ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 H01L |
---|---|
管理番号 | 1210176 |
審判番号 | 無効2007-800278 |
総通号数 | 123 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-03-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2007-12-27 |
確定日 | 2010-01-14 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3887614号「切削方法」の特許無効審判事件についてされた平成20年 6月24日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成20年(行ケ)第10294号、平成20年9月29日)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3887614号の請求項3に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 平成 9年 7月 2日 原出願 平成15年 7月 8日 本件出願(原出願の分割) 平成18年12月 1日 設定登録(特許第3887614号) 平成19年12月26日 無効審判請求 平成20年 3月26日 答弁書 平成20年 4月18日 請求人・上申書 平成20年 5月14日 両者・口頭審理陳述要領書、第1回口頭審理 平成20年 6月 2日 被請求人・上申書 平成20年 6月24日 一次審決 平成20年 9月29日 差戻決定 平成20年10月17日 訂正請求書 平成20年11月14日 弁駁書 平成21年 1月22日 被請求人・口頭審理陳述要領書、 第2回口頭審理 本審決において、引用文中の丸囲み数字は、「丸1.」のように置き換えて表記した。 第2.訂正請求について 1.訂正請求の内容 被請求人は、訂正請求書を提出し、訂正を求めた。 被請求人が求めた訂正の内容は、請求項3に関し、後記第3.に当審で付した下線部のとおり、(ア)「第一のスピンドル」、「第二のスピンドル」について、ともに、「Y軸方向に移動する」を「Y軸方向に個別に移動する」に、「端部の方向に割り出し送りし」を「端部の方向に個別に割り出し送りし」に訂正、(イ)「精密切削装置」を、「半導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と、該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートを検出するアライメント手段とを備え」、「半導体ウェーハが該アライメント手段の直下に位置付けされ、該アライメント手段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートが検出され」るものとし、切削されるストリートが「アライメント手段によって検出され」るものに訂正するとともに、対応する発明の詳細な説明を訂正するというものである。 2.訂正請求についての当審の判断 訂正請求について検討する。 訂正事項(ア)は、「第一のスピンドル」、「第二のスピンドル」についての移動態様を特定するものであり、訂正事項(イ)は、切削されるストリートの検出手段を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。 なお、この点は、両当事者間に争いはない(第2回口頭審理調書(以下「調書2」という。)「両当事者 2」)。 したがって、上記訂正は、特許法第134条の2第1項の規定に適合し、同条第5項で準用する特許法第126条第3項、第4項の規定にも適合するので、上記訂正を認める。 第3.本件発明 本件特許の請求項3に係る発明(以下「本件発明3」という。)は、訂正された明細書によれば、以下のとおりである。 なお、A-1.等の分説は、弁駁書において付されたものである。 「A-1.一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと、他方のモーターの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され、 A-2′.該一方のネジには、該一方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第一のスピンドル支持部材が係合し、該他方のネジには、該他方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第二のスピンドル支持部材が係合し、 A-3.該第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが配設され、該第二のスピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され、 B.該第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され、該第二のスピンドルには第二のブレードが装着され、 C.該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは、該第一のブレードと該第二のブレードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され、 D′.半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが、X軸方向に移動可能に配設され、半導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と、該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートを検出するアライメント手段とを備えた精密切削装置を用いて正方形または長方形の半導体ウェーハを切削する切削方法であって、 X.半導体ウェーハが該アライメント手段の直下に位置付けされ、該アライメント手段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートが検出され、 E.該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形または長方形の被加工物の端部に位置付けられ、該第二のブレードが該被加工物の中央部に位置付けられ、 F′.該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に、該チャックテーブルをX軸方向に移動させ、該被加工物の端部及び中央部に形成され該アライメント手段によって検出されたストリートをX軸方向に2本同時に切削し、 G′.該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま、該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に個別に割り出し送りし、該チャックテーブルをX軸方向に移動させて該アライメント手段によって検出されたストリートを2本ずつ切削する切削方法。」 第4.請求人の主張 請求人は、本件発明3を無効とするとの審決を求めている。 その理由の概要は、本件発明3は、本件原出願の出願前に頒布された刊行物である以下の証拠をもとに、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 甲第 1号証:実願昭58-49304号(実開昭59-156753号 )のマイクロフイルム 甲第 2号証:実願平1-76555号(実開平3-16343号)のマ イクロフイルム 甲第 3号証:特公平2-42604号公報 甲第 4号証:特開平7-186007号公報 甲第 5号証:特開昭59-224250号公報 甲第 6号証:特開昭61-65754号公報 甲第 7号証:特開平4-122501号公報 甲第 8号証:特開平4-372302号公報 甲第 9号証:特開平4-69107号公報 甲第10号証:実願平1-85083号(実開平3-26414号)のマ イクロフイルム 甲第11号証:特開昭62-162406号公報 甲第12号証:徳丸芳男ほか「機械工作2改訂版」実教出版株式会社、昭 和64年2月25日発行 甲第13号証:小林輝夫「機械技術入門シリーズ 研削作業の実技」理工 学社、1996年11月15日発行 甲第14号証:「JISハンドブック30 工作機械 1996」日本規 格協会、1996年4月20日発行 甲第23号証:特開平7-335593号公報 甲第24号証:特開平8-97271号公報 なお、甲第15?22号証、甲第25?26号証は、第2回口頭審理において、技術常識を示す参考資料とされた。 第5.被請求人の主張 これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。 その理由の概要は、以下のとおりである。 ア.答弁書第3ページ第1行?第4ページ第20行 「丸1.構成要件Aは、甲第1号証にも甲第2号証にも記載されていない。 請求人は、審判請求書の第5頁「7.(4)丸2.先行技術発明が存在する事実及び証拠の説明」において、構成要件Aが甲第1号証(以下「甲1」という。)に記載されていると主張している。そしてその根拠として、第7頁「7.(4)丸3.本件特許発明と先行技術発明との対比」では、「2つのスピンドルがY軸方向に配設されている点(A)」が本件特許発明と甲1発明とで共通すると述べている。しかし、2つのスピンドルがY軸方向に配設されている点は、構成要件Aのほんの一部にすぎず、それ以外の構成は、甲1にも甲2にも記載されていない。具体的には、構成要件Aのうち少なくとも ア)スピンドルのY軸方向の駆動にネジを用いる点、 イ)ネジを2本用いる点、 ウ)2本のネジに個々にスピンドル支持部材が係合する点、 エ)個々のスピンドル支持部材にそれぞれスピンドルが配設される点、 オ)2本のスピンドルが個々のネジによって個別に駆動される点、 カ)2本のネジが共にY軸方向(すなわち同一方向)に配設される点 は、甲1にも甲2にも記載されていない。換言すれば、甲1には、2本のスピンドルをY軸方向に駆動するための構成は何ら記載されていないのである。 そもそも、スピンドルが2本ある場合における駆動手法としては、双方のスピンドルを1本のネジで駆動する構成をとることも可能であるし、2本のスピンドルを2本のネジで個別に独立して駆動する構成をとることも可能であり、複数の選択肢があるが、甲1には2本のスピンドルをどのように駆動するかについては何ら記載されていないのであるから、構成要件Aのうち、各スピンドルを各ネジによって個別に駆動するようにした構成だけでも、甲1から直ちに導き出せるものでないことは明らかである。しかも、双方のスピンドルを1本のネジで駆動すれば、双方のスピンドルは常に同じ関係を保ったまま連動するしかない、すなわちブレード間隔が変化しないまま移動せざるをえないのに対し、構成要件Aのように各スピンドルを個別に駆動する構成とすればそれぞれのスピンドルが独立して動くことが可能となり、ブレード間隔を可変とすることができるのであるから、本件特許発明が採用している構成は、設計事項でもない。 