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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効200580364 | 審決 | 特許 |
無効2008800042 | 審決 | 特許 |
無効200135446 | 審決 | 特許 |
無効2008800285 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 A61K 審判 全部無効 特174条1項 A61K 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K 審判 全部無効 判示事項別分類コード:521 A61K |
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管理番号 | 1209211 |
審判番号 | 無効2007-800108 |
総通号数 | 122 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-02-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2007-06-04 |
確定日 | 2010-01-14 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3835698号発明「経口投与用吸着剤、並びに腎疾患治療又は予防剤、及び肝疾患治療又は予防剤」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3835698号に係る出願は、平成15年10月31日(パリ条約による優先権主張、平成14年11月1日)を国際出願日とする出願であって、平成16年9月13日付けで補正がなされ、拒絶理由の通知に応答して平成17年2月7日付けで補正がなされ、再度の拒絶理由が通知され、平成17年9月22日付けで拒絶査定がなされたが、平成17年10月27日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年11月28日付けで補正がなされ、拒絶理由の通知に応答して平成18年5月15日付けで補正がなされ、再度の拒絶理由の通知に応答して平成18年6月16日付けで補正がなされたものであり、平成18年8月4日に特許権の設定登録がされた。 そして、請求人・テイコクメディックス株式会社により平成19年6月4日に本件特許の請求項1?7に係る発明に対して無効の審判が請求され、平成19年6月11日付けで補足する上申書が提出され、それに対し、被請求人・株式会社クレハにより平成19年8月20日に答弁書が提出され、次いで前記請求人により平成19年11月2日に弁駁書が提出された。 2.本件特許発明 本件特許第3835698号の請求項1?7に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として製造され、直径が0.01?1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m^(2)/g以上であり、そして細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満である球状活性炭からなるが、但し、式(1): R=(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35)) (1) 〔式中、I_(15)は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I_(35)は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I_(24)は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕 で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭を除く、 ことを特徴とする、経口投与用吸着剤。 【請求項2】 全塩基性基が0.40meq/g以上の球状活性炭からなる請求項1に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項3】 非酸化性ガス雰囲気中800℃での熱処理による炭素化収率が40重量%以上のフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として製造される球状活性炭からなる、請求項1又は2に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項4】 フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として製造され、直径が0.01?1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m^(2)/g以上であり、全酸性基が0.40?1.00meq/gであり、全塩基性基が0.40?1.10meq/gであり、そして細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満である表面改質球状活性炭からなるが、但し、式(1): R=(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35)) (1) 〔式中、I_(15)は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I_(35)は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I_(24)は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕 で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である表面改質球状活性炭を除く、 ことを特徴とする、経口投与用吸着剤。 【請求項5】 非酸化性ガス雰囲気中800℃での熱処理による炭素化収率が40重量%以上のフェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として製造される表面改質球状活性炭からなる、請求項4に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする、腎疾患治療又は予防剤。 【請求項7】 請求項1?5のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする、肝疾患治療又は予防剤。」 3.請求人の主張 これに対して請求人は、「特許第3835698号発明の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」との審判を請求し、次の無効理由を主張している。 『本件請求項1?7に係る各特許発明は、特許法第29条第2項に規定された発明に該当するから、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許の願書に添付した明細書の詳細な説明の記載は同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の記載は、同条第6項第1号及び第2号に規定される要件を満たしていないから、同法第123条第1項第4号に該当し、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲についてなされた補正は、同法第17条の2第3項の要件を満たしていないから、同法第123条第1項第1号に該当し、本件特許は無効とすべきものである。』 そして、証拠方法として、下記甲第1号証?甲第9号証を提出している。更に、平成19年6月11日付け上申書では、下記甲第10号証と甲第11号証を追加提出し、平成9年11月2日付け弁駁書では、下記甲第12号証?甲第16号証を追加提出している。 記 甲第1号証:特開平11-292770号公報 甲第2号証:特公昭61-1366号公報 甲第3号証:「フェノール-ホルムアルデヒド樹脂の水蒸気賦活」, 北川浩ら,工業化学雑誌,73巻,10号,1970年, p p.2100-2104 甲第4号証:「フェノール樹脂を原料とする活性炭の製造」,北川浩, 日本化学会誌,No.6,1972年,p p.1144- 1150 甲第5号証:特開2002-308785号公報 甲第6号証:特許第3672200号公報 甲第7号証:特開平7-165407号公報 甲第8号証:「フェノール樹脂廃材を原料とした活性炭の製造」,福元豊 ら,炭素,No.188,1999年,p p.138-142 甲第9号証:「フェノール樹脂繊維を原料とする繊維状活性炭の製造と分 子ふるい特性」,笠岡成光ら,日本化学会誌,No.6, 1987年,p p.990-1000 甲第10号証:「X線分析 基礎分析化学講座24」,昭和47年3月 20日発行,共立出版,pp.52?53、 甲第11号証:「最新の炭素材料実験技術(分析・解析編)」,2001 年発行,サイペック株式会社,pp.156?160,附録 『炭素材料のX線回折法に関する学振法 -人造黒鉛の格 子定数および結晶子の大きさ測定法<改正案>-』 甲第12号証:「化学辞典」、株式会社東京化学同人、1994年発行、 第275?276頁 甲第13号証:日本エンバイロケミカルズ株式会社による2007年7月 13日付けの実験報告書 甲第14号証:「医学大辞典」第17版、株式会社南山堂、1990年発 行、第646頁、第649?650頁、第1469頁、 第1661?1662頁 甲第15号証:特開昭56-28766号公報 甲第16号証:特開昭57-136455号公報 請求書における無効理由の具体的主張の概略は次のとおりである。 (3-1)無効理由1:特許法第29条第2項(特許法第123条第1項第2号) 請求項1に関し、(i)甲第1号証及び甲第2号証の記載に基づいて、(ii)甲第1号証、甲第3号証又は甲第4号証、及び甲第5号証の記載に基づいて、(iii)甲第1号証、甲第5号証、及び甲第7号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、及び、 請求項2に関する特定事項は、甲第5号証の記載に基づいて、また、請求項3に関する特定事項は、甲第3号証、甲第8号証及び甲第9号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、 請求項4に関し、甲第1号証及び甲第5号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得るものであり、 請求項5に関する特定事項は、前記請求項3の場合と同様であり、 請求項6,7に関する特定事項は、甲第1号証または甲第5号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 (3-2)無効理由2:特許法第36条第4項第1号(特許法第123条第1項第4号) 『(i)本件特許の請求項1?7に記載された、「R値が1.4以上の球状活性炭を除く」又は「R値が1.4以上である表面改質球状活性炭を除く」という発明特定事項は、本件特許に関する拒絶査定不服審判において、同日出願の明細書(甲第6号証を参照)との間で特許法第39条第2項の拒絶理由(平成18年3月14 日発送の拒絶理由通知書)を解消するために、平成18年5月15日付の手続補正書により追加された事項である。そして、当該補正の結果、本件特許の明細書に開示された具体的な発明の形態を示す実施例の全ては、請求項1?7に係る発明に含まれないものとなっている。 これは、本件特許の明細書に開示された前記実施例の全てが、前記同日出願の明細書(甲第6号証を参照)の実施例と、R値を開示していない点を除いて全く同一であること、当該同日出願の明細書の実施例に開示された球状活性炭及び表面改質球状活性炭のR値は、いずれも1.4以上であることから明らかである。 また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に開示された球状活性炭又は表面改質球状活性炭の製造方法についての記載は、同日出願の明細書の発明の詳細な説明に記載された球状活性炭又は表面改質球状活性炭の製造方法についての記載と全く同一である。すなわち、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、前記補正により請求項に係る発明に含まれないものとなった、R値が1.4以上の球状活性炭又は表面改質球状活性炭の製造方法しか記載されておらず、R値が1.4未満の球状活性炭又は表面改質球状活性炭の製造方法については全く記載されていない。一方、本件特許の出願時において、球状活性炭又は表面改質球状活性炭のR値を1.4未満とするための製造条件の設定方法等が技術常識であったということもできない。 してみると、技術常識を考慮したとしても、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載からは「R値が1.4未満の球状活性炭」を製造するための如何なる指針も見出すことができず、本件特許の請求項1?7に記載の球状活性炭を製造することができない。 さらに、請求項に係る発明について、発明の詳細な説明には、経口投与用吸着剤として有効に機能した例が一つも示されていない。従って、請求項に係る発明が、経口投与用吸着剤として有効に機能し得ることを推認することもできない。 以上より、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項に記載された物を製造し、使用することができるように記載したものではない。 また、本件特許の特許権者は、本件特許出願の拒絶査定不服審判において、実験成績証明書を提出することにより、R値が1.4未満の球状活性炭の具体的な製造方法及びその経口投与用吸着剤としての有効性を開示している(平成18年5月15日付の手続補足書)。しかしながら、出願時の発明の詳細な説明には、このような球状活性炭の製造方法及び有効性を何ら開示せずに、後から記載外の製造方法及び有効性を開示し、発明の詳細な説明の記載を特許法第36条第4項第1号の要件に適合させることは、発明の公開を前提に特許を付与するという特許制度の趣旨に反し許されないというべきである。 従って、当該実験成績証明書は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載を補足するものとはなり得ないため、結局、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項に記載された物を製造し、使用することができるように記載したものであるとはいえない。 (ii)また、「細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満」の発明特定事項に着目した場合にも、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、以下の理由により特許法第36条第4項第1号の要件を満たさない。 本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例によれば、フェノール樹脂を炭素源として得られた球状活性炭の細孔直径7.5?15000nmの細孔容積は、0.04mL/gか0.06mL/gであり(実施例1?4)、イオン交換樹脂を炭素源として得られた球状活性炭の上記細孔容積は0.42mL/gである(参考例1)。すなわち、実施例には、請求項1?7に記載された球状活性炭のうち、フェノール樹脂を炭素源とし、かつ細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.04mL/g又は0.06mL/gである球状活性炭を得る方法しか記載されていない。また、実施例以外の記載を見ても、どのようにして上記細孔容積を0.06mL/gより大きくし、又は0.04mL/gよりも小さくすればよいのかについての記載は全く存在しない。また、イオン交換樹脂を炭素源として球状活性炭を製造する場合には、どのようにして上記細孔容積を0.25mL/g未満とすればよいのかについての記載は全く存在しない。 さらに、当該発明の詳細な説明の記載からは、イオン交換樹脂を炭素源とした球状活性炭、及びフェノール樹脂を炭素源とした球状活性炭であって細孔容積が0.25mL/g程度に大きいものや0.04mL/gよりも極端に小さいものについては、経口投与用吸着剤として有効に機能することを推認することもできない。従って、本件特許の発明の詳細な説明は、請求項に記載された球状活性炭のうち、実施例に開示された範囲を大きく超える細孔容積を有する球状活性炭やイオン交換樹脂を炭素源とする球状活性炭については、製造し、使用することができるように、明確かつ十分に記載したものではない。』 (3-3)無効理由3:特許法第36条第6項第1号(特許法第123条第1項第4号) 『(i)上述したように、「R値が1.4以上の球状活性炭を除く」という発明特定事項は、手続補正書により追加された事項である。そして、補正の結果、本件特許の明細書に開示された具体的な発明の形態を示す実施例の全ては、特許請求の範囲に含まれないものとなっている。 また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、R値についての具体的な説明が全く存在しない。 従って、当該発明の詳細な説明からは、請求項1に係る経口投与用吸着剤の物性を認識することができないし、請求項1に記載の球状活性炭が、経口投与用吸着剤として有効に機能し得ることを推認することもできない。 以上より、本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 なお、本件特許出願の分割出願(特願2005-342670)の審査において、特許庁は、以下のような判断を示している(拒絶理由通知書(起案日:平成19年1月12日、発送日:平成19年1月16日、発送番号:015225))。 