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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1208530 |
審判番号 | 不服2007-24968 |
総通号数 | 122 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-02-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-09-11 |
確定日 | 2009-12-14 |
事件の表示 | 特願2003- 31777「フィト-エストロゲン、類似体の健康補助剤製造のための使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 2304〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、1993年(平成5年)5月19日(パリ条約による優先権主張1992年5月19日 オーストラリア)を国際出願日とする出願の一部を分割して出願したものであって、その請求項1に係る発明は、平成19年5月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認められる。 「ゲニステイン、ダイドゼイン、ビオカニンA、ホルモノネチン及びこれらのグリコシドからなる群から選択される2種又はそれ以上の天然に存在するフィトーエストロゲンの健康補助量からなる、月経前症候、閉経期症候、及び/又は、良性乳疾患、の予防もしくは治療のために使用される健康補助剤。」 (以下、「本願発明」という) 2.引用刊行物の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前に頒布された刊行物である特開平1-258669号公報(文献A8;以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(摘示した各記載事項を、以下「記載(a)」などという)。 (a)「大豆抽出液あるいは大豆磨砕物からイソフラボン化合物を製造するに際し、大豆中のβ-グルコシダーゼ活性が最大となるように、浸漬工程、磨砕工程あるいは磨砕後の酵素反応工程のいずれか、あるいは2以上の工程において、大豆あるいは大豆磨砕物を45?55℃に加熱することを特徴とするイソフラボン化合物の製造法。」 (特許請求の範囲) (b)「本発明は大豆からイソフラボン化合物、特にそのアグリコン類を多量に含むイソフラボン化合物の製造法に関するものである。」 (1頁左下欄下から6?4行) (c)「大豆にはダイジン、グリシチン、ゲニスチン、ダイゼイン、ゲニステイン等のイソフラボン化合物が含まれており、その生理活性作用はエストロゲン作用、抗酸化、抗溶血作用、抗菌作用、抗脂血、抗コレステロール作用が知られており、また最近ではガン細胞の分化誘導作用、ガン遺伝子阻害作用等、制ガン効果も確認され、その有用性が注目されている。」 (1頁左下欄下から2行?同頁右下欄6行) (d)「実験例1 脱皮大豆を5倍量の20?80℃の水に6時間浸漬し、その浸漬水と浸漬大豆を直ちに冷却、凍結させる。それを凍結乾燥機にて乾燥、粉末化し、その一定量を80%メタノールで環流抽出し、定容したものの一定量を高速液体クロマトグラフィー(Waters 社209D型)にて分析した。 結果を第1表に示す。・・ 」(2頁右下欄6行?3頁左上欄最下行) (e)「実施例3 低変性脱脂大豆(日清ソーヤフラワー)10kgに50℃の水、50L(注、原文では小文字筆記体)を加え、1時間攪拌した。これをスプレードライにて熱風乾燥し、精製原料を得た。精製原料に対し5倍量の80%熱メタノールによりイソフラボン類を抽出し、減圧乾固して粗イソフラボン画分103 gを得た。これを少量のメタノールに再溶解し、充填剤としてODS-Aタイプ60-01((株)山村化学研究所製)をつめたφ70 mm×100 cmのカラムに通して吸着させた。 次いで、40%のメタノールでフェノール酸やイソフラボン配糖体画分を流出させ、除去し、次いで80%メタノールで溶出し、これを減圧乾固したところ、アグリコン9.5 gを得た。」 (3頁右下欄5?18行) 3.対比・判断 記載(a)、(b)、(e)によれば、引用例には、大豆の抽出液又は磨砕物を原料として所定の工程によりアグリコン類を多量に含むイソフラボン化合物を製造する方法が記載され、記載(c)、(d)によれば、引用例で製造したイソフラボン化合物にはゲニステイン及びダイゼイン(本願発明のダイドゼインに相当)が含まれ、記載(c)によれば、これらイソフラボン化合物の生理活性作用としてエストロゲン作用が知られているから、これらの化合物は植物エストロゲンすなわち本願発明のフィトーエストロゲンに相当し、また大豆抽出物であるから天然に存在するものに該当する。 ここで、本願発明と引用例に記載された製造方法により得られるイソフラボン化合物とを対比すると、両者は、ゲニステイン及びダイドゼインという2種の天然に存在するフィトーエストロゲンを含むものである点で一致し、前者が該フィトーエストロゲンを健康補助量用いた月経前症候、閉経期症候、及び/又は、良性乳疾患、の予防もしくは治療のために使用される健康補助剤であるのに対し、後者が該イソフラボン化合物をどのような用途に使用するか特段に限定を付していない点で相違する。 そこで、上記相違点について以下に検討する。 特開平2-160722号公報(原査定の文献A1;1頁右欄4?15行、2頁右下欄6?7行)にはフラボノイドの遊離型やグルコシドには血小板凝集抑制、血管拡張、抗ヒスタミン、抗炎症、鎮痙、エストロン様、遊離ラジカルのスカベンジャー等の薬理的性質を有すること、このような生理活性を有するフラボノイドは天然物中に存在し、日常の食事中にも微量存在している安全な化合物である点から特定の治療目的に用いることが提案されてきたこと、フラボノイドにはイソフラボン類(ダイゼイン、ゲニステイン、ゲニスチンなど)が含まれることが記載されている。 特開昭60-48924号公報(原査定の文献A4;1頁左欄最下行?2頁左上欄3行)には、骨粗鬆症の原因のうち重要なものは閉経後の女性において卵巣機能の低下によりエストロゲンの分泌が減少することであり、従来の治療剤とされてきたエストロゲン剤と比較し、式(1)の化合物(構造式は省略 Rが水酸基の場合はダイドゼインに相当する。)は緩和なエストロゲン作用を有し、従来のエストロゲン剤のような副作用のないものとして当該疾病の治療に使用できる旨の記載がされている。 一方、卵巣機能の低下によるエストロゲンの分泌減少は骨粗鬆症のみならず、更年期障害(閉経期症候と同義である、熱感、のぼせ、老人性膣炎などの症状を呈するもの)の原因となること、従来は合成エストロゲン剤等により卵巣ホルモンを代償する療法が更年期障害に対する主要な治療法であったことは当業者がよく知るところである(特開昭59-199630号公報(原査定の文献A5))。 そうすると、更年期障害に対しても、骨粗鬆症と同様に緩和なエスロトゲン作用を有するダイドゼインなどのフィトエストロゲンを合成エストロゲン剤に代えて使用すること、その際、副作用が生じない程度の量を検討して使用することは当業者が容易に想到しうる範囲のことである。 そして、ダイドゼインなどのフィトエストロゲンが従来食品として利用されていた大豆中に含まれる成分であることからすると、本願発明のフィトーエストロゲンの健康補助剤としての効果も、当業者の予測の範囲を越える格別なものであるとは認められない。 請求人は参考文献1?8を提出し、イソフラボンは潜在的に有害で重大な副作用に至るものとして知られていたと主張しているが、これらは単にイソフラボンを含有する飼料を大量に摂取する家畜においてみられる現象を報告するにすぎないものであるから、有用な薬理作用を有することが知られているイソフラボンをその適切な量で摂取して利用する試みを阻害するものではなく、したがって、上記判断を左右するものでもない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-19 |
結審通知日 | 2008-05-20 |
審決日 | 2008-06-09 |
出願番号 | 特願2003-31777(P2003-31777) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩下 直人 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
弘實 謙二 谷口 博 |
発明の名称 | フィト-エストロゲン、類似体の健康補助剤製造のための使用方法 |
代理人 | 藤野 清也 |