• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H02P
審判 一部無効 2項進歩性  H02P
管理番号 1210177
審判番号 無効2005-80360  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-12-20 
確定日 2009-11-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2580101号「誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法」の特許無効審判事件についてされた平成19年6月12日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成19年(行ケ)第10261号、平成20年4月21日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2580101号の特許請求の範囲に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)特許第2580101号(以下、「本件特許」という。)に係る発明についての出願は、昭和59年3月2日に出願されたものであって、平成8年11月21日にその特許について特許権の設定登録がされたものである。

(2)これに対し、平成17年12月20日に本件特許に対して特許の無効審判が請求され、平成18年6月8日付けで、本件特許を無効とする審決がなされたところ、同年7月12日付けで該審決に対する訴えが提起され、同年8月31日付けで訂正審判が請求され、知的財産高等裁判所において、特許法第181条第2項の規定に基づく審決取消の決定(平成18年(行ケ)第10326号、平成18年11月17日決定)がなされ確定し、被請求人より、同法第134条の3第2項の規定により指定された期間内である、同年12月18日付けで訂正請求がなされた。(なお、上記無効審判の審判請求書の「6.請求の趣旨」には、「特許第2,580,101号の請求項1及び2に係る発明の特許を無効とする」と記載されているが、これは「特許第2580101号の特許請求の範囲に記載された発明についての特許を無効とする」の誤記である(平成18年5月18日に行った第1回口頭審理に係る第1回口頭審理調書参照。)。さらに、上記訂正審判は、特許法第134条の3第4項の規定により取り下げられたものとみなされる。)

(3)そして、平成19年6月12日付けで、「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決(以下、「先の審決」という。)がなされたところ、同年7月17日付けで該審決に対する訴えが提起され、知的財産高等裁判所において、審決取消の判決(平成19年(行ケ)第10261号、平成20年4月21日判決言渡)がなされ確定し、被請求人より、同法第134条の3第1項の規定により指定された期間内である、同年5月19日付けで訂正請求の申立てがなされ、同年6月18日付けで訂正請求がなされたものである(以下、「本件訂正」という。なお、平成18年12月18日付けの訂正請求は、同法134条の2第4項の規定により取り下げられたものとみなされる。)。なお、その後請求人からは平成20年7月24日付けで弁駁書が提出され、また、両当事者から上申書が提出されている。

2.訂正の可否に対する判断
(1)本件訂正の内容は、以下のとおり訂正することを求めるものである。
(1-1)特許請求の範囲の訂正
特許請求の範囲の請求項1に
「誘導電動機に可変電圧可変周波数の交流を出力する変換器と、該変換器の出力量を制御して前記電動機を駆動する制御装置を備えた誘導電動機制御システムにおいて、
前記制御装置に前記電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を含み、
実運転前に、前記演算手段から前記制御装置に前記電動機の一つの定数の測定条件に応じた指令信号を出力し、該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量を制御し、前記電動機に交流あるいは直流を供給し、その際における前記変換器の出力量を前記演算手段に入力し、該入力した出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数を測定演算し、この演算された電動機定数に基づいて前記制御装置の制御演算定数を設定することを特徴とする誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法。」
とあるのを、

「誘導電動機に可変電圧可変周波数の交流を出力する変換器と、該変換器の出力量を制御して前記電動機をベクトル制御する制御装置を備えた誘導電動機制御システムにおいて、
前記制御装置に、前記電動機をベクトル制御する前にベクトル制御の指令信号に代えて複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために予め定めた指令信号を出力して、前記電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を含み、
前記電動機をベクトル制御する前に、前記演算手段から前記制御装置に前記電動機の前記複数の電動機定数の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる前記予め定めた指令信号を前記測定条件毎に出力し、該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量を制御し、前記電動機に交流あるいは直流を供給し、その際における前記変換器の前記測定条件下における出力量を前記演算手段に入力し、該入力した前記出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数をそれぞれ測定演算し、
この演算された電動機定数に基づいて前記制御装置の制御演算定数を設定することを特徴とする誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法。」と訂正するものであり、具体的には以下の訂正事項aないしfを訂正事項とするものである。

・訂正事項a
請求項1記載の「電動機を駆動する制御装置」を「電動機をベクトル制御する制御装置」に訂正する。

・訂正事項b
請求項1記載の「制御装置に」を「制御装置に、前記電動機をベクトル制御する前にベクトル制御の指令信号に代えて複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために予め定めた指令信号を出力して、」に訂正する。

・訂正事項c
請求項1記載の「実運転前に」を「前記電動機をベクトル制御する前に」に訂正する。

・訂正事項d
請求項1記載の「前記電動機の一つの定数の測定条件に応じた指令信号を出力し」を「前記電動機の前記複数の電動機定数の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる前記予め定めた指令信号を前記測定条件毎に出力し」に訂正する。

・訂正事項e
請求項1記載の「変換器の出力量」を「変換器の前記測定条件下における出力量」に訂正する。

・訂正事項f
請求項1記載の「該入力した出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数を測定演算」を「該入力した前記出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数をそれぞれ測定演算」に訂正する。

(1-2)発明の詳細な説明の訂正
発明の詳細な説明の訂正は、以下の訂正事項gないしjからなるものである。
・訂正事項g
【発明の詳細な説明】の〔発明の利用分野〕の欄記載の「本発明は、誘導電動機を駆動する制御装置の制御演算定数を設定する誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法に関する。」を「本発明は、誘導電動機をベクトル制御する制御装置の制御演算定数を設定する誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法に関する。」に訂正する。

・訂正事項h
【発明の詳細な説明】の〔発明の概要〕の欄の訂正の「本発明の特徴とするところは、誘導電動機に可変電圧可変周波数の交流を出力する変換器と、該変換器の出力量を制御して前記電動機を駆動する制御装置を備えた誘導電動機制御システムにおいて、前記制御装置に前記電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を含み、実運転前に、前記演算手段から前記制御装置に前記電動機の一つの定数の測定条件に応じた指令信号を出力し、該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量を制御し、前記電動機に交流あるいは直流を供給し、その際における前記変換器の出力量を前記演算手段に入力し、該入力した出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数を測定演算し、この演算された電動機定数に基づいて前記制御装置の制御演算定数を設定することにある。」を「本発明の特徴とするところは、誘導電動機に可変電圧可変周波数の交流を出力する変換器と、該変換器の出力量を制御して前記電動機をベクトル制御する制御装置を備えた誘導電動機制御システムにおいて、前記制御装置に、前記電動機をベクトル制御する前にベクトル制御の指令信号に代えて複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために予め定めた指令信号を出力して、前記電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を含み、前記電動機をベクトル制御する前に、前記演算手段から前記制御装置に前記電動機の前記複数の電動機定数の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる前記予め定めた指令信号を前記測定条件毎に出力し、該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量を制御し、前記電動機に交流あるいは直流を供給し、その際における前記変換器の前記測定条件下における出力量を前記演算手段に入力し、該入力した前記出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数をそれぞれ測定演算し、この演算された電動機定数に基づいて前記制御装置の制御演算定数を設定することにある。」に訂正する。

・訂正事項i
【発明の詳細な説明】の〔発明の効果〕の欄の「また、本発明による電動機定数の測定は、電動機の実運転前に、電動機定数演算手段から出力する電動機定数の測定条件に応じた指令信号を用いることによって、電動機の実運転時に使用する制御システム(変換器、制御装置)を共用して行なうので、電動機定数測定のための特別の測定装置を不要とすることができる。」を「また、本発明による電動機定数の測定は、電動機をベクトル制御する前に、ベクトル制御の指令信号に代えて電動機定数演算手段から出力する前記電動機の前記複数の電動機定数の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる前記予め定めた指令信号を前記測定条件毎に出力することによって、電動機をベクトル制御する時に使用する制御システム(変換器、制御装置)を共用して行なうので、電動機定数測定のための特別の測定装置を不要とすることができる。」に訂正する。

・訂正事項j
【発明の詳細な説明】の〔発明の実施例〕の【発明の詳細な説明】の〔発明の実施例〕の[l_(1)+l_(2)’の測定]の式(12)の分子の「M^(3)」とあるのを、「M^(2)」に訂正し、また、[L_(1)の測定]に「i_(1)^(q)=」とあるのを「i_(1)^(q)=0」と訂正する。

(2)訂正の可否に対する当審の判断
上記訂正事項aの訂正は、「電動機を駆動する」を「電動機をベクトル制御する」として、駆動内容を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書(特許第2580101号特許掲載公報(以下単に「特許公報」という。)参照)の記載(特許公報第7ページ左欄38行?同欄39行 の「第10図は誘導機ベクトル制御装置の回路構成図であり」なる記載参照。)に基づくものである。

上記訂正事項bの訂正は、「制御装置」に対し、「前記電動機をベクトル制御する前にベクトル制御の指令信号に代えて複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために予め定めた指令信号を出力して」という限定事項を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書の記載(特許公報第8ページ左欄第16行?同頁右欄3行の「本発明による電動機定数の測定は、電動機の実運転前に、電動機定数演算手段から出力する電動機定数の測定条件に応じた指令信号を用いることによって、電動機の実運転時に使用する制御システム(変換器、制御装置)を共用して行なうので」なる記載参照。)に基づくものであり、また、実運転前とは電動機をベクトル制御する前であり、かつ、その指令信号はベクトル制御の指令信号に代えて複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために予め定めた指令信号となることは自明の事項である。

上記訂正事項cの訂正は、「実運転前に」を「前記電動機をベクトル制御する前に」と具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、上記「訂正事項b」の検討において示した特許明細書の記載に基づくものである。

上記訂正事項dの訂正は、「前記電動機の一つの定数」を「前記複数の電動機定数の一つの定数」に特定し、指令信号を「回転停止となる前記予め定めた指令信号」に特定し、並びに「出力し」を「前記測定条件毎に出力し」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、特許明細書の記載(特許公報第4ページ左欄の式(8)の上2行 の「(直流励磁、回転停止)の条件を設定すれば」なる記載及び第4ページ右欄の式(9)の上2行 の「回転停止にて一定周波数で励磁する条件」なる記載参照。)に基づくものである。

上記訂正事項eの訂正は、変換器の「出力量」に「前記測定条件下における」という限定事項を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、上記「訂正事項d」の検討において示したものにおいて回転停止とするような変換機の出力量となることを意味していることが明らかである。

上記訂正事項fの訂正は、「該入力した出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数を測定演算」に「前記」出力量及び「それぞれ」という限定事項を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、この訂正は、上記「訂正事項d」の検討で直流励磁の条件と一定周波数で励磁する条件で回転停止することにより2つの条件で測定演算することが「それぞれ」という意味であることは明らかである。