更に、2本のネジを駆動手段として用いる場合は、ネジをX軸方向に配置したり、2本のネジを異なる方向に配置したり、2本のネジの関係が変化したりするように構成することもありうるのであるから、2本のネジを共にY軸方向に配設する構成も、甲1から直ちに導き出すことは不可能であるし、設計事項でもない。 本件特許発明では、切削ストロークの無駄をなくすために、第一のブレードと第二のブレードとが対峙するように第一のスピンドルと第二のスピンドルとをY軸方向に一直線上に配設しており(構成要件B、C)、更に、切削中は常に両スピンドルがこの関係が維持することが必須となる。一方、ストリート間隔は被加工物の種類等によって様々であり、各スピンドルがY軸方向に一直線上である関係を保ちつつ、ストリートの間隔に対応してそれぞれを独立してY軸方向に駆動できるようにする構成もまた不可欠なのである。したがって、このような駆動を可能とするためには、2本のネジを用い、各スピンドルに個別にネジを割り当てて個別に駆動し、2本のネジを共に基台のY軸方向(すなわち同一方向)に配設して両スピンドルが共にY軸方向に移動する構成としなければならないのであって、そのためには、構成要件Aを構成する多くの技術的要素は、構成要件B及びCと相侯って不可欠なのである。」 イ.答弁書第5ページ下から5行?第7ページ13行 「(2)甲1記載の考案及び甲2記載の考案には、本件特許発明に対する動機付けが存在しない。 本件特許発明は、切削作業における切削ストロークの長さが生産性に悪影響を与えていたことに鑑み発明されたものであり(本件特許明細書の第4段落)、スピンドルを一直線上に配置すると共に、その状態を維持しつつ正方形または長方形の被加工物に適した切削順序を採用することにより課題の解決を図ったものである。すなわち本件特許発明の本質は、被加工物の形状に応じて経時的な切削順序を工夫することによって生産性の向上を図った点にある。 一方、甲1記載の考案では、矩形のワークを切削対象としているが、経時的な動きについては記載も示唆もされていないし、「このため、多数個の圧電素子を切り出したり切削したりする場合には、加工に長時間を要することとなって生産性が損なわれるという問題がある。」(甲1の第3頁第18行?第4頁第1行)との記載からもわかるように、ワークが矩形であることや切削ストロークについては何ら考慮されていない。 また、甲2記載の考案においても、被加工物の形状は何ら考慮されていないし、そもそも甲2における切削対象は円形のウェーハであるから、正方形または長方形の被加工物であることを考慮することはありえず、更には切削ストロークを短くするというような発想もない。 特に、甲2記載の考案においては、全体としての切削ストロークは2枚の切削ブレードのうち切削ストロークが長い方に依存することとなり、切削ストロークや被加工物の形状を考慮に入れた切削順序を採用しようといった発想は皆無である。一方、本件特許発明は、正方形または長方形の被加工物の切削においては、円形の被加工物を切削する場合とは異なり、個々のブレードごとの切削ストロークの相違を考慮する必要はないと認識した上で、2本のスピンドルの位置関係と被加工物の形状と切削順序との関係が、生産性を向上させるためのポイントであることに着眼して発明されたものであり、このような着眼点が、被加工物の形状や切削ストロークを何ら考慮していない甲1及び甲2の考案から生ずることはありえないのであって、この意味で、甲1及び甲2に記載の考案には、本件特許発明に対する動機付けは存在しないのである。 (3)甲1記載の考案に対する甲2記載の考案の適用には動機付けがなく、阻害要因が存在する。 甲1記載の考案は、図2?5の記載から明らかなように、運転中において2つのカットホイールの向きや位置関係を柔軟に変化させることを必要とする考案である。一方、甲2記載の考案は、2つのブレードの間隔がスペーサによって固定されており、装置の運転中はブレード間隔を変化させることができない考案である。 すなわち、2つのカットホイールの向きや位置関係を柔軟に変化させて運転することを必要とする甲1記載の考案と、運転中はブレード間隔を変えられない甲2記載の考案とは、根本的な技術的思想において相反する関係にあり、甲1記載の考案に甲2記載の考案を適用する動機付けは存在しない。 また、甲1記載の考案に、ブレード間隔が固定される甲2記載の考案を適用すると、甲1記載の考案の本旨に反することとなり、その目的を達成することができなくなるのであるから、甲1記載の考案に甲2記載の考案を適用しようとするにあたっては、その阻害要因が存在する。」 ウ.被請求人平成20年5月14日付け陳述要領書第4ページ下から14行?第7ページ第11行 「丸2.課題の非共通性 前述のように、本件特許発明は、切削ストロークの長さが生産性に悪影響を与えることを問題点として認識したことを契機としている。 一方、甲1発明では、従来はカットホイール、カットホイールを支持するスピンドル及びワークをのせるテーブルが1つだけ設けられており、縦溝と横溝を切削するためにはワークの向きを変えてから切削する必要があることを問題点として認識しているだけであり、切削ストロークについては課題として認識されていない。 したがって、甲1発明は、本件特許発明とは解決しようとする課題が異なるのであり、甲1発明には、本件特許発明に対する動機付けは存在しない。 また、甲2発明においても、明細書第2頁第15行?第3頁第1行に「しかしながら上記ダイシングソウによる半導体ウェハ105の切断は、該半導体ウェハ105の直径が大きくなったり、半導体ウェハ105上に形成されている半導体ペレットの形状が小さくなればそれだけ切断するスクライブライン105aが長くなったり多くなるため、切断作業時間が比例的に増大するといった問題があった。」と記載されている通り、切削ストロークについては課題として認識されていない。 したがって、本件特許発明と甲2発明とは、解決しようとする課題が異なるのであり、甲2発明には、本件特許発明に対する動機付けは存在しない。 このように、本件特許発明では、切削ストロークを短くすることを課題としているのに対し、甲1発明及び甲2発明では、切削ストロークを短くすることが生産性向上に寄与することが全く認識されていない。したがって、当業者が甲1発明及び甲2発明の内容を知ったとしても、それを基に、本件特許発明のように切削ストロークの無駄をなくすような方法を採用しようという発想に至るとは考えられない。 丸3.作用の非共通性 前述のように、本件特許発明は、切削ストロークの無駄をなくすことを目的とする発明である。 一方、甲1発明では、切削ストロークの無駄がなくなるような制御は行われていない。また、甲2発明は、切削対象が円形の半導体ウェハであるから、切削ストロークに無駄がある。 このように、本件発明では切削ストロークの無駄をなくすことによって生産性の向上を図るのに対し、甲1発明及び甲2発明では、切削ストロークの無駄をなくすという作用は生じない。したがって、本件特許発明と甲1発明及び甲2発明とは作用が異なる。 また、本件特許発明では、それぞれのスピンドルが独立してY軸方向に移動する構成となっているため、ストリート間隔に対応して第一のブレードと第二のブレードのY軸方向の間隔を適宜調整した切削が可能となるのに対し、甲2発明ではブレード間隔が固定されているため、スペーサ用リングを交換しないかぎりはストリート間隔の変化に対応することができない。したがって、この意味でも、本件特許発明と甲2発明とは作用が異なる。 丸4.組み合わせの動機付けの不存在 本件特許発明は、2本のスピンドルの位置関係、被加工物の形状及び2つのブレードの位置決めという3つの技術的要素を効果的に関連付けることによって、切削ストロークに無駄を生じさせることなく効率良く切削するものである。仮に、これらの技術的要素のうち1つでも欠落すると、切削効率が低下してしまう。例えば、2本のスピンドルが一直線上にない関係にあったり、被加工物が円形であったりすると、切削ストロークに無駄が生じてしまう。したがって、これらの技術的要素をすべて同時に実現するために装置構成を構成要件A?Dのように特定したのであり、かかる装置構成を方法と切り離して考えることはできない。すなわち、本件特許発明は、構成要件A?Dで特定された装置を使用し、その装置の特性を活かして構成要件E?Gの方法を実施することにより、切削ストロークの無駄なく全ての切削位置を2本ずつ切削することができるという特有の作用効果を奏するものである。 一方、甲1発明及び甲2発明には、本件特許発明の装置または方法に類似する構成が部分的に点在しているだけである。そして、甲1発明にも甲2発明にも、切削ストロークや被加工物の形状を考慮するという着眼点がないのは明らかであるから、両発明から一部の構成要素を取り出して組み合わせる動機付けは存在しえない。すなわち、切削ストロークの無駄をなくそう、被加工物の形状に対応した手順を採用しようという意図がない以上、甲1発明に甲2発明を適用しようという発想は生じ得ない。 丸5.予測不可能な作用効果 本件特許発明は、「被加工物が正方形または長方形であるため、切削ストロークに全く無駄がなくなると共に、全ての切削位置を2本ずつ切削することができる。」という作用効果を奏する。切削ストロークに全く無駄がなくなるという作用効果は、2本のスピンドルを一直線上に配置すると共にその状態を維持しながら正方形または長方形の被加工物の切削位置を切削していくことにより生じるものである。また、全ての切削位置を2本ずつ切削することができるという作用効果は、第一のブレードを正方形または長方形の被加工物の端部に位置付け第二のブレードを当該被加工物の中央部に位置付け、その状態から第一のスピンドルと第二のスピンドルとの間隔を維持したまま割り出し送りをして切削していくことにより生じるものである。 一方、甲1発明では、矩形のワークが図示されているが、ワークが矩形であることを意識した切削は行われていないし、ワークの形状との関係で特別な作用効果が生じる発明でもない。また、甲2発明では半導体ウェハは円形であるし、ワークの形状を意識した手順が採用されているわけでもないから、切削ストロークに無駄が生じる。 したがって、切削ストロークに全く無駄がなくなると共に全ての切削位置を2本ずつ切削することができるという本件特許発明が奏する上記作用効果は、甲1発明または甲2発明からは予測できないものである。」 エ.被請求人上申書第2ページ下から8行?第11ページ第5行 「(1)請求人上申書によって提出された文献について 丸1.請求人は、請求人上申書と共に提出した特許権侵害差止等請求事件(平成19年(ワ)第19159号)の準備書面(被告第7)において、本件特許発明の構成要件A,B及びC(審判請求書におけるA-1,A-2及びA-3、以下ではそれぞれ構成要件A-1,A-2及びA-3とする)に相当する構成が、当該事件で提出された乙第16号証の1?乙第16号証の12(当審注、甲第3?14号証に同じ)に記載されていると主張している。しかし、乙第16号証の1?