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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1211035
審判番号 不服2006-22528  
総通号数 123 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-05 
確定日 2010-02-04 
事件の表示 特願2002-235769「スリーピースソリッドゴルフボール」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月15日出願公開、特開2003-199846〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年8月13日(優先権主張 平成13年10月23日)の出願であって、平成18年1月27日に手続補正がなされ、平成18年8月31日付け(起案日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月5日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同年11月2日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。
これに対し、当審において、平成19年3月19日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成20年4月22日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は同年6月26日付けで回答書を提出した。

第2 平成18年11月2日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年11月2日付け手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容及びその目的について
(1)平成18年11月2日手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、本件補正前に
「【請求項1】センター(1)と該センター上に形成された中間層(2)と該中間層を被覆するカバー(3)とから成り、かつ該カバーの表面に多数のディンプルを形成したスリーピースソリッドゴルフボールにおいて、
該センター(1)が、ショアD硬度による表面硬度(H_(S))と中心硬度(H_(C))との差(H_(S)-H_(C))10?40を有し、かつ該表面硬度(H_(S))36?50を有し、
該中間層(2)の基材樹脂が熱可塑性エラストマー/アイオノマー樹脂の重量比20/80?70/30を有する熱可塑性樹脂から形成され、かつ該中間層がショアD硬度による硬度(H_(M))36?50を有し、
該カバー(3)の基材樹脂がアイオノマー樹脂を主材として含有する熱可塑性樹脂から形成され、該カバーがショアD硬度による硬度(H_(L))58?69を有し、
該センターの表面硬度(H_(S))と該中間層硬度(H_(M))との差(H_(S)-H_(M))が0?15であり、かつ該カバー硬度(H_(L))と該中間層硬度(H_(M))との差(H_(L)-H_(M))が10?28であり、
該ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、該ディンプルのボール表面積占有率をYで表したとき、XとYとが以下の式(1):
X≦1930+3882Y (1)
で表される関係を満足し、かつYが0.780?0.853である
ことを特徴とするスリーピースソリッドゴルフボール。
【請求項2】前記中間層(2)が厚さ1.0?2.1mmを有し、かつ前記カバー(3)が厚さ1.0?2.1mmを有する請求項1記載のスリーピースソリッドゴルフボール。
【請求項3】前記ディンプルの輪郭長さ10.5mm以上を有するディンプルの個数が、ディンプル総数の90%より多い請求項1または2記載のスリーピースソリッドゴルフボール。」
とあったものを、
「【請求項1】センター(1)と該センター上に形成された中間層(2)と該中間層を被覆するカバー(3)とから成り、かつ該カバーの表面に多数のディンプルを形成したスリーピースソリッドゴルフボールにおいて、
該センター(1)が、ショアD硬度による表面硬度(H_(S))と中心硬度(H_(C))との差(H_(S)-H_(C))10?40を有し、かつ該表面硬度(H_(S))36?50を有し、
該中間層(2)の基材樹脂が熱可塑性エラストマー/アイオノマー樹脂の重量比20/80?70/30を有する熱可塑性樹脂から形成され、かつ該中間層がショアD硬度による硬度(H_(M))36?50を有し、
該カバー(3)の基材樹脂がアイオノマー樹脂を主材として含有する熱可塑性樹脂から形成され、該カバーがショアD硬度による硬度(H_(L))58?69を有し、
該センターの表面硬度(H_(S))と該中間層硬度(H_(M))との差(H_(S)-H_(M))が0?15であり、かつ該カバー硬度(H_(L))と該中間層硬度(H_(M))との差(H_(L)-H_(M))が10?28であり、
該ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、該ディンプルのボール表面積占有率をYで表したとき、XとYとが以下の式(1):
3882Y+1030≦X≦3882Y+1879 (1)
で表される関係を満足し、かつYが0.780?0.853であることを特徴とするスリーピースソリッドゴルフボール。
【請求項2】前記中間層(2)が厚さ1.0?2.1mmを有し、かつ前記カバー(3)が厚さ1.0?2.1mmを有する請求項1記載のスリーピースソリッドゴルフボール。
【請求項3】前記ディンプルの輪郭長さ10.5mm以上を有するディンプルの個数が、ディンプル総数の90%より多い請求項1または2記載のスリーピースソリッドゴルフボール。」
と補正するものである。