『補正後の実施例1(補正前の参考例1)に記載の活性炭の式R=(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35))で求められる回折強度比(R値)は、特許第3672200号公報の段落[0052]?[0056]の記載から1.69であることから、この活性炭は本願の特許請求の範囲から除かれている。そして、他に、本願の請求項に記載の条件を満たす経口投与用吸着剤は、発明の詳細な説明には具体的に記載されていない。よって、請求項1?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。』 すなわち、特許庁は、当該拒絶理由通知書において、前記分割出願の明細書の実施例に開示された発明を、本件特許出願の同日出願(甲第6号証を参照)の明細書を参照して認定した上で、補正により当該実施例に開示された発明の全てが特許請求の範囲から除かれた場合には、前記分割出願は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たさないとの判断を示している。 また、本件特許権者は、本件特許出願の拒絶査定不服審判において、実験成績証明書を提出することにより、球状活性炭のR値が1.4未満である球状活性炭の製造方法や選択吸着能を開示している(平成18年5月15日付の手続補足書)。しかしながら、既に述べたように本件特許の明細書の発明な詳細な説明には、球状活性炭のR値が1.4以上の球状活性炭についてしか開示されていない。すなわち、当該実験成績証明書は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には実質的に開示されていない発明を初めて開示するものである。 実験成績証明書により発明の詳細な説明の記載内容を補足することについて、裁判所は以下のように判断している(平成17年(行ケ)第10042号)。 『発明の詳細な説明に、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる程度に、具体例を開示せず、本件出願時の当業者の技術常識を参酌しても、特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないのに、特許出願後に実験データを提出して発明の詳細な説明の記載内容を記載外で補足することによって、その内容を特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで拡張ないし一般化し、明細書のサポート要件に適合させることは、発明の公開を前提に特許を付与するという特許制度の趣旨に反し許されないというべきである。』 このように、出願後に実験データを追加することにより、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで拡張ないし-般化することが許されないのだから、まして本件のように、発明の詳細な説明にそもそも開示されていない発明思想を出願後に初めて開示し、当該開示に基いて特許を受けようとすることは到底許されない。 従って、当該実験成績証明書は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載を補足するものとはなり得ないため、結局、本件特許の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。 (ii)また、「細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満」の発明特定事項に着目した場合にも、本件特許の請求項1に係る発明は、以下の理由により36条第6項第1号の要件を満たさない。 上述したように、本件特許の明細書の実施例においては、フェノール樹脂を炭素源として得られ、かつ球状活性炭の細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が、0.04mL/g及び0.06mL/gのものについてしか、経口投与吸着剤として有効であることが確認されていない。これらの球状活性炭は、請求項に記載された細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満の範囲の球状活性炭のうちわずかな部分に過ぎない。また、発明の詳細な説明を見ても、フェノール樹脂を炭素源とし、かつ上記細孔容積が0.04?0.06mL/gという範囲を大きく超える球状活性炭やイオン交換樹脂を炭素源とする球状活性炭が経口投与用吸着剤として有効に機能することを推認し得るような記載はない。 従って、請求項1は、発明の詳細な説明に発明として記載していない範囲について特許請求しようとするものである。 (iii)また、請求項2?7は、請求項1を限定するものであるが、これらの限定は上記不備を解消し得る限定ではないから、これらの請求項に係る発明も同様に発明の詳細な説明に記載されたものではない。』 (3-4)無効理由4:特許法第36条第6項第2号(特許法第123条第1項第4号) 甲第10号証乃至甲第11号証を提示して(上申書参照)、 『上述したように、本件特許の明細書には、R値についての具体的な説明が全く存在せず、R値を求めるために必要な回折強度の測定方法についても記載されていない。ここで、回折強度は、試料の粉砕の程度などの試料の作成方法や試料の厚みなどの測定条件によって変動するものであり、およそ物質の特定において固有値を取り得ないものである(「X線分析 基礎分析化学講座24」,昭和47年3月20日発行,共立出版,pp.52?53(当審注:甲第10号証に相当)、「最新の炭素材料実験技術 分析・解析編」,2001年発行,サイペック,附録『X線回折に関する学振法の改正について -人造黒鉛の格子定数および結晶子の大きさ測定法(改正案)-』(当審注:甲第11号証に相当)など参照)。また、本件特許の出願時には、球状活性炭の回折強度の測定における、試料の作成方法や測定条件が、技術常識であるともいえなかった。 してみると、本件特許の明細書及び出願時の技術常識を参酌しても、本件特許の請求項1及び4に記載されたR値は、具体的にどのような測定方法により測定された回折強度から求められた値であるのか不明確である。従って、本件特許の請求項1?7における「R値が1.4以上である球状活性炭を除く」という発明特定事項によって、請求項から具体的にどの範囲の球状活性炭が除かれるのかも不明確である。 以上より、本件特許の特許請求の範囲は、特許を受けようとする発明を明確に記載したものではない。』 なお、平成19年6月11日付け上申書では、「”回折強度は、試料の粉砕の程度などの試料の作成方法や試料の厚みなどの測定条件によって変動するものである”ことは、甲第10号証の第52頁第1行?第53頁第5行の記載、及び甲第11号証の第156頁の1?4の欄等の記載により支持されておりますので、ご参照下さい。」と説明されている。 (3-5)無効理由5:特許法第17条の2第3項(特許法第123条第1項第1号) 『(i)本件特許の請求項1?7に係る発明は、「R値が1.4以上である球状活性炭を除く」又は「R値が1.4以上である表面改質球状活性炭を除く」との発明特定事項により特定されている。すなわち、請求項1?7は、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみを当該請求項に記載した事項から除外することを明示したいわゆる「除くクレーム」の形式となっている。既に述べたように、この「R値が1.4以上である球状活性炭を除く」又は「R値が1.4以上である表面改質球状活性炭を除く」の発明特定事項は、本件特許に関する拒絶査定不服審判において、同日出願との間の特許法第39条第2項の拒絶理由(平成18年3月14日発送)を解消するために、平成18年5月15日付の手続補正書により、追加された事項である。 ここで、本件特許の請求項1?7には、細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g以下である」との発明特定事項が記載されており、同日出願の請求項5、6、11?15(甲第6号証参照)にはこの発明特定事項が記載されていないが、同日出願の明細書に開示された実施例1?5の物性についての記載(表1)からも明らかなように、この発明特定事項は同日出願に開示された発明に固有の性質を特定するものに過ぎない。 従って、本件特許の請求項1?7に係る発明は、補正前の請求項に係る発明から同日出願の請求項5、6、11?15に係る発明を除いたものに相当する。 (ii)以上の内容を踏まえた上で、平成18年5月15日付の手続補正書によりなされた、請求項に「R値が1.4以上である球状活性炭を除く」又は「R値が1.4以上である表面改質球状活性炭を除く」の発明特定事項を追加し、いわゆる「除くクレーム」とする補正が、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」ともいう。)に記載した事項の範囲内で行うものであるかについて検討する。 審査基準によれば、請求項に係る発明が、先行技術と重なるために新規性等(第29条第1項第3号、第29条の2又は第39条)を失う恐れがある場合に、補正前の請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、当該重なりのみを除く補正は、例外的に、当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものと扱うと記載されている(審査基準第III部第I節4.2(4))。さらに、「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができるのは、先行技術と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有する発明であるが、たまたま先行技術と重複するような場合であるとも記載されている。これは、出願人が出願時に当該重なりについて認識していなかった場合に、明細書等に記載された事項の範囲内で補正を行おうとすると、発明の適正な保護が図れない場合が生じるためである。 従って、補正後の「除くクレーム」は、補正前の請求項に係る発明の主要部を当然に有している必要があり、「除くクレーム」の形式へ補正することにより補正前の請求項に係る発明の大部分が除かれることは許されない。 以下、平成18年5月15日付の手続補正書によりなされた上記補正が、審査基準でいう“例外的に当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものと取り扱われる場合”に該当するかについて検討する。既に述べたとおり、上記補正は、補正前の請求項に係る発明から、同日出願の請求項5、6、11?15に係る発明を全て除くものに相当する。そして、本件特許の補正前の請求項に係る発明は、同日出願の請求項5、6、11?15に係る発明と実質的に同一である。すなわち、上記「除くクレーム」への補正は、補正前の請求項に係る技術的思想を全て除くことにより、技術的思想を何ら開示しない発明について特許を請求することに相当する。これは、「除くクレーム」への補正を例外的に認める上記趣旨に反するばかりか、第三者の実施や研究活動を不当に妨げることにもなり、法目的に反することは明らかである。従って、上記補正を例外的に新規事項の追加に該当しないとする具体的妥当性も見出せない。 従って、本件特許の特許請求の範囲及び明細書について、平成18年5月15日付の手続補正書によりなされた上記補正は、本件特許の当初明細書等に記載した事項の範囲内で行うものとは認められない。』 (3-6)弁駁書における主張 甲第12号証?甲第16号証を提出するとともに、無効審判請求の根拠はいずれも正当なものであることを主張する。 4.被請求人の主張 一方、被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めている。 そして、審判請求人の無効理由1?5は、いずれも全く根拠のないものである旨を主張し、証拠方法として、下記の乙第1号証?乙第10号証を提出している。 記 乙第1号証:特開平10-72266号公報 乙第2号証:特開平5-43345号公報 乙第3号証:真田雄三、鈴木基之、藤本薫編、「新版 活性炭 基礎と 応用」,株式会社講談社,2003年8月10日第8刷発行, p51 乙第4号証:吉澤徳子、他5名「金属酸化物担持型メソ孔性活性炭におけ る微粒子の分散特性」、炭素、1998年、181号、 p8-13 乙第5号証:株式会社クレハ総合研究所・秋田恭弘による2007年8月 10日付けの「実験成績証明書」 乙第6号証:JIS K0131 「X線回折解析通則」、財団法人日本 規格協会発行(規格制定日 平成8年7月1日) 乙第7号証:「人造黒鉛の格子定数および結晶子の大きさ測定法」(炭素 第36巻25頁)、日本学術振興会第117委員会、昭和38 年11月20日発行 乙第8号証:「第十四改正 日本薬局方」厚生労働省、(告示日:平成 13年3月30日) 乙第9号証:株式会社クレハ総合研究所・秋田恭弘による2007年5月 21日付けの「実験報告書」[写し] 乙第10号証:特公昭62-11611号公報 5.甲各号証、乙各号証の記載事項 甲第1号証?甲第16号証及び乙第1号証?乙第10号証には、それぞれ次のような技術事項の記載がある。なお、下線については、原文にあるものの他は当審で付与したものである。 甲第1号証には、活性炭を有効成分とするマトリックス形成亢進抑制剤に関し、以下の事項が記載されている。 (1-i)「【請求項1】 活性炭を有効成分とする、マトリックス形成亢進抑制剤。 【請求項2】 活性炭が球形活性炭である、請求項1に記載のマトリックス形成亢進抑制剤。 【請求項3】?【請求項6】 ・・略・・・ 【請求項7】 活性炭を有効成分とする、マトリックス形成亢進の病態を示す疾患の治療又は予防剤。 【請求項8】 前記疾患が腎臓、心臓、又は肝臓における疾患である、請求項7に記載の治療又は予防剤。」(【特許請求の範囲】参照)、 (1-ii)「【0005】 【発明の実施の形態】本発明の医薬製剤の有効成分である活性炭としては、医療用に使用することが可能な活性炭であれば特に限定されるものではないが、経口投与用活性炭、すなわち、医療用に内服使用することが可能な活性炭が好ましい。前記活性炭としては、例えば、粉末状活性炭又は球形活性炭を用いることができる。粉末状活性炭としては、従来から解毒剤として医療に用いられている公知の粉末状活性炭を用いることができるが、副作用として便秘を引き起こす場合があるので、球形活性炭を用いるのが好ましい。」(段落【0005】参照)、 (1-iii)「【0006】球形活性炭としては、医療用に内服使用することが可能な球形状の活性炭であれば特に限定されない。この球形活性炭は吸着能に優れていることが好ましい。そのため、前記球形活性炭は、好ましくは直径0.05?2mm、より好ましくは0.1?1mmの球形活性炭である。また、好ましくは比表面積が500?2000m^(2)/g、より好ましくは700?1500m^(2)/gの球形活性炭である。また、好ましくは細孔半径100?75000オングストロームの空隙量が0.01?1ml/g、より好ましくは0.05?0.8ml/gの球形活性炭である。なお、上記の比表面積は、自動吸着量測定装置を用いたメタノール吸着法により測定した値である。空隙量は、水銀圧入ポロシメータにより測定した値である。前記の球形活性炭は、粉末活性炭に比べ、服用時に飛散せず、しかも、連続使用しても便秘を惹起しない点で有利である。直径が0.05mm未満の場合は、便秘などの副作用の除去に充分な効果がなく、2mmを超える場合は、服用し難いだけでなく、目的とする薬理効果も迅速に発現されない。球形活性炭の形状は、重要な因子の1つであり、実質的に球状であることが重要である。球形活性炭の中では、後述の石油系ピッチ由来の球形活性炭が真球に近いため特に好ましい。」(段落【0006】参照)、 (1-iv)「【0007】球形活性炭の製造には、任意の活性炭原料、例えば、オガ屑、石炭、ヤシ殻、石油系若しくは石炭系の各種ピッチ類又は有機合成高分子を用いることができる。球形活性炭は、例えば、原料を炭化した後に活性化する方法によって製造することができる。活性化の方法としては、水蒸気賦活、薬品賦活、空気賦活又は炭酸ガス賦活などの種々の方法を用いることができるが、医療に許容される純度を維持することが必要である。 【0008】球形活性炭としては、炭素質粉末からの造粒活性炭、有機高分子焼成の球形活性炭及び石油系炭化水素(石油系ピッチ)由来の球形活性炭などがある。炭素質粉末からの造粒活性炭は、例えば、タール、ピッチ等のバインダーで炭素質粉末原料を小粒球形に造粒した後、不活性雰囲気中で600?1000℃の温度に加熱焼成して炭化し、次いで、賦活することにより得ることができる。賦活方法としては、水蒸気賦活、薬品賦活、空気賦活又は炭酸ガス賦活などの種々の方法を用いることができる。水蒸気賦活は、例えば、水蒸気雰囲気中、800?1100℃の温度で行われる。 【0009】有機高分子焼成の球形活性炭は、例えば、特公昭61-1366号公報に開示されており、次のようにして製造することが可能である。縮合型又は重付加型の熱硬化性プレポリマーに、硬化剤、硬化触媒、乳化剤などを混合し、撹拌下で水中に乳化させ、室温又は加温下に撹拌を続けながら反応させる。反応系は、まず懸濁状態になり、更に撹拌することにより熱硬化性樹脂球状物が出現する。これを回収し、不活性雰囲気中で500℃以上の温度に加熱して炭化し、前記の方法により賦活して有機高分子焼成の球形活性炭を得ることができる。石油系ピッチ由来の球形活性炭は、・・・(後略)。」(段落【0007】?【0009】参照)、 (1-v)「【0011】本発明において有効成分の球形活性炭としては、(1)アンモニア処理などを施した球形活性炭、(2)酸化及び/又は還元処理を施した球形活性炭なども使用することができる。これらの処理を施すことのできる球形活性炭は、前記の石油系ピッチ由来の球形活性炭、炭素質粉末の造粒活性炭、有機高分子焼成の球形活性炭の何れであってもよい。」(段落【0011】参照)、 (1-vi)「【0016】本発明の医薬製剤は、細胞外マトリックスの形成亢進及び/又は線維化の亢進を抑制することができる。