乙第16号証の12の中には、構成要件A-1,A-2及びA-3のすべてが記載された文献はない。具体的には以下の通りである。 ・・・ 丸2.以上のように、乙第16号証の1?乙第16号証の6には、少なくとも本件特許発明の構成要件A-3が記載されていないことが明らかである。また、本件特許発明における構成要件A-3は、本件特許の図3に示したような構造ではなく、図4に示した構造を意図したもので、2つのスピンドル支持部材の下部にそれぞれスピンドルを配設することにより、スピンドルの自重による先端部の下方変形を防止し、ブレードの下方に位置する被加工物を切削できるという作用効果を奏するものであるが、構成要件A-3に相当する構成を有しない乙第16号証の1?乙第16号証の6では、このような効果は奏し得ない。 乙第16号証の7?乙第16号証の10においては、請求人自身が認めているように、本件特許発明におけるネジが記載されていないから、本件特許発明の構成要件A-1,A-2及びA-3が記載されていないことが明らかである。 更に、乙第16号証の11では、ネジが存在するのか否かが確認できず、ネジが存在すると仮定しても何本なのかが確認できないから、本件特許発明の構成要件A-1,A-2及びA-3が記載されていないことが明らかである。 第16号証の12については、いずれの図においてもスピンドル及びネジの存在を確認できないから、本件特許発明の構成要件A-1,A-2及びA-3が記載されていないことが明らかである。 したがって、甲第1号証に記載された考案に甲第2号証に記載された考案及び訴訟で提出された乙第16号証の1?乙第16号証の12に記載された発明または考案を適用したとしても、本件特許発明には想到しない。 丸3.更に加えると、乙第16号証の1?乙第16号証の6に記載された装置は、いずれもスピンドルまたは主軸の先端においてワークを保持する構成となっている。一方、本件特許発明は、構成要件A-1,A-2及びA-3と構成要件B,Cとを切り離して考えることができないものであり、2本のネジにそれぞれスピンドル支持部材を係合させ、個々のスピンドル支持部材の下部にそれぞれスピンドルを配設することにより、2本のスピンドルが一直線上にある関係を維持しつつ個々のスピンドルに装着された第一のブレード及び第このブレードをY軸方向に移動させるようにした装置構成を前提としている。すなわち、本件特許発明の構成要件A?Cは、工具である2つのブレードを移動させるための構成であるのに対し、乙第16号証の1?乙第16号証の6に記載された装置は、工具ではなく被加工物を保持する部分を駆動するための構成となっており、この根本的な技術的思想の点で相違する。 請求人も、かかる相違点には気付いているようであり、それを不安に感じたのか、記載内容が十分でないのを承知の上で、敢えて乙第16号証の7?乙第16号証の12も提出したのであろう。 しかし、乙第16号証の7?乙第16号証の12に本件特許発明の構成要件A-1,A-2及びA-3に相当する構成が記載されていない点は既述の通りであるから、これらの文献は、本件特許発明の特許性に何ら影響を及ぼすものではない。 (2)組み合わせの阻害要因 甲第1号証に記載の考案に甲第2号証に記載の考案を適用することに関する阻害要因については、平成20年3月26日付け答弁書において主張した通りであるが、甲第1号証に記載された解決課題や実用新案登録請求の範囲との関係で若干補足すると、以下の通りである。 丸1.解決課題との関係 甲第1号証の第(2)頁第14行?第(3)頁第1行には、「従って、たとえば上記の圧電素子1で、溝4,5,6を形成する場合などには、一度縦溝4を切削した後、ワークの向きを変えて、横溝5,6を切削することが必要となる。このため、多数個の圧電素子1を切り出したり、切削したりする場合には、加工に長時間を要することとなって生産性が損なわれるという問題がある。」との記載がある。かかる記載からは、ワークの向きを変えることが生産性が損なわれる一因になっているということを読み取ることができる。したがって、課題解決手段としては、ワークの向きを変えないようにすることが不可欠となる。ワークの向きを変えるのであれば、課題は何ら解決しないことになる。 一方、甲第1号証の第1図に示されているように、圧電素子1には縦溝4と横溝5,6を形成しなければならないため、ワークの向きを変えずに縦溝4及び横溝5,6を形成するためには、カットホイールの向きを変えるほかない。したがって、甲第1号証の装置に甲第2号証に記載された考案のように2つのブレードの向き及び位置関係が固定された動きを適用すると、縦溝4及び横溝5,6を形成できなくなり、圧電素子を形成できなくなる。 このように、甲第1号証の解決課題との関係で、甲第2号証に記載された考案のように2つのブレードの向き及び位置関係が固定された動きを適用することはできないため、組み合わせの阻害要因があるといえる。 丸2. 実用新案登録請求の範囲との関係 甲第1号証の第(1)頁「2.実用新案登録請求の範囲」に記載された考案は、その記載内容が全体として1つの考案を構成しているものであり、一部でも構成要素が欠けると考案全体としては意味のないものとなる。すなわち、仮に、甲第1号証の考案に甲第2号証に記載された考案のように2つのブレードの向き及び位置関係が固定された動きを適用すると、甲第1号証の実用新案登録請求の範囲の後半部分、具体的には「一つのワークを一または複数のカットホイールが加工しているときのあきスペースに別のワークが位置していて別の一または複数のカットホイールが加工を行っている」については実現不可能となる。かかる後半部分は、ワークが複数あることを前提としており、甲第1号証の第4図及び第5図に図示された形態に対応する部分である。そして、かかる後半部分が実現不可能となると、実用新案登録請求の範囲に記載された1つの考案の要旨が変更されてしまう。 したがって、かかる観点からも、組み合わせの阻害要因が存在するといえる。」 オ.被請求人平成21年1月22日付け陳述要領書第2ページ第16行?第4ページ第3行 「請求人は、弁駁書において、『訂正請求によって追加された構成は、甲15?26号証にみられるごとく周知である。』と主張している。しかし、弁駁書で挙げられた甲15?26号証には、『アライメント』という言葉が記載されているにすぎず、本件特許発明のように、アライメント手段によってすべてのストリートを検出し、検出されたストリートを2つのブレードによって切削するという技術思想は、いずれの文献にも記載されていない。 本件特許発明では、切削すべきストリートをアライメント手段によって検出し、検出したストリートに2つのブレードを位置付けて切削するために、2つのスピンドルを個別に駆動することとしている。すなわち、アライメント手段により切削すべきストリートを検出することと、スピンドルを個別に駆動することとは不可分の関係にある。一方、甲2ではブレード間隔が完全に固定されているため、一方のブレードの位置を決めることにより自動的に他方のブレードの位置も決まる。したがって、甲1に甲2を適用すると、「個別に」駆動することは不可能である。そして、個別に駆動することが不可能であるということは、アライメントによるストリートの検出結果を利用して2つのブレードを所望の位置に位置付けることが不可能であることを意味するから、すべてのストリートをアライメントによって検出することは無意味となる。 ここで、最初の2本のストリートを切削する場面を想定してみると、本件特許発明では、その2本のストリートがアライメント手段によって検出されると共に、各スピンドルが個別に駆動されるから、2つのブレードを被加工物の端部及び中央部のストリートに正確に位置付けて切削することができる。切削しようとする被加工物の大きさやストリート間隔が多種多様であったり、製造誤差等があったりしても、各被加工物に対応して正確な切削が可能となる。また、アライメントによってすべてのストリートを検出することにより、ストリートの本数がわかるため、ストリートの本数に応じて中央部のストリートにブレードを位置付けることができる。 一方、甲1,2号証記載の発明を組み合わせた場合は、ブレード間隔が固定され、一方のブレードの位置が決まれば他方のブレードの位置も自動的に決まるから、仮に2本のストリートの位置をアライメントにより把握したとしても、2つのブレードを個別に駆動することができず、検出結果に基づいた切削はできない。また、被加工物の大きさやストリート間隔が異なっていたり誤差があったりすれば、そのことに対応することもできない。よって、甲第1,2号証記載の発明を組み合わせた場合は、すべてのストリートをアライメントにより検出する意味はない。アライメントによらずにストリート間隔に関する情報を得ていたとしても、すべてのウェーハのストリート間隔が全く同じであるとは限らないから、2つのブレードが同じ動作をしたとしても、ストリートを正確に切削できる保障はない。 また、ストリート間隔に誤差があれば、ブレード間隔が必然的に微調整されることはもとより、アライメント結果を活用して切削することを前提として、すべてのストリートを検出し、2つのスピンドルを個別に駆動するようにしている。」 カ.調書2「被請求人」 「2 甲第1号証の図2のものと図4、図5のものとは別装置であると解さ れる。 3 甲第24号証のアライメント手段は全てのストリートを検出するもの であるが、かかる技術が周知とまでは認められない。 4 アライメント手段によって検出された端部と中央部を切削する点はい ずれの証拠にも記載がない。 5 ブレード間隔を調整できるという効果は、構造上自明な効果である。 6 甲第2号証のものとアライメント手段とは相容れない。」 第6.当審の判断 1.本件発明 本件発明3は、上記第3.のとおりと認められる。 2.刊行物記載の発明 (1)甲第1号証 甲第1号証には、以下の記載がある。 ア.明細書第1ページ第18?20行 「本考案はICに使用されるシリコンウエーハーや圧電基板等の切削や切断加工に好適なダイシングソウに関するものである。」 イ.明細書第3ページ第2?17行 「本考案は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、圧電基板などの切り出しや切削などの加工が短時間にできるようにして生産性を向上することを目的とする。 本考案はこのような目的を達成するため、制御信号によって水平面内の任意位置に移動したり任意角度回転するチャッキングテーブル上に、圧電基板などのワークを載置固定し、制御信号によってワークに対し遠近あるいは水平面に移動したりするカツトホイールで加工するダイシングソウにおいて、一つのワークに対し個々に制御、あるいは連動される二以上のカツトホイールを配設するか、一つのワークを一または複数のカツトホイールが加工しているときのあきスペースに別のワークが位置していて別の一または複数のカツトホイールが加工を行なうようにした。」 ウ.明細書第4ページ第1行?第5ページ第2行 「このダイシングソウ10は、圧電基板12が載置されるテーブル14を備える。このテーブル14は図上上下方向(記号X方向)および、これと直交する左右方向(記号Y方向)にカツトホイールが移動可能に設けられている。なお、このテーブル14はさらに回転可能に設けられたものであってもよい。