(2)上記(1)で示した、特許請求の範囲についてする補正は、独立請求項である請求項1について、ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、ディンプルのボール表面積占有率をYで表したときの両者の満たす関係式が、本件補正前に
「X≦1930+3882Y」
とあったものを、
「3882Y+1030≦X≦3882Y+1879」
として、その数値範囲を限定するものであり、従属請求項である他の請求項については記載を変更しないものである。
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、以下では、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けられるものであるか(旧特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)を検討する。

2 独立特許要件について
(1)特許法第36条第6項第1号違反
ア 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には、
「該ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、該ディンプルのボール表面積占有率をYで表したとき、XとYとが以下の式(1):XとYとが以下の式(1):
3882Y+1030≦X≦3882Y+1879 (1)
で表される関係を満足し、かつYが0.780?0.853である」
と記載されている。
イ 上記XとYの関係式及びYの数値範囲についての技術的意義に関して、本願明細書の発明の詳細な説明には、段落【0045】に
「XとYとが以下の式(1):
X≦1930+3882Y (1)
で表される関係を満足することを要件とする。上記Xが式(1)を満たすことによりディンプル輪郭長の大きいディンプル種類をできるだけ多く配置することが可能であり、バックスピンをかけて打出した直後のボールの抗力を小さくする事でボール速度の推移の軽減をはかり飛距離増大に繋がる。」
と記載されているとともに、段落【0047】に好適なXとYの関係式について記載されている。
また、段落【0048】には、Yの数値範囲に関して、
「本発明のゴルフボールにおいて、ディンプルのボール表面積占有率Yは、0.70?0.90であることを要件とするが、好ましくは0.75?0.90、より好ましくは0.75?0.88である。上記Y値が、0.70未満ではボールが上がりにくい(低弾道)ため飛距離が減少する。0.90より大きいとボールが吹き上がりすぎて飛距離が減少する。」
と記載されている。
しかしながら、上記以外の箇所には、具体例の記載を除いて、上記XとYの関係式及びYの数値範囲についての技術的意義を示す記載はない。
ウ 上記アに示した本件補正後の請求項1の記載と、上記イに示した本件の発明の詳細な説明の記載とについてみるに、以下の(ア)及び(イ)がいえる。
(ア)上記発明の詳細な説明には、「ディンプル輪郭長の大きいディンプル種類をできるだけ多く配置すること」が「飛距離の増大」につながることが記載されており、そのようなディンプルを有するゴルフボールを得るために、ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、該ディンプルのボール表面積占有率をYで表したときに所定の関係式を満たすと好適である旨記載されているが、どのようにして上記XとYの上記関係式を得たものであるのか、その因果関係及びメカニズムに関しては、上記記載を含む本願の発明の詳細な説明には、記載も示唆もされておらず、当業者にとって自明の事項であるとも認められない。
したがって、本願の発明の詳細な説明において、本件補正後の請求項1に記載された上記XとYの関係式を満たすディンプルを有するゴルフボールと、飛距離の増大という本願の課題との技術的意義が把握できる記載は、具体例として記載された実施例1?11及び比較例1?8のみである。
(イ)上記発明の詳細な説明には、ディンプルの表面積占有率Yが所定の範囲内にあるとき、弾道の高さとの関係において、飛距離の増大につながることが記載されているが、どのようにして上記ディンプルの表面積占有率Yの数値範囲を得たものであるのか、その因果関係及びメカニズムに関しては、上記記載を含む本願の発明の詳細な説明には、記載も示唆もされておらず、当業者にとって自明の事項であるとも認められない。
したがって、本願の発明の詳細な説明において、本件補正後の請求項1に記載された上記ディンプルの表面積占有率Yの数値範囲と、飛距離の増大という本願の課題との技術的意義が把握できる記載は、具体例として記載された実施例1?11及び比較例1?8のみである。
エ 本願の発明の詳細な説明には、スリーピースソリッドゴルフボールの具体例として実施例1?11及び比較例1?8が記載されている。これらの具体例の「X-3882Y」及び「Y」の値を以下に表で示す。なお、「X-3882Y」の値が1030?1879に入るものが、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の数値範囲に入る具体例である。
----------------------------------
X-3882Y Y
----------------------------------
実施例1?7 1642 0.780
実施例8 1879 0.796
実施例9 1444 0.786
実施例10 1444 0.853
実施例11 1030 0.817
比較例1?6 1642 0.780
比較例7 2143 0.793
比較例8 2218 0.758
----------------------------------
(審決注;XとYの関係式が請求項1の数値範囲を満たすもの、及び、Yの値が請求項1の数値範囲を満たすものについて、下線を付した。)
上記表から明らかなように、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたXとYの関係式を満たすゴルフボールには、本願の発明の詳細な説明に記載された発明が解決しようとする課題を解決することができない比較例1ないし6が含まれている。また、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたディンプルの表面積占有率Yの数値範囲に含まれるゴルフボールには、本願の発明の詳細な説明に記載された発明が解決しようとする課題を解決することができない比較例1ないし7が含まれている。
したがって、本願の発明の詳細な説明に記載された発明が解決しようとする課題との関係において、課題を解決することができない比較例を含む数値範囲をXとYの関係式として採用すること、及び、課題を解決することができない比較例を含む数値範囲をYの数値範囲として採用することは、他のゴルフボールの物性に関する値が異なることを前提として解釈しても、本願の発明の詳細な説明に記載された発明の具体例である各実施例及び各比較例に基づいて、当業者が自明になし得たものとは認められない。
よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「該ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、該ディンプルのボール表面積占有率をYで表したとき、XとYとが以下の式(1):XとYとが以下の式(1):
3882Y+1030≦X≦3882Y+1879 (1)
で表される関係を満足し、かつYが0.780?0.853である」
との技術事項は、本願の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、本願の発明の詳細な説明の記載事項から当業者が自明に把握できた事項であるとも認められない。
オ よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及びその従属請求項(請求項2,3)の記載は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6号第1項に規定された要件(サポート要件)を満たさない。