従って、本発明の医薬製剤は、ヒトをはじめとする哺乳動物における、細胞外マトリックスの形成亢進及び/又は線維化の亢進の病態を示す疾患の治療又は予防に有用である。細胞外マトリックスの形成亢進及び/又は線維化の亢進の病態を示す疾患としては、例えば、心疾患(例えば、心肥大又は心筋梗塞など)、肝疾患(例えば、慢性肝炎、肝線維症、肝硬変、又は肝癌など)、腎疾患(例えば、慢性腎不全、間質性腎炎、腎炎、又は糖尿病性腎症など)、又は血管性病変(例えば、動脈硬化病変、又は糖尿病など)等を挙げることができる。また、本発明の医薬製剤は、細胞外マトリックス形成亢進及び/又は線維化の亢進に関与するTGF-β、TIMP、及びコラーゲンの発現を抑制することができる。本発明の医薬製剤における細胞外マトリックスの形成亢進及び/又は線維化亢進の抑制効果は、本発明の医薬製剤が、血中における線維化指標であるヒアルロン酸濃度及びプロリン水酸化酵素濃度の上昇を抑制することからも確認することができる。」(段落【0016】参照)、 (1-vii)「【0019】 【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。 【実施例1】《球形活性炭の調製》ナフサ熱分解により生成した軟化点182℃、キノリン不溶分10重量%、H/C=0.53のピッチ75kgにナフタリン25kgを、撹拌翼のついた内容積300リットルの耐圧容器に導入し、210℃に加熱溶融混合し、80?90℃に冷却して押出紡糸に好適な粘度に調整し、径1.5mmの孔を100個有する下部の口金から50kg/cm2 の圧力下にピッチ混合物を5kg/minの割合で押出した。押出した紐状ピッチは、約40°の傾斜を有するプラスチック製の樋に沿って10?25℃の冷却槽に流入する。樋には流速3.0m/secの水を流下することにより、押出直後の紐状ピッチは連続的に延伸される。冷却槽には径500μmの紐状ピッチが集積する。水中に約1分間放置することにより紐状ピッチは固化し、手で容易に折れる状態のものが得られる。この紐状ピッチを高速カッターに入れ水を加える。10?30秒間撹拌すると紐状ピッチの破砕は完了し、棒状ピッチとなる。顕微鏡で観察すると円柱の長さと直径の比は平均1.5であった。 【0020】次にこの棒状ピッチを濾別し、90℃に加熱した0.5%ポリビニルアルコール水溶液1kg中に棒状物100gを投入し、溶融し、撹拌分散し、冷却して球形粒子を形成した。大部分の水を濾別した後、得られた球形粒子を抽出器に入れ、ヘキサンを通液してナフタレンを抽出除去し、通風乾燥した。次いで、流動床を用いて、加熱空気を流通して25℃/Hrで300℃まで昇温し、更に300℃に2時間保持して不融化した。続いて、水蒸気中で900℃まで昇温し、900℃で2時間保持して炭化賦活を行ない、多孔質の球形活性炭を得た。得られた球形活性炭の直径は0.05?1.0mmであり、こうして得られた球形活性炭を流動床を用いて、600℃で酸素濃度3%の雰囲気下で3時間処理した後、窒素雰囲気下で950℃まで昇温し、950℃で30分間保持して、酸化及び還元処理を施した石油系ピッチ由来の球形活性炭を得た。この球形活性炭の直径は0.05?1mmであった。なお、ラット(Cpb:WU:ウイスターランダム)への経口投与による急性毒性試験では、毒性試験法ガイドライン(薬審第118号)による最大投与量(雌雄ラット5000mg/kg)においても異常は観察されなかった。」(段落【0019】?【0020】参照)。 甲第2号証には、縮合型又は重付加型の熱硬化性樹脂プレポリマーを原料として、球型活性炭を製造する方法について記載されており、具体的には以下の事項が記載されている。 (2-i)「本発明で使用することのできる縮合型の熱硬化性樹脂プレポリマーとしては、ノボラック型フェノール樹脂プレポリマー、レゾール型フェノール樹脂プレポリマー、ノボラック型アルキルフェノール樹脂プレポリマー、レゾール型アルキルフェノール樹脂ポリマー、これらのキシレン/ホルムアルデヒド縮合物、トルエン/ホルムアルデヒド縮合物・・・」(第1頁第2欄第24行?第2頁第3欄第3行参照)、 (2-ii)「実施例2 アンモニア触媒で合成したフェノール/クレゾール(7/3)のレゾール型フェノール樹脂の50%メタノール/水(等用)溶液・・・・反応せしめた。生成物を・・・褐色透明の球型樹脂粒子を定量的収率で得た。この球型樹脂粒は0.7mmφ付近にピークを有する正規分布に近い分布を示し、0.42?1.00mmφのものが全造粒物の59%を占めた。 この範囲の球型樹脂硬化物を実施例1と同じ条件で硬化・炭化・賦活して賦活率57%の球型活性炭を得た。」(第3頁第5欄第1?19行参照)、 (2-iii)実施例2で得た球型活性炭の比表面積は1640m^(2)/gであり、ヨウ素吸着能が1230mg/g、尿酸吸着能16mg/g、総ビリルビン吸着能2.5mg/gであること(第3頁の第1表参照)、 (2-iv)「この表の結果から、本発明の方法により得られた活性炭は堅牢な熱硬化性樹脂を原料としているため微細構造が形成されており、大きな比表面積とすぐれた吸着能を示しているものであると考えられる。」(第4頁第7欄第11行?第8欄第4行参照)。 甲第3号証には、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂を原料とする活性炭の製造において、炭化温度、賦活温度、賦活時間、水蒸気量が、活性炭の比表面積、細孔分布、酸素量などに及ぼす影響について記載されており、具体的には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (3-i)「2・2物性測定 ・・・・・略・・・・・。 X線回折に当たっては、活性炭を150メッシュ以下に粉砕し試料とした。測定には理学電機製自己X線回折計を使用し、CuKα線による(002)回折線ならびに(110)回折線を求め、学振法(下欄外の注釈:日本学術振興会第117委員会、炭素、36,25(1963))にしたがって、格子定数、結晶子の大きさを求めた。・・・」(第2101頁右欄図2の横参照)、 (3-ii)「図3,4にフェノール-ホルムアルデヒド樹脂を温度500?900℃で炭化してえられたチャーの物性を示す。炭材収率は炭化温度の上昇とともに0.69から0.54まで減少し、炭化温度800℃以上ではほぼ一定と考えられる。チャーの比表面積は炭化温度500℃では99m^(2)/gであるが、600℃になると急激に増加し、600℃以上では270m^(2)/gと一定値を示している。 図4は、水蒸気の吸着、水銀圧入法で求めた累積細孔分布曲線を合成したものであり、細孔半径5Å以上の分布を示してある。図をみれば、細孔の変化過程が明瞭にわかる。すなわち、揮発分の発散によるミクロ孔は炭化温度が上昇するにつれて発達し、水銀圧入法で求めた半径75Å以上の細孔は炭化温度の上昇とともに減少し、炭化温度700℃以上ではほとんど存在しなかった。」(第2101頁右欄中程?第2102頁左欄参照)、そして、図3には、炭化温度と収率の関係が図示され、図4には、累積細孔分布曲線が焼成温度で変化することが図示されていて、 (3-iii)「3・2 活性炭の比表面積と細孔分布 賦活工程において最も重要な因子と考えられる賦活温度の影響をしらべるために、800℃で炭化したチャーを800,850,900℃で賦活した結果を図5に示す。図から明らかなように、賦活温度を高くすれば、非常に大きな比表面積の活性炭を短時間で製造できる。・・・」(第2102頁左欄中程)、そして、図5に、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂を原料とする活性炭の製造における、賦活温度及び賦活時間と比表面積の関係が図示されている(第2102頁の図5参照)、 (3-iv)「図6,7に活性炭の累積細孔分布曲線の一例を示す。本実験でえられた活性炭は、その細孔容積の大部分を、半径30Å以下のいわゆるミクロ孔が占めており、水銀圧入法で求めた半径75Å以上の細孔は非常に少なかったので省略した。」(第2102頁左欄第14?17行参照)。 なお、図5によれば850℃で約5時間以上、900℃で約3時間以上賦活することにより、比表面積が1000m^(2)/g以上となることが理解でき、図6,7によれば、製造した活性炭における細孔半径30?100Å(細孔直径6?20nm)の細孔容積は、全て0.1cc/g以下、ほとんどの活性炭において0.01cc/g以下であり、累積細孔分布曲線の傾きは、細孔半径が100Åの付近では極めて小さくなっていることから、細孔半径が100Å以上の細孔はほとんど存在しないことが理解でき、図3から、炭化温度800℃での収率は約0.55(約55質量%)であることが理解できる。 甲第4号証には、フェノール樹脂を原料とする活性炭について、比表面積、細孔分布などを測定し、市販の水処理用活性炭及び石炭を原料とする球形活性炭との比較を行った結果が記載されており、具体的には図面とともに以下の事項が記載されている。 (4-i)Fig.3には、活性炭の比表面積と重量減少率の関係が図示され(第1146頁のFig.3参照)、 (4-ii)「25℃における水蒸気の吸着等温線をKelvin式で解析して求めた半径100Å以下の細孔分布曲線を図4に示した。賦活によって半径2OÅ以下の細孔がいちじるしく増加していることがわかる。」(第1146頁右欄第4?7行参照)、 (4-iii)「水銀圧入法によって求めた半径75Å以上の細孔分布曲を図5に示した。フェノール-ホルムアルデヒド樹脂を原料とする活性炭の半径75Å以上の細孔は全細孔容積の10%以下でCAL、ST-10にくらべていちじるしく少ない。・・・」(第1147頁左欄第2?4行参照)、 (4-iv)Fig.4とFig.5には、活性炭の孔径と細孔容積の細孔分布曲線が図示されている(第1146頁のFig.4及び第1147頁のFig.5参照)。 なお、Fig.3によれば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(ST-7,8,9,13,14(第1145頁Table1参照))を原料とした場合には、重量減少率が約0.4以上である場合に、比表面積が1000m^(2)/g以上となることが理解でき、そして、Fig.4,5によれば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂を原料として製造した活性炭(ST-7,8,9,13)における細孔半径30?10^(5)Å(細孔直径6?20000nm)の細孔容積は、0.1m l /g以下であることが理解できる。 甲第5号証には、多孔性球状炭素質物質からなる経口投与用吸着剤について記載され、具体的には以下の事項が記載されている。 (5-i)「【請求項1】 直径が0.01?1mmであり、BET法により求められる比表面積が700m^(2)/g以上であり、細孔直径20?15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満であり、全酸性基が0.30?1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20?0.70meq/gである多孔性球状炭素質物質からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤。」(【特許請求の範囲】参照)、 (5-ii)「【0007】・・・、細孔直径20?15000nmの細孔容積を0.04mL/g以上で0.10mL/g未満に調整すると、毒性物質であるβ-アミノイソ酪酸に対する高い吸着特性を維持しつつ、有益物質であるα-アミラーゼに対する吸着特性が有意に低下する。多孔性球状炭素質吸着剤の細孔直径20?15000nmの細孔容積が大きくなればなるほど消化酵素等の有益物質の吸着が起こりやすくなるため、有益物質の吸着を少なくする観点からは、前記細孔容積は小さいほど好ましい。しかしながら、-方で、細孔容積が小さすぎると毒性物質の吸着量も低下する。・・・(後略)。」(段落【0007】参照)、 (5-iii)「【0010】更に、本発明の経口投与用吸着剤として用いる多孔性球状炭素質物質では、官能基の構成において、全酸性基が0.30?1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20?0.70meq/gである。官能基の構成において、全酸性基が0.30?1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20?0.70meq/gの条件を満足しない多孔性球状炭素質物質では、上述した有毒物質の吸着能が低くなるので好ましくない。・・・(後略)。」(段落【0010】参照)、 (5-iv)「【0013】こうして得られた多孔性炭素質物質を、続いて、酸素含有量0.1?50vol%(好ましくは1?30vol%、特に好ましくは3?20vol%)の雰囲気下、300?800℃(好ましくは320?600℃)の温度で酸化処理し、更に800?1200℃(好ましくは800?1000℃)の温度下、非酸化性ガス雰囲気下で加熱反応による還元処理をすることにより、本発明の経口投与用吸着剤として用いる多孔性球状炭素質物質を得ることができる。」(段落【0013】参照)、 (5-v)「【0023】本発明の経口投与用吸着剤として用いる多孔性球状炭素質物質は、・・・肝疾患(例えば、振せん、脳症、代謝異常、又は機能異常)の治療に効果があり、更に腎疾患者に対しても透析前の軽度腎不全や透析中の病態改善に用いて効果がある。・・・・」(段落【0023】参照)、 (5-vi)「【0029】(3)選択吸着率 炭素質吸着剤の使用量が0.500gの場合のα-アミラーゼ吸着試験におけるα-アミラーゼ残存量、及び同様に、炭素質吸着剤の使用量が0.500gの場合のDL-β-アミノイソ酪酸吸着試験におけるDL-β-アミノイソ酪酸残存量のそれぞれのデータに基づいて、以下の計算式: A=(10-Tr)/(10-Ur) (ここで、Aは選択吸着率であり、TrはDL-β-アミノイソ酪酸の残存量であり、Urはα-アミラーゼの残存量である)から計算した。」(段落【0029】参照)、 (5-vii)「【0030】【実施例1】石油系ピッチ(軟化点=210℃;キノリン不溶分=1重量%以下;H/C原子比=0.63)68kgと、ナフタレン32kgとを、・・・冷却し、ピッチの固化及びナフタレン結晶の析出を行い、球状ピッチ成形体スラリーを得た。・・・n-ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、235℃まで昇温した後、235℃にて1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。続いて、多孔性球状酸化ピッチを、流動床を用い、50vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中で900℃で170分間賦活処理して多孔性球状活性炭を得、更にこれを流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素との混合ガス雰囲気下で470℃で3時間15分間、酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下で900℃で17分間還元処理を行い、多孔性球状炭素質物質を得た。得られた炭素質材料の特性を表1及び表2に示す。 【0031】【実施例2】多孔性球状酸化ピッチの賦活処理時間を80分間としたこと以外は、実施例1に記載の方法を繰り返して、多孔性球状炭素質物質を得た。得られた炭素質材料の特性を表1及び表2に示す。 【0032】【実施例3】多孔性球状酸化ピッチの賦活処理時間を120分間としたこと以外は、実施例1に記載の方法を繰り返して、多孔性球状炭素質物質を得た。得られた炭素質材料の特性を表1及び表2に示す。 【0033】【実施例4】多孔性球状酸化ピッチの賦活処理時間を240分間としたこと以外は、実施例1に記載の方法を繰り返して、多孔性球状炭素質物質を得た。得られた炭素質材料の特性を表1及び表2に示す。 【0034】【実施例5】球状化ピッチの析出及びナフタレン結晶析出のための冷却水の温度を25℃としたこと以外は、実施例1に記載の方法を繰り返して、多孔性球状炭素質物質を得た。得られた炭素質材料の特性を表1及び表2に示す。 【0035】【比較例1】多孔性球状酸化ピッチの賦活処理を行う代わりに、流動床にて窒素気流下で90分間で900℃まで昇温したこと、及び900℃に達した後に放冷したこと以外は、実施例1に記載の方法を繰り返して、多孔性球状炭素質物質を得た。得られた炭素質材料の特性を表1及び表2に示す。」(段落【0030】?【0035】)、 (5-viii)表2中に、実施例1?5に関し、選択吸着率がそれぞれ1.69、1.76、1.75、1.62、1.67であり、比較例1?6の選択吸着率が、1.00、1.07、0.98、0.31、0.66、0.10であること(段落【0041】)。 甲第6号証は、本件特許の出願日(及び優先権主張日)と同日に、本件特許権者によりなされた特許出願(特願2004-548106)の特許公報(特許第3672200号公報)であるところ、次の技術事項の記載がある。 (6-i)「【請求項1】 直径が0.01?1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m^(2)/g以上であり、そして式(1): R=(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35)) (1) 〔式中、I_(15)は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I_(35)は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I_(24)は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕 で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤。 