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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1211662 |
審判番号 | 不服2007-15621 |
総通号数 | 124 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-06-04 |
確定日 | 2010-02-12 |
事件の表示 | 特願2006- 4195「集積化検証および製造適応ツール」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月25日出願公開、特開2006-134356〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は,平成13年5月25日(パリ条約による優先権主張2000年(平成12年)6月13日,米国)を国際出願日とする出願である特願2002-511227号の一部を平成18年1月11日に新たな特許出願としたものであって,平成18年7月26日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,平成19年1月29日に意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたところ,平成19年3月1日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年6月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,平成19年7月4日付けで手続補正がなされたものである。 第2 補正却下の決定 1 補正却下の決定の結論 平成19年7月4日付けの手続補正を却下する。 2 理由 (1)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,平成19年1月29日付けの手続補正による特許請求の範囲の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能格納媒体であって,該コンピュータプログラムは,一以上の電子システムに, 集積デバイスレイアウトの少なくとも一部分を表すデータを階層型データベースにインポートすることと, 該階層型データベース内の該インポートされたデータに対してレイアウト検証演算を実行することと, 該階層型データベース内の該インポートされたデータに対してモデルベースの光学的プロセス修正(OPC)演算を実行することと を行わせる,コンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項2】 前記一以上の電子システムに,レイアウト検証演算を実行することを行わせる前記コンピュータプログラムは,該一以上の電子システムに,前記インポートされたデータに対してレイアウト対回路図(LVS)演算を実行することを行わせることを包含する,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項3】 前記一以上の電子システムに,レイアウト検証演算を実行することを行わせる前記コンピュータプログラムは,該一以上の電子システムに,前記インポートされたデータに対して設計ルールチェック(DRC)演算を実行することを行わせることを包含する,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項4】 前記コンピュータプログラムは,前記一以上の電子システムに,前記インポートされたデータに対して位相シフトマスク(PSM)演算を実行することをさらに行わせる,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項5】 前記コンピュータプログラムは,前記一以上の電子システムに,前記インポートされたデータに対して光学的ルールチェック(ORC)演算を実行することをさらに行わせる,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項6】 前記コンピュータプログラムは,前記一以上の電子システムに,シミュレーションされたシリコンエッジに対して光学的ルールチェック(ORC)演算を実行することをさらに行わせる,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項7】 前記一以上の電子システムに,集積デバイスレイアウトの少なくとも一部分を表すデータを前記階層型データベースにインポートすることを行わせる前記コンピュータプログラムは,該一以上の電子システムに,複数の冗長パターンについて元の集積デバイス設計を解析することと,該複数の冗長パターンのうちの一以上を該冗長パターンを含むセルに置き換えることとを行わせることを包含する,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項8】 