(2)特許法第29条第2項違反
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、上記アに示したように、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
しかしながら、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載からスリーピースソリッドゴルフボールの構成を把握することができるので、特許請求の範囲に記載された事項から把握される発明が本願の発明の詳細な説明の記載から理解できるものと善解し、以下では、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明(以下「本件補正発明」という。)について、進歩性についても検討する。
ア 本件補正発明
本件補正発明は上記1(1)において、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1として記載したとおりのものと認める。

イ 引用刊行物
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-79116号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。なお、以下において下線は審決で付した。
(ア)「【請求項1】 ソリッドコアと、該ソリッドコアを被覆する少なくとも一層の中間層と、該中間層を被覆する少なくとも一層のカバーとを備えたマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記中間層がショアD硬度30?52の熱可塑性エラストマーを主材として形成されると共に、上記カバーが熱可塑性樹脂を主材とし、かつ粒状無機充填剤が配合された材料にて形成され、上記ソリッドコアの表面JIS-C硬度が中心のJIS-C硬度よりも10以上大きく、慣性モーメントが82.5kg・cm^(2)以上であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】カバー材の熱可塑性樹脂がショアD硬度60以上である請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】カバー材が熱可塑性樹脂100重量部に対して、粒状無機充填剤を11?45重量部配合してなる請求項1又は2記載のゴルフボール。
【請求項4】慣性モーメントが83.0kg・cm2以上である請求項1乃至3のいずれか1項記載のゴルフボール。
【請求項5】中間層の比重が0.8以上であると共に、厚さが0.2?5.0mmである請求項1乃至4のいずれか1項記載のゴルフボール。」
(イ)「【0018】本発明のソリッドコアは、JIS-C硬度による硬度分布が適正化されたもので、表面のJIS-C硬度が中心のJIS-C硬度よりも硬く、かつその硬度差はJIS-C硬度で10以上であることを要し、好ましくは12以上、上限として22以下、特に20以下であることが推奨される。ソリッドコアの硬度差が少ないと、スピン量が多くなりすぎて飛距離を低下させてしまう。なお、硬度差が多すぎると、耐久性の劣化が懸念されるが、本発明においては、後述するカバーの粒状無機充填剤により耐久性劣化が回避されるので殆ど問題にはならない。
【0019】なお、本発明のソリッドコアは、上記ゴム組成物以外の材料で形成することもでき、コア内外の硬度差が上述したように適正化されていればよく、例えば、後述する中間層材、カバー材として例示する熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0020】また、本発明のソリッドコアは、1種類の材料からなる単層構造としても、異種の材料からなる層を積層した2層以上からなる多層構造としてもよく、特に2層以上の多層構造のソリッドコアとした場合、その表面硬度と中心硬度との差がJIS-C硬度で上述したように10以上になるように調節されていればよい。
【0021】次に、本発明の中間層は、上記ソリッドコア1の周囲に形成される層で、ショアD硬度30以上、特に36以上、上限として52以下、好ましくは50以下、更に好ましくは47以下の比較的軟らかい熱可塑性エラストマーを主材として形成される。
【0022】上記熱可塑性エラストマーとして、具体的には、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマーなどを挙げることができ、市販品としては、東レ・デュポン社製ハイトレル、東レ(株)製ペバックス、大日本インキ化学工業(株)製パンデックス、モンサント社製サントプレーン、旭化成工業(株)製タフテック等を挙げることができる。・・・中略・・・
【0027】本発明のゴルフボールは、上記中間層2表面にカバー3を被覆形成してなるものであるが、このカバーは熱可塑性樹脂を主材としてなる材料で形成され、その材料中には、粒状無機充填剤が配合されるものである。
【0028】ここで、カバーの主材の熱可塑性樹脂としては、具体的には、アイオノマー樹脂などを挙げることができる。カバーとして無機充填剤等と配合した後での硬度は、ショアD硬度が60以上、特に62以上、上限としては67以下、特に65以下となるような熱可塑性樹脂にて形成することが推奨され、ショアD硬度が少ないと、反発性が低下すると共に、スピンが増え、飛距離が落ちる場合がある。熱可塑性樹脂は市販品を使用することができ、例えば、ハイミラン(三井・デュポン社製アイオノマー樹脂)、サーリン(デュポン社製アイオノマー樹脂)、アイオテック(エクソン社製アイオノマー樹脂)などを使用することができる。」
