にそれぞれ設けられた底蓋7及び底蓋8と、
該底蓋7及び底蓋8をそれぞれリンク15と偏心カム17の組及びリンク16と偏心カム18の組を介して同時に開閉駆動する一つのモータとを備えた組合せ秤であって、
前記モータは、パルスモータ19であり、
組合せ演算の結果選択された計量ホッパ6について前記パルスモータ19を制御する制御手段とを設けた
組合せ秤。」(以下、「引用発明1」という。)

(2)引用例2の記載事項及び引用発明
無効理由3の副引用例であって、引用例2である特開昭61-35192号公報には、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。
(a)「当接している従動体に所定の動作を与えるカムと、該カムに機械的に接続されたカム駆動モーターと、該モーターを所要の速度で所要の角度だけ正転若しくは逆転させ、または所要時間だけ停止させるモーター制御手段と、プログラムされた前記カムの動作手順に従い前記モーターの回転速度、回転角度、正転逆転の別、停止時間を決定する各データを該モーター制御手段に送出して前記モーターをプログラム制御するCPUと、前記カムの動作手順をプログラムするために必要な前記従動体の動作に関する基礎データを該CPUに入力するデータ入力手段とを具備したことを特徴とするカム動作制御装置。」(第1頁左下欄第5?17行)
(b)「[発明の技術的背景]従来から第6図に示したような所定形状のカム1をこれに機械的に接続されたカム駆動モーター2を等角速度で回転させることによって該カム1に当接する従動体3に所定の動作を付与するカム制御技術が知られている。この種カム制御技術は、例えば第7図に示した如き複雑な形状のカム1をカム軸5を中心にして回転させることによって第8図のカムダイヤグラムで示したような動作を従動体3(第6図)に付与しようとするものである。
[従来技術の問題点]しかしながら従来から行なわれているカム制御技術では、従動体の動作モードが変るとそれに見合った形状のカムを新たに設計製造せねばならず、例え従動体の動作モードの変更が軽微なものであっても新規にカムを設計製造し直さねばならず、設計製造に要する工数が大きくなる等の問題点を有している。
[発明の目的]本発明は叙上の問題点に鑑みなされたもので、例え従動体の動作モードに変更があってもカムを新たに設計製造し直すことなくカム駆動モーターを制御するプログラムの変更のみでこの事態に対処し得るカム動作制御装置を提供することを目的とする。」(第1頁右下欄第5行?第2頁左上欄第9行)
(c)「本発明の好ましい実施例を第1図を参照して詳述する。本発明のカム動作制御装置10は、カムとしての等速カム11と減速機12とカム駆動モーターとしてのパルスモーター13とモータードライバー14とモーター制御手段としてのモーターコントローラー15とCPU16とデータ入力手段17と原点センサー18とで構成されている。まず第2図に示した様なカムダイヤグラムを呈する第3図に示した等速カム11は、当接している従動体としてのカム接触ロッド(第6図)3に所定の動作を与えるものである。また減速機12は、例えば減速比1/1.8で機械的に等速カム11に接続されている。そしてパルスモーター13は、減速機12を介して等速カム11に機械的に接続されていて例えば1.8°/PULSEの出力特性を有している。このパルスモーター13に電気的に接続されたモータードライバー14は、該モーター13を直接に駆動するものである。またCPU16と電気的に接続されたモーターコントローラ15は、CPU16より送出されてきたデータを取り込んでそのデータに従ってパルスを発生しモータードライバー14に送り込むものであり、パルスモーター13を所要の速度で所要の角度だけ正転若しくは逆転させ、または所要時間だけ停止させんとするものである。さてCPU16は、カム接触ロッド(第6図)3の動作モードに即してプログラムされた等速カム11の動作手順に従いパルスモーター13の回転速度、回転角度、正転逆転の別、停止時間を決定する各データをモーターコントローラ15に送出してパルスモーター13をプログラム制御するものである。更にデータ入力手段17は、等速カムの動作手順をプログラムするために必要なカム接触ロッド(第6図)3の動作に関する基礎データをCPU16に入力するものである。また原点センサー18は、等速カム11の原点をセンシングするセンサーであり、このセンスされた信号をCPU16に送出するものである。次に以上のように構成されたカム動作制御装置の動作を説明する。この本発明のカム動作制御装置で用いられる等速カムは第3図で示されるような外形を有しており、このカムダイヤグラムは第2図に示す如くカム回転角度に対するカムリフトの変化量が比例したものとなっている。まず一例として第4a図に示したようなカムダイヤグラム仕様で1サイクル時間が1080msecで完結するカムの動作手順は、第5図(a)(b)(c)に示すフローチャートで説明される。このカムの動作手順を第4b図を参照して略説すると以下の様になる。この場合において外部よりCPU(第1図)16にスタート信号が入力されるタイミングを0msecとすると、
0?90msecモータ停止 (カム接触ロッド接触ポイントa)
90?180msecモータ正転 ( ” ” a→b)
180?360msecモータ停止 (カム接触ロッド接触ポイントb)
360?540msecモータ正転 ( ” ” b→c)
540?810msecモータ停止 ( ” ” c)
810?990msecモータ逆転 ( ” ” c→a)
990?1080msecモータ停止( ” ” a)
というようにパルスモータ(第1図)13をプログラム制御することにより、従来から用いられている第7図に示したカム1が一回転したと同様の動作をカム接触ロッド(第6図)3に付与したことになる。また第4a図に示すように各カムリフト間のつなぎは、パルスモーター(第1図)13の発振周波数を増減可能な状態にプログラム制御することにより速度を可変させて対応することができる。このようにすることによって自在性が要求される精密機械への応用が期待される。」(第2頁右上欄第6行?第3頁左上欄第20行)

