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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1211225 |
審判番号 | 不服2008-25457 |
総通号数 | 123 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-02 |
確定日 | 2010-02-04 |
事件の表示 | 特願2004- 73190「非磁性一成分現像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月22日出願公開、特開2005-258330〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成16年3月15日の出願であって、平成18年6月26日付けで通知した拒絶理由に対して、同年9月4日付けで手続補正書が提出されたが、平成20年8月28日付けで拒絶査定がなされたものであって、これに対し、同年10月2日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、その後、平成21年7月9日付けで、当審の審尋に対する回答書が提出されたものである。 上記平成20年10月2日付けの手続補正は、補正前の請求項1,3,5を削除し、補正前の請求項7のうち、請求項1,3,5を引用するものを、補正後の新たな請求項1とし、補正前の請求項2,4,6,8,9を補正後の新たな請求項2?6とするものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1号によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除に該当し、適法な補正と認める。 そして、本願の請求項1に係る発明は、上記手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のものと認められる。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。) 「現像ローラにトナーを供給する供給ローラを備え、現像ローラの周面において規制ブレードにより薄層化されたトナーを、現像ローラに当接された感光体表面に供給して静電潜像をトナー像に顕像化する非磁性一成分現像装置において、 現像ローラと供給ローラとが接触し、現像ローラと供給ローラとの接触部分では現像ローラの回転方向と供給ローラの回転方向とが逆であり、 現像ローラはスプリング硬さHs(A)が45?65°である弾性体からなり、 供給ローラは連単泡性ゴム材の発泡率が0.75?0.85の発泡体からなりかつ供給ローラの単位面積当りのセル数が400個/cm^(2)以上であり、 現像ローラと供給ローラとのニップ幅が2.0?4.0mmであり、 トナーは少なくとも結着樹脂および着色剤を含有するトナー粒子と、外添剤として平均一次粒子径250?600nmの無機微粒子と平均一次粒子径20nm以下の無機微粒子とを含むことを特徴とする非磁性一成分現像装置。」 2.引用刊行物に記載された発明 (1)刊行物1 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2003-255691号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 なお、下線は当審で付した。 (1a)「【0018】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の実施形態に係る非磁性一成分現像装置を組み込まれた画像形成装置の要部の構成を示す図である。本発明の非磁性一成分現像装置は、図1に示すように、非磁性の一成分現像剤となる非磁性一成分トナーを表面に担持して搬送する現像剤担持体である現像ローラ2と、その現像ローラ2に接触して非磁性一成分トナーを供給する現像剤供給部材である供給ローラ3と、現像ローラ2表面上の非磁性一成分トナーの層厚を規制する層厚規制部材であるドクター4とを備え、供給ローラ3が、単泡性と連泡性を有するゴム材製の発泡体からなる。」 【0019】本発明の非磁性一成分現像装置は、供給ローラ3の発泡体の硬度がアスカーF硬度70?85°の範囲内である。 【0020】本発明の非磁性一成分現像装置は、現像ローラ2との当接部における供給ローラ3の食込量が0.5?1.0mmの範囲内である。 【0021】本発明の非磁性一成分現像装置は、供給ローラ3の発泡セル数が6個?18個/mm^(2)の範囲内である。 【0022】本発明の非磁性一成分現像装置は、供給ローラ3の連泡率が20?80%の範囲内である。 【0023】画像形成装置の内部には、図1に示すように、矢印方向に回転自在に支持した感光体ドラム1の周面に対向する非磁性一成分現像装置が設けられている。 【0024】なお、感光体ドラム1の周面は、非磁性一成分現像装置に対向する前に、図示しない帯電器及び光学系装置に対向している。 【0025】感光体ドラム1の周面は、帯電器によって単一極性の電荷を均一に付与された後、光学系装置から画像光の照射を受け、静電潜像が形成されている。 【0026】非磁性一成分現像装置は、図1に示すように、現像ローラ2、ドクター4、供給ローラ3及び攪拌ローラ5を備えており、現像容器6の内部に非磁性一成分トナーが収納されている。 【0027】また、非磁性一成分現像装置は、現像ローラ2に現像バイアス用電圧を印加する現像バイアス用電源を有し、供給ローラ3にバイアス電圧を印加するトナー供給バイアス用電源を有し、ドクター4にバイアス電圧を印加するドクターバイアス用電源を有している。 