前記一以上の電子システムに,集積デバイスレイアウトの少なくとも一部分を表すデータを前記階層型データベースにインポートすることを行わせる前記コンピュータプログラムは,該一以上の電子システムに,単一のレイヤを含む該レイアウトの一以上の部分を,複数のレベルの階層型レイアウトを含む該レイアウトの一以上の部分に変換することを行わせることを包含する,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項9】 前記レイアウト検証演算および前記光学的プロセス修正(OPC)演算は,前記集積デバイスレイアウトの一部分を表すエッジのセットに対して実行される,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項10】 前記集積デバイス設計は,集積回路(IC)レイアウトを含む,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項11】 コンピュータ上で実行される集積検証および製造適応プログラムであって, リソグラフィプロセスを介してデバイスを作成するための共有データが格納された階層型データベースと, 該階層型データベース内の該共有データを解析して,該デバイスの製造適応性を確認する複数の集積ソフトウェアプログラムであって,該階層型データベース内の該共有データに対してモデルベースの光学的プロセス修正を実行するモデルベースの光学的プロセス修正(OPC)プログラムを含む複数の集積ソフトウェアプログラムと, 該リソグラフィプロセスで用いられるべき一以上のリソグラフィマスクを作成するために,該共有データをマスクライタにエクスポートされるマスク書き込み言語に変換する集積プログラムと を含む,集積検証および製造適応プログラム。 【請求項12】 前記マスク書き込み言語は,データをラスタ走査マスク書き込みツールへ提供する,請求項11に記載の集積検証および製造適応プログラム。 【請求項13】 前記マスク書き込み言語は,データをベクトル走査マスク書き込みツールへ提供する,請求項11に記載の集積検証および製造適応プログラム。 【請求項14】 前記マスク書き込み言語は,データをマスク書き込み要素の並列アレイへ提供する,請求項11に記載の集積検証および製造適応プログラム。 【請求項15】 前記並列マスク書き込み要素は,微視的ミラーのアレイである,請求項13に記載の集積検証および製造適応プログラム。 【請求項16】 前記並列マスク書き込み要素は,独立変調レーザビームである,請求項13に記載の集積検証および製造適応プログラム。 【請求項17】 前記並列マスク書き込み要素は,走査プローブ顕微鏡素子のアレイである,請求項13に記載の集積検証および製造適応プログラム。 【請求項18】 前記マスク書き込み言語は,前記データベースの前記階層構造の一部を保持する,請求項11に記載の集積検証および製造適応プログラム。 【請求項19】 前記マスク書き込み言語は,階層を有さず,かつ,平坦なデータを生成する,請求項11に記載の集積検証および製造適応プログラム。」 (2) 本件補正後の特許請求の範囲 本件補正により,特許請求の範囲の記載は,次のとおり補正された。 「 【請求項1】 コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能格納媒体であって,該コンピュータプログラムは,一以上の電子システムに, 集積デバイスレイアウトに含まれている単一の層の少なくとも一部分を表すデータを複数の層を含む階層型データベースにインポートすることであって,該データをインポートすることは,該複数の層のうちの少なくとも二つの層のそれぞれにおいて,該インポートされたデータと同等のデータを作成することを包含する,ことと, 該階層型データベースに含まれている該少なくとも二つの層のそれぞれにおいて作成された該データに対してレイアウト検証演算を実行することと, 該階層型データベースに含まれている該少なくとも二つの層のそれぞれにおいて作成された該データに対してモデルベースの光学的プロセス修正(OPC)演算を実行することと を行わせる,コンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項2】 前記一以上の電子システムに,レイアウト検証演算を実行することを行わせる前記コンピュータプログラムは,該一以上の電子システムに,前記インポートされたデータに対してレイアウト対回路図(LVS)演算を実行することを行わせることを包含する,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項3】 前記一以上の電子システムに,レイアウト検証演算を実行することを行わせる前記コンピュータプログラムは,該一以上の電子システムに,前記インポートされたデータに対して設計ルールチェック(DRC)演算を実行することを行わせることを包含する,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項4】 前記コンピュータプログラムは,前記一以上の電子システムに,前記インポートされたデータに対して位相シフトマスク(PSM)演算を実行することをさらに行わせる,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項5】 