(ウ)「【0045】
【実施例】以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0046】[実施例,比較例]表1,2に示した組成のゴム組成物をそれぞれ専用の金型内に導入し、表1,2に示す硬度分布を有するソリッドコアを製造した後、表5,6の記載に従って、更に中間層及び/又はカバーを表3,4の材料を使用して形成し、表面に同一配列、形状のディンプルを有するゴルフボールを製造した。
【0047】なお、表3中、項目に記載した商品名は以下の材料を示す。
ハイトレル:東レ・デュポン社製ポリエステル系熱可塑性エラストマー
タフテック:旭化成工業製スチレン系熱可塑性エラストマー
ハイミラン:三井・デュポンポリケミカル社製アイオノマー樹脂
サーリン:デュポン社製アイオノマー樹脂
硫酸バリウム300:堺化学工業社製硫酸バリウム300(真比重4.4)
【0048】得られたゴルフボールに対して、以下の測定、評価を行なった。結果を表5,6に併記する。
【0049】慣性モーメント
上記式により計算した。
【0050】打撃性能
スイングロボットを用い、ドライバー(#W1)でヘッドスピード45m/sで打撃し、慣性モーメント、スピン量、キャリー及びトータル飛距離をそれぞれ測定した。また、飛び性能は比較例1のトータル飛距離を基準○として、各ボールのトータル飛距離を下記基準で評価した。
◎:極めて良好な飛び(トータル飛距離225m以上)
○:良好な飛び(トータル飛距離221m以上225m未満)
△:普通(トータル飛距離218m以上221m未満)
×:悪い(トータル飛距離218m未満)
【0051】フィーリング
各ボールをそれぞれドライバー(#W1)、9番アイアン(I♯9)、パター(♯PT)でそれぞれ打撃したときの打感を下記基準で評価した。
○:ソフトで良好な打感
△:普通
×:悪い
【0052】繰り返し打撃耐久性
飛び性能と同様のスウィングロボットにて、ドライバーを用いて、ヘッドスピード45m/sで同一ボールにつき、200回繰り返し打撃を行なった後、割れが発生する回数により評価した。
○:200回の打撃でも割れなし
△:100回以上200回未満の打撃で割れ発生
×:100回未満の打撃で割れ発生
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】表5,6の結果より、本発明のゴルフボールはいずれも、飛び性能、各種クラブ打撃時のフィーリング、繰り返し打撃耐久性に優れるものであった。これに対して、比較例のゴルフボールには、以下の欠点が見られた。
比較例1:ドライバーでの飛距離が低下した。ドライバーでのフィーリングも軟らかすぎた。
比較例2:耐久性が劣るものであった。
比較例3:飛距離が劣るものであった。
比較例4:飛距離が劣る上、打感が硬すぎるものであった。
比較例5:飛距離が劣る上、打感が悪いものであった。
比較例6:飛距離が劣る上、打感が悪いものであった。
比較例7:アイアンとパター打撃時における打感が劣る上、耐久性が劣るものであった。
比較例8:打感が劣るものであった。
比較例9:飛距離が劣るものであった。
比較例10:アイアンとパター打撃時における打感が劣る上、飛び性能が劣るものであった。」
(エ)摘記(ウ)の段落【0053】【表1】に示された実施例3のソリッドコアは、表面のJIS-C硬度が中心のJIS-C硬度よりも硬く、JIS-C硬度による表面硬度が75でJIS-C硬度による中心硬度が60であることが把握できる。
(オ)摘記(ウ)の段落【0057】【表5】に示された実施例3は、中間層として種類bの基材樹脂を使用するものであること、段落【0055】【表3】に種類bの基材樹脂が「ハイトレル4047」により形成されること、及び、段落【0047】にハイトレルがポリエステル系熱可塑性エラストマーであることが記載されていることから、実施例3における中間層の基材樹脂が熱可塑性エラストマーよりなる熱可塑性樹脂から形成されることが把握できる。
(カ)摘記(ウ)の段落【0057】【表5】に示された実施例3は、カバーとして種類hの基材樹脂を使用するものであること、段落【0055】【表3】に種類hの基材樹脂が「ハイミラン1557」と「ハイミラン1601」より構成されること、段落【0047】に「ハイミラン1557」と「ハイミラン1601」とがいずれもアイオノマー樹脂であること、及び、段落【0028】にカバーとして使用されるアイオノマー樹脂が熱可塑性樹脂であることが記載されていることから、実施例3におけるカバーの基材樹脂がアイオノマー樹脂を主材として含有する熱可塑性樹脂から形成されることが把握できる。
(キ)以上(ア)?(カ)より、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「ソリッドコアと該ソリッドコア上に形成された中間層と該中間層を被覆するカバーとから成り、かつ該カバーの表面に多数のディンプルを形成したスリーピースソリッドゴルフボールにおいて、
ソリッドコアが、表面のJIS-C硬度が中心のJIS-C硬度よりも硬く、JIS-C硬度による表面硬度が75でJIS-C硬度による中心硬度が60であり、
該中間層の基材樹脂が熱可塑性エラストマーを主材とする熱可塑性樹脂から形成され、かつ該中間層がショアD硬度による硬度40を有し、
該カバーの基材樹脂がアイオノマー樹脂を主材として含有する熱可塑性樹脂から形成され、該カバーがショアD硬度による硬度62を有する、
スリーピースソリッドゴルフボール。」(以下「引用発明」という。)

