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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08C
管理番号 1211673
審判番号 不服2007-27082  
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-04 
確定日 2010-02-12 
事件の表示 特願2003- 7876「回転体トルク測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月 5日出願公開、特開2004-220392〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年1月16日の出願であって、明細書又は図面について平成15年3月19日付けで補正がなされ(以下、「補正1」という。)、平成19年8月8日付けで補正がなされ(以下、「補正2」という。)、平成19年8月31日付け(送達:同年9月4日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年同月29日付けで明細書又は図面についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、平成21年4月21日付けで審尋をしたところ、請求人より同年6月23日付け回答書の提出があった。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を補正前の
「駆動側の回転軸に取付けられる駆動側フランジ部と負荷側の回転軸に取付けられる負荷側フランジ部との間に中空体部が形成された回転本体と、前記回転本体の外周に設けられ、前記中空体部に取付けられるトルク検出部の出力により発光し光信号を出力する発光素子と、前記発光素子の光信号を受信する受光ファイバーの両端面側に設けられ、前記光信号を電気信号に変換する光信号変換部と、前記光信号変換部よりの出力に応じ前記受光ファイバーの異常を検知する異常検出部とを備えたことを特徴とする回転体トルク測定装置。」
から、補正後の
「駆動側の回転軸に取付けられる駆動側フランジ部と負荷側の回転軸に取付けられる負荷側フランジ部との間に中空体部が形成された回転本体と、前記回転本体の外周に設けられ、前記中空体部に取付けられるトルク検出部の出力により発光し光信号を出力する発光素子と、前記発光素子の光信号を側面にて受信する受光ファイバーの両端面側に設けられ、前記光信号を電気信号に変換する2つの光信号変換部と、前記2つの光信号変換部からの信号を加算し該加算結果に応じ前記受光ファイバーの異常を検知する異常検出部とを備えたことを特徴とする回転体トルク測定装置。」に補正する補正事項を含むものである。(下線は、補正箇所。)
この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である
(イ)受信する受光ファイバーについて、「側面にて」受信するとの限定を付加し、
(ロ)光信号変換部について、「2つの」との限定を付加し、
(ハ)「光信号変換部よりの出力に応じ」を、「2つの光信号変換部からの信号を加算し該加算結果に応じ」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-22566号公報(以下「引用例」という。)には、「回転体トルク計測装置およびトルク計測方法」(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(g)が図面とともに記載されている。
(a)「【発明の属する技術分野】本発明は回転体のトルクを測定するトルク計測装置に関するもので、詳しくは、歪ゲージを用いて回転体のトルク量を測定するために、回転体側と固定側での電力や測定信号の送受を非接触で行う回転体トルク計測装置とトルク計測方法に関するものである。」(段落【0001】)
(b)「【発明の実施の形態】本発明によるトルク計測装置の実施例を図面で説明する。図1(a)は本発明の断面図で以下のように構成されている。即ち、駆動側フランジ部101と従動側フランジ部102の間に所定の肉厚及び径を有する中空円筒部である起歪体部100が設けられている。駆動側フランジ部101の外方端面には、例えば、自動車の車輪により回転させられるシャーシダイナモの測定ロ?ラとダイナモメータやブレーキ機構等の負荷との間の動力伝達系中に連結される駆動側連結部材が103のネジ穴を用いて結合される。そして、従動側フランジ部102は、その外周に1対のロータリートランス111があり、その磁芯部112は開口部を持ち、該開口部の内部に電気?光変換素子113(光信号変換手段)が後述するように、少なくとも一個以上設置してある。従動側フランジ部102は駆動力伝達系の負荷部材が104のネジ穴を用いて結合されている。」(段落【0026】)