上記訂正事項gないしiの訂正は、【発明の詳細な説明】の〔発明の利用分野〕の欄、〔発明の概要〕の欄、及び〔発明の効果〕の欄の記載を、上記特許請求の範囲の訂正aないしhとの整合を図るべく訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。また、上記訂正事項jの【発明の詳細な説明】の〔発明の実施例〕の欄の訂正は、式(12)の分子の「M^(3)」とあるのは式(11)等を参酌すると「M^(2)」の誤記であることは自明であり、また、[L_(1)の測定]に「i_(1)^(q)=」とあるのは式(12)の1行上の「i_(1)^(q)=0」を参酌すれば「i_(1)^(q)=0」の誤記であることが自明であるので、誤記の訂正を目的とするものである。

また、上記訂正事項aないしjの訂正は、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされる訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書の規定に適合するとともに、同法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
なお、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を、以下「本件特許発明」という。

3.請求人の主張の概要
これに対して、請求人は、以下の(1)ないし(3)の理由を挙げて、無効とすべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出している。

(1)無効理由1
本件特許発明は、本件特許の出願審査過程において平成5年8月10日付け手続補正書(以下、「第2回手続補正書」という。)によりなされた補正が要旨変更にあたるため、平成5年法律第26号改正附則第2条第2項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第40条の規定により、出願日が当該手続補正書を提出した時である平成5年8月10日とみなされ、その結果、本件特許の公開公報である甲第2号証の1が公知文献となる。そして、本件特許発明は、甲第2号証の1に記載された発明であるといえるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができないものであり、本件特許は特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

(2)無効理由2
本件特許発明は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第3号証に記載された発明であるか、あるいは少なくとも同号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号あるいは同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

(3)無効理由3
本件の特許請求の範囲の請求項1は、発明の詳細な説明の項に記載された発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載していないから、本件特許は、平成6年法律第116号改正附則第6条第2項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、本件特許は同法第123条第1項第3号の規定に該当し、無効とされるべきである。

(証拠方法)

甲第1号証:特許第2580101号特許掲載公報
甲第2号証の1:本件特許出願の公開公報(特開昭60-183953号公報)
甲第2号証の2:本件特許出願の審査過程における平成5年8月10日提出の第2回手続補正書
甲第2号証の3:本件特許出願の審査過程における平成5年8月10日提出の意見書
甲第2号証の4:本件特許と同じく被請求人の出願である特願昭61-106469号の審査過程で被請求人が提出した審判請求書
甲第3号証:特開昭57-79469号公報

4.被請求人の主張の概要
一方、被請求人は、無効理由1ないし3はいずれも理由がないものであるとして、以下の主張を行っている。

(1)無効理由1について
請求人が要旨変更にあたるとした補正は、当初明細書等に記載された範囲内のものであり適正なものであるから、本件特許の出願日は現実の出願日とされるべきであり、甲第2号証の1は公知の文献とはならない。

(2)無効理由2について
本件特許発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に為し得たものではない。

(3)無効理由3について
本件の請求項1は、記載に不明な点はなく、平成6年法律第116号改正附則第6条第2項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第36条第4項に規定する要件を満足するものである。

5.無効理由1についての検討
(1)第2回手続補正書による補正の内容
第2回手続補正書により、特許請求の範囲の請求項1は下記のように補正された。
「交流電動機に可変電圧可変周波数の交流を出力する変換器と、該変換器の出力量を制御して前記電動機を駆動する制御装置を備えた交流電動機制御システムにおいて、
前記電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を有し、
実運転前に、前記演算手段から前記定数の測定条件に応じた指令信号を出力し、該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量を制御し、前記電動機に交流あるいは直流を供給し、その際における前記変換器の出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数を測定演算し、
該演算された電動機定数に基づいて前記制御装置の制御定数を設定することを特徴とする交流電動機制御システムの制御定数設定方法。」

(2)請求人の主張の詳細
請求人は、第2回手続補正書によりなされた、「(a)出力電流について」の補正、および「(b)回転停止について」の補正が以下の理由により要旨変更であると主張している。

〈補正「(a)出力電流について」〉
出願当初の「所定の周波数及び位相」に制御して電動機に供給する「電流」とその際に発生する「電動機電圧と前記電流」に基づいて測定すると限定されていた開示を、「出力量」とすることによって「出力電圧」と「出力電流」のいずれも含み得るような記載に変更したものである。
出力電流を指令電流により制御する制御装置の構成と、出力電圧を指令電圧により制御する制御装置の構成とは、一般的に全く異なるものであり、またそれらにおいては、電動機定数を測定演算するための測定条件、指令信号および演算式も全く異なるものとなる。このため、指令電流によって出力電流を所定の大きさ、周波数,及び位相に制御して電動機定数の測定を行う技術が開示されていても、それに基づいて指令電圧により出力電圧を所定の大きさ、周波数,及び位相に制御して電動機定数の測定を行うことが当業者に自明であるということはできない。したがって「出力量(出力電圧、電流)」は、所定値に制御されて電動機に供給される電流のみならず、所定値に制御されて電動機に供給される電圧も含む拡大された概念となるため、当業者に自明でない事項を含む用語に補正されたことになる。
また、第2回手続補正書により補正された請求項1の内容は、出力電流を制御し、その際における出力電流に基づいて電動機定数を測定すること、あるいは出力電圧を制御し、その際における出力電圧に基づいて電動機定数を測定することである。しかしながら、出願当初の明細書には、このような出力電流のみによる測定、あるいは出力電圧のみによる測定について、どのような条件を定め、いかなる方法で電動機定数を測定するのかについて、何も開示されていない。そしてこのようなことは当業者に自明なことではない。よって当業者に自明でない事項を追加することになった点においても要旨変更にあたることは明らかである。
また、請求項1に記載された「該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量を制御し」との記載には、文言的に、制御装置により「出力電圧のみを制御し」の態様も含まれるが、当初明細書にはそのような「出力電圧のみを制御し」の態様は開示されておらず、このような態様を含む「変換器の出力量」への補正は要旨変更となる。

〈補正「(b)回転停止について」〉
本件特許に係る発明は「2.(1-1)」に示されるように、「実運転前」に電動機定数の測定演算を行うことを発明の要旨として含むものであるがこれは、発明の詳細な説明の項に記載されていた「回転停止」の文言が「実運転前」と表現を変えて請求項1の記載に追加されたものである。
しかしながら、「実運転前」には、「回転停止」に加えて「拘束試験」等も含むものであり、当初明細書に「回転停止」の開示しかないにもかかわらず「実運転前」の用語を用いて回転停止状態以外での測定を含ませることを意図したものとすれば要旨変更にあたる。

(3)当初明細書等の記載事項
本件の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている(甲第2号証の1参照)。

(3-1)「特許請求の範囲
1.交流電動機と、該電動機に直流及び交流を供給する変換器と、該変換器の出力電流の周波数及び位相を制御するための制御装置を備え、前記変換器より前記電動機に所定の周波数及び位相の電流(直流の場合は各巻線に対して所定の極性と大きさの電流)を供給し、その際に発生する電動機電圧と前記電流に基づいて前記電動機の電気定数を演算測定するようにしたことを特徴とする交流電動機の定数測定方法。」

(3-2)「〔発明の利用分野〕
本発明は、交流電動機の電気定数の測定法に関し、特に出力電流(電圧)の大きさ及び周波数を調節できる変換装置を用いてその諸定数を測定する方法に関する。」(第1頁左欄14?18行)

(3-3)「従来は電動機定数の設計値に基づいてその設定を行っているが、使用する電動機毎に制御定数を変更する必要がありはん雑なこと、また前述の設計値と実際値の不一致により制御演算誤差を生じることが問題である。
ところで従来においては、直流電動機などの直流負荷のインピーダンスを、その電動機に給電する変換装置の出力電流及び電圧に基づいて計測する方法が周知である。」(同頁右欄4?12行)

(3-4)「一方、交流電動機の場合は、その等価回路は各各、複数の抵抗、インダクタンス等で表わされ、それぞれを分離して測定する必要があること、また交流電動機は一般に多相巻線をもつため、測定時に各巻線に流す電流の位相(直流の場合は電流の極性と大きさ)並びに電流の通流により誘起される各巻線電圧の位相(直流の場合は電圧の極性と大きさ)をも考慮する必要があり、前述した従来の方法によっては応じられない。」(第2頁左上欄1?9行)

(3-5)「〔発明の目的〕
本発明は前述した問題を解決することにあり、ベクトル制御用などの変換装置においてはその出力電流の大きさ、周波数及び位相を精度よく制御できることに着目し、これを用いて電動機に所定の電流を供給し、その際に誘起する電動機電圧に基づいて交流電動機の電気定数を高精度に測定し、その測定結果に基づき変換装置(インバータなど)による交流電動機制御システムの制御演算定数を決定する方法に関する。」(同頁左上欄10?19行)

(3-6)「〔発明の概要〕
本発明の特徴とするところは、直流及び交流を出力できる変換装置を用いて交流電動機に供給する電流の大きさ及び周波数を所定値に制御し、その際の電動機電圧の検出値に基づき電動機の各種インピーダンスを測定し、またその測定結果に基づいて変換装置の制御演算定数を決定し、各交流電動機に対して常に最適な制御が行えるようにしたことにある。」(同頁左上欄20行?右上欄8行)

(3-7)「〔r1の測定〕
定常時におけるv_(1)^(d)及びv1^(q)は次式で与えられる。
v_(1)^(d)=r_(1)i_(1)^(d)-ω_(1)(l_(1)+L_(1))i_(1)^(q)-ω_(1)Mi_(2)^(q) v_(1)^(q)=ω_(1)(l_(1)+L_(1))i_(1)^(d)+r_(1)i_(1)^(q)+ω_(1)Mi_(2)^(d) ………(5)
ここに、i_(1)^(d),i1^(q):1次電流のd軸及びq軸成分
i_(2)^(d),i_(2)^(q):2次電流のd軸及びq軸成分
ここで、2次電流i_(2)^(d)及びi_(2)^(q)はかご形誘導機の場合は測定できない量であるため、これらを消去する。定常時には2次電流と1次電流に関して次式が成立する。
ω_(s)Mi_(1)^(q)=r_(2)i_(2)^(d)-ω_(s)(i_(2)+L_(2))i_(2)^(q) -ω_(s)Mi_(1)^(d)=ω_(s)(l_(2)+L_(2))i_(2)^(d)+r_(2)i_(2)^(q) ………(6)
ここに、ω_(s):すべり角周波数
(6)式を用いて(5)式のi_(2)^(d)及i_(2)^(q)を消去すれば、v_(1)^(d)は次式で示される。
v_(1)^(d)={r_(1)+(ω_(1)ω_(s)M_(2)r_(2))/(r_(2)^(2)+ω_(s)^(2)(l^(2)+L^(2))^(2))}i_(1)^(d)+{-ω_(1)(l_(1)+L_(1))+(ω_(1)ω_(s)^(2)M^(2)(l_(2)+L_(2)))/(r_(2)^(2)+ω_(s)^(2)(l_(2)+L_(2))^(2))}i_(1)^(q) ………(7)
ここで、i_(1)^(q)=0,ω_(1)=0及びω_(s)=0(直流励磁)の条件を設定すれば、
v_(1)^(d)=r_(1)i_(1)^(d) ………(8)
v_(1)^(d)は前述した電圧成分検出器8を用いて検出でき、またi_(1)^(d)は前述したように電流指令信号i_(d)^(*)に比例して制御されるために既知である。したがってr_(1)は(8)式に基づいて測定できる。
〔r_(2)’の測定〕
次に、i_(1)^(q)=0,ω_(1)=ω_(s)すなわち回転停止にて一定周波数で励磁する条件を設定すれば、……
ここで、r_(1)は前述より既知であるから、2次抵抗の1次換算値r_(2)’が測定できる。
〔l_(1)+l_(2)’の測定〕
(5)(6)式よりv_(1)^(q)を求めると、
v_(1)^(q)={ω_(1)(l_(1)+L_(1))-ω_(1)ω_(s)^(2)M^(2)(l_(2)+L_(2))/〔r_(2)^(2)+ω_(s)^(2)(l_(2)+L_(2))^(2)〕}i_(1)^(d)+{r_(1)+ω_(1)ω_(s)M^(2)r_(2)/〔r_(2)^(2)+ω_(s)^(2)(l_(2)+L_(2))^(2)〕}i_(1)^(q)……(11)
ここで、i_(1)^(q)=0,ω_(1)=ω^(s)である条件を設定すれば……
ここで、v1qは前述した電圧成分検出器8を用いて検出でき、また、i_(1)^(q)及びω_(1)はそれらの設定信号i_(q)^(*)及びω_(1)^(*)に比例して制御されるため既知である。したがって漏れインダクタンスl_(1)+l_(2)’が測定できる。
〔L_(1)の測定〕
i_(1)^(q)=0,ω_(1)=0,ω_(s)=0かつi_(1)^(d)をステップ変化させる条件を設定する。」(第3頁右上欄10行?第4頁左上欄下から3行)