以上、記載事項(a)ないし(c)及び第1図ないし第7図を総合勘案すると、引用例2には次の発明が記載されているものと認める。
「等速カム11の動作手順をプログラムするのに必要な従動体3の動作に関する基礎データをCPU16に入力するデータ入力手段17と、前記データ入力手段17により設定された動作手順に基づいて当接している従動体に所定の動作を与えるカム駆動モータとしてのパルスモータ13をプログラム制御するために、前記パルスモータ13の回転速度、回転角度、正転逆転の別、停止時間を決定する各データをモータコントローラ15に送出するCPU16と、該データに従って駆動パルスを発生するモータコントローラ15とを設け、従動体3の動作モードに変更があってもプログラムの変更のみで対処し得るようにしたモータ制御装置。」(以下、「引用発明2」という。)

(3)対比
本件特許発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「プールホッパー5及びその下方に配設された計量ホッパ6」、「底蓋7及び底蓋8」、「リンク15及びリンク16」、「パルスモータ19」及び「組合せ秤」は、
本件特許発明の「複数種類のホッパ」、「ゲート」、「リンク機構」、「ステップモータ」及び「組合せ計量装置」にそれぞれ相当する。

してみると両者は以下の点で一致し、その他の点で相違する。
(一致点)
「被計量物品を貯蔵し排出する複数種類のホッパと、
各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲートと、
各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータとを備えた組合せ計量装置であって、前記モータは、ステップモータであり、
組合せ演算の結果選択されたホッパについて前記モータを制御する制御手段とを備えたことを特徴とする
組合せ計量装置。」

(相違点)
ア ゲートの開き始めから閉じるまでの動作変化を実現する手段について、
本件特許発明は、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化をステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、・・・設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する制御手段」を設けることによりゲートの刻々の動作変化を任意に実現できるのに対し、
引用発明1では、その点が明らかでない点。

イ モータについて、
本件特許発明は、「モータは、ホッパ毎に設けられ」ているのに対し、
引用発明1は、「底蓋7及び底蓋8をそれぞれリンク15とカム17の組及びリンク16とカム18の組を介して同時に開閉駆動する一つのモータ19」とあるように、モータは一組の「プールホッパー5及びその下方に配設された計量ホッパ6」毎に設けられている点。

ウ 入力手段について、
本件特許発明は、「入力手段はコントロールパネルに含まれて」いるとしているのに対し、
引用発明1では、そのことが明らかでない点

(4)当審の判断
そこで、上記相違点アないしウのうち、まず、主たる相違点である相違点ア及びイについて検討する。
・相違点アについて
引用発明1に記載のものは偏心カム17、18を備えており、これらと協働するリンク15、16により底蓋7、8が偏心カム17、18の形状に従った動作変化をすることが認められる。
そこで、引用発明1における偏心カム17、18の役割について検討するに、偏心カム17、18はリンク15、16と協働してモータの回転運動を底蓋すなわちゲートの開閉運動に変換させるための運動変換機構として用いられ、その結果、モータの回転運動を繰り返し開閉するゲートの往復運動に置き換える役割を果たすものである。
そして、底蓋7、8すなわちゲートの開き始めから閉じるまでの動作変化を設定する旨の記載は引用例1には一切無いし、底蓋7、8すなわちゲートの開き始めから閉じるまでの動作変化を変更するために偏心カム17、18を別の形状のものに取り替える旨の記載もない。
すなわち、引用例1には、ゲートの開き始めから閉じるまでの動作変化についての記載自体がなく、ましてや、ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化をカムの形状をもって設定するカム制御技術を用いた組合せ計量装置において、その動作変化の変更に対応できないという課題についても記載も示唆もされていない。
そこで、進んで、本件特許の出願時である昭和61年当時における組合せ計量装置の技術水準について検討する。
乙第6号証(実願昭57-67392号(実開昭58-169532号)のマイクロフィルム)には、「カムシャフト(31)には伝達ギヤ(33)に噛合し且つ上面に偏心した略円板状のカム(37)を固着した従動ギヤ(38)がベアリング(39)を介して枢着され」、開閉機構(A)(B)(C)の開閉動作に供される組合せ計量装置が開示され(5頁17?20行、第4図)、また、乙第7号証(特開昭60-22626号公報)には、「…装置の作動ボタンを押し、モータ17を起動させると、前記ギヤ機構を介して同スプロケット32が回動し、従動スプロケット34、34を介し、カム35、35’が回動してカムフォロワ39,39’の従動を介し、アーム38、38’が設定角揺動旋回動し、これによりロータリリンク40、40’が同じく設定角設定周期で相対揺動旋回動」し、開閉蓋15の開閉動作に用いられる組合せ計量装置が開示されている(6頁右上欄13?20行)。
してみると、この種の組合せ計量装置において、引用例1を始めとして、モータの回転運動を偏心カムによってゲート開閉の往復運動に変換することは本件特許の出願当時周知であったということができるものの、カム機構の形状を工夫することによって、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化」を任意に設定しようとすることが当業者の技術常識であったとすることはできない。
したがって、本件特許の出願時において当業者が引用例1をみても、引用発明1の組合せ計量装置がその底蓋7、8すなわちゲートの開閉動作に偏心カム17、18を用いているからといって、引用例1には底蓋7、8すなわちゲートの開き始めから閉じるまでの動作変化を変更したいとの動機付けが示唆されているとはいえず、しかも、動作変化を変更するためには偏心カム17、18を別の形状のものに取り替える必要があり、その取り替えは組合せ計量装置を分解等しなければならず簡便に行うことは困難であるところ、ゲートの動作変化を簡便に変更する、との動機付けも示唆されているとはいえない。
以上のとおりであるから、モータ制御装置において「等速カム11の動作手順をプログラムするのに必要な従動体3の動作に関する基礎データをCPU16に入力するデータ入力手段17と、前記データ入力手段17により設定された動作手順に基づいて当接している従動体に所定の動作を与えるカム駆動モータとしてのパルスモータ13をプログラム制御するために、前記パルスモータ13の回転速度、回転角度、正転逆転の別、停止時間を決定する各データをモータコントローラ15に送出するCPU16と、該データに従って駆動パルスを発生するモータコントローラ15とを設け、従動体3の動作モードに変更があってもプログラムの変更のみで対処し得るようにすること」が引用例2により引用発明2として公知であるとしても、引用例1には、上記したように底蓋すなわちゲートの開き始めから閉じるまでの動作変化を変更しようとの動機付けが記載も示唆もされておらず、更には、ゲートの動作変化を変更するためには偏心カム17、18を別の形状のものに取り替える必要があり、その取り替えを簡便に行うことは困難であるところ、ゲートの動作変化を簡便に変更できるようにしようとの動機付けも記載も示唆もされていないから、引用発明1に引用発明2を組み合わせて前記相違点(ア)の構成とすることは当業者といえども容易に推考し得たとすることができない。
(請求人の主張について)
請求人は平成20年11月14日付け弁駁書において、乙第6号証の第4図や甲第72号証の第5図に示されたカムの形状は単純な円や楕円でなく極めて複雑な形状となっており、このことから乙第6号証及び甲第72号証には、組合せ計量装置においてゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化をモータに接続されたカムの形状をもって設定するとの技術思想が開示されていることが明らかである旨主張している。
そこで検討するに、上記各号証においてカムの形状が複雑であることから、その複雑なカムの形状をもってゲートの開き始めから閉じるまでの動作変化の態様を規定しているとはいえるものの、このことが直ちにゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を変更できるように任意に設定することに結びつくものではないから、この主張は妥当でない。
さらに、同弁駁書において、自動機械において「被駆動部材の刻々の動作変化をモータに接続されたカムの形状をもって設定すること」は甲第73号証ないし甲第75号証から周知技術であるといえ、組合せ計量装置は自動機械の一種であるから、かかる周知技術を踏まえれば、引用例1には「底蓋7、8の開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化がカム17、18のそれぞれの形状をもって設定されている」ことを把握することができる旨主張している。
そこで検討するに、組合せ計量装置のホッパゲートの開閉動作には、ゲートの開度や開閉速度といったゲートに特有の動作が要求されることから、自動機械における制御技術が直ちにそのまま組合せ計量装置のホッパゲートの開閉動作の制御技術に適用できるということはできず、また、引用例1に示されたカム17、18は上記したように、リンク15、16と協働してモータの回転運動を底蓋すなわちゲートの開閉運動に変換させるための運動変換機構として用いられ、その結果、モータの回転運動を繰り返し開閉するゲートの往復運動に置き換えているものとして作用しているものであり、してみると引用例1の第3図にはかかる動作を実現するための形状が偏心カムとして略楕円形状に図示されているに過ぎないとみるべきであるから、この主張も妥当でない。