ウ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「ソリッドコア」、「中間層」、「カバー」はそれぞれ本件補正発明の「センター(1)」、「中間層(2)」、「カバー(3)」に相当する。
(イ)引用発明の「センター(1)[ソリッドコア]」は、「表面のJIS-C硬度が中心のJIS-C硬度よりも硬く、JIS-C硬度による表面硬度が75でJIS-C硬度による中心硬度が60」であるものである。ここで、JIS-C硬度による硬度75はショアD硬度による硬度にして約45である(特開平11-151320号公報段落【0044】【表3】の比較例1に係る「外層コア」欄等参照)ことは、当業者にとって自明の事項であることから、引用発明の「センター(1)[ソリッドコア]」は「表面のJIS-C硬度が中心のJIS-C硬度よりも硬く、ショアD硬度による表面硬度が約45でJIS-C硬度による中心硬度が60」であると認められる。
したがって、本件補正発明の「ショアD硬度による表面硬度(H_(S))と中心硬度(H_(C))との差(H_(S)-H_(C))10?40を有し、かつ該表面硬度(H_(S))36?50」である「センター(1)」とは、「表面硬度(H_(S))と中心硬度(H_(C))との差(H_(S)-H_(C))が所定の正の値」である点で一致するとともに、その表面硬度がショアD硬度で「36?50」の範囲に包含される点で一致する。
(ウ)引用発明の「中間層」は「基材樹脂が熱可塑性エラストマーを主材とする熱可塑性樹脂から形成され、かつ該中間層がショアD硬度による硬度40を有」するものであるから、本件補正発明の「基材樹脂が熱可塑性エラストマー/アイオノマー樹脂の重量比20/80?70/30を有する熱可塑性樹脂から形成され、かつ該中間層がショアD硬度による硬度(H_(M))36?50を有」する「中間層(2)」とは、「基材樹脂が熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性樹脂から形成され」る点で一致するとともに、「ショアD硬度による硬度が(H_(M))36?50を有」するものに包含される点で一致する。
(エ)引用発明の「カバーの基材樹脂がアイオノマー樹脂を主材として含有する熱可塑性樹脂から形成され、該カバーがショアD硬度による硬度62を有する」構成は、本件補正発明の「カバー(3)の基材樹脂がアイオノマー樹脂を主材として含有する熱可塑性樹脂から形成され、該カバーがショアD硬度による硬度(H_(L))58?69を有」する構成に包含される点で一致する。
(オ)引用発明の「カバー」と「中間層」のショアD硬度による硬度はそれぞれ「62」と「40」であるから、引用発明のカバー硬度と中間層硬度の差は「22」である。よって、引用発明のカバーと中間層は、本件補正発明の「該カバー硬度(H_(L))と該中間層硬度(H_(M))との差(H_(L)-H_(M))が10?28」であるものに包含される点で一致する。
(カ)してみると、本件補正発明と引用発明とは、
「センター(1)と該センター上に形成された中間層(2)と該中間層を被覆するカバー(3)とから成り、かつ該カバーの表面に多数のディンプルを形成したスリーピースソリッドゴルフボールにおいて、
該センター(1)が、ショアD硬度による表面硬度(H_(S))と中心硬度(H_(C))との差(H_(S)-H_(C))が所定の正の値であり、かつ該表面硬度(H_(S))36?50を有し、
該中間層(2)の基材樹脂が熱可塑性エラストマーを含有する熱可塑性樹脂から形成され、かつ該中間層がショアD硬度による硬度(H_(M))36?50を有し、
該カバー(3)の基材樹脂がアイオノマー樹脂を主材として含有する熱可塑性樹脂から形成され、該カバーがショアD硬度による硬度(H_(L))58?69を有し、
該カバー硬度(H_(L))と該中間層硬度(H_(M))との差(H_(L)-H_(M))が10?28であり、かつ該カバー硬度(H_(L))と該中間層硬度(H_(M))との差(H_(L)-H_(M))が10?28である、
表面にディンプルを有するスリーピースソリッドゴルフボール。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:
本件補正発明は、スリーピースソリッドゴルフボールのセンター(1)の硬度に関して「ショアD硬度によるセンターの表面硬度(H_(S))と中心硬度(H_(C))との差(H_(S)-H_(C))10?40を有し、」と特定されているのに対し、引用発明は、「表面のJIS-C硬度が中心のJIS-C硬度よりも硬く」構成されるものの、具体的にショアD硬度による硬度でどの程度異なるものであるのか明示がなく、上記のように特定されていない点。
相違点2:
本件補正発明では、中間層の基材樹脂に関し、「中間層(2)の基材樹脂が熱可塑性エラストマー/アイオノマー樹脂の重量比20/80?70/30を有する熱可塑性樹脂から形成され、」と特定されているのに対し、引用発明では、そのようには特定されていない点。
相違点3:
本件補正発明では、ディンプル特性に関し、「該ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、該ディンプルのボール表面積占有率をYで表したとき、XとYとが以下の式(1):
3882Y+1030≦X≦3882Y+1879 (1)
で表される関係を満足し、かつYが0.780?0.853である」と特定されているのに対し、引用発明のディンプルは、そのようには特定されていない点。