また、テーブル14は、ワーク12を粘着テープ16にはり付けそれを真空吸着する様に設けられている。さらに、ダイシングソウ10には互いに対向して配置されたカツトホイール18a,18bが設けられている。このカツトホイール18a,18bにはそれぞれスピンドル20a,20bの一端が固定されて、このカツトホイール18a,18bを支持している。また、スピンドル20a,20bの他端は各カツトホイール18a,18bに対して個々に設けられたモータ22a,22bの回転軸(図示省略)に連結されている。そして、カツトホイール18a,18b、スピンドル20a,20b、モータ22a,22bはテーブル14に対して上下方向(符号Z方向)さらに水平方向(符号Y方向)に移動可能に設けられる。」 エ.明細書第5ページ第10?11行 「カツトホイール18a,18bをそれぞれの役目に応じた量だけ下降させる。」 オ.明細書第5ページ第18?20行 「また、カツトホイール18aとカツトホイール18bとに同時に同じ作業をやらせてもよい。」 カ.明細書第6ページ第6?8行 「上記実施例においては、1つのワーク14に対して、2つのカツトホイール18a,18bを互いに対向配置したものを示した」 キ.第2図 ワーク12が長方形であることが看取できる。 これら記載事項を、技術常識を勘案しつつ、本件発明3に照らして整理すると、甲第1号証には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「Y軸方向に移動するモータ22aと、Y軸方向に移動するモータ22bと、 該モータ22aにはスピンドル20aが配設され、該モータ22bにはスピンドル20bが配設され、 該スピンドル20aの先端にはカツトホイール18aが装着され、該スピンドル20bにはカツトホイール18bが装着され、 該スピンドル20aと該スピンドル20bとは、Z軸方向に個別に移動可能で、該カツトホイール18aと該カツトホイール18bとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設可能とされ、 シリコンウェーハーを真空吸着するテーブル14が、X軸方向に移動可能に配設されているダイシングソウ10を用いて長方形のシリコンウェーハーを切削する切削方法であって、 テーブル14をX軸方向に移動させ、該カツトホイール18aと該カツトホイール18bにより、同時に、ワークを2本切削する切削方法。」 (2)甲第2号証 甲第2号証には、以下の記載がある。 ア.明細書第4ページ第18行?第6ページ第6行 「図に示すダイシングソウは半導体ウエハ9の縦横に形成されたスクライブライン9aに沿って切断して個々の半導体ペレットに分割するための装置であり、第1のダイシングブレ-ド1及び第2のダイシングブレード2を有し、各ダイシングブレード1,2は回転軸を共通にして平行で一定間隔を保って配置されている。上記第1のダイシングブレード1は一対のハブ4,4によって切断刃3の先端部を残した状態で挟持されたものであり、図示していない上下駆動機構によって上下動可能なスピンドル5の内蔵モータ(図示せず)によって高速回転する第1のブレード取付軸6に固定されている。さらに、上記第2のダイシイングブレード2は、上記第1のダイシングブレード1と同様に一対のハブ4,4によって上記切断刃3と全く同径の切断刃3′の先端部を離した状態で挟持されたものである。この第2のダイシングブレード2は、上記第1のダイシングブレード1が固定された第1のブレード取付軸6に取り付けられて一体で回転する第2のブレード取付軸7に固定されおり、該ブレード取付軸7の外周面にはスぺーサ用リング8が嵌着されて、この第2のダイシングブレード2と第1のダイシングブレード1との間に所定の間隔Hが保たれている。 上記スぺーサ用リング8の長さLは、例えば、第1及び第2のダイシイングブレード1,2間の間隔Hが切断する半導体ウエハ9の直径Dの2分の1の長さとなるように各ハブ4や切断刃3,3′の厚み等を考慮して設定されている。」 イ.明細書第6ページ第18行?第8ページ第11行 「この半導体ウエハ9をスクランブライン9aに沿って切断する場合には、まず、ダイシングブレード1の切断刃3の先端を半導体ウエハ9の最も周縁に近い位置のスクライブライン9a上に当接して切断時の初期設定を行う。この場合、ダイシングブレード1,2の切断刃3,3′の外径及びその回転中心が同一であるため、ダイシングブレード2の切断刃3′先端は半導体ウエハ9の半径長さHだけ離れたほぼ中心位置のスクライブライン9a上に当接された状態となりダイシングブレード2の高さ位置及びX-Yテーブル11の座標等の初期設定が効率よく行える。 初期設定が終了すると、スピンドル5の内蔵モータを回転させてブレード取付軸6,7を高速回転させてそれぞれに固定されている第1及び第2のダイシングブレード1,2を高速回転させると共に、該スピンドル5を切断深さ分だけ外部駆動機構によって下降させる。それに伴って、X-Yテ-ブル11をXまたはY方向に移動させると半導体ウエハ9を半径の長さ間隔Hを隔てた2本のスクライブライン9が同時に切断される。以後、X-Yテーブル11を移動させながら順次間隔Hを隔てた2本のスクライブライン9aを同時に切断する。 そして、第3図に示すように、半導体ウエハ9の略中心のスクライブライン9aに第1のダイシングブレード1の切断刃3が位置したとき、このスクライブライン9aは既に第2のタイシングブレード2の切断刃3′によって切断されているので切断作業は終了する。 従って、従来の切断時間の半分の時間で半導体ウエハ9の切断が終了して個々の半導体ペレットに分割することができるようになり、切断時間がほぼ半減する。」 以上から、甲第2号証には、以下の事項(以下「甲2事項」という。)が記載されていると認める。 「スピンドル5に回転可能に保持され、一体の取付軸6、7に、平行で一定間隔を保って配置された第1、第2のダイシングブレード1,2であって、その間隔を半導体ウエハ9の半径に一致させ、 該第1のダイシングブレード1がテーブル11に保持された半導体ウエハ9の最も周縁に近い位置に位置付けられ、該第2のダイシングブレード2が該半導体ウエハ9のほぼ中心位置に位置付けられ、該一体の取付軸6、7を下降させると共に、該テーブル11をX方向に移動させ、該半導体ウエハ9の周縁部及び中心部に形成されたスクライブライン9aをX方向に2本同時に切削し、該第1、第2のダイシングブレード1,2の間隔を維持したまま、該第1、第2のダイシングブレード1,2をもう片方の端部の方向に割り出し送りし、該テーブル11をX方向に移動させてスクライブライン9aを2本ずつ切削し、切削時間を短縮した切削方法。」 なお、甲1発明、甲2事項は、調書2「両当事者 3」のとおり、両当事者間に争いはない。 3.対比・判断 (1)対比 本件発明3と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「モータ22a」、「モータ22b」、「スピンドル20a」、「スピンドル20b」、「カツトホイール18a」、「カツトホイール18b」、「シリコンウェーハー」、「真空吸着」、「テーブル14」、「ダイシングソウ10」、「長方形」は、それぞれ本件発明3の「第一のスピンドル支持部材」、「第二のスピンドル支持部材」、「第一のスピンドル」、「第二のスピンドル」、「第一のブレード」、「第二のブレード」、「半導体ウェーハ」、「吸引保持」、「チャックテーブル」、「精密切削装置」、「正方形または長方形」に相当する。 また、甲1発明の「テーブル14をX軸方向に移動させ、該カツトホイール18aと該カツトホイール18bにより、同時に、ワークを2本切削する切削方法」と、本件発明3の「該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形または長方形の被加工物の端部に位置付けられ、該第二のブレードが該被加工物の中央部に位置付けられ、該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に、該チャックテーブルをX軸方向に移動させ、該被加工物の端部及び中央部に形成され該アライメント手段によって検出されたストリートをX軸方向に2本同時に切削し、該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま、該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に個別に割り出し送りし、該チャックテーブルをX軸方向に移動させて該アライメント手段によって検出されストリートを2本ずつ切削する切削方法」とは、「チャックテーブルをX軸方向に移動させ、第一のブレードと第二のブレードとにより、同時に、ワークを2本切削する切削方法」である限りにおいて、一致する。 したがって、両者は以下の点で一致する。 「Y軸方向に移動する第一のスピンドル支持部材と、Y軸方向に移動する第二のスピンドル支持部材と、 該第一のスピンドル支持部材には第一のスピンドルが配設され、該第二のスピンドル支持部材には第二のスピンドルが配設され、 該第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され、該第二のスピンドルには第二のブレードが装着され、 該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは、該第一のブレードと該第二のブレードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され、 半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが、X軸方向に移動可能に配設されている精密切削装置を用いて長方形の半導体ウェーハを切削する切削方法であって、 チャックテーブルをX軸方向に移動させ、第一のブレードと第二のブレードとにより、同時に、ワークを2本切削する切削方法。」 そして、以下の点で相違する。 相違点1:本件発明3は、「半導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と、該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートを検出するアライメント手段」を備え、「半導体ウェーハが該アライメント手段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートが検出され」、「該第一のブレードがチャックテーブルに保持された被加工物の端部に位置付けられ、該第二のブレードが該被加工物の中央部に位置付けられ、該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に、該チャックテーブルをX軸方向に移動させ、該被加工物の端部及び中央部に形成され該アライメント手段によって検出されたストリートをX軸方向に2本同時に切削し、該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま、該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に個別に割り出し送りし、該チャックテーブルをX軸方向に移動させて該アライメント手段によって検出されたストリートを2本ずつ切削する」ものであり、第一、第二のスピンドル支持部材の移動が、「一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと、他方のモーターの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され、該一方のネジには、該一方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第一のスピンドル支持部材が係合し、該他方のネジには、該他方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第二のスピンドル支持部材が係合」することによりなされるが、甲1発明は、「Z軸方向に個別に移動可能」な「第一のブレードと第二のブレード」とにより「2本同時に切削」するが、具体的機構・動作が不明である点。 