・相違点イについて
引用発明1においては、「モータは一組のプールホッパー5及びその下方に配設された計量ホッパ6毎に設けられている」ことから、モータはプールホッパー5及び計量ホッパ6の各底蓋7、8の開閉に共用されるものであり、モータの回転に応じて底蓋7が開→閉し、同時に底蓋8は閉→開するという動作を行うに過ぎない。
そして、組合せ計量装置においてゲートの刻々の動作変化を実現するためのモータを複数種類のホッパ毎に設けることは、前記「第2 4 各証拠方法の記載事項」及び前記「第3 3 各証拠方法の記載事項」に説示したことからみて、いずれの甲号各証にも示されていない。
これに対し、本件特許発明においてモータはホッパ毎に設けられていることから、「ホッパゲートの開度指定やスピード変更は、全てのホッパを対象にして一括して設定することもできれば、個々のホッパ毎に個別に指定することもできる」(特許審決公報10頁28?29行)との作用効果を奏するものである。
すなわち、本件特許発明は、「モータはホッパ毎に設けられている」ことを前提に、ホッパゲートが所定の動作変化を行うべくその対象となるホッパを指定することにより、指定されたホッパゲートは所定の動作変化を行うことができたものということができる。
そして、「例えば、第4図(b)に示すようなメッセージを表示させて、ホッパ毎に個別に指定しても良い。このように個別に指定できるようにすると、例えば、特開昭58-223718号公報に開示されているような、所謂親子計量において有効となる。即ち、親機と子機とでは、それぞれ動作スピードが異なるし、又、ホッパへの供給量も異なるので、それぞれに適したスピードとゲート開度を指定することによって最適制御を行わせることができる。」(特許審決公報10頁30?34行)とあるように、いわゆる親子計量への適用にあたっては、親機と子機とでホッパゲートの動作変化をそれぞれ適した開度や開閉スピードに設定できるとの作用効果を奏するものであり、また、種類の異なるホッパ毎に、すなわち、例えばプールホッパ毎や計量ホッパ毎に、ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を任意に設定できるので、種類の異なるホッパ間における開閉スピードの最適化を図ることも可能となるとの作用効果をも奏するといえる。
したがって、引用発明1及び甲号各証に記載された周知技術に基づいて前記相違点イの構成とすることは当業者といえども容易に推考し得たとすることはできない。
しかも、本件特許発明と引用発明1とは上記相違点ア及びイに加えて相違点ウにおいても相違する。
よって、本件特許発明は引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基づいて当業者が容易に推考し得たものであるとすることはできない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件特許発明は引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることができず、よって、本件特許は同法第123条第1項第2号により無効とすべきものとすることはできない。

3 無効理由1について
上記「第6 2 無効理由3について」で説示したように、本件特許発明は引用発明1及び引用発明2並びに周知技術に基づいて当業者が容易に推考し得たものであるとすることができないのであるから、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に推考し得たものであるとすることができないというべきである。
また、本件特許発明は引用発明1と上記相違点アないしウにおいて相違するから、本件特許発明は引用発明1と同一であるということもできない。

以上のとおり、本件特許発明は引用発明1と同一ではなく、また、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないとすることができず、よって、本件特許は同法第123条第1項第2号により無効とすべきものとすることはできない。