(3-8)「第5図は先述の原理に従いr_(2)’を測定するフローチャートである。先ずω_(1)^(*)を例えば314rad/s(50Hz)に設定し(51)、次にi_(d)^(*)を所定値にi_(q)^(*)を零に設定してi_(1)^(d)を流し交流励磁を行う(52)、この場合、i_(1)^(d)は電動機が回転しない程度の小さな値とし、ω_(1)=ω_(s)である条件を設定する。」(第5頁左上欄3?9行)

(3-9)「〔発明の効果〕
以上述べたように本発明によれば、電動機定数の測定が簡便かつ高精度に行え、またその測定結果に基づいて制御系の定数設定が自動的に行えるため、電動機定数の設計値と実際値の不一致による前述の不具合を防止でき、また制御系の調節に要する手間を大幅に削減することができる。
なお本発明は誘導電動機を対象とするものに限らず、同期電動機が対象であっても同様に適用できる。また変換器は前述のようにPWMインバータに限らず他方式のものであってもよい。」(第6頁左下欄下から6行?右下欄5行)

(4)当審の判断
(4-1)「(a)出力電流について」の補正について
上記「(3)」によれば、当初明細書等には、誘導電動機のベクトル制御に用いられる一般式を変形した、定常時に成立する演算式(上記(3)(3-7)参照)を用い、式(5)と式(6)から、変換器の出力から得ることのできない2次電流を消去し、ω_(1)=0且つω_(s)=0、あるいはω_(1)=ω_(s)である回転停止条件を設定することにより、式(8)等の、v_(1)^(d)、i_(1)^(d)、すなわち測定演算可能な値のみで電動機定数を演算できる式を求めることが記載されていたと解される。ここで、v_(1)^(d)、及びi_(1)^(d)は、変換器の出力量であるので、当初明細書等には、少なくとも、回転停止状態における変換器の出力量(電流、電圧、周波数、位相)から電動機定数を演算測定しようとする技術思想が記載されていたことが明らかであるといえる。
ゆえに、請求項1の記載において、演算に用いる変換器の出力量の一つを、「前記電流」すなわち、変換器より電動機に供給する所定の周波数及び位相の電流から、「変換器の出力量」と補正することが、要旨変更であるとはいえない。

(4-2)「(b)回転停止について」の補正について
本件訂正により、測定条件に「回転停止」条件を加える限定がなされたため、当初明細書に「回転停止」の開示しかないにもかかわらず「実運転前」の用語を用いて回転停止状態以外での測定を含ませることを意図したものとすれば要旨変更にあたるという理由は解消されたものと認められる。

(4-3)本件特許発明についての出願日の認定について
要旨変更にあたるという理由は解消されたものであるから、本件特許発明についての出願日が当該手続補正書を提出した時である平成5年8月10日とはみなされず、その結果、本件特許の公開公報である甲第2号証の1が公知文献とはならないから、本件特許発明が特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができないとはいえない。

(5)無効理由1のむすび
したがって、無効理由1によっては、本件特許を無効とすることはできない。

6.無効理由2についての検討
(1)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。

(1-1) 「2.特許請求の範囲
1)非同期機の固定子抵抗,主インダクタンス,漏れインダクタンスに対するパラメータの少なくとも1つを検出するための装置において,
(a) 所属の第1のベクトルの固定子抵抗と漏れインダクタンスに対する設定されたパラメータ値を形成するため,回転機入力端より取出される固定子電流ベクトルと固定子電圧ベクトルとの成分に対する値および設定されたパラメータ値から,これらのパラメータ設定に対応する起電力または相当する磁束に対するベクトルを形成する起電力形成器と,
(b) 対応する磁化電流と第1のベクトルの決定量とを計算するために,第1のベクトルからこのベクトルの方向を定める角度量を検出する少なくとも1つのベクトルアナライザと,固定子電流ベクトルの取出された成分と角度量とから対応する磁化電流成分として起電力形成器パラメータ設定に相当する磁束ベクトルに平行な固定子電流成分を計算する変換回路とを備え,同時に第1のベクトルの決定量をも取出す演算装置と,
(c) 演算装置において計算された対応する磁化電流成分と,非同期機の主インダクタンスに対する設定されたパラメータ値とから磁界発生に導く過程を計算して模擬することにより設定された主インダクタンスパラメータに対応する磁束を検出し,対応する磁化電流に対応する磁束を形成するための演算モデル回路と,
(d) 一方では第1のベクトルの決定量に相当し,演算回路において検出された磁束から導出できる演算モデル回路に対応するベクトルを定める決定量を形成し,他方では2つの決定量の差を積分調節器の入力端に導き,この調節器の出力信号は検出すべきパラメータ値に対する設定入力端に導かれ,調整平衡の際に求めるべきパラメータ値として取出すことのできる調節器回路と
を有することを特徴とする非同期機の固定子抵抗,主インダクタンス,漏れインダクタンスに対するパラメータ値検出装置。」(1頁左下欄6行?2頁左上欄10行)

(1-2) 「3.発明の詳細な説明
本発明は,非同期機の固定子抵抗,主インダクタンス,漏れインダクタンスに対する少なくとも1つのパラメータ値を検出するための装置に関するものである。」(4頁左上欄4行?8行)

(1-3) 「…インバータ給電非同期機を上述の磁界オリエンテーション運転を行うために,固定子電流の目標値は磁界オリエンテーシヨンされた基準系において予め与えられ,この目標値から場所を固定された固定子基準系において予め与えられる固定子電流ベクトルに対する相当する目標値が検出されねばならない。このためには磁界オリエンテーシヨンされた基準系と固定子基準系との間の相互の位置(すなわち角度ψ)に関する情報が必要である。
起電力ベクトルeは回転機において取出される固定子に関係する固定子電流ベクトルiと固定子電圧ベクトルuとの座標から,次の式により計算される。
e=u-i・r^(S)-x^(σ)・d/dti (1)
この起電力ベクトルの積分により,磁束ベクトル
φ=∫edt (1a)
が形成される。」(4頁左下欄8行?右下欄6行)

(1-4) 「本発明の目的は,回転子位置に関する情報なしですむ,非同期機の固定子抵抗,漏れインダクタンス,主インダクタンスに対するパラメータ値を検出する装置を提供することである。」(6頁左上欄13行?16行)

(1-5) 「本発明によれば,装置は次の素子により構成される。
a) 所属する第1のベクトルを作るための起電力形成器,
b) 第1のベクトルに対する対応する磁化成分と決定量とを作るための演算装置,
c) 対応する磁化電流成分に属する磁束を演算するための演算モデル回路,
d) この磁束に対応する第2のベクトルの決定量を演算し,2つのベクトルの決定量の制御偏差を作る調節器回路
起電力形成器は回転機入力端において取出された固定子電流ベクトルの成分i_(α1)、i_(α2)と、固定子電圧ベクトルu_(α1)、u_(α2)とに対する値、および固定子抵抗r^(S)と漏れインダクタンスx^(σ)(”真の”回転機パラメータr^(S)、x^(σ))とに対する設定されたパラメータ値r^(S)’,x^(σ)’から,起電力または相当する磁束に対するこれらのパラメータ設定に対応する第1のベクトルe’(成分e’_(α1),e’_(α2))またはφ’(成分φ’_(α1),φ’_(α2))を検出する。
演算装置は少なくとも1つのベクトルアナライザと変換回路,例えばベクトル回転機とを有している。ベクトルアナライザは第1のベクトルからこのベクトルの方向を定める角度量を計算する。変換回路は固定子電流ベクトルの取出された成分i_(α1),i_(α2)と,パラメータ設定に対応する磁化電流成分としての角度量とから,起電力形成器(あるいはそのパラメータ設定)に対応する起電力ベクトルe’に直角,またはe’とφ’との直交性のために同じ意味であるが,相当する磁束φ’に平行な固定子電流成分を計算する。

演算モデル回路は,演算装置において演算された磁化電流成分i’ψ_(1)と,回転機の主磁界インダクタンスに対する設定されたパラメータ値x^(h)’とから,磁界の発生に導く過程の計算による模擬により,設定された主磁界インダクタンスパラメータ値x^(h)’に対応する磁束(磁束ベクトルφ”の値φ”)を計算する。

調節器回路は,先ず,第1のベクトルの決定量に相当して演算モデル回路に対応して,演算モデル回路において検出された磁石から導き出すことのできる第2のベクトルの決定量を検出する。… 第1のベクトルの決定量として固定子電流オリエンテーシヨンされたφ’またはe’の座標が演算装置において演算されると,第2のベクトルの相当する決定値として同じ固定子電流オリエンテーシヨンされたベクトルφ”またはe”の成分が使用される。…2つの決定量の差は調節器回路において積分調節器に加えられる。その出力信号は検出されたパラメータ値を設定するための入力端に導かれ,従つて起電力形成器における固定子抵抗パラメータr^(S)または漏れインダクタンスパラメータ値,あるいは演算モデル回路における主磁界インダクタンスパラメータx^(h)に対する入力端に導かれる。平衡状態においては,調節器の出力信号は検出されるべきパラメータ値を示す。」(6頁右上欄12行?7頁右下欄5行)

(1-6)「パラメータ値のそれぞれ1つが検出される運転状態を互いに制限して,低い固定子周波数および高い負荷において固定子抵抗が,高い周波数および無負荷運転の近くで主インダクタンスが,また高い周波数および高い負荷において漏れインダクタンスが演算されるようにすることができる。」(11頁左上欄5?10行)