【請求項2】 細孔直径20?15000nmの細孔容積が0.1mL/g以下の球状活性炭からなる、請求項1に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項3】 細孔直径20?1000nmの細孔容積が0.0272mL/g以下の球状活性炭からなる、請求項2に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項4】 熱硬化性樹脂を炭素源として製造される球状活性炭からなる、請求項1?3のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項5】 熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である、請求項4に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項6】 非酸化性ガス雰囲気中800℃での熱処理による炭素化収率が40重量%以上の熱硬化性樹脂を炭素源として製造される球状活性炭からなる、請求項1?5のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項7】 直径が0.01?1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m^(2)/g以上であり、全酸性基が0.40?1.00meq/gであり、全塩基性基が0.40?1.10meq/gであり、そして式(1): R=(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35)) (1) 〔式中、I_(15)は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I_(35)は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I_(24)は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕 で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である表面改質球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤。 【請求項8】 細孔直径20?15000nmの細孔容積が0.1mL/g以下の表面改質球状活性炭からなる、請求項7に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項9】 細孔直径20?1000nmの細孔容積が0.0185mL/g以下の表面改質球状活性炭からなる、請求項8に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項10】 熱硬化性樹脂を炭素源として製造される表面改質球状活性炭からなる、請求項7?9のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項11】 熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である、請求項10に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項12】 非酸化性ガス雰囲気中800℃での熱処理による炭素化収率が40重量%以上の熱硬化性樹脂を炭素源として製造される表面改質球状活性炭からなる、請求項7?11のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤。 【請求項13】 請求項1?12のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする、腎疾患治療又は予防剤。 【請求項14】 請求項1?12のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする、肝疾患治療又は予防剤。 【請求項15】 請求項1?12のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする、尿毒症性物質に関連する疾病の治療又は予防剤。」(特許請求の範囲参照)、 (6-ii)「【0013】 図1の曲線Aのような傾向のX線回折図を示す多孔質体と、図1の曲線Cのような傾向のX線回折図を示す多孔質体とでは、その細孔構造が異なることは明らかである。また、曲線Aと曲線Bの比較により表面改質球状活性炭のX線回折において低角度側で観測される散乱強度が細孔構造に起因することは明らかであり、散乱強度が強いほどより多くの細孔を有する。散乱角と細孔径の関係は、より高角度側の散乱ほどその細孔径が小さいものと推測される。細孔構造の解析には一般に吸着法により細孔分布を求める方法が知られているが、細孔の大きさ、形状、吸着物質の大きさ、及び吸着条件等の違いにより細孔構造を精確に解析することが困難な場合が多い。本発明者は、002面からの回折X線による影響が少なく、且つ、微細孔による散乱を反映すると推定される15°付近の散乱強度が、吸着法で測定することが困難な超微細孔の存在を表す指標となり、このような微細孔の存在が有害物質であるβ-アミノイソ酪酸の吸着に有効であるものと推定している。すなわち、回折角(2θ)が15°付近の散乱強度が強い球状活性炭又は表面改質球状活性炭ほど、有害物質であるβ-アミノイソ酪酸の吸着に有効であると推測している。 【0014】 また、後述する実施例で示すように、本発明者は、図1の曲線Aのような傾向のX線回折図を示す従来の球状活性炭又は表面改質球状活性炭と比較して、図1の曲線Cのような傾向のX線回折図を示す本発明による球状活性炭又は表面改質球状活性炭の方が、優れた選択吸着性能を示すことを実験的に確認した。」(段落【0013】?【0014】参照)、 (6-iii)「【0015】(前略)・・・。なお、I_(35)は回折角(2θ)が35°における回折強度であり、各測定試料間のバックグラウンドによる測定誤差を補正する目的で導入する。」(段落【0015】参照)、 (6-iv)「【0017】従来公知の代表的な経口投与用表面改質球状活性炭について、本発明者が確認したところ、それらの回折強度比(R値)はいずれも1.4未満であり、回折強度比(R値)が1.4以上の経口投与用表面改質球状活性炭は、本発明者の知る限り、見出されていない。-方、後述する実施例に示すとおり、回折強度比(R値)が1.4以上の表面改質球状活性炭は、回折強度比(R値)が1.4未満の表面改質球状活性炭と比較すると、β-アミノイソ酪酸の吸着能が向上しており、毒性物質の選択吸着性が向上した経口投与用吸着剤として有効であることが分かる。・・・」(段落【0017】参照)、 (6-v)「【0018】本発明者が見出したところによれば、回折強度比(R値)が1.4以上の球状活性炭又は表面改質球状活性炭は、例えば、従来の経口投与用吸着剤の炭素源として用いられてきたピッチ類に代えて、炭素源として熱硬化性樹脂を用いることにより調製することができる。あるいは、従来の経口投与用吸着剤同様に、炭素源としてピッチ類を用い、不融化処理の工程で架橋構造を発達させ、炭素六角網面の配列を乱すことにより調製することができる。 【0019】 最初に、炭素源として熱硬化性樹脂を用いる場合の調製方法を説明する。 熱硬化性樹脂からなる球状体を、炭素と反応性を有する気流(例えば、スチーム又は炭酸ガス)中で、700?1000℃の温度で賦活処理すると、本発明の経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭を得ることができる。ここで、球状「活性炭」とは、球状の熱硬化性樹脂などの炭素前駆体を熱処理した後に、賦活処理を行うことによって得られる多孔質体であり、球状で比表面積が100m^(2)/g以上であるものを意味する。本発明においては1000m^(2)/g以上が好ましい。 【0020】 なお、熱硬化性樹脂からなる前記球状体が、熱処理により軟化して形状が非球形に変形するか、あるいは球状体同士が融着する場合には、前記の賦活処理の前に、不融化処理として、酸素を含有する雰囲気にて、150℃?400℃で酸化処理を行うことにより軟化を抑制することができる。 また、前記の熱硬化性樹脂球状体を熱処理すると、多くの熱分解ガスなどが発生する場合には、賦活操作を行う前に適宜予備焼成を行い、予め熱分解生成物を除去してもよい。 【0021】 更に、選択吸着性を一層向上させるには、こうして得られた球状活性炭を、続いて、酸素含有量0.1?50vol%(好ましくは1?30vol%、特に好ましくは3?20vol%)の雰囲気下、300?800℃(好ましくは320?600℃)の温度で酸化処理し、更に800?1200℃(好ましくは800?1000℃)の温度下、非酸化性ガス雰囲気下で加熱反応による還元処理をすることにより、本発明の経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭を得ることができる。ここで、表面改質球状活性炭とは、前記の球状活性炭を、前記の酸化処理及び還元処理して得られる多孔質体であり、球状活性の表面に酸性点と塩基性点とをバランスよく付加することにより腸管内の有毒物質の吸着特性を向上させたものである。 【0022】 出発材料として用いる前記の熱硬化性樹脂球状体は、粒径が約0.02?1.5mmであることが好ましい。 出発材料として用いる前記の熱硬化性樹脂としては、球状体を成形することが可能な樹脂であり、500℃以下の熱処理においては溶融又は軟化せずに、形状変形も起こさないこ とが重要である。また、酸化処理などのいわゆる不融化処理により、溶融酸化を回避することのできる熱硬化性樹脂であれば使用することができる。 【0023】 出発材料として用いる前記の熱硬化性樹脂としては、熱処理による炭素化収率が高いことが望ましい。炭素化収率が低いと、球状活性炭としての強度が弱くなる。また、不必要な細孔が形成されるため、球状活性炭の嵩密度が低下して、体積あたりの比表面積が低下するので、投与体積が増加し、経口投与が困難になるという問題を引き起こす。従って、熱硬化性樹脂の炭素化収率は高いほど好ましく、非酸化性ガス雰囲気中800℃での熱処理による収率の好ましい値は40重量%以上、更に好ましくは45重量%以上である。 【0024】 出発材料として用いる前記の熱硬化性樹脂として、具体的には、フェノール樹脂、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型アルキルフェノール樹脂、若しくはレゾール型アルキルフェノール樹脂を挙げることができ、その他にもフラン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、又はエポキシ樹脂などを用いることができる。熱硬化性樹脂としては、更に、ジビニルベンゼンと、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、又はメタクリル酸との共重合体を用いることができる。 【0025】 また、前記の熱硬化性樹脂として、イオン交換樹脂を用いることもできる。イオン交換樹脂は、一般的に、ジビニルベンゼンと、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、又はメタクリル酸との共重合体(すなわち、熱硬化性樹脂)からなり、基本的には三次元網目骨格をもつ共重合体母体に、イオン交換基が結合した構造を有する。イオン交換樹脂は、イオン交換基の種類により、スルホン酸基を有する強酸性イオン交換樹脂、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する弱酸性イオン交換樹脂、第四級アンモニウム塩を有する強塩基性イオン交換樹脂、第一級又は第三級アミンを有する弱塩基性イオン交換樹脂に大別され、このほか特殊な樹脂として、酸及び塩基両方のイオン交換基を有するいわゆるハイブリッド型イオン交換樹脂があり、本発明においては、これらのすべてのイオン交換樹脂を原料として使用することができる。本発明においては、出発材料としてフェノール樹脂を用いるのが特に好ましい。」(段落【0018】?【0025】参照)、 (6-vi)「【0026】 次に、炭素源としてピッチ類を用い、不融化処理の工程で架橋構造を発達させ、炭素六角網面の配列を乱すことにより、経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭を調製する方法を説明する。 最初に、石油ピッチ又は石炭ピッチ等のピッチに対し、添加剤として、沸点200℃以上の2環式又は3環式の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合した後、成形してピッチ成形体を得る。なお、前記の球状活性炭又は表面改質球状活性炭は経口投与用であるので、その原料も、安全上充分な純度を有し、且つ品質的に安定であることが必要である。」(段落【0026】参照)、 (6-vii)「【0041】(4)回折強度比(R値) 球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料を120℃で3時間減圧乾燥した後、アルミニウム試料板(35×50mm^(2)、t=1.5mmの板に20×18mm^(2)の穴をあけたもの)に充填し、グラファイトモノクロメーターにより単色化したCuKα線(波長λ=0.15418)を線源とし、反射式デフラクトメーター法により回折角(2θ)が15°、24°、及び35°のそれぞれの角度における回折強度I_(15)、I_(24)、I_(35)を測定する。X線発生部及びスリットの条件は、印加電圧40kV、電流100mA、発散スリット=1/2°、受光スリット=0.15mm、散乱スリット=1/2°である。回折図形の補正には、ローレンツ偏光因子、吸収因子、原子散乱因子等に関する補正を行わず、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)回折線を用いて回折角を補正した。」(段落【0041】参照)、 (6-viii)「【0052】《実施例1》 球状のフェノール樹脂(粒子径=10?700μm:商品名「高機能真球樹脂マリリンH F500タイプ」;群栄化学株式会社製)を目開き250μmの篩で篩分し、微粉末を除去した後、微粉除去した球状のフェノール樹脂150gを目皿付き石英製縦型反応管に入れ、窒素ガス気流下1.5時間で350℃まで昇温し、更に900℃まで6時間で昇温した後、900℃で1時間保持して、球状炭素質材料68.1gを得た。その後、窒素ガス(3NL/min)と水蒸気(2.5NL/min)との混合ガス雰囲気中、900℃で賦活処理を行った。球状活性炭の充填密度が0.5mL/gまで減少した時点で賦活処理を終了とし、球状活性炭29.9g(収率19.9wt%)を得た。 得られた球状活性炭の回折角(2θ)15°における回折強度は743cpsであり、回折角(2θ)35°における回折強度は90cpsであり、回折角(2θ)24°における回折強度は473cpsであった。従って、回折強度比(R値)は1.71であった。 得られた球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。 ・・・中略・・・ 【0060】【表1】 ・・・(中略)・・・ 【0062】【表2】 」(段落【0052】?【0062】参照)。 甲第7号証には、粒状有機ゲルイオン交換体から球状活性炭(活性炭小球体)を作る方法が記載されており、具体的には以下の事項が記載されている。 (7-i)「【請求項17】主として100?300オングストロームの狭いメソポア分布及び少しだけのマクロポアを有することを特徴とする球状活性炭。」(【請求項17】参照)、 (7-ii)「【0019】・・・。特徴として、この小球体活性炭の孔分布構造は、100?300オングストロームの範囲内の小さいメソポアスペクトルと少しのマクロポアを示す。」(段落【0019】参照)、 (7-iii)「【0020】実施例 1 0.4?0.8mmの直径を有するゲル型イオン交換体(・・・)4300Kgを乾燥し(重量損失は50%より少し大)、2:1の比の窒素/空気混合物中で12時間、400℃で回転炉中で予備炭化した。次に炭化工程は、約900℃で6時間で窒素雰囲気中で完了させた。 【0021】予備炭化工程(400℃)後、収率は(湿った)原材料を基準にして約22%であった、しかし900℃での処理後17%に落ちた。 【0022】炭化した材料は小さい内表面(約200m^(2)/g)を示した。後に水蒸気を加えて、パイロットプラント(回転炉)中で8時間900℃でそれを活性化した。結果として、1300m^(2)/gの内表面積が達成でき、燃焼損失%は35であった。1時間の予備炭化(400℃)後、材料の見掛け密度は750g/lであった。第二工程(900℃)後、それは約900g/lの値に達した、しかし活性化工程後650g/lに落ちた。同時に小球体の直径は20%まで低下した。」(段落【0020】?【0022】参照)。 なお、段落【0020】と【0022】の記載から、製造された活性炭小球体の直径は、0.08?0.16mm(0.4?0.8mmの20%)であることが理解できる。 甲第8号証には、フェノール樹脂廃材を原料として水蒸気賦活により活性炭を製造した場合の炭化温度、賦活温度、賦活時間及び水蒸気量などが活性炭の細孔構造に及ぼす影響について記載されており、具体的には図面とともに以下の事項が記載されている。 (8-i)「本報では、プラスチック成形工場で発生した実際のフェノール樹脂廃材を原料として水蒸気賦活により活性炭を製造し、このときの炭化温度、賦活温度、賦活時間および水蒸気量などが活性炭の細孔構造に及ぼす影響などについて検討した。」(第138頁左欄参照)、 (8-ii)Fig.1に、温度と収率の関係が図示されている。(第139頁左下のFig.1参照)。 なお、Fig.1によれば、800℃における炭化物の収率は、約49質量%であることが理解できる。 甲第9号証には、フェノール樹脂繊維から繊維状活性炭を製造した場合のミクロ細孔構造の発達挙動ならびに細孔の表面積・容積・分布などの細孔特性の制御性について記載されており、具体的には図面とともに以下の事項が記載されている。 (9-i)「N_(2)流中での定速昇温操作(5?20℃/m i n)により、・・・得られる炭化物の収率ycは、800℃付近以上では約0.54の一定値に近づく傾向を示した。」