(c)「高速回転による風力、遠心力の弊害、貼着した歪ゲージが、外部からの水分、塵挨などで劣化することを回避するために、円筒状起歪体部100の開口部107には、蓋110が設けてある。」(段落【0033】)。
(d)「図3は起歪体部100の内周に貼着する歪ゲージ106の位置を示す図で、図3(a)は中空円筒を断面方向から見た図、図3(b)は中空円筒を側面から見た図である。起歪体部100の底部の頂点である最薄肉部は鼓型の形状の線となる。この鼓型の形状の底部の頂点である最薄肉部に対応する円筒部の内周の円周上に、歪ゲージ106を等間隔に貼着する。・・・。」(段落【0042】)
(e)「光?電気変換素子131は光ファイバー115の片方の端部、もしくは図5に示すように、感度を増すために両端に設けて良いことはいうまでもない。そして、後述する回転体側と固定側の回路構成を示す図6においてAGC回路625は1または2個の光?電気変換素子131の数に対応して動作するようにすることもいうまでもない。」(段落【0050】)
(f)「固定側は前記したように、実質的に、軸を中心として回転する回転体側の電気?光変換素子113の外周を取り囲んだように光ファイバー115が配置されている。従って、電気?光変換素子113の発する光信号は常に、光ファイバー115が受光し、第5図で示すような端面にある光?電気変換素子のフォトダイオード131で周波数変調された光信号を電気信号に変換する。
この受信した電気信号は振幅が小さいので、AGC回路(Automatic Gain Control Circuit)625で振幅変動を調整すると共に、振幅をロジックレベルまで、増幅する。増幅した信号は波形整形回路626を通して、周波数?電圧変換(F/V変換)器627により、周波数変化を電圧変化に変換した後に、更に不要なノイズ成分をローパスフィルタ回路628で取り除く。ローパスフィルタ回路628は例えば、公知の二次、または三次のバターワースフィルタ等を用いる。そしてローパスフィルタ回路628は出力バッファー回路629に接続され、出力端子OSにトルクの測定値が得られる。」(段落【0059】、【0060】)
(g)「そして、この電気信号を電圧?周波数変換器621で周波数変調してから光信号に変換して、従動側フランジの外周に設けたロータリートランスの開口部に設けた、トルク検出手段の出力に応じて発光する、少なくとも一個の電気?光変換素子からなる光信号変換手段113で固定側に伝送する。回転体側から伝送された光信号は、前記従動側フランジに対峙するロータリートランスの開口部に設けた、光ファイバー115の側面に入射する。光ファイバーの側面から入射した光は、ファイバーの端面に伝達される。該端面に到達した光を受光する光信号検出手段131は、光ファイバー端面に到達した光を電気信号に変換する。その後、波形整形回路626で波形整形を施してから周波数?電圧変換器627で周波数変調されている信号をアナログ電圧に復調して、ローパスフィルタ回路628、出力バッファー回路629を経てからアナログ信号としてトルクを測定する。」(段落【0062】)

・前記記載(a)、(b)、(d)、(f)、(g)及び図1、図3より、
(イ)「動力伝達系中に連結される駆動側連結部材に結合される駆動側フランジ部101と駆動力伝達系の負荷部材に結合される従動側フランジ部102との間に中空円筒部である起歪体部100が形成された回転体と、前記回転体の外周に設けられ、前記中空円筒部である起歪体部100に貼着された歪ゲージ106の出力に応じて光信号を発光する光信号変換手段113と、前記光信号変換手段113の光信号を側面から入射する光ファイバー115の端部に設けられ、前記光信号を電気信号に変換する光-電気変換素子131と、前記光-電気変換素子131からの信号をトルクの測定値に変換する回路(AGC回路625、波形整形回路626、周波数-電圧変換器627、ローパスフィルタ回路628、出力バッファー回路629)とを備えた回転体トルク計測装置。」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(e)及び図5より、
(ロ)「2つの光-電気変換素子131が光ファイバー115の両端に設けられる。」との技術事項が読み取れる。
以上の技術事項(イ)及び(ロ)を総合勘案すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。
「動力伝達系中に連結される駆動側連結部材に結合される駆動側フランジ部101と駆動力伝達系の負荷部材に結合される従動側フランジ部102との間に中空円筒部である起歪体部100が形成された回転体と、前記回転体の外周に設けられ、前記中空円筒部である起歪体部100に貼着された歪ゲージ106の出力に応じて光信号を発光する光信号変換手段113と、前記光信号変換手段113の光信号を側面から入射する光ファイバー115の両端に設けられ、前記光信号を電気信号に変換する2つの光-電気変換素子131と、前記2つの光-電気変換素子131からの信号をトルクの測定値に変換する回路(AGC回路625、波形整形回路626、周波数-電圧変換器627、ローパスフィルタ回路628、出力バッファー回路629)とを備えた回転体トルク計測装置。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ところで、本願補正発明は前記「2.(1)補正の内容」に記載したとおりのものであるところ、回転体トルク測定装置たるゆえんである、得られた信号から回転体トルクを測定するための構成が特定されていないので、本願明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載に基づきこの点を補って、本願補正発明を以下のように解することとする。