(1-7) 「第6図は3つすべてのパラメータ値を検出するための完全な装置を概略的に示している。本装置は,起電力形成器1,演算装置2,演算モデル回路3および調節器回路4から成っている。三相非同期機5の入力端子においては,固定子電圧および固定子電流が取出されるが,それらはそれぞれの固定子巻線の方向に向けられたベクトル値として相当する座標変換器6,7においてベクトルu_(α)(注:アッパーラインで表示されている)またはi_(α)に合成される。… 起電力形成器1においては,設定されたパラメータ値r^(S)’と,座標変換器7において取出された固定子電流ベクトルi_(α)の固定子に関係する成分との乗算により(乗算素子8)抵抗電圧降下のベクトルr^(S)’・i_(α)が作られる。同様に成分による微分(微分素子9)により,また漏れインダクタンスに対する設定されたパラメータx^(σ)’との乗算(乗算素子10)により誘導漏れ電圧のベクトルが作られる。減算回路12において,固定子に関係する固定子電圧ベクトルu_(α)の座標変換器6において取出された成分から,設定された値x^(σ)’,r^(S)’に対応する起電力のベクトルe’(“第1のベクトル“)が作られる。
非同期機の磁界オリエンテーション制御に対しては同様の装置が非同期機の磁界の方向を検出するための磁束検出器として必要である。」(11頁左上欄11行?左下欄2行)

(1-8) 「磁界オリエンテーション制御の本質は,磁束とモーメントとが固定子電流の磁界に平行な成分と,磁界に直角な成分とに対する関係しない目標値により制御されることにある。従って固定子電流の相当する実際値は,パラメータ値x^(σ)’およびr^(S)’が回転機パラメータの真の値に等しい調整させられた状態においては,出力端26および27において,演算装置2から導き出されて,磁束ベクトルの方向に関する必要な情報を得るようにして得られる。… これにより制御のための固有の起電力検出器は節約される。」(12頁左上欄11行?右上欄4行)

(1-9) 「第6図による回路においては,差e’-e”を選択的にパラメータの1つを追従するために使用してもよいが,各パラメータ値に対しては固有の積分調節器20,21,22が設けられている。制御偏差e’-e”はこの場合に切換装置23によりそれぞれ該当する決定すべきパラメータ値に対応する積分調節器に加えられる。既に説明したように,量m=i’ψ_(2)/i’ψ_(1)の定められた値に対して調整方向が切換えられるので,調節器20,21には調節器入力端信号の符号逆転のためのスイッチング装置24,24’が前置されている。最後に出力端が25により示されているが,この出力端において調整平衡後それぞれ求められるパラメータ値,例えばr^(S)=r^(S)’を取出すことができる。」(12頁左下欄11行?右下欄5行)

(1-10) 「すなわち無負荷において駆動装置が運転されると(m=0),電流ベクトルは正しく設定された固定子抵抗パラメータにおいては下部周波数領域において磁束ベクトルに一致し,固定子電流に平行なベクトルe’の成分は無くなる。このことはx^(σ)’およびx^(h)’に対する設定された値には関係ないので,固定子抵抗を予め設定するためには,e’_(j1)=0となるまで,パラメータ値r^(S)’が変らねばならない。」(15頁右下欄11行?19行)

(1-11)「さらに,第10図による回路において漏れインダクタンスx^(σ)の補償は電流に直角なベクトルe’およびe”の成分の補償により使用されると有利である。このことは,パラメータ値x^(σ)をr^(S)に対する値に関係なく非同期機の通常運転を開始する前に短絡試験により検出することを可能にする。
このためには回転子は,固定子電流が高い周波数(特に定格周波数の50%以上)で運転している間拘束される。これにより,磁化電流成分i’ψが殆んど零である間は,負荷角度は殆んど90゜となる。従つて起電力ベクトルeは実際には,固定子電流ベクトルiに平行し,パラメータ値x^(σ)’は,第10図において出力端29aから取出されている評価された起電力ベクトルe’の電流に直角な成分e’_(j2)が零となるように調節されるだけでよい。パラメータ値r^(S)’は,電流に平行な固定子抵抗を介して成分e’_(j1)の中だけへ入り,従つてx^(σ)のこの決定には影響しない。
物理的にこれと同じ意味で,第6図による装置においても,パラメータ値x^(σ)’は,出力端29a,29bにおいて取出された起電力形成器1により固定子基準系において検出された起電力ベクトルe’の2つの成分e’_(α1),e’_(α2)が両方最小となるまで変えられる。何故ならばx^(σ)’の調整が正確でないときに生じるe’の無効成分は常に,有効成分だけを持つ起電力ベクトルに比してベクトルe’の増幅を意味するからである。同様に,短絡試験においては磁化電流成分が最小であるという事実も,x^(σ)’検出に使用することができる。何故ならばx^(σ)’は,出力端27においてi’ψ_(1)の最小値が生じるまで,変えられるからである。」(16頁左上欄4行?右上欄15行)

(1-12)「一般の場合には,固定子抵抗r^(S)の予めの設定は,測定器により回転機端子におけるオーム抵抗が測定され,基本設定として起電力形成器と,対応する調節器(例えば,第6図における20,または第10図における50)とに付与されることにより行われる。しかしながら,固定子周波数が静止しているときにも,固定子電流を記憶させ,e’=0となるようにパラメータr^(S)を調節してもよい。同様に低い固定子周波数においてx^(σ)とx^(h)とに対する任意の評価値から装置の固定子抵抗を検出させ,調節器に記憶させることができ,この場合にはパラメータx^(σ)およびx^(h)の誤設定は殆んど影響がない。
上述の短絡試験によつて漏れインダクタンスパラメータ値x^(σ)に対する出発値が検出されなければ,このパラメータの検出に対する出発値として評価された値を記憶し,パラメータ値r^(S)およびx^(h)に対する予めの調整が行われている限り,通常運転の回転における真のパラメータを装置により検出する。x^(h)の予めの調整は高い回転数および無負荷運転において行うと有利である。
場合によつては予めの調整を何回も繰返した後に,非同期機の通常運転においてそれぞれ第5図に与えられた動作領域において個々のパラメータが検出され,最後に検出された値が記憶されると,記憶装置にはそれぞれ1組のパラメータ値が利用され,これにより非同期機のパラメータは良い精度を以て与えられる。」(16頁右上欄16行?右下欄5行)

・第6図には、出力端26ないし28への指令信号を測定演算する測定演算手段(起電力形成器1、演算手段2、演算モデル回路3、調整器回路4)が示されている。

(2)甲3号証に記載された発明
上記「(1)」の記載事項及び図示内容を総合すると、甲3号証には以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
「非同期機に給電するインバータと、該インバータを制御して前記非同期機を磁界オリエンテーション制御するインバータの制御装置を備えた装置において、
前記非同期機の通常運転を開始する前に固定子抵抗、主インダクタンス、漏れインダクタンスのうち決定すべきパラメータ値に対応してそれぞれ運転すると共に、前記非同期機のパラメータ値を測定演算する測定演算手段を備え、
前記非同期機の通常運転を開始する前に、固定子抵抗、漏れインダクタンスのうち決定すべきパラメータ値を検出するために固定子周波数が静止、もしくは回転子が拘束されるように決定すべきパラメータ値に対応して制御し、前記測定演算手段の出力端に出力される指令信号により前記インバータを制御し、前記非同期機の固定子周波数が静止、もしくは回転子が拘束されているときで固定子周波数が高いときに、その際における前記インバータの前記決定すべきパラメータ値に対応する固定子電圧及び固定子電流を前記測定演算手段に入力し、該入力した前記固定子電圧及び固定子電流に基づいて前記測定演算手段により前記非同期機のパラメータをそれぞれ測定演算する、
非同期機のパラメータ測定方法。」

(3)本件特許発明と甲3発明との対比
本件特許発明と甲3発明とを対比すると、その機能・作用からみて
(ア)後者の「非同期機」が前者の「誘導電動機」に相当し、以下同様に、
「インバータ」が「可変電圧可変周波数の交流を出力する変換器」に、
「非同期機を磁界オリエンテーション制御するインバータの制御装置」が「電動機をベクトル制御する制御装置」に、それぞれ相当する。

(イ)後者の「非同期機の通常運転を開始する前」が前者の「電動機をベクトル制御する前」に相当し、以下同様に、
「固定子抵抗、主インダクタンス、漏れインダクタンスのうち決定すべきパラメータ値に対応してそれぞれ運転すると共に」が「複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために指令信号を出力して」に、
「非同期機のパラメータ値を測定演算する測定演算手段を備え」が「電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を有し」に、それぞれ相当することから、
後者の「非同期機の通常運転を開始する前に固定子抵抗、主インダクタンス、漏れインダクタンスのうち決定すべきパラメータ値に対応してそれぞれ運転すると共に、前記非同期機のパラメータ値を測定演算する測定演算手段を備え」と
前者の「制御装置に、電動機をベクトル制御する前にベクトル制御の指令信号に代えて複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために予め定めた指令信号を出力して、前記電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を含み」とは、
「電動機をベクトル制御する前に複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために指令信号を出力して、前記電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を有し」なる概念で共通する。

(ウ)後者の「非同期機の通常運転を開始する前に、固定子抵抗、漏れインダクタンスのうち決定すべきパラメータ値を検出するために固定子周波数が静止、もしくは回転子が拘束されるように決定すべきパラメータ値に対応して制御し、測定演算手段の出力端に出力される指令信号によりインバータを制御し」た態様と
前者の「電動機をベクトル制御する前に、演算手段から制御装置に前記電動機の複数の電動機定数の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる予め定めた指令信号を測定条件毎に出力し、該指令信号に従い前記制御装置により変換器の出力量を制御し」た態様とは、
「電動機をベクトル制御する前に、前記電動機の前記複数の電動機定数の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる指令信号を前記測定条件毎に出力し、該指令信号に従い変換器の出力量を制御し」なる概念で共通する。

(エ)上記「6.(1-12)」からみて後者の「固定子周波数が静止」は前者の「直流を供給」することに相当し、上記「6.(1-11)」からみて後者の「回転子が拘束されているときで固定子周波数が高いとき」は前者の「交流を供給」に相当することから、
後者の「非同期機の固定子周波数が静止、もしくは回転子が拘束されているときで固定子周波数が高いときに」が前者の「電動機に交流あるいは直流を供給し」に相当し、同様に、
「決定すべきパラメータ値に対応する」が「測定条件下における」に相当する。

(オ)後者の「非同期機のパラメータ測定方法」と
前者の「この演算された電動機定数に基づいて制御装置の制御演算定数を設定する誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法」とは、
「電動機定数測定方法」なる概念で共通する。