前記コンピュータプログラムは,前記一以上の電子システムに,前記インポートされたデータに対して光学的ルールチェック(ORC)演算を実行することをさらに行わせる,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項6】 前記コンピュータプログラムは,前記一以上の電子システムに,シミュレーションされたシリコンエッジに対して光学的ルールチェック(ORC)演算を実行することをさらに行わせる,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項7】 前記一以上の電子システムに,集積デバイスレイアウトの少なくとも一部分を表すデータを前記階層型データベースにインポートすることを行わせる前記コンピュータプログラムは,該一以上の電子システムに,複数の冗長パターンについて元の集積デバイス設計を解析することと,該複数の冗長パターンのうちの一以上を該冗長パターンを含むセルに置き換えることとを行わせることを包含する,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項8】 前記レイアウト検証演算および前記光学的プロセス修正(OPC)演算は,前記集積デバイスレイアウトの一部分を表すエッジのセットに対して実行される,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。 【請求項9】 前記集積デバイス設計は,集積回路(IC)レイアウトを含む,請求項1に記載のコンピュータ読み取り可能格納媒体。」 (3)補正の適否についての判断 本件補正が,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年法改正前特許法」という。)第17条の2第4項各号に規定される事項を満たすものであるか,検討する。 (3-1)第1号(請求項の削除)について 本件補正後の請求項1に係る発明は,本件補正前のいずれの請求項に係る発明とも同一ではないから,少なくとも請求項1に関する本件補正は,削除を目的とした補正を行った結果,請求項の番号が変更されたものでないことは明らかである。 なお,審判請求人は平成19年7月4日付け手続補正書において,【請求の理由】に,本件補正後の請求項1に関する補正が,本件補正前の請求項8に基づく旨主張している。そこで,請求項1に関する本件補正が,本件補正前の請求項1の削除を目的とし,補正前の請求項1を引用する請求項8を繰り上げて請求項1としたものであるか,詳細に検討しておく。 本件補正後の請求項1に係る発明は「少なくとも二つの層のそれぞれにおいて,該インポートされたデータと同等のデータを作成する」点を,発明を特定するために必要な事項(以下,「発明特定事項」という。)とするものであるのに対し,本件補正前の請求項8には上記事項についての記載はなく,これを発明特定事項とするものではないから,補正前の請求項1を削除し,補正前の請求項8を新たな補正後の請求項1としたものではない。 よって,本件補正は,平成18年法改正前特許法第17条の2第4項第1号(請求項の削除)に規定される事項を目的とするものでないことは明らかである。 (3-2)第2号(特許請求の範囲の減縮)について 請求項1に関する本件補正は,本件補正前の請求項1の「集積デバイスレイアウトの少なくとも一部分を表すデータを階層型データベースにインポートすること」を「集積デバイスレイアウトに含まれている単一の層の少なくとも一部分を表すデータを複数の層を含む階層型データベースにインポートすることであって,該データをインポートすることは,該複数の層のうちの少なくとも二つの層のそれぞれにおいて,該インポートされたデータと同等のデータを作成することを包含する,こと」に補正するとともに,「該階層型データベース内の該インポートされたデータに対してレイアウト検証演算を実行すること」を「該階層型データベースに含まれている該少なくとも二つの層のそれぞれにおいて作成された該データに対してレイアウト検証演算を実行すること」に,「該階層型データベース内の該インポートされたデータに対してモデルベースの光学的プロセス修正(OPC)演算を実行すること」を「該階層型データベースに含まれている該少なくとも二つの層のそれぞれにおいて作成された該データに対してモデルベースの光学的プロセス修正(OPC)演算を実行すること」に補正するものである。 本件補正のうち「複数の層のうちの少なくとも二つの層のそれぞれにおいて,該インポートされたデータと同等のデータを作成する」ことは,レイアウトを表すデータを「複数の層を含む階層型データベースにインポート」した後に,該「階層型データベース」に含まれる「複数の層のうちの少なくとも二つの層のそれぞれにおいて,該インポートされたデータと同等のデータを作成する」ことであるから,「インポート」処理とは概念上異なる“データの作成処理”である。よって,上記補正事項は,本件補正前の請求項1の発明特定事項である「インポートすること」を限定したものではない。 さらに,上記補正事項を追加したことにより,請求項1の発明特定事項である「レイアウト検証演算」及び「光学的プロセス修正(OPC)演算」についても,その対象を「階層型データベース内の該インポートされたデータ」から,それを元に「作成されたデータ」に変更したものであるから,外形的に同じ演算であっても,それが表す演算内容は異なるものとなっている。