( 第991頁右欄第46?49行)、 (9-ii)Fig.1には、フェノール繊維を純N_(2)流中で炭化した場合の炭化物の質量基準の収率が図示されている(第992頁下のFig.1参照)、 (9-iii)Table1には、繊維状活性炭と粒状活性炭の細孔構造に関しての特性が記載され、Fig.10とFig.11には、Table1に示された活性炭のX線回折強度の比較図が図示されている(第992頁のTable1、第996頁のFig.10とFig.11参照)。 なお、Fig.1によれば、800℃における収率は、約57質量%であることが理解できる。 甲第10号証には、「X線回折分析」について記載があり、 (10-i)「A.試料の作製 X線回折計を用いるときには試料は十分にこまかいものを用いないと、回折強度測定の再現性が失われる。・・・定量分析では、とくに試料中の結晶粒子の数は十分に多く、各々の粒子はまったく無秩序に配向していなければならない。 一方、粒子の大きさが0.5?0.2μ以下になると、回折像の幅が増大するので、定量分析の目的にそぐわなくなる。・・・・・ 粉砕した試料は、これを平板状に成形するのであるが、・・・。下においたガラスに接する面を試料の表面として用いるのであるが、この際結晶の選択的配向-結晶面がランダムにむくのでなく、ある特定の結晶面が一定の方向に配向してしまう現象-に関して十分に注意する必要がある。」(第52?53頁参照)ことが記載されている。 甲第11号証には、「炭素材料のX線回折法に関する学振法」について記載があり、 (11-i)「炭素材料の構造のパラメータとしてX線回折から得られるd_(002)、L_(0)、L_(C)等の値が多く用いられている。測定場所や測定者が異なっても、互いに比較できる値を簡便に得られる統一的なX線測定法として、わが国では早い時期にいわゆる学振法が制定された。その後、若干の改正がなされている。両者とも測定法の基本は同一であり、後者の方が利用の上で便利であることから一般的に多く使われている。要点は粉末試料の厚さを薄くし、内部標準試料を用いて決められた手法に従ってX線プロファイルを測定し、その強度を補正した後、値を算出することである。・・・・・・いわゆる学振法は「人造黒鉛の格子定数および結晶子の大きさ測定法」とあるように、試料は黒鉛化が進んだ炭素材料を対象にしている。・・・・」(第156頁上部)、 (11-ii)「人造黒鉛の格子定数および結晶子の大きさ測定法<改正案> 1.試料 ・・・・・・・(後略)。」が記載されている。 甲第12号証には、「活性炭」の項目において、「化学構造はグラファイト(黒鉛)を基本とするが無定形で・・・」との解説がある。 甲第13号証は、日本エンバイロケミカル株式会社による2007年7月13日付けの実験報告書で、キューカル細粒分包を試料とし、X線回折法による回折強度を測定し、測定条件の相違によるR値の相違について比較考察したものであるところ、 X線回折装置として、株式会社リガク製「RINT1100」(封入式X線回折管球のX線発生装置,印加電圧40kv,印加電流50mA,グラファイトモノクロメータで単色化)と株式会社リガク製「RINT2400」(回転対陰極型X線発生装置,印加電圧40kv,印加電流100mA,湾曲モノクロメータで単色化)を用い、次の測定方法、測定データの解析を行い、表1?3の結果を得たことが記載されている。(なお、装置1、装置2、方法1、方法2の数字は、いずれも○付き数字であるが、表示できないため○を省略した。また、解析方法2では、^(1))?^(4))の文献が参照され、添付されているが摘示を省略した。) 「(3)測定方法: 以下の手順に従い、回折強度を測定した。 試料5gを振動粉砕機(HEIKO SAMPLEMILL TI-100)で4分間粉砕して平均粒子径24μm(100μm以下の比率98重量%)となし、115℃に温度管理した電気乾燥機で2時間乾燥し測定に供した。 測定装置1「RINT1100」においては、試料板(直径38mm、中央部に直径24mmの貫通穴、厚み10mm)の貫通穴にプラスチック板またはアルミ板を設置し、粉砕した試料を充てんした。 測定装置2「RINT2400」においては、アルミ試料板(試料充てん孔24mm径)に粉砕した試料を充てんした。モノクロメータにより単色化したCuKα線(波長λ=0.15418nm)を線源とし、回折角(2θ)が15°、24°、および35°のそれぞれの角度における回折強度I_(15)、I_(24)、I_(35)を測定した。標準物質用高純度シリコン粉末の(002)回折線を用いて回折角を補正した。 (4)測定データの解析 解析方法1 2θ=15°、24°、および35°のそれぞれを中心とした-0.1°?+0.1°の回折強度を平均し、甲第10号証及び甲第16号証と同様に、これらの値を回折強度値I_(15)、I_(24)、I_(35)として扱い、下記(1)式によりR値を算出した。 R=(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35)) (1) 解析方法2 活性炭などのミクロ孔を有する試料では小角散乱の寄与が大きく、これを無視できない^(1))。測定したデータのDebye-Bueche^(2))プロットが2θ<12°で直線近似できることから、この領域の測定データが小角散乱に由来することを確認した。測定データのうち小角散乱に由来するものは測定した全領域においてバックグランドとして寄与する^(3))ので、データ処理^(4))により小角散乱によるバックグランドを求め、測定データからバックグランドを差し引いて回折強度を求めた。 バックグランドを差し引いた回折強度のデータをスムージングし2θ=15°、24°、35°のそれぞれを中心とした-0.1°?+0.1°の回折強度を平均して回折強度I_(15)、I_(24)、I_(35)を求め、この値を用いて上記式(1)によりR値を算出した。 4.結果 測定結果および計算結果をそれぞれ表1?3に示す。 」 甲第14号証には、 「高尿酸血症」(第646頁左欄)、「尿酸」(第1469頁右欄)、「高ビルビン血症」(第649頁右欄末行?第650頁左欄)、「ビルビン」(第1661頁右欄末行?第1662頁左欄)の項目の説明が記載されている。 甲第15号証には、 (15-i)「熱硬化性樹脂を主原料とした粒状活性炭であって、活性炭の表面は無処理、或いは必要に応じ化学修飾又はコーティングされている粒径が5μm乃至5mmの血液浄化用活性炭。」(特許請求の範囲参照)、及び、 (15-ii)「本発明の活性炭による血液の浄化方式としては、・・・・直接血液潅流を高い安全性のもとに実施することが可能とした・・・、経口投与タイプの血液浄化剤としても使用が可能である。」(第2頁左上欄2?9行参照)が記載されている。 甲第16号証には、 (16-i)「熱硬化性樹脂、またはそれらの各種前駆体に対して液状または粉末状充填材を添加し、造粒して得たビーズ状物を加熱硬化後、炭化、賦活してなる直径5?5,000μmの血液浄化用球型活性炭。」(特許請求の範囲参照)、及び、 (16-ii)「本発明の活性炭による血液の浄化方式としては、・・・・直接血液潅流を高い安全性のもとに実施することが可能となった・・・、経口投与タイプの血液浄化剤としても使用が可能である。」(第2頁右上欄3?10行参照)が記載されている。 乙第1号証には、多孔質ガラス状炭素の製造方法に関し、 「【0010】本発明者らは、エポキシ樹脂とその硬化剤の混合物をフェノール樹脂に添加して硬化させ、得られた硬化物を炭化させると、表層部を除いて内部に優れた多孔性構造を有するガラス状炭素材料が得られることを見出した。得られた炭素材料は、内部においてマクロな気孔径7.6μm以下の気孔を0.2?0.4cm^(3)/gの割合で含んでいた。・・・」(段落【0010】参照)、 「【0023】炭素化または黒鉛化の工程の直後に得られる材料は、表層部は発生ガスが逸脱しやすいため表層部において緻密なガラス状カーボン組織を有し、内部において優れた多孔質組織を有する。全体が多孔質であるガラス状炭素材料を必要とする場合、表層部の緻密なガラス状カーボンを機械加工により除去すればよい。・・・・・。このような気孔量は、水銀ポロシメータにより測定することができる。この測定方法において水銀を圧入する気孔径は下記の式で表すことができる。したがって、気孔径7.6μm以下の気孔量は、水銀ポロシメータを用いる測定方法において大気圧以上の圧力で圧入する水銀の体積に相当する。 【0024】 気孔径=7.6μm/圧入圧力(atm,絶対圧) ここで気孔径は、種々の形状を有する気孔においてその最大幅を意味する。気孔は、たとえば円形の他、楕円形、矩形等の形状を有する。気孔が楕円の場合その長径が気孔径となる。また気孔が矩形の場合その対角線の長さが気孔径に相当する。」(段落【0023】,【0024】参照)との記載がある。 乙第2号証には、 「【請求項1】レゾール型フェノール樹脂(a) 100重量部、親油性で100℃以上の沸点を有する常温で液状の化合物(b) 1ないし100重量部、親水性で100℃以上の沸点を有する液状の化合物(c) 1ないし100重量部、及び残炭率の高い粉体(d) 1ないし200重量部とからなる混合物の硬化物を形成した後、500℃以上の温度で炭化、賦活することを特徴とする活性炭素多孔体の製造方法。」(【請求項1】参照)、 「【0022】このようにして得た活性炭素多孔体のベンゼン吸着度を測定した。なお、ベンゼン吸着度は熱天秤を用い、試料約100mg、25℃飽和蒸気下の吸着による重量増加量を試料の重量で割った値(%)として求めた。また、平均細孔径は自動比表面積。細孔分布測定装置を用い、試料の低温におけるN_(2)の等温脱着曲線からCI法により求めた。結果を表.1に示す。」(段落【0022】参照)、 「表1において、実施例1?5での平均細孔直径が順に26nm、30nm、24nm、22nm、20nmであること」(段落【0031】参照)、が記載されている。 乙第3号証には、活性炭の製造における薬品賦活法に関し、 「2.2.2 薬品賦活法 薬品賦活法は、原料に賦活薬品を均等に含浸させて、不活性ガス雰囲気中で加熱(焼成)し、薬品の脱水および酸化反応により、微細な多孔質の吸着炭をつくる方法である。・・・・。 薬品賦活では、炭素質原料(無水基準)に対して、含浸させる薬品の質量比が活性化の重要な尺度で、含浸質量比が小さい場合は微細な孔隙を生成し、含浸質量比が大きくなるにつれて孔径の大きい細孔を発達させて孔隙(細孔容積)も増大する。また、活性炭化(焼成)温度が孔隙の形成に大きく関与するので、最適な焼成温度を原料や薬品の種類にそって選択することになる。」(第51頁参照)と記載されている。 乙第4号証には、 「希土類あるいは遷移金属の錯体や塩をピッチ、石炭等に分散し、賦活することにより、メソ孔(2nm<diameter<50nm)を選択的に有する多孔質炭素(以下「メソ孔性活性炭」と呼ぶ)が得られる。この場合生成するメソ孔は顕微鏡観察からピット状であることが知られ、炭素組織中に共存する金属あるいは金属酸化物粒子がメソ孔の形成過程に大きく関与すると予想される。」(第8頁1.緒言を参照)が記載されている。 乙第5号証は、株式会社クレハ総合研究所の秋田恭弘による実験成績証明書であって、球状フェノール樹脂を原料として7.5?15000nmの細孔容積が0.08mL/g(R値1.34,選択吸着率2.9)(表1,2参照)のものを製造したことが記載されている。 乙第6号証は、JIS K0131-1996の「X線回折分析通則」であって、X線回装置を用いて回折X線を測定し、これによって物質の同定・定量、格子定数の精密測定、結晶化度の測定などを行なう場合の一般的事項について規定されている。 乙第7号証には、日本学術振興回第117委員会によって、人造黒鉛の格子定数および結晶子の大きさの測定法について、具体的な手法が説明されている。 乙第8号証には、「57.粉末X線回折測定法」が具体的に記載されている。 なお、別途にインターネット出典で、第14改正日本薬局方第1部の一般試験法に「57.粉末X線回折測定法」が目次として示されている厚生労働省告示が提示されていて、前記「57.粉末X線回折測定法」がその目次のものに相当すると推定できる。 乙第9号証は、株式会社クレハ総合研究所の秋田恭弘による、「X線回折強度比R値に対する測定条件の影響」についての実験報告書であり、次のことが記載されている。 被験物質(試料)としてキューカルカプセル286mg Lot No. 6 CAを用い、測定装置として、1.粉末X線回折装置:株式会社リガク製「RAD-r C/PC化」(回転対陰極形X線発生装置、印加電圧40kV、電流100mA、グラフアイトモノクロメータで単色化)と2.粉末X線回折装置:PANalytical社製「X‘Pert PRO MPD」(X線発生装置:封入式X線管球、印加電圧45kV、電流40mA、N iフィルターで単色化)を用い、以下の手順に従いX線回折強度を測定した後、回折強度比(R値)を計算した。 「(3)測定方法 以下の手順に従い、X線回折強度を測定した後、回折強度比(R値)を計算した。 1.試料を120℃において3時間減圧乾燥した後、アルミニウム試料板(35×50mm2,t=1.5mmの板に20×18mm2の穴をあけたもの)に充填し、CuKα線(波長入=0.15418nm)を線源とし、反射式デフラクトメータ一法により、回折角(2θ)が15°、24°、及び35°のそれぞれの角度における回折強度I_(15)、I_(24)、I_(35)を測定した。回折図形の補正には、ローレンツ偏光因子、吸収因子、原子散乱因子等に関する補正を行わず、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)回折線を用いて回折角を補正した。 2.得られた回折強度から下記(1)式を用い、回折強度比(R値)を求めた。 R=(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35)) (1) 〔式中、I_(15)は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I_(35)は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I_(24)は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である。〕 4.結果と考察 測定結果及びR値の計算結果をそれぞれ表1および表2に示す。 ・・・(中略)・・・ 」 乙第10号証には、 「1 直径0.05?1mm、細孔半径80Å以下の空隙量0.2?1.0c.c./g、細孔半径100?75000Åの空隙量0.1?1c.c./gを有する多孔性の球形炭素質物質であつて、官能基の構成が全酸性基(A):0.30?1.20meq/g、全塩基性基(B):0.20?0.70meq/g、フエノール性水酸基(C):0.20?0.70meq/g、カルボキシル基(D):0.15meq/g以下の範囲にあり、且つ (イ) A/B:0.40?2.5 (ロ) (B+C)-D:0.60以上 であることを特徴とする炭素質吸着剤。 2 直径0.05?1mm、細孔半径80Å以下の空隙量0.2?1.0c.c./g、細孔半径100?75000Åの空隙量0.1?1c.c./gを有する多孔性の炭素質物質を酸素濃度0.5?20vol%の雰囲気下350?700℃の温度で処理し、更に800?1000℃の温度下炭素に対して不活性な雰囲気下で加熱反応せしめることを特徴とする、官能基の構成が全酸性基(A):0.30?1.20meq/g、全塩基性基(B):0.20?0.70meq/g、フエノール性水酸基(C):0.20?0.70meq/g、カルボキシル基(D):0.15meq/g以下の範囲にあり、且つ (イ) A/B:0.40?2.5 (ロ) (B+C)-D:0.60以上 である炭素質吸着剤の製造法。 3 直径0.05?1mm、細孔半径80Å以下の空隙量0.2?1.0c.c./g、細孔半径100?75000Åの空隙量0.1?1c.c./gを有する多孔性の球形炭素質物質であつて、官能基の構成が全酸性基(A):0.30?1.20meq/g、全塩基性基(B):0.20?0.70meq/g、フエノール性水酸基(C):0.20?0.70meq/g、カルボキシル基(D):0.15meq/g以下の範囲にあり、且つ (イ) A/B:0.40?2.5 (ロ) (B+C)-D:0.60以上 である炭素質吸着剤を主成分とすることを特徴とする肝腎疾患治療薬。」(特許請求の範囲参照)、 「該多孔性の炭素質物質は、例えば、以下の方法によつて製造できる。即ち、H/C原子比0.45?0.8、流動点100?300℃、偏光顕微鏡下の異方性領域が偏在していない重質炭化水素を原料とし、該原料にベンゼン、ナフタレン等の芳香族化合物よりなる添加剤を加え、界面活性剤を含む100?180℃の熱水中で撹拌下分散造粒して微小球体化し、必要に応じ添加剤を除去し、篩別、乾燥後、該微小球体を酸化性気流中において静置、流動或いは転動状態で酸化処理し、酸素含有量7?25wt%を含む中間体を製造する。該中間体の酸素含有量が7wt%以下では、本発明の目的に合致する性能が得られない。また、酸素含有量が25wt%以上では酸化反応が進みにくく効率的でない。次いで、該中間体を更に炭素と反応性を有する気流、例えばスチーム又は炭酸ガス中、800?1000℃の温度で処理すれば、本発明の多孔性の炭素質物質を得ることができる。」(第2頁右欄41行?第3頁左欄15行参照)、 「実施例 1 H/C=0.55、流動点220℃、偏光顕微鏡下の異方性領域が偏在しない炭化水素300gおよびナフタレン100gを撹拌機付オートクレーブに仕込み、180℃で溶解混合し、ゴーセノールGH?17 0.5%水溶液1200gを加え、次いで140℃で30分間激しく撹拌した後、撹拌下室温まで冷却して粒径0.07?1.2mmの球形粒子を得た。大部分の水を別した後、該球形粒子を抽出器に入れ、ヘキサンを通液してナフタレンを抽出除去した後、通風乾燥した。次いで、流動床を用いて、加熱空気を流通して25℃/Hrで300℃まで昇温し、更に300℃に2時間保持する事により酸素含量14%の中間体を得た。