したがって、両者は、
「誘導電動機に可変電圧可変周波数の交流を出力する変換器と、該変換器の出力量を制御して前記電動機をベクトル制御する制御装置を備えた誘導電動機制御システムにおいて、
前記電動機をベクトル制御する前に複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために指令信号を出力して、前記電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を有し、
前記電動機をベクトル制御する前に、前記電動機の前記複数の電動機定数の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる指令信号を前記測定条件毎に出力し、該指令信号に従い前記変換器の出力量を制御し、前記電動機に交流あるいは直流を供給し、その際における前記変換器の前記測定条件下における出力量を前記測定演算手段に入力し、該入力した前記出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数をそれぞれ測定演算する、
電動機定数測定方法。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
本件特許発明ではベクトル制御する「制御装置に」、電動機をベクトル制御する前に「ベクトル制御の指令信号に代えて」複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために「予め定めた」指令信号を出力して、前記電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を「含み」と特定されているのに対し、甲3発明ではかかる特定はなされていない点。

[相違点2]
回転停止となるように測定条件毎に行う制御に関し、本件特許発明では「(電動機定数)演算手段から(ベクトル制御する)制御装置に」指令信号を出力し、該指令信号に従い「前記制御装置により」変換器の出力量を制御しているのに対し、甲3発明ではかかる特定はなされていない点。

[相違点3]
本件特許発明では「この演算された電動機定数に基づいて制御装置の制御演算定数を設定する誘導電動機制御システムの制御演算定数設定」方法であるのに対し、甲3発明ではかかる特定はなされていない点。

(4)本件審決取消の判決の判示事項
先の審決に対する審決取消訴訟事件(平成19年(行ケ)第10261号)の審決取消の判決(以下、「本件審決取消の判決」という。)の「第4 当裁判所の判断」 「4 取消事由3(訂正発明の新規性又は進歩性欠如)について」「(4)」に、以下の点が判示されている。
『イ そこで検討すると,まず上記<ア>については,上記(8)のとおりベクトル制御に相当する磁界オリエンテーション制御において,甲3では回転停止の条件として,固定子周波数が静止している条件を設定(上記(12)に示されている)して,非同期機に直流を供給し,その状態下の固定子電圧及び固定子電流(上記のとおり,訂正発明における変換器の出力量に相当する)を測定演算手段により測定演算することが示されているところ,回転停止の条件としての固定子周波数が静止している条件がインバータを駆動する制御装置に対しては回転停止となる指令信号として与えられるものであることは,当業者においては自明な技術事項にすぎない。また,その指令信号を測定演算手段から出力させるようにすることについても格別の創意工夫を必要とする技術事項とは認められず,当業者が適宜に採用し得る設定的事項であると認められる。』(以下、「判示事項A」という。)
『 次に,上記<イ>について検討する。甲3には,測定演算手段(前記(5)の(a)?(d)から構成)から取り出される出力端26及び27の信号i'φ1 及びi'φ 2 がインバータの制御装置に対して指令信号の一部となるものであるから,測定演算手段とインバータの制御装置との関係は示唆されているとみるのが相当である。また,測定演算手段をインバータの制御装置に含ませる点に関しては,インバータの制御装置は,測定演算手段により得られた電動機定数を使用するものであることから,電動機定数を測定演算手段から受け取れる形態であるならば,測定演算手段をインバータの制御装置に含ませるか否かは格別の問題とならず,当業者が適宜に採用し得る設計的事項といえるものである。』(以下、「判示事項B」という。)

(5)相違点についての当審での検討
[相違点1]について
上記判示事項Bには、「測定演算手段をインバータの制御装置に含ませるか否かは格別の問題とならず,当業者が適宜に採用し得る設計的事項といえるものである。」と判示されており、当審の判断は上記判示内容に拘束されるものである(なお、甲3発明の「インバータの制御装置」及び「測定演算手段」が本件特許発明の「ベクトル制御する制御装置」及び「電動機定数演算手段」に対応する。)から、甲3発明においてベクトル制御する制御装置に電動機定数演算手段を含ませること自体は、当業者が適宜に採用し得る設計的事項といわざるをえない。
さらに、実運転前とは電動機をベクトル制御する前であり、かつ、その指令信号はベクトル制御の指令信号に代えて複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために予め定めた指令信号となることは「2.(2)」で述べたとおり自明の事項にすぎない。
してみると、ベクトル制御する制御装置に電動機定数演算手段を含ませる場合に、上記自明の事項を踏まえることにより、相違点1に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

[相違点2]について
上記判示事項Aには、「その指令信号を測定演算手段から出力させるようにすることについても格別の創意工夫を必要とする技術事項とは認められず,当業者が適宜に採用し得る設定的事項であると認められる。」と判示されており、当審の判断は上記判示内容に拘束されるものであるから、上記「[相違点1]について」での検討を踏まえれば、甲3発明において電動機定数演算手段からベクトル制御する制御装置に指令信号を出力させること自体は、当業者が適宜に採用し得る設計的事項であるといわざるをえない。
さらに、電動機定数演算手段からベクトル制御する制御装置に指令信号を出力させれば、該指令信号に従い前記ベクトル制御する制御装置により変換器の出力量を制御することとなることは自明の事項にすぎない。
してみると、電動機定数演算手段からベクトル制御する制御装置に指令信号を出力させた場合に、上記自明の事項を踏まえることにより、相違点2に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

[相違点3]について
非同期機のパラメータ値を通常運転において使用するためには、制御装置の制御演算定数を設定することは技術常識にすぎない。
一方、甲3発明において非同期機の通常運転を開始する前に非同期機のパラメータ値を測定演算することの技術的意義は、演算された電動機定数に基づいて制御装置で制御することにあることも明らかであるので、演算された電動機定数を制御に使用することが示唆されているといえる。
そうすると、甲3発明において、上記の技術常識を踏まえれば、演算された電動機定数に基づいて制御装置の制御演算定数を設定することにより、相違点3に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者にとって容易であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

そして、本件特許発明の全体構成により奏される効果も、甲3発明、上記自明の事項並びに上記技術常識から予測し得る範囲内のものである。

したがって、本件特許発明は、上記自明の事項及び上記技術常識を踏まえれば、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(6)被請求人の反論について
平成20年7月18日付けの上申書において、被請求人は本件特許発明と甲3発明との相違点が以下に示すその1からその5にある旨主張している。
(その1)電動機定数の測定演算のために出力される指令信号が、本件特許発明では、電動機をベクトル制御する前にベクトル制御の指令信号に代えて複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために「予め定めた」指令信号であるのに対し、引用発明では、・・・一つの電動機定数である固定子抵抗の測定条件に制御するためのベクトル制御においての一つの指令信号である点。
(その2)電動機定数の測定演算が、本件特許発明ではベクトル制御する前に行われるのに対し、甲3発明ではベクトル制御において行われる点。
(その3)測定演算される電動機の定数が、本件特許発明では複数であるのに対し、甲3発明では固定子抵抗という一つの電動機定数である点。
(その4)回転停止となる指令信号が、本件特許発明では複数の電動機定数の測定条件に応じて測定条件毎に出力するのに対し、甲3発明では固定子抵抗という一つの電動機定数の測定条件に応じた一つの指令信号である点。
(その5)回転停止となる電動機に供給される電力が、本件特許発明では交流または直流であるのに対し、甲3発明では直流である点。

そこで、上記の被請求人が相違点であると主張する点が相違点であるのかを、甲3発明と対比しながら、順次検討する。
(その1、3)について
甲第3号証には、「本発明の目的は,回転子位置に関する情報なしですむ,非同期機の固定子抵抗,漏れインダクタンス,主インダクタンスに対するパラメータ値を検出する装置を提供することである。」と記載され(上記「6.(1-4)」参照)、また、「切換装置23によりそれぞれ該当する決定すべきパラメータ値に対応する積分調節器に加えられる」と記載され(上記「6.(1-9)」参照)ているので、甲3発明も「固定子抵抗、主インダクタンス、漏れインダクタンスのうち決定すべきパラメータ値に対応してそれぞれ運転すると共に、前記測定演算手段は前記非同期機のパラメータ値を測定演算する手段」を含んでいることから、測定演算される電動機の定数が複数であり、かつ、電動機定数の測定条件に応じて測定条件毎に電動機の制御が変更されている。したがって、被請求人の主張する(その1、3)が相違点であるという主張を採用することができない。
一方、制御するために「予め定めた」指令信号を出力する点については、甲3発明と相違する相違点1として既に検討されているものである。
(その2)について
甲第3号証には、「非同期機の通常運転を開始する前に短絡試験により検出することを可能にする」と記載され(上記「6.(1-11)」参照)、また、「与えられた動作領域において個々のパラメータが検出され,最後に検出された値が記憶されると,記憶装置にはそれぞれ1組のパラメータ値が利用され,これにより非同期機のパラメータは良い精度を以て与えられる」と記載され(上記「6.(1-12)」参照)ているので、甲3発明も「非同期機の通常運転を開始する前に、・・・前記測定演算手段により前記非同期機のパラメータをそれぞれ測定演算する」ものであるので、ベクトル制御(通常運転)する前に電動機定数の測定演算が行われるもとの解される。したがって、被請求人の主張する(その2)が相違点であるとすることができない。
(その4及び5)について
上記「6.(3)(e)」に示したように、甲3発明の「固定子周波数が静止もしくは拘束」が本件特許発明の「回転停止」に相当し、同じく「非同期機の固定子周波数が静止しているときで固定子周波数が高いときに」が本件特許発明の「電動機に交流あるいは直流を供給し」に相当することから甲3発明も固定子抵抗、漏れインダクタンスのうち決定すべきパラメータ値に対応して電動機に供給される電力が「交流または直流」であり、直流の他に交流を供給しているといえる。したがって、被請求人の主張する、甲3発明では固定子抵抗という一つの電動機定数の測定条件に応じた一つの指令信号であり、また、回転停止となる電動機に供給される電力が直流であるという主張を採用することができない。
一方、本件特許発明では指令信号で回転停止させている点については、甲3発明と相違する相違点2として既に検討されているものである。

したがって、被請求人の上記主張を採用することができない。

(7)無効理由2のむすび
以上検討したところによれば、無効理由2には理由があるというべきである。

7.無効理由3についての検討
(1)請求人の主張の詳細
(1-1)「出力量」について
特許請求の範囲の請求項1に記載された「出力量」という用語は、請求項の記載全体にわたって同一の物理量を表すものと解釈すべきである。
ここで本件請求項1の記載によると、出力量とは「該指令信号に従い前記制御装置により」制御されるものであり、その出力量は「前記演算手段に入力」されるものであり、そして「該入力した出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数を測定演算」させるものである。すなわち、制御装置によって制御された出力量が、演算手段に入力され、それによって電動機定数が測定演算されることになる。
しかし、電動機の特性に関係なく、変換器側で定めた出力量によっては、制御対象である電動機に誘起される電圧または電流を測定しないのであるから、変換器の出力量に対する電動機の反応を表すものである電動機定数を測定することは原理的に不可能である。
したがって、特許請求の範囲は、「発明の詳細な説明の項に記載した発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載」したものではない。