相違点2:本件発明3は、第一、第二のスピンドル支持部材の「下部」に、第一、第二のスピンドルが配設されるが、甲1発明はそうでない点。 なお、かかる一致点、相違点は、調書2「両当事者 3」のとおり、両当事者間に争いはない。 (2)判断 相違点1について検討する。 甲1発明は、第一、第二のスピンドル支持部材の移動機構が明らかではないことから、移動機構について検討する。 「一方の駆動源により回転する一方のネジと、他方の駆動源により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され、該一方のネジには、該一方のネジの回転によりY軸方向に移動する第一部材が係合し、該他方のネジには、該他方のネジの回転によりY軸方向に移動する第二部材が係合し、第一部材と第二部材とがY軸方向に個別に移動」する機構(以下「周知移動機構」という。)は、甲第3ないし14号証にみられるごとく周知である。 よって、第一のブレードを装着する第一のスピンドルが配設される第一のスピンドル支持部材、第二のブレードを装着する第二のスピンドルが配設される第二のスピンドル支持部材の移動機構について、上記周知移動機構を採用し、「一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと、他方のモーターの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され、該一方のネジには、該一方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第一のスピンドル支持部材が係合し、該他方のネジには、該他方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第二のスピンドル支持部材が係合」するものとすることは、設計的事項にすぎない。 被請求人は、「周知移動機構」に関し、甲第3ないし8号証記載のものは、「工具ではなく被加工物を保持する部分を駆動するための構成となっており、この根本的な技術的思想の点で相違する」旨、主張する(上記第5のエ)。 しかし、移動機構としては、移動対象により格別の差違が生じるものではないから、被請求人の主張は採用できない。 甲1発明においても、切削効率の向上は当然の課題であるところ、甲1発明同様、半導体ウェーハの切削に関する甲2事項は、上記のとおり「切削時間を短縮」するものである。 よって、甲2事項に接した当業者が、これを試みることは、自然なことである。 周知移動機構を採用した甲1発明は、「第一のスピンドル支持部材、第二のスピンドル支持部材が、Y軸方向に個別に移動可能」なものである。 そこで、甲2事項を検討すると、「切削時間を短縮」するためには、「第1、第2のダイシングブレード1,2の間隔を維持」さえすれば十分であり、「一体の取付軸6、7に第1、第2のダイシングブレード1,2」を配置すること、「スペーサ用リング8」を設けることが、いずれも必須でないことは明らかである。 周知移動機構を採用した甲1発明に甲2事項を適用する場合、制御手段により「第一のブレードと第二のブレードの間隔を維持」することは、当然可能であるから、周知移動機構を採用した甲1発明において、「第一のブレードと第二のブレードの間隔を維持」し、甲2事項の切削方法を適用するようにすることに困難性は認められない。 被請求人は、甲2事項は「一体の取付軸6、7に、平行で一定間隔を保って配置された第1、第2のダイシングブレード1,2」、すなわち「スペーサ用リング8」により機械的に間隔が維持されものであるから、これを甲1発明に適用すると、「第一のスピンドル支持部材、第二のスピンドル支持部材が、Y軸方向に個別に移動することは不可能となる」旨、主張する(上記第5のイ、エ、オ)。 しかし、周知移動機構を採用した甲1発明に甲2事項を「機械的に間隔を維持」した上で適用することを想定した場合には、機械的に間隔を維持するために装置の改造を伴うこと、「Y軸方向に個別に移動可能」であることで様々なウエーハのサイズにも対応しうる種々の加工が可能という周知移動機構を採用した甲1発明の利点が失われることから、甲2事項を「機械的に間隔を維持」した上で適用することは、通常考えられず、被請求人の主張は採用できない。 被請求人は、甲1発明に対する甲2事項の適用には動機付けがなく、阻害要因が存在する旨、主張する(上記第5のイ、ウ)。 動機付けについては、上記のとおり、甲1発明、甲2事項ともに技術分野は同一であり、切削効率の向上という当然の課題が動機となる。 阻害要因について検討する。 甲1発明に、甲2事項、周知移動機構を適用したものは、「柔軟に変化」が可能な甲1発明の一つの態様であると認められる。 また、甲1発明に、甲2事項、周知移動機構を適用したとしても、物理的・機構的に、「2つのカツトホイールの向きや位置関係を柔軟に変化させること」が不可能になるとまでは言えない。また、これにより、切削方法・装置として、機能しなくなるものではないから、産業上の価値が損なわれるものではない。 よって、阻害要因が存するとまでは認められない。 甲1発明に、甲2事項、周知移動機構を適用したものにおいて、切削位置を正確に定めることは当然の課題である。 ここで、「半導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と、該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートを検出するアライメント手段」を備え、「半導体ウェーハが該アライメント手段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートが検出され」、そのストリートを1つのブレードにより切削するもの(以下「周知検出手段」という。)は、甲第23?24号証にみられるごとく、周知である。なお、この点は、両当事者間に争いはない(調書2「両当事者 4」)。 そして、かかる周知検出手段により、1つのブレードが切削すべきストリートに適切に位置決めされるものである。 よって、甲1発明に、甲2事項、周知移動機構を適用したものに、切削位置を正確に定めるため、周知検出手段の適用を試みることは、必要に応じてなしうる事項である。 その際、甲1発明に、甲2事項、周知移動機構を適用したものは、ブレードが2つ存するものであるから、当然、2つのブレードのいずれに対しても、切削位置を正確に定めるため、周知検出手段が適用されることとなる。 被請求人は、アライメントによって「すべての」ストリートを検出することによる効果を主張する(上記第5のオ、カ)。 しかし、「すべての」ストリートを検出することは、請求項3にも、特許明細書にも記載されていないから、根拠がない。 仮に、本件発明3が、「すべての」ストリートを検出するものであるとしても、この点は、被請求人も認めるとおり、少なくとも甲第24号証に記載されている(調書2「被請求人 3」)から、審決の結論を左右するものではない。 被請求人は、また、2つのブレードが個別に調整されることにより、「ストリート間隔に誤差があれば、ブレード間隔が必然的に微調整される」なる効果を主張する(上記第5のオ、カ)。 しかし、かかる効果は、2つのブレードに対し、周知検出手段を適用することにより、当然予測される効果にすぎず、格別なものとは認められない。 被請求人は、半導体ウェーハが「正方形または長方形」であることにより、切削ストロークの無駄をなくすという効果を主張する(上記第5のイ、ウ)。 しかし、上記のとおり、長方形の半導体ウェーハは既知であり、この形状であれば、切削ストロークに無駄がなくなることは明らかである。 よって、かかる効果は、半導体ウェーハが「正方形または長方形」であることにより生じる自明な効果にすぎず、格別なものとは認められない。 以上を考慮すると、甲1発明に、周知移動機構を適用して「第一、第二のスピンドル支持部材の移動が、「一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと、他方のモーターの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され、該一方のネジには、該一方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第一のスピンドル支持部材が係合し、該他方のネジには、該他方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第二のスピンドル支持部材が係合」するものとし、甲2事項を適用して、「該第一のブレードがチャックテーブルに保持された被加工物の端部に位置付けられ、該第二のブレードが該被加工物の中央部に位置付けられ、該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に、該チャックテーブルをX軸方向に移動させ、該被加工物の端部及び中央部に形成されストリートをX軸方向に2本同時に切削し、該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま、該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に個別に割り出し送りし、該チャックテーブルをX軸方向に移動させてストリートを2本ずつ切削する」ものとし、周知検出手段を適用して、「半導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と、該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートを検出するアライメント手段」を備え、「半導体ウェーハが該アライメント手段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートが検出され」、第一のブレード、第二のブレードが、「アライメント手段によって検出され」たストリートを切削するものとすること、すなわち、相違点1に係るものとすることに、困難性は認められない。 