4 無効理由2について
(1)引用例3の記載事項及び引用発明
無効理由2の主引用例であって、引用例3である特開昭60-238722号公報(甲第4号証)には、次の事項(a)?(g)が図面とともに記載されている。
(a)「この発明は、第2図に示すように連続的に供給する物品の供給量を供給制御信号の大きさに応じて制御する供給装置4と、この供給装置4から供給された物品を計量する計量部6と、この計量部6の計量信号を予め定めた多数の設定重量と比較し、上記各設定重量を上記計量信号が超えるごとにそれぞれ大きさが異なる上記供給制御信号を生成する比較部8とを備えた構成である。このように構成した定量秤では、計量部6の計量信号と多数の設定重量とを比較部8で比較し、計量信号が各設定重量を超えるごとに比較部8が生成する供給制御信号に基づいて物品供給装置4からの物品供給量が制御される。」(公報第2頁左上欄7行?19行)
(b)「供給装置4は、供給制御信号の大きさに応じて供給量を調整するものであるから、供給装置に収容されている物品の種類が変更されて、供給流量を変更する場合も、供給制御信号の大きさを変えるだけでよく、非常に簡単に行なえる。」(公報第2頁右上欄4行?8行)
(c)「第3図において、供給装置10は、溜めホツパ12を有する。この溜めホツパ12の下端開口には投入ゲート14がその下端開口を開閉するように矢印16方向に駆動軸18を中心として回動可能に設けられている。この投入ゲート14の駆動軸18は、変速ギヤ20を介してサーボモータ22の回転軸に結合され、この回転軸にはポテンシヨメータ24も結合されている。このポテンシヨメータ24の出力は、サーボアンプ26に入力されている。このサーボアンプ26にはD/A変換器28から出力も供給されている。サーボアンプ26は両入力の電位差が零になるようにサーボモータ22を駆動する。これによつて、D/A変換器28の出力に応じた量だけ、投入ゲート14が開かれる。」(公報第2頁右上欄10行?同左下欄3行)
(d)「次に第4図のフローチヤートに基づいてマイクロコンピユータ40の各機能を説明する。まず、ステツプ46において、キースイツチ48を用いて流量GA乃至GB、切替重量WA乃至WEをそれぞれ設定する。・・・入力されると、ステツプ52に移り、流量GAをD/A変換器28に供給する。これによって、上述したようにD/A変換器28からの出力に応じて投入ゲート14が開かれ、溜めホツパ12から流量GAで物品が計量ホツパ30に投入される。次にステツプ54において、A/D変換器38のデイジタル計量信号Wが設定重量WA以上であるか否か判断し、以上でなければステツプ54を繰返し、以上であればステツプ56に移り、流量GBをD/A変換器28に供給する。これによって投入ゲート14の開度が変化し、流量がGBになる。・・・そして、ステツプ70においてデイジタル計量信号Wが設定重量WE以上であるか否か判断し、以上でなければステツプ70を繰返し、以上であればステツプ72においてD/A変換器28に供給停止信号を供給する。これによって、投入ゲート14が閉じられ、物品の供給が停止される。ここまでが、比較部として機能する。第5図にここまでの計量信号の変化を示す。」(公報第2頁左下欄18行?同第3頁左上欄18行)
(e)「上記の実施例ではGA乃至GE、WA乃至WEを全て設定したが、第6図に示すように最初と最後の流量GA、GE及び最初と最後から2番目と最後の切替重量WA、WD、WEだけを設定し、これらの間の流量、切替重量はマイクロコンピユータ40で演算してもよい。」(公報第3頁右上欄12行?17行)
(f)「上記の実施例ではロードセル32、32を計量ホツパ30に設けたが、溜めホツパ12側に設けてもよい。」(公報第3頁左下欄1行及び2行)
(g)「この実施例では駆動部にサーボモータを用いたが、その代わりにパルスモータポジシヨナー、多点位置決めシリンダ等を用いてもよい。」(公報第3頁左下欄9行?12行)

以上、記載事項(a)ないし(g)及び第2図ないし第5図を総合勘案すると、引用例3には次の発明が記載されていると認める。
「被計量物を貯蔵し排出する溜めホツパ12と、
該溜めホツパ12の排出口に設けられた投入ゲート14と、
該投入ゲート14を変速ギア20を介して開閉駆動するモータとを備えた定量秤であって、
前記モータは溜めホッパ12に設けられたパルスモータポジシヨナーであり、前記パルスモータポジシヨナーにより投入ゲート14を開閉駆動する、溜めホッパ12について、前記投入ゲート14の開き始めから閉じるまでの動作変化を流量GA乃至GE及び切替重量WA乃至WEとしてマイクロコンピュータ40に任意に設定するキースイツチ48と、
溜めホッパ12について、計量された被計量物に係る計量信号Wと該切替重量WA乃至WEとを順次比較して、各切替重量WA乃至WE以上となる毎に対応する流量GA乃至GEに相当する信号に応じてパルスモータポジシヨナーを駆動するマイクロコンピュータ40及びD/A変換器28とを設け、
上記被計量物の種類が変更されて供給流量が変更される場合も、上記投入ゲート14の開度を任意に制御できるようにした
定量秤。」(以下、「引用発明3」という。)

(2)対比
本件特許発明と引用発明3とを対比する。
引用発明3の「溜めホツパ12」、「投入ゲート14」、「パルスモータポジシヨナー」、「キースイツチ48」、「マイクロコンピユータ40」、「駆動する」、「マイクロコンピュータ40及びD/A変換器28」及び「上記被計量物の種類が変更されて供給流量が変更される場合も、・・・前記投入ゲート14の開度を任意に制御できる」は、
本件特許発明の「ホッパ」、「ゲート」、「パルスモータ」、「入力手段」、「テーブル」、「制御する」、「制御手段」及び「被計量物の種類や供給量に応じて、・・・前記ゲートの動作を任意に制御できる」にそれぞれ相当する。
また、引用発明3の「変速ギア20」も、本件特許発明の「リンク機構」も、共に「伝達機構」である点で共通する。
さらに、引用発明3の「定量秤」も、本件特許発明の「組合せ計量装置」も、共に「計量装置」である点で共通する。