(1-2)「ベクトル制御する制御装置」について
特許請求の範囲には、「該変換器の出力量を制御して前記電動機を電動機をベクトル制御する制御装置を備えた誘導電動機制御システムにおいて、…該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量を制御し」と記載されているが、「ベクトル制御する制御装置」は出力電圧のみを制御するものではないため、特許請求の範囲は、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載したものではない。
変換器の出力量を制御して電動機をベクトル制御する制御装置では、指令信号に従い制御装置により変換器の出力量を制御する場合には、電動機をベクトル制御することしかできない。すなわち、本発明における制御装置では、電動機への出力電流を制御(励磁電流とトルク電流相当分をそれぞれ独立に制御)することはできるが、制御態様の異なる出力電圧のみの制御はできない。出力電圧のみを制御する制御装置とベクトル制御装置とでは、内部構成が互いに異なるからである。このことは、明細書に出力電流を制御(励磁電流とトルク電流相当分をそれぞれ独立に制御)する態様しか記載されていないことからも明らかである。しかし特許請求の範囲の記載は、「変換器の出力量を制御し」(構成要件E1)となっており、それは文理的には「出力電圧」のみを制御する態様をも含み得るものである。そして、この出力電圧のみを制御する態様を、「電動機をベクトル制御する制御装置」でどのようにして実施するのかについて、当初明細書等には開示がなく、それは当業者に自明なものでもない。
また、ベクトル制御とは、インバータ出力電流の大きさと位相及び周波数を制御して、励磁電流とトルク相当分電流をそれぞれ独立に制御する技術のことである。したがって、ベクトル制御するときは、ベクトル制御用の指令信号によってその変換器の出力電流を制御する。
本件特許発明の測定演算原理は、各電動機定数毎に、固有の大きさ、位相及び周波数に制御された出力電流を、電圧方程式(5)式に代入することで初めて導かれる算出式(出力電流と電動機電圧のみの算出式)に、一定条件下での出力電流及び電動機電圧を代入して、各電動機定数を算出するものである。したがって、出力電流が単に所定値というだけでは電動機定数の測定はできず(それでは、算出式を導出できないし、算出式を用いることもできない)、出力電流が各電動機定数ごとに、該固有の大きさ、位相及び周波数に制御されることが必須の要件となる。したがって、電動機定数を測定する際の制御装置は、各電動機定数ごとに、出力電流を固有の大きさ、位相及び周波数に制御しており、このような出力電流となるように制御するための制御装置への指令信号であるから、当然に電流指令信号となる。だからこそ、当初明細書には、電動機定数の測定に際して、電流指令信号に従って出力電流を制御する態様のみが記載され、出力電圧を制御して測定する態様は記載されていないのである。
したがって、特許請求の範囲は、発明の詳細な説明の項に記載した発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載したものとはいえない。

(1-3)「回転停止となる指令信号」について
特許請求の範囲には、「一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる指令信号を出力し、…、前記電動機に交流あるいは直流を供給し」と記載されているが、「回転停止となる指令信号」については、発明の詳細な説明の項に、当業者が実施できる程度に十分な開示がなく、また、この指令信号は、明細書に記載されたどの具体的な信号に該当するのかが明らかでないため、特許請求の範囲は、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載したものではない。
すなわち、i_(1)^(q)(トルク電流成分)とω_(s)(すべり周波数)との間には、ω_(s)=(1/T_(2))・(i_(1)^(q)/i_(1)^(d))、かつ、ω_(1)=ω_(r)+ω_(s)(ここでi_(1)^(d)は励磁電流成分、T_(2)は2次回路時定数、ω_(1)は出力周波数、ω_(r)は電動機回転角周波数である。)の関係がある。
以上の関係において、電動機定数(r’及びl_(1)+l_(2)’)を測定する際に実施例のように、i_(1)^(q)=0、かつ、ω_(1)=一定周波数に設定した場合には、ω_(s)=0となり、ω_(1)=ω_(r)=一定周波数となる。これは、電動機が電動機回転角周波数ω_(r)(=ω_(1)=一定周波数)で回転することを意味する。従って、明細書に記載された方法は、一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる指令信号を出力し、前記電動機に交流を供給して電動機定数を測定演算するものではない。なお、仮にω_(1)=一定周波数において回転停止(ω_(r)=0)しているのであれば、その際にはω_(1)=ω_(s)=一定周波数であり、i_(1)^(q)の方は零ではないω_(s)に対応した所定の値となる。この場合、i_(1)^(q)が零にはならないので、i_(1)^(q)=0という測定条件が設定できず、(7)式から(10)式を導出できず、同様に(11)式から(13)式を導出できない。
したがって、いずれにしても、発明の詳細な説明の記載には「回転停止となる指令信号」を生成する方法の記載がない。
また、当初明細書の〔発明の目的〕欄には「ベクトル制御用などの変換装置においてはその出力電流の大きさ、周波数及び位相を精度よく制御できることに着目し、これを用いて電動機に所定の電流を供給し」と記載されており、〔発明の概要〕欄には「本発明の特徴とするところは、…変換装置を用いて交流電動機に供給する電流の大きさ及び周波数を所定値に制御し」と記載されている。そして〔発明の実施例〕欄に記載された測定方法も全て、i1q(トルク電流成分)、i_(1)^(d)(励磁電流成分)及びω_(1)(出力周波数)を所定値に制御(いいかえれば出力電流の大きさ、位相及び周波数を所定値に制御)するものである。そして、実施例の記載によれば各所定値には、電動機を回転停止に保持(この結果、ω_(s)をも特定することができる)できるという特徴があり、(5)式のモータ電圧方程式に各所定値及びω_(s)を代入すると、該所定値とその際に発生する電動機電圧のみを用いた電動機定数の算出式を算出できるという特徴もあり、このような特徴を備える所定値に出力電流を制御することによって、初めて、電動機定数の測定が可能となるものである。従って、「該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量」を所定値に制御するための指令信号は、
「出力電流の大きさ、周波数及び位相を所定値に制御するものであること」、
「電動機を回転停止に保持できる具体的な所定値であること」、
「(5)式のモータ電圧方程式に代入すると、該所定値とその際に発生する電動機電圧のみを用いた電動機定数の算出式を導出できる所定値であること」
の各要件を備えることが必須であり、それらを欠いた単なる「一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる指令信号」では、実際に電動機定数を測定することができない。
したがって、特許請求の範囲は、発明の詳細な説明の項に記載した発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載したものということはできない。

(2)当審の判断
(2-1)「出力量」について
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は前記「2.(1)(1-1)」に記載のとおりであって、電動機定数を測定演算する方法については、「演算手段から制御装置に電動機の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる指令信号を出力し、該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量を制御し、前記電動機に交流あるいは直流を供給し、その際における前記変換器の前記測定条件下における出力量を前記演算手段に入力し、該入力した前記出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数を測定演算」するものと記載されている。
この記載によれば、演算に用いる出力量は、「演算手段から制御装置に電動機の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる指令信号を出力」した状態での変換器の出力量を意味することは明らかである。
そして、「変換器の出力量」は、変換器の出力端での値、すなわち、変換器の出力端で測定可能な「出力量」を意味するものであるから、該「出力量」は、電動機に誘起される電圧または電流と同じ値である、電動機入力端における電圧または電流である。
したがって、この「出力量」は、電動機の特性に関係なく測定可能な値であって、請求人が主張するような、この「出力量」によっては、電動機に誘起される電圧または電流を測定し得ないものということはできず、電動機定数を測定することが原理的に不可能なものということはできない。
したがって、特許請求の範囲は、電動機定数を測定演算するための構成に関して、「発明の詳細な説明の項に記載した発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載」したものではないということはできない。

(2-2)「ベクトル制御する制御装置」について
上記「7.(2)(2-1)」で述べたように、電動機定数演算のためには、電動機定数演算手段から制御装置に回転停止となる指令信号を出力しているときに、演算手段に入力する変換器の出力量が前記指令信号と特定の関係にあることを要しないので、「ベクトル制御する制御装置」が何を制御するものであっても、そのことによって本件特許発明の実施ができないということではない。
すなわち、変換器の出力量が得られれば電動機定数を演算できるのであるから、「電動機をベクトル制御する制御装置」に「回転停止となる指令信号を出力」し、「変換器の出力量を制御し」、という請求項1の記載により電動機定数演算のための変換器出力量を得るときにおける制御状態が回転停止であることを特定しているので、「回転停止となる指令信号を出力」しているときの「変換器の出力量」を用いて行う電動機定数演算のための構成が不明となるものでもなく、特許請求の範囲が、発明の詳細な説明の項に記載された発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載したものでないということはできない。

(2-3)「回転停止となる指令信号」について
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1には「一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる前記予め定めた指令信号を前記測定条件毎に出力し、該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量を制御し」と記載されている。
この記載によれば、電動機に交流を供給しているときにも回転停止状態にあるものと認められるが、誘導電動機においては、交流を印加している状態で回転トルクが存在しない状態はあり得ず、すなわち、すべりω_(s)が0以外で存在しているときには、回転トルクは存在するので、これは、例えば電動機の静止摩擦などによる拘束運転状態であるといえる。
一方、回転磁界は回転させていながら、回転子を停止させたままとする実施例として本件特許の明細書には、電動機定数演算器9により行われる演算処理フローチャートのうち、第5図及びその説明が記載されているところ、そこでは、周波数指令信号を50Hzに設定し、次に励磁電流成分を所定値に、トルク分電流を零に設定し、このとき励磁電流を、電動機が回転しない程度の小さな値とすることでω_(1)=ω_(s)となる条件を設定するものとしている。(上記「5.(3)(3-8)」参照。)
してみると、すべりωsが0以外で存在しているときには、トルク分電流は零ではあり得ず、回転トルクは存在するが、設定値としてω_(1)=ω_(s)とすることとは、すなわち、回転磁界は回転させていながら、回転子を停止させたままとするべく、電流指令値を小さな値にすることであると認めることができる。
よって、発明の詳細な説明の項には、「回転停止となる指令信号」を生成する方法について記載されており、この点についても特許請求の範囲が、発明の詳細な説明の項に記載された発明の構成に欠くことのできない事項のみを記載したものでないということはできない。