よって,「レイアウト検証演算」及び「光学的プロセス修正(OPC)演算」についても,本件補正前の請求項1に係る発明特定事項である各演算を限定したものではない。 また,請求項1に関する上記本件補正は,別の発明特定事項を有する本件補正前の請求項2ないし19のいずれに係る発明を限定したものともいえないことは明らかである。 よって,本件補正は,本件補正前の請求項1ないし19のいずれかに係る発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから,平成18年法改正前特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に規定される事項を目的としたものとはいえない。 (3-3)第3号(誤記の訂正),第4号(明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。))について 補正前の請求項の記載において誤記は存在せず,また拒絶査定において記載不備が指摘されたものでもないから,本件補正は,平成18年法改正前特許法第17条の2第4項第3号(誤記の訂正),平成18年法改正前特許法第17条の2第3項第4号(明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。))に規定される事項を目的としたものでないことは明らかである。 (4)本件補正についてのむすび 以上のとおり,本件補正は,平成18年法改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 (5)付記 なお,仮に,本件補正が,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合について,本件補正後の特許請求の範囲の請求項に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか),以下に検討しておく。 本件補正後の請求項1に記載された発明において「少なくとも二つの層のそれぞれにおいて,該インポートされたデータと同等のデータ」とは,どのようなデータを表しているのか,当該記載自体及び請求項の他の記載からは明確でなく,発明の詳細な説明を参酌しても「同等のデータ」なる記載は存在せず,他にも明確にこれを表す記載を見いだすことはできないから,特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 よって,特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,平成18年法改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成19年7月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成19年1月29日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「 【請求項1】 コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能格納媒体であって,該コンピュータプログラムは,一以上の電子システムに, 集積デバイスレイアウトの少なくとも一部分を表すデータを階層型データベースにインポートすることと, 該階層型データベース内の該インポートされたデータに対してレイアウト検証演算を実行することと, 該階層型データベース内の該インポートされたデータに対してモデルベースの光学的プロセス修正(OPC)演算を実行することと を行わせる,コンピュータ読み取り可能格納媒体。」 2 引用例 原査定の拒絶の理由として引用された本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報である“news and views 1999年3月号 検証可能なOPC手法”,[online],1999年3月,メンター・グラフィックス・ジャパン株式会社,インターネット<URL:http://www.mentorg.co.jp/N-V/99_3/opc.html>(以下,「引用例1」という。)には,次の事項が図面と共に開示されている。 (なお,上記インターネットのURLにおける「www.mentorg.co.jp」は,インターネット<URL:http://www.mentorg.co.jp/N-V/00_02/info.html>の情報から,2000年2月までは「www.mentor.com/japan」であったものと認められる。以下,同様。) ア 「MGのディープ・サブミクロン対応検証ツールCalibreとOPC Technology社の光学ルールチェック技術を統合したLSI検証製品の開発を進めていきます。」 イ 「CalibreのSVRF 言語を用いたスクリプトで,単純なOPC補正は,基本パターンの補正用のルールセットを作成することで対応できます。Calibre DRC(Design Rule Checking)を用いたデータ処理は,ハンマーヘッドや線幅バイアスのような基本的なOPCパターンを生成し,レイアウトに付加します(図2)。 