してみると、両者は以下の点で一致し、その他の点で相違する。
(一致点)
「被計量物品を貯蔵し排出するホッパと、
ホッパの排出口に設けられたゲートと、
ゲートを伝達機構を介して開閉駆動するモータとを備えた計量装置であって、
前記モータは、ホッパに設けられたステップモータであり、前記ステップモータよりゲートを開閉駆動する、ホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの開き始めから閉じるまでの動作変化をテーブルに任意に設定する入力手段と、
ホッパについて前記ステップモータを制御する制御手段とを設け、
被計量物の種類や供給量に応じて、ホッパについての前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とする
計量装置。」

(相違点)
ア ゲートの開き始めから閉じるまでの動作変化を実現する手段について、
本件特許発明は、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化をステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、・・・設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する制御手段」を設けることによりゲートの刻々の動作変化を任意に実現できるのに対し、
引用発明3は、「投入ゲート14(ゲート)の開き始めから閉じるまでの動作変化を流量GA乃至GE及び切替重量WA乃至WEとしてマイクロコンピュータ40(テーブル)に任意に設定するキースイツチ48(入力手段)と、・・・計量された被計量物に係る計量信号Wと該切替重量WA乃至WEとを順次比較して、各切替重量WA乃至WE以上となる毎に対応する流量GA乃至GEに相当する信号に応じてパルスモータポジシヨナーを駆動(制御)するマイクロコンピュータ40及びD/A変換器28(制御手段)」によりゲートの動作変化を実現している点。

イ 伝達機構について、
本件特許発明は、「リンク機構」を用いているのに対し、
引用発明3は、「変速ギア20」を用いている点。

ウ モータについて、
本件特許発明は、モータは複数種類のホッパ毎に設けられているのに対し、
引用発明3では、モータは溜めホッパ12にのみ設けられている点。

エ 入力手段について、
本件特許発明は、「入力手段はコントロールパネルに含まれて」いるとしているのに対し、
引用発明3ではそのことが明らかでない点。

オ 計量装置について、
本件特許発明は、「組合せ演算の結果選択されたホッパ」とあるように「組合せ計量装置」であるのに対し、
引用発明3は、単なる定量秤であるにとどまる点。

(3)当審の判断
そこで、上記相違点アないしオのうち、まず、主たる相違点である相違点ア及びイについて検討する。
・相違点アについて
本件特許発明において、上記「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化をステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、・・・設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する制御手段」との構成を採用したこと、すなわち、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記ステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定し、・・・設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する」ようにしたことの技術的意義について検討する。
本件特許発明において、上記した「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記ステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定し、・・・設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する」ようにしたのは、訂正明細書等のゲートの開き始めから閉じるまでのゲートの動作変化を例示する第2図、第3図及びこれらに対応して作成されたモータの刻々の動作特性値を表す第1表のテーブル等を参酌すれば、ゲートをできるだけ速く開放させて、被計量物品の排出スピードを速めたり、或は、ゲートの急激な開閉運動による衝撃音を和らげるために、ゲートの動作としてその始めと終わりを指数関数的に立ち上げ、或は、収束させることを目的としたものである。
そのために、本件特許発明は「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記ステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定」するとあるように、ゲートの開き始めから閉じるまでの全期間について、ゲートの動作が各期間t毎に「等速」、「漸次減速」、「停止」または「漸次増速」等の種々の動作になるよう、各期間t毎に一つ以上の区間iを設定し、区間i毎にゲートの開度や速度等の動作変化を任意に設定し得るように、モータのパルス周期(Ti)、パルス数(Pi)、回転方向(Fi)といった「モータの動特性データ」を任意に設定するようにしたものである。
そして、本件特許発明においては、「設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する」ことにより、設定された刻々の動作変化とおりの動作変化となるようゲートが制御されるものである。
これに対して、引用発明3は、「投入ゲート14(ゲート)の開き始めから閉じるまでの動作変化を流量GA乃至GE及び切替重量WA乃至WEとしてマイクロコンピュータ40(テーブル)に任意に設定するキースイツチ48(入力手段)と、・・・計量された被計量物に係る計量信号Wと該切替重量WA乃至WEとを順次比較して、各切替重量WA乃至WE以上となる毎に対応する流量GA乃至GEに相当する信号に応じてパルスモータポジシヨナーを駆動(制御)するマイクロコンピュータ40及びD/A変換器28(制御手段)」とあるように、この点に対応した、引用例3の2頁左下欄4行から3頁左上欄18行の記載及び第3図から第5図の記載を参酌すれば、流量GA乃至GE及び切替重量WA乃至WEをキースイツチ48によりマイクロコンピュータ40に設定しておき、計量された被計量物に係る計量信号Wと該切替重量WA乃至WEとをマイクロコンピュータ40で順次比較し、計量信号Wが切替重量WA乃至WEをそれぞれ超える毎に被計量物の流量がGAから順次GB、GC、・・・GEとなるよう、溜めホッパ12の投入ゲート14の開度をパルスモータポジショナー22の駆動により段階的に小さくしていき、最終的に投入ゲート14を閉じるようにしたものである。
してみると、引用発明3において投入ゲート14の開度が切り替わる契機は被計量物に係る計量信号Wが所定の切替重量WA乃至WEになった時点であり、投入ゲート14の開度の制御は、被計量物の重量に係る計量信号Wに基づいたフィードバック制御であって、投入ゲート14の開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化は、供給される物品の種類、すなわち、密度、大きさ、または、粘性等に応じて異なるように制御されるものであることから、引用発明3の上記フィードバック制御は予めゲートの刻々の動作変化を設定することが予定されていない制御であるといえる。
したがって、甲第9号証等により「被駆動部材の刻々の動作変化をモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定すること」は、本件特許の出願前ステッピングモータを用いた制御技術において一般に周知であったけれども、当該周知技術はいわゆるフィードフォワード制御に属するものであって、予めステッピングモータの動特性を設定することによって制御対象の刻々の予定された動作変化を規定しようとするものであるところ、これに対して、引用発明3は上記フィードバック制御に属するものであって、ゲートの開閉動作の制御は予めゲートの刻々の動作変化を規定することが予定されていない制御であり、上記周知技術のフィードフォワード制御と引用発明3のフィードバック制御とは全く異なる制御方式であることから、かかる周知技術をそのまま引用発明3のゲートの開閉動作の制御に適用することは阻害されるというべきである。
そして、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記ステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する」ものである本件特許発明にあっては、ゲートの開閉動作の制御はいわばフィードフォワード制御ということができ、引用発明3とは用いられているゲートの開閉動作の制御方式が全く異なるものであり、例えばゲートの開き始めから閉じるまでに要する時間を予め設定することができる等の訂正明細書等に記載の作用効果を奏するものである。
したがって、引用発明3に前記周知技術を適用して前記相違点アの構成とすることは当業者といえども容易に推考し得たとすることができない。