「駆動側の回転軸に取付けられる駆動側フランジ部と負荷側の回転軸に取付けられる負荷側フランジ部との間に中空体部が形成された回転本体と、前記回転本体の外周に設けられ、前記中空体部に取付けられるトルク検出部の出力により発光し光信号を出力する発光素子と、前記発光素子の光信号を側面にて受信する受光ファイバーの両端面側に設けられ、前記光信号を電気信号に変換する2つの光信号変換部と、前記2つの光信号変換部からの信号を加算し該加算結果『を回転トルク信号に変換する回路(周波数電圧変換部38、出力フィルタ39)を備えるとともに、該加算結果』に応じ前記受光ファイバーの異常を検知する異常検出部とを備えたことを特徴とする回転体トルク測定装置。」
(『』は、当審が補った、得られた信号から回転体トルクを測定するための構成である。)
(3-1)引用発明における
「駆動側フランジ部101」、「従動側フランジ部102」、「中空円筒部である起歪体部100」、「回転体」、「貼着された」、「歪ゲージ106」、「出力に応じて光信号を発光する」、「光信号変換手段113」、「光信号を側面から入射する」、「光ファイバー115」、「両端」、「光-電気変換素子131」、「トルクの測定値」、「回路(AGC回路625、波形整形回路626、周波数-電圧変換器627、ローパスフィルタ回路628、出力バッファー回路629)」及び「回転体トルク計測装置」は、
本願補正発明の
「駆動側フランジ部」、「負荷側フランジ部」、「中空体部」、「回転本体」、「取付けられる」、「トルク検出部」、「出力により発光し光信号を出力する」、「発光素子」、「発光素子の光信号を側面にて受信する」、「受光ファイバー」、「両端面側」、「光信号変換部」、「回転トルク信号」、「回路(周波数電圧変換部38、出力フィルタ39)」及び「回転体トルク測定装置」にそれぞれ相当する。
(3-2)
トルクの伝達は、一般に、回転軸の回転により行われるものであるから、引用発明における「動力伝達系」も何らかの回転軸を備えていると解するのが自然である。
よって、引用発明における「動力伝達系中に連結される駆動側連結部材に結合される」は、本願補正発明における「駆動側の回転軸に取付けられる」に相当するといえる。
同様に、引用発明における「駆動力伝達系の負荷部材に結合される」は、本願補正発明における「負荷側の回転軸に取付けられる」に相当するといえる。
(3-3)引用発明における「2つの光-電気変換素子131からの信号をトルクの測定値に変換する回路(AGC回路625、波形整形回路626、周波数-電圧変換器627、ローパスフィルタ回路628、出力バッファー回路629)」も、
本願補正発明における「2つの光信号変換部からの信号を加算し該加算結果『を回転トルク信号に変換する回路(周波数電圧変換部38、出力フィルタ39)』」も、共に、
「2つの光信号変換部からの信号『を回転トルク信号に変換する回路(周波数電圧変換部38、出力フィルタ39)』」である点で共通する。
してみると、両者は
(一致点)
「駆動側の回転軸に取付けられる駆動側フランジ部と負荷側の回転軸に取付けられる負荷側フランジ部との間に中空体部が形成された回転本体と、前記回転本体の外周に設けられ、前記中空体部に取付けられるトルク検出部の出力により発光し光信号を出力する発光素子と、前記発光素子の光信号を側面にて受信する受光ファイバーの両端面側に設けられ、前記光信号を電気信号に変換する2つの光信号変換部と、2つの光信号変換部からの信号『を回転トルク信号に変換する回路(周波数電圧変換部38、出力フィルタ39)』を備えた回転体トルク測定装置。」で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
・相違点1:2つの光信号変換部からの信号の扱いについて、
本願補正発明では、2つの信号を「加算」したものをその出力としているのに対し、引用発明では、信号を加算したものをその出力としていることについて明記されていない点。
・相違点2:
本願補正発明では、「加算結果に応じ受光ファイバーの異常を検知する異常検出部」を備えているのに対し、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

(4)判断
前記相違点について検討する。
・相違点1について