【0028】非磁性一成分現像装置において、現像ローラ2には、図1に示すように、供給ローラ3が圧接触されており、該供給ローラ3の回転方向としては現像ローラ2との対向部で現像ローラ2の回転方向と逆方向になるように設定している。したがって、現像ローラ2と供給ローラ3は対向部で摺接している。 【0029】現像ローラ2は、カーボンブラックなどの導電化剤が添加され、体積抵抗率約10^(5)Ωcm、JIS-A硬度40?60°、表面粗さRz=3?6μm(JISB-0601に準ずる)の導電性ウレタンゴムからなる導電性弾性体であり、図1中、矢印方向に回転しており、ステンレス性のシャフトを介して現像バイアス用電圧が印加されている。」 (1b)「【0034】供給ローラ3は、表面が柔軟性を有することが必要とされるため、発泡性弾性体で構成されている。 【0035】この発泡性弾性体の材質としては、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPDM)、発泡剤、導電剤、充填剤、軟化剤、加硫剤及び加硫促進剤を配合することにより得られる。 【0036】発泡剤としては、従来公知のものが用いられ、例えば、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、N,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AZDN)を主成分とする複合発泡剤等のアゾ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド(BSH)、トルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、P-P'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)等のスルホニルヒドラジド化合物をはじめとする有機発泡剤、または、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウムなどの無機発泡剤等がある。 【0037】これら発泡剤は、単独で若しくは併せて用いられるが、好適にはN,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が好ましい。【0038】配合量は、加硫装置の加硫条件により発泡倍率0.1?0.8、好適には発泡倍率0.2?0.6となるように決めることが好ましい。 【0039】なお、ここで発泡倍率とは、加硫発泡させたゴムの密度を未加硫ゴムの密度で割った値とする。」 (1c)「【0068】トナーは、上述した結着樹脂及び着色剤等の添加剤を乾式ブレンダ、スーパーミキサ又はボールミル等によって均一に予備混合して得られた混合物を、例えば、ハンドミキサ、ロール、又は、一軸若しくは二軸の押出混練機等の混練装置を用いて均一に溶融混練した後、得られた混練物を冷却して粉砕し、さらに、必要に応じて分級したものである。 【0069】得られたトナーは、上述した無機微粒子を外添剤として添加した後、篩等によって凝集物や異物を除去して製品化される。」 (1d)「【0071】現像ローラ2は、表面粗さがRzで5μm、ゴム硬度(JIS A)が50度、外径16mm、ゴム肉厚が3mm、体積抵抗率10^(5)Ωcmとした。」 (1e)上記(1a)において参照する【図1】は、次のとおりである。 (1f)現像ローラと感光体ドラムを有することから、「トナーを現像ローラに当接された感光体ドラム表面に供給して静電潜像をトナー像に顕像化していること」は明らかである。 (1g)また、上記(1a)で摘記した段落【0028】の「供給ローラ3の回転方向としては現像ローラ2との対向部で現像ローラ2の回転方向と逆方向になるように設定している」との記載と、上記(1e)で摘記した【図1】の現像ローラと回転方向が対向部で同一方向になっている点とは矛盾しているが、段落【0028】に、「現像ローラと供給ローラは対向部で摺接している」との記載から、摺接するには逆方向に回転する必要があり、【図1】の矢印の向きは記載は誤記であって、現像ローラと供給ローラは、段落【0028】の記載どおり互いに逆方向になるように回転していると認められる。 上記(1a)?(1g)の摘記事項を総合して勘案すると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が実質的に記載されている。 「現像ローラにトナーを供給する供給ローラを備え、現像ローラの表面上のトナーの層厚を規制する層規制部材であるドクターを備え、 トナーを、現像ローラに当接された感光体ドラム表面に供給して静電潜像をトナー像に顕像化する非磁性一成分現像装置において、 現像ローラと供給ローラとが圧接触し、現像ローラと供給ローラとの圧接触部分では現像ローラの回転方向と供給ローラの回転方向とが逆であり、 現像ローラはJIS-A硬度が40?60°である導電性弾性体からなり、 供給ローラは単泡性と連泡性を有するゴム材性の発泡体の発泡倍率が0.1?0.8の発泡体からなりかつ供給ローラの単位面積当りのセル数が6?18個/mm^(2)以上であり、 トナーは少なくとも結着樹脂および着色剤を含有するトナー粒子と、外添剤として無機微粒子を含む非磁性一成分現像装置。」 3.本願発明1と刊行物1記載の発明の対比 刊行物1記載の発明の「層規制部材であるドクター」、「圧接触」、「導電性弾性体」、「単泡性と連泡性を揺するゴム材性の発泡体」、「感光体ドラム」は、それぞれ本願発明1の「規制ブレード」、「接触」、「弾性体」、「連単泡性ゴム材」、「感光体」に相当する。 また、JIS-A硬度40?60°はスプリング硬さHs(A)40?60°に、単位面積当たりのセル数6?18個/mm^(2)以上は600?1800個/cm^(2)以上に各々換算できる。 そして、刊行物1記載の発明と本願発明は、スプリング硬さHs(A)が45?60°、セル数が600個/cm^(2)以上である点で共通する。 