・相違点イについて
組合せ計量装置においてゲートの刻々の動作変化を実現するためのモータを複数種類のホッパ毎に設けることは、前記「第2 4 各証拠方法の記載事項」及び前記「第3 3 各証拠方法の記載事項」に説示したことからみて、いずれの甲号各証にも示されていない。
これに対し、本件特許発明においてモータは複数種類のホッパ毎に設けられていることから、「ホッパゲートの開度指定やスピード変更は、全てのホッパを対象にして一括して設定することもできれば、個々のホッパ毎に個別に指定することもできる」(特許審決公報10頁28?29行)との作用効果を奏するものであることは、前記「第6 2無効理由3について(4)当審の判断 ・相違点イについて」で説示したとおりである。。
したがって、引用発明3及び甲号各証に記載された周知技術に基づいて前記相違点イの構成とすることは当業者といえども容易に推考し得たとすることはできない。
しかも、本件特許発明と引用発明3とは上記相違点ア及びイに加えて相違点ウないしオにおいても相違する。
よって、本件特許発明は引用発明3及び周知技術に基づいて当業者が容易に推考し得たものであるとすることはできない。
また、本件特許発明は引用発明3と上記相違点アないしオにおいて相違するから、本件特許発明は引用発明3と同一であるということもできない。
(請求人の主張について)
請求人は、平成19年12月10日付け弁駁書や平成20年2月14日の口頭審理(口頭審理陳述要領書を含む)において、引用例3に記載のものも、「ゲート開度と流量とは正確な対応関係にあるから、ゲートの開度と切替重量とを設定すればゲートの刻々の動作変化は一意に定まることになり、したがって、ゲートの刻々の動作変化を時間経過に応じて任意に設定できることは明らかであるから、本件特許発明と異なるところはない。」旨主張している。
そこで検討するに、引用例3において、ゲートの開度と流量との間に正確な対応関係があったとしても、いつ所定の切替重量に達するのかは、供給される物品の種類に依存するものであることは先に説示したとおりである。
したがって、ゲートの開度と切替重量とを設定したことにより、結果的にゲートの動作変化が実行されたことになるが、このことをもってゲートの刻々の動作変化を時間経過に応じて任意に設定できるとする請求人の主張は妥当でない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件特許発明は引用発明3と同一ではなく、また、引用発明3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、特許法第29条第1項又は第2項の規定により特許を受けることができないとすることができず、よって、本件特許は同法第123条第1項第2号により無効とすべきものとすることはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由はいずれも理由のないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては本件特許を無効とすることができず、また、先の審決の理由によっても本件特許を無効とすることができない。
また、本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
組合せ計量装置
(57)【特許請求の範囲】
1.被計量物品を貯蔵し排出する複数種類のホッパと、各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲートと、各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータとを備えた組合せ計量装置であって、指定されたホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記モータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、組合せ演算の結果選択されたホッパについて設定されたゲートの動作変化に基づいて前記モータを制御する制御手段とを設け、前記入力手段はコントロールパネルに含まれており、被計量物の種類や供給量に応じて、前記指定されたホッパについての前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とする組合せ計量装置。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、ホッパゲートの開閉をモータにより自由に制御できるようにした計量装置に関する。
(従来の技術)
計量装置には種々のホッパが用いられているが、第9図には組合せ計量装置Aの概略構成が示されている。図において、被計量物品は、分散テーブルa、供給トラフb、プールホッパdを介して計量ホッパeに供給され、ロードセル等の重量検出器により重量が計量される。ハウジングcは、分散テーブルa、供給トラフbを支持している。
計量ホッパで計量された被計量物品は、外側シュートf、または内側シュートgよりタイミングホッパh、jに供給され、下側シュートiまたはkより排出される。
このような計量装置のホッパゲートを開閉するアクチュエータとしては、特開昭59-74092号公報に開示されたエアシリンダによるものや、実開昭58-37520号公報、実開昭58-169532号公報等に開示されたモータによるもの等が知られている。
(発明が解決しようとする問題点)
ところが、これら従来のアクチュエータは、ゲートの開閉を自由に、かつ細かに制御することができないので、種々の問題が生じていた。即ち、
(1)ホッパに供給される毎回の供給量が第10図のように僅かな場合は、ゲートを半開にするだけで直ちに排出されるにもかかわらず、従来のアクチュエータでは、ゲートを必ず全開にしなければならなかったので、ゲートの開閉周期の短縮による計量速度の向上は望めなかった。
(2)ゲートの開閉リンクの摩耗等によってクリアランスが拡大するとゲート開閉時の騒音が大きくなるが、従来のアクチュエータでは、このクリアランスを補正するような動作特性の変更、例えばゲートが閉じる直前のスピードをより遅くするような変更ができなかった。
(3)エアシリンダを使用するものでは、各ホッパのゲート開閉スピードを個別に変えることは容易であるが、逆に全てのスピードを同じに調節することは難かしいので、計量スピードは、ゲート開閉のスピードが最も遅いものに合さなければならないという難点があった。又、エアシリンダを使用するものでは、特性の経時変化が大きいので、メンテナンスを欠かすことはできず、整備のための時間とコストが多くかかるという問題があった。
そこで、本発明はこのような従来技術の問題点の解消を目的とした計量装置を提供するものである。
(問題点を解決するための手段)
本発明の計量装置は、被計量物品を貯蔵し排出する複数種類のホッパと、各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲートと、各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータとを備えた組合せ計量装置であって、指定されたホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記モータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、組合せ演算の結果選択されたホッパについて、設定されたゲートの動作変化に基づいて前記モータを制御する制御手段とを設け、前記入力手段はコントロールパネルに含まれており、被計量物の種類や供給量に応じて、前記指定されたホッパについての前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とするものである。
(作用)
本発明の計量装置は、ホッパゲートを開閉駆動するモータの動特性データを、被計量物品の種類や供給量に応じて予めテーブルに、パルス周期、パルス数、回転方向等に関して設定しておき、該テーブルの情報に応じてホッパゲートを開閉制御するので、ゲート開度を被計量物の供給量に応じて任意に調整でき、計量スピードも任意に変えることができる。また、前記モータの動特性データを外部記憶装置に複数記憶し、必要に応じて切り替えられるので、複数の被計量物のデータを記憶しておき被計量物が変わったときに迅速にデータの変更ができる。
(実施例)
以下、図により本発明の実施例について説明する。第1図は、本発明の概略構成を示すブロック図である。
図において、1はコンピュータでタイマ2と接続され、また、入力装置や表示装置を含むコントロールパネル3と通信ラインで接続される。コンピュータの出力指令は、ドライバ4を介してステップモータ5に送出され、ステップモータは図示しないリンク機構を介してホッパのゲートと連結されてホッパ6のゲートを開閉制御する。コンピュータとコントロールパネルを接続する通信ラインには、他のメモリから後述するテーブルデータをロードする。
第2図は、ステップモータの動作サイクル図であり、例えば、ステップモータを100パルスドライブするとホッパゲートが半開となり、200パルスドライブしたときにホッパゲートが全開となるように設定されているとする。
このようなステップモータを例えば、第2図のように、
t_(1) 期間は等速
t_(2) 期間は漸次減速
t_(3) 期間は停止
t_(4) 期間は逆方向に漸次増速
t_(5) 期間は逆方向に等速
t_(6) 期間は逆方向に漸次減速
となるように動作させる場合、第2図に対応させた第3図から第1表のテーブルを作ることができる。但し、このテーブルは、ホッパゲートの半開を基準に作成している。