本願補正発明に係る、2つの光信号変換部からの信号を加算することの技術的意義については、明細書又は図面に記載されていないところ、前記回答書にには、「本願請求項1に記載の発明では、光ファイバーの側面で受光した光を両端で検出することによって、1つの受光素子の場合よりも出力を2倍得てこれによりノイズに影響されにくい検出をしようとしており、」(回答書(e)前置報告書に対する意見(イ))との記載があり、よって、本願補正発明で、「2つの光信号変換部からの信号を加算」したのは、出力を2倍にするためであると解される。
他方、引用発明において、光-電気変換素子を光ファイバーの両端に設けたのは感度を増すためであり、しかもAGC回路625は1または2個の光-電気変換素子131の数に対応して動作するようにすることもできる(前記「2.(2)(e)」参照のこと。)のであるから、引用発明において、受光した光の感度を増すためには得られた2つの光信号変換部の出力を加算すれば良いことは、最も単純な構成として当業者ならば明らかなことである。
したがって、引用発明において、2つの光信号変換部からの信号を加算することにより本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

・相違点2について
引用例の光ファイバーは、本願補正発明と同様に、発光素子の光信号をその側面にて受信するものである。そして、引用例の記載(2.(2)(c))によれば、引用例に係る回転体トルク測定装置は、外部からの塵埃等によりその歪みゲージが劣化等の悪影響を受ける環境下にある。
塵埃等は、歪みゲージに限らず、同じ回転体トルク測定装置内に設けられている光ファイバーにも影響を与えるものであるから、引用発明に係る回転体トルク測定装置においても、塵埃等が、光ファイバーの(光信号の受光面である)側面にも汚れとして付着する結果、光ファイバーに何らかの悪影響を及ぼすおそれのあることは当業者ならば明らかである。
そして、一般に、信号の伝送に用いられる光ファイバーが所定の環境下に置かれたことで、その光伝送面に付着する汚れが光ファーバーによる信号の伝送に悪影響をもたらすことは、下記に示すように周知な技術課題である。
例えば、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2002-296110号公報(特に、「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この光伝送装置を運用していると、光ファイバと装置を接続している光コネクタ12の接続不良や光ファイバ端の汚れ等で光-電気変換部13に入力される光信号レベルが低下してくることがある。」段落【0004】)との記載や、特開平9-135209号公報(特に、「ところで、発光素子や受光素子の劣化あるいは光ファイバ端面の汚れや劣化等により受光素子で受光される光の強度(以下、受信レベルと言う。)がある値(受信可能レベル)以下に低下すると、受信側の光伝送装置で正確に送信データを検出できなくなる。」(段落【0004】)との記載を参照のこと。
そして、この種の、信号の伝送に用いられる光ファイバーにまつわる上記周知な技術課題を解決すべく、該光ファイバーに接続された光信号変換部からのの出力信号をモニターする手段を設けるなどして、その信号出力に応じて光ファイバーの汚れ等に起因する光ファイバーの異常を検知することは、下記に示すように公知な技術事項(以下、「公知技術」という。)である。
原査定の拒絶の理由に引用された前記刊行物である特開2002-296110号公報(特に、「このようなシステムでは、受信側の光ファイバを親局または子局へ最初に接続する場合、受信側の光フアイバ端の光出力を確認し、光ファイバの品質を確認後に、親局または子局の装置へ接続するが、稼働後に、なんらかのトラブルによる光ファイバの切断等で装置の光入力レベルが低下する場合を考え、常時光レベルを監視する光レベルモニタ装置も設けている。・・・この光レベルモニタ装置では、比較部15に入力する基準電圧の値を変更することで、受信光信号レベルの正常/異常のしきい値を設定でき、光ファイバの未接続や光ファイバの切断等の異常で著しく受信光信号レベルが低下したことの判定に用いられている。
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この光伝送装置を運用していると、光ファイバと装置を接続している光コネクタ12の接続不良や光ファイバ端の汚れ等で光-電気変換部13に入力される光信号レベルが低下してくることがある。図2に示す光レベルモニタ装置では、著しく光信号レベルが低下すれば検出できるが、コネクタの接続不良、汚れ等によりレベル低下が生じても、そのレベル低下が異常と判断される閾値よりも小さければ、正常と見なされ、汚れなどにより生じたレベル低下は検出することができない。
本発明の目的は、光ファイバの切断、光コネクタ未接続など著しく受信光信号レベルが低下したことの検出にとどまらず、光コネクタの接続不良や汚れ等によるわずかな受信光信号レベルの低下をも検出可能な光レベルモニタ装置を提供することにある。」(段落【0003】?【0005】))との記載を参照のこと。