したがって、両者は、 「現像ローラにトナーを供給する供給ローラを備え、現像ローラの周面において規制ブレードにより薄層化されたトナーを、現像ローラに当接された感光体表面に供給して静電潜像をトナー像に顕像化する非磁性一成分現像装置において、 現像ローラと供給ローラとが接触し、現像ローラと供給ローラとの接触部分では現像ローラの回転方向と供給ローラの回転方向とが逆であり、 現像ローラはスプリング硬さHs(A)が45?60°である弾性体からなり、 供給ローラは連単泡性ゴム材の発泡体からなりかつ供給ローラの単位面積当りのセル数が600個/cm^(2)以上であり、 トナーは少なくとも結着樹脂および着色剤を含有するトナー粒子と、外添剤として無機微粒子を含む非磁性一成分現像装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (1)相違点1 本願発明1は、現像ローラと供給ローラとのニップ幅が2.0?4.0mmであるのに対して、刊行物1記載の発明は、ニップ幅の特定がない点。 (2)相違点2 本願発明1は、外添剤として平均一次粒子径250?600nmと20nm以下の無機微粒子を含むのに対して、刊行物1記載の発明は、無機微粒子を含むものの、その粒子径が不明な点。 (3)相違点3 本願発明1は、連単泡性ゴム材の発泡率が0.75?0.85であるのに対して、刊行物1記載の発明は、発泡倍率が0.1?0.8である点。 4.判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 刊行物1には、供給ローラの食込量が0.5?1.0mmで、現像ローラの外径が16mmであること、及び供給ローラが【図1】より現像ローラと同程度の外径であること、そして、供給ローラの外径、ニップ幅、食込量との間で三平方の定理が成り立つことから、ニップ幅は、平方根(16^(2)-(16-(0.5?1.0))^(2)) = 約3.97?5.56程度と推定でき、下限の3.97においては、相違点1は、実質的な相違点とはならない。 さらに、本願発明1においてニップ幅を2.0?4.0mmとした点は、発明の詳細な説明の段落【0054】に記載されているように、ニップ幅が小さいと現像ローラ上に適量を超えるトナー層が形成され、ニップ幅が大きいと駆動トルクが高くなるという、当業者なら適宜想定し得るニップ幅設定のための条件に対応するために設定した値であって、当業者なら必要に応じて適宜設定しうる程度の設計的事項に過ぎない。 (2)相違点2について 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2003-84562号公報(刊行物2)、特開平11-143118号公報(刊行物3)及び特開2003-255609号公報(刊行物4)には、それぞれ、粒子径が40nm以下と100?500nm、5?20nmと30?500nm、5?50nmと100?800nmの径の異なる無機微粒子が外添されてなるトナーが記載されている。 したがって、これら刊行物2?4記載の周知の技術的事項を本願発明1に採用して、相違点2に係る構成を有するものとすることは当業者なら容易に想到しうるものである。 (3)相違点3について 刊行物1で定義される発泡倍率は、発泡前後の密度の比により算出したものである。したがって、刊行物1記載の発明の弾性体の空隙率は、(1-0.1)?(1-0.8)、は0.2?0.9となる。 一方、本願の発明の詳細な説明で定義されている連単泡性のゴム材の発泡体の発泡率(空隙率)は、発泡体を水槽の水面下に沈め、その時に水面が上昇した高さを測定して算出するものであり、発泡体の表面に繋がる空隙の割合を発泡率(空隙率)として定義するものである。 したがって、刊行物1記載の発明と本願発明1は、本願発明1が発泡体の表面に繋がる空隙の空隙率が0.75?0.85であるのに対して、刊行物1記載の発明では、発泡体の含有する全ての空隙の空隙率が0.2?0.9である点で、実質的に相違する。 しかしながら、上記それぞれの空隙率の定義より、刊行物1記載の発明において、空隙率が0.9の場合は、表面に繋がる空隙の空隙率は、0.9より低い値になることが推定され、かつ、空隙率が高すぎると供給ローラの表面が裂けやすくなること、また、空隙率が低すぎるとローラの表面が固くなり過ぎることといった、当業者なら適宜想定し得る空隙率設定のための条件に対応するためには、本願発明1の空隙率が0.75?0.85程度の範囲とすることは当業者なら適宜設定しうる設計的事項に過ぎない。 (4)効果について そして、全体として、本願発明1によってもたらされる効果は、刊行物1記載の発明及び刊行物2?4記載の周知の技術的事項から、当業者なら予測しうる程度のことであって、格別なものではない。 5.むすび 以上のとおりであり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明および刊行物2?4記載の周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により、特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-26 |
結審通知日 | 2009-12-01 |
審決日 | 2009-12-14 |
出願番号 | 特願2004-73190(P2004-73190) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 六車 江一、藤本 義仁 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
赤木 啓二 大森 伸一 |
発明の名称 | 非磁性一成分現像装置 |
代理人 | 杉山 毅至 |
代理人 | 西教 圭一郎 |