相違点2について検討する。 第一、第二のスピンドル支持部材のいかなる部位に、第一、第二のスピンドルを配設するかは、そもそも当業者が適宜選択すべき設計的事項にすぎない。 さらに、甲第13号証の図8.7の「マーグの歯車研削盤の構造」には、「歯車研削」の技術常識からみて、「といしを駆動するモータ」と、その下部に配された「といし軸を保持する箱状部材」とを、共に保持する「板状部材」が、板状部材の上部に係合する「ねじ」により移動することが看取しうる。 そして、甲第13号証の「といし軸」が本件発明3の「スピンドル」に、「板状部材」が本件発明3の「スピンドル支持部材」に相当するものであるから、甲第13号証には、スピンドル支持部材の「下部」にスピンドルが配設されているものが記載されていると認められる。 よって、スピンドル支持部材の下部にスピンドルを配設することに、困難性は認められない。 被請求人は、甲第3ないし14号証には、スピンドル支持部材の下部にスピンドルを配設することが記載されていないから、特許性を有する旨主張する(上記第5のエ)。 しかし、上記のとおり、いかなる部位とするかは、そもそも設計的事項にすぎず、しかも、「歯車研削」の技術常識を踏まえれば、甲第13号証に記載されていると認められるから、特許性を有するとする被請求人の主張は採用できない。 被請求人は、スピンドル支持部材の下部にスピンドルを配設することにより、「スピンドルの自重による先端部の下方変形を防止」するという効果を主張する。 しかし、かかる効果は、「下部」としたことにより、構造上、自明な効果にすぎず、格別なものとは認められない。 また、両相違点を総合勘案しても、格別な技術的意義、顕著な効果が生じるとは認められない。 第6.むすび 以上、本件発明3は、甲1発明、甲2事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明3についての特許は、特許法第123条第1項第2号の規定に該当するので、無効とすべきものである。 審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 切削方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと、他方のモーターの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され、 該一方のネジには、該一方のネジの回転によりY軸方向に移動する第一のスピンドル支持部材が係合し、該他方のネジには、該他方のネジの回転によりY軸方向に移動する第二のスピンドル支持部材が係合し、 第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され、第二のスピンドルには第二のブレードが装着され、 該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは、該第一のブレードと該第二のブレードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され、 半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが、X軸方向に移動可能に配設されている精密切削装置を用いて円形状を呈する半導体ウェーハを切削する切削方法であって、 該第一のブレードと該第二のブレードとをチャックテーブルに保持された円形状を呈する半導体ウェーハのY軸方向の両端部に位置付け、該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に該チャックテーブルをX軸方向に移動させて、Y軸方向の最も外側に形成されたストリートを該第一のブレード及び該第二のブレードによって2本同時に切削し、 該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを中心に向けて所定距離割り出し送りしながら、該チャックテーブルをX軸方向に移動させてストリートを2本ずつX軸方向に切削する切削方法。 【請求項2】 一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと、他方のモーターの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され、 該一方のネジには、該一方のネジの回転によりY軸方向に移動する第一のスピンドル支持部材が係合し、該他方のネジには、該他方のネジの回転によりY軸方向に移動する第二のスピンドル支持部材が係合し、 該第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが配設され、該第二のスピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され、 該第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され、該第二のスピンドルには第二のブレードが装着され、 該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは、該第一のブレードと該第二のブレードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され、 半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが、X軸方向に移動可能に配設されている精密切削装置を用いて円形状を呈する半導体ウェーハを切削する切削方法であって、 該第一のブレードと該第二のブレードとを衝突しない範囲で接近させてチャックテーブルに保持された円形状を呈する半導体ウェーハの中央部に位置させ、該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に該チャックテーブルをX軸方向に移動させ、該円形状を呈する半導体ウェーハの中央部に形成されたストリートを2本同時に切削し、 該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを該中央部から離隔する方向に所定間隔毎に割り出し送りさせ、該チャックテーブルをX軸方向に移動させてストリートを2本ずつX軸方向に切削する切削方法。 【請求項3】 一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと、他方のモーターの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され、 該一方のネジには、該一方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第一のスピンドル支持部材が係合し、該他方のネジには、該他方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第二のスピンドル支持部材が係合し、 該第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが配設され、該第二のスピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され、 該第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され、該第二のスピンドルには第二のブレードが装着され、 該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとは、該第一のブレードと該第二のブレードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され、 半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが、X軸方向に移動可能に配設され、半導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と、該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートを検出するアライメント手段とを備えた精密切削装置を用いて正方形または長方形の半導体ウェーハを切削する切削方法であって、 半導体ウェーハが該アライメント手段の直下に位置付けされ、該アライメント手段によって該半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートが検出され、 該第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形または長方形の被加工物の端部に位置付けられ、該第二のブレードが該被加工物の中央部に位置付けられ、 該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルを下降させると共に、該チャックテーブルをX軸方向に移動させ、該被加工物の端部及び中央部に形成され該アライメント手段によって検出されたストリートをX軸方向に2本同時に切削し、 該第一のスピンドルと該第二のスピンドルとの間隔を維持したまま、該第一のスピンドル及び該第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に個別に割り出し送りし、該チャックテーブルをX軸方向に移動させて該アライメント手段によって検出されたストリートを2本ずつ切削する切削方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、半導体ウェーハ、フェライト等の被加工物を精密に切削することができる精密切削装置及びこれを用いた切削方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 2つのブレードを備えた精密切削装置としては、例えば、特公平3-11601号公報に開示されたダイシング装置が従来例として周知である。このダイシング装置においては、Y軸方向に2本のスピンドルが並列に配設され、各スピンドルの先端部にはそれぞれブレードが装着されている。 【0003】 このダイシング装置において、例えばステップカットにより半導体ウェーハを切削する際には、片方のブレードを先端がV字型のV溝ブレード、もう片方のブレードを切削用のブレードとすれば、V溝ブレードによって被加工物の表面にV溝を形成した後、更にそのV溝を切削用のブレードで切削することにより、表面がテーパー上に面取りされたチップを形成することができる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、スピンドルは並列に配設され、スピンドルに装着されるブレードも切削方向に対して並列に配設されるため、切削ストロークが長くなり、生産性の点で問題がある。 【0005】 従って、従来の精密切削装置においては、生産性の向上を図ることに解決しなければならない課題を有している。 