ここで、第1表のようなテーブルを基に、各パラメータ(Ti、Pi、Fi)の定数を、入力装置を用いて、予めコンピュータに登録しておき、ホッパゲートの開度設定に際しては、例えば、第4図(a)に示すようなメッセージを表示装置に表示させて、開度、周期を指定する。そして、例えば開度が100%、周期も100%に指定された時は、パルス周期(Ti)の各定数をそれぞれ1/2に、パルス数(Pi)の各定数をそれぞれ2倍にした新たなテーブルをコンピュータ内部で作成して記憶する。これにより、変更後のテーブル情報は、第2図の点線で示す全開の動作曲線に対応したものとなる。同様に、開度が75%であれば、Tiの各定数は3/4に、Piの各定数は4/3倍にそれぞれ変更され、又、周期が200%に指定された時は、パルス周期(Ti)の各定数はそれぞれ2倍に変更される。
但し、以上の例は、半開の場合を基準にしたものであって、全開のテーブル情報を予めコンピュータに登録した場合は、開度指定に伴う各パラメータ(Ti,Pi)の倍率は異なって来る。即ち、開度100%と指定された時は、各パラメータの定数はそのままで良いが、開度が50%に指定された時は、パルス周期(Ti)の各定数は2倍に、パルス数(Pi)の各定数は、それぞれ1/2に変更される。
こうして、ステップすなわち、ゲートの開閉スピード、加速度、開度を計量物品の種類や貯蔵量に応じたそれぞれのモータの動作特性値が作成され記憶されると、コンピュータは、この情報に基づいてステップモータを駆動する。
次に、テーブル情報を基にした制御動作の一例を第5図フローチャートにより説明する。
(1)コンピュータは、イニシャル処理を実行した後、テーブルから最初のパルス周期T_(1)=0.67をリードして、タイマ(外部タイマ或は内部のソフトタイマ)にセットする(ステップS_(1)?S_(3))。
(2)0.67msec経過でタイマがタイムアップになると、ステップモータを正方向(+)に1ステップ回転させるパルスを作ってドライバに出力し、次に出力した回数、即ちパルス数(Pi)を1カウントして、その値が89に達したか否かをチェックする(ステップS_(4)?S_(8))。
(3)未達成であれば、Piが89になるまで、上記(1)→(2)の処理を繰り返して、0.67msec毎にステップモータを1ステップ正方向(+)に回転させて行く。こうして、Piが89になると、
(4)次にコンピュータは、パルス周期T_(2)=1.2msecをリードして、前述同様に(1)、(2)に対応する処理を繰り返して行く(ステップS_(9)、S_(2)?S_(8))。
(5)ステップS_(5)において、回転方向が正方向(+)でない場合には、パラメータFiが0でないことを確認して、ステップモータを負方向(-)に1ステップ回転させるパルスを形成する(ステップS_(10)、S_(11))。
以後、こうした手順を順次繰り返して第2図に示すような動作特性を描かせる所定の制御を実行して行く。
以上の説明のように、本発明によれば、
(1)ステップモータは、ドライバ用のテーブルを作ることによって任意に制御できるので、ホッパゲートをできるだけ速く開放させて、排出スピードを速めたり、或は、ゲートの急激な開閉運動による衝撃音を和らげるために、運動の始めと終わりを指数関数的に立ち上げ、或は収束させるようにして、騒音を押えることができる。
(2)又、粘着性のある被計量物を計量する場合は、ホッパ内面やゲートへの被計量物の付着が問題となるがこのような場合は第7図のようにゲートが開ききった時に、ステップモータを微小期間、微小ステップ幅だけ正転、逆転させてゲートに微振動を与え、これによって、被計量物の付着を防止することもできる。
(3)ホッパゲートの開度指定やスピード変更は、全てのホッパを対象にして一括して設定することもできれば、個々のホッパ毎に個別に指定することもできる。
例えば、第4図(b)に示すようなメッセージを表示させて、ホッパ毎に個別に指定しても良い。このように個別に指定できるようにすると、例えば、特開昭58-223718号公報に開示されているような、所謂親子計量において有効となる。即ち、親機と子機とでは、それぞれ動作スピードが異なるし、又、ホッパへの供給量も異なるので、それぞれに適したスピードとゲート開度を指定することによって最適制御を行わせることができる。
ところで、計量ホッパは、計量中においてはアクチュエータに連結されたレバーと分離されていなければならないので、ゲートが閉じた状態では、レバーとゲート開閉リンクのローラとの間には第9図Bの部分を示した第8図のように所定のクリアランスが設けてある。
このためゲートを開放させる指令を受けてもレバーがローラに当接してゲートが開き始めるまでには、若干の遅れ(50msec程度)が発生する。これが計量スピードを遅らせる1つの原因となっていたが、この発明では、この応答遅れをなくすことができる。
次に、このような本発明の制御について、第6図のフローチャートにより説明する。