エ 判断
(ア)相違点1について
引用発明において、センター(1)の「表面のJIS-C硬度が中心のJIS-C硬度よりも硬く」構成する技術的意義は、引用例に記載(上記イ(イ)段落【0018】参照。)されているように、センター(1)の硬度を適切に分布させることによって、スピン量が多くなりすぎることによる飛距離の低下を防ぐとともに、耐久性の劣化も防ぐものであると認められる。
また、引用発明は、良好なフィーリング(打球感)を得ることをその課題としているものであるから、センター(1)の「表面のJIS-C硬度が中心のJIS-C硬度よりも硬く」構成する際にも、当然フィーリング(打球感)に関しても考慮して、その値が設計されるべきものであることは、当業者にとって自明の事項である。
ここで、ゴルフボールという技術分野において、飛距離の低下を防ぐこと、耐久性の劣化を防ぐこと、及び、良好なフィーリング(打球感)を得ることは、いずれも当業者にとって、ごく一般的な課題として認識されているものであり、かつ、ゴルフボールの硬度をJIS-C硬度で表現すること及びショアD硬度で表現することは、ともにごく一般的になされているものである。
してみると、引用発明におけるセンター(1)の「表面のJIS-C硬度が中心のJIS-C硬度よりも硬く」構成する技術的意義を踏まえた上で、好適なスピン量を得て飛距離の低下を防ぐとともに耐久性の劣化を防ぎ、かつ、良好なフィーリング(打球感)が得られるセンター(1)を構成しようとする場合において、その表面硬度と中心硬度の差を実験的に適宜好適な範囲に調節するとともに、その硬度差の値を、JIS-C硬度を用いて表現することも、ショアD硬度を用いて表現することも、ともに当業者が適宜選択できた事項であると認められる。
よって、引用発明に基づいて、ショアD硬度によるセンターの表面硬度を中心硬度よりも硬く構成する際に、その表面硬度と中心硬度の差を実験的に適宜好適な範囲に調節し、もって相違点1の構成とすることは、当業者が適宜なし得た設計事項である。
なお、本件補正発明は、センター(1)の「ショアD硬度によるセンターの表面硬度(H_(S))と中心硬度(H_(C))との差(H_(S)-H_(C))」について具体的な数値範囲を規定することにより、耐久性の低下及び打球感の悪化を防ぐものである(段落【0021】参照。)と認められるものの、どうして本件補正発明の表面硬度と中心硬度との差が上記数値範囲にある場合において耐久性と打球感が好適なものとなるかについては、因果関係やメカニズム等によりその技術的意義を開示しているものではなく、単に発明の詳細な説明に示される具体例である実施例及び比較例から好適な数値範囲として上記「10?40」という数値範囲を選択したものであると認められる。よって、上記「10?40」という数値範囲についての臨界的意義は認められるものではない。
したがって、「ショアD硬度によるセンターの表面硬度(H_(S))と中心硬度(H_(C))との差(H_(S)-H_(C))10?40」という数値範囲について、その臨界的な意義が認められないものである以上、引用発明において、飛距離の低下を防ぐとともに耐久性の劣化を防ぎ、かつ、良好なフィーリング(打球感)が得られるように、センター(1)の中心硬度と表面硬度との間の適正な硬度差を、当業者が適宜設計することにより、もって上記相違点1とすることは、当業者ならば適宜なし得た事項と判断せざるを得ない。
上記のとおりであるから、上記相違点1は、引用発明に基づいて、当業者が適宜設計することができた事項に過ぎないものである。