次いで、該中間体を流動床を用いて水蒸気中で900℃まで昇温し、900℃で2時間保持して多孔性の炭素質物質を得、更にこれを600℃で酸素濃度3%の雰囲気下で3時間処理した後、窒素雰囲気下で950℃まで昇温し、950℃で30分保持して本発明の炭素質吸着剤(試料1)を得た。 その特性及び官能基量を第1表に示した。」(第4頁左欄18?37行参照)が記載されている。 6.当審の判断 先ず、無効理由5を検討し、次いで、無効理由2,3、無効理由4、無効理由1の順に検討することとする。 (6-1)無効理由5(特許法第17条の2第3項;新規事項の追加)について (a)本件特許の出願時に添付された明細書(以下、「当初明細書」とも言う。)に、 『R=(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35)) (1) 〔式中、I_(15)は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I_(35)は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I_(24)は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕』に関する記載が無かったこと、及び、 (b)拒絶査定不服審判係属中の拒絶理由通知(平成18年3月13日付け)における第4番目の理由として、『本件出願の請求項1-10に係る発明は、同日にされた特願2004-548106号の請求項に係る発明と同一であるので特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。』(前記特願2004-548106号は、特許第3672200号として登録済み)との理由が通知され、その理由を解消するために、平成18年5月15日付け手続補正によって、『但し、式(1): R=(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35)) (1) 〔式中、I_(15)は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I_(35)は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I_(24)は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕 で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭を除く、』(以下、該記載を単に「除く記載」ともいう。)との特定がなされたものであることは、本件の出願当初明細書及び審査・審判の経緯からみて明らかであり、請求人並びに被請求人の両当事者にも争いはない。 なお、前記特許第3672200号の特許公報は、請求人が提示した前記甲第6号証である。 そこで、同日出願の特許明細書(甲第6号証参照)を検討すると、炭素源をフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂とする請求項(請求項1,7を引用する請求項4,5,10,11など)はあるものの、請求項1(又は請求項7)に係る発明は炭素源が熱硬化性樹脂に限定されていないし、発明の詳細な説明には、ピッチ類(石油ピッチ、石炭ピッチ)を用いた場合でも製造できることが具体的に説明されている(段落【0018】,【0026】など参照)のであるから、同日出願では、(炭素源を特定するまでもなく)回折強度比(R値)を特定することによって発明されていると認められる。 他方、本件の出願当初の明細書では回折強度比(R値)に関する記載はなく、回折強度比(R値)の値に関係なく、炭素源の樹脂を特定することによって本件「除く記載」を追加する前の各請求項に係る発明が発明されていたと解するのが相当である。 してみると、本件特許の出願時において、本件「除く記載」を追加する前の各請求項に係る発明と特許第3672200号の発明は、異なる技術思想の発明であると認められる。 しかるに、拒絶査定不服審判係属中に、両出願の発明の詳細な説明の記載を参酌すると両者が同じであるがために、本願は同日出願と同一発明なので特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないとの出願人とっては予想外の拒絶の理由が通知された。そこで、合議体により指摘されたこの拒絶の理由を解消するための止むを得ない状況で本願発明から重なりのみを除く補正をした、即ち「除く記載」を発明特定事項として追加し「除くクレーム」としたものと認められる。 そして、このような止むを得ない状況の場合に、発明の適正な保護を図るために、「除くクレーム」とする補正は、例外的に当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものと扱うべきものである(審査基準第III部第1節4.2(4)参照)。換言すると、上記の「除く記載」が当初明細書に記載されていなくても、例外的に新規事項の追加とはしない取り扱いをすることになる。 この点に関し、請求人は、補正後の「除くクレーム」は、補正前の請求項に係る発明の主要部を当然に有している必要があり、「除くクレーム」の形式へ補正することにより補正前の請求項に係る発明の大部分が除かれることは許されないものであり、本件発明の除くクレームの場合は、補正前の請求項に係る技術的思想を全て除くものに相当し、技術的思想を何ら開示しない発明について特許を請求することに相当するので、“例外的に当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものと取り扱われる場合”に該当しない旨を主張している。 そして、弁駁書(第9頁参照)において、請求人は、「既に述べたように、両出願の明細書の記載から、本件特許の請求項1に係る発明において、「除く」の事項がないと仮定した発明(図1の円A)と同日出願別件特許の請求項1に係る発明(図1の円B)は、両出願の明細書の実施例に記載された同一の球状活性炭又は表面改質球状活性炭から帰納されたものであることに疑いの余地はない。すなわち、前記「除くクレーム」とする補正前の本件特許出願の請求項に係る発明は、同日出願別件特許発明と実質的に同一であり、そもそも補正前の本件特許出願の請求項に係る発明は、同日別件特許発明と顕著に異なる保護すべき発明を含んでいなかった。 ・・・(中略)・・・。 さらに、当該補正は、出願当初明細書に開示された実施例に基いては形成され得ない発明を特許請求の範囲に記載するものであり、・・・(後略)。」と主張している。 なるほど、両出願に記載された実施例がR値のデータの有無を除き同一であり、熱硬化性樹脂を炭素源とする場合の製造方法の説明も同じであることから、本件特許明細書に記載された実施例1?4はいずれも「除く記載」に該当するものであり、本件特許明細書には本件特許発明の実施例を記載していないといえる。 しかしながら、本件当初明細書において「除く記載」を追加する前の各請求項に係る発明は、R値とは無関係に炭素源を熱硬化性樹脂のフェノール樹脂やイオン交換樹脂に特定することによって発明されていたものであり、実施例による裏付けもされていたものであるところ、本件特許請求項1?7に係る発明は、単に「除く記載」によって特定のR値のものを除いているだけなので、それだけで発明されていたことに疑義が生じると解することができない。 しかも、除かれた残りの部分(R値が1.4未満の場合)でも発明されいることは、「除くクレーム」とれさた補正と同日付け(平成18年5月15日付け;5月16日受付日)の手続補足書に提示された実験成績証明書Aと実験成績証明書Bによって釈明されている。 ここに、実験成績証明書Aには、球状のイオン交換樹脂から得た球状活性炭を表面改質した表面改質球状活性炭に関し、表1,2において、参考例1として、平均粒子径355μm、比表面積1292m^(2)/g、7.5?15000nmの細孔容積0.0705mL/g、R値1.14、選択吸着率3.1、参考例2として、平均粒子径342μm、比表面積1722m^(2)/g、7.5?15000nmの細孔容積0.0891mL/g、R値1.22、選択吸着率3.4であるものが製造されたことが示され、実験成績証明書Bには、表1,2において、フェノール樹脂を原料とした球状活性炭(参考例1,2)及び表面改質球状活性炭(参考例3?6)に関し、参考例1として、平均粒子径348μm、比表面積1426m^(2)/g、7.5?15000nmの細孔容積0.0204mL/g、R値1.28、選択吸着率2.4、参考例2として、平均粒子径292μm、比表面積2681m^(2)/g、7.5?15000nmの細孔容積0.0824mL/g、R値1.57、選択吸着率2.6、参考例3として、平均粒子径331μm、比表面積1023m^(2)/g、7.5?15000nmの細孔容積0.0216mL/g、R値1.26、選択吸着率3.9、参考例4として、平均粒子径275μm、比表面積1790m^(2)/g、7.5?15000nmの細孔容積0.0243mL/g、R値1.30、選択吸着率3.6、参考例5として、平均粒子径268μm、比表面積1876m^(2)/g、7.5?15000nmの細孔容積0.0280mL/g、R値1.35、選択吸着率3.6、参考例6として、平均粒子径257μm、比表面積2575m^(2)/g、7.5?15000nmの細孔容積0.0440mL/g、R値1.51、選択吸着率4.3であるものが製造されたことが示されている。 そうであるから、本件特許発明の「除く記載」は、各請求項に係る発明に包含される一部の事項のみを除いたものといえ、全てを除いたものであるとまではいえないから、除外した後の「除くクレーム」が当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであるという他ない。 なお、上記のとおりであるから、「補正前の請求項に係る技術的思想を全て除くことにより、技術的思想を何ら開示しない発明について特許を請求することに相当する」本件の「除くクレーム」への補正は、「第三者の実施や研究活動を不当に妨げることにもなり、法目的に反することは明らかである。」旨の請求人の主張や、弁駁書における「出願当初明細書に開示された実施例に基いてはされ得ない発明を特許特許請求の範囲に記載するものであり、第三者に不測の不利益を与えるおそれのある補正に該当する。」(弁駁書第9頁など参照)との請求人の主張は、権利範囲として除外した「除くクレーム」によって実施例が対象外となったとしても、それ以外の部分についても発明はされていたと解するのが相当であって、もともと発明されていた残りの部分が第三者に不測の不利益を与えるおそれがあるとは解し得ないため、失当である。 また、請求人は、「補正前の請求項に係る発明の主要部を当然に有している必要があり、・・・発明の大部分が除かれることは許されない」と主張するが、審査基準にはそのような条件は規定されていない。ところで、審査基準には、「(注2)「除く」部分が請求項に係る発明の大きな部分を占めたり、多数にわたる場合には、一の請求項から一の発明が明確に把握できないことがあるので、留意が必要である。」との説明があるが、単に明確性の観点からの留意事項にすぎないものであり、後述のとおり、本件特許発明の場合に「除く記載」によって明確性に問題が生じたとは認められない。 よって、無効理由5に関する請求人の主張は、理由がないものであり採用できない。 (6-2)無効理由2(特許法第36条第4項第1号違反;記載不備)について (i)「除くクレーム」としたことによる記載不備について (a)製造について 除く対象であるR値に関して本願明細書に言及がないのは、同日出願の発明との重なりを除くために「除くクレーム」として規定されたのであるから当然にあり得ること(但し、R値の規定は特許請求の範囲に式で明示されているから、その明示された式よって計算することは容易になし得ることである。)であって、そのことだけで記載不備とされるものではない。 なるほど、甲第6号証の同一日出願の特許明細書に記載された熱硬化性樹脂を用いた場合の球状活性炭又は表面改質球状活性炭の製造方法(段落【0019】?【0025】)と実施例(と比較例)は、その実施例(と比較例)にR値が明示されている点を除き、本件特許明細書のそれと全く同一である。 しかし、「除く記載」を追加する前の発明(経口投与用吸着剤)は、本件特許明細書に記載の製造方法によって、R値の数値に関係なく製造され得たものであると認められるところ、本件特許発明で「除く記載」によって特定のR値のものを除いているだけで、製造され得た状況が否定されるとまでいうことができない。 ここに、活性炭を製造する手段は周知で、製造条件も各種知られているのであるから、それらの条件を適宜設定することによって、同一材料を用いても比表面積や細孔直径、細孔容積を変えられる(後記(ii)を参照)と同様に、R値も変えられる(R値が1.4以上でも、1.4未満でも)とみるのが妥当である。 そして、拒絶査定不服審判係属中の拒絶理由に対する応答時に提出された実験成績証明書A,B(平成18年5月15日付け手続補足書参照;イオン交換樹脂およびフェノール樹脂を原料とし、R値が1.4未満の場合でも選択吸着率が優れていることが示されている。「前記6.(6-1)」を参照)を勘案すると、格別特異な条件設定を行うことなく、通常の条件で適宜製造できていたものと解するのが相当といえる。 (b)作用効果について 同日出願との重なりを排除するために、形式的にR値が1.4以上を除くと規定し、そのために実施例がすべて除外されることになったのであるが、本件特許の請求項1?7に係る発明は、本来R値とは無関係なものであるから、除かれた実施例近傍は当然として、それ以外(R値が1.4未満)の実施例が示されていない部分についても一応それなりの作用効果を奏するものと解するのが相当である。 そして、本件特許明細書では、フェノール樹脂やイオン交換樹脂などの熱硬化性樹脂を炭素源として製造される経口投与吸着剤は、(R値を特定することなく)「特異な細孔構造を有しているので、経口服用した場合に、消化酵素等の体内の有益成分の吸着性が少ないにもかかわらず、有毒な毒性物質(Toxin)の消化器系内における吸着性能が優れるという選択吸着特性を有し、従来の経口投与吸着剤と比較すると、前記の選択吸着特性が著しく向上する。」(本件特許明細書段落【0012】参照;熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂やイオン交換樹脂が例示される点は段落【0020】?【0021】参照)と説明されていて、更に、拒絶査定不服審判係属中の拒絶理由に対する応答時に提出された前記実験成績証明書A,Bによって、イオン交換樹脂を炭素源としR値が1.4未満の場合、及びフェノール樹脂を炭素源としR値が1.4未満の場合でも選択吸着率が優れていることが釈明されている(「前記6.(6-1)」を参照)。 ところで、該実験成績証明書に関し、請求人は、「出願時の発明の詳細な説明には、このような球状活性炭の製造方法及び有効性を何ら開示せずに、後から記載外の製造方法及び有効性を開示し、発明の詳細な説明の記載を特許法第36条第4項第1号の要件に適合させることは、発明の公開を前提に特許を付与するという特許制度の趣旨に反し許されないというべきである。 従って、当該実験成績証明書は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載を補足するものとはなり得ないため、結局、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項に記載された物を製造し、使用することができるように記載したものであるとはいえない。」と主張する。 しかし、そもそも当初明細書において「除く記載」を追加する前の各請求項に係る発明は発明されていたものであり、前記のとおりR値は製造条件によって異なる値をとれるとみるのが妥当であるから、当初に記載された実施例以外の場合について実験成績証明書で釈明することは許されるものであることを勘案すると、止むを得ざる状況下になされた「除くクレーム」を規定する場合(「前記6.(6-1)」参照)であっても、上記のように実験成績証明書によって釈明することは許されるとするのが妥当である。 (ii)「細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満」について なるほど、本件明細書の製造例では、フェノール樹脂を炭素源とする場合には0.04ml/gと0.06ml/gの例しか、またイオン交換樹脂を炭素源とする場合には0.42ml/g(本件特許で特定する0.25mL/gより多い)の例しか示されていない。 しかし、本件特許明細書には、「本発明による経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭においては、細孔直径20?15000nmの細孔容積が0.1?1mL/gであることも、あるいは0.1mL/g以下であることもできる。なお、細孔直径20?1000nmの細孔容積が1mL/gを越えると消化酵素等の有用物質の吸着量が増加することがあるので、細孔直径20?1000nmの細孔容積が1mL/g以下であることが好ましい。 なお、本発明による経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭においては、一層優れた選択吸着性を得る観点から、細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満であり、0.2mL/g以下であることが好ましい。」(段落【0024】参照;下線は当審が付与)と説明されている。 なお、公知刊行物である甲第5号証の段落【0007】には、「・・・本明細書の実施例に示すとおり、細孔直径20?15000nmの細孔容積を0.04mL/g以上で0.10mL/g未満に調整すると、毒性物質であるβ-アミノイソ酪酸に対する高い吸着特性を維持しつつ、有益物質であるα-アミラーゼに対する吸着特性が有意に低下する。多孔性球状炭素質吸着剤の細孔直径20?15000nmの細孔容積が大きくなればなるほど消化酵素等の有益物質の吸着が起こりやすくなるため、有益物質の吸着を少なくする観点からは、前記細孔容積は小さいほど好ましい。しかしながら、一方で、細孔容積が小さすぎると毒性物質の吸着量も低下する。」