【0006】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するための具体的手段として本発明は、一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと、他方のモーターの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され、一方のネジには、一方のネジの回転によりY軸方向に移動する第一のスピンドル支持部材が係合し、他方のネジには、他方のネジの回転によりY軸方向に移動する第二のスピンドル支持部材が係合し、第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され、第二のスピンドルには第二のブレードが装着され、第一のスピンドルと第二のスピンドルとは、第一のブレードと第二のブレードとが対峙するよう該Y軸方向に略一直線上に配設され、半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが、X軸方向に移動可能に配設されている精密切削装置を用いて、円形状を呈する半導体ウェーハを切削する切削方法であって、第一のブレードと第二のブレードとをチャックテーブルに保持された円形状を呈する半導体ウェーハのY軸方向の両端部に位置付け、第一のスピンドル及び第二のスピンドルを下降させると共にチャックテーブルをX軸方向に移動させて、Y軸方向の最も外側に形成されたストリートを第一のブレード及び第二のブレードによって2本同時に切削し、第一のスピンドル及び第二のスピンドルを中心に向けて所定距離割り出し送りしながら、チャックテーブルをX軸方向に移動させてストリートを2本ずつX軸方向に切削する切削方法を提供する。 【0007】 このように構成される切削方法によれば、被加工物が円形状を呈する半導体ウェーハであるため、第一のブレードと第二のブレードによって同一のストロークで無駄なく同時にストリートを切削することができる。 【0008】 更に本発明は、上記の精密切削装置を用いて円形状を呈する半導体ウェーハを切削する切削方法であって、第一のブレードと第二のブレードとを衝突しない範囲で接近させてチャックテーブルに保持された円形状を呈する半導体ウェーハの中央部に位置させ、第一のスピンドル及び第二のスピンドルを下降させると共にチャックテーブルをX軸方向に移動させ、円形状を呈する半導体ウェーハの中央部に形成されたストリートを2本同時に切削し、第一のスピンドル及び第二のスピンドルを中央部から離隔する方向に所定間隔毎に割り出し送りさせ、チャックテーブルをX軸方向に移動させてストリートを2本ずつX軸方向に切削する切削方法を提供する。 【0009】 このように構成される切削方法による場合も、被加工物が円形状を呈する半導体ウェーハであるため、第一のブレードと第二のブレードによって同一のストロークで無駄なく同時にストリートを切削することができる。 【0010】 また本発明は、一方のモーターの駆動により回転する一方のネジと、他方のモーターの駆動により回転する他方のネジとが基台のY軸方向に配設され、一方のネジには、一方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第一のスピンドル支持部材が係合し、他方のネジには、他方のネジの回転によりY軸方向に個別に移動する第二のスピンドル支持部材が係合し、第一のスピンドル支持部材の下部には第一のスピンドルが配設され、該第二のスピンドル支持部材の下部には第二のスピンドルが配設され、第一のスピンドルの先端には第一のブレードが装着され、第二のスピンドルには第二のブレードが装着され、第一のスピンドルと第二のスピンドルとは、第一のブレードと第二のブレードとが対峙するようY軸方向に略一直線上に配設され、半導体ウェーハを吸引保持するチャックテーブルが、X軸方向に移動可能に配設され、半導体ウェーハの表面を撮像する撮像手段と、半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートを検出するアライメント手段とを備えた精密切削装置を用いて正方形または長方形の半導体ウェーハを切削する切削方法であって、半導体ウェーハが精密切削装置に備えたアライメント手段の直下に位置付けされ、アライメント手段によって半導体ウェーハの表面に形成された切削すべきストリートが検出され、第一のブレードがチャックテーブルに保持された正方形または長方形の被加工物の端部に位置付けられ、第二のブレードが被加工物の中央部に位置付けられ、第一のスピンドル及び第二のスピンドルを下降させると共に、チャックテーブルをX軸方向に移動させ、被加工物の端部及び中央部に形成されアライメント手段によって検出されたストリートをX軸方向に2本同時に切削し、第一のスピンドルと第二のスピンドルとの間隔を維持したまま第一のスピンドル及び第二のスピンドルをもう片方の端部の方向に個別に割り出し送りし、チャックテーブルをX軸方向に移動させてアライメント手段によって検出されストリートを2本ずつ切削する切削方法を提供する。 【0011】 このように構成される切削方法によれば、被加工物が正方形または長方形であるため、切削ストロークに全く無駄がなくなると共に、全ての切削位置を2本ずつ切削することができる。 【0012】 【発明の実施の形態】 精密切削装置の一例である図1に示すダイシング装置について説明する。この図1に示すダイシング装置10を用いて被加工物の切削を行う際は、被加工物はチャックテーブル11に載置されて吸引保持される。例えば、半導体ウェーハをダイシングするときは、図2に示すように、保持テープ12を介してフレーム13に保持された半導体ウェーハ14が、チャックテーブル11に載置されて吸引保持される。 【0013】 図2に示す半導体ウェーハ14の表面には、所定間隔を置いて格子状に配列された直線状領域であるストリート15が存在し、ストリート15によって区画された多数の矩形領域16には、回路パターンが施されている。このような半導体ウェーハ14は、ストリート15において切削(ダイシング)されると、各矩形領域ごとに分離されてチップが形成される。 【0014】 チャックテーブル11は、X軸方向に移動可能となっており、チャックテーブル11に吸引保持された半導体ウェーハ14は、切削前にチャックテーブル11のX軸方向の移動によりアライメント手段17の直下に位置付けられる。また、チャックテーブル11は、必要な場合には、Z軸方向に移動可能とするように構成することもできる。 【0015】 このようにして半導体ウェーハ14がアライメント手段17の直下に位置付けられると、アライメント手段17の下部に備えたCCDカメラ等の撮像手段18によって半導体ウェーハ14の表面が撮像されて、パターンマッチング等の処理を介して半導体ウェーハ14の表面に形成された切削すべきストリート15が検出される。そして更に、チャックテーブル11がX軸方向に移動すると、半導体ウェーハ14は、切削領域19に入っていく。 【0016】 切削領域19には、Y軸方向に略一直線上に配設してY軸方向に軸心を有する第一のスピンドル20及び第二のスピンドル21と、第一のスピンドル20、第二のスピンドル21の先端に装着した第一のブレード22、第二のブレード23とを備えており、第一のスピンドル20と第一のブレード22とで第一の切削手段24を構成し、第二のスピンドル21と第二のブレード23とで第二の切削手段25を構成している。また、第一のブレード22と第二のブレード23とが対峙するように、第一のスピンドル20と第二のスピンドル21とは略一直線上に配設されており、第一のスピンドル20及び第二のスピンドル21は、それぞれ独立してZ軸方向に移動可能である。 【0017】 切削領域19には、例えば図3に示すように、切削領域19の底部の端部間をY軸方向に架設させて第一のモーター26の駆動により回転する第一のネジ27と、第一のネジ27に係合して第一のネジ27の回転に伴ってY軸方向に移動可能な第一の基台28と、第一の基台28上においてY軸方向に配設されて第二のモーター29の駆動により回転する第二のネジ30及び第三のモーター31の駆動により回転する第三のネジ32と、第二のネジ30に係合して第二のネジ30の回転に伴ってY軸方向に移動可能な第二の基台33と、第三のネジ32に係合して第三のネジ32の回転に伴ってY軸方向に移動可能な第三の基台34とを備えている。即ち、第一の基台28は、第一のスピンドル20と第二のスピンドル21に共通の基台となっている。 【0018】 そして、第二の基台33の端部からは、第一の支持部材35を起立して設け、この第一の支持部材35に沿って、第四のモーター36の駆動により回転する第四のネジ37が配設されている。また、第三の基台34の端部からは、第二の支持部材38を起立して設け、この第二の支持部材38に沿って、第五のモーター39の駆動により回転する第五のネジ40が配設されている。 【0019】 第四のネジ37には、第四のネジ37の回転に伴ってZ軸方向に上下動する第一のスピンドル支持部材41が係合され、第五のネジ40には、第五のネジ40の回転に伴ってZ軸方向に上下動する第二のスピンドル支持部材42が係合されている。また、第一のスピンドル支持部材41は、Y軸方向に設けた第一のスピンドル20を支持し、第二のスピンドル支持部材42は、Y軸方向に第二のスピンドル21を支持している。 【0020】 そして、第一のスピンドル20の先端には円板状の刃である第一のブレード22が、第二のスピンドル21の先端にも同様に円板状の刃である第二のブレード23がそれぞれ回転可能に装着されている。第一のブレード22及び第二のブレード23としては、半導体ウェーハ14の表面に形成しようとする溝の形状に応じて、種々の形状のブレードが採用される。例えば、断面がV字型のV溝を形成するときは、先端がV字型に形成されたV字型ブレードがスピンドルに装着される。また、第一のブレード22と第二のブレード23とは同種であってもよいし、異種であってもよい。 【0021】 半導体ウェーハ14の切削時は、第二の基台33及び第三の基台34をY軸方向に移動させることにより半導体ウェーハ14の切削位置のY軸方向の位置合わせを行う。そして、第一のブレード22及び第二のブレード23が回転すると共に、第一のスピンドル支持部材41及び第二のスピンドル支持部材42が第四のネジ37及び第五のネジ40の回転に伴って下降する。更に、チャックテーブル11がX軸方向に移動することによって、また、必要な場合にはZ軸方向にも移動することによってX軸方向に切削が行われる。 【0022】 切削領域19は、図4のように構成されていてもよい。図4の例においては、切削領域19の上部の端部間にY軸方向に第一のモニター43の駆動により回転する第一のネジ44を架設させ、第一のネジ44に係合して第一のネジ44の回転に伴ってY軸方向に移動する第一の基台45を設けている。また、第一の基台45の下側には、第二のモータ46の駆動により回転する第二のネジ47と、第三のモーター48の駆動により回転する第三のネジ49とを配設し、第二のネジ47及び第三のネジ49には、第二のネジ47及び第三のネジ49の回転によりY軸方向に移動する第一のスピンドル支持部材50及び第二のスピンドル支持部材51を係合させている。