(イ)相違点2について
センター(1)と該センター上に形成された中間層(2)と該中間層を被覆するカバー(3)とから成るスリーピースソリッドゴルフボールにおいて、ショアD硬度が36?50程度である中間層を用いるゴルフボールであって、反発性の向上と製造の際の作業性の向上を実現するために、中間層の基材樹脂として、熱可塑性エラストマー/アイオノマー樹脂の重量比20/80?70/30を有する熱可塑性樹脂を使用する技術は、例えば、特開平6-14228号公報の実施例5及び特開2000-189541号公報の実施例4?5に記載の如く、本願の優先日前に周知である(以下「周知技術1」という。)。
したがって、引用発明の中間層に替えて、より反発性及び製造の際の作業性を向上させるために、周知技術1の中間層を採用し、もって上記相違点2とすることは、当業者なら容易に想到することができたものである。

(ウ)相違点3について
表面に多数のディンプルを形成したゴルフボールであって、
該ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、該ディンプルのボール表面積占有率をYで表したとき、XとYとが以下の式(1):
3882Y+1030≦X≦3882Y+1879 (1)
で表される関係を満足し、かつYが0.780?0.853であるゴルフボールは、例えば、特開平9-75477号公報の実施例3及び特開平3-80876号公報の第1実施例ないし第3実施例に記載の如く、本願の優先日前に周知である(以下「周知技術2」という。)。
したがって、引用発明のディンプルとして、周知技術2の「ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、該ディンプルのボール表面積占有率をYで表したとき、XとYとが以下の式(1):
3882Y+1030≦X≦3882Y+1879 (1)
で表される関係を満足し、かつYが0.780?0.853である」ディンプルを採用し、もって相違点3とすることは、当業者なら容易に想到することができたものである。