(3)無効理由3のむすび
したがって、無効理由3によっては、本件特許を無効とすることはできない。

8.むすび
以上のとおり、無効理由2には理由があり、本件特許発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】誘導電動機に可変電圧可変周波数の交流を出力する変換器と、該変換器の出力量を制御して前記電動機をベクトル制御する制御装置を備えた誘導電動機制御システムにおいて、
前記制御装置に、前記電動機をベクトル制御する前にベクトル制御の指令信号に代えて複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために予め定めた指令信号を出力して、前記電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を含み、
前記電動機をベクトル制御する前に、前記演算手段から前記制御装置に前記電動機の前記複数の電動機定数の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる前記予め定めた指令信号を前記測定条件毎に出力し、該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量を制御し、前記電動機に交流あるいは直流を供給し、その際における前記変換器の前記測定条件下における出力量を前記演算手段に入力し、該入力した前記出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数をそれぞれ測定演算し、
この演算された電動機定数に基づいて前記制御装置の制御演算定数を設定することを特徴とする誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法。
【請求項2】特許請求の範囲第1項において、前記電動機定数の測定演算のうち1次抵抗の測定は、前記電動機定数演算手段からの指令信号に従い、前記変換器の出力量の周波数を零にすると共にその大きさを所定値に制御して、前記電動機を直流励磁し、この際の変換器の出力量に基づいて1次抵抗を測定演算することを特徴とする誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法。
【請求項3】特許請求の範囲第1項において、前記電動機定数の測定演算のうち2次抵抗の測定は、前記電動機定数演算手段からの指令信号に従い、前記変換器の出力量の周波数とその大きさを所定値に制御して前記電動機を交流励磁し、この際の変換器の出力量に基づいて1次抵抗と2次抵抗の合成抵抗を測定演算することを特徴とする誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法。
【請求項4】特許請求の範囲第1項において、前記電動機定数の測定演算のうち漏れインダクタンスの測定は、前記電動機定数演算手段からの指令信号に従い、前記変換器の出力量の周波数とその大きさを所定値に制御して前記電動機を交流励磁し、この際の変換器の出力量に基づいて漏れインダクタンスを測定演算することを特徴とする誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法。
【請求項5】特許請求の範囲第1項において、前記電動機定数の測定演算のうち励磁インダクタンスの測定は、前記電動機定数演算手段からの指令信号に従い、前記変換器の出力量の周波数を零に、またその電流の大きさをステップ的に変化させ、この際の変換器の出力電圧の積分値と前記出力電流値に基づいて励磁インダクタンスを測定演算することを特徴とする誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法。
【請求項6】特許請求の範囲第1項において、前記電動機定数演算手段からの指令信号に従い、前記変換器の出力量の周波数を零に、またその電流の大きさをステップ的に変化させ、この際の変換器の出力電圧の積分値が所定値に達するまでの時間を計測することにより2次時定数を求めることを特徴とする誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法。
【発明の詳細な説明】
〔発明の利用分野〕
本発明は、誘導電動機をベクトル制御する制御装置の制御演算定数を設定する誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法に関する。
〔発明の背景〕
周知のベクトル制御インバータなどの交流電動機制御装置においては、電動機定数例えば漏れインピーダンス、励磁インダクタンス及び回転子2次時定数などに基づいて制御定数が設定される。従来は電動機定数の設計値に基づいてその設定を行つているが、使用する電動機毎に制御定数を変更する必要がありはん雑なこと、また前述の設計値と実際値の不一致により制御演算誤差を生じることが問題である。
ところで従来においては、直流電動機などの直流負荷のインピーダンスを、その電動機に給電する変換装置の出力電流及び電圧に基づいて計測する方法が周知である。直流機の場合、その等価回路は各々、単一の抵抗、インダクタンス及び逆起電力で表わされ、その抵抗値は、電動機に所定の電流を流した際における電動機電圧と電流の比の値(定常値)に基づいて測定される。またインダクタンスについては、電動機に所定の電圧をステップ的に印加した際における電動機電流の立上り時定数から測定することができる。そしてその測定結果に基づいて制御定数の設定が行われる。
一方、誘導電動機の場合は、その等価回路は各各、複数の抵抗、インダクタンス等で表わされ、それぞれを分離して測定する必要があること、また誘導電動機は一般に多相巻線をもつため、測定時に各巻線に流す電流の位相(直流の場合は電流の極性と大きさ)並びに電流の通流により誘起される各巻線電圧の位相(直流の場合は電圧の極性と大きさ)をも考慮する必要があり、前述した従来の方法によつては応じられない。
〔発明の目的〕
本発明の目的は、前述した問題を解決することにあり、ベクトル制御用などの変換装置においては、その出力電流の大きさ、周波数及び位相を精度よく制御できることに着目し、これを用いて電動機に所定の電流を供給し、その際に誘起する電動機電圧に基づいて誘導電動機の電気定数を高精度に測定し、その測定結果に基づいて誘導電動機制御システムの制御演算定数を設定することにある。
〔発明の概要〕
本発明の特徴とするところは、誘導電動機に可変電圧可変周波数の交流を出力する変換器と、該変換器の出力量を制御して前記電動機をベクトル制御する制御装置を備えた誘導電動機制御システムにおいて、前記制御装置に、前記電動機をベクトル制御する前にベクトル制御の指令信号に代えて複数の電動機定数の測定条件にそれぞれ制御するために予め定めた指令信号を出力して、前記電動機の電動機定数を測定演算する電動機定数演算手段を含み、前記電動機をベクトル制御する前に、前記演算手段から前記制御装置に前記電動機の前記複数の電動機定数の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる前記予め定めた指令信号を前記測定条件毎に出力し、該指令信号に従い前記制御装置により前記変換器の出力量を制御し、前記電動機に交流あるいは直流を供給し、その際における前記変換器の前記測定条件下における出力量を前記演算手段に入力し、該入力した前記出力量に基づいて前記演算手段により前記電動機の電動機定数をそれぞれ測定演算し、この演算された電動機定数に基づいて前記制御装置の制御演算定数を設定することにある。
〔発明の実施例〕
第1図はPWMインバータ制御誘導電動機システムに本発明の電動機定数測定方法を適用した場合の一実施例の回路構成図を示す。1はGTO(Gate Turn-off Thyristor)あるいはトランジスタ及びダイオードなどで構成されるPWMインバータ、2は測定対象である誘導電動機、3は周波数指令信号ω_(1)^(*)に比例した周波数の2相正弦波信号を発生する発振器、4は電流指令信号の励磁電流成分i_(d)^(*)及びこれに直交するトルク電流成分i_(q)^(*)と発振器3の出力信号に基づいて、インバータの出力電流の指令パターン信号i_(1)^(*)を出力する座標変換器、5はインバータ出力電流の瞬時値i_(1)を検出する電流検出器、6はi_(1)^(*)とi_(1)の偏差に応じてGTOをオン・オフ制御し、i_(1)をi_(1)^(*)に比例するように制御する電流調節器、7はGTOにゲート信号を供給するゲート回路である。なお5?7については全体で3相分あるが、他の2相分は図示を省略してある。8は電動機電圧の直交回転座標系の各軸成分v_(1)d及びv_(1)qを検出する電圧成分検出器、9はi_(d)^(*),i_(q)^(*),ω_(1)^(*)などの各指令信号を出力し、インバータの出力電流を所定値に保ち、その際に得られる検出信号v_(1)d及びv_(1)q並びに前述のi_(d)^(*),i_(q)^(*)及びω_(1)^(*)に基づいて電動機の電気定数を測定する電動機定数演算器である。なお1,3?7はインバータ装置の構成要素を利用するため、本発明を実施する上で新しく必要となるものは電圧成分検出器8及び電動機定数演算器9である。
次に上記装置の動作を説明する。座標変換器4は電流指令信号i_(d)^(*)及びi_(q)^(*)並びに発振器3の信号に基づいて次式の演算を行い、2相の電流指令パターン信号i_(α)^(*)及びi_(β)^(*)を出力する。

さらに次式に従い3相の電流指令信号i_(1)^(*)(i_(U)^(*),i_(V)^(*),i_(W)^(*))が取り出される。

これらi_(1)^(*)と電流検出信号i_(1)が各相において比較され、その偏差に応じてインバータのGTOはオンオフ制御される。その結果インバータ出力電流はi_(1)^(*)に比例するように制御される。
一方、電圧成分検出器8において、次式に従い電動機電圧の直交2軸成分v_(1)d及びv_(1)qが検出される。

ここで、電圧のv_(1)α,v_(1)β,v_(1),v_(1)d及びv_(1)qに対する関係並びに電流のi_(1)α,i_(1)β,i_(1),i_(1)d及びi_(1)qに対する関係を第2図のベクトル図に示す。α軸及びβ軸は直交固定子座標軸、d軸及びq軸は角周波数ω_(1)で回転する直交回転座標軸である。いま、i_(d)^(*)及びi_(q)^(*)を所定値に設定すれば前述したように(3)式の関係に従いインバータ出力電流i_(1)が流れる(第2図はi_(q)^(*)=0の場合を示す)。このとき電動機には誘起電圧が発生する。その電圧ベクトルv_(1)は図示のようにd軸成分v_(1)dとq軸成分v_(1)qに分解して考えることができる。次に本発明の電動機定数測定法の原理につき述べる。以下、誘導電動機の1次抵抗r_(1)、2次抵抗r_(2)′、漏れインダクタンスl_(1)+l_(2)′、励磁インダクタンスL_(1)及び2次時定数T_(2)の測定法について順に述べる。
〔r_(1)の測定〕
定常時におけるv_(1)d及びv_(1)qは次式で与えられる。

ここに、i_(1)d,i_(1)q:1次電流のd軸及びq軸成分
i_(2)d,i_(2)q:2次電流のd軸及びq軸成分
ここで、2次電流i_(2)d及びi_(2)qはかご形誘導機の場合は測定できない量であるため、これらを消去する。定常時には2次電流と1次電流に関して次式が成立する。

ここに、ω_(s):すべり角周波数
(6)式を用いて(5)式のi_(2)d及びi_(2)qを消去すれば、v_(1)dは次式で示される。

ここで、i_(1)q=0,ω_(1)=0及びω_(s)=0(直流励磁、回転停止)の条件を設定すれば、
v_(1)d=r_(1)i_(1)d ………(8)
v_(1)dは前述した電圧成分検出器8を用いて検出でき、またi_(1)dは前述したように電流指令信号i_(d)^(*)に比例して制御されるため既知である。したがつてr_(1)は(8)式に基づいて測定できる。
〔r_(2)′の測定〕
次に、i_(1)q=0,ω_(1)=ω_(s)すなわち回転停止にて一定周波数で励磁する条件を設定すれば、

ここで、1次角周波数ω_(1)に対してr_(2)^(2)≪ω_(1)^(2)(l_(2)+L_(2))^(2)である条件を設定すれば、

ここで、r_(1)は前述より既知であるから、2次抵抗の1次換算値r_(2)′が測定できる。
〔l_(1)+l_(2)′の測定〕
(5)(6)式よりv_(1)qを求めると、

ここで、i_(1)q=0,ω_(1)=ω_(s)すなわち回転停止にて一定周波数で励磁する条件を設定すれば

さらに、r_(2)≪ω_(1)(l_(2)+L_(2))がある条件では

ここで、v_(1)qは前述した電圧成分検出器8を用いて検出でき、またi_(1)d及びω_(1)はそれらの設定信号i_(d)^(*)及びω_(1)^(*)に比例して制御されるため既知である。したがつて漏れインダクタンスl_(1)+l_(2)′が測定できる。
〔L_(1)の測定〕
i_(1)q=0,ω_(1)=0,ω_(s)=0かつi_(1)dをステップ変化させる条件を設定する。なお、インバータ出力電流は電流制御回路の動作に従い高速応答制御できる。したがつてステップ変化のi_(d)^(*)を与えることにより、i_(1)^(d)をステップ的に変化させることができる。上述の条件においては次式が成立する。
v_(1)d=(r_(1)+P(l_(1)+L_(1)))i_(1)d1+PMi_(2)d………(14)
0=PMi_(1)d1+(r_(2)+P(l_(2)+L_(2)))i_(2)d ………(15)
ここで、1はステップ関数である。さらに(15)式を用いて(14)式のi_(2)dを消去すれば