更に、第一のスピンドル支持部材50及び第二のスピンドル支持部材51の下部には、第一のスピンドル20及び第二のスピンドル21を垂設させ、第一のスピンドル20の先端には第一のブレード22が、第二のスピンドル21の先端には第二のブレード23がそれぞれ装着されている。このように、第一の基台45は、第一のスピンドル20と第二のスピンドル21に共通の基台となっている。 【0023】 図4の例の場合において、第一のスピンドル支持部材50及び第二のスピンドル支持部材51は、図4に示すように、第四のネジ52及び第五のネジ53が上部に設けた第四のモーター54及び第五のモーター55により駆動されて回転し、これに伴い第一のスピンドル20及び第二のスピンドル21が上下動する構成となっている。 【0024】 以上のように構成されるダイシング装置10を用いて、被加工物、例えば図2に示した半導体ウェーハ14の切削を行う際は、第一のスピンドル20及び第二のスピンドル21のY軸方向の移動を適宜に制御することによって様々な方法で切削を行うことができる。 【0025】 例えば、図6(A)に示すように、最初に第一のブレード22と第二のブレード23とをチャックテーブル11に保持された半導体ウェーハ14のY軸方向の両端部に位置付け、第一のスピンドル20及び第二のスピンドル21を下降させると共に、チャックテーブル11をX軸方向に移動させて、即ち、チャックテーブル11と第一の切削手段24及び第二の切削手段25とのX軸方向の相対的移動によって、図7(A)のように半導体ウェーハ14の表面のY軸方向の最も外側に形成されたストリートを、第一のブレード22及び第二のブレード23によって2本同時にX軸方向に切削する。この場合、2本のストリートは同一のストロークで切削される。 【0026】 そして次に、第一のスピンドル20及び第二のスピンドル21を中心に向かって所定距離、例えばストリート間の間隔だけ割り出し送りし、同様にチャックテーブル11をX軸方向に移動させてストリート15を2本ずつX軸方向に同一のストロークで切削していき、図7(B)のように切削溝を形成していく。 【0027】 図6においては図示していないが、実際には第一のブレード22及び第二のブレード23には、先端にブレード固定用のフランジ等が装着され、また、ブレードはブレードカバーによって覆われている。従って、半導体ウェーハ14の中央部(例えば図7(B)において切削溝が形成されていない部分)においては、第一のブレード22と第二のブレード23とを所定間隔割り出し送りすると切削手段同士が衝突してしまう場合がある。従って、このように切削しようとする2本のストリート間の距離がブレードが最も接近できる間隔より狭い場合には、図6(C)に示すように、どちらか片方のブレード、例えば第一のブレード22によって切削を行う。こうして図7(C)に示すように全てのストリートの切削が行われる。 【0028】 以上のようにして円形状を呈する半導体ウェーハ14を切削することにより、第一のブレード22と第二のブレード23とは同一のストロークで無駄なく同時に各ストリートを切削することができる。 【0029】 図8に示す例においては、図8(A)に示すように、最初に第一のブレード22と第二のブレード23とが衝突しない範囲内でできる限り両者を接近させて半導体ウェーハ14の中央部に位置させ、第一のスピンドル20及び第二のスピンドル21を下降させると共にチャックテーブル11をX軸方向に移動させ、半導体ウェーハ14の中央部に形成されたストリートをX軸方向に2本同時に切削して、図9(A)のように切削溝を形成する。即ち、この2本のストリートは同一のストロークで切削される。 【0030】 そして次に、図8(B)に示すように、第一のスピンドル20と第二のスピンドル21とが中央部から離隔する方向に所定間隔毎に割り出し送りされ、チャックテーブル11をX軸方向に移動させてストリートを2本ずつ同一のストロークでX軸方向に切削していき、図9(B)のように切削溝が形成されていく。 【0031】 なお、第一のブレード22と第二のブレード23とを接近させることができずに切削されていなかった中央部のストリートについては、図8(C)に示すように、どちらか片方のブレードによって切削するようにすればよい。こうして最終的に図9(C)のように全てのストリートが切削される。 【0032】 以上のようにして円形状を呈する半導体ウェーハ14を切削することにより、図6の例の場合と同様に、第一のブレード22と第二のブレード23とは同一のストロークで無駄なく同時に各ストリートを切削することができる。 【0033】 図10に示す例においては、まず最初に図10(A)に示すように、第一のブレード22が半導体ウェーハ14の端部に位置付けられ、第二のブレード23が半導体ウェーハ14の中央部に位置付けられて、第一のスピンドル20及び第二のスピンドル21を下降させると共にチャックテーブル11をX軸方向に移動させ、半導体ウェーハ14の端部及び中央部に形成されたストリートをX軸方向に2本同時に切削し、図11(A)のように切削溝が形成される。 【0034】 そして、図10(B)、(C)に示すように、このときの第一のスピンドル20と第二のスピンドル21との間隔を維持したまま、第一のスピンドル20及び第二のスピンドル21をもう片方の端部の方向に割り出し送りし、チャックテーブル11をX軸方向に移動させて、図11(B)、(C)に示すようにストリートを2本ずつX軸方向に切削していく。 【0035】 このように切削することにより、図6、図8の場合に比して多少のストロークの無駄が生じるものの、全てのストリートを同時に2本ずつ切削していくことができる。なお、この場合は、例えば被切削物が正方形や長方形の場合は、切削ストロークに全く無駄がなくなると共に、全ての切削位置を2本ずつ切削することができる。 【0036】 図12に示す例は、ステップカットによりV溝ブレードにより半導体ウェーハ14の表面にV溝を形成してから切削を行い、表面がテーパー状に面取りされたチップを形成する場合である。 【0037】 この場合、図12(A)に示すように、第一のブレード22をV溝ブレード、第二のブレード23を切削ブレードとする。そして、最初に第一のブレード22を半導体ウェーハ23のストリートに位置付け、チャックテーブル11をX軸方向に移動させて、半導体ウェーハ14の表面のX軸方向にV溝を形成する。図13(A)において太線で示したのがこのV溝である。 【0038】 次に、図12(B)に示すように、第一のブレード22をY軸方向に所定間隔移動させると共に、V溝が形成された位置に第二のブレード23を位置付ける。このようにしてV溝の形成とV溝の切削を順次行って図13(B)のように切削していき、図12(C)に示すように第二のブレード23によって最後のV溝の切削を行い、図13(C)に示すように全てのストリートが切削されると、最終的に、表面がテーパー状に面取りされたチップが形成される。 【0039】 なお、異種のブレードを使用する場合は、図12の例のようにV溝ブレードと切削ブレードを使用する場合には限られず、種々の形状のブレードを組み合わせてステップカット等を行うことが可能である。 【0040】 このように切削することにより、比較的ストロークの無駄なくステップカット等を行うことができる。 【0041】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明に係る切削方法によれば、第一のスピンドルと第二のスピンドルとが略一直線上に配設されているため、切削時の切削ストロークがスピンドルが1本の場合と同様になり、従来のスピンドルが2本並列に配設されていたタイプのものに比べて切削ストロークが格段に短くなって、生産性の向上を図ることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】精密切削装置の一例であるダイシング装置を示す斜視図である。 【図2】切削の対象となる被加工物の一例である半導体ウェーハを示す平面図である。 【図3】ダイシング装置の切削領域の構成の一例を示す説明図である。 【図4】ダイシング装置の切削領域の構成の一例を示す説明図である。 【図5】ダイシング装置の切削領域の構成の一例を示す説明図である。 【図6】本発明に係る切削方法の一例を示す説明図である。 【図7】同切削方法により半導体ウェーハに形成された切削溝を示す説明図である。 【図8】本発明に係る切削方法の一例を示す説明図である。 【図9】同切削方法により半導体ウェーハに形成された切削溝を示す説明図である。 【図10】本発明に係る切削方法の一例を示す説明図である。 【図11】同切削方法により半導体ウェーハに形成された切削溝を示す説明図である。 【図12】本発明に係る切削方法の一例を示す説明図である。 【図13】同切削方法により半導体ウェーハに形成された切削溝を示す説明図である。 【符号の説明】 10:ダイシング装置 11:チャックテーブル 12:保持テープ 13:フレーム 14:半導体ウェーハ 15:ストリート 16:矩形領域 17:アライメント手段 18:撮像手段 19:切削領域 20:第一のスピンドル 21:第二のスピンドル 22:第一のブレード 23:第二のブレード 24:第一の切削手段 25:第二の切削手段 26:第一のモーター 27:第一のネジ 28:第一の基台 29:第二のモーター 30:第二のネジ 31:第三のモーター 32:第三のネジ 33:第二の基台 34:第三の基台 35:第一の支持部材 36:第四のモーター 37:第四のネジ 38:第二の支持部材 39:第五のモーター 40:第五のネジ 41:第一のスピンドル支持部材 42:第二のスピンドル支持部材 43:第一のモーター 44:第一のネジ 45:第一の基台 46:第二のモーター 47:第二のネジ 48:第三のモーター 49:第三のネジ 50:第一のスピンドル支持部材 51:第二のスピンドル支持部材 52:第四のネジ 53:第五のネジ 54:第四のモーター 55:第五のモーター |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2008-06-04 |
結審通知日 | 2008-06-10 |
審決日 | 2008-06-24 |
出願番号 | 特願2003-193587(P2003-193587) |
審決分類 |
P
1
123・
121-
ZA
(H01L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 塩澤 正和、金澤 俊郎、三宅 達 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
尾家 英樹 鈴木 孝幸 |
登録日 | 2006-12-01 |
登録番号 | 特許第3887614号(P3887614) |
発明の名称 | 切削方法 |
代理人 | 佐々木 功 |
代理人 | 中越 貴宣 |
代理人 | 久保 健 |
代理人 | 佐々木 功 |
代理人 | 川村 恭子 |
代理人 | 楠本 高義 |
代理人 | 久保 健 |
代理人 | 加古 尊温 |
代理人 | 川村 恭子 |
代理人 | 伊原 友己 |