(エ)効果について
ゴルフという競技がプレイヤーによってヘッドスピードが大きく異なるものであること、及び、ゴルフボールという技術分野においてはこれらの種々のレベルのプレイヤーに対応できるゴルフボールを製造する必要があることは、当業者ならば当然認識していた技術常識であることを踏まえれば、本件補正発明の奏する効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2がそれぞれ奏する効果、技術常識から、当業者が予測できた程度のものである。

(エ)まとめ
したがって、本件補正発明は、引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2、技術常識に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

3 補正却下の決定のまとめ
上記2(1)のとおりであるから、本件補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法36条第6項第1号に規定された要件を満たしていないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
また、上記2(2)のとおりであるから、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正後の特許請求の範囲の記載から把握される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、旧特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。
よって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件審判請求について
1 特許請求の範囲
本件補正は上記のとおり却下されたので、本件特許出願の特許請求の範囲の記載は、平成18年1月27日付け手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲(上記「第2[理由]1(1)」で、本件補正前の特許請求の範囲として示したもの)に記載されたとおりのものである。

2 特許法第36条第6項第1号違反及び特許法第29条第2項違反について
(1)特許法第36条第6項第1号違反
本願の特許請求の範囲の請求項1には
「該ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、該ディンプルのボール表面積占有率をYで表したとき、XとYとが以下の式(1):
X≦1930+3882Y (1)
で表される関係を満足し、かつYが0.780?0.853である」
と記載されている。
しかしながら、上記「第2[理由]2(1)ウ」に示したように、本願の発明の詳細な説明には、上記XとYの関係式及びYの数値範囲に関して、因果関係・メカニズム等によりその技術的意義を示す記載はなく、かつ、本願の発明の詳細な説明に記載された各具体例(実施例及び比較例)に関する記載からみても、上記「第2[理由]2(1)エ」に示したように、上記XとYの関係式及びYの数値範囲が、当業者が自明に把握できたものであるとは認められない。
よって、本願の特許請求の範囲の請求項1及びその従属請求項(請求項2,3)の記載は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許法第36条第6号第1項に規定された要件(サポート要件)を満たさない。

(2)特許法第29条第2項違反
ア 本願発明
本願の特許請求の範囲の記載は、上記(1)に示したように、本願の発明の詳細な説明に記載されたものではないが、特許請求の範囲の記載から発明の構成を把握することができるので、特許請求の範囲に記載された事項から把握される発明が本願の発明の詳細な説明の記載から理解できるものと善解し、以下では、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)について進歩性を検討する。
本願発明は、上記「第2[理由]1(1)」で本件補正前の特許請求の範囲の請求項1として示した、平成18年1月27日付け手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

イ 引用刊行物
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は上記「第2[理由]3(2)イ」に記載したとおりである。

ウ 対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本件補正発明において、
「該ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、該ディンプルのボール表面積占有率をYで表したとき、XとYとが以下の式(1):
3882Y+1030≦X≦3882Y+1879 (1)
で表される関係を満足し、」
とあったものを、
「該ディンプルの輪郭長さの総合計をX(mm)で表し、該ディンプルのボール表面積占有率をYで表したとき、XとYとが以下の式(1):
X≦1930+3882Y (1)
で表される関係を満足し、」
として、その数値範囲を拡張したものに相当する。
そうすると、本願発明のXとYに関する数値範囲をさらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]3(2)エ」に記載したとおり、引用例に記載された発明、周知技術1および周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2、技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 小括
上記のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

3 本件審判請求についてのまとめ
上記2のとおり、本願明細書の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしておらず、特許を受けることができないものである。
また、本願発明は、引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2、技術常識に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-27 
結審通知日 2009-12-01 
審決日 2009-12-14 
出願番号 特願2002-235769(P2002-235769)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 537- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小齊 信之  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 上田 正樹
菅野 芳男
発明の名称 スリーピースソリッドゴルフボール  
代理人 青山 葆  
代理人 山本 宗雄  

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