このRule-Basedアプローチは,0.25μm及び0.18μmプロセスで発生する効果の大部分まで,相応しいアプローチと考えられています。しかしながら,それに続く次世代の微細なプロセスにおいては,要求されるルールの数が指数関数的に増加し複雑化するため,Model-Basedアプローチがより相応しくなります。」 ウ 「MGのフィジカル・ベリフィケーション・ツール CalibreはDRC及びLVSを高速に行うばかりではなく,新しいCalibre ORCを用いてICが正しく製造できるかどうかのチェックを可能にしました。 DRC/LVS/ORC検証に加えて,Calibre製品ファミリはRule-BasedとModel-Basedの手法を用いて,近接ひずみの補正を行います。」 エ 図4は,ORC,OPCを用いたフィジカル・ベリフィケーションとマスク製造のフローであって,レイアウト(layout)に対して,LVS検証やOPCを行うことが記載されている。 前記アないしエの記載及び図面によると,引用例1には, レイアウトに対して,LVSを行うこと, レイアウトに対して,OPCを行うこと を含み, 前記OPCは,Model-Basedの手法を用いたものである 検証ツールCalibre という発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 同じく,原査定の拒絶の理由として引用された本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報である“news and views 1999年3月号 DSM Verification & Analysis”,[online],1999年3月,メンター・グラフィックス・ジャパン株式会社,インターネット<URL:http://www.mentorg.co.jp/N-V/99_3/dsm.html>(以下,「引用例2」という。)には,次の事項が図面と共に開示されている。 オ 「■階層的フィジカル・ベリフィケーション Calibre メンター・グラフィックス(MG)では,問題解決への取り組みの一つとして,フィジカル・ベリフィケーションにおける階層化処理技術を提案しています。階層化処理は,検証の精度を損なうことなく,取り扱うデータ量を削減することができるため,早くから有望視されてきた技術です。階層化技術が有望視されている背景には今後の設計スタイルがあります。つまり,回路が大規模化するにつれ,設計は繰り返し構造を持つことが多くなります。繰り返し的なデザインが増えれば増えるほど,階層型検証技術はTAT短縮により大きな効果を挙げることができます。 MGでは,ディープ・サブミクロン対応の階層型検証ツールCalibre DRC,LVSを業界最高性能のツールとして提供します。」 同じく,原査定の拒絶の理由として引用された本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報である“news and views 2000年4月号 フィジカル・ベリフィケーション:Calibre”,[online],2000年4月,メンター・グラフィックス・ジャパン株式会社,インターネット<URL:http://www.mentorg.co.jp/N-V/00_04/ppower.html>(以下,「引用例1」という。)には,次の事項が図面と共に開示されている。 カ 「フィジカル・ベリフィケーション:Calibre (中略) また,1千万ゲートを越える大規模デザインに対するソリューションとして,HPおよびSolarisの64ビット対応OSをサポートし,1マシン複数CPU対応のマルチスレッドCalibre DRC/LVS階層を提供します。 もちろん,Selective PromotionTM,Hie-rarchical InjectionTMという階層処理のアルゴリズムやユーザ・インタフェースとしてのデバッグ環境なども,常に進化を続けています。」 キ 「■DRCデバッグ機能 (中略) これに対しCalibre RVEでは,Calibre DRCTMの特長でもある階層検証に対応し,最小限の作業でデバッグができるよう最適化しています。」 3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「検証ツールCalibre」は,コンピュータプログラムの一種であることは明らかであるから,本願発明の「コンピュータプログラム」に相当するものといえる。また,コンピュータプログラムである以上,引用発明の「検証ツールCalibre」が,一以上の電子システム(コンピュータ)に演算を実行させるものであることも自明のことである。 引用発明の「レイアウト」は,「検証ツールCalibre」というプログラムで検証するものであり,また集積回路のレイアウトはEDAツールを用いて作成されることが本願出願当時,一般的であったことを鑑みれば,検証ツールCalibreが取り扱う「レイアウト」は当然データ化されているものといえる。よって,引用発明の「レイアウト」は,本願発明の「集積デバイスレイアウトを表すデータ」に相当するものといえる。 引用発明の「検証ツールCalibre」は検証ツールであって,レイアウトを作成するツールでないことを鑑みれば,検証対象となるレイアウトを表すデータは外部から入力するものであって,「検証ツールCalibre」がレイアウトを表すデータを入力する機能を備えていることは当然のことである。