ここで、r_(1)は前述より既知であるので、r_(1)i_(1)dを消去し(16)式の両辺を積分すると、

ここに、T_(2)=(l_(2)+L_(2))/r_(2)
積分をT_(2)より十分長い期間について行えば、

ここで、l_(1)は(13)式で求めたl_(1)+l_(2)′に基づいて周知のように次式にて近似できる。

したがつて(18)式に従い、v_(1)dの積分値をi_(1)dの設定信号i_(d)^(*)で割算してl_(1)+L_(1)を求め、それよりl_(1)を差し引けばL_(1)が求められる。
〔T_(2)の測定〕
(17)式において、l_(1)≪L_(1)のため、v_(1)dの積分値はi_(1)dのステップ変化に対して時定数がほぼT_(2)の1次遅れ変化をする。したがつて積分値がその終期値に対し63%に達するまでの時間を計測すればそれが求めるT_(2)である。
以上が測定原理である。上述した演算はマイクロコンピユータ等で構成される電動機定数演算器9により行われる。その演算処理フローチヤートを第3?8図に示す。
第3図は先述の原理に従いr_(1)を測定するフローチヤートである。先ず発振器への周波数指令信号ω_(1)^(*)を零に設定し(31)、次にi_(d)^(*)を所定値にi_(q)^(*)を零に設定してi_(1)dを流し直流励磁を行う(32)。そして電圧成分検出器8により検出したv_(1)dをフイルタを通し、次にAD変換器によりデジタル信号に変換してマイクロコンピユータに取り込む(33)、そしてv_(1)dをi_(1)dに比例のi_(d)^(*)で割算しr_(1)を求める(34)。
第4図はr_(1)を別方式にて測定するフローチヤートである。上述のようにして

振器3の出力信号位相をプリセツトする)、i_(d)^(*)を所定値にi_(q)^(*)を零に設定し

したがつてV-W相先電圧v_(V-W)を検出し、i_(d)^(*)で割算すれば抵抗r_(1)が求められる。以上の演算内容を図示したものが第4図である。
この方式は、電流を常にV相とW相に流す方式のため、電圧検出はV相-W相間電圧(一定極性の直流)を検出すればよく、電圧センサ(フオトカプラ等)が1個で済み、センサ周辺が前述の方式より簡単なことが特長である。
第5図は先述の原理に従いr_(2)′を測定するフローチヤートである。先ずω_(1)^(*)を例えば314rad/s(50Hz)に設定し(51)、次にi_(d)^(*)を所定値にi_(q)^(*)を零に設定してi_(1)dを流し交流励磁を行う(52)、この場合、i_(1)dは電動機が回転しない程度の小さな値とし、ω_(1)=ω_(s)である条件を設定する。前述と同様にv_(1)dをマイクロコンピユータに取り込み(53)、v_(1)dをi_(d)^(*)で割算しr_(1)+r_(2)′を求める(54)、そして先に求めたr_(1)を引算し、r_(2)′を演算する(55)。
第6図は先述の原理に従いl_(1)+l_(2)′を測定するフローチヤートである。先ず第5図と同様にω_(1)^(*)を設定し(61)、交流励磁を行う(62)。v_(1)qを取り込み(63)、v_(1)qをω_(1)^(*)及びi_(d)^(*)で割算してl_(1)+l_(2)′を求める。
第7図は先述の原理に従いL_(1)を測定するフローチヤートである。先ずω_(1)^(*)を零に設定し(71)、次にステップ変化のi_(d)^(*)を座標変換器4に与えi_(1)dをステップ的に流す(72)。このとき発生するv_(1)dを検出しマイクロコンピユータに取り込む(73)。なお、この取込みは後述の累積加算巾はΔt秒毎に行う。次に今回取り込んだv_(1)dと前回記憶したv_(1)′dを比較し、その比が1に近い所定値以上となるまでv_(1)dをΔt秒毎に取り込み累積加算を行う(74及び75)。もし上述の比が所定値以上となつた際には累積加算を完了し、その加算結果をi_(d)^(*)で割算してl_(1)+L_(1)を演算する(76)。さらにl_(1)+L_(1)から(19)式に従いl_(1)を引算しL_(1)を演算する(77)。

らである。当然であるがこの場合はフローチヤートは第7図と同様である。
第8図は先述の原理に従いT_(2)を測定するフローチヤートである。先ずω_(1)^(*)を零に設定し(81)、次に第7図と同一のi_(d)^(*)を与える(82)。そしてΔt秒毎にv_(1)dを取り込み(83)、v_(1)dの累積加算Σv_(1)dΔtを演算する(84)。加算値が第7図において求めた終期値の63%に到達するまでΔt秒毎に上述の累積加算を続ける(85)。63%に達すれば加算を完了し、それまでのΔtの累積値ΣΔtよりT_(2)を求める(86)。なおT_(2)は、

であるため、先に測定したL_(1)をr_(2)′で割算して求めることもできる。
上述のようにして演算された各電動機定数は、記憶要素に記憶され、次に述べるインバータ制御装置の制御演算定数の設定に使用される。
第9図は誘導機ベクトル制御装置の回路構成図であり本発明の適用可能例を示す。1?7は第1図と同一物であるので説明を省略する。10は回転速度を指令するための速度指令器、11は速度検出器、12はトルク分電流指令i_(t)^(*)を出力する速度偏差構巾器、13は電動機の磁束指令φ^(*)を出力する磁束指令器、14は磁束指令に基づいて励磁電流指令i_(m)^(*)を出力する励磁電流指令演算器、15はi_(t)^(*)をi_(m)^(*)で割算しすべり角周波数指令ω_(s)^(*)を出力するすべり周波数指令演算器、16はω_(s)^(*)と回転速度ω_(r)を加算しインバータの周波数指令信号ω_(1)^(*)を出力する加算器である。
ベクトル制御の原理は周知であるので詳細な説明は省略するが、次式に従いインバータの出力電流の大きさ|i_(1)|と位相θ及び周波数ω_(1)を制御することにより高速応答高精度な制御を行うものである。

ここに、ω_(1):1次角周波数
ω_(r):回転角周波数
ω_(s):すべり角周波数
ここで(22)式及び(23)式の関係を満足させる制御は、前述した座標変換器4及び電流調節器6の動作に従い行なわれる。また(24)式の関係の制御は演算器15及び加算器16の動作に従い行われる。
ところで、i_(m)^(*)は演算器14において次式に従い取り出される。

すなわちこのとき前述の測定されたL_(1)が演算定数として用いられる。また演算器15において(24)式の演算を行う際には前述のT_(2)が用いられる。このような演算定数の設定は、インバータ制御装置がマイクロコンピユータで構成される場合には、前述のように測定記憶された電動機定数に基づいて演算プログラムの定数設定を行うことにより、また制御装置がアナログ回路で構成される場合には、割算器あるいは乗算器を用いて(24)式及び(25)式の演算を行うことにより可能である。
第10図は誘導機ベクトル制御装置の回路構成図であり、本発明の他の適用可能例を示す。1?8,10?12及び15は、第1図及び第9図と同一物であるので説明を省略する。16は電圧成分検出信号v_(1)d及びv_(1)qから電動機の漏れインピーダンス降下を差し引き誘導起電力成分ed及びeqを検出する漏れインピーダンス補償器、17は誘導起電力eqの指令器、18は励磁電流指令i_(m)^(*)を出力する誘導起電力偏差増巾器、19はedに基づいてすべり角周波数の補正信号Δω_(s)^(*)を出力する増巾器、20は前述のω_(s)^(*),Δω_(s)^(*)及びω_(r)を加算し周波数指令信号ω_(1)^(*)を出力する加算器である。
第9図の装置との違いは、2次時定数T_(2)(2次抵抗r_(2))の2次巻線温度による変動を補償するためにedに応じて周波数(すべり周波数)を修正するようにしたこと、また磁束弱め制御を行う際の電動機の鉄心飽和による影響を防止するために誘導起電力eqを指令値E^(*)に一致するように励磁電流i_(m)を調節する制御ループを設けたところにある。
漏れインピーダンス補償器16は次式に示す演算を行いed及びeqを検出する。

すなわちこのとき先に測定されたr_(1),l_(1),l_(2)′の各電動機定数が用いられる。各電動機定数のこれら演算への取り込みは、第9図の場合と同様に、マイクロコンピユータの演算プログラムの定数設定あるいはアナログ回路においては乗算器を用いて行える。
また電流調節器6などで構成される電流制御系の制御定数設定に際しては、測定したl_(1)+l_(2)′が用いられるが、その詳細については上述と本発明の範囲において同様であるので説明を省略する。
〔発明の効果〕
本発明によれば、電動機定数演算手段から指令信号を出力し、それにより変換器の出力を制御し、その出力量を電動機定数演算手段にフィードバックするという閉ループを形成して、電動機定数の測定演算を自動的に実行するので、複数の電動機定数の測定演算に要する手間(手動時の)を大幅に削減することができ、かつ、高精度の測定演算が可能となる。
また、本発明による電動機定数の測定は、電動機をベクトル制御する前に、ベクトル制御の指令信号に代えて電動機定数演算手段から出力する前記電動機の複数の電動機定数の一つの定数の測定条件に応じた回転停止となる予め定めた指令信号を前記測定条件毎に出力することによって、電動機をベクトル制御する時に使用する制御システム(変換器、制御装置)を共用して行なうので、電動機定数測定のための特別の測定装置を不要とすることができる。
なお本発明は誘導電動機を対象とするものに限らず、同期電動機が対象であつても同様に適用できる。また変換器は前述のようにPWMインバータに限らず他方式のものであつてもよい。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示す電動機定数測定装置の回路構成図、第2図は本発明の動作原理を説明するためのベクトル図、第3?8図は本発明における演算内容のフローチヤート、第9,10図は本発明の適用可能例を示す誘導機ベクトル制御装置の回路構成図である。
1……インバータ、2……電動機、3……発振器、6……電流調節器、8……電圧成分検出器、9……電動機定数演算器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-05-28 
結審通知日 2009-01-20 
審決日 2007-06-12 
出願番号 特願昭59-38582
審決分類 P 1 123・ 121- ZA (H02P)
P 1 123・ 531- ZA (H02P)
最終処分 成立  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 小川 恭司
田良島 潔
登録日 1996-11-21 
登録番号 特許第2580101号(P2580101)
発明の名称 誘導電動機制御システムの制御演算定数設定方法  
代理人 井坂 光明  
代理人 松尾 和子  
代理人 井坂 光明  
代理人 飯田 秀郷  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  
代理人 篁 悟  
代理人 奥村 直樹  
代理人 隈部 泰正  
代理人 近藤 直樹  
代理人 竹内 英人  
代理人 大塚 文昭  
代理人 篁 悟  
代理人 隈部 泰正  
代理人 飯田 秀郷  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  
代理人 中村 彰吾  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