また、同様に、前記刊行物である特開平9-135209号公報(特に、従来技術の項に記載された、「このため、光伝送装置では常に受信レベルを検出し、これが予め設定されている受信可能レベルよりも低くなると、異常表示等を行って、保守員に知らせるようにしている。」(段落【0004】)との記載をも参照のこと。

してみると、既述したように、引用発明に係る回転体トルク測定装置も、塵埃等が、光ファイバーの(光信号の受光面である)側面にも汚れとして付着する結果、光ファイバーに何らかの悪影響を及ぼすおそれのあることが当業者であれば明らかであるところ、このような光ファイバーの光伝送面に付着する汚れが光ファイバーによる信号の伝送に悪影響をもたらすとの前記周知な技術課題を解決するために、引用発明に、光ファイバーに接続された光信号変換部からの出力信号をモニターする手段を設けるなどして、光ファイバーの汚れ等に起因する光ファイバーの異常を検知するとの前記公知技術を組み合わせて、本願補正発明のように、光信号変換部からの信号に応じ受光ファイバーの異常を検知する異常検出部を備えるようにすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び公知技術から当業者が十分に予測可能なものであって格別のものであるとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由において、本願補正発明は、発光素子の光信号を受光ファイバーの側面にて受信するものであり、光ファイバーの端部の汚れを対象としている前記刊行物である特開2002-296110号公報に記載の技術と組み合わせることはできない旨主張している。
しかしながら、既述したように、引用発明も本願補正発明と同様に、発光素子の光信号を受光ファイバーの側面にて受信するものであり、しかも、引用発明に係る回転体トルク測定装置においても、塵埃等が、光ファイバーの(光信号の受光面である)側面にも汚れとして付着する結果、光ファイバーに何らかの悪影響を及ぼすおそれのあることは当業者ならば明らかなことである。
したがって、受光ファイバーの汚れによる悪影響が懸念される引用発明と、該光ファイバーに接続された光信号変換部からの出力信号をモニターする手段を設けるなどして、その信号出力に応じて光ファイバーの汚れ等に起因する光ファイバーの異常を検知する手段を設けるとの前記公知技術とを組み合わせることに、光伝送面に付着する汚れが光ファーバーによる信号の伝送に悪影響をもたらすことが周知な技術課題であることを前提とすれば、何らの困難性も認められない。
よって、請求人の主張は妥当でない。

(6)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、補正1及び補正2によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「駆動側の回転軸に取付けられる駆動側フランジ部と負荷側の回転軸に取付けられる負荷側フランジ部との間に中空体部が形成された回転本体と、前記回転本体の外周に設けられ、前記中空体部に取付けられるトルク検出部の出力により発光し光信号を出力する発光素子と、前記発光素子の光信号を受信する受光ファイバーの両端面側に設けられ、前記光信号を電気信号に変換する光信号変換部と、前記光信号変換部よりの出力に応じ前記受光ファイバーの異常を検知する異常検出部とを備えたことを特徴とする回転体トルク測定装置。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された発明や事項は、前記2.(2)引用例記載の事項・引用発明に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.(1)補正の内容、で検討した本願補正発明から
(イ)受信する受光ファイバーについての限定事項である「側面にて」との発明特定事項を省き、
(ロ)光信号変換部についての限定事項である「2つの」との発明特定事項を省き、
(ハ)「2つの光信号変換部からの信号を加算し該加算結果に応じ」を「光信号変換部よりの出力に応じ」と上位概念化するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)対比、2.(4)判断に記載したとおり引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-14 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2009-12-28 
出願番号 特願2003-7876(P2003-7876)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08C)
P 1 8・ 575- Z (G08C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 下中 義之
松浦 久夫
発明の名称 回転体トルク測定装置  
代理人 鈴木 弘男  

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