よって,引用発明と本願発明とは,集積デバイスレイアウトを表すデータを入力する機能を有する点で共通する。 引用発明の「LVS」が,当該術分野においては,レイアウト検証技術の一つである“Layout Versus Schematic”(レイアウト対回路図)を表すものであることは明らかであるから,本願発明の「レイアウト検証演算」に相当する。よって,引用発明と本願発明とは,入力されたデータに対してレイアウト検証演算を実行する機能を有する点で共通する。 引用発明の「OPC」は,Model-Basedの手法を用いたものであるから,本願発明の「モデルベースの光学的プロセス修正(OPC)演算」に相当する。よって,引用発明と本願発明とは,入力されたデータに対してモデルベースの光学的プロセス修正(OPC)演算を実行する機能を有する点で共通している。 以上を踏まえると,両者の一致点,相違点は以下のとおりである。 【一致点】 コンピュータプログラムは,一以上の電子システムに, 集積デバイスレイアウトを表すデータを入力することと, 入力されたデータに対してレイアウト検証演算を実行することと, 入力されたデータに対してモデルベースの光学的プロセス修正(OPC)演算を実行することと を行わせるコンピュータプログラム。 【相違点】 a 本願発明が「コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能媒体」に関する発明であるのに対し,引用発明はコンピュータプログラムそれ自体である点。 b 入力される集積デバイスレイアウトを表すデータが,本願発明は「少なくとも一部分」であるのに対し,引用発明は特定されていない点。 c 本願発明が,レイアウトを表すデータを「階層型データベース」に入力するとともに,「階層型データベース」内のデータに対して演算を実行するのに対し,引用発明では演算するまで,レイアウトをどのように取り扱うものであるのか,特定されていない点。 d データの入力として,本願発明は「インポート」処理であるの対し,引用発明は特定されていない点。 4 当審の判断 上記相違点aについて検討する。 引用発明のコンピュータプログラムを,コンピュータ読み取り可能媒体に記録し,記録媒体として具体化することは,当業者が容易に想到し得たことである。 上記相違点bについて検討する。 集積デバイスレイアウトを表すデータを,どの程度入力するかは,レイアウトに対してどのような検証を,どのような部分に対して行うかによって適宜決定されることにすぎず,レイアウトを会わすデータの入力を少なくとも一部分とすることに,困難な点はない。 上記相違点cについて検討する。 一般に,集積デバイスレイアウトを表すデータは膨大であり,検証するに際し,一旦,何らかのデータベースに入力し,そこから読み出して演算することは技術常識といえる。また,引用例2及び3には,検証ツールCalibreにおけるDRSやLVSを階層型検証技術で実現することが記載されており,レイアウトデータが階層化されている必要があることは当然のことである。以上のことを総合すれば,引用発明におけるLVS及びOPCを階層型検証技術で実現し,レイアウトを一旦階層化されたデータベースに入力,それを検証に用いるよう構成することに,困難な点はない。 上記相違点dについて検討する。 他のアプリケーションで作成したファイルを読み込む際に,自システムで利用できるようにデータを変換するインポート処理は,データを入力する際に,広く一般的に行われていることである。引用発明の「検証ツールCalibre」は検証ツールであって,レイアウトを作成するものではなく,集積回路のレイアウトはEDAツールを用いて作成されることが本願出願当時,一般的であったことを鑑みれば,EDAツールなどで作成されるレイアウトデータを入力する際,引用発明の「検証ツールCalibre」で利用できるように,インポート処理を行うことは,当業者が容易に想到し得たことである。 そして,これら相違点を総合的に考慮してみても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず,本願補正発明の奏する効果を検討してみても,引用発明及び引用例2及び3記載の技術から想定される範囲を越えるものではない。 5 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明及び引用例2,3に記載された技術及び技術常識に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-09-16 |
結審通知日 | 2009-09-17 |
審決日 | 2009-10-01 |
出願番号 | 特願2006-4195(P2006-4195) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 早川 学 |
特許庁審判長 |
吉村 博之 |
特許庁審判官 |
廣川 浩 千葉 輝久 |
発明の名称 | 集積化検証および製造適応ツール |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 安村 高明 |
代理人 | 山本 秀策 |