計量中は他の処理例えば、入出力装置からの信号をチェックし、その信号に基づいた処理を行ない(ステップP_(2))、レバーをローラから退避させて、ローラとの間に所定のクリアランスを設けておくが、計量が終ると、直ちにステップモータを微小ステップ数だけドライブして、レバーをローラに軽く接触させておく(ステップP_(1)、P_(3))。この場合、ゲートの開閉リンクには若干の遊びがあるので、ゲートは閉じたままである。そして、組合せ演算の結果、選択されて排出指令を受けると、ステップモータを直ちにドライブして、レバーにより、応答遅れなくローラをプッシュしてゲートを開放させる(ステップP_(4)?P_(6))。そして、ゲートの閉鎖サイクルでは、レバーとローラとの間に所定のクリアランスが生じる初期位置まで、ステップモータの逆回転でレバーを引き戻す(ステップP_(7))。また、組合せ選択されなかった計量ホッパに対しても、次の計量に備えて、レバーを初期位置まで引き戻しておく。
こうした制御は、ステップモータをどのようにドライブするかの動作曲線を前述のように描き、これに基づいてデータを設定してテーブルを登録しておくことにより、容易に実現できる。
以上、発明の主旨をその特定された実施例について説明したが、既に述べたところに基づく本発明についての変形あるいは修正は、種々に可能であることが明らかである。
(発明の効果)
以上説明したように、本発明によれば次のような効果が得られる。
(1)ホッパの供給量に応じてゲート開度を任意に調整することができるので、供給量に応じて計量スピードを変えることができる。
(2)ゲート開閉の動作特性を入力装置で簡単に変えることができるので、設計の自由度が増し、あらゆる被計量物の性状に応じたゲート開閉制御を行なうことができる。特に粘着性のある被計量物に対しては、ゲートを開放した姿勢でゲートに微振動を与えることができるので、付着による計量誤差をなくすことができる。
(3)各ホッパ毎に任意に開閉スピードを変えることができるので、親子計量のような特殊な計量方式のものにも使用でき、又、各ホッパの開閉スピードを異ならせることにより特開昭58-41324号公報のような時間差排出を行なわせることもできる。さらには、上部分散供給部をパーティションで複数に分割して、各々に種類の異なる被計量物を供給して所謂ミックス計量(特開昭58-19516号公報)する場合にも有効となる。
(4)ゲートをどのように開閉させるかは、データとして登録しておくことができるので、実開昭59-27425号公報に示すように、被計量物の性状に応じた最適なゲート開閉データを被計量物毎にメモリに登録しておき、被計量物を指定すれば、登録された所定のデータが呼び出されて最適なゲート開閉を行なわせることができる。又、目標重量値の大小に応じても同様にできる。
(5)ゲート開閉リンクの摩耗によってゲート開閉時の騒音が大きくなっても、ゲート開閉特性をデータの変更によって調整することにより簡単に騒音を押えることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の概略構成を示すブロック図、第2図、第3図はホッパゲートの動作特性図、第4図(a)、(b)は説明図、第5図、第6図はフローチャート、第7図はホッパゲートの動作特性図、第8図は説明模式図、第9図は組合せ計量装置の概略構成図、第10図は説明図である。
1……コンピュータ、2……タイマ、3……コントロールパネル、4……ドライバ、5……ステップモータ、6……ホッパ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-11-27 
結審通知日 2008-06-05 
審決日 2008-06-18 
出願番号 特願昭61-272685
審決分類 P 1 113・ 841- YA (G01G)
P 1 113・ 832- YA (G01G)
P 1 113・ 113- YA (G01G)
P 1 113・ 121- YA (G01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 榮永 雅夫  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 江塚 政弘
山下 雅人
登録日 1997-08-08 
登録番号 特許第2681104号(P2681104)
発明の名称 組合せ計量装置  
代理人 伊原 友己  
代理人 藤岡 宏樹  
代理人 速見 禎祥  
代理人 井上 周一  
復代理人 佃 誠玄  
代理人 伊原 友己  
代理人 速見 禎祥  
代理人 金尾 基樹  
代理人 加古 尊温  
代理人 藤岡 宏樹  
代理人 木村 広行  
代理人 岩坪 哲  
代理人 加古 尊温  
復代理人 古川 安航  
代理人 吉村 雅人  
代理人 岩坪 哲  
代理人 吉村 雅人  
代理人 三山 峻司  
代理人 角田 嘉宏  

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