と記載されている。 また、本件特許明細書に、参考例1の細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.42mL/gの場合に、選択吸着率が2.1と比較的に劣っている(段落【0047】,【0049】参照)ことが示されている。 してみると、かかる細孔容積の条件が臨界的な意義を有すると解するよりも、選択吸着率を優れたものとするために、孔径の大きな細孔を少なくすべきことを単に表現している目安にすぎないものと理解でき、一方公知技術として細孔容積が小さすぎると毒性物質の吸着能に支障があることが明らかである。 そうであるから、「細孔容積が0.25mL/g程度に大きいものや0.04mL/gよりも極端に小さいものについては、経口投与用吸着剤として有効に機能することを推認することもできない。」との請求人の主張は採用できない。 そして、被請求人は、乙第1号証?乙第5号証を提出し、甲第3号証と甲第4号証を引用して反論しているところ、乙第1号証では、水銀圧入法で測定可能な範囲の直径(本件特許明細書段落【0029】の説明では3nm程度)から7600nmの細孔(なお、乙第1号証における気孔径に関し、被請求人が答弁書において「半径」を意味すると主張しているが、段落【0024】の気孔径の説明から「直径」であることが明白である。)の細孔容積が0.2?0.4cm^(2)/gの多孔質ガラス状炭素、即ち活性炭を製造したことが理解でき、乙第2号証では、細孔直径20?30nm程度の細孔径を有する活性炭の製造が記載され、細孔容積が不明なものの、その程度の細孔直径を主とする活性炭を製造でき、甲第3号証の図4、図6、図7や甲第4号証のFig.5を検討すれば、炭化焼成する温度や賦活時間によって、細孔径や細孔容積が変化することが理解でき、乙第3号証(第51頁参照)には、活性炭の薬剤賦活では、含浸させる薬品の質量比が増加するにつれて細孔径を大きくかつ細孔容積も大きくでき、活性炭化(焼成)温度が孔隙の形成に大きく関与することが示されているし、希土類や遷移金属の錯体や塩を添加して賦活することによってメソ孔(2nm?50nm直径)の形成を選択的に形成できることが理解できる。 ところで、乙第1号証、乙第2号証、甲第3号証、甲第4号証では、炭素源としてフェノール樹脂を含有し、乙第3号証では炭素源が言及されていないものであるところ、弁駁書において請求人は、乙第1号証と乙第2号証はフェノール樹脂と他の炭素源の混合物であってフェノール樹脂とは異なる旨を主張するが、いずれもフェノール樹脂を主たるものとし配合物を添加したものといえ、フェノール樹脂を炭素源とするものというべきであり、また、乙第3号証は炭素源に依存しないものと解するが妥当である。それ故、フェノール樹脂を炭素源とする場合については、細孔直径や細孔容積を制御できるとするのが妥当と認められる。 また、イオン交換樹脂を炭素源とする場合についても、フェノール樹脂と同様の熱硬化性樹脂の一つであること、及び、細孔容積の記載を満たす例が本件明細書に記載されていないものの、0.42mL/g(規定された0.25mL/gを超える)の参考例があり、前記実験成績証明書Aに示された0.089mL/g(規定された細孔容積に合致する)などの例を勘案できることから、細孔直径や細孔容積を制御できるとするのが妥当と認められる。 かように、活性炭の細孔直径および細孔容積が焼成条件、賦活条件などによって制御できることは技術常識と認められ、所望の細孔容積は、活性炭の製造条件および賦活条件などによって適宜案配できるものとするのが妥当と認められる。 そのような状況にあっては、「数値限界の0.25mL/g未満」の全範囲に渡って制御することは、ある程度の蓋然性で細孔容積を変化させ得ることが理解できれば足りるものというべきである。 以上のとおり、従来技術を勘案すると、本件特許の請求項1?7に係る発明の球状活性炭を製造し、使用することができる程度には発明の詳細な説明が記載されているものと認められる。 よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載していないということができないから、無効理由2に関する請求人の主張は、理由がないものであり採用できない。 (6-3)無効理由3(特許法第36条第6項第1号違反;記載不備)について (i)「除くクレーム」としたことによる記載不備について 除く対象であるR値に関して本件特許明細書に言及がないのは、「除くクレーム」として規定されたのであるから当然のことである(但し、R値の規定は特許請求の範囲に式で明示されているから、その明示された式よって計算することは容易になし得ることである。)。そのため、必要に応じて、R値については、「除く記載」を追加することの原因となった同日出願(甲第6号証)の明細書の記載を勘案するのが適切といえる。 そして、製造と作用効果と実験成績証明書の意義については、「前記(6-2)(i)」において既に判断したとおりである。 ところで、弁駁書(第18頁の(エ)参照)において請求人は、甲第6号証の段落【0017】の記載を引用し、「このように、「R値」という概念について初めて開示された同日出願の明細書に、「R値が1.4以上」という物性が優れた選択吸着性を得るための条件として明記されていることを考慮すれば、本件特許出願明細書の発明の詳細な説明の記載に基いて、R値が1.4未満の球状活性炭が、優れた選択吸着性を有し、経口投与吸着剤として有効に機能し得ることを推認することは、ほとんど不可能であるといわざるを得ない。」と主張している。 しかし、「前記6.(6-1)」と「前記6.(6-2)」で言及したように、本件特許発明の「除く記載」を追加する前の発明は、R値に関係なく炭素源の材質を限定することによって成り立っているものであって、本件特許発明は、権利範囲の重複を回避するために特定のR値のものをその発明から除いたにすぎないものであるから、本件特許発明の吸着剤の物性や有効に機能することについては、本件特許発明とは異なる技術思想である同日出願の発明のR値の技術的意義に拘束されるべきではなく、R値が1.4以上を用い除いた部分を含めて(即ち、R値が1.4未満の場合とR値が1.4以上の場合を併せた出願当初の場合)理解でき、除いた残りの部分についても同様な物性や有効性が推認できるものといえ、また、拒絶査定不服審判係属中の拒絶理由に対する応答時に提出された実験成績証明書A,B(平成18年5月15日付け)によって製造ならび有効性が釈明されている。 なお、本件特許出願からの分割出願に対してなされた拒絶理由は別の出願に対する見解であり、その拒絶理由によって上記判断が左右されるわけではない。 また、平成17年(行ケ)第10042号の判決の記載を引用しての請求人の「本件のように、発明の詳細な説明にそもそも開示されていない発明思想を出願後に初めて開示し、当該開示に基いて特許を受けようとすることは到底許されない。」との主張は、本件特許の請求項1?7に係る発明の場合には、R値に関係なく発明されていると解され、R値1.4以上の場合を除いても開示されていると解するのが相当と言えるから、採用できない。 (ii)「細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満」については、「前記(6-2)(ii)」において既に判断したとおりである。 よって、本件特許の請求項1?7に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものでないということができない。 (iii)「請求項2?7は、請求項1を限定するものであるが、これらの限定は上記不備を解消し得る限定ではないから、これらの請求項に係る発明も同様に発明の詳細な説明に記載されたものではない。」との請求人の主張は、前記検討で示したと同様な理由で、失当である。 よって、無効理由3に関する請求人の主張は、理由がないものであり採用できない。 (6-4)無効理由4(特許法第36条第6項第2号違反;R値に関する記載不備)について (i)R値について 本件特許発明には、R値に関し、『R=(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35)) (1) 〔式中、I_(15)は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I_(35)は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I_(24)は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕』と、明確に定義されている。 そもそも当初明細書に記載がない技術事項を用いて「除くクレーム」を規定するのであるから、発明の詳細な説明において、その技術説明が必ずしも必要なわけではない。 そして、R値についての具体的説明がない点については、「前記(6-2)(i)」と「前記(6-3)(i)」で検討したとおりであり、記載不備に当たらない。 (ii)回折強度の測定方法について X線回折強度の測定は既に周知であって、被請求人が提出した乙第6号証?乙第8号証の一般的な規格(JIS、学振法、日本薬局方)からみても明らかであるし、試料作成方法や測定条件も当業者が技術常識に従い、適宜決定し、設定できる程度のものと認められる。 ところで、弁駁書第22頁において、「活性炭は、無定形(非結晶)の炭素物質である(甲第12号証の第275頁の「活性炭」の欄第10行を参照)。従って、活性炭の回折強度の測定は、JISや日本薬局方が定める結晶性物質のX線回折測定の対象外である。」と請求人は反論するが、X線回折データが得られるのであるから、参考にできない理由とはなり得ないし、例えば、請求人の提出した甲第3号証にも活性炭のX線回折に当たっては「学振法にしたがって」と明示されている(摘示(3-i)参照)ことからみても、請求人の前記反論は失当である。 更に、R値は、そもそも「前記(6-1)」の(b)に説明の如く、特許第3672200号(甲第6号証の同一日出願の特許明細書参照)の特許請求の範囲に記載された発明との同一性を解消するために「除くクレーム」として使用されたものであるから、同特許明細書の記載を参酌すべきものと認められるところ、その特許明細書には、「なお、I_(35)は回折角(2θ)が35°における回折強度であり、各測定試料間のバックグラウンドによる測定誤差を補正する目的で導入する。」(段落【0015】参照)、及び、「(4)回折強度比(R値) 球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料を120℃で3時間減圧乾燥した後、アルミニウム試料板(35×50mm^(2)、t=1.5mmの板に20×18mm^(2)の穴をあけたもの)に充填し、グラファイトモノクロメーターにより単色化したCuKα線(波長λ=0.15418)を線源とし、反射式デフラクトメーター法により回折角(2θ)が15°、24°、及び35°のそれぞれの角度における回折強度I_(15)、I_(24)、I_(35)を測定する。X線発生部及びスリットの条件は、印加電圧40kV、電流100mA、発散スリット=1/2°、受光スリット=0.15mm、散乱スリット=1/2°である。回折図形の補正には、ローレンツ偏光因子、吸収因子、原子散乱因子等に関する補正を行わず、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)回折線を用いて回折角を補正した。」(段落【0041】参照)と説明する記載がある。これらの記載は、特許請求の範囲に特定されたものではないが、十分に参酌すべきものと認められる。 したがって、「除くクレーム」の特定状況に鑑み、その原因となった特許明細書(甲第6号証の同一日出願の特許明細書)のR値の測定方法(換言すれば、回折強度の測定方法)の記載や周知技術を勘案すれば、本件特許明細書に回折強度の測定方法が記載されていないことをもって記載不備であるとまでいうことができない。 (iii)測定条件による変動について 請求人は、甲第10号証及び甲第11号証を提示して、試料粉砕の程度や試料の厚みなどの測定条件によって回折強度は変動すると主張するけれども、「十分にこまかいものを用いないと回折測定強度の再現性が失われる。」とか、「結晶粒子の数が十分に多く、各々の粒子の数はまったく無秩序に配向しなければならない。」、「粒子の大きさが0.5?0.2μ以下になると、回折像の幅が増大するので、定量分析の目的にそぐわない。」などの記載(甲第10号証参照)があるだけで、また、「測定場所や測定者が異なっても、互いに比較できる値を簡単に得られる統一的なX線測定法として、わが国では早い時期にいわゆる学振法が制定された。」(甲第11号証参照)などの記載はあるものの、X線回折強度の測定に十分に配慮すべきことが記載されているだけであり、上記の如く、甲第6号証の同一日出願の特許明細書の測定方法(段落【0041】参照)に準拠し、技術常識で適宜決定した試料作成方法や測定条件の下に測定したものであれば、及び、R値が回折強度そのものではなく、強度のベースラインの振れを打ち消した回折強度の相対比であることを勘案すると、R値が著しく変動すると解すべき理由がない。 ところで、弁駁書第23頁?24頁の(オ)?(カ)において請求人は、相互間の相対強度は変化しないとの点についての答弁書の記載に反論しているが、答弁書におけるベースラインを勘案した倍率の関係はそれなりに理解できるものであるところ、弁駁書における請求人の反論は次のように誤解に基づくものであることが明らかである。 まず、甲第6号証の段落【0015】に記載されたように「I_(35)は回折角(2θ)が35°における回折強度であり、各測定試料間のバックグラウンドによる測定誤差を補正する目的で導入する。」とされている。そして、答弁書においては、測定して得られる回折強度Iは、回折強度Yとベースライン強度BLの和で得られると説明され、即ちI=Y+BLとなるところ、回折角2θの2つの角(15°と35°)でのIの差がYの差、即ちI_(15)-I_(35)=Y_(15)-Y_(35)となるからベースラインの影響を解消でき、そして、測定条件による影響がYをnYとし、BLをBL’(BLはnBLとは必ずしもならない)とする場合であっても、(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35))の比率は、測定条件によるn倍の影響を解消でき(Y_(15)-Y_(35))/(Y_(24)-Y_(35))となる旨が説明されている。 一方、請求人は、乙第9号証に記載された測定データを用いI_(15)、I_(24)、I_(35)の倍率(測定日の異なるデータの倍率,例えば、「測定日2007.5.8のI_(15)」/「測定日2007.1.31のI_(15)」の比1.1673)がI_(15)、I_(24)、I_(35)のそれぞれに関し異なることを主張するが、答弁書における説明は、甲第6号証の段落【0015】に説明があるように、「各測定試料間のバックグラウンドによる測定誤差を補正する目的で導入する」ものであって、(I_(15)-I_(35))と(I_(24)-I_(35))の差分の比率を採ることによってベースライン強度の変動をなくすものであることが明らかといえるのであるから、弁駁書における前記計算は全く無意味なものであるといえる。そして、R値に変動がないことは、前記甲第6号証に記載された条件で測定された乙第9号証のデータによっても裏付けられていて、一応矛盾しない。 一方、弁駁書第24頁の(キ)において、甲第13号証(実験報告書)を提示し、「R値は、例えば、試料板、試料厚み、測定値の補正の有無等によって変動するものである。」と反論する。 そこで、甲第13号証を検討する。 表3のデータは、用いられた解析方法2(○つき数字であるが表示できないため○を省略する。以下、同様。)のバックグランドの修正が、甲第6号証の同一日出願の特許明細書のバックグランドの修正であるI_(35)との差分をとって影響を排除することにより行われることと異なることからみて、到底勘案し難いものである。 表1,2のデータは、試料層厚と試料版(プラスチックとアルミ試料板)乃至は測定装置による影響をみているものと解せられるが、測定値の変動があるもののそれほど大きくないし、そもそも甲第6号証の同一日出願の特許明細書では、アルミニウム試料板(35×50mm^(2)、t=1.5mmの板)を用い、回折角の補正は高純度粉末のシリコン(111)回折線を用いて測定されいるのであるから、本願特許発明においてもその条件を採用するのが妥当といえるにもかかわらず、前記表1,2のデータの測定ではそれの条件を採用していない。 してみると、前記適切な測定条件を採用していない甲第13号証のデータを勘案するのは適切とは言えず、R値の変動の程度が著しいと解することは妥当ではない。 したがって、請求人の主張及び証拠方法によっては、R値を求めるための回折強度の測定の方法が不適切であって、R値が測定条件によって変動する、と言うことができない。 そして、他に、特許を受けようとする発明が明確でないとすべき理由も見い出せない。 よって、無効理由4に関する請求人の主張は、理由がないものであり採用できない。 (6-5)無効理由1(特許法第29条第2項違反;発明の容易性)について (6-5-1)甲第1号証に記載の発明 甲第1号証には、「前記5.」の甲第1号証の摘示記載からみて、 「直径が0.05?2mmであり、比表面積(メタノール吸着法による)が500?2000m^(2)/gであり、細孔半径100?75000オングストローム(細孔直径20?15000nm)の空隙量が0.01?1m l/gである経口投与用の吸着能に優れた球形活性炭又は酸化及び還元処理を施した球形活性炭を有効成分とする、肝疾患又は腎疾患の治療若しくは予防に用いる剤。」 の発明(以下、「甲第1号証発明」という。)が記載されていると認められる。 (6-5-2)対比・判断 (i)本件特許の請求項1に係る発明について そこで、本件特許の請求項1に係る発明と甲第1号証発明とを対比する。 (a)甲第1号証発明の「経口投与用の吸着能に優れた球形活性炭又は酸化及び還元処理を施した球形活性炭」は、吸着剤であることが明らかであるから、該球形活性炭を有効成分とする剤は、本件特許の請求項1に係る発明の「球状活性炭からなる」「経口投与用吸着剤」に相当する。 (b)甲第1号証発明の「直径が0.05?2mmであり」は、その実施例1において直径0.05?1mmのものを製造(段落【0020】参照)していることからみても、本件特許の請求項1に係る発明の「直径が0.01?1mmであり」に対応し、「直径が0.05?1mmで」一致している。 (c)甲第1号証発明の「細孔半径100?75000オングストローム(細孔直径20?15000nm)の空隙量が0.01?1m l/gである」は、本件特許の請求項1に係る発明の「細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満である」に対応し、特定範囲の細孔直径(細孔直径20?15000nmでは重複)の細孔容積を特定している点で一応一致する。 してみると、両発明は、 「直径が0.05?1mmであり、比表面積が特定されたもので、そして特定範囲の細孔直径の細孔容積を特定した球状活性炭からなる経口投与用吸着剤。」 で一致するが、次の相違点で相違する。 <相違点> (A)球状活性炭を製造するための原料に関し、本件特許の請求項1に係る発明では、「フェノール樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源とし」と特定しているのに対し、甲第1号証発明では、そのように特定していない点。 (B)比表面積の特定に関し、本件特許の請求項1に係る発明では、「ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m^(2)/g以上であり」と特定しているのに対し、甲第1号証発明では、「比表面積(メタノール吸着法による)が500?2000m^(2)/gであり」と特定している点。 (C)特定範囲の細孔直径の細孔容積を特定した点に関し、本件特許の請求項1に係る発明では、「細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満」と特定しているのに対し、甲第1号証発明では、「細孔半径100?75000オングストローム(細孔直径20?15000nm)の空隙量が0.01?1m l/gである」と特定している点。 (D)本件特許の請求項1に係る発明が、「但し、式(1): R=(I_(15)-I_(35))/(I_(24)-I_(35)) (1) 〔式中、I_(15)は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I_(35)は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I_(24)は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕 で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭を除く、」と特定しているのに対し、甲第1号証発明ではそのように特定されていない点。 そこで、先ず、(A)の相違点について検討する。 甲第1号証発明では、球状活性炭を製造するための原料として、特に石油系ピッチ由来のものが好ましく、唯一の実施例でもナフサ分解により生成したピッチが用いられている(摘示(1-iii),(1-vii)参照)。 しかし、任意の活性炭原料を用いることができるとされ、熱硬化性の有機合成高分子についても、「【0007】球形活性炭の製造には、任意の活性炭原料、例えば、オガ屑、石炭、ヤシ殻、石油系若しくは石炭系の各種ピッチ類又は有機合成高分子を用いることができる。・・・・ 【0008】球形活性炭としては、炭素質粉末からの造粒活性炭、有機高分子焼成の球形活性炭及び石油系炭化水素(石油系ピッチ)由来の球形活性炭などがある。・・・(後略)。 【0009】有機高分子焼成の球形活性炭は、例えば、特公昭61-1366号公報に開示されており、次のようにして製造することが可能である。縮合型又は重付加型の熱硬化性プレポリマーに、硬化剤、硬化触媒、乳化剤などを混合し、撹拌下で水中に乳化させ、室温又は加温下に撹拌を続けながら反応させる。反応系は、まず懸濁状態になり、更に撹拌することにより熱硬化性樹脂球状物が出現する。」(摘示(1-iv)参照)と記載されている。 ここに、記載された特公昭61-1366号公報は、甲第2号証として提示された文献であるところ、前記摘示(2-i)?(2-iv)で示された如く、熱硬化性樹脂プレポリマーから得られた球型活性炭に関しての記載があり、フェノール樹脂などの各種のものが例示され、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂の実施例が示されているが、優れた吸着能(実施例でヨウ素吸着能、尿酸吸着能、総ビリルビン吸着能を測定)を示すとされているだけで、経口用の吸着剤とすることは記載されていない。 また、活性炭の炭素源としてイオン交換樹脂を使用することは、甲第1号証と甲第2号証のいずれにも記載されていない。 この点に関し、請求人は弁駁書(第30?31頁参照)において、 『甲第2号証の実施例では、製造されたフェノール樹脂を炭素源とする球型活性炭(実施例2)の尿酸吸着能及び総ビリルビン吸着能を評価している(第1表)。 尿酸はプリン体代謝産物であり、血中尿酸濃度が一定値以上の病態は高尿酸血症と呼ばれる。高尿酸血症は、痛風、腎不全、心血管系障害などを引き起こす(甲第14号証の第1469頁「尿酸」の欄、第646頁参照「高尿酸血症」の欄を参照)。 また、ビリルビンは、ヘムの最終産物であり、その約80%は赤血球の崩壊に由来する。血中ビリルビン濃度が一定値以上の病態は、高ビリルビン血症(黄痘)と呼ばれる(甲第14号証の第1661?1662頁「ビリルビン」の欄、第649?650頁「高ビリルビン血症」の欄を参照)。 すなわち、「尿酸」及び「ビリルビン」は、生体における生産物であり、これらの生産物の血中濃度が一定値以上になると、それぞれ「高尿酸血症」及び「高ビリルビン血症」と呼ばれる病態を招く。 一方、活性炭は、従来、腎臓や肝臓の疾患により血中濃度が異常に上昇した尿酸、クレアチニンなどの老廃物、各種毒物を除去する目的、いわゆる血液浄化の目的で広く使用されてきた(例えば、甲第15号証第1欄、甲第16号証第279頁を参照)。 また、その際に、活性炭を経口投与することも周知である(例えば、甲第15号証第3欄第7?9行、甲第16号証第280頁右上欄9?10行参照)。 以上より、甲第2号証の実施例における、球型活性炭の「尿酸吸着能」及び「総ビリルビン吸着能」の評価は、製造した球型活性炭を高尿酸血症や高ビリルビン血症の治療に使用することを意図したものであることは、当業者であれば当然に理解できる。 そして、球状活性炭を医療用途に適用する際に、経口投与用吸着剤とすることも、周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得たことである。』と主張している。 かかる主張に鑑みれば、また、甲第1号証では経口用のものを意図しているのであることから、甲第1号証発明において、甲第2号証記載の活性炭を採用し経口用の吸着剤として用いることを想い到る可能性はあるといえる。 しかしながら、甲第1号証発明における球状活性炭の原料に関し、甲第2号証の記載及び甲第14号証?甲第16号証の記載を勘案しても、多数の選択肢の中の一つである熱硬化性樹脂であって、その一例であるフェノール樹脂を採用できる可能性が示唆されていると言えるに止まる。 ここで、作用効果について検討する。 本件特許の請求項1に係る発明は、「直径が0.01?1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m^(2)/g以上であり、そして細孔直径7.5?15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満である球状活性炭」を、炭素源としてフェノール樹脂やイオン交換樹脂を使用することにより、ピッチ等の他の炭素源を使用する場合に比べて、優れた選択吸着特性を有するものとするものである。 そして、本件特許の請求項1に係る発明が選択吸着特性に優れることは、本件特許明細書(段落【0012】,【0004】参照)に記載されていて、単に、経口投与に伴う、有毒な毒性物質(例えば、β-アミノイソ酪酸)の消化器系内における吸着性能が優れていることを目的とするだけではなく、消化酵素(例えば、α-アミラーゼ)等の体内の有益成分の吸着性が少ないとの選択吸着性が優れたもものであることを作用効果とするものである。 その作用効果の評価は、「(3)選択吸着率 炭素質吸着剤の使用量が0.500gの場合のα-アミラーゼ吸着試験におけるα-アミラーゼ残存量、及び同様に、炭素質吸着剤の使用量が0.500gの場合のDL-β-アミノイソ酪酸吸着試験におけるDL-β-アミノイソ酪酸残存量のそれぞれのデータに基づいて、以下の計算式: A=(10-Tr)/(10-Ur) (ここで、Aは選択吸着率であり、TrはDL-β-アミノイソ酪酸の残存量であり、Urはα-アミラーゼの残存量である)から計算した。」(本件特許明細書段落【0039】参照)で定義される選択吸着率を指標として行なうものであるところ、本件特許明細書の表1,2に、石油系ピッチを炭素源とする活性炭を用いた比較例1,2の選択吸着率が劣り、フェノール樹脂を炭素源とした方が選択吸着率に優れていることが示され、また、R値が1.4未満の場合でも選択吸着率が優れていることが拒絶査定不服審判継続中に提示された実験成績証明書B,A(「前記6.(6-1)での摘示を参照)によって釈明されている。そして、フェノール樹脂と同様に熱硬化性樹脂の一つであるイオン交換樹脂についても、同様な作用効果を有するものとするのが妥当である。 そのような作用効果の観点からみれば、甲第1号証発明において、前記フェノール樹脂(またはイオン交換樹脂)を炭素源とした活性炭を用いることを思い至ったところで、せいぜい実施例のある石油系ピッチを原料とする場合と同程度の経口用活性炭としての作用効果が期待できる程度というべきであって、前記選択吸着率については甲第1号証発明において言及されていないものであるから、本件請求項1に係る発明で目的・作用効果としている選択吸着率が優れていることまで予測することなどできるものではない。 なお、弁駁書(第31?34頁参照)において、甲第2号証の実施例2に関し、フェノール樹脂を炭素源とし、その炭化、賦活の条件が甲第1号証及び甲第5号証に記載の炭化、賦活の条件の範囲内のものであるから、「本件特許発明に用いられる球状活性炭と炭素源及び製造方法を同一にする甲第2号証の実施例2の球型活性炭は、本件特許発明に用いられる球状活性炭と同様の細孔構造を有しており、用途を特定しない”物”として同一である蓋然性が極めて高い。」こと、及びそれを前提に「医薬用とを意図して製造された物について、医薬としての実用化を試みるために種々の試験を行い、その効果を確認することは、通常の創作の範囲であり、当業者が容易に想到し得たことである。 以上より、本件特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得た発明である。」と請求人は主張する。 しかし、製造方法が全く同一であるとまで断言できないし、賦活前の粒径が0.7mmφ、賦活後の比表面積が1640m^(2)/g(測定条件不明)で、微細構造が形成されておりとの記載(摘示(2-ii)?(2-iv)参照)があって、仮に粒径と比表面積が本件特許の請求項1に係る発明の特定範囲に入ると仮定しても、細孔直径7.5?15000nmの細孔容積がどの程度のものであるのか不明であって、物として同一であるとまで断言することはできないから、単に作用効果を確認しただけとの判断をすべきではないし、まして、作用効果が予測できないことを否定できるものではない。 このように、本件特許の請求項1に係る発明の作用効果が、上記のとおり(当該発明の他の構成を伴って)炭素源としてフェノール樹脂(またはイオン交換樹脂)を選択した((A)の相違点)ことによって、格別予想外に優れているから、炭素源の選択に格別の困難性があるといえるので、(B)?(D)の相違点について実質的に相違するかどうか乃至はその相違が容易に想い到るものかどうかを検討するまでもなく、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第14号証乃至甲第16号証の記載を勘案したとしても、甲第1号証発明と甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであると認めることができない。 次に、甲第3号証及び甲第4号証には、フェノール樹脂を原料とする活性炭の製造について記載されているが、経口投与用吸着材としの記載もなく、選択吸着率の言及もないことから、甲第3号証及び甲第4号証の記載を勘案しても、上記容易に想到し得ないとの判断を左右できるものではない。 更に、甲第5号証には、細孔直径20?15000nmの細孔容積が大きくなればなるほど有益物質の吸着が起こりやすくなるため、有益物質の吸着を少なくする観点からは、前記細孔容積は小さいほど好ましい旨の記載(摘示(5-ii)参照)があり、選択吸着率について改善があることが記載されているが、活性炭の炭素源としてはピッチ類が記載されているだけで、フェノール樹脂等を原料とする場合について示唆があるわけではなく、ピッチを炭素源とした活性炭の実施例に示された選択吸着率も1.62?1.76程度(摘示(5-viii)参照)であって、フェノール樹脂(またはイオン交換樹脂)を炭素源とする本件特許の請求項1に係る発明の選択吸着率(表1,2に記載された選択吸着率2.6?4.7を参考に、拒絶査定不服審判継続中に提示された実験成績証明書A,B(「前記6.(6-1)での摘示を参照)で釈明された選択吸着率2.4?3.9)に比べ劣っていると認められることから、甲第3号証及び甲第4号証の記載に加え更に甲第5号証を勘案しても、上記容易に想到し得ないとの判断を左右できるものではない。 次に、甲第1号証乃至甲第5号証には言及がないイオン交換樹脂を炭素源とする活性炭については甲第7号証に言及があるものの、甲第7号証には経口投与用吸着剤としての観点からの記載もなく、選択吸着率についての言及もないことから、上記の検討結果と同様に、甲第7号証を更に加え(甲第2号証乃至甲第4号証の記載を勘案し)甲第5号証の記載を考慮しても甲第1号証記載の発明から当業者が容易に想到し得たものであると認めることができない。 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第14号証乃至甲第16号証の記載を勘案しても、甲第1号証発明、及び甲第2号証?甲第5号証と甲第7号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものであると認めることができない。 (ii)本件特許の請求項4に係る発明について 本件特許の請求項4に係る発明は、本件特許の請求項1に係る発明に更に「全酸性基が0.40?1.00meq/gであり、全塩基性基が0.40?1.10meq/gであり」との構成を付し、且つ、球状活性炭が「表面改質」したものであるとこを付したものであるから、前記(i)と同様な理由により、甲第14号証乃至甲第16号証の記載を勘案しても、甲第1号証?甲第5号証、甲第7号証の記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであると認めることができない。 (iii)本件特許の請求項2,3,5に係る発明について 本件特許の請求項2,3に係る発明及び本件特許の請求項5に係る発明は、本件特許の請求項1に係る発明又は本件特許の請求項4に係る発明の必須構成を更に限定したものであるか、または更に他の構成を追加したものであるから、前記(i),(ii)と同様な理由により、甲第14号証乃至甲第16号証の記載を勘案し、甲第8号証及び甲第9号証の炭素化収率の記載を勘案したとしても、甲第1号証?甲第5号証、甲第7号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであると認めることができない。 (iv)本件特許の請求項6,7に係る発明について 本件特許の請求項6,7に係る発明は、本件特許の請求項1?5に係る発明の経口投与吸着剤を有効成分とする腎疾患・肝疾患の治療又は予防剤であって、本件特許の請求項1?5に係る発明の必須構成を有するものであるから、前記(i)?(iii)と同様な理由により、甲第14号証乃至甲第16号証の記載を勘案しても、甲第1号証?甲第5号証、甲第7号証?甲第9号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであると認めることができない。 (6-5-3)まとめ よって、無効理由1に関する請求人の主張は、その証拠方法によっては理由がないものであり採用できない。 7.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては本件特許の請求項1?7に係る発明についての特許を無効とすることができない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-01-08 |
結審通知日 | 2008-01-11 |
審決日 | 2008-01-23 |
出願番号 | 特願2004-548107(P2004-548107) |
審決分類 |
P
1
113・
537-
Y
(A61K)
P 1 113・ 536- Y (A61K) P 1 113・ 55- Y (A61K) P 1 113・ 521- Y (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大宅 郁治、加藤 浩 |
特許庁審判長 |
川上 美秀 |
特許庁審判官 |
塚中 哲雄 弘實 謙二 |
登録日 | 2006-08-04 |
登録番号 | 特許第3835698号(P3835698) |
発明の名称 | 経口投与用吸着剤、並びに腎疾患治療又は予防剤、及び肝疾患治療又は予防剤 |
代理人 | 上田 一郎 |
代理人 | 山内 貴博 |
代理人 | 田中 昌利 |
代理人 | 古川 裕実 |
代理人 | 辻田 朋子 |
代理人 | 脇村 善一 |
代理人 | 山口 健次郎 |
代理人 | 森田 憲一 |